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<総説>セメントレス人工関節におけるポリエチレン製人工軟骨の磨耗 利用統計を見る

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セメントレス人工関節におけるポリエチレン製人工軟骨の磨耗

浜田良機,堀内忠一

山梨医科大学 整形外科学教室 抄 録:人工股関節が長期の安定した骨への固定性を獲得するには解決されなければならないいく つかの問題点がある。なかでも人工軟骨として利用されているポリエチレン磨耗粉による限局性の 骨溶解(osteolysis)は,良好な関節機能を発揮していた人工関節を術後 10 年までに再置換術(re-vision)が必要な状態に陥れるものとして最も注目され,その防止対策が提言されている。これには ポリエチレンの物性やポリエチレン製人工軟骨と関節する骨頭の材質など工学的問題点が多いの で,今後は工学者との密な連携のもとでの研究が必要である。 キーワード セメントレス人工股関節,ポリエチレン磨耗粉,摩擦,骨溶解 1.はじめに 股関節は身体各部の関節のなかでもっとも複 雑な運動を行うとともに身体を支持するため, この関節の障害にともなう不自由さははかりし れないものがある。高度の関節破壊を伴う末期 の変形性股関節症や関節リウマチなどの症例に 対して疼痛のない支持性と運動性を再建する方 法として人工股関節置換術(total hip arthro-plasty)が,広く行われるようになっている。 現在一般に使用されている人工股関節には,骨 と component 間の固定に polymethylmethacry-late(以下骨セメント)を利用するタイプと骨 セメントを使用しないセメントレスタイプ(セ メ ン ト レ ス 人 工 股 関 節 ) が あ る 。 1 9 6 7 年 Charnley が 316L ステンレス鋼製骨頭と高密度 ポリエチレン(high density polyethylene, HDP) 製人工軟骨の組み合わせで,骨セメントを利用 するタイプの人工股関節を開発して以来,この タイプが一般的であった。しかし術後 10 年を 越える症例が増加するにつれ,骨と compo-n e compo-n t 間 の 固 定 性 の 低 下 , す な わ ち “ 緩 み ” (loosening)を来たし,抜去や再置換に難渋す る症例が報告され1–3),約 10 数年前よりセメン トレス人工股関節が注目されるようになってき た。教室では終始一貫して Y2 型 3 本スパイク 式セメントレス人工股関節(Y2 型)(図 1)を 利用しているが,このタイプに共通する問題点 として,stress shielding による大腿骨骨皮質の 骨吸収,component の移動,透明層の出現な どが指摘されている。なかでも人工軟骨として 利 用 さ れ て い る ultra-high molecular weight polyethylene(超高分子ポリエチレン UHMW PE)の磨耗粉による骨溶解が人工股関節の緩 みの原因として最も重要かつ解決すべき問題点 となりさまざまな検討が行われている。そこで 今回は UHMWPE の磨耗の問題点と対策につい て述べる。 2.セメントレス人工股関節のデザイン 人工股関節は寛骨臼側を置換するソケットと 大腿骨側を置換する人工骨頭が組み合わされて 〒 409-3898 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東 1110 受付: 1999 年 10 月 13 日 受理: 1999 年 10 月 14 日

総  説

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いる。現在まで日本で利用されたセメントレス 人工股関節の機種としては 20 種類以上あるが, いずれもソケットは半球状で骨と接する面は金 属製,大腿骨頭と接触する面は UHMWPE 製人 工軟骨の組み合わせとなっている(metal back system)。金属ソケット内に UHMWPE 製人工 軟骨を固定する方法としては,Y2 型に代表さ れる複数のスパイクを骨に打ち込む(図 2), Lord 式にみられるように金属ソケットに螺子 山を作製してこれを寛骨臼にねじ込む(図 3), 複数の screw で固定する(図 4),さらには金属 ソケットの直径より 1 mm 程度小さいリーマー 浜 田 良 機,堀 内 忠 一 104 図 2.Y2 型 3 本スパイク式ソケット 3 本のスパイクのうち 35 mm と最も長いものは,表面が notch 状となっている。他 の 2 本は表面平滑で長さ 23 mm である(A)。ソケットの切割写真(B)。UHMWPE 製人工軟骨は厚さ 9 mm で,金属ソケット間には間隙をみない。金属ソケットの内面 の曲率半径と人工軟骨の関節面の曲率半径は一致している。 図 1.3 本スパイク式セメントレス人工股関節の変遷 左は JIAT 型(A),中央は Y 型(B),右は 1988 年から現在も使用している Y2 型(C) である。Y2 型はチタン合金製金属ソケットに UHMWPE 製人工軟骨を screw-in して 固定する metal back 方式となっている。この金属ソケットには 3 本のスパイクがあ り,これを寛骨臼辺縁の骨に打ち込んで固定する。大腿骨側は,長さ 178 mm,表 面は平滑で縦に溝を有するチタン合金製ステムを骨髄内に挿入するデザインである。

