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19世紀英国におけるジェイン・マーセットの経済学大衆化への貢献とその意義

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Academic year: 2021

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(1)様 式C-19. 科学研究費補助金研究成果報告書 平 成23年4月30日. 現在. 機 関 番 号:34419 研 究 種 目:若. 手 研 究(B). 研 究 期 間:2008年 邑田 旦百 尋 員.. 度. 口.r⊃A7りAり. 19世. 研 究 課 題 名(和 文) そ の意 義 研 究 課 題 名(英 文) its. ∼2010年. 度. 掴. significance. Jane. 紀 英 国 に お け る ジ ェ イ ン ・マ ー セ ッ トの 経 済 学 大 衆 化 へ の 貢 献 と Marcet'. in England. s contribution. in the. opularizing. political. economy. and. 19tH century. 研究代表者 高 木 成 美(TAKAGINARUMI) 近 畿 大 学 ・経 済 学 部 ・准 教 授 研 究 者 番 号:60411568. 研 究 成 果 の概 要(和 文):19世 紀 前 半 に経 済 学 大 衆 化 に貢 献 した人 物 と して知 られ て い るジ ェ イ ン ・マ ー セ ッ トにつ い て、 そ の 経 済 学 に関 す る著 書3点 を含 む児 童 教本 類 を精 読 し、 ま た 同 時 代 に活 躍 した 同分 野 や 他 分 野 にお け る教 本 執 筆 家 や 教 育 者 の作 品 とも適 宜 比 較 分 析 した。 そ の結 果 、マ ー セ ッ トが先 達 者 で あ るエ ッジ ワー スや バ ー ボー ル ドか ら児 童 教 育 の在 り方 や 形 式 に 関 して影 響 を受 け 、 ま た反 対 に、 後 継 者 で あ るマ ル テ ィ ノー や そ の他 多 くの教 本 執 筆 者 た ち に は 内容 と形 式 の両 面 にお い て多 大 な影 響 を与 え て い た こ とが判 明 した。 研 究 成 果 の概 要(英 文). This. research. Jane. concerns. Marcet,. known. as a contributor. of. popularizing political economy in the first half of the 19th century. Comparing her main books on economics (called "political economy" at that time) as well as her textbooks for children with other books by her contemporaries, has clarified that Marcet was greatly influenced by her predecessors such as Barbauld and Edgeworth in their attitudes toward educating children, and that she also influenced her followers such as Martineau and other textbook writers, in shaping the contents of their textbooks for children. 交付決定額 (金額 単 位:円). 直接経費. 間接経費. 合. 計. 2008年. 度. 300,000. 90,000. 390,000. 2009年. 度. 300,000. 90,000. 390,000. 2010年. 度. 200,000. 60,000. 260,000. 年度 年度 総. 研 究 分 野:社. 計1800,0001240,0001040,000. 会科学. 科 研 費 の 分 科 ・細 目:経 済 学 経 済 学 説 ・経 済 思 想 キ ー ワ ー ド:ジ ェ イ ン ・マ ー セ ッ ト 1.研 究 開 始 当 初 の 背 景 19世 紀 初 頭 の イ ギ リ ス に お い て 経 済 学 の 普. 貢 献 し た 。 し か しそ の 貢 献 と は 裏 腹 に 、 彼 女 の 作 品 内容 とそ の受 容 、そ して経 済 学 史 にお. 及 と大 衆 化 に大 き く貢 献 した 文 筆 家 の 一 人 で あ る ジ ェ イ ン ・ハ ル デ ィ マ ン ド ・マ ー セ ッ ト(1769-1858)は 、 当 時 、 女 性 で あ りな が ら リ カ ー ド、 マ ル サ ス と い っ た 知 識 人 と 交 流 し、 ア ダ ム ・ス ミ ス の 著 書 を 中 心 と し た 古 典 経 済. け る彼 女 の 存 在 意 義 は 、 こ れ ま で 見 過 ご さ れ が ちで あ っ た 。 事 実 、 様 々 な 文 献 を あ た り、. 学 の 理 論 を 小 説 風 の わ か りや す い 読 み 物 の 教 本 に仕 立 て あ げ 、経 済 学 の 大 衆 へ の 普及 に. 稀 少 な 先 行 研 究 を 発 掘 す る うち に 、 こ の マ ー セ ッ トとい う一 イ ギ リス 人 女 性 文 筆 家 の 多 岐 に わ た る分 野 で の 精 力 的 な 執 筆 活 動 は 、 経 済 学 史 の み な らず 、 科 学 、 植 物 学 、 神 学 、 教 育 学 とい っ た 各 専 門 ジ ャ ン ル の 歴 史 にお い.

