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~東京都区部の住居系地域における分析~

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1

公営住宅が住宅地の価格形成に与える影響と政策の妥当性に関する考察 公営住宅が住宅地の価格形成に与える影響と政策の妥当性に関する考察 公営住宅が住宅地の価格形成に与える影響と政策の妥当性に関する考察 公営住宅が住宅地の価格形成に与える影響と政策の妥当性に関する考察

~東京都区部の住居系地域における分析~

~東京都区部の住居系地域における分析~

~東京都区部の住居系地域における分析~

~東京都区部の住居系地域における分析~

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU09057 川原 拓

1.

1.

1.

1.問題意識と研究の目的問題意識と研究の目的問題意識と研究の目的問題意識と研究の目的

公営住宅は、低所得者の住宅セーフティネットとして 重要な役割を果たしているが、低所得者の集中居住によ って何らかの問題が発生し、そのことによって外部性が 生じているのではないかという問題意識の下に、公営住 宅の外部性に関する研究を行う。その上で、所得再分配 のための住宅補助政策のあり方について考察する。

2.

2.

2.

2.公営住宅の外部性に関する理論分析公営住宅の外部性に関する理論分析公営住宅の外部性に関する理論分析公営住宅の外部性に関する理論分析

理論分析によると、公営住宅がもたらす影響には以下 の3つが考えられる。

(1)金銭的外部性

地域の所得水準が下がることにより、財の需要が減少 するため、供給される財の種類が減少する。そのため、

多様な財の消費を選好する人の居住需要が減少する。

(2)技術的外部性

低所得者の集中により問題が起こっている可能性があ る。アメリカでは、①子弟の教育水準が低く問題行動が 起きやすい、②犯罪発生率が高いことが指摘されている。

わが国では、③コミュニティバランスの偏りによる地域 コミュニティの衰退が指摘されている。また公営住宅の 存在自体が偏見によるマイナスイメージを抱かせること も考えられ、総じて地域イメージの低下により居住需要 が減少する。

(3)民間賃貸住宅のクラウディング・アウト

公営住宅の供給により、民間賃貸住宅の供給が阻害さ れる。問題として、公共部門は民間よりもコストが高く、

消費者選好と乖離した住宅を供給している可能性がある。

本稿では、(2)の技術的外部性の仮説について実証分析 を行う。資本化仮説によれば、その影響は周辺地価の低 下として現れると考えられる。

3.

3.3.

3.公営住宅の外部性に関する実証分析公営住宅の外部性に関する実証分析公営住宅の外部性に関する実証分析公営住宅の外部性に関する実証分析

東京都区部の住居系地域を対象とし、2000、2005年の クロスセクションデータを使用して、資本化仮説とヘド ニック・アプローチに基づくOLS推計で分析を行う。

3 33

3....1111 推計モデル①推計モデル①推計モデル①推計モデル①

ε + X γ OL γ + NO γ + KW β + α

= lnP

3 k j 2

1

1

=

+

j

lnP:ln(地価公示価格)

KW:町の公営住宅世帯割合

NO:町の非オフィスワーカー世帯割合 OL:町の高齢者世帯割合

k:その他の説明変数

α:定数項 β、γ:係数 ε:誤差項 3.

3.3.

3.1.1.1.1.1111 説明変数説明変数説明変数説明変数 (1)公営住宅世帯割合

地価地点が属する町の公営住宅戸数/一般世帯総数。

この割合が高いほど、低所得者の集中居住の度合いが高 いと考えられる。

(2)(1)と相関があると考えられる地域の所得水準(代理 指標として町の非オフィスワーカー世帯割合)、高齢化水 準(代理指標として町の高齢者世帯割合)をコントロー ルした。また、その他の説明変数として、浸水危険度Lv ダミー、ln(東京駅までの時間距離)、ln(最寄駅までの 道路距離)、ln(地積)、ln(容積率)、ln(前面道路幅員)、 RCダミー、用途地域ダミー、区部地域ダミー、沿線ダ ミー、年ダミーを用いた。

