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□の式, 文字式の解釈と理解 : 数学教育における理解と表象の研究(I)

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Academic year: 2021

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(1)47. 数学教育における理解と表象の研究(I). 口の式、文字式の解釈と理解 川同高蝣'.:(平成3年9月27日受理) 0.緒言 本研究は、 「よくわかる」、 「大体わかる」、 「何となくわかる」などといった児童・ 生徒の「理解」の程度を、そこで用いられている心的な「表象」の差異によって説明する ことを意図している。 「表象」は、認知対象に対して、認知主体が構成する心的モデルである。構成された 「表象」が、認知対象の内容、構造にうまく適合しており、そして、その操作が容易なモ デルとなっていれば、認知主体の問題解決行動はうまくいく。したがって、 「よく理解し ている」と解釈される。つまり、筆者は、 「理解」というものを次のように考える。解決 すべきすべき対象、問題状況に対して、人は、 「表象」という心的なモデルを構成する。 そのモデルは、その人の解釈や操作を容易に受入れるものであり、そのモデルを操作、変 形することによって、新しい解釈や状態を作り出すことができる。その結果、そのモデル 内で得られた何らかの知見が、ある場合は問題の答えとなる。そして、そのモデルを、そ の人の問題状況に対する「理解」とみなすのである。 モデルの構成は、認知過程において即時的に構成されると考えられる。まったく新しい モデルを構成する場合もあるかも知れないが、むしろ、既存のモデルを転用する場合が一 般的であろう。そして、その構成の材料や構成の仕方、あるいは転用などは、既有の知識 構造の影響を受けていると予想される(P.N.ジョンソン-レアード,1990) 。 本稿では、口の式や文字式を中心に、 「記号の理解」の様相を詳細に分析してみたい。 まず、口の式や文字式に対して、どのようなモデル構成、モデル転用がなされているのか について、一つの枠組みを提出する。その枠組みに沿って「理解」を説明していく中で、 文字式での誤った反応が、如何に引き出されるかの説明を試みる。そして、文字式を「理 解する」とは、どいうことなのかを考えて行きたい。 1.記号の理解 新しい記号に出会ったとき、われわれは、その記号をどのように理解し、その使用方法 などを学習しているのだろうか。式"1+2-3"を例にとり、考察してみたい。 1-1記号の3つの側面 一般に、記号には次のような3つの側面がある(池上嘉彦,1990) 。. (1)記号の意味(意味論) ・--記号が何を表しているのか。つまり、記号と対象 との指示関係を考慮する側面である。 (2)記号の使用規則(構文論) --・記号と記号との形式的関係がいかに決定され ているか。つまり、記号と記号の関係を考慮する側面である。 (3)記号の用法(語用論) -・・記号は、話者や文脈との関連の中で、どの意味を もち、どの使用規則に従うのか。つまり、文脈と記号の関係を考慮する側面で ある。 '兵庫教育大学第3部(自然系教育講座).