(2) て も 、そ れ ぞ れ の 文脈 で少 な か らず 言 及 が な され て い る こ と 、 さ ら に は 彼 女 が 女 性 で あ っ た こ と か ら 、 ジ ェ ン ダ ー 論 や フ ェ ミニ ズ ム 研 究 に お い て も、彼 女 と同 時 代 の女 性 教 育 者 、 マ ラ イ ア ・エ ッ ジ ワ ー ス や ハ リエ ッ ト ・マ ル. く重 要 で あ る と い う比 喩 を 提 示 し た 上 で 、 優 れ た 経 済 学 理 論(=製 品)も ま た 、 そ れ を 遂 行 お よび実 践す る に あ た っ て 、政 策 決 定 者 か ら 遂 行 者 、一 般 市 民 、労 働 者 に い た る ま で 、各. テ ィ ノ ー ら に 並 ん で そ れ な りの 評 価 が な さ れ て い る こ とが 判 明 し た 。 こ れ ら の こ と か ら 、. 階 層 そ れ ぞ れ に ふ さ わ し い 周 知 が な され る (=マ ー ケ テ ィ ン グ)こ と が 重 要 で あ り、 特 に 一 般 市 民 や 労 働 者 階 級 の 啓 蒙 と教 育 に直 接. 彼 女 の著書 や彼 女 の存在 の歴 史 的意義 につ い て の 研 究 は 、 長 期 的 に み て 、 そ の ま ま19 世 紀 イ ギ リ ス の 社 会 思 潮 の 大 き な 文 脈 と枠. か か わ る 経 済 学 普 及 者 の 役 割 は 決 して 見 過 ごす こ とが で き な い もの で あ る と 主 張 して い る。. 組 の 中 で と らえ る こ との で き る 、 きわ め て ス ケール の大 きな もの にな る可能性 が あ る と 思 わ れ た 。 長 期 的 な 研 究 の 展 望 と して 、 研 究. 個 々 人 の生活 の利 益や 富 に深 く関わ って い る経 済 を 、 学 問 と し て 理 論 的 ・体 系 的 に 一. 開 始 当 初 の 時 点 で は 個 々 に 分 断 され 孤 立 し て い る マ ー セ ッ ト研 究 を 、 学 問 ジ ャ ン ル を超 え て融 合 し、学 際 的 な もの に仕 上 げ る こ と を 想 定 し た 上 で 、 ま ず は そ の 手 始 め と して 、 マ ー セ ッ トの 経 済 学 に 関 す る 著 書 の 研 究 を 中 心 に 、 彼 女 が 当 時 の イ ギ リス 社 会 に お い て 経 済 学 の 大 衆 化 に い か な る貢 献 を な しえ た か 、 当時 の社 会 思 想 、思潮 の 文脈 にお い て検 証 す る こ とを主 眼 に した。. 2.研. 究 の 目的. 前 述 の ジ ェ イ ン ・ハ ル デ イ マ ン ド ・マ ー セ ッ ト(1769-1858)に 関 して 、当時 の社 会 に与 え た 彼 女 の 影 響 とそ の 意 義 を 、 経 済 学 史 、 西 洋 史 、教 育 学 史 、 ジ ェ ンダ ー とい っ た 多 分 野 に ま たい で存 在 す る先 行 研 究 を参 照 、融合 し な が ら 、彼 女 が 執 筆 した 経 済 学 関 連 の 主 要 著 書 で あ る 『経 済 学 対 話 』(1816)、 『経 済 学 に 対 す る ジ ョ ン ・ホ プ キ ン ズ の 見 解 』(1833)、 『富 と貧 困 』(1851)の テ ク ス ト分 析 を 中 心 に 、 そ の 周 縁 部 分 も あ わ せ て 探 ろ う とす る の が 本 研 究 の 主 目的 で あ る 。 