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地域住民の認知症の人に対する態度とその関連要因

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Academic year: 2021

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(1)資. 料. 論. 文. 地域住民の認知症の人に対する態度とその関連要因. 内田和宏*1,李 泰俊*2,茨木裕子*3,加瀬裕子*1 抄録 ●. ●. 認知症になっても暮らしやすい地域づくりには,認知症の理解とともに地域のつながりが求められてい る.本研究は,地域住民における認知症の人への態度と,それに関連する要因を明らかにすることを目的 とした.調査は東京近郊の市における 40 歳以上の男女 9,099 人を対象に,自記式調査票を用いた郵送調査 を実施した.有効回答は 2,530 人であった.認知症の人に対する態度を因子分析した結果,「 認知症への受 容」 「 近隣からの遮蔽」 「 認知症介護への拒否」の 3 因子が抽出された.認知症の人に対する態度の下位尺度 得点について,近隣関係を要因として一元配置分散分析にて比較した結果,「 相談・助け合う人」が多い人 ほど,認知症の人に対する「 認知症への受容」が高く, 「 近隣からの遮蔽」と「 認知症介護への拒否」が低い 傾向がみられた.本研究では,認知症の人とその家族が地域で孤立しないよう,近隣で友好的な関係を構築 することが必要であると示唆された. Key words:認知症,認知症の人への態度,近隣関係 老年社会科学, 42(1) :30 − 38, 2020. 地域住民の否定的なイメージや理解不足は,認知. Ⅰ.はじめに. 症本人や介護者の社会的孤立にもつながり,地域. 日本における認知症高齢者の数は年々増加し,. における認知症の問題をより深刻化させてしまう. 2025 年には高齢者の約 5 人に 1 人が認知症になる. 恐れがある.. と推計されている 1).そのため,認知症サポーター. 国は可能な限り住み慣れた家で暮らし続けるこ. 養成講座などの地域住民の認知症に対する理解向. とができるよう,地域包括ケアシステムの構築を. 上への取り組みが全国各地で行われている .し. 目指している 4).また,新オレンジプラン 5)や,. かし,内閣府が行った調査 3)では,約 6 割以上が「認. 2019 年 6 月に策定された認知症施策推進大綱 6)に. 知症になるとなにもできなくなる」あるいは「 地. おいて,認知症高齢者にやさしい地域は,認知症. 域で暮らすことが不可能になる」と考えており,. の人だけにやさしい地域ではなく,地域のつなが. また,家族が認知症になった場合においては,約. りこそが地域づくりの基盤であるとしている.こ. 半数以上が「 周囲の人に迷惑をかけてしまう」と. のように,認知症の人が住みやすい地域づくりに. の不安を抱いている.このような認知症に対する. は,認知症に対する理解や態度だけでなく,地域. 2). 住民同士のつながりも求められている.これまで. 受付日:2019.7.22 /受理日:2020.2.3 *1 Kazuhiro Uchida, Hiroko Kase:早稲田大学人間科学学術院 *2 Taejun Lee:早稲田大学人間総合研究センター *3 Yuko Ibaraki:早稲田大学大学院人間科学研究科 *1 〒 359-1192 埼玉県所沢市三ケ島 2-579-15. 認知症に対する理解や態度に関連する調査 7-9)に おいて,地域住民における認知症の人への態度や, それに関連する要因について明らかにした研究は 30. 老社42-1_OUT.indb 30. 2020/04/14 16:51.

