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(13)バイオ医薬品の研究開発における規模的分離

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【経営学論集第 89 集】自由論題

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バイオ医薬品の研究開発における

規模的分離

富山高等専門学校 宮 重 徹 也 【キーワード】バイオ医薬品(Biotechnology-based Drugs),創薬技術(Drug Development),研究開発(Research and Development),低分子化合物医薬品(Low-molecular Compound Drugs),研究開発の分離(Separation of R&D)

1.はじめに

1899 年の「アスピリン」の誕生以降,医薬品といえば低分子化合物医薬品が主流であった。それが 20 世紀後半の1980 年代には,「インスリン」や「インターフェロン」などの第 1 世代のバイオ医薬品が研 究開発され,低分子化合物医薬品以外の医薬品も見られるようになってきた。さらに,2000 年代になる と,抗体医薬品という第2 世代のバイオ医薬品が多数研究開発され,医薬品市場において大きな地位を占 めるようになってきた。換言すれば,医薬品といえば低分子化合物医薬品の時代から,医薬品といえばバ イオ医薬品といっても過言ではない時代になってきた。その結果,そのようなバイオ医薬品の研究開発を 手掛けてきたバイオベンチャー企業のアムジェン社(Amgen Inc.)やジェネンテック社(Genentech Inc.)

が大手医薬品企業へと成長することになった。しかしながら,バイオ医薬品の研究開発を分析した既存研 究は,個別医薬品の研究開発事例を取り上げたものが主である(Binder, 2008; Hughes, 2011)。 そこで本研究では,バイオ医薬品企業であるアムジェン社とジェネンテック社の2 社の事例から,この ようなバイオ医薬品企業の研究と開発が規模的に分離する傾向にあることを明らかにしていく。

2.低分子化合物医薬品の研究開発における規模的分離

本節では,宮重・藤井(2014)の実証研究に基づいて,低分子化合物医薬品の研究開発では,企業規模 (研究開発投資規模)の観点から,研究と開発が分離する傾向にあることを示していく。 低分子化合物医薬品の研究開発効率性には,多くの研究者が関心を持っており,これらの医薬品企業の 研究開発効率性を分析した既存研究は多数蓄積されている(Cockburn and Henderson, 2001; Gambardella, 1992; Graves and Langowitz, 1993; Henderson and Cockburn, 1996; Jensen, 1987; 宮重, 2005; 宮重, 2009; 【要約】本研究では,バイオ医薬品企業のパイオニアであるアムジェン社とジェネンテック社の2 社の事例から, バイオ医薬品の研究と開発が規模的に分離する傾向にあることを明らかにする。 まずは,医薬品企業の研究開発を分析した既存研究をまとめるとともに,低分子化合物医薬品とバイオ医薬品のそ れぞれの研究開発プロセスを説明のうえ,バイオ医薬品の研究開発における特質を示す。続いて,バイオ医薬品企業 であるアムジェン社の計量分析から,バイオ医薬品の研究と開発が規模的に分離していることを明らかする。さらに, アムジェン社とジェネンテック社の事例分析から,バイオ医薬品の研究と開発が規模的に分離していることを明らか にしていく。なお,アムジェン社については独立企業であり計量分析データが収集できたが,ジェネンテック社はロ シュ社の子会社となっており,同社単独の計量分析データが収集できなかったため,計量分析は実施していない。

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Odagiri and Murakami, 1992; 菅原, 2002)。また,桑嶋(2006)の指摘するように,医薬品企業の研究開発は 質的特徴が大きく異なる研究プロセスと開発プロセスの2 つのプロセスに分割できるが,これらの既存研 究は医薬品企業の研究開発をこの2 つのプロセスに分割することなく,実質的には研究プロセスの効率性 を分析したのみである。そのような中,宮重・藤井(2014)の実証研究において,初めて低分子化合物医 薬品の研究プロセスと開発プロセスのそれぞれの効率性が同時に分析された。 欧米の医薬品企業における低分子化合物医薬品の研究開発を計量分析した実証研究においては,医薬品 の研究プロセスでは研究開発投資の規模の不経済が見られる一方,開発プロセスでは研究開発投資に比例 して成果が得られることが示されている。また,研究成果は開発成果に対してほとんど影響を及ぼさなか ったため,欧米の医薬品企業における低分子化合物医薬品の研究開発は,企業規模(研究開発投資規模)の 観点から,研究と開発が分離していることになる。 同様に,日本の医薬品企業における低分子化合物医薬品の研究開発を計量分析した実証研究においては, 医薬品の研究プロセスでは研究開発投資の規模の不経済が見られる一方,開発プロセスでは研究開発投資 の規模の経済が見られることが示されている。また,研究成果は開発成果に対して全く影響を及ぼさなか ったため,日本の医薬品企業における低分子化合物医薬品の研究開発は,企業規模(研究開発投資規模)の 観点から,研究と開発が分離していることになる。 すなわち,欧米の医薬品企業においても,日本の医薬品企業においても,低分子化合物医薬品の研究開 発は,企業規模(研究開発投資規模)の観点から,研究と開発が分離しているのである。

