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IRUCAA@TDC : 歯科医療におけるコミュニケーション教育について

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

歯科医療におけるコミュニケーション教育について

Author(s)

保坂, 誠

Journal

歯科学報, 112(2): 77-79

URL

http://hdl.handle.net/10130/2734

Right

(2)

はじめに 医療系大学では,教育理念の中に医療人としての 人間形成が盛り込まれている。東京歯科大学におい ても大学教育推進プログラムとして「コミュニケー ション教育と医療倫理教育をさらに発展させるテー マ」を主として国民が求める高い人間力と行動特性 を持った医療人を養成する教育プログラムを行って いる1) 。 医療者が良いと思って行った治療で,患者の満足 を得られないことがある。これは NBM(Narrative based Medicine:物語に基づいた医療)といわれる 患者の生活背景や生きがいなどの情報を基にして患 者の期待に沿った医療の提供ができていないことに つながる。医療者としての人間力の養成は,職業上 で関わる種々な健康問題をもった人々に対して,最 善の医療を提供するためである。これは,対人関係 における自己理解と他者理解が一つの要素になる。 例えば,患者対応における自分の言葉や行動の背後 にある感情を理解することや,相手の期待を明らか にし感情対応ができることである。患者の期待して いることを明確にすることができれば医療者として 最善の方法を提示することができる。そのためには 医療者と患者における双方向性コミュニケーション の仕方がポイントになる。コミュニケーションが上 手に展開できるかは,自分の対応能力や行動特性に よって決まるもので相手の問題ではない。今回は, 教育プログラムでの歯科医療におけるコミュニケー ション教育をふまえ,心の健康と成長,コミュニ ケーションに大切な観察力について紹介する。 1.心の健康と成長 大学生は入学してきた時点で身体的には大人であ るが,心の成長は伴っているのだろうか。人は1人 で勝手に成長発育して,大人になることは出来な い,親を含め多くの人々の支えが必要である。心身 の成長を考えると身体の成長は目に見えるので捉え やすいが,心の成長は主観的にも客観的にも捉える ことは難しい。身体は運動能力,学校健診などに よって子どものころから評価されている。しかし,

教育ノート

歯科医療におけるコミュニケーション教育について

Teaching Communication in Dentistry

保坂 千葉県立保健医療大学健康科学部歯科衛生学科 准教授(Department of Dental Hygiene,Faculty of Health Care Sciences,Chiba Prefectural University of Health Sciences) 略歴 1975年東京歯科大学卒業,歯科保存学専攻,歯学博士,1992年千葉県立衛 生短期大学准教授を経て2009年より現職。主な著書:歯科医療倫理,歯科衛生ケ アプロセス 研究テーマ:コミュニケーションの応用,歯科器材の臨床応用 趣 味:剣道(錬士六段) Makoto Hosaka キーワード:コミュニケーション教育,心の健康,自己効力感,ブロッキング,観察力 (2012年1月11日受付,2012年1月27日受理,歯科学報 112:77∼79,2012.) 77 ― 1 ―

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心の健康や成長については,一般的には評価される ことはない。他人に気づかされることや行動し失敗 することなどの経験が心の成長には必要となる。 1)心の健康 現代人は,情報過多な社会生活で種々のストレス を抱え,年齢に関係なく疲労が蓄積している。スト レス(日常の苛立ちごと)によって,心の中にどのよ うな感情が生まれているのか考えたことがあるだろ うか。多くのストレスは,対人関係の中で生じてい る。私たちが,長距離を走ったり過激な運動をした わけではないのに仕事を終えて疲れたと感じるの は,身体的より心的な疲労が多いからである。例え ば,データ処理を行う場合でもパソコンができなけ れば,電卓や手書きでの処理を行えば良いが,同僚 や上司から仕事がスムーズに行かないことや出来な かったことへの評価があり,認められないことへの 恐怖心や苛立ちが想起され,ストレスとなり疲労の 原因となる。怒り,不安,悲しさなどの負の感情 は,自分の期待していることと相違した相手の反応 によって生じるものである。処理すべき事が増えれ ば,それに関わる人間関係で心的疲労が生じ蓄積す る。パソコンの処理スピードは,長期間の使用で遅 くなるが,デフラグをして整理整頓することができ る。私たちの心を整理整頓するには,カウンセリン グによる気づきを生じさせることで気持ちをすっき りさせることが必要な場合がある。しかし,通常 は,カウンセリングを受けることもなく,自己カウ ンセリングをする技術もないので飲酒,買物,ス ポーツ,趣味などの代償行動で一過性の気分転換を 図っているのが現状である。心の健康はストレスへ の対応力,自己効力感(Self-efficacy:自分にはでき ると思える力,自己達成感など)を高めることで, 心を成長させていくことが必要である。 2)心の成長 身体的能力は年齢とともに衰えるが,心の成長 は,目に見えにくいものであるが一生涯に亘り高め ていくことができる。また,逆に意識化されないま ま自己概念として決定し,成長を止めてしまうこと もある。私たちは,生まれてから膨大な経験をして いるが,記憶をたどっても乳幼児期に親から受けた 無償の愛を覚えていない。乳幼児期に親からの愛が 充足していないまま,成長すると慈愛を願望するよ うな行動(だれからも愛されたい,認められたい)を とるようになる。医療者は人から認められるため や,良い評価を得るために仕事をしているわけでは ない。自己を信頼し,人の役に立っていると自分自 身が感じられることが自己効力感の向上につなが る。自己効力感の低い人は,どうしても人の意見に 振り回されてしまい本来の自分を見失ってしまう。 社会生活では,人から認められることも必要ではあ るが,自己効力感を高めることが種々なストレスか ら自分を守ることができる方法でもある2) 。 2.医療者としてのコミュニケーション 1)意識したコミュニケーションを学ぶ 人の話を聴き自分の意見も言えることがコミュニ ケーションの基本である。人は,成長段階において 周りの人々からの言動による影響を受け,集団生活 での生き方を学習する。子どもは自由奔放に疲れる まで遊び,おしゃべりをしているのが本来の姿であ る。しかし,高校までの教育で,集団生活での規律 を学び,決められた時間中は自己の言動を抑制する ことを学習する。また,同時に社会生活で必要な協 調性を身につけている必要がある。集中して相手の 言いたいことを聴くという傾聴姿勢は,自ら意識し ていなければ出来ないため高校までの教育で身につ いているかどうか疑問である。これは医療コミュニ ケーションで重要な傾聴姿勢に通じる。 ブロッキング現象(自分の枠組みで考える,言い 換える,シナリオを持って臨む,別なことを考える など)といわれる傾聴を妨げる癖は個々に違いがあ る。ブロッキングを外すことは,意識して脇におき 聴き続ける訓練をしなければ修得できない3) 。コ ミュニケーション中に即座に指摘されなければ,ブ ロッキングに気づき自ら修正することはできない。 ブロッキングは医療者にとって自覚すべきものであ る。 日常会話では自分の価値観でコミュニケーション をしているので相手の言いたいことは何か,どのよ うな気持ちがあるのだろうかなどに注目してコミュ ニケーションをしているわけではない。医療コミュ ニケーションは,普段意識していないコミュニケー 保坂:歯科医療におけるコミュニケーション教育について 78 ― 2 ―