(2) 老年社会科学 第 42 巻第 1 号 2020. 4. ほとんど見受けられない.そこで本研究は,地域. リングで話された内容の類似性をみながらコード. 住民における認知症の人への態度と,その関連要. 化し,カテゴリー化したものを項目化した.修正. 因について明らかにすることを目的とした.. については,既存の 15 項目に対し,ヒアリングで 話された内容をもとに修正を行った.加筆・修正. Ⅱ.方 法. に関しては,認知症に精通した研究者によるエキ. 1 .調査対象者と調査方法. スパートレビューを受けるとともに,実際に認知. 調査は,都心から 30km 圏内にある,人口約 34. 症ケアに携わっている人らとともに検討し,作成. 万人の A 市において実施した.A 市は,以前は農. した.21 の質問項目については,「1.そう思わ. 業中心の市であったが,東京に近く,交通の利便. ない〜 5.そう思う」の 5 件法で回答を求めた.. 性や優れた自然環境などから,東京のベッドタウ. 3 )近隣関係に関しての指標. ンとして人口が増加し続けてきた地域である.住. 近隣関係に関する指標として,「あなたのご近. 民の 1 人当たり市町村民所得は,2,932 千円(2013. 所付き合いで,それぞれにあてはまるご近所の方. 年)であり,近隣の市町村のなかでは高い傾向に. の人数を教えてください」という質問の下,「 互. ある.住民基本台帳から無作為抽出した 40 歳以. いに相談したり,日常生活で困ったときに助け合. 上の男女 9,099 人を対象に,自記式調査票を用い. う人 」( 以降,相談・助け合う人 ),「 日常的に立. た郵送調査を実施した.調査期間は 2013( 平成. ち話をする程度の付き合いの人 」( 以降,立ち話. 25)年 8 月 25 日〜 9 月 16 日であった.3,143 部回. をする人),「あいさつ程度の最小限の付き合いの. 収し,回収率は 34.5%であった.本研究では,そ. 人」 (以降,あいさつをする人)の 3 項目について,. のなかから基本属性や分析に用いる変数に欠損が. 「0 人,1 人,2 〜 5 人,6 人以上 」の項目から,そ. ない 2,530 人(有効回答率 27.8%)を分析対象者と. れぞれ 1 つの選択を求めた.. した. 3 .分析方法 2 .調査項目. 1 )認知症の人に対する態度の因子分析. 1 )基本属性. 認知症の人に対する態度に関する指標において. 性別,年齢,認知症勉強会の参加経験,認知症. は,逆転項目の処理を行い,21 項目に対して探索. 家族の有無,認知症の人とのかかわりの有無をた. 的因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行い,. ずねた.. 共通因子を探った.. 2 )認知症の人に対する態度に関する指標. 2 )認知症の人に対する態度に関連する指標の分. 認知症の人に対する態度に関する指標について. 析. は,金ら 7)が認知症の人に対する肯定的ないし否. 認知症の人に対する態度に関する因子得点ごと. 定的感情とともに,受容的または拒否的な行動の. に,性別,認知症勉強会の参加経験,認知症家族. 傾向を測定するために用いた 15 項目を参考に加. の有無,認知症の人とのかかわりの有無について,. 筆・修正を行い,21 項目として使用した.加筆・. t 検定による比較を行った.また,年齢,近隣関. 修正に際しては,まず,筆者らが主催した認知症. 係に関しては,一元配置分散分析を用いて比較を. 講座の参加者に対して「認知症の方に対してどの. 行った.解析は,IBM SPSS Statistics25 を用い,. ように感じますか」という質問の下,ヒアリング. 有意水準は 5%とした.. を行った.次に,加筆については,地域住民にお ける認知症の人に対する肯定または否定感情とと. 4 .倫理的配慮. もに,受容的または否定的な行動について,ヒア. 回答データは統計的処理をし,個人を特定しな 31. 老社42-1_OUT.indb 31. 2020/04/14 16:51.

