<論説>ドイツにおける資金助成に対する憲法的統制の可能性--競業者の人権の観点から
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(2) 近畿大学法学. 第55巻第4号. 兆 円 に 達 す る(2)。補 助 金 等 も 「国 及 び 地 方 公 共 団 体 の 歳 出 に 占 め る 割 合 が 極 め て 大 き い(そ. の 金 額 を 正 確 に 把 握 す る こ と は で き な い)」(3)。政 府 に よ. る 資 金 助 成 は,縮. 小 傾 向 に あ る も の の,な. お,質. 的 に も量 的 に も重 要 な 行. 政 手 段 とい って よい。 こ の 点,ド. イ ツ に お い て も 事 情 は 変 わ ら な い 。 ドイ ツ で は,1967年. 成 長 法(Stabilitats-andWachstumsgesetz:StWG)12条. 安定. に 基 づ き,い. わ. ゆ る 「資 金 助 成 報 告 書 」 の 提 出 が 義 務 づ け ら れ て い る 。 そ の 対 象 は,私. 企. 業 や 経 済 部 門 に 対 す る 「財 政 援 助(Finanzhilfen)」 経 済 の 一 部 領 域 に 対 し 直 接,聞 ergiinstigung)」 額 は2008年. と,個. 々の セ ク ター や. 接 に効 果 を 与 え る 「租 税 優 遇 措 置(Steuer-. で あ る(4)。最 新 の 資 金 助 成 報 告 書 に よ れ ば,資 金 助 成 の 総. 度 予 定 額 が215億 ユ ー ロ(う. 年 度 の235億 ユ ー ロ(う ち 財 政 援 助61億. ち 財 政 援 助 が57億 ユ ー ロ)で,2005 ユ ー ロ)か ら漸 減 傾 向 に あ る も の の,. そ の 減 少 分 の 多 く は 一 戸 建 て 住 宅 手 当(Eigenheimzulage)の も の で,企. 廃止 による. 業 は 引 き 続 き 重 要 な 資 金 助 成 領 域 と さ れ て い る ⑤。 ドイ ツ の 憲. 法 学 に お い て,「 現 代 の 行 政 は,そ. の 《介 入 行 政 》 と い う伝 統 的 な 枠 を 超. (2)参 照,財 政 制 度 等 審 議 会 財 政 投 融 資 分 科 会 資 料(平 成19年12月12日)「 財 政 投 融 資 の在 り方 に つ い て(中 間 報 告)」3∼4頁,「. 今後 の. 預 託 金 残 高 及 び財 投 債. 発 行 残 高 の 推 移 」(「平 成18年 度 財 政 投 融 資 資 金 運 用 報 告 に つ い て 」〔 平 成19年7 月30日 財 務 省 理 財 局 〕別 紙4)。. 改 革 直 前 の平 成12年 度 の財 政 投 融 資 計 画 が37兆. 円,預 託 金 残 高 が427兆 円 で あ るの で,そ れ ぞ れ3分 の1,半. 分 近 くの規 模 に縮. 減 して い る。 (3)碓 井 ・前 掲 注(1)i頁 。 (4)こ. こ に い う資 金 助 成 は,経 済 に 影 響 を 及 ぼ そ う とす る も の に 限 定 さ れ て い. る。 租 税 優 遇 措 置 が 広 義 の資 金 助 成 に 含 ま れ て い るの が 日本 に お け る議 論 と比 較 した 場 合 に興 味 深 い。 (5)BerichtderBundesregierungiiberdieEntwicklungderFinanzhilfendes BundesandderSteuervergiinstigungenfurdieJahre2005bis2008,BTDrucks16/6275. 一148一.
(3) ドイ ツ にお け る資 金 助 成 に対 す る憲 法 的 統 制 の可 能 性. え て,広. く 《給 付 行 政 》 とな って い る」⑥ と い う点 は,古 くか ら指 摘 され て. きて お り,こ の よ うな行 政 の 特 質 の 変 化 に 対応 す るべ く,ド イ ツ基 本 法 は, 社 会 国 家 原理 を取 り込 ん で い る こ と も周 知 の とお りで あ る。 興 味 深 い の は,日 本 に お い て は 資 金助 成 や広 く給 付 行政 につ いて. 生. 存 権 の観 点 か ら積 極 的 に これ らを行 うべ き で あ る とい う議 論 はあ る もの の 政 府 の活 動 へ の懐 疑 とい う立 憲 主 義 の基 本 的 な態 度 か らの チ ェ ッ クを 行 う議 論 は 見 られ な い と ころ(7),ド イ ツ に お い て は 資 金 助 成 に対 す る憲 法 的 統 制 につ い て,一 定 の議 論 の蓄 積 が見 られ る こ とで あ る。 本 稿 で は,そ の 中で もと くに,資 金 助 成 が,資 金 助 成 を受 け て い な い競 業 者 との 関係 で 権 利 侵 害 の問 題 と な りう る と い う議 論 に絞 り瞥見 す る こ とで,日 本 法 へ の 示 唆 を 得 る手 掛 か りと した い(8)。 本 稿 で は,ま ず,資 金 助 成 に対 す る憲 法 的 統 制 の 問 題 を詳 細 に論 じた プ ロイ ア ー が 競 業 者 の 人 権 との 関 係 で い う 「破 滅 的 資 金 助 成 」とい う概 念 と, そ の ヒ ン トとな っ た 「破 滅 的 租 税 」 に関 す る判 例 を取 り上 げ,「 破 滅 的 介 入 禁 止 の 原 則」 とで もい うべ き法 理 を 用 い る こ とが で き る領 域 と もに,そ. (6)コ. ンラ ー ト・ヘ ッセ(初 宿 正 典=赤 坂 幸 一 訳)・ ドイ ツ憲 法 の 基 本 的 特 質(成. 文 堂,2006年)135頁 (7)も. っ と も,近 年,憲. 題,ア. 。 法 学 に お い て も表 現 活 動 に対 す る政 府 の助 成 を め ぐる 問. メ リカ に お け る 「 違 憲 の 条 件 の 法 理 」 の 問 題 を 切 り口 と して,給 付 行政. に対 す る統 制 を論 じ る動 きが 広 が って きて い る。 蟻 川 恒 正 「国家 と文 化 」 岩 村 正 彦 ほか 編 ・岩 波 講 座 ・現 代 の法(1)現. 代 国家 と法(岩 波 書 店,1997年)191. 頁 以 下,中 林 暁 生 「給 付 と人権 」 西 村 博 史 編 ・岩 波 講 座 ・憲 法(2)人 新 展 開(岩 波 書 店,2007年)263頁 325号(2007年)24頁. 以 下 は じめ,中 林 「給 付 的 作 用 と人 権 論 」30頁 注30所 掲. の 所 論 文 。 また 参 照,駒 村 圭 吾 「自 由 と文 化 」 法 教328号(2008年)34頁 ⑧. 権論 の. 以 下,中 林 暁 生 「 給 付 的 作 用 と人 権 論 」法 教 以下。. ドイ ツ にお け る資 金 助 成 に対 す る法 的統 制 の 問題 に つ い て は,行 政 法 学 に お い て 佐 藤 英 世 に よ る貴 重 な先 行 研 究 が 存在 す る。 佐 藤英 世 「西 ドイ ツ にお け る 資 金 補 助 行 政 の 法 的 統 制 の 新 た な 手 懸 か り につ い て 」 阪 大 法 学138号(1986年) 89頁 以 下 。 一149一.
(4) 近畿大学法学. 第55巻第4号. の 周 辺 に,よ. り緩 や か な審 査 基 準 を用 いて 判 断 を行 う こ と が で き る領 域 が. あ る こ とを 示 す(一)。. しか し,判 例 で 問 題 と な っ た の は 当該 業 者 に直 接 向. け られ た 課 税 で あ った た あ,こ の こ とか ら,た だ ち に 「破 滅 的 介 入 禁 止 の 原 則 」を 資金 助 成 と競 業 者 との 関係 で 問題 とす る こ とは で き な い。 そ こで, 職 業 の 自由(基 本 法12条1項)お. よ び財 産 権(14条)の. 保 護 領 域 に関 す る. 議 論 を 分 析 す る こ とで,「破 滅 的 資 金 助 成 」を 基 本 権 侵 害 と して 構 成 しう る こ と,合 わ せ て 「破 滅 的 資 金 助 成 」 に至 らな い も ので も,一 般 に競 争 の 自 由 に対 す る 侵 害 と して 構 成 し う る こ と を示 す(二,三)。. 最 後 に,同 業 者. に 対 す る資 金 助 成 に対 す る訴 訟 の 原 告 適 格 を 競 業 者 に認 め る判 例 が あ る こ とを紹 介 し,こ の よ うな 競 業 者 訴 訟 が 認 め られ る前 提 と して,ド. イツにお. い て は 資 金助 成 に 対 す る競 業 者 の 基 本 権 保 護 が 認 め られ て い る と い う こ と を 裏 づ け た い(四)。. 一. 「 破滅的資金助成禁止の原則」. (1)プ. ロイ ア ー の見 解. プ ロイ ア ー は,イ ー ゼ ンゼ ー=キ ル ヒホ フの コ. ンメ ンタ ー ル の 中 で,国 家 に よ る経 済 誘 導 に 対 す る憲 法 上 の統 制 につ い て 詳 述 して い る が⑨,そ の 中 で,「 優 遇 を 受 けて いな い競 業 者 は,同 じ経 済 市 場 で活 動 して い る他 の企 業 家 へ の 資金 助 成 を どの程 度 ま で感 受 しな け れ ば な らな いか 」 を論 じて お りUO),さ らに そ こ で は,「 破 滅 的 資金 助 成 禁止 の 原 則 」 とで もい うべ き法 理 へ の言 及 が あ る。. 資 金 助 成 は,優 遇 を受 け て い な い競 業者 が,そ れ以 前 に は強 化 され た競 争 の. (9)RiadigerBreuer,DieStaatlicheBerufsregelungandWirtschaftslenkung,in:JosefIsensee/PaulKirchhof,HandbuchdesStaatsrechtsder BundesrepublikDeutschland,Band6,2Aufl.,2001,ァ148. UO)Breuer(Anm.9),Rdnr.,77. 一150一.