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ション法を習得することが重要な要素になる。日常 会話は,生来的に身につけているので今さらコミュ ニケーション技法を習おうなどということは,なか なか考えられないだろう。医療コミュニケーション 技法は,いわゆるカウンセリング技法の一部を流用 している。臨床では,心身症などの心因性の問題や 行動変容を支援する場合だけでなく感情面の配慮が 必要とされている。人の言動には感情が伴っている ことを理解する必要があるが,普段はあまり意識し ていないだろう。医療人の養成では,相手に生じて いる感情,それ以前に自分の感情について学習する ことが大切である。 2)観察力を高める 医療コミュニケーションには,患者から発信され る言語情報(言葉と準言語である声の大きさ,抑揚 などを含む)と非言語情報(表情,仕草,態度など) を捉える観察力の養成が必要である。普段から意識 したコミュニケーションが出来るのであれば実際の 臨床現場でも問題がない。観察力は皆持っているも のであるが,日常会話では価値観などで思考しコ ミュニケーションをとっているので,あまり意識さ れていない。情報を受容するか否かは,概念のフィ ルタで制御していることにあまり 気 づ い て い な い4) 。私たちは,多くの情報が溢れている中で取捨 選択して生活をしている。目の前に居る人が発信し ている情報を落ち着いて捉えるだけの余裕がないか もしれない。仕事中,毎日慌しく時が過ぎでいく中 で,日常会話とは違う医療者としてのコミュニケー ション技術を駆使できることが望まれる。目の前に いる人が発する種々な情報を捉えるアンテナを持っ ていなければならない。 患者理解のために必要なことは,様々な患者背景 があることを認識し,患者の持っている情報をどの 位得ることができるかということである。これは, 当然医療者のコミュニケーション能力によって決 まってしまう。医療者が患者から発信される言語, 非言語情報を的確に捉え整理し,患者に言語,非言 語情報として戻すことで双方向性の医療コミュニ ケーションは成り立つ。その情報を的確に掴む技 術,すなわち観察力の養成が医療者には求められて いる。しかし,日常会話では不都合無くコミュニ ケーションが成り立つため,医療コミュニケーショ ンを見直すには自己の気づきが必要である。 まとめ 行動を変えるには,自己の気づきが必要になる が,自分で変えようとしない限り,周りからの圧力 や脅かしでは一過性の行動抑制はできても本来の自 分を変えることはできない。医療者は,心身の健康 支援を行うためにも自分の行動特性を見直し,医療 コミュニケーションの技術を磨いていくことが大切 である。 文 献 1)東京歯科大学ホームページ http : //www.tdc.ac.jp/col-lege/activity/theme_a.html(2011/12/1アクセス) 2)第3巻 行動科学と医療,長谷川 浩,宗像恒次編,p 21∼24,弘文堂,1991. 3)感情と行動の大法則,宗像恒次,p118∼121.ヘルスカ ウンセリング学会,千葉,2011. 4)コミュニケーション学,末田清子,福田 浩,p41.松 柏社,東京,2003. 別刷請求先:〒261‐0014 千葉市美浜区若葉2−10−1 千葉県立保健医療大学健康科学部歯科衛生学科 保坂 誠 歯科学報 Vol.112,No.2(2012) 79 ― 3 ―

参照

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