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で寛骨臼をリーミングののちにソケットを打ち 込む press fit タイプ(図 5)などがある。人工 骨頭側は大腿骨骨髄内に挿入される金属製ステ ムとそれに続く,棍棒状の頸部に球状の骨頭を はめ込む modular 型が一般的となっている。 そしてステムの長さは 110 mm から 170 mm を 超えるものまで,また骨頭径も 22 mm から 36 mm まで機種によってさまざまである。 教室で開発し,1988 年以後使用している Y2 型は,金属ソケットの 3 本のスパイクを骨に打 ち込んで固定するタイプである。そして 3 本の スパイクのうち 1 本は表面は notch 状で長さ 35 mm,他の 2 本は表面平滑で長さ 23 mm で あ る 。 金 属 ソ ケ ッ ト と ス テ ム は チ タ ン 合 金 図 3.複数の裸子で金属ソケットを固定するタイプ (Protec) 図 4.金属ソケットの外壁にねじ山があって,金属 ソケットを寛骨臼に screw-in する threaded 型 のソケット(Zweymuller 型)。 図 5.ポーラスコーティングセメントレス人工股関 節(Harris-Galante 型) 金属ソケットおよびステム中枢部にポーラス コーティング(矢印)が施されている。金属 ソケットには複数の穴があって,press-fit, screw 固定いずれの方法も利用できるようにな っている。

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(Ti-4Al-4V)製で,ステム長は 178 mm,表面 平滑で縦に数本の溝を有する。骨頭はコバルト クローム合金(Co-Cr-Mo)製で,骨頭径は 23 mm となっている(図 1)。 3.セメントレス人工股関節の磨耗 人工関節では 2 つの異なった材料が合い接し て運動するため,摩擦が発生し,その摩擦によ って接する材料の表面は破壊され形状が変化す る(磨耗)。 摩擦には,摩擦面に潤滑剤が介在する潤滑摩 擦と潤滑剤が介在しない乾燥摩擦があるが,人 工関節では関節液が介在するため潤滑摩擦の状 態にある。この潤滑摩擦には,摩擦面に潤滑剤 が流入することで薄い膜を発生させて,磨耗を 減少させる流体潤滑と潤滑剤が分子程度のサイ ズとなって摩擦面に付着することで摩擦抵抗を 減弱させる境界潤滑がある。人工股関節の摩擦 を前者と考えるならば,骨頭径を大きくしたほ うが有利であり,後者と考えるならば骨頭径を 小さくしたほうが有利である4,5)。現在のとこ ろこの論争には決着はついていない。しかし 2 つの異なった物体が合い接して運動する時必ず 磨耗が起こって磨耗粉が発生する。 4.骨溶解の発生機序 骨溶解(図 6)は骨と人工股関節 component の界面に存在する間隙(effective joint space) に侵入した UHMWPE 磨耗粉に対する異物反応 による炎症性肉芽組織の増生による骨吸収であ る。したがって関節機能の回復が不良な症例で は,関節運動の頻度と範囲が小さいので磨耗は 少なく骨融解の発生は極めてまれである。他方 良好な機能を維持していた人工股関節は活発な 関節運動の結果として術後 5 年頃から発生し, 10 年を経過するまでに loosening となって再置 換術を余儀なくされる原因となるので,セメン トレス人工股関節にとって最も重大な合併症と なっている6–13)。骨溶解の発生頻度は人工股関 節の機種や寛骨臼側か大腿側かなど発生部位で 多少異なるが,10 %から 40 %と報告されてい る13–21) 浜 田 良 機,堀 内 忠 一 106 図 6.骨融解像を見る症例 44 歳,男性の大腿骨頭壊死症例(A)。術直後(B),術後 3 年(C)では骨融解像はない。 しかし術後 5 年 6 か月の X 線所見(D)では,大腿骨外側に骨皮質の虫喰い状の吸収像 (矢印)がみられ,術後6 年 3 カ月(E)では,その範囲は拡大している(矢印)。この時 点では臨床的には疼痛なく,関節可動域の低下はない。

