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IRUCAA@TDC : 歳を重ねて分かること

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

歳を重ねて分かること

Author(s)

山田, 好秋

Journal

歯科学報, 118(4): 4i-4i

URL

http://hdl.handle.net/10130/4696

Right

Description

(2)

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歳を重ねて分かること

山 田 好 秋

これまで約40年間地方大学で教員として勤務し,平成26年3月から東京歯科大学に勤務していま す。田舎にいる頃は,通勤時間は長くても片道30分でしたが,現在は1時間以上かかります。車で通 勤する際には経験したことが無かったのですが,つり革にぶら下がることで肩や体幹の筋をストレッ チできることに気付きました。おかげさまで少し肩こりが軽くなった気がします。さて,学会誌の巻 頭言ということなので,少し私の専門分野の経験をお話しします。 一昨年,歩道橋を急いでかけ降り,案の定足を踏み外して大腿四頭筋を痛めてしまいました。部位 は異なりますが,横綱稀勢の里の怪我と同じで,数ヶ月間杖をついて歩く日々を送り,周りにかなり の迷惑をおかけしました。原因は,加齢による筋力低下と伸張反射の調節機能低下と考えています。 仕事柄,加齢による筋力低下は小さな段差でも躓くのでバリアフリーの必要性を生理学的観点から説 明してきました。特に,高齢者には歩行時に注意するように話してきましたが,見事に自分自身で証 明してしまいました。 筋収縮の特性から,階段を上がる際には筋力の低下は歩行速度の低下を招くだけですが,階段を下 りる際には筋収縮力を減少させることが生理学的に不安定になりがちなため,事故が起こりやすくな ります。山登りで疲れた足で,急な坂道を下ると膝がガクガクして大変です。健常者が階段を降りる 際には,着地に伴い伸張反射を少し抑制して,柔らかく着地できるように神経調節が行われます。加 齢に伴いこの調節機構が作動しなくなり,着地時に抗重力筋が伸張反射でバネのように作用して足が 突っ張ります。したがって,若者のように軽やかに階段を駆け下りることができなくなります。幸 い,咀嚼運動では閉口相には食品負荷がかかりますが,開口相には負荷がかからないシステムなので このような問題は起こりません。 しかし,咀嚼運動も加齢の影響から逃れることは出来ません。下肢屈筋の筋力低下が原因ですり足 になるのと同様,開口筋の筋力低下により咀嚼時の開口運動が小さくなり,開口位でも歯列の偶発的 な接触が増えると考えています。若い頃は開口筋が歯牙接触を起こさない部位まで開口させ,それで も接触する場合には咀嚼中枢でこれを回避する反射が機能したのですが,加齢とともに反射の制御機 能が低下し,咀嚼運動パターンにも影響がでると考えられます。 咬合の生理学は半世紀前にアメリカで当時のボス(Prof. Ash)から与えられた研究テーマでした。 当時,咬合の生理学は存在しないと反論しましたが,ボスからは「自分は臨床家であり,日々の治療 の中である法則がありそうだと感じている,それを生理学的に整理してほしい」と言われたことを思 い出します。なんとこの歳になり,初めて事の重要性に気づいた次第です。 これまで生理学や摂食嚥下の教科書を手がけてきました。摂食嚥下の分野では高齢者が対象となる ことが多く,加齢変化について記述が求められます。おそらく生理学だけの問題ではないと考えます が,発達段階の研究はたくさんあるのですが,高齢者に関する生理学的研究は進んでいないので加齢 の影響について十分なエビデンスが集まりません。特に,寿命が延びてきている現状では研究が追い つきません。そこで,提案があります。それぞれの専門分野で研究・治療してきた先生方が自身の経 験をもとに高齢者の機能変化について議論する場を作ってはいかがでしょうか。これまで多くの学会 で「若手シンポジウム」が開かれてきました。今度はテーマを決めて「古手シンポジウム」を開催 し,ご自身の経験を共有してみてはどうでしょうか。実験が出来ず空白のまま残っている加齢変化の 部分を埋めることができるかもしれません。高齢社会では元気な高齢者に社会貢献が求められます。 これが診療・研究に従事してきた高齢者の活躍の場かもしれません。 (東京歯科大学短期大学 副学長)

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