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<雑報>被災地支援活動報告--福島県立医科大学との共同学習より

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Academic year: 2021

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(1)近畿大医誌(M ed J Kinki Univ)第39巻3,4号 151∼153 2014. 151. (雑報) 被災地支援活動報告 ∼福島県立医科大学との共同学習より∼ 西 郷 和 真 近畿大学医学部神経内科. 何を意味するか知らねばならない.放射線の単位は,. はじめに. おおまかにベクレル(Bq) ,グレイ(Gy) ,シーベル. している.しかし現地の復興はおろか,復旧もまま. 東日本大震災が発生して早くも3年が過ぎようと. ト(Sv)がある.ベクレルは食物,土壤や海水など にある放射性物質の量を示すのに われることが多. ならない状況が続いている.近畿大学も全学をあげ. い.一方後者のグレイ,シーベルトは医学生であれ. て支援をおこなってきた.福島県川俣町を中心に多. ば必ず学習する単位である.グレイは,癌の放射線. 数の人員が科学的,医療的支援を実施してきたこと. 治療においてよく. は皆さんもご承知のことである.2012年から原子力. る放射線の単位として 用する.そのため吸収線量. 研究所が中心となって“オール近大”として開始し. を示すために 用され,グレイ=ジュール/キログラ. た川俣町復興支援プロジェクトは,13学部48学科を 擁する近畿大学として 力を挙げて川俣町の早期復. ム(J/kg)とも表される.最後に,シーベルトは人 体への影響を示す単位として 用する.これは,放. 興を支援するために現在も活動を行っている .医学. 射線が距離の2乗に反比例して減衰すること,表1. 部からも多数の先生が参加されており,その成果は. のように放射線の種類によって人体に対する影響が. 福島県の地元の方にも高く評価されている.今回,. 異なるために,実際に人体に影響がある値として,. 筆者は福島県立医科大学,放射線 合学習センター. これらの係数を加味して算出する数値となり,放射. において放射線医療災害について学び,福島医科大. 線による人体の障害を計測する時に頻繁に 用する. 学,キエフ大学,ゴメリ医科大学のチームとともに. 単位である.. 福島第一原子力発電所の視察を行った.同時に福島. 1-2) 放射線の種類. 県と福島医科大学による県民. 康管理センター が. 用する単位で,物質に吸収され. アルファ線(α線) ,ベータ線 (β線) ,ガンマ線(γ. 中心となっている,現地での医療よろず相談会に参. 線) ,X線,中性子線など放射エネルギーを放出する. 加して,住民の. 康相談にも協力した立場から,放. ものすべてを放射線と呼ぶ.その特徴はエネルギー. 射線医療災害の一般的な概説と,福島の今について. の強さと物質を透過する能力によって表1のように. 概説してみたい.. 類されている.. 1) 放射線の単位と種類. 2) 放射線と 康障害. 1-1) 放射線の単位. 2-1) 急性期障害. 放射線障害というと,まず大まかな数値や単位が. 急性期障害は,放射線に被ばくした当初からおお. 表 天然放射性物質 アルファ線(α線). 人工的放射性物質. ウラン238,トリウム232 ラドン222 プルトニウム239,240 ラジウム226. 放出粒子. 透過力. エネルギー. 陽子,中性子. 低. 強. ベータ線(β線). 炭素14 トリチウム3 カリウム40. ヨウ素129,131 セシウム134,137 ストロンチウム89,90. 電子. 中. 中. ガンマ線(γ線). カリウム40. ヨウ素129,131 セシウム134,137. 電磁波. 高. 弱. 農林水産省ホームページ「放射性物質の基礎知識」より改変.

