〈論説〉イギリスにおける環境許可制度と市民参加
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(2) 近畿大学法学. 第60巻第1号. NationsEconomicCommissionforEurope,UNECE)に そ の 後,同. 条 約 は2001年10月30日. オ ー フ ス 条 約 は,そ. に発 効 した。. の 前 文 で,「 何 人 も,健. 境 に お い て 生 き る 権 利 を 有 し,現 保 護 し,改. お い て 採 択 さ れ,. 康 と福 祉 に と っ て 十 分 な 環. 世 代 及 び将 来 世 代 の 利 益 の た め に環 境 を. 善 す る 義 務 を 負 う 」 と 明 言 す る と 共 に,そ. の 第1条. に お い て,. 「① 環 境 に 関 す る 情 報 へ の ア ク セ ス 権 」,「 ② 環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 の 参 加 権 」,「③ 環 境 問 題 に 関 す る 司 法 へ の ア ク セ ス 権 」 と い う3つ. の権利を あ ら. ゆ る 者 に 保 障 す る こ と を 目 的 と す る 旨 を 定 め て い る 。 こ れ は 同 条 約 の3本 柱 と して 言 及 さ れ る も の で あ り,3条1項 お い て こ の3本. は,締. 結 国 が それ ぞ れ の 国 内 に. 柱 を 遂 行 す る た め に 必 要 な 制 度 を 構 築 す る よ う 要 求 して い. る 。 な お,「 市 民 に よ る 環 境 情 報 へ の ア ク セ ス が 不 十 分 で あ れ ば 意 思 決 定 に 対 す る 市 民 参 加 は 困 難 に な り,ま. た市 民 参 加 の 結 果 につ いて 異 議 を 唱 え. る 権 利 が な け れ ば 市 民 参 加 権 は 意 味 の な い も の に な る」(2)こと か ら,オ ー フ. \ い。 な お,先 行 研 究 と して は以 下 の もの が挙 げ られ る。 高 村 ゆ か り 「環 境 情 報 へ の ア クセ ス,環 境 に関 す る政 策 決 定 へ の市 民 参 加,及 び,司 法 へ の ア クセ ス に関 す る条 約 」環 境 研 究135号(2004年)79頁. 以 下,同. 「情 報 公 開 と市 民 参 加 に. よ る欧 州 の 環 境 保 護 一 環 境 に関 す る,情 報 へ の ア ク セ ス,政 策 決 定 へ の 市 民 参 加,及 び,司 法 へ の ア クセ ス に 関 す る条 約(オ ー フ ス条 約)と そ の発 展 下,高 下,同. 村 「情 報 公 開」 と引 用)静. 以. 「オ ー フス 条 約 にみ る欧 州 の 情 報 公 開 と市 民 参 加 」 環 境 情 報 科 学32巻2. 号(2003年)30頁. 以 下,大 久 保 規 子 「オ ー フス条 約 とEU環 境 法. 法 案 を 中心 と して 一 」 環 境 と公 害35巻3号(2006年)31頁 新潮流⑳. 以 下,同. ドイ ツ2005年 「環 境 法 の. オ ー フ ス条 約 か らみ た 日本 法 の課 題 」環 境 管 理42巻7号(2006年). 675頁 以 下,後 加,及. 」(以. 岡 大 学 法 政 研 究8巻1号(2003年)178頁. 藤 隆 「環 境 に 関 す る,情 報 へ の ア クセ ス,政 策 決 定 へ の 市 民 参. び,司 法 へ の ア クセ スの 確 保 の 必 要 性 とそ れ らを 前 提 と した 合 意 形 成 手. 法 の 日本 へ の導 入 の 可 能 性 につ い て一 オ ー フ ス条 約 の市 民 参 加 規 定 を 中 心 に」 と う き ょ うの 自治53号(2004年)5頁. 以 下,大 原有 理 「環 境 権 と市 民 参 加. オー. フ ス条 約 の 事 例 か らみ る手 続 的権 利 の可 能 性 」 環境 情報 科 学 論 文 集23巻(2009 年)401頁 以 下,同. 「グ ロー バ ル ・ガ バ ナ ン ス にお け る市 民 参 加 制 度 一 オ ー フス. 条 約 にみ る市 民 参 加 制 度 」 環 境 情 報 科 学 論 文 集24巻(2010年)113頁 (2)Jean-JacquesParadissisandMichaelPurdue,"AccesstoEnvironmental/. 2. 以下等。.
(3) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. ス条 約 の 目指 す 環 境 保 護 を 実 現 す る た め に は,こ れ ら 「3つ の 権 利 の 連 携 が 必 要 不 可 欠 で あ る 」(3)と考 え ら れ て い る ④。. オ ー フ ス条 約 は,「 環 境 領 域 にお け る国 際 的 に最 も重 要 な 新 機 軸 」(5)で あ り,わ が 国 で も 「環 境 保 護 と人 権 とを 関 連 づ け,市 民 と公 権 力 の 民 主 的 な 相 互 作 用 を 通 して 環 境 保 護 を 促 進 しよ う とす る新 しい特 徴 を 有 す る環 境 条 約 で あ る」(6)と評 価 さ れ て い る よ う に,環 境 権(7)の 参 加 権 と い う一 面 を 重 視. し,環 境 保 護 を 目的 と した市 民 参 加 を 促 進 しよ う とす る もの で あ る。 2011年11月23日. の 時 点 で,オ. ー フ ス条 約 の 締 結 国 は45ケ 国 に 及 ん で お り(8),. 市 民 や 環 境 保 護 団体 に よ る環 境 保 護 運 動 が 活 発 で あ り(9),か つ環 境 汚 染 や. \JusticeinUnitedKingdomLaw"inAndrewHarding. ,AccesstoEn-. vironmentalJustice:AComparativeStudy,(BrillAcademicPublications, 2007),p.289. (3)Ibid. (4)わ. が 国 に お い て も,「 行 政 情 報 の 公 開 な ど,判. 断 形 成 に必 要 な 情 報 へ の ア クセ. ス の 確 保 は 参 加 へ の 必 要 条 件 」 で あ り,「 参 加 の 結 果,決 公 正 に 行 な わ れ た か,ま. た,計. す る の が … … 訴 訟 制 度 で あ る 」 と して,こ て い る。 原 科幸 彦編. 定が合理的で社会的 に. 画 が 適 切 に実 行 され て い るか な どの チ ェ ックを れ ら3つ. の 権 利 の 連 携 が 重 要 視 され. 『環 境 計 画 ・政 策 研 究 の 展 開 一 持 続 可 能 な 社 会 づ く り へ の. 合 意 形 成 」(2007年,岩. 波 書 店)48-49頁. 。. (5)MariaLeeandCarolynAbbot,"TheUsualSuspects?PublicparticipationUndertheAarhusConvention"[2003]ModernLawReview 80. (6)高. 村. (7)オ. ー フ ス 条 約 と 環 境 権 と の 関 わ り に つ い て は,林. 「情 報 公 開 」 静 岡 大 学 法 政 研 究8巻1号(2003年)139頁. 境情報提供手法 (2010年)136頁 (8)国. 公 的 登 録 簿 制 度 に つ い て の一 考 察. 。. 晃大. 「イ ギ リ ス に お け る 環. 」 近 畿 大 学 法 学57巻4号. 参照。. 際 連 合 欧 州 経 済 委 員 会 ホー ムペ ー ジ参 照 。 〈http://www.unece.org/env/pp/ratification.html>. (9)そ. の 代 表 的 な も の が,環. 境 の よ うな. 「公 益 」 を 保 護 す る た あ に 市 民 や 環 境 保. 護 団 体 に よ っ て 提 起 さ れ る い わ ゆ る 「公 益 訴 訟 」 で あ る 。 公 益 訴 訟 の 歴 史,判 例,根. 拠 な ど に つ い て 詳 し く は,林. 治58巻2号(2007年)345頁. 晃大. 以下参照。. 3. 「イ ギ リ ス に お け る 公 益 訴 訟 」 法 と 政.
(4) 近畿大学法学. 第60巻第1号. 汚 染 規 制 につ いて 長 い歴 史 を有 して い る(1① イ ギ リス も2005年2月24日. に同. 条 約 を批 准 して い る。 イギ リスで はオ ー フ ス条 約 の 提 示 す る第1の 柱 で あ る 「環 境 に関 す る情 報 へ の ア クセ ス権 」 につ いて,同 条 約 の 批 准 以 前 か ら,王 立 環 境 汚 染 委 員 会(RoyalCommissiononEnvironmentalPollution,以. 下RCEP)(IDに. よ る勧 告 や 市 民 運 動 な どの 影 響 を 受 け,公 的 機 関 の 保 有 す る環 境 情 報 を 積 極 的 ・能 動 的 に提 供 す る 「公 的 登 録 簿 」 が 様 々な 環 境 領 域 に お いて 導 入 さ れ て お り,市 民 や 環 境 保 護 団 体 が 広 く環 境 情 報 に ア クセ スす る こ とが 可 能 で あ っ た⑫。 さ らに,オ ー フ ス条 約 の批 准 を契 機 に イ ギ リス 国 内 にお いて 2004年 環 境 情 報 規 則 ⑱ が 制定 され た こ とに よ り,市 民 が 「公 的 登 録 簿 」 に よ って 提 供 され て いな い よ うな 環 境 情 報 の 開 示 を 広 く公 的 機 関 に対 して 請 求 す る こ とが で き る よ う にな っ たω。 こ の よ う に イ ギ リス で は,「 公 的 登 録 簿 」 に代 表 され る公 的 機 関 に よ る能 動 的 な 「情 報 提 供 」 制 度 を2004年 環 境 情 報 規 則 の よ うな 「情 報 開 示 」 制 度 が 補 完 す る こ と に よ って,市 民 に と っ て 効 果 的 な 環 境 情 報 公 開 制 度 を 構 築 して お り,環 境 リス ク に関 す る市 民 に よ る認 識 の 向 上 につ な が って い る。 先 述 した よ う に,オ ー フ ス条 約 の 目指 す 環 境 保 護 を 実 現 す る た め に は 同. ⑩. イ ギ リスで は,他 の 国 々 に 先 駆 けて17世 紀 後 半 か ら産 業 革 命 を 原 因 とす る大 気 汚 染 や水 質 汚 濁 な どの 環 境被 害 が深 刻 化 して い た。 ま た,こ れ に対 して,1863 年 に は世界 で最 初 の環 境汚 染規 制 を行 う行 政 機 関で あ る 「ア ル カ リ検 査 団(Alkali Inspectorate)」 が設 立 さ れ て お り,同 国 は行 政 に よ る汚 染 規 制 を い ち早 く行 お う と した 国 の1つ で あ る と言 う こ とが で き る。. (ll)RCEPに. つ い て詳 し くは,林. ・前 掲 注(7)160頁 以 下 参 照 。. (12)イ ギ リス にお け る環 境 情 報 公 開 の 歴 史 につ いて,ま. た 環 境 情 報 提 供 制 度 の1. つ で あ る 「公 的 登 録 簿 」 につ い て,詳 細 は林 ・前 掲 注(7)135頁 以 下 参 照 。 q3>EnvironmentalInformationRegulations2004 ⑭2004年. 環 境 情 報 規 則 に基 づ く環 境 情 報 開示 制 度 に つ い て の 詳 細 は,林 晃 大. 「イギ リス に お け る環 境 情 報 開 示 と2004年 環 境 情報 規 則」近 畿 大 学 法 学58巻2・ 3号(2010年)481頁. 以下参照。. 4.