図 図 図

図1111 公営住宅がもたらす影響フロー公営住宅がもたらす影響フロー公営住宅がもたらす影響フロー 公営住宅がもたらす影響フロー

周辺の居住需要の減少 周辺の居住需要の減少 周辺の居住需要の減少

周辺の居住需要の減少 財・サービス の種類の減少

非効率な土地利用

⇒供給コストの増加

⇒消費者選好と異なる住宅供給

周辺の土地需要の減少 周辺の土地需要の減少周辺の土地需要の減少

周辺の土地需要の減少 ⇒ 住宅地価の下落住宅地価の下落住宅地価の下落住宅地価の下落 公営住宅の供給 公営住宅の供給 公営住宅の供給 公営住宅の供給

特定地域への低所得者の集中居住特定地域への低所得者の集中居住特定地域への低所得者の集中居住特定地域への低所得者の集中居住

財・サービス 需要の減少

民間賃貸住宅の供給阻害

(クラウディング・アウト)

周辺の住宅供給量の減少 周辺の住宅供給量の減少 周辺の住宅供給量の減少 周辺の住宅供給量の減少 技術的外部不経済 技術的外部不経済技術的外部不経済

技術的外部不経済 金銭的外部不経済金銭的外部不経済金銭的外部不経済金銭的外部不経済 地域イメージの低下

地域イメージの低下地域イメージの低下 地域イメージの低下

社会的余剰の減少

(2)

2 3.1.2

3.1.2 3.1.2

3.1.2 推計結果推計結果推計結果推計結果 表

表表

表1111 推計モデル①の推計結果推計モデル①の推計結果推計モデル①の推計結果推計モデル①の推計結果

***、**、*はそれぞれ10%、5%、1%で統計的に有意 3.1.3

3.1.3 3.1.3

3.1.3 推計結果の考察推計結果の考察推計結果の考察推計結果の考察

非オフィスワーカー世帯割合(=地域の所得水準)が 負の係数なのは金銭的外部不経済の効果と考えられる。

諸要因をコントロールした上で、公営住宅世帯割合が負 の係数で示されたことから、公営住宅への低所得者の集 中居住が技術的外部不経済をもたらしていると言える。

3.2 3.2 3.2

3.2 推計モデル②推計モデル②推計モデル②推計モデル②

公営住宅の供給状況について、集中度を表す指標とし てHHI(Herfindahl-Hirschman Index)を設定し、さら に集中度に注目した推計を行う。公営住宅世帯割合はシ ェアであり、公営住宅が一ヵ所に集中的に供給されてい る地域と分散的に供給されている地域でも共通の値を取 ることがあるが、HHIの場合、前者の地域の方が大き い値を取ることになる。そのため、集中に問題があるこ とを掘り下げて分析するために、HHIを含めた分析を 行う必要があると考えた。

ε + X γ OL γ + NO γ KH KW β + KW β + α

= lnP

3 k j 2

1 2

1

=

+ +

j

・ 3.2.1

3.2.1 3.2.1

3.2.1 説明変数説明変数説明変数説明変数

KH:町の公営住宅HHI













公営住宅総戸数 団地nの戸数

公営住宅総戸数

団地2の戸数 公営住宅総戸数

団地1の戸数

2 2

2

0~1の値をとり、大きいほど集中度が高いことを表す。

3.2.

3.2.3.2.

3.2.2222 推計結果推計結果推計結果推計結果 表

表 表

表2222 推計モデル②の推計結果推計モデル②の推計結果推計モデル②の推計結果 推計モデル②の推計結果

***、**、*はそれぞれ10%、5%、1%で統計的に有意 3.2.3

3.2.33.2.3

3.2.3 推計結果の考察推計結果の考察推計結果の考察推計結果の考察

公営住宅世帯割合では有意な結果が得られず、公営 住宅世帯割合×HHIで有意な結果が得られた。これ は、単に公営住宅のシェアが問題なのではなく、公営 住宅が集中的に供給されている、すなわち低所得者が 集中していることが地価に負の影響を与えていること を示している。この結果から、公営住宅に伴う低所得 者の集中居住が外部不経済をもたらしているという仮 説がより頑健に実証されたと言える。このことから、

低所得者の分散居住を推進することが社会的に望ましい と考えられる。そのことを踏まえながら、所得再分配の ための住宅補助政策のあり方について考察する。

4.

4.4.

