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数の観点から捉えた英語名詞の性質

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数の観点から捉えた英語名詞の性質

小池 一夫

Considering English Nouns from the viewpoint of Number

KOIKE Kazuo

桜美林大学

桜美林論考『言語文化研究』第2号 2011年3月 The Journal of J. F. Oberlin University

(2)

-2-

キーワード:可算名詞、非可算名詞、単数、複数、不定冠詞

SUMMARY

Although grammatical gender ceased to exist during the period of Middle English, and the case forms simplified on and after Middle English, grammatical number has retained an extremely important role in present-day English, as can be seen in how the number system has an overriding importance for nouns in English. Some semantic, morphological, and syntactic features of nouns from the viewpoint of grammatical number are discussed in this paper. Principal topics taken up here are as follows: the relationship between a noun and an article; semantic relationships between countable and non-countable nouns; the case of some nouns possessing no plural form in number, and some nouns possessing no singular form in number; and finally, some ways in which number is reflected differently in English and Japanese.

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-3- 0. はじめに

 古英語の名詞には、性(gender)、数 (number)、格 (case)の屈折体系が十分に保たれてい たが、中英語の期間に、文法性が消失して自然性へと移行した。また格もこの時期に大幅 に簡略化が進む中、数の体系は衰えることなく現代英語まで引き継がれた。英語において 数の概念なり体系が如何に重要な文法要素であるかをそのことが如実に物語っている。  あらゆる言語に名詞は存在するが、その取り扱い方には個々の言語においてそれ固有の 特徴が見られる。昨今、多くの英語辞書では、名詞についての記載事項の中に文法や語法 に関する情報として、数えられる名詞(=可算名詞:countable noun)と数えられない名詞(= 非可算名詞:non-countable noun1)という表示がされている。同じ名詞であっても、可算と 非可算の両方の意味を共有している語もある。その見極めは文脈ないし統語上の情報に依 存する。いずれにせよ、英語において、名詞に付与される数の概念および数の表示は極め て重要な言語要素となっている。  本論文では、名詞をいかに数えるか、どの様に数的な処理がされているのか、その一端 を考察する。 1.名詞とその分類 1.1.名詞の性質と屈折  名詞は伝統的に「人、事物、場所の名前」を表わす品詞として、主に意味的な視点から捉 えられてきた。だがbeautyのような抽象概念を表わすものについては、その名前と指示対 象との間の概念が漠然とした結びつきになってしまうため、主として統語論ないし形態論 の立場から、機能的および形式的な基準に基づいて分類されることが多くなっている。つ まり名詞は、文中での格や数などの文法的な要素を主に屈折によって表示する。統語的に はat the stationのように前置詞や冠詞の後には置かれるが、could the stationのように法助 動詞の後には決して置かれない。文中で主語や目的語などの機能を果たし、名詞句の主要 部を成すような種類の語彙項目を名詞と規定している(cf. Crystal 1997)。

 また、現代英語の名詞に付与されている屈折の要素は、以下に簡素化されている。形態 的には、通格(common case)と属格(genitive case)の2種類の格が認められ、それぞれに 単数(singular)と複数(plural)の2種類の数が覆いかぶさるように縦・横の関係で関与し ている。このように数の概念は英語の名詞には不可欠な文法要素となっている。

  singular plural

 common case the student the students  genitive case the student’s essay the students’ essays

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-4- 1.2.冠詞との関わりでみる名詞の分類

 すでに名詞は数を表示する性質があることを述べた。つまり名詞には数の概念がその意 味の一部として付着しているわけである。英語には、(1)から(3)の斜体で記されている lot、rest、numberなど、名詞句の主要部を形成する数量化名詞(quantificational noun)と呼 ばれる数や量について言及する名詞がある(cf. Huddleston & Pullum 2005, p.89)。(1)から (3)の例では、名詞句の主要部を形成する主要部名詞のlot, rest, numberがそれぞれ単数形 である。(1a)と(2a)では、主語の名詞句に単数形の動詞が呼応している。一方、(1b)、(2b)、 (3b)では、複数形の動詞が呼応している。つまりこれらの動詞は、名詞句の構成要素の前

置詞ofの補語2としての下線が施されている名詞句の数と呼応する規則になっている。な お、a number of . . . は、“some, several” などの複数の意味を含意するために(3a)の用法が 不可とされる。

 (1) a. A lot of money was wasted. b. A lot of things were wasted.  (2) a. The rest of the meat is over there. b. The rest of the eggs are over there.  (3) a. (not possible) b. A number of faults were found.

