• 検索結果がありません。

結晶の沿面成長機構における不純物の効果 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "結晶の沿面成長機構における不純物の効果 利用統計を見る"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

結晶の沿面成長機構における不純物の効果

春日正伸 青井一郎 佐野雅行 輿水確 (昭和55年9月1日受理)

Effects of Impurities on Lateral Growth of Crystals

MasanobuKASUGA IchiroAOI MasayukiSANO TashikaKOSHIMIZU

Abstract  The effect of impurities on the step velocity on a growing crystal and, hence, the grow・ th rate of the crystal is formulated on the basis of step pinning theory for the growth from dilute nutrients(solutions or vapors). The step velocity is obtained by graphically solving two simultaneous equations, one of which gives v as a function of supersturation and impurity density and the other gives impurity density as a function of v and impu. rity current. Monte Carlo simulation developed by Gilmer et al. are also applied to investigate the effect of impurities on the growth rate of Kossel crystals. These two approach agrees quite well suggesting the availability of both methods to actual crystal growth processes.

1.はしがき

 不純物は結晶の成長機構・組成・形態・特性にさま ざまな影響を与える。とくに稀薄環境相一すなわち溶 液や蒸気からの結晶成長において,きわめて微量の不 純物の存在が結晶成長速度に著しい影響を与えること は古くから知られており,その効果は結晶成長を抑制 する向きに作用することが多い。ここでは母体を構成 する原子以外の原子・分子・他の溶質・コロイド粒子 等を不純物と総称する。実在の結晶成長はほとんど常 にこれらを含む媒質中で起こるものであり,また実用 上有用な結晶を育成する場合望ましい影響を与えるた め微量不純物を添加することがしばしぼ要求されるか ら,その効果を理解することは重要かつ興味深い課題 である。  過飽和度のあまり高くない環境相の中で晶癖の明ら かな単結晶を成長させる場合,ステップの前進により 2次元面が形成される沿面成長(lateral growth)の 様式が適用され,このステップの前進に対する不純物 のふるまいが問題になる。 これに関する解析的研究 としては,成長単位(adatom)のとりこみ口である kinkが不純物によって占有され,有効kink数が減 ずると考えるkink poisoning(Chernov1), Sears2)) と,ステップの前進が不純物の位置で遮られるとする step pinning(Albon3), Cabreraら4))の2通りの 考え方が知られている。本論文では後者の方法に従 い,不純物が成長速度に与える影響の定量化を試み た。一方シミュレーションによる結晶成長の計算機実 験が最近開発され,純粋な結晶の成長に適用されるよ うになった。本研究はKossel結晶のモデルを用い, この手法を不純物を含む系に適用し,解析的な結果と 比較・検討した。 2.不純物効果の解析的計算  本章では℃abreraら4)が提案した次のモデルを基 本として考察をすすめる9すなわち・動かない不純物

(2)

昭和55年12月 山梨大学工学部研究報告 第31号 粒子が結晶表面上にあり,ステップがこの粒子にふれ る所でその進行を妨げるとする。するとステップはわ ん曲してその間を通り抜け,その後に元の形状を回復 する。ステップの通過後,不純物の周囲は母体原子で 埋まるため,もはや不純物の阻止能力は消失し,新た に到来した別の不純物が再びこれに代わる働きをす る。  本論文ではステップの進行速度と面の法線方向への 成長速度を計算するため,さらに次の仮定を設ける。 一辺aの立方体unitからなる単純立方晶結晶(Ko− sse1結晶)を想定し,この表面上に動かない不純物 粒子が等間隔(2d)で存在するものとする。表面上を 進行してきた直線状ステップは,真上から見た図(図 一1)のように,これらの間を円弧形を成しつつ通過す る。ステップの円弧は曲率を増していき,半円状に なったとき曲率が最大となり,隣りの円弧と接する。 その接点付近のステップは凹入形となりadatomを とりこみやすいので,曲線の曲率は前半の形を逆にた どりながら次第に回復し,ついに直線となる。このよ うなサイクルをくり返しながらステップが進行するも のと考える。  ステップ成長に関するBCF理論5)によると,曲率 半径ρのステップの前進速度は直線状のとき(V。。) に比べて遅くなり,   1ひ(ρ)=:Voe(1一ρc/ρ)       (1) で与えられる。ここに  v。。==26VXs exp(−W/克T)       (2) であり,Pcは与えられた過飽和度aでの臨界曲率半 径で次式で表わされる。