(2) 48. "1+2-3'の指導に際して、たとえば、次のような状況文を用いたとする。 「 左 に 1 このお は じきがあ ります0 右 に 2 このおは じきが あ ります0 合 わせ る と 3 このおは じきにな ります0 」. (1)すると、記号"1,2,3,+,-"の意味は、 1 -左のおはじきの数 2 -右のおはじきの数 3 -合わせたおはじきの数 + -右と左のおはじきをあわせること(「合併」) -一一一合わせる前のおはじきの数と合わせた後のおはじきの数が同じこと となる。そして、記号"1+2-3"の意味は、 「この文章の表している状況」となる。 (2)記号の使用規則としては、次のようなことが上げられよう。 「おはじきの数を表すのに"1,2,31を使う。」 「合わせるという操作を表すのに"+"を使う。 」 「等しい関係を表すのに"-"を使う。 」 「"+"は、 2つの数の間にかく。」 「 "-"は、等しい数式の問にかく。 」 ・・・・・. (3)さらに、 "1+2-3'は、 「 太郎君は1 このミ ニカーをもっていました○お母さんが、新しいミ ニカーを2 こ 買ってく れたので、太郎君のミニカーは3 こになりました○」. という状況の表現にも使用できることを知ると、 "+"は、 「合併」だけでなく「増加」 の状況にも適用できることが分る。つまり、文脈に依存して"+"の解釈は変るのである。 1-2記号理解の3つの様相 さて、 "1+2-3'は、どのように「理解」されているのか。次のような枠組みを設 定して、考えてみたい。 一般に、記号の「理解」には、次の3つの様相が存在するように思われる。 ( 1 ) 参照世界 の中に記 号の指示対象 を見 つけ ること ( 2 ) 記号世界 の中で窓 意的な規則 の取決 めを認 め る こと ( 3 ) 参照世界 か ら引 き出される 自然 な規則 を記号 の世界 に取 込む こと. (1)参照世界の中に記号の指示対象を見つける 参照世界とは、記号の意味(指示対象、解釈項)を見つけるべき世界のことで、子ども の場合、多くは物理的現実世界や日常言語の世界がそれにあたると考えられる。参照世界 は、その中の項目の意味的っながりや使用規則などが、ある程度熟知されている必要があ る。. まず、対象記号"1,2,3'に対して、その指示対象が参照される。つまり、 "1,2, 3"が、それぞれおはじきを指示していることが認知される。 次に、関数記号"+"に対して、その指示対象、この場合、指示行為が参照される。つ まり、 "+"が、 「合わせる」という表現で示されるところの行為を指示していることが 認知される。そして、関係記号"-"に対して、その指示対象である関係が参照される。.

(3) 口の式、文字式の解釈と理解. 49. つまり、 "-"が、 「等しい」、あるいは、 「同じ」という表現で示されるところの関係 を指示していることが認知される。 まとめると、参照世界の中の対象、行為、関係などに要素記号"1, 2, 3,+,-"を対 応させ、記号全体"1+2-3"の意味を、その参照世界の状況として解釈しているので ある。 (2 )記号世界の中で窓意的な規則の取決めを認める 記号は、参照世界とは無関係に、記号世界の中だけで記号の使用規則が取決められてい m たとえば、 -(+(1,2),3) あるいは、 1,2+3とかいてもよいところを、 1+2-3 とかくように決める。 同様に、 「等しい」という観念を表現するのに、 "-''という記号を使用する必然性は どこにもない。これらは、参照される物理的現実世界の性質や規則から、まったく独立し て取決められるという意味で窓意的である。 この意意的取決めによる記号の構文規則は、記号の運用にあたって重要な位置を占める ものであるが、その規則の根拠は、参照世界の中に求められるものではなく、記号世界の 整合性や簡潔性などの中に見出されるべきものであろう。丁度、第一言語(母国語)の習 得が、文法の学習から始められるのではなく、ある程度の習熟をまって始めて、文法的反 省が可能となる状況と類似している。その意味で、記号の学習が構文規則の学習と平行す る数学の学習は、第二言語(外国語)の学習過程に類似しているといえよう。 (3)参照世界から引き出される自然な規則を記号の世界に取込む. 窓意的に決定される規則とは別に、記号の解釈項として選ばれた参照世界の中で、必然 的に成立っ自然な規則を記号世界の中の規則として採用することである。 たとえば、日常世界という参照世界では、 「AとBは同じ」という状況と「BはAと同 じ」という状況は、等価であると判断してよい。したがって、この性質をもとにして、記 号の世界へ新たな規則が引き出される。つまり、 "1+2-3"を"3-1+2"とかい てもよいという規則である。これは、窓意的に決定された規則というよりも、参照世界の モデルに内在している規則が、記号の世界に持込まれた規則といえよう。 1-3記号理解のモデル 以上のように、新しい記号の「理解」が、その記号の参照世界への写し込み(解釈)に よってなされているという仮説のもとに、記号理解のモデルを提出する(図1) 0 解釈 - 参 照世界. l. I -. 新 しい記号体 系 -. 【図1 :記号理解のモデル】.