これらの名詞とは別に、名詞の数の概念表示に深く関与しているのが冠詞、特に不定冠詞、 である。そこで冠詞と名詞との関連をもとに名詞の種類と性質について述べてみる。 図1 冠詞と名詞の関連性に基づく名詞の分類(Yule 2004, p.25) 4 noun-type common proper definite indefinite

countable and countable non-countable non-countable

singular singular plural and plural

consonant begins with begins with and vowel consonant vowel

the a an ø ø ø mice uniform uncle pants fear Jane ice habit hour ants beer Iowa

FURNITURE [Non-countable]

tables desks chairs beds  . . . [Countable]

(5)

-5-

 図1のように、名詞は普通名詞(common noun)と固有名詞(proper noun)に二分される。 固有名詞は、本来、唯一無二の対象を指示ことから3、普通名詞のように形状ないし性質の 点で共通する要素を備えている対象を指示するものとは、明らかに弁別して取り扱われ る。普通名詞は定(definite)と不定(indefinite)に二分される。定は定冠詞によって表わさ れ、可算・非可算、単・複の区別なく名詞を従える。不定はさらに可算(countable)と非可 算(non-countable)に分けられる。可算はさらに単数(singular)と複数(plural)に二分される。 単数は後続語の語頭音の種類によって、冠詞がaとanに使い分けられる。名詞の用法で特 に注意を要するのが、加算と非可算の取り扱いである。特に日本語のように、言語形態や 言語構造において、そのような厳密な形式を持たない言語の話者にとっては、理解に苦し む現象である。  具体的な事例として、Yule (2004, pp.24-25)からの例文を引用して、それについて検討 することにしよう。

 (4) a. If there’s a storm, you’ll need an umbrella. b. You’ll probably need ø boots as well.

c. The boots will probably be more useful than the umbrella.

 (4a)では、可算普通名詞stormとumbrellaが単数で用いられている。(4b)では、可算普 通名詞bootが複数で用いられている。当然、不定の複数であるからゼロ冠詞になる。つま りOE ān “one” に由来する不定冠詞のa/anは複数形態素{-s}とは共起できないという制約 があるためである。(4c)では、2つの可算名詞がそれぞれ単数と複数に使い分けられて共 に定冠詞theによって限定される。つまりtheには数を制約する権限は与えられていないの である。(4a)は「嵐になれば、傘が必要になるでしょう」、(4b)は「おそらく長靴も必要に なりますよ」と日本語に訳すことができよう。それぞれ当該の名詞に下線を施してあるが、 数の表示は一切なされない。なおbootsが複数形になっているのは、two pairs of boots(2足) ないしそれ以上の数を意味しているのではなく、左右1対を含意するため通例複数形で使 用される。ただしscissorsやtrousersのように、通常2つに切り離されないものと、bootsや shoesのように、切り離された1組のものとは扱いが異なる。そのため*a scissor, *a trouser は認められないが、a boot, a shoeは可能である。

 (4)のように、数えることが可能な性質(=可算性:countability)をもつ名詞とは対照的に、 (5)では、数えることができない性質(=非可算性:non-countability)をもつ名詞が用いら

れている。  

 (5) a. ø Santa Claus stays in ø Greenland until ø Christmas. b. ø Oil and ø water don’t mix, but ø milk and ø sugar do. c. ø Money can’t buy ø happiness or ø health.