(3) 表 1 分析対象者の基本属性. いこと,調査は強制的でないことなどを調査協力 依頼文書に明記し,調査票の返送をもって調査協. 変数/水準. 力への同意とみなした.なお,本研究は早稲田大 学「 人を対象とする研究に関する倫理委員会 」の 性別. 承認を得て実施した.. Ⅲ.結 果. 男性 女性. 年齢. 40 ~ 49 歳 50 ~ 59 歳 60 ~ 69 歳 70 ~ 79 歳 80 歳以上 平均年齢 ±標準偏差 (歳). 1 .対象者の基本属性 分析対象者の基本属性を表 1 に示した.分析対 象者の性別は,男性が 42.3%,女性が 57.7%であっ た.年齢別にみると 60 〜 69 歳が 30.3%ともっと も多く,70 〜 79 歳が 24.0%,40 〜 49 歳が 19.8%,. 認知症勉強会の 参加経験. 50 〜 59 歳が 19.7%であった.A 市全体における 調査年次と同年(2013 年,平成 25 年 )の 40 歳以. 参加したことがある 参加したことがない. 合計 ( n = 2,530) (100.0) % 人数 1,070 (42.3) 1,460 (57.7) 500 (19.8) 499 (19.7) 766 (30.3) 608 (24.0) 157 (6.2) 62.0 ± 12.0 250 (9.9) 2,280 (90.1). 認知症の人が家族に いたことがある あり なし. 660 (26.1) 1,870 (73.9). 歳 が 27.1 %,50 〜 59 歳 が 20.5 %,60 〜 69 歳 が. 認知症の人とかかわ ったことがある あり なし. 1,357 (46.4) 1,173 (53.6). 24.8%,70〜79歳が18.7%,80歳以上は9.0%であっ. 相談・助け合う人の数. 上の男女比率は,男性が 48.8%,女性が 51.2%で あり,本研究では女性の回答者の割合が多くみら れた.また,A 市における年代別割合は 40 〜 49. 0人 1 ~ 5人 6人以上. 997 (39.4) 1,402 (55.4) 131 (5.2). 0人 1 ~ 5人 6人以上. 462 (18.3) 1,480 (58.5) 588 (23.2). あいさつ程度の付き 合いの人の数 0人 1 ~ 5人 6人以上. 135 (5.3) 1,103 (43.6) 1,292 (51.1). た.本研究と比較すると,60 〜 69 歳の割合がもっ とも多いことや 50 〜 59 歳の割合については A 市 日常的に立ち話をす る付き合いの人の数. の全体調査と類似しているが,40 〜 49 歳と 70 〜 79 歳の割合において差がみられた.認知症勉強 会への参加経験は「参加したことがある」が 9.9% であった.認知症家族の有無では,過去の経験を 含め「いる」が 26.1%であった.認知症の人との かかわりの有無では,過去の経験を含め「いる」 が 46.4%を占めた.近隣関係に関しては,「相談・ 助け合う人」と「立ち話をする人」については, 「1. 知症介護への拒否 」0.724 であった.これらの 3. 〜 5 人」がもっとも多く,55.4%と 58.5%であった.. 項目を分析項目として用いることとした.. 「あいさつをする人」に関しては「6 人以上」がもっ とも多く 51.1%を占めた.. 3 .認知症の人に対する態度に関連する指標と基. 2 .認知症の人に対する態度の因子分析. 認知症の人に対する態度に関連する指標につい. 表 2 に示したとおり,3 因子が抽出された.そ. て,基本属性別に比較したものを表3に示した. 「認. れぞれ「 認知症への受容(7 項目 )」「 近隣からの. 知症への受容 」に関しては,性別,認知症勉強会. 遮蔽(3 項目 )」「 認知症介護への拒否(3 項目 )」. の参加経験,認知症家族の有無 , 認知症の人との. と命名した.なお,Cronbach のα係数は,「認知. かかわりの有無において有意差がみられた.これ. 症への受容」0.765, 「 近隣からの遮蔽」0.739, 「認. らの項目に有意差があったことから,女性は男性. 本属性の分析. 32. 老社42-1_OUT.indb 32. 2020/04/14 16:51.