(4) 50. これを上述の例にあてはめれば、以下のような図式が得られる(図2) 。. 【図2】 2.口の式の解釈 学校数学の中で、その指導が難しいとされる記号の一つとして、文字式があげられよう (杜威,1991、藤井斉亮,1990) 。本格的な文字式導入の前段階として、小学校では、口、 △などを使った式が全学年で指導され、さらに高学年では、 a、 xなどの文字の使用も指 導される。文字式の予備的練習とでもいえる口を使った式の指導が、小学校の段階から計 画され、実行されているのである。そのように周到な準備期間を経た後に、中学校での文 字式が指導されるにも関わらず、なおも困難とされる文字式の学習には、どのような原因 が存在しているのであろうか。記号理解のモデルを手がかりに、若干の考察を試みたい。 まずは、小学校段階での口や△を使った式が、どのように解釈されるのかを見てみよう。 2-1 "1+□-3"の解釈 この式"1+ロ-3"の解釈世界としては、 (1)物理的現実世界、 (2)数計算の世 界、の2つが考えられる。 (1)物理的現実世界 たとえば、次のような状況にあてはめて解釈する場合である。 「左 に 1 こ のお は じ きが あ りま す○ 右 に何 こか の お は じきが あ り ます 0 合 わせ る と 3 この お は じき に な り ます○ 」.

(5) 口の式、文字式の解釈と理解. 51. この場合、 "□"は、 「右にあったはずの何こかのおはじきの数」を表している、ある いは、 「おはじきの数を隠しているもの」を表してる、と解釈される(図3) 0 (2)数計算の世界 iIB^tt^. 1+1-2 1i_。-。IffilIII。 _i_--. 【図4】 この場合、数計算の世界の中に、 "1+2-3'という式を見つけ、 "i+n-3'の 解釈として採用している。ここで、 "□"は、 「数芋"2"を指示するもの」、あるいは、 「数芋"2"を隠しているもの」と解釈される(図4) 。. 2-2 ・・口÷昔-ロ×告の解釈 211の例では、参照世界として物理的現実世界を持出すことができたが、この式におい て、それは難しいであろう。物理的現実世界を参照世界とすることは不可能ではないが不 自然であるし、むしろ、数計算の世界にそれをもとめる方が容易と考えられる(図5) 0. 【図5】. 」. 3.口の式から文字式へ 次に、文字式が既習事項(数計算や口の式など)とのつながりで、どのように「理解」 されているのかを見ていきたい。 口の式から文字式への移行に際して、もっとも異なる点は何であろうか。筆者は、次の 2つの点を指摘したい。 文 字 式 で は一 つ の式 の 中 で 、 ( 1 ) 同 じ文 字 は 同 じ数 を 表 す○ ( 2 ) 乗 法記 号 ー×" が 省 噂 さ れ る0.

(6) 52. 3-1文字式では、同じ文字は同じ数を表す 口の式では、 「同じ記号("口、△、・・")が同じ数を表す」ということが明確には 規定されていない。たとえば、 蝪+蝪-6 の式の中の2つの"□"に対して、それぞれ、 (1,5). (2,4). (3,3). などの数字を当てはめることは許されている。 一方、 x+x-6 の式の中の2つの"Ⅹ"に対して、そのようなことは許されない。同じ文字が使われてい る以上、その文字"Ⅹ"は同じ数を表すことになる。したがって、 "Ⅹ"に当てはめれる 数は、 3だけである。 ところが、文字式の基本的ともいえるこの規則は、教科書のどこにも記載されていない のである([1J.L2]) 文字の導入場面では、 「口や△の代りにXやaを用いる」という説明がなされるのであ はなかろうか。この説明では、 "x"を"□"と同じように使ってよいと解釈されても仕 方がない。すなわち、文字式の解釈世界としてロの式を採用してよい、と言っているので ある。 しかし、この解釈では、次のような誤った反応を引き出してしまうのである。 X + X = X. これは、次のように説明できる。 口の式において、 "□"は、 「わからない数」を表すときに使われている。 "x"を "□"に読み代えれば、この記号"x"も「わからない数」を表していると解釈できる。 「わからない数」に「わからない数」を加えても「わからない数」なので、上のような式 をかいてもよいのである(図6) 。. 【図6】 3-2文字式では、乗法記号-×"か省略される たとえば、 3×[コ は、それ以上、変形できない式であるが、文字式では、 3×Ⅹ-3Ⅹ.