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骨 溶 解 の 発 生 を 防 止 す る 手 段 と し て は , U H M W P E 磨 耗 粉 を 減 少 さ せ る こ と と 骨 と component 間の界面に磨耗粉が侵入する間隙 を作らない,あるいは界面に海綿骨を露出させ ない手術法を採用することである。 UHMWPE の磨耗に関与する因子として,骨 頭サイズ,骨頭の材質,UHMWPE の物性, UHMWPE 製人工軟骨の厚さ,ソケットのデザ イン,術後のリハビリテーションや生活指導に よる活動性の制限などがある。 5.UHMWPE の磨耗対策 1)骨頭サイズ 挿入できる金属ソケットのサイズは症例によ って異なるが,一般に日本人で 43 mm から 47 mm 程度が至適である。したがって骨頭の サイズが大きくなると,ポリエチレン製人工軟 骨が薄くなり,クリープ変形を来たしやすく, 磨耗が進行する。現在使用されている UHMW P E は , ク リ ー プ 変 形 に つ い て は 評 価 試 験 ASTM D612 で,その厚さの 2 %以下と規定さ れている。しかし UHMWPE 製人工軟骨が薄い 場合には,あきらかに骨溶解の発生頻度が高く, 6 か ら 8 m m 以 上 の 厚 さ が 必 要 と さ れ て い る22) ポリエチレン製人工軟骨を厚くする手段とし ては,金属ソケットの外径を大きくするか,骨 頭径を小さくすることである。金属ソケット外 径を大きくするには限界があるので,骨頭径を 小さくする方が容易で,現在は 22 mm から 28 mm のものが一般的となっている23)。当科 で使用している Y2 型の骨頭径は 23 mm で,術 後 5 年以上経過した 52 例中 1 例のみ骨溶解像 の出現をみている(図 6)。 2)骨頭の材質 UHMWPE 製人工軟骨の磨耗を軽減するに は,骨頭の材質も重要とされている。骨頭材質 の条件としては,真球度にすぐれ骨頭表面がよ りスムーズとなるような研磨が可能で,scrach-ing に対する抵抗性が高いことと金属イオンの 放出による表面酸化膜の破壊がなく湿潤性に優 れていることなどが挙げられる22,24)。金属とし てチタン合金はコバルトクローム合金に比べ て,硬度が劣るため,容易に磨耗が進行するの で骨頭部の素材としては不適切であり,一般に は後者が使用されている。しかしコバルトクロ ーム合金よりもこれらの条件をより満足する材 料としてセラミックスが注目され,数年前より アルミナセラミックスの臨床応用が開始され た。アルミナセラミックスは金属に比べて硬度 に優れているので,scraching に対する抵抗性 があって,よりスムーズな表面の研磨が可能で ある。さらに無機材料であるため,金属イオン の放出はなく,湿潤性にも優れている24–26)。し かしアルミナセラミックスは破壊靱性が金属よ り 劣 る の で 衝 撃 力 で 破 壊 さ れ る 危 険 が あ 図 7.ハイドロキシアパタイトコーテ ィング人工股関節(犬用 3 本ス パイク式セメントレス人工股関 節) 当科で動物実験用に開発したハ イドロキシアパタイトコーティ ング人工股関節。金属ソケット は全面に,ステムは中枢 1/3 の 領域(矢印)にコーティングが 施行されている。