経 済 学 史 分 野 に お け る マ ー セ ッ トに 関 す る数 少 な い先 行 研 究 にお い て 、多 少 の 例 外 は あ る も の の 、彼 女 は 概 ね 経 済 学 者 と い う よ り は 経 済 学 普 及 者(popularizer)、 または教育者 と し て 位 置 づ け られ て い る 。 そ して こ の 「経 済 学 普 及 者 」 の 存 在 は、 そ の 性 質 上 、 経 済 学 者 の あみ だす 理 論 や 学 説 を受 け売 り し、か み くだ い た 内 容 を 廉 価 で 大 衆 に 広 め る行 為 か ら、そ の 功績 が 経 済 学者 ほ ど には評 価 され る こ とも な く、不 当な扱 い に 甘 ん じて きた とい っ て よ い 。 事 実 、 ア ル フ レ ッ ド ・マ ー シ ャ ル な ど は 、 マ ー セ ッ トと マ ル テ ィ ノ ー の 出 版 し た 教 本 類 に 対 して 批 判 め い た 見 解 を示 して お り、そ の 批 判 は そ の ま ま 後続 の 経 済 学 史 で 受 け つ が れ て き た 。 し か し な が ら例 え ば 、19 世 紀 の イ ギ リス に お い て 古 典 経 済 学 大 衆 化 に 貢 献 し た ヘ ン リー ・ブ ル ー ア ム と ウ ィ リア ム ・エ リ ス に 関 す る 研 究 書 を 発 表 し て い る W.D.ソ ッ ク ウ ェ ル(1994)に よ れ ば 、優 れ た 製 品 が 市 場 で 売 り に 出 され る 際 に は 、製 品 自 体 の質 と同様 、そ の マ ー ケ テ ィ ン グ戦 略 も等 し. 般 大 衆 に 広 め る とい う行 為 に は 、 常 に意 識 的 ・無 意 識 的 な イ デ オ ロ ギ ー 的 意 図 が は た ら か ざ る を 得 な い こ と を認 識 して お く必 要 が あ る。 そ して 本 研 究 課 題 で 扱 うマ ー セ ッ トに 関 して は 、彼 女 が 中上 流 階 級 に所 属 す る既 婚 女 性 で あ っ た と い う伝 記 的 事 実 に 加 え て 、 彼 女 が対 象 に した想 定読 者 が 当 時 、公 的 機 関 に お い て 体 系 的 教 育 を学 ぶ 機 会 を 阻 ま れ た 女 性 や 極 貧 の 労 働 者 た ち で あ っ た りす る こ と か ら、彼 女 の 著 書 が 伝 え る経 済 思 想 が これ ら の 人 々 に ど の よ う に浸 透 す るべ く して 書 か れ た の か 、 そ して実 際 に は い か に 受 容 され 、 彼 らの 実 質 的 な 経 済 活 動 に い か ほ どの 影 響 を 与 え る こ と に な っ た の か 、 史 実 の 検 証 と一 次 資料 の 分析 、 と りわ け 、彼 女 の 著 書 内で 繰 り広 げ られ る 「か み く だ か れ た 」 経 済 学 理 論 に 付 与 され た語 り手 の レ ト リ ッ ク に 注 目す る こ とが 重 要 に な っ て くる。 こ の うち 、 知 へ の ア ク セ ス を 阻 ま れ た 女 性 へ の 教 育 と い う分 野 に お け る マ ー セ ッ トの 功 績 に 関 し て は 、 マ ー セ ッ ト研 究 の 草 分 け 的 存 在 で あ る ドロ シ ー ・ トン プ ソ ン(1973)や ベ ッ ト ・ポ ー キ ン グ ホ ー ン(1998)と い っ た 経 済 学 史 の 専 門 家 、 お よび ル ー ス ・ワ ッ ツ 、 ゲ イ ビ ー ・ワ イ ナ ー(2004)ら 女 子 教 育 の 歴 史 研 究 家 が 既 に 優 れ た 指 摘 を 行 っ て い る。 