(2) 152. 表. 西 郷. 急性放射線障害の. 和. 真. 類と治療. 全身被ばく. 臨床症状. 治療. 重症(10Gy以上). 5000mSV. 急性皮膚症状,神経障害など 最終的に50%程度が死亡. G-CSF,GM -CSF,EPO,TPO の投与 無菌室への隔離,抗菌薬など. 中等症(3Gy). 1000∼2000mSV. 嘔気,脱毛,出血 発熱,粘膜症状,下痢. G-CSF,GM -CSF,EPO の投与 無菌室への隔離,抗菌薬など. 軽症(0.5Gy). 500mSV. 白血球減少などの異常. 入院の上,経過観察. (文献3,4より改変) :顆粒球コロニー刺激因子 G CSF GM -CSF:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 EPO:エリスロポエチン TPO:トロンボポエチン. よそ数ケ月以内に起こってくる反応である.よく知 られているものに白血球減少を始めとする汎血球減. 表. 慢性低線量被ばく量の概算 250mSV. 福島原子力災害従事者の年間許容 線量. 100mSV. この数値以下での確率的リスクは 未確定. 50mSV. 政府による基準,医療者にあける バッチの対象 胸部 CT スキャン1回あたり 世界平 あたりの自然放射線量 一般の人の年間許容線量. 少とそれに続く感染症,皮膚障害などがある.これ らは,放射線感受性が組織によって違うことに起因 する.一般には,500mSv 以上を短時間に浴びるこ とによって造血器障害から始まって各種の組織障害 が発症することが知られている (表2) .このように 短時間に一定以上の放射線を受けた場合に現れる 康被害のことを確定的影響と呼ぶ. 2-2) 慢性障害,低被ばく線量. 6mSV∼10mSV 2.4mSV 1mSV. 文献5より改変. 前述のように,短時間に一定以上の放射線を受け た場合に現れる. 康被害のことを確定的影響と呼. ぶ.一方,被ばく後,数年以上を経て影響が現れる. ページで,事故後のくわしい現在までの状況が閲覧. こともある.組織細胞や生殖細胞の DNA 障害によ. できるので参照してもらいたい.福島原子力発電所. ると. えられている.比較的低い放射線量を受けた. 内で筆者が経験した被ばく線量は,第3号機∼第4. 場合でも,ある一定確率で症状が現れる 康被害の. 号機の山側の坂のあたりでもっとも高く,おおよそ. ことを確率的影響と呼び,奇形や発がんが知られて. 50∼90 Sv/hr(1 日 あ た り2.4mSv・年 換 算500 mSv)であった.筆者の原子力発電所内での滞在時. いる.年間の 線量が100mSV 以下で被ばくするこ とでの確率的影響は未確定である (表3).一部の固. 間が約30 程度であることから えると,問題ない. 形癌,造血腫瘍は増加するとの報告もあり チェル. 値であると えられる.また福島第一原子力発電所. ノブイリ原発事故でも,甲状腺障害が報告されてい. の入り口付近をはじめ,周辺の区域では最も高い所. る.その報告では,チェルノブイリ原発事故後,5 年を経て幼児,小児の甲状腺癌の発症増加を認めた.. でも 5∼8 Sv/hr 以下程度であった.厚生労働省が 定める放射線作業従事者の被ばく線量限度は「年間. そこで,福島県では,幼児,小児の甲状腺検査を綿. で50ミリシーベルトかつ5年間で100ミリシーベル. 密に行い,もしもの時に早期治療介入できるような. ト」であると規定されている.一方,臨床的な画像. 体制作りを進め,住民の不安をすこしでも取り除く. 検 査 で あ る CT が 1 回 あ た り 放 射 線 被 ば く が 6. ような体制を確立している . 3) 福島県現地での状況(よろず相談事業に参加し. mSv 前後あることを えると福島原子力発電所内 での被ばく線量がどの程度であるかを,理解しても. て). らえると思う.. 2014年1月30日に筆者は福島医科大学,キエフ大. 今回の,東日本大震災では,地震と津波による自. 学,ゴメリ医科大学のチームとともに福島第一原子. 然災害と,福島県における福島第一原発事故による. 力発電所構内に入構した .福島第一原子力発電所ま. 放射線災害という2つの側面があると言われてい. での道中での写真撮影(図1,2)は可能であった. る.この放射線災害は,人類至上もっとも大きな災. が,福島第一原子力発電所構内は,保安上の問題か. 害とされているチェルノブイリ原発事故と比べられ. ら撮影が禁止されていた.しかし東京電力のホーム. ることが多い.チェルノブイリ原発事故では,原発.

(3) (雑報) 被災地支援活動報告. ∼福島県立医科大学との共同学習より∼. 153. い.一時的な目に見えないために起こる風評被害も 含め,正確な情報を入手して,住民の 康を自 自 身で える必要があるとされており,今後も全国か らの多数の継続的な医療支援とともに,通常以上の 医療提供体制の確立を望みたい. おわりに 現地で筆者は,災害医療 合学習センターでの講 習を通じて学習したことや現地の放射線障害の状況 ならびに,原子力発電所内を視察した状況について 概説した.今後も福島県では,福島第一原発の後処 理を行うために数十年の長い時間と労力とコストが 図. 帰還困難区域の入り口に設置された検問所 (帰還困難区域とは, 放射線の年間積算線量が 50ミリシーベルトを超えており,5年後も20 ミリシーベルトを下回らない可能性のある地 域と規定されている.). 必要なことを知ることが重要であり,つねに我々医 療人に何ができるかを一人一人が えていかなけれ ばならない. 謝. 辞. 本執筆に関して,被災地における共同学習の場を提供いた だきました福島県立医科大学・災害医療. 合学習センターの. 先生方,職員の方に,深謝いたします. また福島第一原子力発電所の見学の機会をいただきました 東京電力・福島復興本社の職員の方に感謝いたします. 文. 献. 1. 近畿大学「川俣町復興支援プロジェクト」 (2014年7月10 日検索) http://www.kindai.ac.jp/rd/social-activity/ earthquake-east-japan/all-kindai.html 2. 福島県立医科大学「災害医療 合学習センター(2014年7 月10日検索). 図. 帰還困難区域内に積まれた汚染土の一時保管 場所. 職員を含めた多数(数十人規模)での急性期の死傷. http://www.fmu.ac.jp/home/cmecd/ecdm/report/ 2013/fukushima saigai iryo 8 that day.html #seminar 3. Peplow M : Chernobyls legacy. Nature. 471: 562565, 2011. 4.【救急・災害 up to date―これからの救急医療と災害医療. 者があったとされている .一方,福島県の原発事故. をあらためて. では,幸いにして,チェルノブイリ原発事故のよう. 障害:小池. な,原子力発電所内での爆発当日からの急性期障害 (数日で起こる障害)は認められていない.現在は, 慢性期の低線量被ばくによる障害に問題は移ってい る.特に小児における甲状腺障害の問題は,今後, 十数年の経過で注意深く検討されなければならな. える】 放射線障害. 急性期障害と慢性期. 薫,鈴木崇生,佐藤格夫,西山. 慶. 治療 (0022. -5207)93巻8号 Page1693-1695(2011.08) 5. (独)放射線医学 合研究所「放射線被ばくの早見図」 http://www.nirs.go.jp/information/event/report/ 2013/0729.shtml.

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参照

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