(5) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. 条 約 の 提 示 す る3つ の 権 利 の 連 携 が 必 要 不 可 欠 で あ る こ とか ら,イ ギ リス 国 内 に お いて も,第1の. 柱 と 同様 にオ ー フ ス条 約 の 第2の 柱 で あ る 「環 境. 意 思 決 定 へ の 市 民 の 参 加 権 」 の 保 障 も重 視 され て い る。 わ が 国 に お い て も,近 年,「 市 民 の 価 値 観 が多 様 化 す る中 で,行. 政のみ. で す べ て の意 思 決 定 を 行 う こ とが 困難 」⑮ に な って お り,様 々 な領 域 に お け る行 政 意 思 決 定 に 対 す る市 民 参 加 が重 視 され て い る。 そ の よ うな 中,「 議 会 が 確 定 した枠 組 み の な か で,方 針 や 計 画 と い った 一 般 的 決 定,ゾ ー ニ ン グ指 定 や 拘 束 的 計 画 と い っ た一 般 処 分,お. よ び,申 請 に対 す る処 分 や 不 利. 益 処 分 と い っ た具 体 的 決 定 の 場 面 に お いて,そ れ が よ り高 次 の 基 本 方 針 や 基本 計画,そ して,根 拠 法 や関係法 令 との 関係で妥 当 ・適法 で あ るか を チ ェ ッ ク し,ま た そ の 内容 形 成 に参 画 す る機 会 が与 え られ る こ とが重 要 で あ る」(1④ と指 摘 され て い る よ う に,市 民 参 加 の 必 要 性 は,環 境 領 域 にお け る様 々な 場 面 で の 行 政 意 思 決 定 につ いて も妥 当す る と考 え られ る⑰。 しか しな が ら, 「国 民 ・住 民 が 環 境 保 全 に つ いて 法 的主 体 性 を 認 め られ て い な い こ と,参 加 権 も保 障 され て いな い こ とが … … わ が 国 の 実 定 環 境 法 の 最 大 の 欠 点 で あ る」⑱ と言 及 され て い るよ うに,わ が 国 に お け る環 境 意 思 決定 へ の市 民 参 加 権 は十 分 に発 展 して い る と は言 い難 く,市 民 参 加 が 認 め られ る領 域 にお い て も,「 運 用 上 従 来 の 行 政 に よ る情 報 提 供,そ. れ に対 す る市 民 の意 見 提 出. と い う形 式 的 な や りと りか らは進 ん だ もの と はな って い な い」⑲ と指 摘 され ⑮. 織 朱 實 「環 境 政 策 に お け る市 民 参 加 制 度:米. 国環 境 法 施策 に お け る市 民 参 加. 制 度 の 概 要 」 環 境 情 報 科 学32巻2号(2003年)24頁 q6)北 村 喜 宣 「環 境 法 」(弘 文 堂,2011年)95頁 ⑰. わ が 国 にお い て は,例. 。 。. え ば,開 発 事 業 に よ る環 境 の 影 響 を 事 前 に評 価 す る環. 境 影 響 評 価 制 度 にお いて,環. 境 影 響 評 価 方 法 書 等 の 公 告 ・縦 覧 及 びそ れ に対 す. る意 見 書 の 提 出 の 仕 組 が 盛 り込 まれ て い る。 岩 田 元 一 「ヨー ロ ッパ にお け る水 環 境 政 策 へ の市 民 参 加 の仕 組 と環 境 情 報 の役 割」 国 際情 報 研 究(日 本 国 際 情 報 学 会 誌)4号(2007年)1頁. 。. q8)阿 部 泰 隆 ・淡 路 剛 久 『環 境 法(第4版)』(有 ⑲. 織 ・前 掲 注 ⑮24頁 。. 5. 斐 閣,2011年)39頁. 。.
(6) 近畿大学法学. 第60巻第1号. る と こ ろで あ る。 それ で は,環 境 汚 染 や汚 染 規 制 につ いて 長 い歴 史 を有 す る イギ リス で は, オ ー フ ス条 約 の 第2の 柱 で あ る 「環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 の 参 加 権 」 の 保 障 につ いて どの よ うな 対 策 が と られ て い るの だ ろ うか 。 イギ リスで はオ ー フ ス条 約 の 批 准 前 か ら環 境 意 思 決 定 に対 す る市 民 参 加 制 度 の 積 極 的 な 構 築 が 行 わ れ て き たが,現 在,政 府 の 方 針 に よ って,特. に個 別 の 実 施 段 階,つ. ま. り環 境 許 可 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 の 促 進 に歯 止 めが か け られ て い る。 本 稿 は,こ の よ う な イギ リス に お け る環 境 意 思 決定 へ の市 民 参 加 制 度 につ い て, その 歴 史 展 開 や 現 行 制 度 の 詳 細,市 民 参 加 の 意 義 や その 実 態 を 考 察 す る こ と に よ り,わ が 国 の 制 度 に対 す る示 唆 を 与 え よ う と した もの で あ る。 第1章 で は,現 在 の 市 民 参 加 制 度 を 検 討 す る前 提 と して,イ ギ リス に お け る環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 の 歴 史 を 国 際 的 動 向 を 踏 まえ な が ら考 察 す る。そ の後,第2章. にお いて は,環 境 意 思 決 定 に対 す る市 民 参 加 の 中 で も,. 特 に現 在 の イギ リスで 大 きな 変 革 が 進 行 中で あ る環 境 許 可 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 につ いて,イ. ン グ ラ ン ド及 び ス コ ッ トラ ン ドの 制 度 を 対 比 す る形 で. 分 析 した上,第3章. に お いて 市 民 参 加 制 度 の 実 態 につ いて の 検 討 を 行 う。. 第1章. 環境意思決定に対する市民参加. イギ リスで は,20世 紀 末 か ら21世 紀 初 頭 にか けて,環 境 意 思 決 定 に対 す る市 民 参 加 が 促 進 され て い くこ と とな る。 市 民 参 加 促 進 の 契 機 は,イ ギ リ ス国 内 に お け る動 向 と国 際 的 な 動 向 が 同時 進 行 的 に作 用 した もの で あ る。 そ こで 本 章 で は,環 境 許 可 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 につ いて 検 討 す る前 提 と して,市 民 参 加 の 歴 史 を イギ リス国 内 お よ び国 際 的 な 動 向 を 踏 まえ な が ら 考 察 す る。. 6.
(7) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. 第1節. イ ギ リス国 内 にお け る市 民 参 加 の 促 進. イギ リスで は長 期 間 にわ た り一 定 領 域 に お け る行 政 意 思 決 定 に対 して 市 民 参 加 が 積 極 的 に認 め られ て き た。 その 典 型 的 な もの と して,都 市 計 画 領 域 に お け る開 発 許 可 申請 に対 す る コ ミュニ テ ィー や 市 民 の 参 加 が 挙 げ られ る。 開 発 許 可 申請 に関 して は,申 請 の 受 理 か ら許 可 が 付 与 され る まで の 審 査 過 程 に お いて 市 民 参 加 が 認 め られ て お り⑳,こ の よ うな市 民 参 加 は,「 都 市 開 発 計 画 や よ り多 くの 戦 略 的 な 問 題 に対 して 市 民 が 意 見 を 提 出す る多 く の 機 会 を 提 供 して い る」⑳ と して一 定 の評 価 を受 け て い た。 一 方 ,都 市 計 画 領 域 に お け る市 民 参 加 が 長 い歴 史 を 有 して い るの に対 し て,「 環 境 規 制 領 域 にお いて 市 民 は締 め 出 さ れ」⑳ て きた㈱。 都 市 計 画 領 域 と は異 な り,環 境 規 制 制 度 の 大 部 分 が 「未 発 達 な 通 知 ・協 議 手 続 しか 有 し て お らず,環 境 保 護 に関 す る決 定 は一 般 市 民 に よ る助 言 な く,専 ら専 門 家 に よ って の み 判 断 が行 わ れ て い た」⑫ のの で あ る。そ の 理 由 と して,環 境 意 思. ⑳. イギ リスで の 都 市 計 画 領 域 に お け る 開発 許 可 申請 及 び そ れ に 対 す る市 民 参 加 に つ い て 詳 し く は,岡. 村周一. 「イ ギ リ ス 計 画 法 に お け る 『開 発 」 の 概 念(1)・(2)」. 法 学 論 叢139巻1号,2号(1996年)1頁. 以 下,洞. 澤秀雄. 「持 続 可 能 な 発 展 と イ. ギ リ ス 都 市 計 画 法 制 度 改 革 」 札 幌 学 院 法 学24巻1号(2007年)51頁 「都 市 計 画 に お け る 調 整 ・協 議 に 関 す る 一 考 察:イ に 」 札 幌 学 院 法 学26巻1号(2009年)43頁. 以 下,和. 可 制 度 の 概 要 と 近 年 の 動 向 」 東 北 法 学28号(2006年)1頁 「英 国(イ. ン グ ラ ン ド)地. (2005年)98頁. 以 下,岡. 8号(2004年)68頁. 以 下,同. ギ リス計 画 許 可 制 度 を 題 材 泉 田 保 一・ 「イ ギ リ ス 計 画 許 以 下,藤. 岡啓太郎他. 方 に お け る 都 市 計 画 体 系 の 変 化 」 都 市 計 画54巻5号. 本裕豪. 「英 国 都 市 計 画 制 度 の 改 正(概. 要)」 新 都 市58巻. 以下等参照。. ⑳StuartBell&DonaldMcGillivray,EnvironmentalLaw,7thed., (OxfordUniversityPress,2008)p.311. ⑳JennySteele,"ParticipationAndDeliberationinEnvironmental Law:ExploringAProblem-SolvingApproach"[2001]210xfordJournal ofLegalStudies418. ㈱. 一 部 環 境 領 域 にお いて は環 境 影 響 評 価 を 通 じた市 民 参 加 が 行 われ て い た。 環 境 影 響 評 価 につ いて は後 述 す る。. ⑳StuartBell&DonaldMcGillivray,op.cit.,p.311.. 7.
