2006 年 8 月の完全失業率 (季節調整値) は 4.1 %まで低下し (総務省統計局 「労働力調査速報」) , 8 月の有効求人倍率 (季節調整値) は 1.08 で, 1 を超える状態が昨年の 12 月から続いている (厚 生労働省職業安定局 「一般職業紹介状況」)。 マクロ で見た労働市場は需要不足失業がないという意味 で 「完全雇用」 状態にあり, 量的な面での雇用改 善は着実に進んでいる。 しかし, 雇用の質的な面 での改善は進んでいるのであろうか。 今年の 経済財政白書 や 労働経済白書 で は, 若年層におけるパート・アルバイト雇用者 (いわゆるフリーター) は減少に転じているが, 非 正規従業員は増加し続けている。 それには派遣労 働者の増加寄与が大きい。 そして, 非正規から正 規への転職者の割合はいまだ低水準であるという。 「一般職業紹介状況」 によると, 8 月の正社員に 関する有効求人倍率は前年同月を 0.05 ポイント 上回ったが, それでも 0.62 であり正社員に限れ ばまだ求職超過の状態にある。 完全失業率が 5.4%と高かった 2002 年の夏, トヨタ自動車グループの生産職場調査を行った。 そこでは, 期間従業員や請負労働者などの非正規 労働者が生産職場で急増しており, 3 割を超える 職場もざらであった。 現場の監督職に聞くと, 非 正規労働者の離職が多いことで振り回され, 職場 における技能・技術の蓄積が困難となり, 現場で の改善力が低下し, 品質の維持向上が難しいとの ことであった。 ただ, 非正規比率が高いところで も, 正規従業員と同じようにローテーションなど の技能訓練を行い, 同じ仕事仲間として生産職場 に 「巻き込む」 努力や 「正規雇用への途」 を開く などして定着化を図り, 4, 5 年かけて工夫をして きたところは, スムーズな生産が行われていた。 その後, 私自身は生産職場調査から遠ざかって おり, 詳しい状況はわからないが, 新聞報道など によれば, 生産職場では請負労働者から派遣への 転換が行われている。 また, 期間従業員の募集で も 「正規登用の途あり」 という広告も目立つよう になり, 実際にも, 正規雇用への登用もかなり増 えているようだ。 最近のニュースでは, 日系ブラ ジル人などの外国人の期間従業員も正規登用し, 優秀な社員の確保を狙っているという事例も報道 された。 また, 正社員中心の労働組合も, 企業外 部の動きに刺激されて非正規従業員の 「組合化」 に取り組もうとしている。 完全雇用の状態が今後も続けば, 従来どおりの, 低コストを狙った非正規雇用依存の経営では, 募 集しても人は集まらないであろう。 「正規登用の 途あり」 と謳っていても, それがほんのわずかな 企業や, それをえさに過重労働を強いるなどして いるところは敬遠されるようになるはずである。 その動きを効率よくするために, 求人のある企業 の職場に関するきめ細かな情報を求職者に流し, また企業にも指導していくような労働市場政策が 必要であり, 実際にも行われつつあるようだ。 そ の成果に注目したい。 一方, 非正規労働者の多くが必ずしも正規従業 員になりたいと思っているわけではない。 その理 由のひとつは, 休暇もまともに取れない過重労働 と負担にあえいでいる正規従業員をみているから であろう。 不況時には我慢していた正規従業員も 求人募集が増えるにつれて転職先を探す。 そのよ うになる前に, 正規・非正規雇用の処遇が二極分 化している傾向から段階的に統合されるよう, 労 使の努力に期待したい。 (むらまつ・くらみつ 南山大学総合政策学部教授) 1
正規・非正規雇用の二極分化から段階的統合へ(PDF:125KB)
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