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る27,28)。他方,ジルコニアセラミックスはアル ミナセラミックスと同等の生体内安定性があ り,2 から 3 倍破壊靱性に優れている。教室で の犬を用いた動物実験の結果では,ジルコニア セラミックスがアルミナセラミックスと同等の UHMWPE 製人工軟骨に対する磨耗量をみるこ とが明らかとなり,現在臨床治験が開始されて いる。 3)UHMWPE の物性 UHMWPE の金属に対する磨耗抵抗性は他の プラスチックス(例,テフロン)の中では優れ ている。しかし人工軟骨作製の方法によって磨 耗抵抗性は異なる。Bankston ら29) UHMW-PE の塊から切り出して作成した人工軟骨と粉 末状の UHMWPE を鋳型で成型したものとの金 属に対する磨耗抵抗性を比較して,後者が磨耗 量で約 1/2 少ないことを報告している。また 1970 年に大西30)は UHMWPE に 100Mrad のγ 線を照射したものとしないものの磨耗を比較し て,前者は高度の増加と酸化膜の形成によって クリープ変形が少なく金属,セラミックスいず れに対しても優れた磨耗抵抗性を示す報告をし ている。しかし 100Mra の照射では,UHMW-PE の破壊靱性が低下することから,至適照射 線量についての検討が行われている20,31,32) 4)UHMWPE 製人工軟骨の厚さ UHMWPE 製人工軟骨が薄いと容易にクリー プ変形が発生して磨耗が進行する。したがって クリープ変形を防止するためには人工軟骨を厚 くする必要がある。その厚みの最少限界として は,先に述べたように 6 mm 以上,あるいは 8 mm 以上と報告者によって異なっているが, 厚い方が薄いより安全であることは意見の一致 をみている22,33,34)。当科で開発使用されている Y2 型ソケットの人工軟骨の厚さは 9 mm(図 2) である。 5)ソケットのデザイン UHMWPE 製人工軟骨のクリープ変形を防止 する手段として金属ソケットでこれを包み込む metal back 方式が提唱され,現在使用されてい るセメントレス人工股関節ソケットは全てこの 方式を採用しているが,このタイプのソケット をデザインする際の留意点が指摘されている。 その 1 つは,金属ソケットが半球状で,内部の 人工軟骨の形状が円筒状を呈するような ac-etabular cup system(Depuy)のようなデザイ ンでは人工軟骨への応力が不均一となって磨耗 が進行するので,金属ソケットと人工軟骨の極 率 半 径 を 等 し い 半 球 状 に す る こ と で あ る35)。第二は金属ソケットと人工軟骨間に間 隙をみる場合は,荷重によるポリエチレンのク リープ変形が高度となって磨耗が進行するの で,両者間に間隙を残さないデザイン24)とす ること。第三は人工軟骨の金属ソケット側も表 面を滑らかにして金属ソケットと人工軟骨間の 磨耗を防止することである33)。Y2 型ソケット は外径 43 mm の metal back 方式で,金属ソケ ットと人工軟骨の極率半径は等しく,両者間に は肉眼的には間隙をみないデザインとなってい る(図 3)。 6)人工軟骨素材の変更 UHMWPE 製人工軟骨の磨耗をいかなる対策 を行っても防止できないとの考えから,磨耗粉 が骨融解の原因とならないといわれる金属磨耗 粉のみが発生するデザインとすれば,骨溶解像 の発生は防止できるとの考えから,金属対金属 の組み合わせの人工股関節が注目されるように なってきた36)。この金属対金属の組み合わせ の人工股関節は Charnley 型人工股関節(金属 骨頭対 HDP 製人工軟骨)開発と同時期に開発 され,その後いくつかのタイプが臨床応用され たが,悲惨な結末となってその使用は長期にわ たって中止された37,38)。しかし 1996 年 Wagner ら37)や Weber38)によって開発当初に使用した 症例の中には術後 25 年以上経過しても良好な 機能を維持している症例が報告され,このタイ プの人工股関節の再登場となった。最近の工業 技術の進歩によって低磨耗性が期待できる程ス ムースな関節表面を作製できるようになったこ ともその一因である。しかし現在は術後 2 年か ら 3 年と短期成績の報告であり,有用性の評価 には今しばらくの時を要する39,40) 浜 田 良 機,堀 内 忠 一 108