(8) 近畿大学法学. 第60巻第1号. 決 定 の 持 つ 技 術 的 な 性 質,産 業 界 と規 制 当局 の 間 の 癒 着 関 係,環 境 基 準 の 設 定 に関 す る広 い裁 量 な どが 挙 げ られ て い る㈱。 イ ギ リス に お い て は,「 環 境 に対 す る市 民 の 関 心 は疑 い よ う もな く増 して お り,特 に子 供 た ちの 環 境 問 題 へ の 理 解 は よ り高 い もの にな って い る に もか か わ らず … …,産 業 や 工 業 と い った環 境 に 影 響 を与 え る活 動 よ り も,(都 市 計 画 領 域 に お け る)開 発 許 可 の方 が 市 民 に と って 明 らか な 関心 事 で あ る と受 け取 られ て いた 」㈱ こ とか ら,都 市 計 画 領 域 と環 境 規 制 領 域 それ ぞ れ に お け る市 民 参 加 制 度 の 構 築 に は大 きな 差 が あ っ た と され る。 しか しな が ら,こ の よ うに 環 境 規 制 領 域 に お け る市 民 参 加 に消 極 的 で あ っ た イギ リス も,20世 紀 末 か ら21世 紀 初 頭 にか けて,次 第 に市 民 参 加 促 進 の 動 きを 活 発 化 させ て い く。1998年 の オ ー フ ス条 約 採 択 後,2005年. の批. 准 まで の 間,イ ギ リスで は環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 の 重 要 性 につ いて の 提 言 が数 多 く行 わ れ て き た。 例 え ばRCEPは,1998年. の 「環 境 基 準 の 設. 定 」 と題 した 第21報 告 書 に お い て,「 市 民 の意 見 は 環 境 政 策 や環 境 基 準 に 関 す る決 定 に必 要 不 可 欠 な 要 素 で あ る。 市 民 の 環 境 に対 す る意 見 は,… … 十 分 な 情 報 に基 づ く熟 考 と討 論 の 産 物 で あ り,こ れ らが 考 慮 され る た め に は,… … 現 行 の 協 議 及 び参 加 手 続 を 拡 大,補 完 す る た め に必 要 な 手 段 を 講 じる必 要 が あ る。 … … ま た市 民 参 加 は,政 策 を 公 表 した り,重 大 な 討 論 を 促 進 した り,政 策 の 実 行 可 能 性 や 望 ま しさ につ いて 広 範 囲 にわ た る意 見 を 導 き出 す た め に重 要 な 役 割 を 担 う」⑳ と勧 告 して お り,市 民参 加 の重 要 性 や 必 要 性 を主 張 す る。 ま た,1999年. に イギ リス政 府 が 発 行 した 「持 続 可 能 な. ⑳Ibid. ⑳JeremyRowan-Robinson,AndreaRoss,WilliamWaltonandJulie Rothnie,"PublicAccesstoEnvironmentalInformation:AMeansto WhatEnd?"[1996]8JournalofEnvironmentalLaw28. ⑳RoyalCommissiononEnvironmentalPollution21stReport(1998) SettingEnvironmentalStandards,Cmnd4053.. 8.
(9) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. 発 展 戦 略 一 質 の 高 い 生 活 一 」 と い う報 告 書 も,「 透 明 性,情. 報,参. 加,司. 法 へ の ア ク セ ス 」㈱ が 環 境 意 思 決 定 の た め に必 要 不 可 欠 な プ ロ セ ス で あ る と 述 べ て い る。 こ の よ う に イ ギ リ ス に お い て 市 民 参 加 促 進 の 提 言 が 行 わ れ る 契 機 は,「 政 府 が 行 う科 学 的 助 言 に 対 す る 国 民 か ら の 不 信 感 の 増 加 に あ る 」⑳ と考 え られ て い る 。 こ れ は,イ. ギ リ ス 政 府 が 畜 牛 に 対 す るBSEと. 人 間に対す るクロ. イ ツ フ ェ ル ト ・ヤ コ ブ 病 の 関 連 性 を 否 定 し た 数 年 後 に 一 転 して そ れ を 肯 定 し た い わ ゆ る 「狂 牛 病 問 題 」 に よ っ て 表 面 化 し た ⑳。 こ の よ う な 不 信 感 に 対 す る 解 決 策 の1つ. が 市 民 参 加 の 促 進 で あ り,RCEPは. 「環 境 計 画 」 と 題. し た 第23報 告 書 に お い て,「 市 民 か ら の 信 頼 を 高 め る こ と が 市 民 参 加 の 目 的 で あ る 」㊨1)と述 べ て い る 。 イ ギ リ ス 政 府 に 対 す る 国 民 か らの 不 信 感 が 増 す 中,政 え 生 物(GeneticallyModifiedOrganisms,以 い て,環. 下GMO)を. 府 は,遺. 伝子組換. 巡 る議 論 にお. 境 意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 を 重 視 す る 態 度 を 明 らか に して い る 。 政. 府 は2000年. に 農 業 と環 境 に 関 す る バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー の 発 展 に 伴 う社 会 的 ・. 倫 理 的 問 題 を 検 討 す る た め,「 農 業 環 境 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー 委 員 会(AgricultureandEnvironmentBiotechnologyCommission,以. 下AEBC)」. 働を. ⑳uKsustainableDevelopmentstrategy,ABetterQualityofLife(1999), para.4.1. ⑳MariaLeeandCarolynAbbot,op.cit,,[2003]ModernLawReview, P.94. ⑳Ibid. ⑳RoyalCommissiononEnvironmentalPollution23rdReport(2002) EnvironmentalPlanning,Cmnd5459. ㊤2)AEBCは,有 研 究 者,GMOに. 機 栽 培 農 家,遺. 伝 子 組 換 え 作 物 を 扱 う 農 家,GMOに. の 普 及 に 否 定 的 な 活 動 家 な ど,GMO問. 点 を 有 す る 者 か ら 構 成 さ れ,GMOに. 関す る. 題 につ いて 様 々な 視. 関 す る 諸 問 題 に つ い て 広 く協 議 を 行 っ て. い る。. 9.
(10) 近畿大学法学 設 立,AEBCは. 第60巻第1号 イ ギ リス 政 府 に対 す る提 言 を 組 み 込 ん だ 「遺 伝 子 組 換 え 作. 物 の 商 業化 につ いて の 議 論 」㈱ と い う報 告 書 を作 成 して お り,イ ギ リス環 境 食 糧 農 林 省(DepartmentforEnvironment,FoodandRuralAffairs,以 下DEFRA)は. 同 報 告 書 に 応 じる形 で 「GMOに. 公 開 討 論 」剛 の 開催 を発 表 した。公 開 討 論 は,GMOに. 関 す る諸 問 題 につ いて の 関 す る行 政 の 意 思 決. 定 につ いて,市 民 か らの 質 問 を 受 け た り,市 民 に情 報 を 与 え る こ とを 目的 と して 行 な わ れ る もの で あ り,政 府 か ら独 立 した委 員 会 の 運 営 に よ って 市 民 が 何 らか の 意 見 を 述 べ る機 会 を 与 え て い る絢。 AEBCは. 公 開 討 論 の核 と して,「 地 域 コ ミュニ テ ィー に お け る草 の 根 的. な 討 論 を 行 っ た上 で その 地 域 コ ミュニ テ ィー の 代 表 者 を 含 む 地 方 そ して 全 国 単 位 で の 討 論 会 を 行 う こ と,そ. して 利 害 関 係 者 を 討 論 会 に参 加 させ な い. こ と」㈱ を主 張 した。一 方,DEFRAは. 草 の 根 的 な討 論 会 につ い て は支 持 し. た もの の,「 利 害 関 係 者 も参 加 せ る こ とが 望 ま しい即 と した上,さ. らに. 「公 開 討 論 の 中 で遺 伝 子 組 換 え作 物 栽 培 の 費 用 便 益 分 析 及 び科 学 的 問 題 の 審 査 を行 うべ きで あ る」劔 と主 張 して い る。 これ につ い てMariaLeeand CarolynAbbotは,「. 公 開 討 論 に… … 『専 門 家 』 が 関 わ る こ と に よ って,. 公 開討 論 が彼 らに独 占 され て しま う危 険性 が あ る」紛 と指 摘 して い るが,こ の よ う に 「全 国 単 位 で 行 わ れ る公 開 討 論 は イギ リス に お け る環 境 意 思 決 定. ⑬AgricultureandEnvironmentBiotechnologyCommission,"ADebate AboutthePossibleCommercialisationofGMCrops"(2000) ③DDepartmentforEnvironment,FoodandRuralAffairs,"PublicDialogueonGM"(2000) (35>Ibid,,para.5. ㊤③AEBC,opcit.,para.18. ㊤7)DEFRA,opcit.,para.8. (38>Ibid,,para.16. ㈲MariaLeeandCarolynAbbot,op.cit.,[2003]ModernLawReview, P.95.. 10.
(11) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. の 重 要 な 新 機 軸 で あ る」㈲ と評 価 す る。 そ して,「GMOに. 関 す る公 開 討 論. は,広 範 囲 にわ た る環 境 政 策 に関 す る市 民 参 加 につ いて の 政 府 の 態 度 の 変 化 の 指 標」ω とな り,AEBCの. 助 言 に対 す るDEFRAの. 回答 は,「政 府 と市. 民 との 間 の情 報 交 換 が 重要 で あ る とみ な さ れ て い る こ との証 拠 」⑫ で あ る と され て い る。 この よ う に,こ れ まで 市 民 参 加 が その 中核 に あ る と考 え られ て いた 都 市 計 画 領 域 の み な らず,環 境 規 制 領 域 に お いて も イギ リス政 府 は市 民 参 加 の 重 要 性 を受 け入 れ 始 め て き た。GMOに. つ い て の 公 開討 論 は法 規 則 の 枠 外. で 開 催 され る もの で あ っ たが,同 時 に様 々な 環 境 関 連 法 規 が 環 境 意 思 決 定 へ の市 民 参 加 制 度 を導 入 す る こ と とな る。 例 え ば,2000年 (イ ン グ ラ ン ド及 び ウ ェー ル ズ)規 則 ㈲ は,あ 「あ らゆ る者(anyperson)」. 汚 染防止規 制. らゆ る 許 可 申請 に つ い て,. に意 見 提 出 の機 会 を与 えて い る。 イギ リス に. は環 境 意 思 決 定 に対 す る市 民 参 加 を 認 め る一 般 法 は存 在 しな いが,環 境 規 制 に関 す る様 々な 法 規 則 が 個 別 に市 民 参 加 権 を 保 障 して い るの で あ る。. 第2節. オ ー フ ス条 約 の 批 准 とイ ギ リスの 動 向. 前 節 で 見 た よ う に,イ ギ リスで は政 府 に対 す る不 信 感 を 理 由 に,環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 制 度 が 構 築 され て い くこ と とな るが,そ れ と 同時 に国 際 的 に も市 民 参 加 が 重 視 され 始 め,イ ギ リス は この 流 れ を 受 け入 れ な が ら ます ます 市 民 参 加 制 度 を 充 実 させ て い くこ と とな る。 イ ギ リス が2005年 に 批 准 したオ ー フ ス条 約 は,そ の 前 文 に お い て,「 環 境 領 域 に お いて,情 報 へ の ア クセ ス及 び意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 の 改 善 が, ωIbid. qDIbid.,p.96. q2)Ibid. ㈹PollutionPreventionandControl(EnglandandWales)Regulation 2000な. お,同. 規 則 に 基 づ. く市 民 参 加 に つ い て は 後 述 す る 。. 11.