(4) 老年社会科学 第 42 巻第 1 号 2020. 4. 表 2 認知症の人に対する態度の因子分析結果. KMO = 0.802 n =2,530. 質問項目. α係数. Ⅰ.認知症への受容 15 認知症の人と喜びや楽しみを分かち合える 16 認知症の人でも周りの人と仲良くする能力がある 17 私は普段の生活でもっと認知症の人とかかわる機会があってもよい 18 認知症の人も地域活動に参加したほうがよい 11 認知症になっても,その人の意思をできる限り尊重してあげたい 10 近所に認知症の人がいたらできることがあれば躊躇せずしてあげたい 14 自分が認知症になったら,周りの人の手を借りながら自宅での生活を続けたい. 0.765. Ⅱ.近隣からの遮蔽 9 家族が認知症になったら,近所の人には知らせたくない 21 家族が認知症になったら,世間体や周囲の目が気になる 5 家族が認知症になったら,近所付き合いがしにくくなる. 0.739. Ⅲ.認知症介護への拒否 3 認知症の介護をすると,自分のしたいことができなくなる 2 自分1人で認知症を世話するのは無理だと思う 6 認知症の世話は,代わってくれるところがあれば代わってもらいたい. 0.724. 因子負荷量 1. 2. 3. .740 .722 .669 .590 .511 .454 .412. -.023. .081 -.069 -.006 .085 .136 -.235. .073 -.026 .086 -.002 -.120 -.142 .113. -.002 -.009 -.009. .747 .724 .596. -.072 .006 .222. -.006 -.048. .038 -.075 .127. .732 .722 .590. 0.362 -. 0.157 0.275 -. .043. 因子間相関. Ⅰ Ⅱ Ⅲ. 0.362 0.157. 0.275. 因子抽出法:主因子法 回転法:プロマックス回転 因子分析除外項目: 1 この先,自分が認知症になるのではないかと不安である,4 認知症の世話の仕方がわからない,7 認知症の人はなに をするかわからないので怖い,8 認知症の人とは出来る限りかかわりたくない,12 認知症になった人は気の毒である,13 家族が認知症に なったら,近所の人や知人などにも協力を求めたい,19 認知症の人は周りを困らせることが多い,20 認知症の人の感情表現や行動はまった く理解できない. に比して,認知症勉強会に参加したことがある人. た.これらの項目に有意差があったことから,男. はない人に比して,認知症の人が家族にいたこと. 性は女性に比して,認知症勉強会に参加したこと. がある人はない人に比して,認知症の人とかか. がない人はある人に比して,認知症の人が家族に. わったことがある人はない人に比して,「 認知症. いたことがない人はある人に比して,認知症の人. への受容 」が高いことが示された.「 近隣からの. とかかわったことがない人はある人に比して,年. 遮蔽」に関しては,性別,認知症勉強会の参加経験,. 齢は低いほど「 認知症介護への拒否 」が高いこと. 認知症家族の有無 , 認知症の人とのかかわりの有. が示された.. 無,年齢において有意差がみられた.これらの項 4 .認知症の人に対する態度に関連する指標と近. 目に有意差があったことから,男性は女性に比し. 隣関係の分析. て,認知症勉強会に参加したことがない人はある 人に比して,認知症の人が家族にいたことがない. 認知症の人に対する態度に関連する指標につい. 人はある人に比して,認知症の人とかかわったこ. て,近隣関係別に比較したものを表4に示した. 「相. とがない人はある人に比して,年齢は高いほど「近. 談・助け合う人」に関しては,人数が多い人ほど. 隣からの遮蔽 」が高いことが示された.「 認知症. 有意に「 認知症への受容 」の得点が高くなってお. 介護への拒否 」に関しても,性別,認知症勉強会. り,「近隣からの遮蔽」と「認知症介護への拒否」. の参加経験,「 認知症家族の有無 」認知症の人と. は得点が低くなっていた.「 立ち話をする人 」に. のかかわりの有無,年齢において有意差がみられ. 関しても,人数が多い人ほど有意に「認知症への 33. 老社42-1_OUT.indb 33. 2020/04/14 16:51.