(5) ドイツにおける資金助成 に対 する憲法 的統制の可能性 初 期 状 態 に置 か れ て い た の に,他 の 事 業 者 へ の 排 他 的 な優 遇 に よ って破 滅 的競 争 に さ らさ れ る場 合 に,優 遇 を 受 けて い な い 競 業 者 の 職 業 上 の競 争 の 自由 を 侵 害 しう る。 か か る場 合 に は,基 本 権 の 第 三 者 保 護 の 観 点 か らす れ ば,「破滅 的 資 金 助 成(erdrosselungssubvention)」. が 存 在 す る。 も っ と も,こ れ が存 在 す る. と いえ る た め に は,優 遇 を受 け て い な い競 業 者 の 範 囲 に含 まれ る個 々 の企 業 家 また は企 業 家 集 団が 市 場 に よ って圧 迫 を 受 け るだ けで は十 分 で は な い。 破 滅 を もた らす 競 争(ruinSsWettbewerb)は,優. 遇 を受 け て い な い 競 業 者 が,原 則. と して そ の 事 業 の停 止 や そ の職 業 の 断念 に 追 い 込 まれ る場 合 に,む. しろ初 め て. 市 場 に現 れ るの で あ るαD。. 破 滅 的競 争 と い う限 られ た 場 合 で は あ る もの の,基 本 権 侵 害 の 問題 とな る こ とを 指 摘 して お り,き わ め て 興 味 深 い見 解 で あ る。 この 見 解 は,「 破 滅 的 資 金 助 成 」 に 当 た る場 合 に は,こ の よ うな 資 金 助 成 は,優 遇 を受 けて いな い者 の 基 本 法12条1項. の 職 業 選 択 の 自 由 に対 す る. 侵 害 に当 た る と構 成 して,客 観 的 な 許 可 制 限 の 場 合 と同 様 に,「き わ め て重 要 な共 同体 の 利益 に対 す る,証 明 可 能 で 発 生 す る こ とが ほ ぽ確 実 な重 大 な 危 険 の 防止 の た め に不 可 欠 で あ って 狭 義 の 比 例 原 則 を 充 た す 」 場 合 に の み 正 当化 可 能 で あ る とす る⑫。 この見 解 は,ド イ ツ に お い て は,ま. った く突 拍子 もな い主 張 で あ るわ け. で は な い よ うで あ る。 この見 解 は,判 例 が,租 税 優 遇 措 置 に関 して,同 様 の 「破 滅 的租 税 禁 止 の原 則 」 とで もい うべ き法 理 を形 成 して い る と して, こ の原 則 を資 金 助 成 の分 野 に も応 用 しよ う とす る もの だ か らで あ る。 そ こ で,次. に プ ロ イ ア ー が 「破 滅 的租 税 」 に 関す る もの と して挙 げ るい くつ か. の判 例 を紹 介 しよ う。 (1DBreuer,a.a.0. (12)Breuer,a.a.0. 一151一.
(6) 、・「。 瓢、韻. 近畿大学法学. 第55巻第4号. (2)「 破 滅 的 租 税 」 に 関 す る 判 例 ①1961年10月30日. 連 邦 憲 法 裁 判 所 第1法. [事実]原 告 は 酒 場(Schankwirtschaft)営. 廷 判 決(SVerfGE13,181) 業 の許 可 を ベ ル クハ イ ム 郡 か ら得. た が,ベ ル ク ハ イ ム 郡 の 租 税 規 則 に 基 づ き,酒 類 免 許 税(Schankerlaubnissteuer)と. して447,50マ ル ク を課 税 さ れ た。 こ の金 額 は,同 規 則2条1項(「. 額 は,新 た な 飲 食 店(お. 税. よ び新 た な小 売 り)の 設 置許 可 が 与 え られ る時 点 で 投. 下 固 定 資 本 お よ び経 営 資 本 の5パ ー セ ン トな らび に年 聞 収 益 の10パ ー セ ン トと す る」)に基 づ い て 算 出 され た もの で あ る。 原 告 は この 課 税 が 基 本 法12条1項 よび3条1項. お. に違 反 す る な ど と して訴 え を提 起 した。 連 邦 行 政 裁 判 所 は原 告 の. 上 告 を 棄 却 した(基 本 法12条1項. 違 反 の主 張 に対 して は,酒 類 免 許 税 は職 業 選. 択 の 規 律 で はな く職 業 遂 行 の規 律 で あ る と して これ を 認 め な か った)の で,原 告 は 憲 法 訴 願 を 提 起 した。 原 告 は,基 本 法12条1項. に 関 して,酒 類 免 許 税 は,. これ によ って 経 済 的 不 利 益 を 著 し く課 す こ と で飲 食店 と い う職 業 へ 参 入 す る こ と が 困 難 に な る の で あ り,「動 機 を 決 定 づ け る か た ち で の(motivationsbestimmend)」. 職 業 選択 の 自由 に 対 す る 侵害 で あ る と主 張 した。. [判旨]請 求 棄 却 「 原 則 と して,基 本 法12条1項. は,職 業 活動 に 関 わ り これ を 直 接 に 対 象 とす る. 規 定 に 対 して の み,審 査 基 準 の 規 範 で あ る と考 え られ る。 こ の職 業 活動 へ の 直 接 の 関 わ りは,許 可 条 件 の 形 式 で 開 始 ま た は終 了 時 に職 業 遂 行 を規 律 す る規 定 や,い わ ゆ る純 粋 な遂 行上 の 規 律 と して,職 業 従 事 者 が そ の職 業 活 動 を個 別 に どの よ うに形 成 す る べ き か とい った 方 法 を 決 定 す る規 定 の場 合 に存 在 す る もの で あ る」。 とは い え,「 基本 法12条1項. で 審 査 す るた め に,職 業 活 動 が規 範 の直. 接 の 規 律 対 象 で あ る こ とを 例 外 な し に要 求 す る こ と はで き な い 」。 薬 局 判 決 が 明 示 して い る よ うに,職 業 選 択 は 公 権 力 に よ る侵 害 か ら最 大 限 自 由 で な け れ ば な らず,職 業 選 択 の 自由 を 保 護 す る には,職 業 活 動 を 直 接 に対 象 とす る規 定 だ け を 基 本 法12条1項. で 審 査 す る と い うの で は 不 十 分 だ か らで あ る。 「基 本 法12 一152一.
(7) ドイ ッ に お け る 資金 助 成 に 対 す る憲 法 的統 制 の 可 能 性. 条1項. が保 障 しよ う と して い る特 別 な 自 由の 領 域 は,直 接 に職 業 を 規律 す る性. 格 を有 して い る か 否 か に か か わ らず,事 実 上 の 影 響 ゆえ に,職 業 選 択 の 自由 を 間 接 的 に害 す る と い え る規 定 に よ っ て も抵 触 す る こ とが あ り うる」。 「租 税 規 定 も,こ の よ うな 効 果 を 結 果 と して もた ら し う る。 租 税 規 定 は,そ の 内 容 に よ って 職 業 行 使 と密 接 に 関 係 し,一. 客観 的に. が 明 らか に認 め られ る場 合 に は,基 本 法12条1項. 職 業 を 規 律 す る傾 向. で 審 査 さ れ う る」。 ど の よ う. な 条 件 で あれ ば職 業 行 使 と密 接 に 関係 す るか を 一 般 的 に述 べ る こ と は で き な い が,「 租 税 法 律 が,特 定 の職 業 行 使 の た め の許 可 の付 与 を,課 税 を 根 拠 づ け る構 成 要 件 と して お り,職 業 行 使 の 開始 時 に お け る職 業 の 許 可 が 経 済 的 不 利 益 と結 び つ いて い る場 合 に は,職 業 活 動 との 内 的 お よ び外 的 な 結 びつ きが 存 在 す る」。 次 に,租 税 法 律 を基 本 法12条1項. に対 す る侵 害 と して 審 査 す る と して,ど. の. 段 階 の侵 害 と して み るか が 問題 とな るが 戦 少 な く と も職 業 行 使 に 対 す る規 律 と同 様 に取 り扱 う もの の,租 税 の種 類 に よ って は,職 業選 択 の 自由 に対 す る制 約 と も な り う る。 「したが って 決 定 的 で あ るの は,租 税 が そ の 経 済 的 な影 響 ゆ え に 許 可 条 件 に 近 くな るか 否 か で あ る」 。 職 業 選 択 の 自由 に対 す る影 響 が あ る と い え る の は,租 税 が職 業 へ の 参 入 を 完 全 に 妨 げ る場 合 だ け に 限 られ るわ け で は な い が,「 動 機 を決 定 づ け る か た ち で の」影 響 で は不 十 分 で あ る。 「む しろ,自 由 な 職 業 選択 に 対 す る影 響 が あ る と法 的 に考 え られ るの は,租 税 が,そ の 客 観 的 な 内容 お よ び金 額 ゆ え に,そ れ に関 わ る職 業 を 希望 す る者 が,選 択 した 職 業 を 生 計 の基 礎 とす る こ とを,原 則 と し. ⑬. ドイ ツ憲 法 の 研 究者 に は周 知 の こ とで あ るが,職 業 の 自 由 に対 す る 制約 の 合 憲 性 審 査 を行 う 際 に は,薬 局 判 決 で示 さ れ た い わ ゆ る「段 階説 」(Stufentheorie) が用 い られ る。 こ れ は,規 制 を 侵 害 の 強 さ に よ って 職 業 行 使 の規 制,主 観 的許 可 条 件,客 観 的許 可 条 件 に分 類 し,順 に 正 当 化 の た め の 基 準 を 厳 し く して い く と い う理 論 で あ る。 詳 細 につ い て,た. とえ ば,参 照,ボ ー ド ・ピエ ロ ー ト=ベ. ル ンハ ル ト・シ ュ リ ンク(永 田秀 樹=松 本 和 彦=倉 権(法 律 文 化 社,2001年)304頁. 以下。 一153一. 田原 志 訳)・ 現 代 ドイ ツ 基本.