(12) 近畿大学法学. 第60巻第1号. 意 思 決 定 の 質 を 高 め,か つ 実 施 を 促 進 し,環 境 問 題 につ いて の 市 民 の 意 識 の 向上 に寄 与 し,市 民 が その 懸 念 を 表 明 す る機 会 を 提 供 し,そ の よ うな 懸 念 に対 して 公 的 機 関 の 適 切 な 考 慮 を 可 能 にす る」 と明 示 して お り,決 定 の 質 を高 め,決 定 が 正 当な もの とな る こ とを 確 保 す る た め に,環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 が 重 要 で あ る とす る㈹。 同条 約 は第2の 柱 で あ る 「環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 の 参 加 権 」 につ いて, 「① 特 定 の 活動 に 関 す る意 思 決 定 へ の市 民 参 加(6条)」,「 計 画,プ. ロ グ ラ ム,政 策 に 関 す る市 民 参 加(7条)」,「. 規 則 や 規 範 的 文 書 の 策 定 段 階 で の 市 民 参 加(8条)」,と. ② 環 境 に関 す る ⑧ 環 境 関係 の 行 政 い う3つ の 段 階 に. お け る市 民 参 加 につ いて の 規 定 を 置 いて い る。. (1)オ ー フ ス条 約6条 一 許 可 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 「特 定 の 活 動 に 関 す る意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 」 に つ い て 定 め て い るオ ー フ ス条 約6条. は,そ. の第1項. にお いて,市. 民 参 加 の 対 象 を,「(a)附 属 書1. に挙 げ られ た活 動 の 計 画 を 許 可 す べ きか 否 か の 決 定 … …,お. よ び(b)附属 書. 1の 一 覧 表 に はな いが,環 境 に重 大 な 影 響 を 与 え る お それ の あ る活 動 の 計 画 につ いて の 決 定 」㈲と して お り,附 属 書1に 生 産 及 び処 理,セ. は,エ ネ ル ギ ー部 門,金 属 の. メ ン ト窯 業,化 学 産 業,廃 棄 物 管 理,一 定 規 模 以 上 の 排. 水 処 理 施 設,工 業 施 設,一 定 規 模 以 上 の 空 港 ・道 路 の 建 設 な ど環 境 へ の 影 響 が 比 較 的 大 きな 事 業 が 挙 げ られ て い る。 同条 は,市 民 参 加 の 対 象 を,環 境 に対 して 重 大 な 影 響 を 与 え る お それ の あ る活 動 に関 す る許 可 決 定 に限 定 して い る と言 う こ とが で き㈲,こ れ は 許 可 決 定 過 程 へ の市 民 参 加 を 促 進 す る規 定 で あ る と解 釈 す る こ とが で き る。. 幽Jean-JacquesParadissisandMichaelPurdue,op.cit.,p.299. ㈲AarhusConvention,Art.6(1). ㈹Jean-JacquesParadissisandMichaelPurdue,op.cit.,p.299.. 12.
(13) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. さ らに オ ー フス 条 約 は,「(許 可 申請 に関 して)『 関 心 を持 つ 市 民 』 は, 公 告 に よ るか,も. し くは それ が 適 切 で あれ ば個 別 に,環 境 に関 す る意 思 決. 定 過 程 の 初 期 に,か つ,適 切 で,時 宜 を 得 て,効 果 的 に,(a)活 動 の 計 画, お よ び それ につ いて 決 定 が な され る活 動 の 申請,(b)決 定 見 込 み も し くは決 定 草 案 の 内容,(c)決 定 に責 任 を 負 う公 的 機 関,(d)予 定 され る手 続,(e)活 動 が 国 内の あ る い は国 境 を 越 え た環 境 影 響 評 価 手 続 の 対 象 とな るか ど うか, につ いて 知 ら され ね ば な らな い」㊨ とす る規 定 を置 く。つ ま り,こ こで の 市 民 参 加 の 対 象 者 は利 害 関 係 者 に限 定 され るわ けで はな い。 また,市 民 参 加 の 時 期 に 関 して も,「 様 々 な選 択 肢 が あ り,効 果 的 な 市 民 参 加 が可 能 で あ る場 合 には,初 期 段 階 で の市 民 参 加 を提 供 しな けれ ば な らな い」姻 と して お り,こ れ らの 規 定 に よ り環 境 許 可 決 定 過 程 へ の 効 果 的 な 市 民 参 加 が 促 進 さ れ て い る。 また,「 締 結 国 は,必 要 に応 じて,許 可 を 申請 し よ う とす る者 に対 し,『 関心 を 持 つ 市 民 』 を特 定 し,討 議 を行 い,申 請 の 目的 に関 して 情 報 を 提 供 す る こ とを 奨 励 す べ きで あ る」㈹ と さ れ る。 オ ー フ ス条 約6条7項. は市 民 参 加 の 手 段 につ い て,「 市 民 参 加 の手 続 で. は,市 民 が 活 動 に関 連 して い る と考 え る意 見,情 報,分 析 又 は見 解 を 文 書 で,ま. た必 要 に応 じて 公 聴 会 も し くは 申請 者 の 聴 聞 会 にお いて,市 民 が 提. 出す る こ とを認 め な け れ ば な らな い」励 と規 定 して い る。 これ に よ り,最 低 限,市 民 に は文 書 で の 意 見 提 出の 権 利 を 付 与 しな けれ ばな らな い こ と とな るが,ど の よ うな 場 合 に公 聴 会 や 聴 聞 会 が 認 め られ るか につ いて は,締 結 国 の 裁 量 に委 ね られ て い る と考 え る こ とが で き る。 ま た市 民 参 加 の 結 果 が いか に環 境 意 思 決 定 に反 映 され るか が 重 要 とな っ. q7)AarhusConvention,Art.6(2). ㈹Ibid.,Art.6(4). ㈲Ibid.,Art.6(5). (5①Ibid.,Art.6(7).. 13.
(14) 近畿大学法学. 第60巻第1号. て くる こ とか ら,オ ー フ ス条 約6条8項. は,「 締 結 国 は,決 定 にお いて,. 市 民 参 加 の 結 果 に関 す る適 切 な 考 慮 が な され る こ とを 確 保 しな けれ ばな ら な い」6Dと規 定 す る。市 民 参 加 の結 果 に関 す る 「適 切 な考 慮 」の 要 求 は,行 政 に よ る最 終 決 定 に お いて 市 民 の 意 見 が 無 視 され る こ とが な い よ う意 図 さ れ た もの で あ るが,MariaLeeandCarolynAbbotは,「. 『適 切 な 考 慮 』 と. い う文 言 が 市 民 参 加 の 結 果 に強 力 な 地 位 を 与 え て い るの か,そ れ と も市 民 参 加 の 結 果 が単 な る 『考 慮要 素 』 に過 ぎな いの か につ い て は議論 のあ る とこ ろで あ る」⑫ とす る。 そ して最 終 的 に,「 締 結 国 は,公 的 機 関 が決 定 を行 った 場 合,市. 民が適. 切 な 手 続 に従 って 速 や か に その 結 果 を 知 らされ る こ とを 確 保 しな けれ ばな らず,ま. た,そ の 決 定 の 基 礎 とな っ た理 由及 び考 慮 した事 項 と共 に決 定 文. 書 に市 民 が ア クセ スす る こ とが で き る よ う に しな けれ ばな らな い」㈲。 イギ リス に お いて は,環 境 許 可 の 付 与 につ いて は その 理 由が 提 示 され ず,ま. た. 規 制 当局 も拒 否 処 分 が 行 わ れ た時 にの み その 理 由を 文 書 で 提 示 す る こ とを 慣 例 と して い た勧 た め,こ の 規 定 が イギ リス国 内で 導 入 され る こ と にな れ ば,同 条 約 に よ って 環 境 許 可 の 付 与 につ いて も理 由提 示 義 務 が 課 され た こ と に は大 きな 意 義 が あ る と考 え られ る。 な お,本 稿 第2章 以 降 で 検 討 す る 「環 境 許 可 決 定 過 程 へ の市 民参 加 」 は,オ ー フス条 約6条 の規 定 を実 現 した もの で あ る飼。. (5DIbid,,Art.6(8). 働MariaLeeandCarolynAbbot,op.cit.,[2003]ModernLawReview, P.97. (53AarhusConvention,Art.6(9). ⑳MariaLeeandCarolynAbbot,op.cit.,[2003]ModernLawReview, P.97. ㈲. な お,オ. ー フ ス 条 約6条. の 規 定 す る 市 民 参 加 は,同. 条 約 の 批 准 以 前 か らイ ギ. リス 国 内 に お い て 環 境 影 響 評 価(EnvironmentalImpactAssessment)と う 形 で 一・ 部 環 境 領 域 に お い て 実 現 さ れ て い た 。 イ ギ リ ス で は,環. 14. い 境 影 響 評 価 の/.