(5) 34. 老社42-1_OUT.indb 34. 2020/04/14 16:51. 1,870 660 1,173 1,357. 認知症家族の有無 いたことがない いたことがある. 認知症の人とのかかわりの有無 かかわったことがない かかわったことがある. 462 1,480 588. 135 1,103 1,292. 立ち話をする人 0人 1 ~ 5人 6人以上. あいさつをする人 0人 1 ~ 5人 6人以上 22.78 22.88 23.81. 22.46 23.34 24.07. 22.60 23.72 25.05. ± ± ±. ± ± ±. ± ± ±. 3.82 3.89 3.60 3.90. 3.70 3.85. 3.71 4.02. 3.30 3.60. 3.68 3.86. 4.37 3.88 3.60. 4.12 3.73 3.55. 4.03 3.56 3.26. ***. n.s.. ***. ***. ***. ***. **. ***. ***. p値. 19.62. 23.76. 40.24. F値. n.s.. ± ± ± ±. ± ±. ± ±. ± ±. ± ±. 9.10 8.90 8.21. 8.92 8.66 8.01. 8.79 8.49 7.56. 2.58 2.48 2.39 2.50. 2.42 2.53. 2.44 2.60. 2.47 2.61. 2.43 2.49. ± ± ±. ± ± ±. ± ± ±. 2.68 2.50 2.41. 2.61 2.46 2.40. 2.58 2.42 2.37. ***. n.s.. ***. n.s.. ***. *. ***. ***. ***. p値. Ⅱ.近隣からの遮蔽. 8.57 8.18 8.43 8.93. 8.85 8.31. 8.70 8.16. 8.62 7.98. 8.99 8.24. 平均値 ±標準偏差. 26.72. 20.56. 15.58. F値. 10.16. F値. 6.11. 4.96. 3.96. 2.69. t値. Ⅱ.近隣からの遮蔽. 平均値 ±標準偏差. p値. F値. 2.07. ***. **. ***. ***. p値. 3.10. 5.43. 3.84. 2.72. t値. Ⅰ.認知症への受容. ± ± ± ±. ± ±. ± ±. ± ±. ± ±. 平均値 ±標準偏差. 23.06 23.22 23.40 23.57. 22.94 23.71. 23.22 23.72. 23.15 25.20. 22.99 23.61. 平均値 ±標準偏差. Ⅰ.認知症への受容. ***. p値. ***. ***. ***. ***. p値. ± ± ± ±. ± ±. ± ±. ± ±. ± ±. 1.91 1.90 2.02 2.33. 2.11 2.11. 2.15 1.98. 2.08 2.40. 2.13 2.09. 12.51 12.26 12.12. 12.62 12.19 11.90. ± ± ±. ± ± ±. ± ± ±. 2.05 2.07 2.15. 2.03 2.08 2.21. 2.03 2.14 2.22. 平均値 ±標準偏差 12.44 12.10 11.51. 32.33. F値. 0.70. 0.43. 5.20. 0.36. t値. n.s.. *. ***. **. ***. ***. ***. p値. Ⅲ.認知症介護への拒否. 12.72 12.63 12.07 11.72. 12.06 12.32. 12.09 12.51. 12.24 11.84. 12.04 12.32. 平均値 ±標準偏差. ***. p値. **. ***. *. **. p値. 2.94. 15.25. 14.94. F値. Ⅲ.認知症介護への拒否. * p< .05,** p< .01,*** p< .001 一元配置分散分析にて比較を行った.また,有意差が認められた場合には Tukey 法による多重比較にて群間比較を行った.. 997 1,402 131. 相談・助け合う人 0人 1 ~ 5人 6人以上. (n=2,530). 表 4 認知症の人に対する態度と近隣関係. * p< .05,** p< .01,*** p< .001. 500 499 766 765. 2,280 250. 認知症勉強会の参加経験 参加したことがない 参加したことがある. 年齢 49 歳以下 50 ~ 59 歳 60 ~ 69 歳 70 歳以上. 1,070 1,460. 性別 男性 女性. (n=2,530). 表 3 認知症の人に対する態度と基本属性.