(8) 近畿大学法学. 第55巻第4号. て 経 済 的 に 不 可 能 とす る 場 合 の み で あ る」 。 職 業 選 択 の 自 由 に対 す る 影 響 が あ る とは い え な い と き に は,職 業 遂 行 の 自 由 に対 す る規 律 に妥 当 す る基 準 が 使 わ れ る。 本 件 の 酒 類 免 許 税 は,職 業 を 規 律 す る傾 向 が 十 分 に明 らか に認 め られ る の で,基 本 法12条1項. に対 す る侵 害 に 当 た る。 しか し,免 許 税 の 支 払 い が 営 業 の. 許 可 を受 け る要 件 と は され て お らず,税 金 を支 払 わ な くて も許 可 が 取 り消 され る わ け で もな い の で,職 業 選 択 の 自 由 に 直 接 に 関 わ る 規 定 と は い え な い。 ま た,投 下 固 定 資 本 お よ び経 営 資 本 の5パ ー セ ン トな らび に 年 間 収 益 の10パ ー セ ン トとい う税額 は,憲 法 上 注 目 され る よ う な 自 由 な職 業 選 択 へ の影 響 を もた ら す とは い え な い。 そ れ ゆ え,本 件 の 酒 類 免 許 税 は職 業 遂 行 の 自由 に 対 す る制 限 と して み れ ば十 分 で あ るが,厚 生 政 策,社 会 政 策,国 民 経 済 政 策 に お け る公 益 が存 在 す る こ と,客 の 社 交 や ア ル コー ル 摂 取 の要 求 を営 業 の種 に す る 可 能 性 が 開か れ て い る こ と な どか らす れ ば,相 当性 を 欠 く とは い え な いω。. ②1963年5月22日. 連 邦 憲 法 裁 判 所 第1法. [事実]1955年4月6日 ⑳. 廷 判 決(BVerfGE16,147). の輸 送 財 政 法 に よ り輸 送 税 法(Beforderungsteuerge一. 原 告 は,こ の他 に も,酒 類 免 許 税 を 課 す 権 限 は ラ ン トに な い と して,基 本法 80条1項2文. 違 反 を 主 張 した 。 しか し,連 邦 憲 法 裁 判 所 は,ラ. ン トに は か か る. 権 限 が あ り,同 種 の課 税 を連 邦 が 行 った り規 律 した り しな い限 り連 邦 法 に も違 反 しな い こ と,酒 類 免 許 税 の徴 収 は 社 会 政 策 や 営 業 政 策 に関 す る連 邦 法 の領 域 に も反 射 的 作 用 を及 ぽす が,ラ. ン トに 租 税 の 領 域 で 管 轄 を 認 めて い る の は い わ. ば特 別 法 で あ り,一 般 法 と して の権 限分 配 へ の 影 響 を 理 由 に これ が 認 め られ な くな る こ と はな い こ とな ど を判 示 して,こ. の主 張 を斥 け た。. また,原 告 は,酒 類 免 許 税 が基 本 法3条1項. か ら導 か れ る課 税 適 正 の原 則 に. 違 反 す る と も主 張 したが,連 邦 憲 法 裁 判 所 は,課 税 適 正 の 原 則 を 適 用 す る 際 に は生 活 関 係 を比 較 す る こ と に な る が,生 活 関 係 の う ち どの 要 素 を 決 定 的 とす る か の 判 断 は立 法 者 の裁 量 事 項 で あ る こ と,さ らに 税 源 の 選 択 に は立 法 者 が 広 い 内 容 形 成 の 自 由 を有 す る こ と を示 した上 で,酒 場 の 営 業 に 免 許 税 が 課 され る こ とは,酒 類 の 売 上 げ の大 き さ,飲 食 店 や 酒場 の営 業 に は 一 般 に 多 くの 営 業 警 察 上 の 規 制 が 存 在 す る こ とか ら,正 当 化 され る と した 。 一154一.
(9) ドイツにおける資金助成 に対す る憲法的統制 の可能性 setz)が 改 正 さ れ,「 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送(Werkfernverkehr)」 に 課 され る輸 送 税(Beforderungsteuer)の. 税 率 が 引 き上 げ られ,1955年6月. 1日 か ら トンキ ロ メー トル あ た り3ペ ニ ヒ,1956年10月1日 トル あ た り4ペ ニ ヒ,1958年4月1日 され た 。 これ は従 来 の 約5倍 nenverkehr)や. か ら トン キ ロ メ ー. か ら トンキ ロメ ー トル あ た り5ペ ニ ヒと. に あ た り,こ の結 果,そ れ まで,鉄 道 輸 送(Schi-. 遠 距離 自動 車 貨物 輸 送(Giiterbefiirderung)と. 同 じ条 件(輸 送. 代 金 の7パ ー セ ン ト)で 課 税 され て い た 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 は, 不 利 な 立場 に置 か れ る こ と と な っ た。 そ こ で,こ の輸 送 税 の税 率 を 定 め る輸 送 税 法1条1項. が基 本 法 に違 反 す る と して,憲 法 訴願 の 訴 え が 提 起 され た 。. [判 旨]請 求 棄 却 1.〔 序 論 〕 「こ こ で 判 断 す る べ き規 定 の特 徴 は,租 税 の徴 収 とい う租 税 法 規 範 の 固 有 の 目 的 が,一 般 的 な交 通 秩序 の 枠 内 で 特 に 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物輸 送 を 抑 制 す る と い う輸 送 政 策 上 の 目的 の 背 後 に 隠 れ て し ま っ て い る こ と で あ る」 。 そ れ ゆ え,重 要 で あ る の は,租 税 法 律 に こめ られ て い る経 済 的 な誘 導 措 置 で あ る。 「経 済 的 な 諸 力 の活 動 へ の法 律 に よ る侵 害(Eingriff)は,租. 税 法 律 の形 式 に. お いて も,許 され な い わ け で は な い」。 「租 税 法 律 によ る侵 害 が 主 に経 済 政 策 上 の 目的 を追 求 す る もの で あ る こ とは,憲 法 違 反 の 形 式 の 濫 用 が 存 在 す る との帰 結 を 直 ち に導 くわ け で は な い。 か か る濫 用 を 語 る こ とが で き るの は,租 税 法 律 が,課 税 要 件 の 充 足 を実 際 上 不 可 能 とす る,し た が って そ の 意 味 に お い て 『破 滅 的 な(erdrosselnd)』. 効 果 を及 ぼ す こ とを 明 らか に狙 う こ とに よ って,課 税. 徴 収 を 実 現 す る と い う租 税 法 律 に概 念 上 帰 属 す る 目的 に背 く場 合 で あ る」。 し か し,本 件 で は この よ うな こ と は問 題 とな らな い 。 「この 租 税 規 範 の 有 す る経 済 誘 導 的 な性 格 ゆ え に,こ の規 範 の 基 本 法 へ の 適 合性 を 審 査 す る際 に は,ま ず 基 本 法12条1項 一155一. が 基 準 と して参 照 され な けれ ばな.
(10) 近畿大学法学. 第55巻第4号. ら な い。 なぜ な ら,経 済 的 な 誘導 措 置 と して,こ の 法 律 は,そ の関 係 者 た ち が 職 業 活 動 を行 う 際 に,そ の者 た ち に,と りわ け,直 接 に,影 響 を与 え る か らで あ る」。 皿.〔 職 業 の 自 由 と の関 係 〕 1職. 業 活 動 の 自 由 は租 税 規 範(Steuernorm)に. よ って影 響 を 受 けて い る。. 「租 税 規 範 は,そ の 内 容 ゆ え に職 業 遂 行 と密 接 に 関 係 が あ り,客 観 的 に職 業 を規 律 す る 傾 向 が 明 ら か に認 め ら れ る 場 合 に は,こ の 自 由 の 領 域 を 侵 害 し う る (BVerGE13,181[186])。. こ こで は こ の こ とが 当て は ま る」。 も っ と も,規 律 の. 対 象 にな って い る の は,個 別 の職 業 で は な く,様 々な 職 業(原 料 生 産,加 工, 卸 売,小 売)に 共 通 な 職 業 活 動(berufstatigkeit)の. 一 部 分 で は あ る。 と もあ. れ,「 職 業 を 規 律 す る傾 向 は明 白で あ る」。 2本. 件 で 問 題 とな って い る職 業 の 自 由 に対 す る侵 害 は,職 業 選 択 の 制 限 で. は な く,職 業 遂 行 の 規 律 の段 階 に あ る もの で あ る。 「職 業 を遂 行 す る能 力 と納 税 義 務 と の 法 的 な 結 び 付 き が 存 在 して い る わ け で は な い(BVerGE13,181 [186])。 輸 送 税 の 不 払 い は,た ん に 他 の 税 の 取 立 て を 導 くに す ぎな い 」。 「そ れ ゆ え,こ の 租 税 規 範 は,原 則 と して,職 業 遂 行 の 規 律 と同 様 に取 り扱 う べ き で あ る。 この 租 税 規 範 は,間 接 的 に活 動 に影 響 を与 え て い る。 検 討 す べ き な の は,た だ,本 件 に お け る遂 行 の 規 律 が 経 済 的 効 果 ゆ え に 関係 す る 企業 家 に そ の 職 業 の実 現 を 原 則 と して 不 可 能 とす る こ と に よ って,許 lassungsregelung)に. 可 の 規 律(Zu-. 近 づ か な い か と い う こ と だ け で あ る… … 。 こ の こ と は. … … 当 て は ま らな い」。 「高 い 税 率 の 押 し付 けが,企 業 家 を 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 の 断 念 や 中止 に追 い込 む もの で あ って も,そ の 全 体 の 事 業 の 断 念 に追 い込 ま な い 限 りで,職 業 選 択 へ の 作 用 は 存 在 しな い 」。 な ぜ な ら,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 は,「本 来 の職 業(た. とえ ば,ビ ー ル 醸 造 や 家 具 生 産)を 遂 行 す る手 段. に過 ぎ な い 」 の で あ って,「 事 業 者 が,活 動 の た め に納 入 業 者 か ら受 け取 る べ 一156一.