ま た 、 マ ー セ ッ ト作 品 の 受 容 状 況 や 浸 透 効 果 に 関 し て は 、 ポ ー キ ン グ ホ ー ン(1982)、J.Rシ ャク ル トン(1990)の 論 文 を 参 照 す る こ とで あ る 程 度 の 概 要 を 知 る こ と が で き る。 ま た 最 近 で は マ ル サ ス の 思 想 の 大 衆 化 を 論 じた ジ ェイ ム ズ ・ハ ゼ ル が そ の 著 書 で 新 救 貧 法 成 立 を め ぐ る 政 治 的 状 況 とマ ル テ ィ ノ ー の 著 作 と の 関 係 を 論 じ る に あ た り 、 比 較 対 象 と して マ ー セ ッ トの 保 守 性 に 言 及 し て い る(2006)。 こ れ に 対 し て 、 マ ー セ ッ トの 経 済 学 大 衆 化 の 功 績 を 著 述 内 容 の 中 身 そ の もの よ りは 周 縁 部 で あ る 作 品 の 語 り 口や 形 式 、 レ ト リ ッ ク の 重 要 性 に 見 出 そ う と い う、 新 しい 切 り 口 を 提 示 して い るの は 、異 な る専 門領 域 で あ る文 学 研 究 の 立 場 か ら マ ー セ ッ トの 著 書 を 分 析 す る 二 人 の 研 究 家 、 ウ ィ リー ・ヘ ン ダ ー ソ ン(1995)と ヒル ダ ・ポ リス(2002)で あ る 。 以 上 の よ うな 先 行 研 究 を ふ ま え た 上 で 明 ら か な の は 、 マ ー セ ッ トの 経 済 学 大 衆 化 へ の.

(3) 貢 献 とそ の 歴 史 的 意 義 に 関 し て は 、 依 然 、 論 じ るべ き点 が 多 く残 っ て い る とい う こ とで あ る。 そ もそ も、彼 女 の 経 済 学 に 関 す る主 要 著 書 は三 冊 のみ で あ る も の の 、 もっ と も頻 繁 に 言 及 され る 『経 済 学 対 話 』 に 比 べ 、 後 続 の 二 作 品 に 関 して は ほ とん ど そ の 内 容 を 吟 味 され た こ と が な い 。 『経 済 学 対 話 』 の 初 版 が 発 表 され て か ら20年 近 くた った 後 に 書 か れ た 『ジ ョ ン ・ホ プ キ ン ズ 』、 そ して さ ら に20 年 近 く後 に 書 か れ た 『富 と貧 困 』 とい う、 お よ そ 半 世 紀 を カ バ ー す る彼 女 の 経 済 学 教 本 の 執 筆 活 動 とそ の 内 容 は 、 時 代 の 変 遷 の 影 響 を受 け て い ない とは言 い が た く、新 た な テ ク ス ト解 釈 の 可 能 性 が 残 さ れ て い る と 思 わ れ. セ ッ トの 存 在 を 位 置 づ け る た め 、 彼 女 の 周 縁 部 分 を 、 同 時 代 の 経 済 学 者 や 普 及 者 、 そ して そ の 諸 作 品 か ら探 り、 マ ー セ ッ トの 独 自性 を 見 出 す こ と を 試 み る。 マ ー セ ッ トの 名 前 と共 に 言 及 され る こ と が も っ と も頻 繁 な の は 、 当 時 、彼 女 の教 本 執 筆 内容 に も っ とも影 響 を与 え た と され る リ カ ー ド と マ ル サ ス で あ る。 ま た 、 彼 女 の 影 響 を 受 け 、 後 に 自身 も 経 済 学 の 教 本 を 多 数 出版 す る こ と に な る の は ハ リエ ッ ト ・マ ル テ ィ ノ ー で あ る 。 お よ そ マ ー セ ッ トに 言 及 す る論 文 の ほ と ん ど は 、 彼 女 の 功 績 と と も に 必 ず とい っ て よい ほ どマ ル テ ィ ノ ー に つ い て も ふ れ て お り、 多 く の 場 合 、 こ の 二人 は 同時代 に 同テー マで 経済 学 の大衆 化. る 。 