(6)

-6-  (5a)には、人名や地名、特別な時期を表わす固有名詞が用いられている。固有名詞はゼ ロ冠詞(ø)を選択する。(5b)には、物質を表わす非可算普通名詞4 が用いられているため にゼロ冠詞が選択される。(5c)には、抽象概念を表わす非可算普通名詞5が用いられてい るためにゼロ冠詞が選択される。  それでは(5)のように、ゼロ冠詞を伴う名詞は、日本語の場合と全く同じ概念で使用さ れているのだろうか。両者には、大きな違いがある。つまりゼロ冠詞とは、決して冠詞が付 けられないという意味ではない。a/anやtheと同様、ゼロ種の冠詞が付けられていることに は変わりが無い。それに対して、日本語の場合は、数えるという概念が言語化されていな い言語特徴を表すことから、明らかに冠詞が無い(=付いていない)のである。「付けられ ている(→プラスの概念)」のと「付けられていない(→マイナスの概念)」のとでは、まっ たく異なる概念である。ただし、日本語に訳しても表面的には同じようになる。(5a)「サン タクロースはクリスマスまではグリーンランドにいる」、(5b)「油と水は混ざらないが、牛 乳と砂糖は混ざる」、(5c)「お金では幸せや健康は買えない」。 2.加算名詞と非可算名詞 2.1.加算と非可算の概念  英語は名詞の数え方によって、可算と非可算の2種類に分類される。可算名詞は、“how many” と問われ得る「数」を表し、基数詞がそれに先行することを許す類の名詞である: two books, four fingersなどがその例である。

 (6)のgrainsとpocket、(7)のwheatsとfieldはそれぞれ可算名詞の例である。例文中で pocketとfieldは、可算名詞の単数形として用いられているために、ゼロ表示接辞(zero indicating affix){-ø}になっている。それに対して、grainsとwheatsには複数表示接辞 (plural indicating affix) 6の{-s}が付加されている。ここでは特にwheatsに注意する必要がある。 つまりwheatは「(食用穀物としての)小麦」を含意して、通例、non-countable nounとして 用いられる。ただし「類」(type)を含意する場合にはcountable nounとして扱われる(cf. ウ 英和)。そのために(7)でのwheatsの意味は、「小麦4粒」ではなく、「4種類の小麦」である。 つまり、通常、非可算扱いされる名詞が、可算名詞として用いられる場合には、生粋の可算 名詞が表す意味と全く同じ意味を表すわけではないのである。

 (6) I found four grains of rice in my pocket.

 (7) We tried three or four different wheats in that field and nothing worked.

(Spears 1997, p.48)  一方、基数詞や事物の数量を表わす語句および不定冠詞がそれに先行することを許さな い類を非可算名詞と呼ぶ。非可算名詞は、特に「(定まった形のない)大きな塊」や「(同じ 性質を有する)連続体」などの可算的な構成単位ではないもの、数が多すぎてうまい具合

(7)

-7-

に数えることができないようなもの、あるいは、一つの集団、ひと塊として扱われる明ら かに別個の実体を表わす名詞をいう。(8)のchampagneと(9)のriceはそれぞれ具体的な 数量や計量単位を伴わない裸の非可算名詞として用いられている。

 

 (8) They drank champagne to celebrate.

 (9) I found some rice in my pocket. (Spears 1997, p.114) 2.2.加算と非可算の転換  可算名詞と非可算名詞の区別や単数と複数の区別には、母語話者の事物の捉え方や認識 の仕方および心理的な要素が深く関わっている。つまり数えられるという判断基準は、対 象となるものが、「単一体」ないし「固体」(single unity)と見なされるような性質があるか 否かということであろう。ただし、その認定には、心理的な要因が加わる余地があるために、 必ずしも一定不変ではない。つまり文脈に依存するのである。Yule (2004, p.30)が次に記 しているように、この問題には不定冠詞の用法が深く関わる仕組みになっている。  

The process of classifying as a single unit, or INDIVIDUATION, is the key to the use of the indefinite article in English. The basic contrast is really between a(n) for individuation and ø for non-individuation.  辞書に[C](= countable)と書かれていたり、単数と複数の語形が明記されているから可 算名詞であるとか、[U](= uncountable)と書かれているから非可算名詞(=不可算名詞) であるという判断は確かに重要な目安になる。しかし一つの名詞が必ずしも可算か非可算 のいずれか一方の用法のみに用いられるとは限らない。そこでrainを例にとって、(10a)か ら(10c)の文を検討してみよう。  

