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引っかき加工によるAl-15% Ag 合金の加工に関する研究 利用統計を見る

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(1)

論 文

引っかき加工によるAl−15%Ag合金の

表面加工に関する研究

大藤晃義

(昭和45年10月24日受理)

Electron Microscopic Observations of Plastic Deformation

Decorated with Precipitate Particles around the Scratch

in an Al-15% Ag Alloy

TeruyoshiDAITO Synopsis  The surface of Al−15%Ag alloy, solution treated and waterquellched, have been scratched by razor blade and aged so as to form precipitate particles. The nature alld distribution of precipitate particles thus formed in the surface layers were examined by replica method of electron microscopy.  The results obtained are summarized as follows: 1) At the bottom of the groove, granular precipitate particles are formed. 2) In the region about 10μaway from the botton of the groove, the mean size of the  precipitate particles are small as compared with that in the undeformed region and  the Widmanstatten figure is bent and distorted, 3) It exists a transitional region between the deformed and undeformed regions where  the Widmanstatten figure develops preferentially in the only one direction. 1. 緒 論  加工による結晶の微視的変形状態はまだはっきりと はわかっていない。そこで結晶の変形状態を微視的に 観察するため試料として時効(析出)現象を示すAl− 15%Ag合金を用い,電子顕微鏡で加工による変形状 態の観察を行なった。  析出による研究はすでにAl−−Cu合金を用いた高橋 ら1),R・B・Nicholsonら2)の報告がある。またエミ ッション型の電子顕微鏡で観察を行なった高橋ら3)の 報告もある。  しかしAl−Ag合金に引っかき加工を加えレプリカ 法により電子顕微鏡で観察した報告はないようである。 そこで本研究はAl−15%Ag合金の表面に引っかき加 工を加え,その傷周辺の変形状態を二段レプリカ法に より電子顕微鏡を用いて調べた。 2.試験片および実験方法  試料は10×10×5mmに切断し表面をエメリーペー パ,パフ,電解研摩の順で仕上げた。溶体化処理は 550°Cで3時間(大気中)行ない,その後すぐ氷水で 焼入を行なった。焼入を行なった試料の表面を再びエ メリーペーパ,パフ,電解研摩の順で仕上げ,加工を 加えた。加工後の熱処理は300°Cで2時間(大気中) 時効処理を行なった後,空中放冷して析出させた。析 出晶(Widmanstatten figure)は試料表面を電解研 一 6 一

(2)

図一1 重荷重引っかき装置

摩(20V)後2.5NのNaOHで20秒間腐食し,水洗

いして顕出せしめた。電解研摩の電解液はエチレソグ リコール・モノブチルエーテル85%一過塩素酸15%液 を用い,電極間距離は2∼4cm,電圧は30∼40V,液 温は16∼20°Cの時最良の鏡面が得られた。アルミ系 の電解研摩は陽極酸化膜が生成するので,それをさけ るため試験片を常に振動させた。  加工は試験片に集中荷重として一本の引っかき傷を つけた。引っかき加工の荷重は309,509,1009,150 9,5009,1,0009で行なった。荷重309,509の引 っかき加工にはマルテンス式引っかき硬さ試験機を使 用した。これは試験片の鏡面に頂角go°のダイヤモン ド圧子を接触させ,重りにより荷重を加えたまま試験 片を水平に動かして試料面に引っかき傷をつける。マ ルテンス式引っかき硬さ試験機は荷重509までしか掛 けられないので,それ以上の荷重は図一1のような装置 を作ってナイフの匁先で引っかいた。ナイフエッジの 匁先角度は10°44’であった。なお本実験試料のビッ 写真一1標準組織のWidmanstatten figure カース硬さは加工どきが54,析出後が64であった。 3. 実験結果および考察  写真一1は無加工の標準組織を示すWidmanstatten figureである。4方向に析出晶が現われているが, これは次の理由による。Al−Ag合金の場合Alは面 心立方で安定析出相γは六方晶であり面心立方晶の (111)面と六方晶の(0001)面は極めてよく似た原子 配置をしている。ゆえに析出相γの(0001)面は面心 立方晶の4つの異なる(111)面に平行に発達する。  写真一2はマルテンス荷重309で引っかいた試料を斜 め切断4)し析出晶を出した写真である。(a)は加工表面 に最も近い部分の写真である。(b),(c)はおのおの加工 表面から斜め切断面上で45μ,70μ離れた部分の写真 である。(c)では加工の影響は少なくなっているが,格 加 工 表 面 (a)       (b) (a)より45μ        (c) (a)より70Pt   写真一2マルテンス荷重309で引っかいた試料の斜め切断面上の析出晶 一 7 一

(3)