3.医薬品の研究開発プロセスとバイオ医薬品の研究開発における特質

本節では,低分子化合物医薬品とバイオ医薬品のそれぞれについて医薬品の研究開発プロセスを説明の うえ,バイオ医薬品の研究開発における特質を述べる。 医薬品の研究開発プロセスは,研究と開発の2 つのプロセスに分割できる。低分子化合物医薬品の研究 プロセスは,リード化合物創製とリード化合物最適化を行い,新規化合物(NCE:New Chemical Entity)

を探索するプロセスである。一方,低分子化合物医薬品の開発プロセスは,研究プロセスから得られた新 規化合物を低分子化合物医薬品へと製品化していくプロセスであり,非臨床試験から臨床試験を経て,低 分子化合物医薬品の承認発売へと至るプロセスである(図1 参照)。

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バイオ医薬品においては,その研究プロセスは,蛋白質の作製や抗体の調整を行い,新規生物物質

(NBE:New Biological Entity)を探索するプロセスである。一方,バイオ医薬品の開発プロセスは,低分 子化合物医薬品と同様に,研究プロセスから得られた新規生物物質をバイオ医薬品へと製品化していくプ ロセスであり,非臨床試験から臨床試験を経て,バイオ医薬品の承認発売へと至るプロセスである(図2 参照)。 低分子化合物医薬品の研究プロセスでは新規化合物を探索し,バイオ医薬品の研究プロセスでは新規生 物物質を探索するため,その探索に必要となる研究技術は異なる。一方,低分子化合物医薬品の開発プロ セスでは新規化合物を低分子化合物医薬品へと製品化し,バイオ医薬品の開発プロセスでは新規生物物質 をバイオ医薬品へと製品化するが,非臨床試験も臨床試験もほぼ同様に行われることになる。 しかしながら,低分子化合物医薬品の開発プロセスでは,その新規化合物を低分子化合物医薬品へと開 発するために特段の新たな技術は必要とされないが,バイオ医薬品の開発プロセスでは,その新規生物物 質をバイオ医薬品へと開発するために新たな技術が必要とされるが点が大きく異なる。換言すれば,低分 子化合物医薬品では開発プロセスにおいて新たな技術は必要ないが,バイオ医薬品では開発プロセスにお いても新たな技術が必要とされる点が,バイオ医薬品の研究開発における大きな特質なのである。 バイオ医薬品の代表ともいえる抗体医薬品において,新規抗体(新規生物物質)の発見に必要な技術が「要 素技術」である。一方,その新規抗体(新規生物物質)を抗体医薬品に開発するうえで必要とされる技術が 「応用産業」の技術である。低分子化合物医薬品の開発プロセスにおいては,新規化合物を低分子化合物 医薬品へと開発するために特段の新たな技術は必要とされなかったが,バイオ医薬品の開発においては, それぞれの新規生物物質をバイオ医薬品へと開発するために特段の新たな技術が必要とされるのである。

4.アムジェン社の計量分析

本節では,大手バイオ医薬品企業の1 社であるアムジェン社の計量分析から,バイオ医薬品の研究技術 と開発技術が分離していることを明らかにしていく。 前節において示した通り,バイオ医薬品の研究技術の成果は「要素技術」の特許数で表し,開発技術の 成果は「応用産業」の特許数で示す。本計量分析では,これらの技術の成果に対する研究開発投資額の効 率性を分析している。また,これらのデータのうち,研究開発投資額はアムジェン社のIR 資料から収集 し,IMF の GDP デフレーターを用いて 2005 年の値に修正している。また,要素技術の特許数および応 用産業の特許数は,日本の特許庁のデータベースから収集した。 バイオ医薬品の 期における研究プロセスの成果である要素技術の特許数 は,式(2)のように仮定