(7) 口の式、文字式の解釈と理解. 53. と、変形規則が新たに導入される。この規則の導入もまた、口の式と文字式の違いを決定 的にしているように思われる。つまり、こう云うことである。 数計算の世界では、乗法記号"×"が省略されることは決してない。たとえば、 3×41→34. などとは、変形できないのである。したがって、 "3×Ⅹ-3Ⅹ"のような式変形が許さ れるような記号世界の参照世界として、数計算の世界をもってくることに抵抗が感じられ る。しかし、何とかしてこのあらしい記号世界「文字式」を「理解」したいので、馴染み 深い物理的現実世界をその解釈世界として採用する。 その結果として、次のようなよくある誤り(杜,1991)が引き出されるのである。 3. ⅩT. Ⅹ=. 3. これは、記号と参照世界の関係から、次のように説明することができる。. 【図7】 すなわち、 "3x-x'の解釈世界として、物理的現実世界を思い浮べる(図7) 。た とえば、 "3"は「3つのおはじき」、 "Ⅹ"は「何こかのおはじき」である。そして、 "3Ⅹ"は、それらのおはじきが並列して並べられている状況と見るのである。ここでは、 "×"記号が隠されているので、その状況に乗法的関係を見ることはできない。そして、 "-"は「取り去る」という意味に解釈してよい。 「3つのおはじき」と「何こかのおは じき」が並べられているところから、 「何こかのおはじき」を取り去るのであるから、結 果は、 「3つのおはじき」ということになる。. 4.参照世界としての文字式 4- 1参照世界と記号世界の階層性 すでに見てきたように、新しい記号体系の学習において、新しい記号が参照世界によっ て解釈されている、言い換えれば、ある種の「理解」がなされている、と考えられるので ある。 「記号理解」の様相を、そのように記号世界と参照世界という2つの世界の対置で 眺めてみると、そこにはある種の階層性が形成されていることに気がつく。すなわち、あ るときは解釈すべき記号世界であったものが、さらに新しい記号の登場によって、参照世 界になってしまうのである。 上での例で云えば、初め、 "1+2-3'は物理的現実世界にその参照世界をもってい.

(8) 54. た。ところが、 "1+□-3"は"1+2-3'が、また、 "1+x-3"は"1+□3"が、参照世界の一つになっていると見なすこともできるのである(図8) 0. 【図8 :参照世界と記号世界の階層性】 4-2階層性の崩壊 ここまでは、文字式を解釈されるべき記号として見てきた。ところが、学習が進むにつ れて、さらに新しい関係が成立してくる。すなわち、文字式が、理解すべき別の対象のき デルとして働くことが要求されるようになる、つまり、文字式がある種の参照世界となる 場合である。 たとえば、以下のような文章題の解決に際して、方程式を使う場面を考えよう。 「あ る数 の 4 倍 か ら 3 を ひ くと、 も との数 の 2 倍 よ り も 5 大 き くな る と い う○ あ る数 を 求 め よ0 」. 問題文そのものからは、そこで意味されている数量関係や問題構造などがよくわからな いので、われわれは、そのモデルを用いるのである。あるときは、絵であったり、線分図 であったり、そして、文字式(方程式)であったりするのである。 4 Ⅹー 3 = 2 x + 5. このとき、この方程式は、問題文の数量関係を端的に表すための、そして、その関係に 操作を施すための参照世界となっていると考えることができる。 一旦、モデルに置き換えられた対象は、モデル内での操作、変形によって、新しい知見 を提供する。モデルが適切であり、その操作が妥当なものならば、問題の答えとなる知見 を引き出すことも可能となる。そして、文字式は、文章題などの多くの問題状況に対して、 強力なモデル(参照世界)となることができるのである。 ここで、次の点に注目したい。 文字式の導入場面では、物理的現実世界や数計算の世界が参照世界となる。それは、文 字式という新しい記号世界に対する解釈を行ない、その記号を「理解」しようとした場面 である。一方、文章題などの問題状況のモデルとして、文字式(方程式)を使用する場合、 その文字式は、問題状況を「理解」するための参照世界となっている。その問題状況とは、 普通、物理的現実世界の状況であったり、数計算の世界であったりする。低次の(より慣 れ親しんでいる)世界がそれより高次の(あまり慣れていない)世界の参照世界となると いう「参照世界と記号世界の階層性」は、一見、ここに崩壊しているように思われるので ある。.