(15) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. (2)オ. ー フ ス 条 約7条. 一 環 境 に 関 す る 計 画,プ. ロ グ ラ ム,政. 策策定への. 市民参加 オ ー フ ス条 約6条. はす で に基 本 的 な政 策 や 計 画 の策 定 が 行 わ れ た後 の. 個 々 の 許 可 段 階 に お け る 市 民 参 加 に つ い て 扱 っ た も の で あ っ た6⑤。 そ れ に. 対 して,第7条. は,「 各 締 結 国 は,必 要 な情 報 を 市 民 に提 供 した 上 で,透. 明 か つ 公 正 な 枠 組 み で,環 境 に関 連 す る計 画 や プ ロ グ ラ ムの 準 備 段 階 で の \ 対 象 と な る 事 業 を 行 お う と す る 者 は,許 る直 接 的 ・間 接 的 な 影 響,環 statement)を. 可 決 定 の 前 に 事 業 の 詳 細,環. 境 に対 す. 境 被 害 軽 減 策 な ど を 記 し た 環 境 評 価 書(environment. 準 備 し な け れ ば な ら な い と さ れ て お り,市. か の 決 定 を 行 う 前 に 環 境 評 価 書 を 閲 覧 し,意. 民は規制当局が何 ら. 見 を 提 出 す る こ とが 認 め られ て い. る の で あ る 。 こ の よ う な イ ギ リ ス に お け る 環 境 影 響 評 価 制 度 は,1947年 村 計 画 法(TownandCountryPlanningAct1947)を 法 の 下 で は,土 て,環. 都市農. 発 端 と し て お り,同. 地 利 用 計 画 策 定 と 施 設 の 開 発 許 可 の 段 階 で,市. 民参加手続を経. 境 へ の 影 響 や 施 設 の 必 要 性 が 判 断 さ れ る こ と に な っ て い た 。 ま た,イ. リス で の 環 境 影 響 評 価 制 度 は,85/337/EEC指. ギ. 令(CouncilDirective85/337/. EECof27June19850ntheAssessmentoftheEffectsofCertainPublic andPrivateProjectsontheEnvironment)が. 採 択 さ れ て 以 降,様. 々な 環. 境 領 域 に お け る 開 発 許 可 を 対 象 と し て 広 が っ て い く こ と と な る 。 な お,オ ス 条 約 の 批 准 を 受 け て85/337/EEC指. 令 は2003/35/EC指. ー フ. 令(Directive. 2003/35/ECoftheEuropeanParliamentandoftheCouncilof26 May2003providingforPublicParticipationinrespectofthedrawing upofcertainplansandprogrammesrelatingtotheenvironment andamendingwithregardtopublicparticipationandaccesstojustice CouncilDirectives85/337/EECand96/61/EC)に. 改 正 さ れ て い る。 な お. 本 稿 は 環 境 許 可 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 に 焦 点 を 当 て る た め,主. に 「開 発 許 可 」. に関 す る市 民 参 加 制 度 で あ る環 境 影 響 評 価 に つ い て は複 雑 化 を 避 け る意 味 で も 取 り扱 わ な い。 イ ギ リス にお け る環 境影 響 評 価 につ い て の 先 行 研 究 と して は以 下 の も の が 挙 げ ら れ る 。大 塚 直 「経 済 先 進 国 に お け る 環 境 ア セ ス メ ン トの 現 状 」 環 境 情 報 科 学25巻4号(1996年)7頁. 以 下,吉. 居秀樹. 「イ ギ リス 都 市 農 村 計 画. 法 制 下 に お け る 環 境 ア セ ス メ ン ト」 長 崎 県 立 大 学 論 集26巻3号(1993年)65頁 以 下,朝. 賀広伸. 響 評 価 規 則(未. 「英 国 に お け る 最 近 の ア セ ス メ ン ト制 度 の 展 開2001年 開 墾 地 ・半 自 然 地 域,イ. ン ト学 会 誌2巻1号(2004年)83頁. ン グ ラ ン ド)を. 以下等。. 鮒MariaLeeandCarolynAbbot,op.cit.,[2003]ModernLawReview, p.100.. 15. 環境影. 中心に」環境アセ スメ.
(16) 近畿大学法学. 第60巻第1号. 市 民 参 加 の た め の 適 切 な,実. 務 的 お よ び/ま. た は そ の 他 の 規 定 を 策 定 しな. け れ ば な らな い 」㈱ と 規 定 し て お り,環 境 に 関 す る 計 画,プ. ロ グ ラ ム,政. 策. 策 定 段 階 で の 市 民 参 加 を 促 す もの で あ る と言 え る。 さ らに 同条 につ いて は 「6条3項,4項,7項. の 規 定 が 適 用 さ れ な け れ ば な ら な い 」㈱ と して い る. が,第7条. と の 関 係 に お い て 最 も 重 要 だ と 考 え られ る の が. が あ り,効. 果 的 な 市 民 参 加 が 可 能 で あ る 場 合 に は,初. を 提 供 しな け れ ば な らな い 」⑲ と い う6条4項 第7条. 「様 々 な 選 択 肢. 期段階での市民参加. の 規 定 で あ る 。 こ れ に よ り,. の 規 定 に 実 行 性 が 付 与 さ れ,「 既 に 何 ら か の 計 画 が 策 定 さ れ た 後 で. は な く,計. 画 の 策 定 段 階 で の 市 民 参 加 が 可 能 に な る 」鋤 の で あ る 。. オ ー フ ス 条 約7条. の 規 定 を 受 け て 制 定 さ れ た2001/42/EC指. 令61)は,あ. る 一 定 の 計 画 や プ ロ グ ラ ム に 対 して 早 期 に お け る 環 境 影 響 評 価 を 行 う よ う 要 求 す る こ と に よ っ て,そ. れ らの 準 備 段 階 で の 市 民 参 加 を 強 化 して い る 。. こ れ は 一 般 的 に 「戦 略 的 環 境 ア セ ス メ ン ト(StrategicEnvironment Assessment)」. ㈱ と し て 制 度 化 さ れ て い る も の で あ り,イ ギ リ ス で は,戦. 略. (57)AarhusConvention,Art.7. ㈹Ibid. (591bid.,Art.6(4). ⑳Jean-JacquesParadissisandMichaelPurdue,op.cit.,p.305. ㊨DDirective2001/42/ECoftheEuropeanParliamentandoftheCouncil of27June20010ntheAssessmentoftheEffectsofCertainPlans andProgrammesontheEnvironment 勧. 戦 略 的 環 境 ア セ ス メ ン ト に つ い て は 先 行 研 究 が 多 数 存 在 す る た め,本 概 略 的 な 紹 介 に と ど め た い 。 な お,先 柳 憲 一・ 郎. 稿では. 行 研 究 と して は 以 下 の も の が 挙 げ ら れ る 。. 「戦 略 的 環 境 ア セ ス メ ン トと 持 続 可 能 性 ア セ ス メ ン トの 現 状 と 課 題 」. 明 治 大 学 法 科 大 学 院 論 集7巻(2010年)463頁. 以 下,同. 「環 境 ア セ ス メ ン ト に お. け る 公 衆 参 加 の 重 要 性 一 英 国 の 戦 略 ア セ ス メ ン トを 素 材 と して 一 」21世 紀 フ ォ ー ラ ム72号(2000年)30頁. 以 下,同. 夫 ・大 塚 直 ・北 村 喜 宣 編 達志. 「政 策 ア セ ス メ ン ト と 環 境 配 慮 制 度 」 森 島 昭. 「環 境 問 題 の 行 方 」(1999年,有. 「戦 略 的 環 境 ア セ ス メ ン ト(SEA)の. (1999年)99頁 スメ ン ト. 以 下,環. 境 ア セ ス メ ン ト研 究 会 編. 以 下,寺. 田. 『わ か り や す い 戦 略 的 環 境 ア セ. 戦 略 的 環 境 ア セ ス メ ン ト総 合 研 究 会 報 告 書. 16. 斐 閣)62頁. 導 入 に 向 け て 」 ジ ュ リ ス ト1149号. 」(中 央 法 規,2000年)等. 。.
(17) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. 的 環 境 アセ ス メ ン トに関 して,オ ー フ ス条 約 や2001/42/EC指. 令 に基 づ い. て2004年 計 画 及 び プ ロ グ ラ ム環 境 影 響 評 価 規 則 ⑬ が制 定 され た。 同規 則 に よ る と,戦 略 的 環 境 アセ ス メ ン トは,農 業,森 林,漁 業,エ ネ ル ギ ー,工 業,運 輸,廃 棄 物 処 理,水 管 理,電 気 通 信,観 光,都 市 農 村 計 画,土 地 利 用 に関 す る計 画 及 び プ ロ グ ラ ム につ いて 義 務 付 け られ㈹,市 民 は 計 画 立 案 者 が 提 出 した 環 境 報 告 書(environmentalreport)㈹. を 閲覧 し,意 見 を 提 出. す る こ とが で き る。 戦 略 的 環 境 アセ ス メ ン トの 主 な 効 果 は 「計 画 及 び プ ロ グ ラム に よ って起 こ りう る重 大 な影 響 が提 示 され る」㈹ こ とで あ り,市 民 参 加 と い う観 点 か ら,「 計 画 及 び プ ロ グ ラ ム の草 案 は 規 制 当局 だ け で は な く 市 民 も閲 覧 す る こ とが で き る よ う にな って いな けれ ば意 味 はな く,特 に計 画 に よ って 影 響 を 受 け る お それ の あ る市 民 は意 見 を 提 出す る効 果 的 な 機 会 を 与 え られ な けれ ばな らな い」㈲ と考 え られ て い る。. (3)オ ー フ ス条 約8条 一 行 政 に よ る規 則 策 定 過 程 へ の 市 民 参 加 オ ー フ ス条 約8条. は,「 各 締 約 国 は,環 境 に 著 しい影 響 を与 え う る規 則. や その 他 の 一 般 に適 用 しう る法 的 拘 束 力 の あ る規 則 を 公 的 機 関 が 準 備 して い る際 の 適 切 な 段 階 で,か つ 選 択 肢 が まだ 開 か れ て い る段 階 で の,効 果 的 な 市 民 参 加 を 促 進 す る よ う に努 力 しな けれ ばな らな い。 この 目的 の た め, 次 の 措 置 が と られ るべ きで あ る。(a)効果 的 な 参 加 が 十 分 に認 め られ る時 間 枠 が 設 定 され るべ きで あ る。(b)規則 の 草 案 は,公 表 され るか,さ. もな けれ. ⑬EnvironmentalAssessmentofPlansandProgrammesRegulations 2004 ㈹Ibid.,reg.5(2).オ (policy)」 ㈲. ー フ ス 条 約 の 規 定 と 異 な り,イ. ギ リ ス に お い て は 「政 策. は 戦 略 的 環 境 ア セ ス メ ン トの 対 象 外 と な っ て い る 。. 環 境 報 告 書 に は,計 る 環 境 被 害,環. 画 に 関 連 す る 環 境 上 の 問 題,計. 境 被 害 の 軽 減 策 等 が 記 され る。. ㈹Jean-JacquesParadissisandMichaelPurdue,op.cit.,p.307. ㈲Ibid.. 17. 画 を 実 施 す る こ とで 生 じ.