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する。同様に, 期における開発プロセスの成果である応用産業の特許数 は,式(1)のように仮定す る。これらの方程式を最小二乗法によって推定している。 (1) (2) アムジェン社における計量分析の分析結果は,表1 の通りである。 表 1 アムジェン社における計量分析の結果 プロセス 母数 推定値 標準誤差 研究プロセス β0 -4.00 8.81 (2)式 β1 -0.19 0.33 β2 0.03 0.01 開発プロセス α0 -9.05 7.02 (1)式 α1 0.62 0.00 α2 -0.83 0.27 α3 0.04 0.01 出所:筆者にて作成 方程式(1)の推定から,前期( 期)の応用産業の特許数が今期( 期)の応用産業の特許数に及ぼ す影響 の推定値は0.621 であり,標準誤差は 0.001 であった。この数値から,前期の応用産業の特許数 は今期の応用産業の特許数にプラスの影響を及ぼし,応用産業の特許には継続性があることが示された。 すなわち,バイオ医薬品の開発プロセスにおいては,開発技術の継続性があるということになる。 また,前期( 期)の要素技術の特許数が今期( 期)の応用産業の特許数に及ぼす影響 の推定値 は-0.827 であり,標準誤差は 0.270 であった。この数値からは,前期の要素技術の特許数は今期の応用 産業の特許数にマイナスの影響を及ぼすことになる。このことは,バイオ医薬品の研究技術と開発技術が, 技術の観点から分離する傾向にあることを示唆する。 一方,方程式(2)の推定から,前期( 期)の要素技術の特許数が今期( 期)の要素技術の特許数 に及ぼす影響 の推定値は-0.190 であり,標準誤差は 0.333 であったが,この変数は有意ではなかった。 このことから,バイオ医薬品の研究プロセスにおいては,研究技術の継続性が乏しいということになる。 したがって,アムジェン社における研究開発を分析した本計量分析からは,研究技術と開発技術が,技 術の観点から分離していることが示された。

5.アムジェン社の事例分析

本節では,アムジェン社の公式資料に基づく事例分析から,アムジェン社におけるバイオ医薬品の研究 技術と開発技術が分離してきたことを明らかにする。具体的には,設立当初はアムジェン社におけるバイ オ医薬品の研究と開発が分離していなかったものの,現在ではアムジェン社におけるバイオ医薬品の研究 と開発が分離していることを示していく。 アムジェン社は1980 年に米国のロサンゼルスにおいて設立された。1983 年には「EPOGEN(epoetin alfa)」を研究のうえ開発を開始しており,1985 年には「NEUPOGEN(filgrastim)」を研究のうえ開発を 開始している。1989 年には同社初のバイオ医薬品である「EPOGEN」が発売され,1991 年には 「NEUPOGEN」が発売されている。 アムジェン社は「EPOGEN」と「NEUPOGEN」という,2 つのバイオ医薬品の研究開発に成功して, 1990 年代には世界の大手 20 社に含まれる大手医薬品企業へと成長した。この 2 つのバイオ医薬品は,バ イオ医薬品のパイオニアであるアムジェン社が研究も開発も手掛けており,アムジェン社が設立された当 初は,バイオ医薬品の研究と開発が分離していなかったことになる。