  侮一ぜ㌫≡      (3)

ただし,α≡1+a≡expβ :飽和比(気相成長では       ク/♪o,溶液ではc/Co)    γ:縁の1分子あたりのステップエネルギー    レ:面に垂直な振動数因子    Xs:(母体を構成する)付着分子の表面拡散距離 κ=2∂    W:kinkから蒸気相への蒸発エネルギー  さて,一本のステップが進行する平均速度を求める ため,円弧の先端に注目すると,曲がり始めから半円 になるまでの所要時間をTとして,     d    d        d        (4)   v=

    Tl㌶)よ∫冷咋吻

となる。ただしXは任意の時点における円弧の先端 の位置とする(図一1)。このxに対応する円弧の曲率 半径ρ=p(X)は   ρ2=d2+(P−x)2 を満足するから,ρ=(x2+d2)/2xが得られ,これを 式(4)に代入すると          d

 ㌃二隠篭巨… (4)’

が得られる。この積分を実行して   ・−v・・〔・+一㌃1・{2(・一‘)}+2(丁)2

フ±y⇒繧「

        ≡…(β)∫C㌃) (5)

を得る。なお1サイクルの後半の速度は前半の逆過程 と近似し,先端以外の遅れの部分は曲率が小さいため adatomをとらえて遅れを回復することを考慮する と,このVを全過程の平均速度と考えてよいであろ う。式(5)のステップの減速率f(ρ,/d)を図示する と図一2のようになり,予想されるように,不純物間 隔大(d→。⇔)で1,臨界値(d→ρ・)で0となる。 Cabrera 4)らはこの2極限の値を満足する近似式と 〉 1.0 O.8 0.6 ↑ XL−n        − 

. . e,E−.、、」

図一1不純物間を通過するステヅプの形状 0.4 0.2 0 、 \ \ \ \ \\   \ C・brera and    \Vermilyea     \\

1;鑑 \

       \         \         、、          ‖   0.2    0.4   0.6   0.8    1.O)       ρ,/d 図一2 ステヅプの減速率

(3)

して,   v=Vo。(1一ρc/d)1/2      (6) を提案している。それは,図一2に破線で示したよう に式(5)と類似の曲線となるが,それ以上の論拠・証 明は示されていない。  次に,不純物粒子が環境相から単位面積・単位時間 当たり硫の割合で供給されるとする。ステップの平 均間隔をλsとすれば,表面上の一点をステップが 通りすぎてから次のステップが到着するまでの時間 (λs/W)に到達する不純物はJils/Vの密度で存在して いるから,   Jiλs   l    v  (2d)2 すなわち   v= 4Jiλsd2       (7) が成立しなけれぽならない。  式(5)をdの関数として示すと図一3の実線のよう に,また式(7)は破線のようになる。ここにk+は1 格子位置当たり,単位時間当たりの母体原子降下数 (creation)で, Jl ・k+/1600/a2すなわち不純物濃度 Cg・・1/1600とし,ステップ間隔を20aとした。また 気相成長の実験値に近い概略値として,γ∼2kT, Xs∼ 400a, vexp(一vv/kT)=k+exp(一β), 「Pゾ∼12kT な どを仮定している。  さて,ステップ前進速度vと不純物間隔dは(5) と(7)の関係を同時に満足しなけれぽならないから, それらは図一3で曲線の交点として求められる。一定の Jiが与えられたとき,過飽和度がある値(β・nin)よ り小さいと交点が得られない一すなわちステップの速   0.15 .葺 速   0.10t’ 0.05       10       −一→Cg(×10一4) 図一4 成長に要する最小過飽和度 度が遅いため,前方に不純物が多く堆積し,もはやそ の障害を越えて進むことはできないことを示してい る。β≧βminのとき,一般に交点が2つ存在するが, 速度の大きい方を採用する。なぜならぽ,速度の小さ