4.政策の妥当性に関する考察政策の妥当性に関する考察政策の妥当性に関する考察政策の妥当性に関する考察 4.1 EHAP

4.1 EHAP4.1 EHAP

4.1 EHAP実験実験実験実験ととととMTOMTOMTO実験MTO実験実験実験

家賃補助政策の効果については、アメリカにおける2つ の社会実験の結果を参考にできる。

4.1.1 EHAP 4.1.1 EHAP4.1.1 EHAP 4.1.1 EHAP実験実験実験 実験

EHAP実験(Experimental Housing Assistance Program)

は、アメリカにおいて公営住宅政策から需要側政策であ る住宅バウチャー政策への転換に際して行われた社会実 験である。全米12都市でバウチャーを実際に支給し、受 給者の行動や非受給者、住宅供給者を含めた市場の変化 を様々な側面から観察することを目的とし、1972~1981 年までの10年間に渡って実施された。実験プログラムは、

3つのパートに分けられ、それぞれ独立に行われた。各プ ログラムの結果は以下のとおりである。

①プログラム運営の困難さや費用等を観察する運営実験

・供給側政策と比較して、80%のコスト削減が可能なこと が示された。

②受給者の住宅消費、移動などを観察する需要実験

・受給者は、支払われた手当の大部分を住宅以外の用途 被説明変数 : ln(地価) 係数 標準誤差

公営住宅世帯割合 -0.1659 (0.0538) ***

非オフィスワーカー世帯割合 -0.8974 (0.0397) ***

高齢者世帯割合 0.1373 (0.0688) **

その他の説明変数

定数項 7.3848 (0.1093) ***

自由度修正済み決定係数 サンプル数

省略 0.9018

1909

被説明変数 : ln(地価) 係数 標準誤差 公営住宅世帯割合 -0.0297 (0.0872) 公営住宅世帯割合×HHI -0.2748 (0.1384) **

非オフィスワーカー世帯割合 -0.8904 (0.0398) ***

高齢者世帯割合 0.1246 (0.0690) * その他の説明変数

定数項 7.3932 (0.1093) ***

自由度修正済み決定係数 サンプル数

省略 0.9020

1909

図 図図

図2 2 2 2 公営住宅HHIの考え方公営住宅HHIの考え方公営住宅HHIの考え方 公営住宅HHIの考え方

(3)

3 に使用した。計測された住宅需要の所得弾力性は、賃 貸居住者で0.22~0.40と低かった。

・7%の世帯が、低所得者比率・犯罪発生率が低く、公共 サービス等が良好な地域に移動した。

③バウチャーによる市場家賃や住宅価格の反応などを観 察する供給実験

・住宅の質改善以上の価格上昇は確認されなかった。

4.1 4.1 4.1

4.1.2 MTO.2 MTO.2 MTO.2 MTO実験実験実験 実験

MTO実験(Moving to Opportunity)は、アメリカの住 宅バウチャーにおける受給者の居住地移動を巡る議論の 中で、前提にある低所得者の集中居住による住環境が居 住者に及ぼす影響を分析するために行われた社会実験で ある。1994年から全米5都市で行われた。実験は、子供の いる低所得者世帯を対象に、ランダムに①低所得者率10%

以下の地域への移転が義務付けられるバウチャーを提供 される「実験グループ」、②地域的限定のないバウチャー を提供される「比較グループ」、③バウチャーを提供され ない「コントロールグループ」の3つに分け、1~3.5年間 のフォローアップサーベイによって実験参加者のデータ を収集し、異なるバウチャー政策、ひいては異なる居住 環境が居住者の厚生水準にもたらす影響を、計量経済学 的に評価するというものであった。

実験結果は、どちらの措置グループでもバウチャー使 用後、安全性の改善、子供の問題行動の減少、メンタル ヘルスも含めた世帯主の一般的な健康状態に大きな改善 がもたらされた。また、実験グループでは、喘息発作の 発生率、子供が乱暴された比率などが減少した。

4.2 4.2

4.2 4.2 低所得者の集中と分散低所得者の集中と分散低所得者の集中と分散低所得者の集中と分散に関する考察に関する考察に関する考察に関する考察

本稿での実証結果とMTO実験の結果から、低所得者の分 散居住の推進によって外部不経済の解消と、居住者の社 会厚生の改善の2つが可能であることが分かる。また、

EHAP実験の結果から、公営住宅政策から需要側政策に転 換することが、低所得者の分散居住の実現に有効である ことが分かる。ただし、実験で示された分散効果のマグ ニチュードがそれほど大きくなかったことには考察が必 要である。考えられる要因として、①住み慣れた現居住 地から移動することのコストと抵抗感、②異なる所得水 準のコミュニティに属することへの抵抗感、③居住に関 する選好が特定地域に偏っている(例えば、利便性が高 い都市部でやや中心から離れた低家賃の地域など)など