(6) 老年社会科学 第 42 巻第 1 号 2020. 4. 受容」の得点が高く,「近隣からの遮蔽」と「認知. た「 高齢者介護に関する世論調査 」14)によると,. 症介護への拒否 」の得点は低いことが示された.. 家族が要介護者になる不安の有無は 50 〜 59 歳が. 「あいさつをする人」に関しては,「認知症への受. 39.9%ともっとも高く,次いで 40 〜 49 歳が 37.6%. 容」と「近隣からの遮蔽」については, 「 0 人」と「1. と高かった.40 〜 50 歳代はこれから親の介護に. 〜 5 人」の間では関連はみられなかったが, 「0 人」. かかわり始める時期であり,今後の介護への負担. と「6 人以上」,「1 〜 5 人」と「6 人以上」の間では. 感が,「 認知症介護への拒否 」を高めることにつ. 有意差がみられた.また,「認知症介護への拒否」. ながったのではないかと考えられる.. に関しては有意差がみられなかった.. 認知症勉強会の参加経験がある人は,認知症の 人に対する態度において,「 認知症への受容 」が. Ⅳ.考 察. 高く, 「 近隣からの遮蔽」と「認知症介護への拒否」. 1 .認知症の人に対する態度と基本属性に関連す. が低いことが示された.これは,認知症に対する. る要因. 理解向上のための勉強会は有効であり 15),認知症. 認知症の人に対する態度に関連する指標(表 3). について理解することは,認知症の人への態度が. について,個人の属性によって,認知症の人への. 肯定的になる 16)という先行研究と同様の結果が. 態度が異なる傾向がみられた.. 得られたと考えられる.地域住民が認知症に対す. 性別に関して,女性のほうが男性に比べ「認知. る正しい知識を学ぶことは,個人ができることと. 症への受容 」が高く,「 近隣からの遮蔽 」は低い. して,認知症の人にやさしい地域をつくるために. 傾向がみられた.これは,女性のほうが男性に比. 必要なことであり,認知症サポーター養成講座を. べて介護にかかわる機会が多いため 10),認知症へ. はじめとした認知症の理解を促進する活動は,今. の理解が高まり,肯定的な影響を与えたためでは. 後も継続していくべきであると考えられた.. ないかと考えられる.「 認知症介護への拒否 」に. 認知症の家族がいたことのある人や,認知症の. 関しては,男性よりも女性のほうが高い傾向がみ. 人とかかわっていた経験がある人は,「 認知症へ. られた.男性は実際の介護者となった場合には不. の受容 」が高く,「 近隣からの遮蔽 」は低い傾向. 安を感じるが. ,実際の介護者でない場合には,. を示していた.これは,認知症の人とかかわった. 11). 介護は女性が担うべきジェンダー化された役割と して捉える傾向があるとされている. 経験は,認知症の人に対する拒否的な態度を緩和. .男性は女. するという先行研究 15)と同様の傾向がみられた.. 12). 性に比べて「 介護は自分がやるわけではない」と. しかし,認知症の人とかかわった経験や,認知症. いうような「 介護は他人事 」と考える傾向がある. の家族がいた経験のある人は,「 認知症介護への. ため,男性よりも女性のほうが「認知症介護への. 拒否」も高い傾向がみられた.これは,認知症へ. 拒否」が低かったと考えられる.. の理解は介護負担感の軽減には効果がないとの先. 年齢に関しては,「 地域からの遮蔽 」と「 認知. 行研究 17)もあり,認知症に関しては,知れば知る. 症介護への拒否 」において有意差がみられ,「 地. ほど,認知症本人とかかわるときのむずかしさや,. 域からの遮蔽」は 70 歳以上の人がもっとも高い得. 介護のたいへんさを理解するため,認知症の人と. 点を示していた.年齢が高いほど,認知症の知識. のかかわりの経験が,認知症介護への拒否を増加. は低いという先行研究があり. ,年齢が高いこと. させていると考えられた.. 13). による認知症への理解の低さが,「 地域からの遮 2 .認知症の人に対する態度と近隣関係に関連す. 蔽感 」を高めたと考えられる.「 認知症介護への. る要因. 拒否」に関しては,49 歳以下がもっとも高く,次 に50〜59歳が高い傾向がみられた.内閣府が行っ. 認知症の人に対する態度に関連する指標(表 4) 35. 老社42-1_OUT.indb 35. 2020/04/14 16:52.