い解は不純物濃度Cgを増すときVも増加するとい

う,物理的に無意味なふるまいを示すからである。  次に成長に必要な最小過飽和度β皿inを求めてみよ う。これは図一3の2組の曲線が接する条件からやはり 図的にCgの関数として求められ,図一4のようにな る。これは実線で示した   βmin=1.27Cgl/3       (8) と非常に近い。Priceら6)はAg whiskerの溶液成 長におけるゼラチンの影響を調べ,成長に必要な最小 過飽和度がほぼゼラチン濃度の1/3乗に比例すること を見出している。これは本章のモデルが適用できるこ とを暗示するものである。 3.シミュレーションによる扱い 十e 之 150 100 ↑,。    0       50      100         −一一一一一)・d〔α〕 図一3 ステップの進行速度vs不純物間隔  結晶成長は本質的に確率過程であるからシミュレー ションに適している。つまり解析的手法では表現でき ない種々のfiuctuationの効果をとり入れることがで きるし,また,現実の実験では行えないような種々の パラメータの変動を純粋な形で試みることもできる。 本研究では,Gilmerら7)によって開発されたモンテ カルロシミュレーションの方法を不純物を含む系に拡 張する。  調べるモデルは単純立方格子のvicinalな(100) 面であり,10) )個の原子からなっている。吸着する 原子(adato皿 よ固体原子の真上にくるものとし, 表面原子のみが主成・昇華に関与する。各格子点にお ける生成・昇華・拡散確率は結合エネルギーと隣接原 子数の関数として与えられる。7)不純物はモデルの簡 単化のため,母体原子と格子定数が等しく,表面原子

(4)

昭和55年12月 山梨大学工学部研究報告 第31号

  0 0 0 0 0 0 1 0 00

  0 1 1 0 0 00 0 0 0

  00 0 0 0 0 0 0 0 1

  1 0 0 1 0 0 0 0 0 0

  1 1  0 00 0 0  1

  1 1    0000  2

  2 1 2  1  00  2

  22 3  0    0  2

  2 1 1 1 1 1 1 1  1

  1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 図一5 成長中の表面形態の一例:β=0.5,試    行30000回,笏印は不純物を示す。 言 さ る ㍗ 自

5

sc 1 ・ ↑ 5 4 3 2 1   0      0.1     0.2     0.3     0.4     0.5         _  o        P 図一6 シミュレーションによる成長速度vs    過飽和度 の真上に付着し移動しないものとする。そして不純物 と母体原子の間の結合力を0とする。すなわちそこに 固体原子が存在しないものと等価とみなす。この不純 物を生成400回に1回の割合で表面に付着させた。  このような試行を3×104回くり返した結果の一例 を図一5に示す。数字はaを単位とする各位置の高さ である。不純物の位置も乱数で決めているが,周期的 境界条件により,下端を上端より2a高くしているの で,λ・=5aである。図から不純物の付近で下側から 進んだステップの回りこみが見られる。次に不純物濃 度と過飽和度を変えて,105回試行したときの成長速 度を図一6に示す。過飽和度が大きいほど成長速度が 大きくなるのは無論であるが,不純物濃度も低いほど 成長が速い。なおCg=1/100のとき,β≦0.3では成 長がみられず,成長の最低過飽和度が存在している。 4.比較と考察  第2章で解析的に求めた成長速度と,第3章で求め たものを過飽和度の関数として表わし対比させたのが i、e ミ 0.2 Ximpurity °n°impu「ity

@91

        1

       /X

      1

↑°’1 !