(9) ロの式、文字式の解釈と理解. 55. 4-3新しい参照関係の成立-文字式の理解階層性は、本当に崩壊してしまったのであろうか。低次の世界から高次の世界という参 照の流れは、碓かに逆転しているように思われる。しかし、文字式によって参照し、 「理 解」しようとしているものは、今までの「記号理解のモデル」で捉えられない、別の次元 の事柄ではなかろうか。 すなわち、これまで考えてきた「記号理解のモデル」は、単に、新しい記号の意味や操 作規則を引き出すためのものとして、参照世界を想定してきた。そこでは、新しい記号が 参照世界の中の項目にどのように読み代えできるか、といことが問題であった。ところが、 問題状況の「理解」のために文字式が使用されるとき、その問題状況には、何ら新しい記 号は表れていない。したがって、記号の読み代えとしての参照は必要がないのである。そ れでは、何のための参照世界として、文字式は用いられているのであろうか。 それは、問題状況に内在する数量関係や問題構造を読み取るために、参照世界として文 字式(方程式)が用いられていると考えられるのである。複雑な文章や余分な情報の中から、 必要な数量を取りだし、それらの関係を端的に表現したものが文字式といえよう(図9)0. 【図9】 ここまで考えてくると、 「文字式を理解する」ということについて、 2つの異なる次元 が存在していることに気がつく。. ( 1 ) 文字式 の記号 と しての意味や操作規則が わか る0 ( 2 ) 文字式 のモデル と しての働 きと有用性が わか る。. そして、 (2)の「理解」は、 (1)の後に、すなわち、文字式の意味や操作規則など を一々気にしなくともよい状態になって、はじめて実感できるものではなかろうか(佐伯. 秤,1991)。 文字式はある種のモデルであり、モデルは思考の道具である。道具のよさは、使ってみ て始めてわかる。単に、道具を眺めていたり、その使用説明書を読んでいるだけでは、そ のよさは体験できない。文字式の有用性、あるいは、 「よさ」とでもいったものが、本当 にわかるのは、文字式が自由自在に使えるようになって、始めて実感できると思われるの である(図10)。. 【図1 0 :文字式理解の二重性】.

(10) 56. 5.結語 本稿では、記号理解の研究方法として、記号の3つの側面(意味論、構文論、語用論) に着目し、それを手がかりに次のような記号理解の3つの様相を設定した。 (1)参照世界の中に記号の指示対象を見っけること (2)記号世界の中で悪意的な規則の取決めを認めること (3)参照世界から引き出される自然な規則を記号の世界に取込むこと そして、これをもとに、新しい記号の理解が既知の記号体系への参照行為として捉えら れるという「記号理解のモデル」を提出した。 その結果、文字式の学習場面において生徒のおかしやすい、 X+X-X 3x-x-3. などの誤った式変形が、 「記号理解のモデル」を使って、整合的に説明することができた。 □十□-ローX+X-X -3. -. 3Ⅹ-Ⅹ-3. つまり、既知の記号体系(数計算、口の式、あるいは、物理的現実世界)を参照世界とし て、文字式を解釈するために、その参照世界で許されていた記号操作がそのまま文字式へ 持ち込まれると考えられるのである。 また、よく知っている記号世界が新しく学習する記号世界の参照世界となり、さらに、 その学習された記号世界が、再び新たな記号の学習においての参照世界になる、という 「参照世界の階層性」の存在を指摘した。 しかし、文章題などの問題解決に文字式が利用される場合を考えると、この階層性に問 題が生じる。文章、あるいは、その表している状況は、文字式よりも低次の(慣れ親しん でいる)記号体系であるのに、その理解のために高次の(より新しい学習内容の)記号体 系である文字式、あるいは、方程式が使われるのである。この文字式に関する参照関係の 逆転は、それまでの「記号理解のモデル」では捉えられない、新しい理解の枠組みを要請 した。それは、記号としての文字式の理解から、問題状況の構造を把握するためのモデル としての文字式の理解、といった次元の異なる理解の様相であった。つまり、 (1)文字式の記号としての意味や操作規則がわかる。 (2)文字式のモデルとしての働きと有用性がわかる。 という、 2つの次元が文字式の理解には存在しており、 「記号理解のモデル」は(1)の 側面しか説明できず、ここが本稿の限界である。 いうまでもなく、数学教育においては、 (2)の側面をも含めた文字式の理解を目指す べきである。それは、単に文字式の計算や式変形が正しくできるだけの理解ではなく、文 字式を使うことの「よさ」をわかることが、ひいては、数学学習の意義を実感できる一つ の場面であると考えるからである(2)も含め、さまざまな局面における「理解」の様 相を分析し、それに包括的な説明を行なえるような理論の構築が、今後の課題である。.