(7) について,地域住民の近隣関係が認知症の人への. 傾向にあるが,同時に認知症介護のたいへんさも. 態度に影響していることが示された.「 相談・助. よく理解しているがゆえに,介護への拒否感も持. け合う人」に関しては,人数が多い人ほど有意に. ち合わせているためであると考えられた.. 「認知症への受容」の得点は高く,「近隣からの遮. また,地域住民との関わり合いが多い人ほど,. 蔽 」と「 認知症介護への拒否 」の得点が低いこと. 認知症に対しての態度や認知症介護に肯定的で. がみられた.また, 「 立ち話をする人」に関しても,. あったことから,認知症介護への拒否感について. 人数が多い人ほど有意に,「 認知症への受容 」の. は,認知症の人とのかかわりや知識の増進だけで. 得点は高く,「 近隣からの遮蔽 」と「 認知症介護. なく,近隣や地域内においてあいさつや立ち話,. への拒否 」の得点が低いことがみられた.「あい. 相談や助け合いが出来る関係性を築くことも必要. さつをする人 」に関しては,「 認知症への受容 」. であることが示唆された.地域内においてだれか. と「近隣からの遮蔽」について有意差がみられた.. とつながっていると感じたり,家の外に安心でき. これらの結果は,近隣関係が多い人ほど,認知症. る場があったり,拠り所となるような環境がある. の人に対する態度も肯定的であることを示してい. ことが,認知症の人やその家族が住みやすい地域. ると考えられる.. となるために求められていると考えられた.. 認知症介護者における初期から終末期までに共. 本研究の課題としては,まず,有効回答率が. 通する困難として, 「 周囲の理解が得られない」 「相. 27.8%と低かったことがあげられる.次に,本研. 談相手がいない」ことに直面することがあり. ,. 究の対象であった A 市は,東京のベッドタウンと. 18). 認知症介護者への支援として,地域のインフォー. して人口が増加し続けてきた地域であるが,以前. マルサポート体制の育成や整備が必要である 19). は農業中心の市であったため,同じ市内において. とされている.近隣関係においてあいさつのでき. も都市部と農村部が共存している.そのような地. る関係にはじまり,立ち話や相談のできる関係の. 域間においては,傾向が異なることも予想される. 構築が,認知症になっても安心できる地域づくり. ため,地域間による相違の検討も今後行う必要が. として,求められていると考えられた.. ある.また,本研究では,全体の傾向について単. 本研究では,認知症の人への正しい理解やかか. 変量解析によって検討を行ったが,今後は,多変. わりとともに,日頃の地域住民同士の関わり合い. 量解析によって要因間の関連性を検討することも. を構築することが,認知症の人とその家族にやさ. 求められる. . しい地域づくりのために,地域住民が取り組むこ. 文 献. とのできるインフォーマルサポートのひとつとし. 1) 内閣 府:高 齢 者の姿と取り巻く環 境の現 状と動 向. て有効であることが示唆された.. (https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/. Ⅴ.まとめと課題. html/gaiyou/s1_2_3.html, 2019.7.5) (2017) . 2) 全国キャラバン・メイト連絡協議会:認知症サポーター. 本研究では,認知症勉強会に参加したことがあ. キャラバンとは(http://www.caravanmate.com/, 2019.7.. る人や,認知症の人とかかわった経験がある人は,. 5) (2019) .. 認知症の人に対して受容的な態度をとる傾向であ. 3) 内閣府:認知症に対する世論調査 (https://survey.gov-. ることが示された.一方で,そのような人は認知. online.go.jp/tokubetu/h27/h27-ninchisho.pdf,2019.7.5). 症介護に対しては拒否的な態度をとる傾向である. (2015) .. ことも示された.これは,認知症や認知症介護に. 4) 厚生労働省:地域包括ケアシステム(https://www.mhlw.. ついての知識や経験がある人は,認知症を理解し. go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_. ているため,一般論としては受容的な態度を示す. koureisha/chiiki-houkatsu/, 2019.10.8) (2015) . 36. 老社42-1_OUT.indb 36. 2020/04/14 16:52.