(18) 近畿大学法学. 第60巻第1号. ば入 手 可 能 とす るべ きで あ る。(c)市民 は,直 接 も し くは,代 表 す る機 関 を 通 して 意 見 を 述 べ る機 会 が 与 え られ るべ きで あ る。 そ して 公 衆 参 画 の 結 果 は可 能 な 限 り考 慮 され ね ば な らな い」囎 と規定 して お り,こ れ は環 境 に関 す る行 政 に よ る規 則 策 定 過 程 へ の 市 民 参 加 を 促 進 す る もの だ と言 え る。 本 規 定 は,「 個 々 の 決 定 だ けで は な く,広 範 囲 に わ た る行 政 立 法 に ま で 適 用 さ れ る もの で あ る点,こ. れ ま で に な い 新 しい もの で あ る」㈱ と評 価 され て い. る。 この規 定 を受 け,イ ギ リスで は規 則 策 定 につ いて,「 政 府 の ホー ムペ ー ジ上 で 規 則 の 草 案 を 提 示 し,市 民 が 意 見 を 述 べ る機 会 を 提 供 」⑩ して い る。 これ は後 述 す る行 政 に よ る環 境 許 可 基 準 の 策 定 に お いて 用 い られ る もの で あ る。. 第3節. 市民参加の性質. イギ リスで は国 内外 に お け る様 々な 影 響 を 受 け,環 境 意 思 決 定 に対 す る 市 民 参 加 制 度 の 構 築 が 促 進 され て き たわ けで あ るが,こ の よ うな 市 民 参 加 制 度 は どの よ うな 性 質 や 意 義 を 持 って い るの で あ ろ うか 。 本 節 で は,イ ギ リス に お いて 環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 が 検 討 され る際 に,頻 繁 に言 及 さ れ るStuartBellandLaurenceEtheringtonに. よ る分 析 に基 づ い て考 察 を. 行 う。. (1)対. 象 者 の 範 囲 に よ る分 類. StuartBellandLaurenceEtheringtonに. よ る と,「. ㈱AarhusConvention,Art.8. ㈹MariaLeeandCarolynAbbot,op.cit,,[2003]ModernLawReview, p.101. ⑩Jean-JacquesParadissisandMichaelPurdue,op.cit.,p.305. ⑳StuartBellandLaurenceEtherington,"TheRoleofConsultation inMakingEnvironmentalPolicyandLaw"[1999]8NottinghamLaw Journal49.. 18. 『市 民 参 加 』 と い う.
(19) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. 言 葉 は 多種 多 様 な手 段 に及 ぶ もの」⑳ で あ り,そ の 対 象者 の範 囲 に よ って 以 下 の よ う に分 類 す る こ とが で き る。 第1に. 「『利 害 関係 者 』 型(StakeholderModel)市. 民 参 加 」⑫ で あ る。. これ は環 境 意 思 決 定 の 結 果 に よ って 直 接 的 に影 響 を 受 け るで あ ろ う者 が 対 象 とな る市 民 参 加 で あ り,例 え ば,環 境 許 可 の 申請 に対 す る地 域 住 民 の 意 見 を 求 め る もの や,環 境 基 準 の 設 定 につ いて 何 らか の 影 響 を 受 け るで あ ろ う住 民 の 意 見 を 引 き 出 そ う とす る もの が これ に該 当 す る。 この よ うな タ イ プの 市 民 参 加 は,意 思 決 定 の 正 当性 を 向 上 させ るだ けで な く,利 害 関 係 を 持 つ 市 民 の 権 利 利 益 を 保 護 す る と い う 目的 を 有 す る もの で あ ろ う。 第2に. 「『価 値 観 』 型(ValuesModel)市. 民 参 加 」⑬ で あ る が,こ れ は市. 民 参 加 を 通 じて 市 民 の 持 つ 環 境 に対 す る一 般 的 な 価 値 観 や 意 見,情 報 を 引 き 出 そ う とす る もの で あ り,「 『利 害 関 係 者 』 型 市 民 参 加 」 と は異 な り,環 境 意 思 決 定 と直 接 的 な 利 害 関 係 が な い者 に も市 民 参 加 の 機 会 を 認 め る もの で あ る。 この タ イ プの 市 民 参 加 は,一 般 市 民 か ら広 く情 報 を 収 集 す る こ と に よ って意 思 決 定 の 前 提 と な る情 報 の 質 を高 め よ う とす る もの で あ り, 「『利 害 関 係 者 』 型 市 民 参 加 」 と比 較 して も意 思 決 定 の 正 当 性 ・民 主 性 は大 き く向 上 す る と考 え られ る。 第3に,「. 『技 術 的 専 門 知 識 』」 型(TechnicalExpertiseModel)市. 民参. 加 」㈲ で あ る。 これ は 「『価 値 観 』 型 市 民 参 加 」 の 対 極 に あ る もの で あ り, 意 思 決 定 につ いて 専 門 知 識 を 有 して い る科 学 者 や 技 術 者,法 律 家 と い った 専 門 家 の 意 見 を 引 き 出す た めの もの で あ る。 これ は参 加 の 対 象 を 専 門 家 に 限 定 して い る点,厳 密 に は市 民 参 加 と は言 え るか疑 問 の残 る と こ ろで あ る。. ⑫Ibid. ㈲Ibid. (74)Ibid.,p.50.. 19.
(20) 近畿大学法学. 第60巻第1号. こ の よ うに,環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 に は 「『利 害 関 係 者 』 型 市 民 参 加 」 が 主 と して 導 き 出 そ う とす る 「市 民 の 権 利 利 益 の 保 護 」 と 「『価 値 観 』 型 市 民 参 加 」 が 導 こ う とす る 「意 思 決 定 の 正 当性 の 確 保 」 と い う2つ の 目 的 が あ る と考 え られ る。 な おオ ー フ ス条 約6条2項. は 「関 心 を 持 つ 市 民 」. に対 す る市 民 参 加 制 度 の 構 築 を 規 定 して い る こ とか ら㈲,市 民 参 加 の 対 象 者 の範 囲が 最 も広 い 「『価 値 観 』型 市 民 参 加」 を促 進 して い る と言 え よ う㈹。. (2)市. 民 参 加 が 必 要 と され る理 由. 市 民 参 加 が 必 要 と さ れ る 理 由 と して,イ. ギ リ ス で は,市. 民の権利利益の. 保 護 だ け で な く,「 市 民 参 加 の 結 果 と し て あ ら わ れ る 意 思 決 定 や 判 断 過 程 そ の も の の 正 当 性 の 確 保 」㈹ や,「 意 思 決 定 の 根 拠 と な る 情 報 の 質 の 改 善 」⑱ な ど が 挙 げ ら れ て お り⑲,StuartBellandLaurenceEtheringtonは,市. ㈲ ㈹. 前掲注㊨参照。 な お,わ. が 国 に お い て も同様 の分 類 は行 な わ れ て お り,例 え ば 北 村 喜 宣 は対. 象 者 を 利 害 関 係 者 に 絞 る市 民 参 加 を 「 権 利 利 益 防衛 参 画 」,利 害 関 係 を 持 た な い 者 も対 象 にす る市 民 参 加 を 「情 報 提 供 参 画 」 と分 類 す る。 前 者 の 例 と して は, わ が 国 にお け る公 有 水 面 埋 立 法3条3項. に基 づ く意 見 提 出が 挙 げ られ,こ. こか. らは 参 加 者 の 法 律 上 の 利 益 や 公 法 上 の 法 律 関 係 を見 出 し,抗 告 訴 訟 の 原 告 適 格 や 当 事 者 適 格 を 肯 定 す る こ と も可 能 で あ る と され る。 な お,後 者 は 広 く情 報 の 提 供 を 求 め るた め に行 わ れ る もの で あ り,環 境 影 響 評 価 法8条. に基 づ く意 見 提. 出が 例 と して 挙 げ られ る。 北 村 ・前 掲 注 ⑯178頁 。 ⑰StuartBellandLaurenceEtherington,op.cit.,[1998]8Nottingham LawJournal,p.51. ⑱RCEPTwenty-firstReport(1998) ⑲. わ が 国 で も,市 民 参 加 が 必 要 と され る理 由 につ いて は様 々な 理 解 が 存 在 す る。 例 え ば,北 村 喜 宣 は,対 象 とな る事 項 に つ い て の複 眼 的評 価,政. 策や計画への. 正 統 性 の 賦 与,議 会 が抽 象 的 に調 整 した諸 利 益 の現 場 レベ ル で の再 調 整,情. 報. 補 完 ・情 報 質 の 向 上 な どを 挙 げて い る。 北 村 喜 宣 「環 境 政 策 ・施 策 形 成 と実 施 へ の 市 民 参 加 」 環 境 法 政 策 学 会 編 「環 境 政 策 に お け る参 加 と情報 的 手 法 パ ー トナ ー シ ップの 確 立 に向 けて 一 』(商 事 法 務 ,2003年)33頁. 20. 環境. 以下参照。.
(21) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. 民 参 加 の 正 当化 理 由につ いて,5つ 第1に,市. の要 素 に分 けて分 析 して い る⑳。. 民 参 加 は意 思 決 定 の 「合 理 性 の 確 保 」 につ な が る。 意 思 決 定. 者 に と って の 懸 念 は,自 身 が 行 な う意 思 決 定 に合 理 性 が あ るか ど うか と い う点 に あ り,市 民 の 意 見 を 取 り入 れ る こ とで この 懸 念 を 払 拭 し,意 思 決 定 の 合 理 性 を 向 上 させ る こ とが 市 民 参 加 の 目的 と して 重 要 な もの で あ る。 特 に意 見 を 提 出す る こ との で き る者 の 範 囲 を 拡 大 す る こ と に よ って,潜 在 的 な 障 害 や 問 題 は明 確 化 され,よ. り適 切 に対 処 す る こ とが で き る と考 え られ. る。 第2に,「. 専 門 性 の 向上 」 で あ る。 規 制 当 局 の 外 部 か ら得 られ る専 門 知. 識 を 利 用 す る こ と は,科 学 的 ・経 済 的 ・法 的 ・社 会 的 ・政 治 的 問 題 を 含 む な ど,必 要 と され る専 門 知 識 の 範 囲 が 広 い環 境 と い う領 域 にお け る意 思 決 定 につ いて,決 定 の 技 術 的 な 正 当性 を 高 め る た め に必 要 な 手 段 で あ る。 第3に,市. 民 参 加 は 「手 続 の 透 明 化 」 につ な が る。 行 政 に よ る意 思 決 定. は透 明 性 を 重 視 した手 法 で 行 な わ れ るべ きで あ る と考 え られ,市 民 か らの 意 見 を 排 除 しよ う と した り,市 民 参 加 を 拒 否 しよ う とす れ ば,判 断 過 程 と 最 終 結 果 に対 して 市 民 に否 定 的 な 印 象 を 与 え ざ るを 得 な くな る。 これ は, イギ リス に お いて 大 きな 問 題 と され て い た事 業 者 と規 制 者 との 癒 着 関 係 を 排 除 す る た め に も重 要 で あ る と考 え られ て い る。 わ が 国 にお いて も,環 境 に対 す る負 荷 を 発 生 させ る事 業 者 と規 制 者 と して の 行 政 と い う 「二 極 関 係 に 『市 民 』 と い う 『も う一 極 』 を 加 え て 三 極 関 係 にす る こ と に よ り,行 政 と事 業 者 の 間 に癒 着 の な い 『健 全 な距 離 』 を 創 出 す る こ とが 可 能 に な る」侶D と指 摘 され て い る よ う に,市 民 参 加 の も た らす 意 思 決 定 過 程 の 透 明 化 は必 要 不 可 欠 な もの で あ る。. ⑳StuartBellandLaurenceEtherington,op.cit.,[1998]8Nottingham LawJournal,p.51. ⑳. 北 村. ・前 掲 注 ⑯95頁. 。. 21.