(11) 口の式、文字式の解釈と理解. 57. [引用・参考文献] [1] 『平成1年度小学算数1,2,3,4,5,6年』、大阪書籍 [2] 『昭和59年度中学数学1』、大阪書籍 [3]杜威『学校数学における文字式の学習に関する研究』 、東洋館出版社、 1991. [4]藤井斉亮『児童の文字の理解に関するインタビュー調査-x+x+x+x-xについて-』日本 数学教育学会第7 2回総会発表資料、 1990年8月. [5]両角達男『学校数学における「式を読む」ことに関する一考察-文字式の理解のために-』 、 筑波大学教育研究第1 0号、 1991,PP.1-ll. [6]丸山保『口、 △などの記号を扱うことの是非について-実態調査を中心として-』 、 日本数学教育学会誌第6 0巻6号、 1978.PP.6-9. [7]高松初恵『変数の理解にみられる子どもの行動について-誤答の分析を中心にして-』 、 上越教育大学数学教室数学研究紀要第2号、 1987,PP.85-97. [8]石田忠男『式に表すこと、式をよむこと』 、新しい算数研究No.221,1985.PP.35-38. [9JP.N.ジョンソン-レアード『メンタルモデル-言語・推論・意識の認知科学-』 、 産業図書、 1990. [10]ミシェル・ドゥニ『イメージの心理学-心像論のすべて-』 、勤草書房、 1990. [11]R.R.スケンプ『数学学習の心理学』 、新曜社、 1982. [12]池上嘉彦『意味の世界-現代言語学から視る-』 、日本放送出版協会、 1990. [13]佐伯肝『 「わかる」ということの意味-学ぶ意欲の発見-』 、岩波書店、1991. [14]von Glasersfeld,Ernst "Learning as a Constructive Activity" In Claude Janvier(EcL) 'Problems of Bepresentation in the Teaching and Learning of Mathematics'L.E.A.1987,PP.3-17. [15]H.Van Engen "A note on "variable"" The Mathematics Teacher,March 1961, pp.172-173.. [16]E.G.Begle "Comments on a note on "variable"" The Mathematics Teacher.March 1961,pp.173-174. [17]J.G.Greeno "Instructional Representations Based on Research about Understanding" 'Cognitive Science and Mathematics Education',L.E.A.,1987,pp.61-8.

(12) 58. A Study of Understanding and Representation in Mathematics Education - Interpretation and Understanding of Expressions with □ or X-. Takahiro KUNIOKA". In this paper, I notice three aspects of symbols, that is semantics, syntax and pragmatics, in order to make the following framework of some phases of understanding symbols. (l)finding the objects which symbols refer in some reference world (2)recognizing some artificial rules in the symbol world (3)taking some natural rules which are reduced from the reference world into the symbol world On the basis of this framework, I present a model of symbol understanding, by which we can explain the understanding process of new symbol systems as a referring process from the symbol world into the reference world.. interpretatoin 巨eference w orld く ー. new sym bolsystem. Using this model, I explain the reason why students so often make mistakes in the transformations of literal expressions. For example, we can explain the wrong literal expression X + X - X". Students find the meaning of "X in the expression with □", because they have learned the "□" before the "X". [コ+ロ-[コ-X+X-X In the situation of learning expressions with □", "□ means unknown number, so that they think X is unknown number. And unknown plus unknown is unknown, then they judge it is reasonable to write "X + X - X.. Department of Mathematics Education, Hyogo University of Teacher Education, Yashiro, Hyogo, 673-14, Japan..

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