(11) ドイ ツ にお け る資 金 助 成 に対 す る憲 法 的 統 制 の可 能 性. き,ま た は 買 い 手 に送 るべ き物 品 を,自. らの原 動 機 付車 両 で 運 搬 す るか,一 般. の 運 輸 業 者 に依 頼 す るか は,そ の事 業 の性 格 に と って 決 定 的 な 重 要 性 を 有 す る もの で はな い」 か らで あ る。 それ ゆ え,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 を 断 念 す る こ と は,本 来 の職 業 が 続 け られ る 限 りに お い て,職 業 選 択 に対 す る侵 害 とな るよ うな 法 的 意 味 を 持 た な い。 「高 い輸 送税 の 押 し付 け が,事 業 全 体 の断 念 に追 い込 む場 合 で あ って も,こ の 規 律 は,職 業 選 択 の 規 律 に完 全 に近 づ くわ け で は な い。 な ぜ な ら,こ の よ う な 場 合 は 例 外 だ か らで あ る。 職 業 遂 行 の規 律 は,そ れ が,職 業 の 遂 行 か ら得 られ る利 益 を,事 業 者 が 従 来 の 職 業 を放 棄 す る こ とを強 い られ るま で に縮 減 す る あ らゆ る場 合 に お い て,自 由 な職 業 選 択 へ の反 射 的 効 果(Ruckwirkung)を. もつ. わ けで はな い 。 む し ろ,自 由な 職 業 選 択 へ の反 射 的効 果 が法 的 に考 慮 され るの は,租 税 が そ の 客 観 的 な 内 容 お よ び金 額 ゆ え に,そ の 関 係者 に,原 則 と して, 選 択 した職 業 を 経 済 的 に 不 可 能 とす る場 合 に限 られ る」。 しか し,本 件 で は そ こま で の 効 果 を認 め るだ けの 十 分 な 根 拠 に欠 け る。 「しか し,高 い 輸 送 税 に存 す る 〔 職 業 〕遂 行 の規 律 は,特 定 の 事 業 お よ び事 業 種類 な らび に特 定 の 経 済 分 野 に お い て,一 般 的 に,職 業 遂 行 の 自由 を 痛 む ほ ど に(empfindlich)侵. 害 して い る。 これ もま た,立 法 者 の 意 図 す る と こ ろで あ る。. こ こで は,こ の影 響 が 広 範 囲 で 生 じて い る こ と が認 め られ る。 この と き,こ の 侵 害 は,も. はや 公 益(Gemeinwohl)の. い か な る合 理 的 な 評 価 を も って して も. 正 当 化 で き ず,事 業 者 の 職 業 が 阻 害 され る こ と に優 位 す る ほ ど重 み の あ る公 益 を も って の み正 当化 で き る。 〔しか し〕か か る厳 しい審 査 基 準 を用 い て も,連 邦 憲 法 裁判 所 は 基 本 法12条1項. 違 反 を一. 少 な くと も当面 は. 根拠 づ け る こ と. が で き な い」。 3自. 家用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 を単 独 で見 る の で は な く,よ り大 き. な枠 の 中 で捉 え な け れ ばな らな い,と. して,交 通 政 策 の 問題 と して 捉 え る。 輸. 送 とい う点 に お い て は,鉄 道 は競 争 相 手 で あ る が,鉄 道 は輸 送 量 に 余 力 が あ る 一157一.
(12) 近畿 大学法学. 第55巻第4号. の に 対 して,道 路 は 自動 車 輸 送 が 増 加 した結 果,道 路 も疲 弊 し,ま た 交 通 事 故 の増 加 とい った 問 題 が 生 じて きて い る。 鉄 道 は,線 路 や設 備 の 維持 に コス トが か か る こ と,輸 送 が 線 路 に 縛 られ る こ と,公 共 の利 益 の た め に使 用 しな け れ ば な らな い度 合 い が 高 い こ と,と い った 競 争 上 不 利 な 条 件 に お か れ て い る。 逆 に,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 に は,法 的 な制 限 が な く,税 金 に お い て も有 利 な条 件 に お か れ て い る。 こ う した 背 景 の もと,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 の輸 送 量 は 増 大 して きて お り,将 来 も この 傾 向が 続 く と考 え られ て い る。 か か る視 点 に基 づ く とき,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 を抑 制 す る 目的 で これ に高 い課 税 を 行 う こ と も評 価 す る こ とが 可 能 で あ る。 こ の 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 の 抑 制 とい う立 法 目的 は法 律 制 定 手 続 に お い て も明 言 され て い る。 4全. 体 交 通(Gesamtverkehr)は,大. 変 に重 要 な もの で あ り,そ れ が無 秩. 序 に 陥 る と経 済 生 活 や社 会 生 活 に危 険 を もた らす。 そ れ ゆ え,か か る危 険 を避 け るた め に必 要 な 措 置 を 講 ず る こ と に よ って,い. くつ か の グル ー プの 事 業 者 の. 基 本権 が 後 退 させ られ る の もや む を え な い(経 済 的諸 力 に よ る 自主 規 制 を 当 て に す る こ とは 適 切 で は な い)。 5高. い課 税 は,基 本 権 が 命 じて い る比 例 原 則 お よ び期 待 可 能 性 の 限 界 を 超. え る か を検 討 しな け れ ば な ら な い。 この 点,上 記 の危 険 を 回避 す る ほか の 方 法 も存 在 す る が(道 路 で の重 い大 量 生 産 品 運搬 の 禁止 や 免 許 制,割 当 制 な ど),実 効 性 が な か った り,職 業 の 自 由 に対 す る侵 害 の 程 度 の 点 で 問 題 が あ っ た りす る。 ま たi輸 送 税 の値 上 げ そ の もの が 許 され る程 度 を 超 え て い る とい う こ と も で き な い。 な ぜ な ら,自 家 用 自動 車 によ る遠 距 離 貨 物 輸 送 は完 全 に破 滅 して お らず,広 範 囲 に お い て な お 存 在 し続 けて い るか らで あ る。 他 方,連 邦 国鉄 の 赤 字 は大 き く,「 長 距 離 輸 送 の 競 争 に対 して 連 邦 国 鉄 を保 護 す る こ とは 近 年 で も 余 計 な こ と にな って い る よ う に は思 わ れ な い」。 事 業 者 は,鉄 道 や遠 距 離 自動 車 貨物 輸 送 に 乗 り換 え る こ とで 負 担 を 回避 す る 一158一.
(13) ドイ ツ にお け る資 金 助 成 に対 す る憲 法 的 統 制 の可 能 性 こ とが で き る。 また,課 税 が 事 業 者 に与 え る影 響 は様 々 で あ るが,競 争 状 態 に お か れ て い る事 業 者 は通 常,誘 導 措 置 に適 応 しよ う とす る の で あ り,特 性 や 地 理 的 環 境 ゆ え こ れ に適 応 で き ず,課 税 の 影 響 を 受 け る事 業 者 は例 外 に と ど ま る。 この影 響 の 違 い を 捨 象 して い る こ と は,個 人 の人 格 の 自由 に と って 職 業 選 択 の 自由 が もつ意 義 に 反 す る もの で は な い。 自家用 自動 車 によ る遠 距 離 貨 物 輸 送 の制 限 が,公 益 に 限定 的 な 利 益 しか もた ら して い な い と して も,そ の 制 限 が 狭 義 の 比 例 原 則 に反 す る こ と に は な らな い。 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 は,全 体 交 通 の危 機 の 原 因 の ひ とつ に 過 ぎ ず,ま た そ の 転 換 先 が 鉄 道 よ りむ しろ遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 で あ る と して も,全 体 交 通 に 対 す る良 い 影 響 を 否 定 す る こ と は で き な い 。 結 果 が 不 十 分 で あ った こと は,立 法 者 の 取 った 手 段 が 最 初 か ら客 観 的 に不 十 分 で あ った こ とを 確 実 に導 くわ け で は な い 。1955年 当 時 の 立 法 者 の立 場 は,一 方 で は 早 急 に鉄 道 輸 送 の 減 少 に対 す る 対 策 を 取 る必 要 が あ っ た に もか か わ らず,他 方 で ど の 程 度,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 が 鉄 道 輸 送 の減 少 を増 大 させ て い た の か,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 を 減 少 させ る だ け で な く道 路 か ら鉄 道 へ 流 通 を転 換 させ る に は どの よ う にす れ ば よ い のか,と. い っ た点 に 関 す る 経 験. や 基 礎 が 欠 けて い た。 措 置 も暫 定 的 で あ った⑮。. ⑮. こ の後,IIIで は平 等 原 則 と の関 係 につ き,次 の よ うに判 示 して い る。 遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 は 価 格 に基 づ く課 税 な ので,距 離 に よ り逓 減 す る が, 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物輸 送 は 距 離 に基 づ く課 税 な の で,距 離 に よ る逓 減 が な い。 そ の結 果,自. 家用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 に課 さ れ る税 金 は最. 終 的 に 同 じ輸 送 を遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 で 行 った 場 合 の 約5倍. に な る。 この よ. う な 違 い も,12条 の 場 合 と 同 じ立 法 目的 か ら合 理 的 な 説 明 が 可 能 で あ る。 ま た,租 税 の 公 平 の要 請 は,あ. らゆ る場 合 に 平 等 を 求 め るわ けで は な い。 抑 制 の. 方 法 が 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨物 輸 送(も. っぱ ら課 税 に よ る)と 遠 距 離 自. 動 車 貨 物 輸 送(ほ か に も割 当制 な どに よ り規 律 され る)と で 異 な る の で あ り, 課 税 の 態 様 を 比 較 して 異 な って いて も公 平 の要 請 に反 す る わ け で は な い。 さ ら に,IVで. は財 産 権 と の関 係 で 次 の よ う に判 示 して い る。. 租 税 規 範 は,原 告 が 「そ の営 業 活動 を 減退 させ た り,… … 自家 用 自動 車 に よ/ 一159一.