      1/X

      1 0.2

      →β

図一7 成長速度vs過飽和度:不純物の有無,    計算値とシミュレーションの比較 図一7である。ここでは比較のため,反応条件として 制御困難な量であるがdを一定(5a)としてある。 破線は不純物を含まない計算値,○印はそのシミュレ ーション結果でGilmerらの方法そのままで追計算 したものである。また実線は不純物を含む計算値,× 印はそのシミュレーション結果である。不純物を加え た場合,シミュレーションの結果の方がいく分大きく なり,最低飽和値は存在するが,不純物による阻止作 用は弱められる。これは熱的ゆらぎ,あるいは表面の あれ(roughening)によって核またはクラスタが生 じ易くなり,その助けによって不純物の間をステップ が通り易くなるためと考えられる。  不純物をシミュレートする際,隣接原子との結合力 を0とする荒い近似には精密化の余地があると思われ るが,このように従来の方法を一部修正することによ りstep pinningの効果を生じさせ得ることが明らか になった。この方法は,これまで無視されてきた空 孔・その他の格子欠陥を含む結晶成長に拡張できるで あろう。  次に,第2章のモデルにおいて,平均的なステップ 進行速度を論じたが,個々のステップに注目すると不 安定の問題が生ずることは注意を要する。つまり,あ るステップの進行が何らかの原因で平均値よりわずか 遅れると,そのステップは前方に多く不純物を「見 る」ためますます遅くなり,次にくるステップは,間 隔が縮む結果平均速度より速くなり,先行ステップに 追いつく。このように2本ずつのステップが対をな し,高さ2aのステップを形成し,つぎつぎに束ね現 象(bunching)を起こしてゆくことが考えられる。 その場合,高さ2a,4a,…のステップに対して式 (6),(7)に対応する式を導入して解を求めるべきであ

(5)

るが,おのおのの高さのステップの寿命・高いステッ プに対してどこまでモデルが適用できるか等,未解決 のことがらが多いので省略した。

5.結

論  Cabreraらによって概要が示されていた,不純物 によるstep pinningの現象を精密化して成長速度を 求める式を導びいた。その結果はCabreraらの予見 したところと大差ないが,理論的な基礎を与えること ができた。次にこの現象をシミュレーションによって 調べる方法を開発し,その結果は,熱的に励起された クラスタの存在により,いく分大きい成長速度を与え るが,成長を可能ならしめる下限飽和度の存在や,全 般的な傾向は本質的によく一致している。本論文で導 いたステヅプの速度式とシミュレーションの方法は, 蒸気・溶液からの多くの成長実験と比較する必要があ るが,計算機実験の範囲ではよい一致を得たといえる。  なお解析的手法では,ステップの速さと不純物間隔. の間に正帰還的現象による不安定の問題が残されてお り,またシミュレーションでは,格子点数を増し,試 行回数を増すことによる現実への接近・再現性向上の 問題が残されている。 文 献 1) A.A. Chernov:“Growth of Crystals”ed. by   A.V. Shubnikov and N.N. Sheftal vo1. III,   Consultants Bureau, New York(1962)31. 2)(}.W. Sears:J. Chem. Phys.29(1958)1045・ 3)N.Albon and W.J. Dunning, Acta Cryst.15   (1962) 474. 4) N.Cabrera and D.A. Vermilyea:“Growth   and Perfection of Crystals” ed. by R.H.   Doremus, et al. Wiley, New York(1958)   393. 5)W.K. Burton, N. Cabrera and F.C. Frank:   Phil. Trans. Roy. soc.(London)A243,(1951)   299. 6)P.B. Price, D.A. Vermilyea and M.B. Webb:   Acta Met.6(1958)524. 7) G.H. Gilmer and P. Bennema, J. App1. Phys.   43(1972) 1347. ■

参照

関連したドキュメント

また,この領域では透水性の高い地 質構造に対して効果的にグラウト孔 を配置するために,カバーロックと

平成 27 年 2 月 17 日に開催した第 4 回では,図-3 の基 本計画案を提案し了承を得た上で,敷地 1 の整備計画に

 仮定2.癌の進行が信頼を持ってモニターできる

 第一の方法は、不安の原因を特定した上で、それを制御しようとするもので

(実被害,構造物最大応答)との検討に用いられている。一般に地震動の破壊力を示す指標として,入

本検討で距離 900m を取った位置関係は下図のようになり、2点を結ぶ両矢印線に垂直な破線の波面

工場設備の計測装置(燃料ガス発熱量計)と表示装置(新たに設置した燃料ガス 発熱量計)における燃料ガス発熱量を比較した結果を図 4-2-1-5 に示す。図

それに対して現行民法では︑要素の錯誤が発生した場合には錯誤による無効を承認している︒ここでいう要素の錯