が挙げられる。総じて、受給者は外部性による社会的費 用を認識せずに自己の効用を最大化するように居住地を 選択することから、自然には最適な分散居住が実現され ないことが予測される。この対策として、家賃補助の制 度設計において、受給者の自由な居住地選択と外部不経 済の解消とを調整する仕組みを設けることが必要である。

4.3 4.3 4.3

4.3 需要側政策による市場家賃の上昇に関する考察需要側政策による市場家賃の上昇に関する考察需要側政策による市場家賃の上昇に関する考察需要側政策による市場家賃の上昇に関する考察 需要側政策は、賃貸住宅需要を増加させるから、それ に伴い供給も促進されるが、供給の増加が十分になされ なければ市場家賃の上昇を招く。すると、補助の効果が 相殺されてしまう。EHAP実験では、住宅バウチャーの導 入は市場の家賃水準にほとんど影響を与えないという結 論を出したが、実際には需給がタイトな住宅市場では市 場家賃の上昇をもたらしているという批判がある。

わが国における考察として、この問題は、特定時点の、

特定市場の状況に左右されるものであるが、以下2つのポ ジティブな側面が指摘できる。①人口、世帯数の減少が 確実に予想されており、需要側政策を導入しても需要圧 力はそれほど高くならないと想像される、②定期借家が 普及することで、世帯向け賃貸住宅が供給されることが 期待される。そして、この問題についても、受給者の居 住地選択が分散されるように制度設計を行うことが有効 であると考えられる。また、必要に応じて市場を活用し た供給側政策を組み合わせることも有効である。

4.

4.4.

4.4 4 4 4 各政策の各政策の各政策の各政策の効率性に関する考察効率性に関する考察効率性に関する考察効率性に関する考察 図2のとお

り、公営住宅 は供給コスト が高く、消費 者の選好との 乖離が生じる ため、最も非 効率である。

EHAP実験で示 された住宅需 要の所得弾力 性の低さを考 慮すると、民 間活用により

供給コストを抑えつつ、消費者が選好に基づき、場所も 図

図 図

図3333 各政策の効率性の分析各政策の効率性の分析各政策の効率性の分析各政策の効率性の分析

公営住宅の家賃

家賃補助

住宅 公営住宅による補助 zG

所得補助 住宅以外の消費財

供給コスト増による非効率 z

hG h

y F

O

O''=I

J

H O'=G

U''' O'''

U''

U'

-p U

政策なし 公営住宅 家賃補助 所得補助

選択点 O O’ O’’ O’’’

補助額 なし GH IJ IJ 効用水準 U U’ U’’ U’’’

(4)

4

公営住宅の扱い 公営住宅の扱い 公営住宅の扱い

公営住宅の扱い 低所得者の居住様態低所得者の居住様態低所得者の居住様態低所得者の居住様態 家 賃補助制度への転 換

家 賃補助制度への転 換 家 賃補助制度への転 換 家 賃補助制度への転 換

・ 公営住宅家賃の市場水準化

・ 入居要件の撤廃 公 営住宅の民間売却 公 営住宅の民間売却 公 営住宅の民間売却 公 営住宅の民間売却

・ 証券化手法の活用

・ 市場価値の低いものは用途 廃止

低所得者の分散居住の推進 低所得者の分散居住の推進低所得者の分散居住の推進 低所得者の分散居住の推進

・現公営 住宅入居者の移転

・中高所 得者の公営住宅への 入居

・新規受 給者の居住地の分散 定期借家制度の普及

定期借家制度の普及 定期借家制度の普及 定期借家制度の普及 高齢者安定居住確保の推 進 高齢者安定居住確保の推 進 高齢者安定居住確保の推 進 高齢者安定居住確保の推 進