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なお,アルミナセラミックス対アルミナセラ ミックスの組み合わせの人工股関節も臨床応用 され,セラミックスの破損もなく長期の安定し た 股 関 節 機 能 が 維 持 で き る と の 報 告 も あ る25,26)。 し か し 骨 頭 や 人 工 軟 骨 の 折 損 率 は 0.4 %と UHMWPE とセラミックスの組み合わ せの折損率に比べかなりの高率である28,29) 7)術後のリハビリテーション 当科で,骨溶解像をみた症例は,44 歳,男 性の大腿骨頭壊死症例である。術後は病院の事 務長として杖を使用することなく極めて活発な 日常生活を送っている症例であった。また骨溶 解に関する報告でも若年者で活動性の高い症例 に発生する危険性が高いことが指摘されてい る41,42)。それに対する対策を具体的に述べたも の は な い が , こ の よ う な 臨 床 的 事 実 か ら UHMWPE の磨耗量を減少させるには,患者に 術後は杖を使用し,股関節周囲筋力を強化する, デパートの中を歩き回るような活動を制限する などの生活指導が重要と考えられる。当科では 患者個人は年齢,体重,日常の習慣や生活様式, さらには環境も異なるので客観的データーに基 づいての活動性の評価は困難であるが,少なく とも術後は 1 本杖を使用した歩行と車の使用を 指導している。 6.UHMWPE 磨耗粉の界面への侵入防止対策 UHMWPE の磨耗粉の界面への進入を防止す るためには,関節腔と界面間の交通を遮断する ことは重要で,金属ソケットやステムの中枢部 にポーラスコーティング44,45)(図 5)やハイド ロキシアパタイトコーティング46–48)(図 6)な どの表面加工が行われるようになった。これら の表面加工は,当初は骨新生(bone ingrowth) を促進し人工関節の固着性を改善する目的で開 発されたが,現在はこれら表面加工をすること で,component 表面に新生骨が密着して関節 腔と骨髄腔間の plug として交通を遮断するの に有効と考えられている。さらにハイドロキシ アパタイトは骨誘導能があるので,ポーラスコ ーティングより早期(術後 4 週まで)の骨新生 がみられ,術後早期の運動や荷重歩行を可能に すると考えられている。しかしその表面をコー ティングされた人工股関節においても,骨溶解 像の出現は報告されている49–53)。さらにハイド ロキシアパタイトコーティングは母材である金 属への固着性,至適なコーティング膜の厚さ, 剥離したハイドロキシアパタイトの運命や関節 面に進入して third body として磨耗を促進する 危険性の有無などについては,さらに慎重な検 討が必要である。Y2 型にはこのような表面加 工は施されていない。しかし Y2 型使用例での 骨溶解の出現頻度は極めて低く(52 例中 1 例 約 2 %),このことから表面加工を行うことが UHMWPE の磨耗粉の界面への侵入をどこまで 遮断できるかは不明である。 7.手術術式の工夫 金属ソケットの挿入に際して,寛骨臼をソケ ットの形態に適合させるためにリーミングする のが一般的である。このリーミングの結果, component 間の界面には骨髄腔が露出する。 骨髄腔が露出した界面に UHMWPE の磨耗粉が 進入(effective joint space),骨梁間に貯留し た磨耗粉に対する異物反応の結果として骨溶解 が起こる7)。したがって寛骨臼側では骨髄を界 面に露出しない手術手技が重要である(骨頭側 はステムを骨髄腔に挿入するので,海綿骨とス テムは必ず接する)。THA の適応症例である変 形 性 股 関 節 症 の 寛 骨 臼 関 節 面 は 象 牙 様 骨 (ebarnated bone)によって覆われているので, これを温存して金属ソケットを挿入すれば骨髄 腔の露出は避けられる。Y2 型ソケットは寛骨 臼底をリーミングすることなく挿入できるデザ インとなっている。この工夫が骨溶解の発生防 止に貢献していると考えているが,Y2 型以外 にこのような手術手技で挿入する金属ソケット はない。他方関節リウマチや急速破壊型股関節 症(rapid destructive coxarthrosis, RDC)では, 象牙様骨はなくすでに海綿骨が露出しているに

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もかかわらず骨溶解をみる症例がすくないが, これら症例では骨欠損の範囲が大きく,これを 補填のため骨砕片を密に金属ソケットと寛骨臼 間に充填するので,この移植骨が磨耗粉進入に 対する plug の役割を果たしていると推察して いる。 8.ま と め セメントレス人工股関節置換術は整形外科領 域では一般的な手術の 1 つとなっている。しか し長期の良好な関節機能を回復させるために は,解決しなければならない数多くの問題点が あり UHMWPE の磨耗もその 1 つである。そし て 磨 耗 を 減 少 さ せ る に は , 使 用 す る 材 質 , UHMWPE の物性,力学的解析など医学的知識 では対処できないことが多く,工学者の協力が 不可欠である。以前にはややもすれば,医師は 工学的知識を理解しないとか工学者は人体の仕 組みがよくわかっていないとかとかく意見が衝 突することもあって,十分な協力体制が確立さ れていなかった。しかし最近,この協力の重要 性が認識され各施設での共同研究が積極的に行 われるようになっている。現在山梨医科大学整 形外科学教室では,すでに山梨大学工学部との 共同研究を推進している。政府は,今後 10 年 間は人工骨,関節,人工膵など人工臓器に対す る研究援助を提言しているが,このような社会 状況下において,山梨大学との積極的な連携の もとでの基礎的研究を促進することが山梨医科 大学の発展にとって極めて重要と考えている。 文  献

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浜 田 良 機,堀 内 忠 一

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浜 田 良 機,堀 内 忠 一

参照

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