こ れ らの 作 品 す べ て を 等 し く 精 読 、 分 析 し た 上 で 、19世 紀 前 半 の イ ギ リス 社 会 思 潮 と マ ー セ ッ トの か か わ り 、 お よ び そ の 周 縁 部 分. に 貢 献 した 女 性 と して 相 関 的 に 比 較 対 象 の. の 経 済 学 大 衆 化 に か か わ る歴 史 を 多 角 的 に. 受 容 の され 方 が 異 な り、ま た 、二 人 の 間 に は 、 執 筆 活 動 に 対 す る 目的 意 識 と姿 勢 に 関す る 大 き な 違 い が 存 在 し た と 思 わ れ る。 そ の 点 に. 検 証 し て い く。. 3.研 究 の方 法 (1)本 研 究 の 特 徴 は 、 文 学 テ ク ス トの 精 読 と そ の 分 析 、解 釈 の 手 法 で 経 済 学 の 書 物 の 範 疇 に 分 類 さ れ る マ ー セ ッ トの 著 書 を 読 み 解 く こ と で 、 経 済 学 史 に お け る マ ー セ ッ ト像 に 、. 関係 とな っ て い る。 とは い え 、マ ー セ ッ トと マル テ ィ ノー で は 、実 の とこ ろ社 会 にお い て. 関 し て は 例 え ば ハ ゼ ル(2006年)が 、政 治 活 動 に積 極 的 に 関 わ っ た マ ル テ ィ ノー に比 べ 、 マ ー セ ッ トは そ の 著 作 活 動 に 政 治 色 を 出 す こ と は 控 え 、 保 守 的 で あ っ た こ と に 言 及 して い る。 だ が 、 伝 記 に 基 づ く史 実 以 外 に も 、 例 え ば 、 マ ー セ ッ トの 『経 済 学 対 話 』(1816)が マ ル テ ィ ノ ー の1832年 に 発 表 し た 『経 済 学. 新 た な 光 を あ て よ う と試 み る 点 に あ る 。 ま た 、 19世 紀 の 西 洋 に お け る 女 性 の 社 会 に お け る. 実 例 集 』 に 与 え た 影 響 、 さ ら に は そ の2年 に マ ー セ ッ ト自 身 の 経 済 学 に 関 す る2作. 役 割 に 関 す る 考 察 を 軸 に 、 マ ー セ ッ トが 「女 性 の」 文 筆 家 で あ っ た 点 を特 に意識 した研 究 を行 うこ とで 、経 済 学 の 女性 へ の 浸透 とそ の. 『ジ ョ ン ・ホ プ キ ン ズ 』 が 出 版 され て い る こ と を 考 慮 す る な ら ば 、 そ れ ぞ れ の テ ク ス トを. 影 響 に 関 して考 察 す る方 法 を とる。 参 照 す る 先 行 研 究 は 、経 済 学 史 の み な らず 、19世 紀 の 文 化 や 文 学 、 女 性 史 、 子 女 教 育 史 な ど、 そ の 周 縁 部 の文 献 に及 ぶ 。 具 体 的 には 以 下 の 通 り で あ る。. (2)マ ー セ ッ トの経 済学 に 関 す る著 作 を 中 心 に 、一 次資 料 の収 集 と精 読 、内容 分析 を行 う。 経 済 学 に 関 す る彼 女 の 主 要 著 書 は 上 記 で 挙 げ た3点 の み で あ るが 、そ れ 以 外 の 分 野 で彼 女 が手 が け た化 学 、植 物 学 、 教 育 、 宗 教 に関 す る著 書 も可 能 な 限 り入 手 し、マ ー セ ッ ト自 身 が 学 問 全 体 の 大 衆 化 に つ い て ど の よ うな 自意 識 、そ して 理 念 を も って 臨 も うと して い た の か知 る手 が か りを探 る。 