・賃貸住宅情報の整備

・終身建物賃貸制度の活用 入居差別問題への対応 入居差別問題への対応 入居差別問題への対応 入居差別問題への対応

含めて自由な居住水準と消費財との組み合わせ選択が可 能な所得補助が最も効率的で、次点が補助金の使途を家 賃支払いに限定した家賃補助となる。

4.54.5

4.54.5 各政策の各政策の各政策の各政策の公平性に関する考察公平性に関する考察公平性に関する考察公平性に関する考察

公営住宅は、恒常的に超過需要の状況にあり、入居者 は抽選で決定されているため、入居者と非入居者との間 に水平的不公平を招く。需要超過の大きな原因は、公営 住宅の家賃設定の失敗にある。本来家賃の応益算定の失 敗により物件ごとの応募倍率が大きく異なり、近傍同種 家賃の設定の失敗により収入超過者に適切な退去インセ ンティブが働かない。そもそも、市場の十分な情報を持 たない公共部門が適切な家賃を設定するのは困難である。

家賃補助は、理論的には全希望者への補助が可能であ る。実際には財政的制約があるが 、直接供給よりは政策 対象者を増やすことが容易となり、現在よりも水平的公 平性を満たすことができると考えられる。家賃は市場で 決定され、収入超過者は自動的に対象から除外可能であ る。使途を家賃に限定していることから、不正受給や浪 費行動の抑制も可能で、公平性の改善が期待できる。

所得補助は、概ね家賃補助と同じであるが、不正受給 や浪費行動が増大する懸念があるため、家賃補助に劣る。

5.

5.

5.

5.政策提言政策提言政策提言政策提言

総合的に考察して、所得再分配のための住宅補助政策 は公営住宅から家賃補助へ転換すべきである。そこで、

制度設計と政策転換後の公営住宅の扱いについて提案す る。

5.1 5.1 5.1

5.1 低所得者の分散居住を促進するための制度設計低所得者の分散居住を促進するための制度設計低所得者の分散居住を促進するための制度設計 低所得者の分散居住を促進するための制度設計 受給者が低所得者の集中の少ない居住地を選択した際 に、補助水準を上乗せ(補助額の上限の上乗せ、または 自己負担分の軽減)することで、分散居住のインセンテ ィブを付与する方法が考えられる。上乗せによる補助コ ストの増加分は、低所得者の分散居住による外部不経済 の解消分で賄うように金額算定を行う。これは、外部不 経済を持つ財の減少に対して補助金を出すことで社会的 に最適な資源配分が実現できるというピグー補助金の考 えに基づくものである。このように家賃補助政策におけ る補助水準の決定に当たって経済的調整メカニズムを設 けることで、受給者のインセンティブに基づいた自発的 な居住地選択により、社会的に最適な分散居住が実現さ れると考えられる。また、居住地選択を分散させること

は、家賃補助政策で懸念される市場家賃の上昇の防止に も有効であると考えられる。

5.2 5.2 5.2

5.2 政策転換後の公営住宅の扱い政策転換後の公営住宅の扱い政策転換後の公営住宅の扱い政策転換後の公営住宅の扱い

家賃補助への政策転換後、公営住宅は市場家賃を設定 して、入居要件を撤廃し、所有以外の面で民営化するこ とが考えられる。これにより、低所得者、中高所得者と もは公営住宅を含めて自由な居住地選択が可能となるた め、公営住宅ストックを市場で有効に活用しつつ、低所 得者の分散居住を推進することが可能である。その後、

公営住宅は順次民間へ売却していくことが考えられる。

しかし、わが国の賃貸住宅市場では入居差別が存在して いるため、単に家賃補助を与えるだけでは十分なセーフ ティネットの構築はできないとの指摘が予測される。こ の点については、行政が並行して、定期借家制度の普及 と、高齢者安定居住確保法に基づく「高齢者が円滑に入 居し、安心して生活できる賃貸住宅市場の整備」を推進 し、入居差別問題の解消を目指していくことが妥当であ ると考えられる(図4)。

5.3 今後の課題

政策転換の具体的検討に当たっては、低所得者の集中 による外部性について、より精緻な計量分析と外部性発 生の原因の追及が必要であり、長期パネルデータや操作 変数、居住者属性データなどを用いた分析が有効である と考えられる。また、アメリカと同様の社会実験の実施 による計量的な評価が不可欠である。

<主な参考文献>

駒井正昌(2005)「住宅バウチャー:アメリカの経験に学 ぶ」

中川雅之(2005)「公営住宅をどうすべきか」

図図図

図4 4 4 4 公営住宅の取扱いと関連施策の推進公営住宅の取扱いと関連施策の推進公営住宅の取扱いと関連施策の推進 公営住宅の取扱いと関連施策の推進

参照

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