 (10) a. There will be rain in all parts tomorrow. (OALD) b. There was a light rain yesterday morning.(ラ英和)

c. The rains have failed again in the Horn of Africa. (COBUILD)   一般にrainは、 (10a)のように非可算名詞として用いられる。しかし可算名詞化される場合 がある。『ラ英和』には、「降雨を1回、2回と数えるときやいろいろな状態の雨をいうとき には□Cとなることもある」と、2名の母語話者の編集顧問による語法のコメントが記載さ れている。その例として(10b)が挙げられている。つまり「具体化」(concretization)の意 識が働くことによって可算化されるのである。また(10c)のように、定冠詞に限定された 複数語形the rainsによって、熱帯の国々において1年のうちで多量の雨が降り続く時期、つ まり「雨季」を表わす。この用法は、一般的な雨ではなく、地域や時期的な限定(→ the)、

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-8- 降雨量と回数の多さ(→ plural form)などの特別な条件が付加されている。つまり「特定化」 の意識が働くことによって可算化されるのである。  すでに述べたように、通例、非可算として捉えられている名詞の中には、type(ある特性 を共有する「類」)、class(人・動物・物の「種類、部類」)、species(生物の「種」)などのよう な特定の意味において使用される時のために可算相当語形(countable counterparts)7を保 有している語がある。rices, wheats, champagnes, rouges, waters, etc.などがその例として挙 げられる(Spears 1997, p.48)。

 (11) We tried three or four different wheats in that field and nothing worked. (Spears)  

 可算と非可算を区別する目安としては、次のYule (2004, pp.30-31)の言及が参考になる。 The distinctive conceptual properties of an individual unit are that it has clear boundaries and that no part of the unit equals the whole. When you think of a chair, you tend to see a distinct individual entity, separate from other entities. If you take that chair apart, you tend not to refer to each of the disconnected parts as a chair. In contrast, if you start with water and splash it in different places, each of the parts can still be called water. Notice that we’re talking about water, with zero article. In a restaurant, you may hear a waiter mention a water (Table 5 wants an iced tea and a water). In this case, the indefinite article signals that an individual unit is being talked about.   つまり固体と見なされ得る弁別的な概念特性は、それにははっきりとした境界があって、 その固体を形成している個々のいかなる部分ないし部品もその全体と同一ではないという ことである。それに対して、水はどこで切っても、どこをすくい上げても水であり続ける。 前者のような性質をもつ対象を指示する名詞は可算名詞、後者のような性質をもつ対象を 指示する名詞は非可算名詞として分類されている。部分が全体の、全体が部分の性質や形 状を備えていることが、非可算名詞の特徴となる。それとは対照的に、椅子それ自体も、ま た椅子の脚も、明らかに異なる種類のものであることを示す輪郭線ないし独立的な境界を 持つ。椅子の部品である脚は、椅子そのものでは有り得ない。このような特徴が可算性を 生み、可算名詞として認識されるのである。その両者の概念が(12a)と(12b)を別の意味 を表わす文として区別させる要因になる。  

 (12) a. I want to get a coffee.   b. I want to get coffee.

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は非文とみなされる。ただし、具体的にワインの別々の種類や銘柄を表わすような場合に は、(14)のように可算名詞として用いられる。

 (13) a. Wine is alcoholic drink made from grapes. b.*Wines are alcoholic drink made from grapes.

 (14) Australian wines are as enjoyable as French ones. (Ballard 2001, p.75)

このように種類を含意する場合には可算名詞化するという概念は、fishについても当ては まる。つまり通例、複数の数量を表す場合のfishは、そのことを表わすための弁別的な語 形を持たない単複同形(= ø複数語形)であるが、種類が複数であることを含意する場合、 fishes8のように複数接辞が添加される。  beautyは、後に例文(17)について言及されるように、抽象概念として用いられる。そ の一方で、 “beautiful” の特性を持つ具体的な人や物についても使用される。(15)では、 beautyに枠が嵌められて、抽象概念から切り抜かれた具体的な形状が備わったために、一 種の個体化された指示対象として可算扱いされているのである。その場合、可算名詞とし て処理され、“a person or thing that is beautiful”(OALD)のような意味を帯びる。そこで(15) では、sheはかつてbeautifulの特性を備えていた人物であったことが含意される。