(22) 近畿大学法学 第4に,市. 第60巻第1号 民 参 加 に よ って 「交 渉 を 通 じた意 見 の 一 致 」 が 得 られ る。 市. 民 参 加 を 行 な う理 由の1つ. は,市 民 参 加 の 対 象 とな る事 業 に よ って 直 接 影. 響 を受 け る者 が 意 思 決 定 者 と直 接 的 な 交 渉 を行 う こ とを 保 証 し,市 民 に と って 最 終 判 断 が 容 認 で き る もの とす る こ と に あ る。 規 制 当局 が 利 害 関 係 者 と意 見 の 交 換 ・交 渉 を 行 う こ とで,利 害 関 係 者 の 権 利 利 益 は よ り一 層 保 護 され る こ と にな るの で あ る。 最 後 に,市 民 参 加 は 「価 値 観 の 誘 出」 につ な が る。 も し意 思 決 定 者 が, 一 般 市 民 の 価 値 観 や意 見 に沿 う判 断 を し た い と考 え た場 合 ,市 民 参 加 が 人 々の 価 値 観 を 引 き 出す 数 少 な い手 法 の1つ で あ る。 一 般 市 民 の 価 値 観 を 意 思 決 定 に反 映 す る こ と は意 思 決 定 の 正 当性 を 向 上 す る た め に必 要 不 可 欠 で あ る こ とか ら,こ の 「価 値 観 の 誘 出」 は必 要 不 可 欠 な 要 素 で あ る。 な お,市 民 参 加 の 対 象 者 の 範 囲 に よ って,重 点 の 置 か れ る正 当化 理 由 は 異 な って い る。 例 え ば,「 『価 値 観 』 型 市 民 参 加 」 は 「価 値 観 の 誘 出」 を 最 も重 視 して い る もの で あ り,規 制 当局 が,利 害 関 係 者 に限 定 され な い一 般 市 民 の 意 見 や 価 値 観 を 検 討 した結 果 と して 判 断 を 行 な う こ と にな る た め, 最 も民 主 性 の 高 い手 段 で あ る と考 え られ る。 RCEPは. これ らの正 当化 理 由 につ い て,「 自分 自身 の 意 見 が考 慮 され て. い る と信 じて い る人 々 は,意 思 決 定 過 程 や政 策 に信 頼 を持 つ傾 向 に あ る」㈱ と指 摘 して お り,市 民 参 加 の 促 進 が 行 政 に対 す る市 民 か らの 信 頼 の 回 復 に もつ な が る とす る。. 第2章. 環境許可決定過程への市民参加(D制. 度比較. 国 際 的 に環 境 意 思 決 定 へ の 市 民 参 加 が 重 要 視 され て い る 中,イ ギ リスで も 同制 度 の 構 築 が 行 な わ れ て き たわ けで あ るが,現 在 イギ リスで は政 府 の 劒RCEPTwenty-firstReport(1998). 22.
(23) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. 方 針 に よ って 様 々な 領 域 に お け る行 政 に よ る規 制 の 在 り方 に変 化 が 生 じ, それ に伴 って 環 境 意 思 決 定 に対 す る市 民 参 加 制 度 に も大 きな 変 化 が 起 きて い る。 本 章 で は,特 に変 化 が顕 著 に現 れ て い る環 境 許 可 決 定 ㈱ 過 程 へ の 市 民 参 加 に焦 点 を 当て,イ. ン グ ラ ン ド及 び ス コ ッ トラ ン ドにお け る現 状 を そ. れ ぞ れ 考 察 す る。. 第1節. べ 夕 一 ・レ ギ ュ レ ー シ ョ ン と 市 民 参 加. 現 在,イ. ギ リ ス で は 環 境 許 可 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 の 在 り方 に 大 き な 変. 化 が 起 き て い る が,こ. の 変 化 は,政. 府 の 打 ち 出 した. シ ョ ン 計 画(BetterRegulationAgenda)」 レギ ュ レー シ ョ ン と は,よ. が 発 端 と な っ て い る。 ベ タ ー ・. り よ い 規 制 環 境 づ く りを 目指 す 政 策 方 針 で あ り,. そ の 対 象 は 環 境 領 域 に 限 らず,金. 融,税. 制,農. 業,社. な ど 様 々 な 分 野 に 及 ん で い る 。 イ ギ リ ス で は,1997年 権 以 降,本 は,規. 「ベ タ ー ・ レギ ュ レー. 格 的 に こ の 取 り組 み が 行 わ れ 始 め,現. 制 改 善 局(BetterRegulationExecutive)が. 会 保 障,雇. 用,教. 育. に 発 足 した ブ レ ア 政. 在 の キ ャ メ ロ ン政 権 下 で ビ ジ ネ ス ・イ ノ ベ ー. シ ョ ン ・職 業 技 能 省(DepartmentforBusiness,InnovationandSkills) 内 に 置 か れ,ベ ㈱. タ ー ・ レギ ュ レー シ ョ ン の 推 進 を 行 っ て い る鱒。. イギ リス にお いて 環 境 に影 響 を 与 え る事 業 を 行 お う とす る者 は,行 政 に よ る 事 前 審 査 と して 「環 境 許 可 」 を 付 与 され な けれ ばな らな い場 合 が 多 く,大 気 汚 染 防 止 法6条 や 水 質 汚 濁 防 止 法5条 直 「環 境 法(第3版)」(有. の よ うに届 出制 を 多 く採 用 して い る(大 塚. 斐 閣,2010年)316頁)わ. が 国 の 状 況 と は異 な って い. る。 な お,イ ギ リス にお いて 新 た な 施 設 を 設 置 後 そ の 施 設 にお い て 排 出等 の 環 境 に影 響 を 与 え るお そ れ の あ る活 動 を 行 お う とす る事 業 者 は,施 設 設 置 の た め の 「開 発 許 可 」 と,操 業 の た め の 「環 境 許 可 」 の 両 方 を 付 与 され な けれ ば な ら な い場 合 が あ る。 な お,本 稿 で は後 者 を 中 心 に検 討 を 行 う。 ㈹. ビ ジネ ス ・イ ノベ ー シ ョン ・職 業 技 能 省 は,ベ. ター ・レギ ュ レー シ ョンの 実. 現 の た め に は,「不 必 要 に成 長 を 妨 害 す るよ うな既 存 の規 制 制 度 の除 去 あ る いは 簡 素 化 」,「最 終 手 段 と して の 規 制 の 導 入 に よ る規 制 制 度 の 削 減 」 な どが 必 要 で あ る とす る。 詳 細 は,ビ. ジネ ス ・イ ノベ ー シ ョン ・職 業 技 能 省 ホー ム ペ ー ジを. 参 照 。<http://www.bis.gov.uk/policies/bre>. 23.
(24) 近畿大学法学. 第60巻第1号. ベ ター ・レギ ュ レー シ ョンの 下 で は,行 政 に よ る意 思 決 定 の 迅 速 性 と一 貫 性 に重 きが 置 か れ る こ と とな る。 さ らに行 政 に よ る規 制 の 効 率 の 低 下 を 伴 わ ず に費用 と行 政 の 負担 を 削減 す る こ とが 同 政 策 の 目的 と され て お り㈹, 最 終 的 に は規 制 の費 用 を 削 減 す る こ と に よ りGDPの を 目指 して い る㈹。 この 目的 は,例 え ば,公. 増加 につなげ ること. 的 機 関 に よ る許 可 の 付 与 に伴. う手 続 を簡 素 化 す る こ と,手 続 の 結 果 を よ り予 測 可 能 な もの にす る こ と, 意 思 決 定 過 程 の 過 度 の 長 期 化 を 防 ぐこ と等 に よ って 達 成 され る㈱。 行 政 に よ る規 制 の 効 率 化 と,行 政 に よ る意 思 決 定 の 正 当性 を 向 上 させ る 市 民 参 加 は相 反 す る もの だ と考 え られ る た め,こ の よ うな ベ ター ・レギ ュ レー シ ョンの 促 進 は,環 境 保 護 や 汚 染 規 制 を 目的 と した市 民 参 加 制 度 に も 大 きな 影 響 を 与 え る と懸 念 され て い る。 実 際,行 政 に よ る規 制 の 効 率 化 を 図 る こ と に よ って,環 境 意 思 決 定,特. に環 境 許 可 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 の. 機 会 が 減 少 す る可 能 性 が高 い と指摘 され て お り㈱,こ れ らの 点 か ら,た と え ベ タ ー ・レギ ュ レー シ ョンを 推 進 す る と して も,「 意 思 決 定 の迅 速 性 及 び一 貫性 と,市 民 参 加 の機 会 との間 の バ ラ ンス を とる必 要 が あ る」㈱ と主 張 され て い る。. ㈲ElizabethA.Kirk&KirstyL.Blackstock,"EnhancedDecisionMaking: BalancingPublicParticipationagainst`BetterRegulation'inBritish EnvironmentalPermittingRegimes"[2011]23JournalofEnvironmental Law98. 侶⑤SarahAnderson,TheAndersonReview.TheGoodGuidanceGuide: TakingtheUncertaintyoutofRegulation(BetterRegulationExecutive, 2009),p.5. 侶7)ElizabethA.Kirk&KirstyL.Blackstock,op.cit.,[2011]23Journal ofEnvironmentalLaw,p,99. ㈹Ibid. ㈱Ibid.. 24.