(14) 近畿大学法学. 第55巻第4号. ③1974年7月17日 [事実]当. 連 邦 憲 法 裁 判 所 第1法. 廷 決 定(BVerfGE38,61). 時,鉄 道 の 輸 送 量 が 減 少 す る 反 面,道 路 の輸 送 量 が 劇 的 に 伸 びて お. り,政 府 と して は,ド イ ツ 国鉄 へ の補 助 金 の 増 加 を 抑 え る と と も に,道 路 輸 送 にお け る渋 滞 を減 ら しま た安 全 を確 保 す る た め に,措 置 を 講 ず る こ とが 不 可 避 で あ った 。 そ こ で,運 輸 大 臣 は1967年9月. に 「1968年か ら1972年 まで の 輸 送 政. 策 プ ロ グ ラ ム」 を発 表 し,鉄 道 の合 理 化 を 行 うな どす る と と も に,1968年12月 28日 に道 路 貨 物 輸 送 税 法 を制 定 して,遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 につ いて は1ト. ン. キ ロあ た り1ペ ニ ヒの,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 の うち,4,000キ. ロ. を 超 え る積 載 量 の トラ ッ クや トレー ラー に よ る遠 距 離 輸 送 に課 税 を 行 った(1 条,4条)。 条),そ. も っ と も,こ の 法 律 に は一 定 の 場 合 に非 課 税 とす る定 めが あ り(2. こで は,輸 送 の一 部 を 鉄道 や 内 国航 路 を 用 い る場 合(3号)や,混. 料 を特 別 タ ン ク車 両 で 輸 送 す る場 合(4号h)な 律 は1969年1月1日. どが挙 げ られ て い た 。 この 法. か ら発 効 した。 当初 は こ の法 律 は1970年12月31日. 限立 法 で あ った が,そ の 後1971年12月31日. 合飼. までの時. ま で延 長 さ れ た。 事 業 者(ミ ネ ラル. ウ ォー タ ー,液 体 ガ ス,革 張 り家 具 等,混 合 飼 料 〔た だ し この 業 者 は 中 小 業 者 の た め,特 別 タ ン ク車 両 は使 用 して い な い〕,穀 物 の 種 子 や 肥 料 等,お よ び木 材 の販 売 業者,な. らび に認 可 を 受 け た遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 業 者)が,こ. の法律. の憲 法 適 合 性 に 関 して 憲 法 訴 願 の 訴 え を提 起 した。 ま た,こ れ と別 に,こ の 法 律 に基 づ い て 納 税 告 知 書 を 受 けた3つ の 事 業 者 が 提 起 した取 消訴 訟 に 関 して,. \ る遠 距 離 貨 物 輸 送 を 中 止 しな けれ ばな らな くな る だ け で は,基 本 法14条 で 保 護 さ れ る財 産 権 へ の 侵害 とは な らな い」。 「国 家 の 命 令 に よ って 強 い られ た収 益 可 能 性 の減 少 は,そ れ が 活動 の 制 限 に繋 が る こ とを も って,許. さ れ な い収 用 とは. な らな い」。 最 後 に,Vは. 傍 論 で,措 置 を 行 って か らの 期 間 の 短 さ を強 調 しつ つ,自 家 用. 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 へ の 不 利 な 取 扱 いが 続 き,そ れ に もか か わ らず 貨 物 の鉄 道 輸 送 へ の振 替 が 伸 び な い な らば,こ の 措 置 を 見 直 す 必 要 が あ る こ とが 述 べ られ て い る。 一160一.
(15) ドイ ツに お ける 資 金 助 成 に 対 す る憲 法 的 統 制 の 可 能 性. 財 政 裁 判 所 が具 体 的規 範統 制 の た め に事 件 を 移 送 した。 [判 旨]一 部 請 求 認 容(=1968年12月28日. 道 路 貨 物輸 送税 法2条6号hは,特. 別. タ ン ク車 両 に よ る 混 合 飼 料 の 輸 送 が 非 課 税 と な る 限度 で,基 本 法3条1項. と結. 合 した12条1項. に適 合 せ ず,そ の 範 囲 で,異 議 申 立 人1d)〔=混. 業 者 〕 の基 本 法3条1項. と結 合 した12条1項. 合飼料の販売. の基 本 権 を侵 害 して い る。 そ れ 以. 外 の規 定 は基 本 法 に違 反 して い な い)。 皿.〔=職. 業 の 自 由 と の関 係 〕. 1.「 以 前 の輸 送 税 法 に 関 す る1963年5月22日 GE16,147)が,こ. の連 邦 憲 法 裁 判 所 判 決(BVerf-. こで 提 起 さ れ て い る憲 法 上 の 問題 を原 則 的 な観 点 か ら広 範 に. 説 示 して い る。 これ を補 うか た ち で 以 下 述 べ る」。 自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 へ の 課 税 は職 業 選 択 の 自 由 を 侵 害 しな い。 「 職 業 を 規 律 す る租 税 法 律 は,『当該 職 業 に従 事 す る者 が 例 外 で は な く原 則 と して,選 択 した職 業 を完 全 に また は部 分 的 に そ の生 計. ま た法 人 の場 合 には 企 業 活 動一. の 基 礎 とす る こ. とが,経 済 的 に もは や で きな い状 態 とな る』(BVerfGE30,292[314]㈱)場. ⑯BVerfGE30,292.こ. れ は,「1965年9月9日. 合. 石 油 精 製 品 最 少 備 蓄 に 関 す る法. 律」 の 合 憲 性 が 争 わ れ た事 案 で あ る。 こ の法 律 は石 油精 製 品 を ① ベ ンジ ン,② 動 力 用 燃 料,軽 油,灯 油,③ 重 油 の3種 類 に分 類 し,こ れ らを 輸 入 また は精 製 して い る業 者 に,輸 入 業 者 に お い て は前 年 の45日 分 の輸 入量,精. 製業者 におい. て は 前 年 の65日 分 の 精 製 量 の 備 蓄 を義 務 づ け る もの で あ った 。 この 法 律 に は, 石油 精 製 品 の 供 給 を 確 保 す る と い う 目的 と と もに,エ ネ ル ギ ー が 石 炭 か ら石 油 へ移 行 し始 め て 石 炭 産 業 が 斜 陽 に な りつ つ あ る 中 で,石 油 産 業 に 一 定 量 の 備 蓄 を義 務 づ け経 済 的 な 負 担 を 課 す こ とで 石 炭 産 業 を保 護 す る とい う競 争 政 策 上 の 目的 もあ った。 原 告 は いず れ も,巨 大 コ ン ツ ェ ル ンに は属 しな い 独 立 系 の 輸 入 業 者 に分 類 さ れ る。 い ず れ の 企 業 に お いて も,石 油 精 製 品 の輸 入 販 売 が 総 売 上 げ の圧 倒 的 な 割合 を 占め て いた 。 原 告 は,も と も と輸 入 した港 湾 で 直 ち に問 屋 や大 口 の顧 客 に 品物 を 引 き渡 す 業 務 で あ り貯 蔵 施 設 を持 た な い 業者 が タ ン ク等 を持 つ の は経 営 コス トを 著 し く引 き上 げ る こ と,軽 油 の よ うに 冬季 だ け在 庫 す れ ば よ い もの で も一 年 を 通 じて の 貯 蔵 を 義 務 づ け る の は市 場 で の機 能 に反 す る こ と,な ど の理 由 か ら,こ の法 律 が基 本 法12条1項,14条,2条1項,3条1 項 に違 反 す る と主 張 した。/ 一161一.
(16) ・いζ脅. 近畿大学法学. 第55巻第4号. に限 り,自 由 な 職 業 選 択 の権 利 の 侵 害 ゆ え 憲 法違 反 とな る」。 しか し,こ こ で は この よ う な場 合 に あ た らな い。 「職 業 遂 行 の 規 律 が 基 本 法12条1項. \. に適 合 す るか 否 か を 検 討 す る に あ た っ て. 憲 法 裁 判 所 は,次 の よ う に判 断 した上 で,こ の 法律 は,企 業 の 経 済 構 造 か ら 生 じる,そ の 競 争 能 力 を本 質 的 に損 な うよ うな,備 蓄 義 務 に よ る負 担 を 適 切 に 考 慮 す る可 能 性 を 予 見 して い な い限 りで,基 本 法3条1項. と結 びつ い た12条1. 項 に適 合 しな い と決 定 した 。 基 本 法12条1項. との 関 係 で は,本 件 で保 護 さ れ て い る営 業 活動 は,「石 油 輸 入. 業 」 で あ って,原 告 が 主 張 す る よ う な 「コ ンツ ェル ンか ら独 立 した 中 小 の 石 油 輸 入 業 」 で はな い と した 上 で,備 蓄 義 務 は法 的 に石 油 輸 入 業 へ の 参 加 を 法 的 に 制 限 して い る わ け で も この 職 業 の 遂 行 を 事 実 上 不 可 能 と して い る わ け で もな く,職 業 選 択 の 自由 に対 す る規 律 に は 当 た らず,職 業 遂 行 の 自由 に 対 す る規 律 で あ る。 も っ と も,職 業 遂 行 の 自 由 の規 律 で あ って も経 済 的 な影 響 の 点 で 許 可 制 限 に近 づ く と き に は職 業 選 択 の 自 由 を 侵 害 して い る とい え る が,「 こ の こ と は,し か しな が ら,規 律 が 職 業 遂 行 か ら得 られ た収 益 を,い. くつ か の 企 業 家 が. そ の 従 来 の 職 業 を 断 念 す る こ とを 導 く程 度 に減 少 させ る だ け で は,認 め る こ と は で きな い 。 自由 な 職 業 選 択 の 権 利 に対 す る違 反 は,当 該 職 業 に従 事 す る者 が 例 外 で は な く原 則 と して,選 択 した職 業 を完 全 に ま た は部 分 的 に そ の 生 計 一 ま た 法 人 の 場 合 に は企 業 活 動 一. の 基 礎 とす る こ とが,経 済 的 に もは や で き な. い状 態 とな る場 合 に の み,認 め られ るの で あ る」(S.313f。)。 本 件 で は,備 蓄 義 務 に よ って 石 油 輸 入 業 全 般 が 断 念 に追 い込 まれ て い る わ け で は な い の で,職 業 選 択 の 自由 に 対 す る侵 害 とは い え な い。 職 業 遂 行 の 自由 に 対 す る規 律 に対 して は,比 例 原 則 が 適 用 さ れ る が,こ の 法 律 は,ま ず,石 油 輸 入 業 全 体 との 関 係 で は比 例 原 則 に違 反 して い な い。 ま た, 職 業遂 行 の 自 由 の 規 律 は,「 そ の行 使 が 規 律 され て い る職 業 の 内部 で 典 型 的 に 存 在 して い る 不平 等 を 考 慮 しな けれ ばな ら」 ず,「 『独 立 した輸 入 業 者 』 は,石 油 市 場 に お い て一 定 の 客 観 的 な メル クマ ー ル に従 い区 別 可 能 な,企 業 に特 有 の 構 造 か ら生 ず る独 特 の 市場 行 動 を 示 す 企 業 グル ー プを 形 成 す る」 と こ ろ,こ れ ら独 立 した輸 入 業 者 が備 蓄 義務 が 課 され る こ と に よ って,石 油 産 業 や 鉱 工 業 に 依 存 して い る 他 の 石 油 輸 入 業 者 よ り も厳 しい 状 況 に お か れ る こ と は 明 白 で あ る。 「正 義 感 覚 を満 足 さ せ な い方 法 で,『 等 し くな い もの を 等 し く』 取 り扱 っ て い る限 りで,当 該 法 律 に含 ま れ て い る職 業 行 使 の 規 律 に よ って,法3条1項 結 びつ いた12条1項 な お,14条. と. が 侵 害 され て い る」。. との 関 係 で は,次 の よ うに判 断 して,本 件 で は 問 題 とな らな い と. した。/ 一162一.