 (15) She had been a beauty in her day. (OALD) 「彼女は全盛期には美人だった」 2.3. 数えられても数えないもの  すでに2.1.において、数が多すぎてうまい具合に数えることができないようなもの、あ るいは一つの集団ないしひと塊として扱われるような明らかに別個の実体を表わすものが 非可算として扱われることについて触れたが、ここで改めて考えてみる。  (16a)はすでに(6)として引用した文であるが、(16b)と対比させるために再度取り上 げることにする。普通、rice(米粒)は、個々の粒が小さいとはいえ、数えようとすれば数 えられる。 (16a)がその例である。ただし、riceは非可算名詞として扱われるために、rice そのものを複数形にするのではなく、可算名詞のgrain “the small hard seeds of food plants such as wheat, rice, etc.”(OALD)を用いて、個々の米粒に特化して表現している9(16b) では、特に個々の粒に注意が向けられているわけではない。

 

 (16) a. I found four grains of rice in my pocket. (= 6) b. I found some rice in my pocket. (Spears)

(16a)の表現は、a piece of cake, a bit of trouble, a scrap of paperなどの、定量化名詞と呼ば れる一連の名詞を用いて、数えられないものを小部分に切り分けたり、一部にまとめた

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り、数えたりするのと同様の概念が働いている。この種の名詞の中には、a loaf of bread, a rasher of bacon, a stack of books10のように、用いられる対象が特定のものないし数種類に限 られているものがある。

 ぶどうは、個々の果実が房になっているため、a bunch/cluster of grapesと数える。だが 一つの粒はa grapeと表わされるが、通例、ぶどうといえば、多くの粒が群がっている房の 状態のぶどうを思い浮かべるはずである11。そのためgrapesのように複数形で用いられる。 bunchは“a number of things of the same type which are growing or fastened together”(OALD)、 clusterは “a group of things of the same type that grow or appear close togather” (OALD)のよ うに定義されることから、「同じ型12をした複数のものが群がる状態」を表わすことからa bunch of bananas, a bunch of keys, a cluster of starsのように表現されるが、対象物がある一 定の大きさを備えたものであれば、ofの後の名詞は複数形で表わされる。

 

3.複数形をもたない名詞

 英語には複数語形を持たない名詞がある。misery, hatred, amazementなどの抽象名詞と furniture, hockey, musicなどの具象名詞がその例である。これらの名詞は複数形にするこ とができないとともに、その名詞によって指示される指示対象物も数えられない (Ballard 2001, p.74)。

 抽象名詞は、私たちの五感を用いて直接的に実感したり、経験したりすることができな いような、つまりもっぱら頭の中でのみ想像したり、言及したりすることが可能な種類の 対象を表わす名詞である。上記の語のほかにbeauty, fear, happinessなどが挙げられる(Seely 2002, pp.86-87)。beautyを用いた(17)を見てみよう。beautyには、“. . . the state or quality of being beautiful” (COBUILD)という定義が与えられているように、「状態」や「質、特性」 という抽象概念を表わす。

 (17) Everyone admired her elegance and her beauty. (COBUILD)  

 さらにfurnitureを例にとって考察する。furnitureは次のように定義される。

Furniture consists of large objects such as tables, chairs, or beds that are used in a room for

sitting or lying on or for putting things on or in. (COBUILD)

つまりfurnitureは家庭や事務所で用いられる種々の大きな物体を束ねる集合体に名付けら れた名称(group name)で(cf. Murphy 2010, p.152)、上位語である。その下位にはその類 に含まれる具体的な家具が下位語として配される(cf. 図2)。そのためfurnitureという語に よって具体的なイメージや対象物が指示されることはない。そこで非可算名詞として認識 される。

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図2 Furnitureにみる語彙階層と数概念   

 waterやmilkのように、境界がなく、輪郭がない液体を直接数えることはできない。その ような性質の名詞を数量化するときには、(18)と(19)のように、その容器や計量単位(a bottle, a glass, a pint, etc.)を表現手段として表わす。日常生活において、水やミルクのよう な、そのままの状態では飲むことができない、あるいは運搬することができないような液 状物質については、容器を用いてそれを可能にしている。このような指示物を表わすため の言語表現にも同様な操作が施されていることをうかがい知ることができる。