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を研究のうえ開発を開始している。2001 年には「Aranesp」が発売され,2002 年には「Neulasta」が発 売されている。「EPOGEN」や「NEUPOGEN」と同様に,この 2 つのバイオ医薬品も,バイオ医薬品の パイオニアであるアムジェン社が研究も開発も手掛けており,これらのバイオ医薬品においても研究と開 発が分離していなかった。 しかしながら,2000 年前後になると,アムジェン社の開発するバイオ医薬品の研究プロセスと開発プ ロセスが分離するようになってきた。具体的には,2002 年にバイオ医薬品の研究を手掛ける Immunex 社を買収して,バイオ医薬品の研究成果(新規生物物質)を手に入れている。同様に,2006 年に Abgenix 社を,2012 年に Micromet 社を,2013 年に Onyx 社を買収して,バイオ医薬品の研究成果(新規生物物質) を手に入れている。 現在のアムジェン社における研究開発製品一覧及び製品別売上高を表 2 に示す。全製品のほぼ半数 (5/11)にあたる5 製品のバイオ医薬品において,研究と開発が分離している。また,現在のアムジェン 社における製品別売上高の 35%(6,685/19,327)は,アムジェン社にて研究を手掛けなかった製品からの 売上高となっている。 前節の計量分析において示されたように,バイオ医薬品の開発技術には技術の継続性があるため,バイ オ医薬品の開発はバイオ医薬品のパイオニアであるアムジェン社が手掛けることができる。一方,バイオ 医薬品の研究技術には技術の継続性がないため,アムジェン社は他社の研究したバイオ医薬品の研究成果 (新規生物物質)を導入せざるを得ない。そのため,大手バイオ医薬品企業であるアムジェン社におけるバ イオ医薬品の研究と開発が分離する傾向にあることが示されたのである。 表 2 アムジェン社の研究開発製品一覧及び製品別売上高 製品名 一般名 研究 2014 年売上高 (百万米ドル) ENBREL etanercept 他社 4,688 Neulasta Pegfilgrastim 自社 4,596 XGEVA / Prolia denosumab 自社 2,251

EPOGEN epoetin alfa 自社 2,031

Aranesp darbepoetin alfa 自社 1,930

NEUPOGEN filgrastim 自社 1,159

Sensipar / Mimpara Cinacalcet 他社 1,158

Vectibix panitumumab 他社 505 Nplate romiplostim 自社 469 Kyprolis Carfilzomib 他社 331 BLINCYTO blinatumomab 他社 3 Other 206 合計 19,327 出所:アムジェン社資料から作成

6.ジェネンテック社の事例分析

本節では,2015 年 8 月 29 日に米国のサンフランシスコにおいて実施した,ジェネンテック社のビジネ スオペレーション担当者へのインタビュー調査に基づく事例分析から,ジェネンテック社におけるバイオ 医薬品の研究技術と開発技術が分離する可能性が高いことを明らかにする。 ジェネンテック社は1976 年に米国のサンフランシスコにおいて設立され,ヒト・インスリン(Human insulin)やヒト成長モルモン(Human growth hormone)の研究を開始した。その後,1985 年発売の Protropin

(ヒト成長モルモン製品)や1987 年発売の Activase(抗血栓剤製品)を皮切りに,ジェネンテック社は自社 において,バイオ医薬品の研究技術から開発技術までを手掛けるバイオ医薬品企業となった。

現在においてもジェネンテック社は,自社において,バイオ医薬品の研究技術から開発技術までを手掛 けており,その基礎研究(研究技術)を担当する研究者は,優れた研究成果さえ出していれば,その研究 活動は全くの自由である。その基礎研究者の研究成果が有名科学雑誌に掲載されていれば,ジェネンテッ