(25) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. 第2節. イ ン グ ラ ン ドにお け る環 境 許 可 と市 民 参 加. イギ リス政 府 が ベ ター ・レギ ュ レー シ ョンの 実 現 を 目指 す 中,イ ン グ ラ ン ドと ス コ ッ トラ ン ドは環 境 許 可 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 につ いて そ れ ぞ れ 異 な っ た ア プ ロー チを 展 開 して き た。 本 節 で は,近 年 の イギ リス にお いて 政 策 課 題 と して 取 り組 まれ て い るベ ター ・レギ ュ レー シ ョンの 推 進 に よ り 大 き く影 響 を受 けた イ ン グラ ン ドにお け る市 民参 加 制度 の 現状 を検討 す る⑲ ① 。. (1)「 標 準 許 可 」 と 「特 注 許 可 」 イ ン グ ラ ン ドに お いて 環 境 に影 響 を 与 え る よ うな 一 定 の 事 業 を 行 お う と す る者 は,環 境 許 可 の 申請 を し,そ れ を 付 与 され な けれ ばな らな いが,環 境 許 可 に関 す る法 規 則 の 大 部 分 が 何 らか の 形 で 市 民 参 加 に関 す る規 定 を 置 いて い る。 な お,現 在 その 多 くは以 下 の よ うな 手 法 で 行 わ れ て い る。 環 境 許 可 の 申請,あ. る い は それ らの 変 更 や 放 棄 の 申請 は原 則 と して 事 業. 者 が 行 う こ と とな るが,当 該 事 業 が標 準 的 な許 可 決定 手 続 の対 象 とな る もの で あ れ ば⑤1)一 般 的 に は 市 民 参 加 は 認 め られ ず,そ. の 対 象 外 とな る事 業 で あ. れ ば 当該 申請 の 内容 及 び許 可 決 定 過 程 へ の 参 加 の 日時 と方 法 の 詳 細 が 市 民 に公 告 され た後,市 民 参 加 手 続 が と られ る こ と とな る。 こ こで の 市 民 参 加. (9① イ ギ リ ス に は1993年 よ う に,イ. 放 射 性 物 質 法(RadioactiveSubstancesAct1993)の. ン グ ラ ン ド と ス コ ッ ト ラ ン ドの 両 地 域 に 共 通 し て 適 用 さ れ る 環 境 関. 連 法 規 が 存 在 す る が,本 を 当 て る た め,そ. 稿 で は イ ン グ ラ ン ドとス コ ッ トラ ン ドとの 比 較 に焦 点. れ ぞ れ の 地 域 に お い て 独 自 に用 い られ る法 規 則 の み を 検 討 の. 対 象 とす る。 (91)例 え ば,バ. イオ デ ィー ゼ ル の 製 造 は この 標 準 的 な 許 可 決 定 手 続 の 対 象 とな る。. バ イ オ デ ィ ー ゼ ル の 製 造 許 可 は ,環. 境 庁 の 作 成 す る 規 則 で あ るStandardrules. SR2009No3-LowImpactPartAInstallationfortheproductionofBiodieselの. 基 準 に従 って 検討 され る。当該 基 準 につ い て の詳 細 はイ ギ リス環 境 庁 ホー. ムペ ー ジ を参 照 。 〈http://www.environment-agency.gov.uk/static/documents/ Business/SR2009No3v2.0.pdf>. 25.
(26) 近畿大学法学. 第60巻第1号. は 「意 見 聴 取 」㈱ と い う形 態 に よ っ て 行 わ れ る 場 合 が 多 く,許 可 を 付 与 す る か ど う か の 最 終 判 断 は,市. 民 か ら提 出 さ れ た 意 見 を 考 慮 し た 上,規. 制 当局. 単 独 で 行 わ れ る ㈱。 現 在,イ 可(イ. ン グ ラ ン ドに お い て は,環. ン グ ラ ン ド及 び ウ ェ ー ル ズ)規. 境 許 可 制 度 の 大 部 分 が2010年 則(以. 下,2010年. 環境許. イ ン グ ラ ン ド規 則)鱒. の 下 で規 定 され て い る。 同規 則 は,総 合 的 汚 染 防 止 規 制(integratedpollution preventionandcontrol,以. 下IPPC)制. 度 ㈱ と廃 棄 物 管 理 免 許 制 度 を よ り. 簡 潔 で よ り直 接 的 な 規 制 制 度 に 統 合 し た2007年 び ウ ェ ー ル ズ)規. 環 境 許 可(イ. 則⑲ ㊧を 改 正 し た も の で あ る。2007年. ギ ュ レー シ ョ ン の 一 環 と して,従. ン グ ラ ン ド及. 規 則 は,ベ. ター ・レ. 前 の 複 雑 な 規 制 制 度 を よ り容 易 に か つ 合. 理 的 に 扱 え る よ う 意 図 して 制 定 さ れ た も の で あ り㈱,同 規 則 の 制 定 に よ り, 従 来 はIPPC制. 度 と廃 棄 物 処 理 制 度 の下 で 個 別 の 許 可 が 必 要 と され た事 業. に つ い て も,一. 度 の 申 請 に よ っ て 許 可 を 得 る こ と が 可 能 と な っ て い る 鮒。. 2010年. 働. イ ン グ ラ ン ド規 則 は,2007年. 規 則 の 対 象 に さ ら に 排 出 同 意 ㈱,地. 「意 見 聴 取 」 な ど 市 民 参 加 の 形 態 に つ い て は 後 述 す る 。. (93ElizabethA.Kirk&KirstyL.Blackstock,op.cit.,[2011]23Journal ofEnvironmentalLaw,p.100. ⑳EnvironmentalPermitting(EnglandandWales)Regulation2010な お,同. 規 則 は ウ ェ ー ル ズ に お け る 事 業 に も適 用 さ れ る が,本. 稿ではイ ングラン. ドにお け る事 業 につ いて の み 検 討 す る。 飼. 指 定 有 害 物 質 を 排 出 す る 指 定 事 業,産. 業 施 設 を 対 象 と し て,当. 該有害物質の. 環 境 媒 体 へ の 排 出 を 総 合 的 に 規 制 す る 制 度 で あ り,大. 気,水,土. 環 境 媒 体 に 対 して 汚 染 物 質 を 事 業 に 関 す る 許 可 を1つ. の 制度 内 で 扱 お う と した. 壌 な ど様 々な. も の で あ る 。 イ ギ リ ス に お け る 総 合 的 汚 染 防 止 規 制 制 度 に つ い て,詳 前 掲 注(7)186頁. 細は林 ・. 以下参照。. ㊤⑤EnvironmentalPermitting(EnglandandWales)Regulation2007 (9のElizabethA.Kirk&KirstyL.Blackstock,op.cit.,[2011]23Journal ofEnvironmentalLaw,p.101. ㈱2007年. 規 則 の 制 定 に よ り従 来 存 在 し た41の 規 則 が1つ. こ と と な り,効 ㊦9排. の制 度 内 に 統 合 され る. 率 的 な 環 境 汚 染 規 制 が 可 能 に な っ た 。Ibid.. 出 同 意 は 水 質 汚 濁 に 対 す る 中 心 的 な 規 制 手 段 で あ り,廃. 26. 水 を 河 川 に 排 出 す/.
(27) イ ギ リス にお け る環 境 許 可 制 度 と市 民 参 加. 下 水 許 可,放. 射 性 物 質 規 制 を 加 え る こ と に よ っ て そ の 範 囲 を 拡 大 した も の. で あ り,2007年. 規 則 と 同 様,複. 数 の 環 境 領 域 にわ た る許 可 を 単 一 の 制 度 の. 下 で 付 与 す る こ と を 可 能 に し て い る 。2010年. イ ン グ ラ ン ド規 則12条1項. 「環 境 許 可 に よ っ て 権 限 が 与 え ら れ て い る 者 を 除 い て は,… 施 設 の)操 て,人. 業 を して は な ら な い 」GO① と 規 定 し て お り,イ. 体 及 び 環 境 に 悪 影 響 を 与 え る 可 能 性 の あ る2010年. の 対 象 と な る 事 業 を 行 お う と す る 者 は,同 な け れ ば な ら な い 。 な お,2010年 (standardpermits)」. …(規. は,. 制 対象. ン グ ラ ン ドに お い イ ン グ ラ ン ド規 則. 規 則 の 下 で 環 境 許 可 を 付 与 され. イ ン グ ラ ン ド規 則 の 下 で は,「 標 準 許 可. と 「特 注 許 可(bespokepermits)」. と い う2種. 類の. 環 境 許 可 が 存 在 す る。 環 境 許 可 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 の 権 利 は,2010年. イ ン グ ラ ン ド規 則 の 下,. 申 請 者 が 「標 準 許 可 」 の 申 請 を 行 な っ た の か,「 特 注 許 可 」 の 申 請 を 行 な っ た の か に よ っ て 異 な る 扱 い を 受 け る こ と と な る 。 そ の よ う な 中,2010年 ン グ ラ ン ド規 則26条1項. イ. は,「 標 準 許 可 」 と 「特 注 許 可 」 そ れ ぞ れ の 判 断. 基 準 の 策 定 を 規 制 当 局 に 委 ね て い る 。 イ ン グ ラ ン ドに お け る 環 境 汚 染 に 関 す る 規 制 当 局 で あ る 環 境 庁(EnvironmentAgency)は 排 水,地. 下 水,放. 射 性 物 質,採. 鉱 廃 棄 物 に 関 す る 活 動 な ど2010年. ン ド規 則 の 対 象 と な る 事 業 に つ い て,同 ム ペ ー ジ 上 で 提 示 して お り,そ. 廃 棄 物 関 連 事 業, イングラ. 規 則 に 従 っ て 策 定 した 基 準 を ホ ー. れ らの 基 準 に 適 合 す る よ う な 事 業 が. 許 可 」 の 対 象 と な る(10D。そ し て,こ. 「標 準. れ らの基 準 を超 え るよ うな 比較 的 重 大. な 環 境 汚 染 を 引 き 起 こ す 可 能 性 の あ る 事 業 は 「標 準 許 可 」 の 対 象 か ら は 除. \ る 場 合 に は 環 境 庁 に 同 意 の 申 請 を し,そ 同 意 に つ い て,詳. 細 は 林 ・前 掲 注(7)176頁. れ が付 与 さ れ な け れ ば な らな い。 排 出 参照。. qO①EnvironmentalPermitting(EnglandandWales)Regulation2010, reg.12(1)(a). ⑪. 「標 準 許 可 」 の 基 準 に つ い て,詳. 細 は イギ リス 環 境 庁 ホ ー ム ペ ー ジ を 参 照 。. 〈http://www.enviro㎜ent-agency.gov.uk/bus㎞ess/topics/pe㎜itting/3233蜘x>. 27.
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12‑2 ‑209 (香法 ' 9
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