 (18) A bottle of something is an amount of it contained in a bottle. (COBUILD)  (19) a pint / glass of milk

4.単数形をもたない名詞

 名詞の中には、glasses, scissors, scales, shearsのような、同じ形をした2つの部品が接合 されてできている道具や器具は複数形のみで用いられる。またbriefs, jeans, pants, pyjamas (£)/pajamas($), shorts, slacks, trousersのような左右が対称の衣料品も複数形のみで用い

られる。なお、これらの品物を数えるには、a pair of scissors, two pairs of trousersのようにa pair of, two pairs ofを用いる(cf. Leech & Svartvik 2002, pp.333-4)。

 (20) a. These scissors are blunt. b. *This scissors is blunt.

c. I’d like a pair of scissors, please. d. I’d like *a scissor/*a scissors.

このように複数形のみで用いられるものは絶対複数ないし総計複数と呼ばれる。

 それでは、同じ形のものが2個で1組になっているboots, gloves, shoes, socksなどは同 様に扱われるのだろうか。これらの語にはboot, glove, shoe, sockのような単数形が存在す る。これは、scissorsやtrousersのように通常取り外しができない製品とは違って、shoesや

4

noun-type

common proper

definite indefinite

countable and countable non-countable non-countable

singular singular plural and plural

consonant begins with begins with and vowel consonant vowel

the a an ø ø ø mice uniform uncle pants fear Jane ice habit hour ants beer Iowa

FURNITURE [Non-countable]

tables desks chairs beds  . . . [Countable]

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-12- glovesの場合、普通は左右一組で使われるが、それぞれは分離した別個のものと考えてい るようである。2つで一組となるため a pair of shoesのように数える。 5.英語と日本語における数に対する表現上の相違   英語では、名詞を数えるか否かという点が重要な言語要素になっている。それに対して、 日本語では、数の概念が英語ほど厳密に表示されない。  (21) a. 本を(1冊)買った。 b. I bought a book.  (22) a. 本を2冊買った。

b. I bought two books.

日本語では、ものを数えるときに指示対象の種類によって別々の助数詞を添加して表わ すという特徴がある。指示対象が本であれば「冊」(書籍を数える語)が用いられる。本そ のものの形態素には変化を生じさせない(e.g.「本1冊」/「1冊の本」:{hon}(sg);「本3冊」 /「3冊の本」{hon}(pl))。ただし、日本語では現実には単数と複数が同一の語形であるが、 英語のsheepのように、単数と複数が同一の語形によって表されるものとは根本的に異な る。つまり日本語には、英語のような文法形式としての複数を表わす形態素は存在しな いし、それを添付するという表現手段もない(cf. 山々、家々、花々、人々、(色々、赤々); *箱々、*川々、*本々)13。一方、英語では、*two bookは不適切な語形である。  2冊の本を目にしたとき、日本語母語話者も英語母語話者も同じように視覚的に捉え、 認識する。ただし、言語処理を行う際に、英語では a book, two books, three books . . . と いう約束のもとで表現されるのである。当然、a books, two bookと表現されても全く理解 されないというわけではなく、彼らはそのような表現形式を採用していないということで ある。a/one sheep, two sheeps, three sheeps; a/one man, two mans, three mans; a/one foot, two foots, three footsと言ってもよいはずである。しかし彼らはsheepにはゼロ複数形態素を付 してsheepを、manにはmenというウムラウト複数の形態を採用している14。そのような習 慣的な言語形式が継承されているのである。

 日本語では紙を「1枚」「2枚」のように「枚」(=紙や板など、薄くて平たいものを数える語) という助数詞を単複共に付けて数える(集英国)。英語では、a paper, two papersとは数えな いで、a piece of paper, two pieces of paperと数える。数えられない名詞を個別に数える場合 に、piece of . . .15が用いられる。その他にa sheet of paper, a sheet of glass, a cake of soap, an article of furniture / a piece of furnitureなどの数え方が用いられる。