(17) ドイ ツ に お け る 資金 助 成 に対 す る憲 法 的 統制 の 可 能 性. は,保 護 さ れ る諸 個 人 の 自由 の 領 域 と,立 法 者 が 一 般 の利 益 に お い て追 求 す る 目的 お よ び そ の 目的 の 実 現 の た め に用 い られ る手 段 と を相 互 に衡 量 しな け ば な ら な い 」。. \. 「 職 業 遂 行 の規 律 が,い か な る要 件 の も と で財 産 権 保 障 に も触 れ う る の か と い う問 い は,未 だ に 一 般 的 に は決 せ られ て い な い。 こ の 問 い は,基 本 的 に は, い か な る 自由 の 領 域 が 両 方 の 基 本 権 に よ って 保 護 され て い る か とい う視 点 に 基 づ い て判 断 す るべ き で あ る。BVerfGE7,377[397]〔=薬 邦 憲 法 裁判 所 が 述 べ た よ う に,基 本 法12条1項. 局判決〕において連. は,市 民 の,い か な る もの で あ. れ 自 らが適 切 で あ る と信 じ る活 動 を 職 業 と して行 う,す な わ ち 自 らの 生 計 の 基 礎 と し社会 全 体 の 経 営 へ の 寄 与 を 決 定 す る 自 由 を保 護 して い る。 した が って, この職 業 の 自由 の 基 本 権 は,第 一 に人 格 に関 連 して い る。 この基 本権 は,個 人 的 な経 営 や 存 在保 持 の 領 域 にお い て 人 格 の 自 由な 発 展 に対 す る基 本権 … … を 具 体 化 す る。 職 業 の 自由 の 基 本 権 は,高 度 に 「将 来 志 向」 で あ る。 基 本 権構 造 の 中 で,基 本 権 の 担 い 手 に財 産 法 の 領 域 で 自 由 な空 間 を確 保 し,自 己責 任 に 基 づ く生 活 形 成 を可 能 とす る任 務 が,財 産 権 に属 して い る(BVerfGE24,367[389] 〔=ハ ンブ ル ク堤 防法 判 決〕)。そ の 限 りで,財 産 権 の保 障 は,諸 個 人 に 自 らの 仕 事 や経 営 に よ って 得 られ た 手 持 ちの 財 産 的 価 値 あ る財 を承 認 す る こ とで,一 般 的行 為 自 由 お よ び形 成 の 自由 を補 充 す る(BVerfGE14,288[293])。 体 に 関連 した 」保 障 機 能 に よ って,基 本 法14条1項. この 「客. は,権 利 主 体 に既 に 帰 属 し. て い る権 利 状 態 の み を保 護 す る の で あ って(BVerfGE20,31[34]),と. くに 機. 会 や利 得 可 能 性 を保 護 す る わ け で は な い(BVerfGE28,119[142])。 基 本 法12条1項. こ こか ら,. との 基 本 的 な 区 別 が 導 か れ る。 す な わ ち,基 本 法14条1項. 得 物,活 動 の 成 果 を 保 護 す るの に対 して,基 本 法12条1項. は獲. は,事 業,活 動 そ の. もの を 保 護 す るの で あ る。 … … 公 権 力 の 行 為 が 個 人 の事 業 活 動 や 経 営 活 動 に 介 入 す る な らば,基 本 法12条1項. の 保 護 領 域 に触 れ,む. しろ既 存 の 資 産 の 保 持. や利 用 を画 す る な らば,基 本法14条 の保 護 が考 慮 され る」。 こ の法 律 の 定 め る貯 蔵 義 務 は,業 者 の 財 産 権 者 と して の特 性 で は な く,企 業 家 と して の特 性 に 関 わ る もの で あ る。 な お,「企 業 に課 せ られ る行 為 義 務 が,経 済 的 な 帰 結 にお い て 企 業 体 の 実 体(dieSubstanzdesGewerbebetriebs)へ 侵 害 と な る ほ ど 広 範 囲 の も の で あ る場 合 に は,基 本 法14条1項 (も)触. の. の保 護領域 に. れ て い る の か は,な お不 確 定 とい え る。 しか し,す で に 述 べ た よ う に,. 本 件 は こ の よ うな場 合 に は 当 た らな い」。 ま た,2条1項. との 関 係 で も,「原 則 と して,公 権 力 の侵 害 に際 して,個 人 は,. そ の 関連 す る 生 活 領 域 にお け る 自 由が,特 別 な基 本 権 規 範 に よ って は,同 一 の 視 点 に基 づ い て,未 だ 保 護 され て いな い場 合 に限 り,基 本 法2条1項 る こ とが で き る」 と して,本 件 で は 問題 とな らな い と して い る。 一163一. に依拠す.
(18) 近畿大学法学. 第55巻 第4号. この 法 律 の 成 立 史 か らは,こ の法 律 の 目的 は,遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 の道 路 か ら レー ル へ の 包 括 的 な転 換 を達 成 す る 目的 を 実現 す る こ とで は な く,圧 迫 さ れ て い た 鉄 道 の 出発 状 態 を良 くす る た め に,鉄 道 に 競 争 の 中 で 一 息 与 え る た め に,た ん に道 路 貨 物 輸 送 を 当時 の状 態 で押 し と どめ る とい う こ とで あ っ た。 自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 を 抑 圧 す る こ と は期 待 され て いな い。 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 の拡 張 を 食 い 止 め る とい う 目的 は,交 通 制 度 全 般 を 良 くす るた め,と. くに鉄 道 を良 くす る た め の 保護 措 置 と して 正 当化. され る。 立 法 の 背 景 に は,連 邦 鉄 道 は国 が 耐 え られ な い ほ どの 赤 字 を 計 上 して い た の に対 して,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 は幹 線 道 路 の 負 担 加 重 の 原 因 と な って い た こ とが 認 め られ る。 ま た,課 税 措 置 の 目 的 適 合 性 に つ い て も,か つ て の 輸 送 税 の 下 で の輸 送 量 の実 績 か ら認 め る こ とが で き る。 遠 距 離 自 動 車 貨 物 輸 送 や 鉄 道 へ の 代 替 が 不 可 能 な 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 に つ い て は 課 税 す る実 益 が な い ので 課 税 が 手 段 と して不 適 切 で あ る と主 張 され る が,技 術 的 な理 由 か ら代 替 不 可 能 で あ る こ と が 明 らか な もの に つ い て は 類 型 化 して非 課税 と して い る し,ま た 代 替 不 可 能 で あ る か否 か一 般 的 な 線 引 き は不 可 能 で あ る もの に つ い て は 非 課 税 と して い な い が,そ こ で は実 際 に 遠距 離 自動 車 貨 物 輸 送 や鉄 道 や 郵 便 へ の 転 換 が 起 きて い る。 結 局,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 の 抑 制 を 実 現 す る上 で 道 路 貨 物 輸 送 税 は 狭 義 の 比 例 原 則 も充 た す 。 さ らに い え ば,道 路 貨 物 輸 送 税 は,鉄 道 へ の転 換 に と って も有 用 で あ った 。 以 前 の輸 送 税 と の違 い は,道 路 貨 物 輸 送 税 は遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 に も課 税 さ れ て い る と い う こ とで あ り,実 際. 鉄 道 の 貨 物 収 入 は増 加 した と い う統 計 もあ. る。 2.営. 業 と して の遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 へ の課 税 も基 本 法12条1項. に適 合 す. る。 営 業 と して の遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 へ の 課 税 も,自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 へ の課 税 と同 様,職 業 選 択 の 自 由へ の 制 約 は問 題 と な らず,職 業遂 行 の 規 律 に 当 た る と して 検討 す る。 この 点,遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 の輸 送 量 は 一164一.