(8) 老年社会科学 第 42 巻第 1 号 2020. 4. 5) 厚生労働省:認知症施策推進総合戦略(新オレンジ. 13) 杉原百合 子:一 般高齢 者がもつアルツハイマー型認. プラン) (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/. 知症についての知識量と関連要因の検討.日本認知症. bunya/0000064084.html, 2019.7.5) (2015) .. ケア学会誌,4(1) :9-16(2005) .. 6) 厚生労働省:認知症施策推進関係閣僚会議(https://. 14) 内閣府:介護保険制度に関する世論調査 (https://survey.. www.mhlw.go.jp/content/000522832.pdf,2019.7.8). gov-online.go.jp/h22/h22-kaigohoken/index.html,. 7) 金 高誾,黒田研二:認知症の人に対する態度に関連. 2019.10.09) (2010) .. する要因;認知症に関する態度尺度と知識尺度の作成.. 15) 丸尾智美,河野あゆみ:地域住民を対象とした認知症. 社会医学研究,28(1) :43- 55(2011) .. の理解促進プログラムの試み;プログラム実施前後の質 問紙調査による評価.日本地域看護学会誌,15(1) :52-. 8) 三浦千佳,曾田信子,緒形明美ほか:認知症サポーター とキャラバンメイトに対するA大学看護学生の認知度と. 60(2012) .. 関心度およびその関連要因.日本看護医療学会雑誌,15. 16) 金 高誾,黒田研二,下薗 誠:認知症の人に対する 地域住民の態度とその関連要因.社会問題研究,60. (2) :48- 62(2013) . 9) 杉山 京,川西美里,中尾竜二ほか:地域住民におけ. (139) :49- 62(2011) .. る認知症の人に対する態度と認知症の知識量との関連.. 17) 吉澤恵美,杉澤秀博:家族介護者の認知症に関する理. 老年精神医学雑誌,25(5) :556- 565(2014) .. 解度が介護負担感に与える効果.老年学雑誌(2) :43-. 10) 内閣府:平成 30 年版高齢社会白書(https://www8.cao.. 56(2012) .. go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_2.. 18) 黒澤直子,澤野尚子:認知症介護における支援を必要と. html,2019.10.9) (2018) .. する時期と内容に関する考察.北翔大学北方圏学術情報. 11) 長澤久美子,山村江美子,岩清水伴美:認知症に罹患. センター年報, (9) :1-9(2017) .. した妻の介護をする夫介護者が感じている困難.家族. 19) 工藤雄行,小池妙子,寺田富二子ほか:在宅認知症者に. 看護学研究,20(2) :117-124(2015) .. 対する男性家族介護者支援の方向性;フォーマル,イン. 12) 松井由香:男性介護者の語りにみる「男性ゆえの困難」 ;. フォーマルサポートの側面からの検討.弘前医療福祉大学. セルフヘルプ・グループに集う夫・息子介護者の事例から.. 短期大学部紀要,4(1) :43- 54(2016) .. 家族研究年報,39(0) :55-74, (2014) .. 37. 老社42-1_OUT.indb 37. 2020/04/14 16:52.

(9) Attitudes toward people with dementia and related factors among local residents Kazuhiro Uchida1), Taejun Lee2), Yuko Ibaraki3), Hiroko Kase1) 1) Faculty of Human Science, Waseda University 2) Advanced Research Center for Human Sciences, Waseda University 3) Graduate School of Human Sciences, Waseda University. In order to create a community in which it is easy to live even after having dementia, understanding of dementia and neighborhood relationships are required. The purpose of this study was to clarify the relationship between attitudes toward people with dementia (PWD) and the neighborhood environment. A self-administered mail survey questionnaire was conducted with 9,099 participants aged 40 and older, and 2,530 valid responses were obtained. An exploratory factor analysis was conducted for an attitude toward PWD scale. As a result, three factors were extracted: “acceptance of dementia,” “shield from neighborhood,” and “refusal of caring for PWD.” Comparison between the mean values of the subscales of the attitude toward PWD scale and neighborhood relations by oneway analysis of variance revealed that people who indicated a high score for neighborhood relations also indicated a high score for acceptance of dementia, and low scores for shield from neighborhood and refusal of caring for PWD. The results of this study suggested that building friendly neighborhood relations is necessary so that PWD and their families are not socially isolated. Key words : people with dementia, attitudes toward PWD, neighborhood relations. 38. 老社42-1_OUT.indb 38. 2020/04/14 16:52.

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