6.おわりに

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-13- もとより、不可視的な対象や抽象概念など、さまざまな事柄の在り方を明示している。文 中で名詞は単独で使用されるのではなく、それと共起する他の要素との間で統語的ないし 意味的に密接な関係を形成している。従って、名詞の意味を “book=本”、“water=水” と いうような単純かつ表層的な一面でのみ捉えようとするならば、それは不十分であると共 に、名詞の意味構造を形成する重要な根幹部を見落としてしまう恐れがある。特に、数的 な要素を具体的に表示しない日本語を母語とする英語学習者には、本とbookの関連付けを する折に、日本語の「本」に近似値の語はbookではなく、“a” bookであることを認識させ ることが必要である。また、「水」に対応する語がa waterとはなり得ないことを学ぶべきで ある16。可算ないし非可算の概念は、英語において、名詞の意味を構成する極めて重要な要 素である。名詞が本来持っている数の概念を具体的に引き出す働きをしているのが、不定 冠詞や数量詞などの数と直接関連する要素である。文中で名詞と共起する言語要素や言語 形式を手掛りに、その名詞が表す真の意味を抽出しているのである。 注 * 本論文は、2006年に教材として発行した『英語語彙の意味と構造』(日本英語言語学研究推進会 出版部)の内容の一部に加筆訂正を行ったものである。 1. 不可算名詞(= uncountable)とも呼ばれるが、本論文では非可算名詞の用語を用いる。 2. 従来、前置詞の目的語と呼ばれてきたが、最近では、前置詞の補語と称されることが多い。

3. ただし固有名詞の中には、the Netherlands, the United Statesのような複数形の例もある。

4. 物質名詞ないし質量名詞とも呼ばれる種類の名詞。

5. 抽象名詞とも呼ばれる種類の名詞。

6. 単数形のa bookは単数表示接辞が添加されているものと見なす。

7. この語形は複数形態素{-s}が添加されるが、これはtype, class, speciesの基底に複数の概念が存在 することに起因する。

8. fish:通例、単複同形で用いられる:fishesは種類の違いを表わす場合や幼児向きの書物にみられ

る(cf. ウ英和)。fishの本来的な複数語形は{-es}である。

9. “When tiny particles, such as grains of rice, etc. need to be counted, English speakers usually do this with a container for measuring, such as “two bowls of rice”. We Japanese usually measure grains of unpolished or polished rice as “five straw bales of rice”, “two cups of rice”, “a (=0.18ℓ) of rice” or

“five kilograms of rice”, etc. In the case of cooked rice, we often measure it as “two bowls of rice”. (小 池 2006a, pp.102-103)

10. loaf: < OE hlāf“bread, loaf”; rasher: “a thin slice of bacon or ham”, origin unknown; stack: < ME stac

“pile, heap”< Old Norse stakkr “haystack”(. cf. SOED, Barnhart 2000, Room 2000)

11. Cf. grape: a small green or purple fruit that grows in bunches on a climbing plant (called a vine). Wine is made from grapes”. (OALD)

12. 複数は「2つ以上」と定義されるが、それについてJespersen (1968, pp. 188-189)は、次のように

(14)

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belong to the same kind. Plurality thus presupposes difference, but on the other hand if the difference is too great, it is impossible to use words like two or three.”

13. 数少ない複数の意味を表すものに、達、等、共がある。「達」は、等より丁寧な感じがあるものの、 現代の「友達」は、その複数の意味合いが薄れて、単数の場合にも使うようになった。「等」と「共」 は、複数の人を表すが、軽蔑・親密の気持を持って表し、会話や軽い文章に使われる。共は人間の みならず動物などを目下として軽んじたリ軽蔑したりする気持ちが含まれる。(中村 2010) 14. 多くの語が規則的な語形変化に移行する中にあって、頻接語(筆者の造語で、日常生活で頻繁に 接する基本語を意味する)は、不規則な語形変化にもかかわらず、代々その不規則な語形が継承 されている。

15. E.g. a piece of cake / cheese / meat / chalk / advice/ wood / furniture / luggage.

16. なお、湯と水が別の語彙項目によって区別される中での日本語の水と、それを区別する語彙項目

を持たない英語のwaterとは、全く同一の指示対象を表す訳ではないことに注意したい。

主要参考文献

Ballard, Kim. 2001. The Frameworks of English. Basingstoke and New York: Palgrave.

Barnhart, R., ed. 2000. Chambers Dictionary of Etymology. Edinburgh: Chambers Harrap Publishers.

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参照

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