昭和45年12月 山梨大学工学部研究報告 第21号

傷底→

写真一3荷重1009で引っかいたときの析出晶 子状の析出が見える。面心立方のAlの場合すべり面 は面密度の高い{111}面であり,すべり方向は線密度 の高い<110>方向である。ゆえにすべり系は12とな る。前に述べたように,析出晶は{111}面に析出する ので,(c)のような格子状の析出はすべり線へのデコレ ートと思われる。  写真一3はナイフエッジ荷重1009で引っかいて加工 表面から約3μ電解研摩した加工傷付近の写真である。 傷底に近い方は析出が微細化している。これは傷の近 くは歪エネルギが高く核の出現が多いため析出が微細 化したものである。傷底から離れるにしたがって析出 が1方向にのみ強く出ている。一般に析出物の平面と 匁状転位線が存在する面(すべり面)との交線は,匁 状転位に対してできるだけ小さい角度になるほど析出 物は形成されやすい。いま,匁状転位を〈112>方向, すべり方向を<il O>方向(バーガースベクトルA  _      2 〔110))と仮定すると次のようなことが考えられる。 すなわち匁状転位線と(111)面,(111)面,(111) 面,(111)面のなす角度は図一2のようになり(111) 面が最優先析出面となり,次に(111)面,(111)面 が優先し,(111)面が最も出ずらい面となる。以上の ような理由から1方向にのみ強く出ている析出は,上 記の仮定の(111)面に相当する面かあるいは特定の (111)面のみに多くのすべりが起こったためと思われ る。  写真:4はナイフエッジ荷重5009で引っかいて,試 料を引っかき傷が光学顕微鏡でほとんど見えなくなる までエメリーペーパで除去し,その後電解研摩し,析 出晶を出した写真である。加工表面からの深さは約 120μである。(a)は傷底で(b),(c),(d)はおのおの(a)よ り約50μ,β0μ,130μ離れた所の写真である。(a)は引 っかき傷の真底の部分でほとんど線状の析出晶は出て いない。これはナイフエッジによって結晶の規則正し い配列まで乱れるような非常に激しい加工を受けたた 28 L’OS’ (111) 〔001〕 〔1・・〕㌫㍍ス〔、、2〕 図一2 すべりと析出面の関係 [110〕 〔010] めに,{111}面にそっての析出ができずに球状化した ものと思われる。(b)では析出の並びは整っているが, 非常に小さい析出で傷底より離れるにしたがって長く なり,(d)では母態に近い析出となっている。析出の長 さと傷底からの距離との関係は図一3のようになってい る。  写真一5はナイフエッジ荷重1,0009で引っかいて引 っかき傷が光学顕微鏡でほとんど見えなくなるまでエ メリーペーパで除去し,その後電解研摩し析出晶を出 した写真である。表面からの深さは約170μである。 傷底の部分から母態析出晶に到る途中の部分に結晶の 回転あるいは変形による析出の変曲とゆがみが見られ る。これは結晶が大きい加工を受けたため{111}面が 回転あるいは変形とゆがみを生じたためと思われる。 これらはたとえば微小焦点X線装置による局所的なX 線回折の結果との対比ができれば,この部分の結晶の 変形状態をより詳細に解析できると思われる。なお、 8

(4)

くa)傷底

撫鐵肇1

     灘

(b)  (a) よ り50μ

麟贈

義灘 (c)(a)よD 80 pt (d)  (a) よ り130μ 写真一4荷重5009で引っかいたときの析出晶 1.5

s

dy 1・0 響 塁 忘O.5

       /丁

0 回転については高橋5)(α黄銅について),Wilman6) (銅,鉄について)は電子回折法により認めている。 50        100        150 傷底からの距離(#) 図一3 傷底からの距離と析出晶の長    さの関係

4.結

論  溶体化処理をしたA1−15%Ag合金試料をナイフエ ッジで引っかき時効処理をした後試料表面を電解研摩 して化学エッチにて析出晶を出した。そしてそれを二 段レプリカ法で電子顕微鏡を用いて観察した結果,次 の結論を得た。  1) 引っかき傷の真底のように非常に大きい加工を   受けた部分では線状の析出は出ず球状化する。  2) 傷底から約10μぐらい離れている部分は結晶の   微細化が起こっている。またこの部分で結晶の回   転ないし変形による析出の変曲と結晶のゆがみが 一・X 一

(5)

昭和45年12月 山梨大学工学部研究報告 第21号

2μ 起きている場合もある。 写真一5 荷重1,0009で引っかいたときの析出晶  3) それ以上離れた部分は一方向にのみ析出の出や   すい部分となり,その次にすべり変形部となり,   完全結晶領域に到る。  おわりに本研究の遂行にあたりご指導いただきまし た高橋昇教授,富田宏助教授と各種のご援助をいただ きました吉峯鼎教授に心より感謝の意を表します。ま た実験を手伝ったりディスカッションをしていただい た河西洗一,清水正利,芹沢泉の各氏にお礼申し上げ ます。 文

献 1) N.Takahashi:J. J. A. P.,4,10, P・752  (1965) 2) R.B. Nicholson, G. Thomas&J. Nutting:  J.Inst. Metals.,87, P.429(1959) 3) N.Takahashi, H. Tomita&J.1. Trillat:  C.R. Acad.,261, P.1519(1965) 4) 高橋鼻,古市博,大藤晃義,高坂潔,小林隆康  :山梨大学工学部研究報告,20,p.36(1969) 5) 高橋昇:理研イ報,24,p.43(1947);応用物  理17,p.155(1948);精密機械,17, p.342  (1951) 6)H.Wilman:Proc. Phys. Soc・,205, P・.17  (1951) 一・

P0一

参照

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