(19) ドイ ツ にお け る資 金 助 成 に対 す る憲 法 的 統 制 の可 能 性. 課 税 後 も伸 び て お り,1ト. ンキ ロあ た り1ペ ニ ヒの 課 税 は 悪 い 影 響 を与 え て い. な い。 課 税 の 目的 は,輸 送 税 の 合 憲 性 が争 わ れ た事 案 で連 邦 裁 判 所 の 指 摘 した. 疑義. 自家用 自動車 による遠距離貨物輸送 を抑制 した分 が鉄道ではな くて遠. 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 へ 移 っ て い る. に応 え る べ く,遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 へ. の輸 送 の 転 換 を 防 ぐこ と にす ぎず,遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 そ の もの の 制 限 で は な い。 手 段 も,課 税 標 準 を トンキ ロ基 準 とす る こ と で,鉄 道 に 向 い て い る長 距 離,重 量 物 の輸 送 につ いて 遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 の利 益 を 減 らす こ とが で き る 点 で適 切 だ とい え る。 遠 距 離 自動 車 貨物 輸送 を 営 む事 業 者 に と って の 〔 営業の〕 期 待 可 能 性 もな い わ け で は な い⑰。. ⑰. こ の次 に,IVで 平 等原 則 との 関 係 か ら次 の よ う に判 示 し,一 部 の違 憲 を 導 い て い る。 1.遠. 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 と 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 と の 税率 が. 区別 さ れ て い る(4条)の. は,租 税 の 公 平 性 の 原 則 に違 反 しな い。 す で に前 者. は割 当制 な ど で 後者 に は な い 制 限 を 受 けて い る ので あ り,こ の よ うな取 扱 い の 違 い は税 率 の違 い を正 当化 す る。 2.積. 載 量 に よ る税 率 の 区 別(4条)も,問. 輸 送 の適 性(長 距 離 3.遠. 重 量)に. 題 と な らな い。 これ は,国 鉄 の. よ っ て違 い を正 当化 可 能 で あ る。. 距 離 と短 距 離 の 区別(1条)を. 遠 距 離 輸 送 に認 可 を 強 制 す る法 律 で あ. る遠 距 離 貨 物 輸 送 法(Guterkraftfernverkehrgesetz)の. 定 め る基 準 に基 づ い て. 行 って い るが,遠 距 離 貨 物 輸 送 法 と道 路 貨 物 輸 送 税 法 と は 「営 業 と して の遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 の制 限 に よ って ドイ ツ国 鉄 を 保 護 す る」 と い う 目 的 に お い て 共 通 して い るの で,こ の よ う な区 別 の方 法 は適 切 で あ る。 4.船. 舶 に載 せ る た め の,港 湾 へ の/か. につ いて 非 課 税 とす る(3条7項)の. らの 輸 送 につ い て170キ ロ ま で の もの. も基 本 法3条1項. に違 反 しな い。 こ の規. 定 の 目的 は本 法 に よ る競 争 の 歪 み(Wettbewerbsverzerrungen)か. らの港 湾 の. 保 護 で あ る。 財 政 裁 判 所 は,こ の規 定 は,港 湾 へ の輸 送 を 促 進 す る も の で,道 路 貨 物 輸 送 の 抑 制 と い う 目的 と衝 突 す る と判 断 した が,こ れ は誤 っ た前 提 に基 づ くもの で あ る。 港 湾 へ の道 路 貨 物 輸 送 が促 進 され るわ けで はな く,ド イ ツ の 港 湾 で 積 み 込 み を 行 うす べ て の ドイ ツ企 業 が,輸 送 政 策 上 の プ ロ グ ラ ムか ら不 当 な 不 利 益 を 受 け る こ とを 防 ぐ と い うの が この 非 課 税 の 目的 で あ る。 5.ベ. ル リ ン行 き の 輸 送 お い て,遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 は非 課 税 に な るの に. 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 は50パ ー セ ン トの軽 減 に しか な らな い点 に/" 一165一.
(20) 近畿大学法学. 第55巻第4号. (3)判 例 の 分 析 と 「破 滅 的 介 入 禁 止 の 原 則 」 や や長 くな った が,3っ. の. 判 例 を紹 介 した。 以 下 で は,こ れ らの判 例 か ら窺 え る こ と を整 理 して み た い。 第1に,憲. 法 裁 判 所 は,事 実 上 の侵 害,間 接 的 な侵 害 の 中 に も基 本 法. \ つ いて は,ま ず 遠 距 離 自動 車 貨 物 輸 送 が非 課税 な の は,ベ ル リン行 きの 輸 送 に は も と も と鉄 道 が 寄 与 して い な い た め,遠 距 離 自動 車 貨 物輸 送 に課 税 す る こ と で 鉄 道 を 支 え る必 要 が な い か らで あ る。 ベ ル リ ン との輸 送 にお い て は遠 距 離 自 動 車 貨 物 輸 送 が 決 定 的 な重 要 性 を持 って い る の で,非 課 税 が 正 当 化 され る。 自 家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 につ い て は,非 課 税 に す る と抑 制 手 段 と して の 本 法 の 実 効 性 を 損 な うの で,軽 減 す る に と どめ る こ と も許 され る。 6.こ. れ に対 して,2条6号hに. 定 め る混 合 飼 料 の 特 別 タ ンク車 両 で の 輸 送. に対 す る非 課 税 は,説 得 的 な論 拠 が 明 らか で は な い。 この条 項 は 政 府 提 出 案 に は な く,議 会 に よ って 挿 入 され た もの で あ る が,そ の意 味 お よ び 目的 は制 定 過 程 か らは 明 らか と はな らな い。 非 課 税 の理 由 が,混 合 飼 料 が 重 要 な 農 業 生 産 物 で あ る とい う性 質 に よ るの だ と して も,ミ ル クな ど他 の農 業 生 産 物 の 輸 送 につ い て は 車 両 の 区 別 を す る こ と な く非 課 税 と して い る の に対 し,特 別 タ ン ク車 両 で の 輸送 だ けを 非 課 税 と して い るの は恣 意 的 で あ る。 ま た,こ の 非 課 税 が 代 替 不 可 能 な 自家 用 自動 車 に よ る遠 距 離 貨 物 輸 送 の う ち特 定 の もの を 非 課 税 とす る 趣 旨な の だ と して も,こ の 法 律 で は代 替 不 可 能 な 自家 用 自動 車 に よ る 遠 距 離 貨 物 輸 送 に は 課 税 が され て い るの で あ り,こ の非 課 税 は,こ の法 律 の 全 体 の 趣 旨 とは 合致 せ ず,恣 意 的 で あ る。 また,2条6号hが,課 に 陥 る の を 防 ぐた め に7条. 税 に よ って経 済 的 困 難. に よ り軽 減 の 対 象 と な る場 合 を標 準 化 す る こ とを 意. 図 して い る と考 え る こ と もで き るが,こ の よ う な見 方 に よ って も正 当化 で きな い。 な ぜ な ら,7条. は2条. と異 な り軽 減 の み を定 め て お り,他 の交 通 手 段 へ の. 転 換 が不 可 能 な多 くの個 別 事 例 が知 られ て い る か らで あ る。 そ れ ゆ え,2条6 号hは 基 本 法3条1項 さ らに,Dで. と結 び つ い た12条1項. と合 致 しな い。」. は,財 産 権 に対 す る侵 害 に つ い て大 要,次. の よ うに判 示 す る。. 「道 路 貨 物 輸 送 税 法 は基 本 法14条 の保 護 領 域 に触 れ て い な い。 この法 律 は 〔 納 税 〕 義 務 者 を事 業 の 所 有 者 と して で はな く,職 業 遂 行 と の関 係 で捉 え て い る。 『別 の 判 断 を な し う る の は,金 (ubermassigbelastet)そ. 銭 の給付 義 務 が名 宛人 に過 大 に負担 をか け. の財 産 関係 を根 本 的 に侵 害 す る,す な わ ち破 滅 的 な 効. 果 を与 え る場 合 に 限 られ る』。 しか し,こ こ で は こ の こ と は 当 て は ま らな い」。 原 告 は,さ. らに,こ の法 律 は基 本 法 の 秩 序 に適 合 しな い租 税 上 の負 担 を課 す. もの で,基 本 法2条1項. に違 反 す る との 主 張,こ の 法 律 は対 応 す る共 同体 の利. 益 が な い の に過 大 な侵 害 を な す もの で,法 治 国 家 の 要 請 に反 す る と の主 張,こ の法 律 の6条3項. が大 蔵 大 臣 に運 輸 大 臣 との 合 意 に基 づ き法 規 命 令 で一 定 地 域/ 一166一.
(21) ドイ ツ にお け る資 金 助 成 に対 す る憲 法 的 統 制 の 可 能 性. 12条1項. の 侵 害 と評 価 しう る もの が あ る こ とを 認 め て い る。 この 点 は,す. で に① が,「 直 接 に職 業 を規 律 す る性 格 を有 して い る か否 か に か か わ らず, 事 実 上 の 影 響 ゆ え に,職 業 選 択 の 自 由 を 間 接 的 に 害 す る と い え る規 定 に よ って も抵触 す る こ とが あ り う る」 と述 べ て 明示 的 に認 め て い る と こ ろで あ る。 さ らに,租 税 法 律 に 関 して基 本 法12条1項. の侵 害 と評 価 す る具 体 的. 要 件 と して,「 そ の 内容 に よ って 職 業 行 使 と密 接 に関 係 し,客. 観 的 に一. 一 職 業 を規 律 す る傾 向 が 明 らか に認 め られ る場 合 」 を挙 げ て お り,②. もこ. の部 分 を 引用 す る。 第2に,憲. 法 裁 判 所 は,基 本 法12条1項. の侵 害 に 当 た る場 合 に お い て,. 段 階 理 論 に則 って,こ れ を さ らに職 業 選 択 の 自由 に対 す る規 律 と職 業 遂 行 の 自 由 に対 す る規 律 に割 り振 る。 そ して,職 業 選 択 の 自由 に対 す る規 律 に 当 た る場 合 と して,「租 税 が客 観 的 な 内容 お よ び金 額 ゆ え に,そ れ に関 わ る 職 業 を 希 望 す る者 が,選 択 した職 業 を生 計 の基 礎 とす る こ とを,原 則 と し て 経 済 的 に不 可 能 とす る場 合 」(①,②),「. 関 連 す る職 業 に従 事 す る者 が. 例 外 で はな く原 則 と して,選 択 した 職 業 を 完 全 に また は部 分 的 に そ の生 計 ま た 法 人 の 場 合 に は企 業 活 動一 や で きな い 状 態 とな る場 合 」(③)を. の 基 礎 とす る こ とが,経 済 的 に もは 挙 げ る。. ① は 新 規 参 入 業者 に対 す る免 許 税 が 問 題 に され た 事 案 で あ った の で,段 階理 論 に お け る客 観 的 許 可 条 件 に関 す る基 準 と同 様 に 考 え や す か った が, ②,③. は この基 準 を 既 存 業者 に 対 す る課 税 の場 合 に も拡 張 して 「破 滅 的 租. 税 禁止 の原 則 」 とで もい うか た ち で用 い て い る。 この 背 後 に は,さ. ら に一. 般 化 さ れ た か た ち で,政 府 の行 為 に よ り,一 般 的 に,既 に選 択 して 行 って. \ につ き4条 に基 づ く課 税 の 税 率 を 半 分 に 軽 減 で き る と定 め て い る こ と が基 本 法 80条1項. に違 反 して い るな どの主 張 も して い るが,連 邦 憲 法 裁 判 所 は こ の主 張. を斥 け て い る。 一167一.