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ク社の経営陣からの関与は一切ないのである。このような特徴は,優れた研究成果を上げているアカデミ ア(大学や研究機関)と全く同じである。 また,研究志向型のバイオ医薬品企業であるジェネンテック社は,インダストリー(医薬品企業)の研 究者よりもアカデミア(大学や研究機関)の研究者を好んで採用する。一般的には,製品化に近い開発にお いては企業での経験が重要であり,企業の研究者が採用されやすく,アカデミアの研究者は開発よりも基 礎研究の方が採用されやすい傾向にある。とはいえ,多くの医薬品企業は基礎研究(研究技術)において もインダストリー(医薬品企業)の研究者を好む傾向が強いため,アカデミア(大学や研究機関)の研究者 を好むという点は,研究志向型のバイオ医薬品企業であるジェネンテック社の大きな特徴である。換言す れば,ジェネンテック社はまだまだ研究志向型のバイオベンチャー企業の気質を残しているのである。 すなわち,多くのバイオ医薬品企業は,自社内の基礎研究(研究技術)から画期的な研究成果(新規生物 物質)を得ることが出来ないため,外部のバイオベンチャー企業やアカデミア(大学や研究機関)から研究 成果を導入せざるを得なくなっている。そのため,バイオ医薬品の研究技術と開発技術が分離する傾向に あるのである。しかしながら,ジェネンテック社は研究志向型のバイオベンチャー企業の気質を維持する ことによって,現在においても自社内の基礎研究(研究技術)から画期的な研究成果(新規生物物質)を生 み出し続けているのである。 このようにバイオ医薬品の研究技術と開発技術が分離していないジェネンテック社においても,研究と 開発が分離する可能性は高くなっている。インタビューを実施したジェネンテック社のビジネスオペレー ション担当者は,ペンシルバニア大学ウォートン・スクールにてMBA(経営学修士)を取得後,米国の大 手医薬品企業であるイーライリリー社にて,研究技術の成果導入に関連する業務を担当してきた。その後, ジェネンテック社に移り,同様の業務を担当している。具体的には,ジェネンテック社において,研究技 術の成果への投資判断業務を担当している。 この投資判断業務においては,研究成果を導入することになり,①博士号を持ち,現在はビジネスを担 当している者,②ファイナンスの担当者,③弁護士,④弁理士,⑤基礎研究所(ラボ)のサイエンティス ト(創薬研究者)の5 名にて,研究成果の導入に向けた M&A チームが編成される。このような M&A チ ームは,研究成果の導入案件ごとに編成され,ファイナンス(財務)の担当者がチームを仕切ることにな る。 およそ10 年前,ジェネンテック社に外部の研究技術に投資するファイナンス部門が設置され,同氏が 公募制により採用された。このことはジェネンテック社においても研究技術と開発技術が分離する可能性 が高いことを示唆するものである。 ジェネンテック社がこれまでに研究開発したバイオ医薬品では研究技術と開発技術が分離していなか ったが,そのジェネンテック社においても,研究技術に投資するファイナンス部門が設置されたという事 実があるのである。このことは,現在でも研究技術と開発技術が分離していないジェネンテック社におい ても,今後発売されるバイオ医薬品では研究技術と開発技術が分離する可能性が高いことを示唆するもの である。

7.おわりに

本研究では,バイオ医薬品企業のパイオニアであるアムジェン社とジェネンテック社の2 社の事例から, このようなバイオ医薬品企業の研究技術と開発技術が分離する傾向にあることを明らかにしてきた。 まずは,バイオ医薬品企業であるアムジェン社の計量分析から,バイオ医薬品の研究技術と開発技術が 分離していることを明らかにし,また,アムジェン社の事例分析からバイオ医薬品の研究技術と開発技術 が分離する傾向にあることを明らかにした。続いて,ジェネンテック社の事例分析から,同社におけるバ イオ医薬品の研究技術と開発技術が分離する可能性が高いことを示した。 すなわち,本研究の結果,バイオ医薬品企業であるアムジェン社では既に研究技術と開発技術が分離し ており,ジェネンテック社では今後に研究技術と開発技術が分離する可能性が高いことが示されたのであ る。

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〈参考文献〉

Binder, G. and Bashe, P. (2008) Science Lessons: What the Business of Biotech Taught Me About Management, Harvard Business School Press.(山崎勝永訳『世界最高のバイオテク企業』日経 BP 社,2015 年)

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Gambardella, A. (1992) Competitive advantages from in-house scientific research: The US pharmaceutical industry in the 1980s, Research Policy, 2(5): 391-407.

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Odagiri, H. and Murakami, N. (1992) Private and quasi-social rates of return on pharmaceutical R&D in Japan, Research Policy, 21(4): 335-345.

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桑嶋健一(2006)『不確実性のマネジメント:新薬創出の R&D の「解」』日経 BP 社。 小久保欣哉(2017)『非連続イノベーションへの解:研究開発型産業のR&D生産性向上の鍵』白桃書房。 菅原琢磨(2002)「製薬企業の研究開発効率性とその決定要因」南部鶴彦編『医薬品産業組織論』,185-212,東京大学 出版会。 宮重徹也(2005)『医薬品企業の経営戦略:企業倫理による企業成長と大型合併による企業成長』慧文社。 ――――(2009)『図解雑学:医薬品業界のしくみ』ナツメ社。 ――――・藤井敦(2014)『医薬品企業の研究開発戦略:分離する研究開発とバイオ技術の台頭』慧文社。 ――――編(2015)『企業との協働によるキャリア教育:私たちは先輩社会人の背中から何を学んだのか』慧文社。 元橋一之編(2009)『日本のバイオイノベーション:オープンイノベーションの進展と医薬品産業の課題』白桃書房。

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