ま た そ れ と同 時 に 、多 岐 にわ た る専 門領 域 に ま た が っ て 存 在 す るマ ー セ ッ トの先 行 研 究 に 目を配 り、彼 女 や そ の一 連 の著 書 に 関す る史 実 、解 釈 を入 念 に検 証 す る必 要 が あ る わ け だ が 、 こ こで は 特 に 、19世 紀 の 女性 史 や ジ ェ ン ダー研 究 に 焦 点 を しぼ り、そ こか らマ ー セ ッ トの 女性 を 対 象 と し た 経 済 学 の 教 育 にお け る 功 績 に重 点 を お い た論 を構 築 す る。 (3)19世. 紀 の 経 済 学 大 衆化 の 流 れ の 中で マ ー. 後 目. 詳 細 に 比 較 検 証 し 、 そ こ に 見 られ る 「問 テ ク ス ト性(イ ン タ ー テ ク ス チ ュ ア リテ ィ)を 考 察 す る必 要 が あ る と思 わ れ る 。. (4)マ ー セ ッ トの 経 済 学 大 衆 化 へ の 貢 献 を 中 心 に した19世 紀 イ ギ リス にお け る社 会 思 潮 と して の 経 済 学 大 衆 化 に 関 す る研 究 を総 括 す る と同 時 に 、マ ー セ ッ トの テ ク ス ト分 析 に 際 して 実 際 に試 み た 文 学 的 テ ク ス ト解 釈 の 方 法 論 を 体 系 的 に提 示 し、今 後 、マ ー セ ッ ト に 限 らず 他 の歴 史 的 一 次 資 料 に あ た る 際 に 応 用 で き る よ うな形 に整 え る。. 4.研 究成果 (1)経 済 学 大 衆 化 に 貢 献 し た 最 初 の イ ギ リス 人 で あ る ジ ェ イ ン ・マ ー セ ッ トが19世 紀の 経 済 学 大 衆 化 の 流 れ の 中で 大 き く影 響 を 与 え 、 後 に マ ー セ ッ トの 後 継 者 と称 され る こ と に な る ハ リエ ッ ト ・マ ル テ ィ ノ ー の 文 献 を 読 み 解 き な が ら 、 マ ー セ ッ ト とマ ル テ ィ ノ ー の 影 響 を 考 察 した の が 本 研 究 課 題 にお け る 最 初 の成 果 で あ る。 具 体 的 に は 、マ ル テ ィ ノー の 教 本 に お い て 、 マ ー セ ッ トの 教 本 を 意 識 し た と み られ る様 々 な 形 式 的 類 似 点 、 物 語 内 容.

(4) の 類 似 点 と相 違 点 を 整 理 し 、 マ ル テ ィ ノ ー が 先 達 マ ー セ ッ トの 経 済 学 教 本 の 対 話 形 式 を 自身 の 作 品 で も 応 用 し な が ら 、 自 身 の 作 品 の 差 別 化 を は か ろ う と して い た 点 を 明 らか に し て い っ た 。 扱 っ た 作 品 は 、 マ ー セ ッ トに 関 し て は マ ル テ ィ ノ ー 自身 が 影 響 を 受 け た こ と を 認 め て い る 『経 済 学 対 話 』 と 『ジ ョ ン ・ ホ プ キ ン ズ』 を、 ま た 、 マ ル テ ィ ノー に 関 し て は 全9巻25話 に 及 ぶ 『経 済 学 実 例 集 』 の 全 体 の 構 成 と、 そ の 中 の 特 に一 話 を抽 出 し、 物 語 内 容 と特 に 対 話 形 式 を採 用 して い る 部 分 に つ い て マ ー セ ッ トの 作 品 と の 相 違 点 と 類 似 点 を それ ぞ れ 詳 細 に指 摘 し、両 作 品 内 に お け る 経 済 学 の位 置 づ け と執 筆 者 と して と っ た立 場 の違 い を 明 らか に した。 そ の 際 、 明 ら か に な っ た こ と と し て 、 マ ー セ ッ トに と っ て 経 済 学 は あ く ま で も 「自然 科 学 」 の 学 問 で あ り、勉 学 の 対 象 で あ った が 、 対 す るマ ル テ ィ ノ ー は 、 経 済 学 教 本 の 出 版 は そ の 目的 は 経 済 学 を 普 及 させ る こ と よ り もむ し ろ社 会 の 諸 問 題 を 摘 発 し 、 問 題 点 を 大 衆 に も気 づ か せ る た め で あ り、経 済 学 は そ の た め の道 具 に使 わ れ た と い っ て も差 支 え な い とい う こ とで あ っ た。 (2)次 な る 研 究 成 果 と し て 挙 げ られ る の は 、 マ ー セ ッ トの 経 済 学 に 関 す る 著 作 の う ち 、 こ れ ま で研 究 者 の 問 で ま っ た く とい っ て 良 い ほ ど注 目 され て い な か っ た 『富 と 貧 困 』 を 中 心 に 、 マ ー セ ッ トの 一 次 資 料 の 収 集 と精 読 、 内 容 分 析 を 行 っ た こ と で あ る 。 マ ー セ ッ トは 経 済 学 以 外 の 分 野 で も 、化 学 、植 物 学 、教 育 、 宗 教 に 関す る教 本 を多 数 執 筆 してい る が 、そ の 多 岐 に わ た る 学 問 領 域 をす べ て 網 羅 した 上 で マ ー セ ッ トの 作 品 を 解 釈 す る 試 み は こ れ ま で な され て こ な か っ た 。 こ の ジ ャ ン ル の 異 な る 教 本 類 を 一 つ 一 つ 精 読 して い く過 程 に お い て 明 らか に な っ た の は 、 約 半 世 紀 に わ た る 執 筆 活 動 を 通 し て 、 マ ー セ ッ トが 自 身 の 作 品 群 の 中 に築 い て い っ た 架 空 の 家 族 共 同 体 を そ の 作 中 に 構 築 し て い っ た と い う事 実 で あ る 。 そ して こ の 家 族 共 同 体 は 、 作 品 執 筆 に 際 し て マ ー セ ッ トが 「教 本 」 と し て 学 問 の 知 識 を 読 者 に授 け る こ との み に 専 念 して い た わ け で は決 して な く、作 品 群 全 体 を大 きな 物 語 の集 合 体 と と ら え る こ と を 可 能 に す る も の で あ っ た こ とを示 してい る。 具 体 的 には 、 個 々 の 作 品 にお け る師 弟 関 係 の 組 み 合 わ せ か ら、実 の と こ ろ一 つ の 教 本 にお け る生徒 と 別 の 教 本 の 生 徒 が 兄 弟 ・姉 妹 の 関 係 で あ る こ と が 示 唆 され 、 そ こ か ら マ ー セ ッ ト自 身 の 伝. 解 釈 が 可 能 に な る。 本 研 究 で はそ の点 に特 に 焦 点 を あ て た マ ー セ ッ ト作 品 の 読 み を 成 果 の 一 つ で あ る論 文 内 で 展 開 し て い る 。 (3)経 済 学 大 衆 化 に 貢 献 し た こ と で 知 ら れ る マ ー セ ッ トは 、 『化 学 対 話 』(1806)を はじ め と し 、 以 降30冊 近 くに及 ぶ あ らゆ る ジ ャ ン ル の 教 本 類 を 執 筆 し 、 教 本 執 筆 家 と して も 一躍 有 名 に な っ た 。 そ の 明快 で系 統 だ った 教 本 内容 は 、各 学 術 分 野 にお い て研 究 対 象 と し て 取 り上 げ られ る 一 方 で 、 彼 女 の 築 い た 「親 しみや す い 」対 話 形 式 の 教 本 ス タイ ル も また 、 19世 紀 に お け る 英 国 の 大 衆 お よ び 児 童 教 育 史 の 流 れ の 中 で 、 大 き な 役 割 を 果 た した こ と も否 め な い 。 