(22) }. 第55巻第4号. い た職 業 を生 計 の 基 礎 と して 続 け る こ とが で きな くな る場 合 に は,か か る 政 府 の 行為 を職 業選 択 の 自 由 に対 す る規 律 と して 取 り扱 い厳 格 に審 査 す る べ き で あ る とい う 「破 滅 的 介 入 禁 止 の 原 則 」 を 観 念 す る こ とが で き よ う。 (1)でみ た プ ロイ ア ー が これ らの 事 件 を 参 照 して いた の は,こ の よ うな 観 念 を認 め るゆ え で あ る と理 解 で き る。 も っ と も,具 体 的 な 事 件 との 関 係 で, 職 業 選 択 の 自由 に対 す る規 律 を認 め た もの は 存在 して い な い 点 に は注 意 が 必 要 で あ る。 第3に,い. ず れ の判 例 に お い て も,問 題 とな った法 律 を職 業 選 択 の 自 由. に対 す る規 律 と して取 り扱 わ な か った代 わ りに,職 業 遂 行 の 自由 に対 す る 規 律 と して取 り扱 い,目 的 の正 当性,手 殺 の必 要 性,狭 義 の比 例 原 則 と い う基 準 で 合 憲 性 審 査 を行 って い る。 プ ロイ ア ー は この点 に 目を 向 けて い な い が,本 稿 の 関 心 か らい え ば,「 破 滅 的 介 入 禁 止 の 原 則 」 が 妥 当 しな い場 面 で もな お. 審 査 基 準 と して は緩 や か で あ る が. 競 業 者 の基 本 権 の 関. 係 か ら統 制 を 及 ぼす こ とが で き る とい う点 は見 過 ごせ な いGe)0 さて,(2)で み た 判 例 は租 税 に関 す る もの で あ った。 しか も,い ず れ も租 税 を 課 され て い る直 接 の 名 宛 人 が,そ. の租 税 が 高 額 だ と して争 った事 案 で. あ る。 政 府 の 行 為 は,直 接 の 名 宛 人 との 関 係 で 「介 入 」 と呼 ぶ にふ さ わ し い 。 しか し,本 稿 で 問 題 に して い る資 金 助 成 は,資 金 助 成 そ の もの が直 接 の 名 宛 人 と の 関係 で 「介 入 」 と な る わ け で は な い⑲。 資 金 助 成 が 名 宛 人 の. (1$)①. や ② に 言 及 し な が ら,租. 税 法 の規 定 につ い て展 開 して き た 判 例 を 資 金 助 成. に 適 用 す る こ と に は 異 論 は な い と 述 べ る も の も あ る 。VolkmarGotz,Recht derWirtschaftssubventionen,1966,S.273,Fn.30. ⑲. も ち ろ ん,資. 金 助 成 に 条 件 を 付 す る 場 合 に,そ. 係 で 基 本 権 侵 害 と な り う る 可 能 性 は あ る 。 近 年,ア. の条 件 が直 接 の相 手 方 との 関 メ リカ法 を 参照 に 日本 の 憲. 法 学 で 取 り上 げ ら れ る こ と の 多 い 「違 憲 の 条 件 の 法 理 」 と 同 様 の 問 題 が,ド ツ 法 の 資 金 助 成 と の 関 係 で も存 在 す る 。Breuer(Anm.9),Rdnrn.,70-74.本 稿 は,競. 業 者 と の 関 係 に 絞 っ て 考 察 す る た め,こ 一168一. の 点 は 取 り上 げ な い 。. イ. ー. 近 畿大学法学.
(23) ドイ ツ に お け る資 金 助 成 に対 す る憲 法 的統 制 の可 能 性. 競 業 者 との 関 係 で 介 入 を い うこ とが で き る のか,(1)で 紹 介 した プ ロイ ァ ー の 「破 滅 的 資 金 助 成 禁 止 の原 則 」 を競 業 者 の職 業 の 自 由 に対 す る侵 害 と し て 構 成 す る に は,も. う一 捻 りが必 要 とな る⑳。 そ こ で,以 下 で は視 点 を変. え て,基 本 法 は職 業 の 自 由 を どの よ うな 構 造 で 捉 え て い る の か に 立 ち返 り,「破 滅 的資 金 助 成 禁 止 の原 則 」 の位 置 づ けを考 え て み た い。. 二. 職業の自由. (1)企 業 家 の 自 由. まず,職 業 の 自 由の 内 容 を 確 認 して お こ う。 職 業 の. 自 由 と は,「 自 由 に 選 択 し 自 由 に 遂 行 す る[職 fiihrung)や. 生 存 形 成(Daseinsgestaltung)の. 業 の]活. 動 を 生 活(Lebens一. 基 礎 とす る 権 利 」⑳ で あ る。. した が って,こ の権 利 は,個 人 的 な もの で あ る とい う基 本 的 特 質 を有 す る⑳。 し か し,職. 業 の 自 由 は,「 企 業 家 の 自 由(Unternehmerfreiheit)」,す. なわ. ち企 業 の 自由 な創 設 や運 営 を 行 う権 利 を 含 ん で い る。 そ して,こ の 職 業 の. ⑳. バ ド ゥ ー ラ は,財 じ る が,か と の 関係 で. 産 権 侵 害 との 関 連 で 資 金 助 成 と租 税 優 遇 措 置 を並 列 して 論. か る 同 視 が 可 能 だ と して も,租. 税 優 遇 措 置 そ の もの が 直接 の 名 宛 人. 「介 入 」 に な る わ け で は な い 以 上,名. 入 」 に 当 た る か,と. 宛 人 の競 業 者 との 関 係 で. 「介. い う 問 題 を 検 討 す る 必 要 が あ る よ う に 思 わ れ る 。Peter. Badura,DerEigentumsschutzdeseingerichtenandausgeiibtenGewerbebetriebesgegeniiberderstaatlichenInterventionimBereichderWirtschaft, inFestschriftzum125jahrigenBestehenderJuritsischenGesellschaftzu Berlin,1984,S.1ff,3. ⑳PeterBadura/PeterM.Huber,OffentlichesWirtschaftsrecht,inEberhardSchmidt-A13mann,BesonderesVerwaltungsrecht,13.Aufl.,2005,Rn. 43.以. 下 の 叙 述 に つ い て は,Badura/Huber,Rn.43-5の. ほ か,Hans-Jurgen. Papier,Art.12GG-FreiheitdesBerufsandGrundrechtderArbeit,DVBI 1984,801(806ff.)を. 参 照 した。. ⑳Vgl.,BVerGE50,294(364f.)(=共 城壽夫. 同 決 定 判 決).共 同 決 定 判 決 に つ い て は,栗. 「所 有 権 等 の 規 制 と 立 法 者 の 予 測 」 ドイ ツ 憲 法 判 例 研 究 会 編 ・ ドイ ツ の. 憲 法 判 例(信. 山 社,1996年)245頁. 以下。 一169一.
(24) .ト ∴¥鯉. 近畿大学法学. 第55巻第4号. 自由 や 企 業 家 の 自 由 は,法 人 に も認 め られ て い る㈱。 も っ と も,マ ンセ ン に よ れ ば⑳,「企 業 家 の 自 由」 は,「 職 業 遂 行 の 自 由 の保 護 領 域 を 記 述 的 に 具 体 化 した もの」 に過 ぎず,「 固 有 の 実 質 的 な 内 容 を 含 む もの で はな い」。 「企 業 家 の 自 由 は,職 業 の 自由 や事 業 行 為 を行 う権 利 が,中 小 企 業 の枠 の 中 に お け る と 同様 に,大 企 業 の枠 の 中 に も存 在 す る こ と を表 現 して い る」 だ け の こ とで あ る。 しか も,こ の企 業 家 の 自 由へ の制 限 を憲 法 上 正 当化 す る 際 に は,「大 企 業 に お いて は個 人 的 特 質 が後 退 し,そ れ ゆ え 公 益,な に よ り 社 会 国 家 的 利 益 が,立 法 者 に よ って,よ. り強 く妥 当 させ られ る」 点 に注 意. が 必 要 で あ る。 法 人 の 人 権 を どの よ う に位 置 づ け るか は,日 本 に お い て も 大 きな 論 点 で あ るが㈱,こ れ を権 利 と して 承 認 しな が ら,権 利 制 約 の 正 当 化 事 由 の 検 討 の 場 面 で,零 細 企 業 と大 企 業 とを 区 別 す る と い う視 点 は,興 味 深 い もの が あ る。 (2)競 争 の 自 由. また,職 業 の 自由 は,競 争 の 自由(Wettbewerbsfrei-. heit)を 含 む とす る見 解 が 有 力 で あ る㈱。 競 争 の 自 由 とは,「 企 業 家 が,国 家 に よ る妨 害 や 国 家 が 加 え る競 争 の 歪 曲 を 受 けな い で,他 者 との 競 争 の 中 で,そ の企 業 を 動 か す 自 由(Dispositionsfreiheit)」. と定 義 で き る⑳。 こ こ. で,競 争 の 自由 は,新 規 参 入 を で き るだ け認 め るべ き で あ る とい う前 提 に 立 ち,ま た競 争 の激 化 に よ って既 存業 者 が受 け る打 撃 は職 業 の 自由 の 保 護 の 対 象 と して 考 慮 しな い と い う内 容 を帯 び て い る点 に は 注 意 が 必 要 で あ. ㈱Vgl.,BVerGE50,294(363). ⑳GeriritManssen,in:Hermannv.Manglidt/FriedrichKlein,Kommentar zumGrundgesetz,Sand1,5Aufl.,2005,Art.12,Rdnr.68. ㈱. 最 近 の 業 績 3章,第4章. ㈱. と し て,木. 下 智 史. ・ 人 権 総 論 の 再 検 討(日. 。. 異 論 も あ る 。Heinz-JosefFriehe,DasAb;,vehrrechtdesWettwerbersgegen dieSubventionierungeinesKonkurrenten,Jus19$1,S.$67ff,867f.. (27)Papier(Anm.21),S.809.Vgl.,JosefFranzLindner,ZurgrundrechtsdogmatischenStrukturderWettbewerbsfreiheit,DoV2003,185.. 一170一. 本 評 論 社,2007年)第.
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