そ こ で 、 大 衆 教 育 発 展 の 歴 史 的 潮 流 に お い て 、彼 女 の教 本 類 は どの よ うに位 置 づ け られ る の か 、18世 紀 か ら19世 紀に か け て 英 国 で 活 躍 した 数 名 の 教 本 作 家 とマ ー セ ッ トの 相 互 影 響 に つ い て 考 察 し た 。特 に、 マ ー セ ッ トの 処 女 作 『化 学 対 話 』 の 発 表 よ り 前 に 出 版 され た 子 供 向 け教 本 や 教 育 論 の う ち 、 マ ー セ ッ トが 影 響 を 受 け た こ と が 顕 著 で あ る マ ラ イ ア ・エ ッ ジ ワ ー ス(1768-1849) の 著 作 を 数 編 と 、 そ の エ ッ ジ ワ ー ス 自身 が 自 著 で 言 及 し て い る18世 紀 末 に イ ギ リス の 児 童 教 育 に 影 響 を 与 え た ジ ョ ン ・エ イ キ ン とア ン ナ ・バ ー ボ ー ル ドの 教 本 『家 庭 の 夕 べ 』 を 取 り上 げ 、19世 紀 の 英 国 に お け る マ ー セ ッ ト の 教 育 者 と して の相 対 的 立 場 を 明 らか に し た うえ で 、 彼 女 が 確 立 した 教 本 ス タ イ ル が 後 に どの よ うに 後 続 の 科 学 教 本 執 筆 者 に模 倣 され 、 そ の 結 果 、 マ ー セ ッ ト 自身 の 作 風 の 変 化 にまで影 響 を与 えたか を重点 的 に検証 し た。 そ して 、結 論 と して 、経 済 学 大 衆 化 に貢 献 した 人 物 と し て 経 済 学 史 の 分 野 で 知 られ て い る マ ー セ ッ トは 、 実 の と こ ろ 、 経 済 学 の 領 域 を超 え 、児 童 教 育 全 般 に わた って そ の影 響 力 を 発 揮 し 、19世 紀 英 国 の 教 育 とそ れ に 関 連 す る 出版 業 界 に 存 在 感 を 示 して い た と結 論 付 け て い る。. 5.主 な発 表 論 文 等 (研究代 表 者 、研 究 分 担 者 及 び 連 携 研 究 者 に は 下線) 〔 雑 誌 論 文 〕(計3件) ① 吉野成美 「児 童 教 本 作 家 と して の マ ー セ ッ トと そ の 相 互 影 響 一 『会 話 教 本 』 の 模 倣 と 類 似 」 『生 駒 経 済 論 叢 』 第8巻 49-68.(査 読 無). 第3号(2011). 記 的 事 実 を 照 ら し合 わ せ て い く こ と で 、 教 本 内 の 登 場 人 物 の 相 関 関係 が 浮 か び 上 が っ て く る わ け な の だ が 、 こ の 文 脈 で 『富 と貧 困 』 を再 読 してみ れ ば、 この 作 品 が 単 に 経 済 学 に. ② 吉 野成 美 「家 庭 に 入 っ たB夫 人 一 『富 と 貧 困 』 と 晩 年 の マ ー セ ッ ト作 品 」 『生 駒 経 済 論 叢 』 第7巻 第2・3号(2010)79-96.(査 読 無). 関 し て マ ー セ ッ トが 最 晩 年 に 書 い た 作 品 で あ る とい うス テ レオ タイ プ な 読 み 方 以 外 の. ③ 吉野成美 「似 て 非 な る 『ア ダ ム ・ス ミ ス の 娘 た ち 』一 マ ル テ ィ ノ ー 著 『経 済 学 実 例 集 』.

(5) に み る マ ー セ ッ トの 影 響 」 『生 駒 経 済 論 叢 』 第6巻. 第3号(2009)23-44.(査. 6.研 究組織 (1)研 究 代 表 者 高 木 成 美(TAKAGINARUMI) 近 畿 大 学 ・経 済 学 部 ・准 教 授 研 究 者 番 号:60411568. (2)研究分 担 者 なし (3)連携 研 究 者 なし. 読 無).

(6)

参照

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