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1 2013 年 10 月 7 日

デンマークの洋上風力発電~現地調査報告

野村リサーチ・アンド・アドバイザイリー㈱

調査部 主任研究員

高橋 浩明

<要約と結論> デンマークは、風力を中心とした再生可能エネルギーの推進をエネルギー政策の中心 においている。装置や部品の製造、発電と開発事業など、参入企業の裾野が広い。 デンマークは、世界第 2 位の洋上風力発電の導入量を誇る(2012 年末で世界シェア 17%)。現在の導入量 1,270MW に加えて、大型プロジェクトや Nearshore の開発で、 1,500MW の追加導入が計画されている。デンマークの洋上風力発電はコスト競争力が高 い。今後も、風車の大型化などコストダウンへの取り組みを強化していくとみられる。 デンマークの取り組みの日本への示唆は、①政府の腰を据えた普及への方策、②事業 者の活発な連携、③市民の主体的な参画が挙げられる。デンマークの政策や業界動向の 研究と、日本企業とデンマーク企業との積極的な交流は非常に重要と考える。 目次 1. はじめに 2. デンマークの再生可能エネルギー政策 2-1.デンマークの概要 2-2.デンマークのエネルギー政策 2-3.再生可能エネルギーの動向 3. デンマークの風力発電 3-1.風力発電の導入状況 3-2.風力発電の普及策 3-1.デンマークの電力供給システム 4. 風力発電への参入企業 4-1.風力発電装置・部品メーカー 4-2.発電事業者と開発事業者 5. 洋上風力発電の動向 5-1.デンマークの洋上風力発電の現状 5-2.今後のプロジェクト計画 5-3.コストダウンの目標 6. Middelgrunden 洋上風力発電の見学 6-1.概要と沿革 6-2.コーポラティブによる保有と運営 6-1.Siemens の取り組み 7. 日本への示唆 8. まとめ

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2013 年 10 月 7 日 2

1. はじめに

2013 年 8 月 20 日~24 日に、筆者は、川崎市のミッション団に参加し、デンマークを訪 問した。今回のミッション団の目的は、阿部孝夫・川崎市長を団長に、民間企業と川崎市 の関係者が参加し、デンマークの環境エネルギー分野の動向を現地調査することである。 デンマークの滞在期間中に、駐デンマーク日本大使館への訪問、現地の業界団体や企業と の意見交換、洋上風力発電所の見学を行った。 本レポートは、今回のミッション団での現地調査をベースに、周辺リサーチを行って、 まとめたものである。デンマークの環境エネルギー全般の動向を俯瞰し、筆者の追求テー マである洋上風力発電の動向に関して執筆した。

2. デンマークの再生可能エネルギー政策

2-1. デンマークの概要

デンマークは、北欧諸国のひとつである。本土の面積(グリーンランドなどを除く)は 約 4.3 万 k ㎡(九州とほぼ同じ)、人口は約 560 万人(兵庫県とほぼ同じ)である。NATO と EU に加盟しているが、通貨はユーロを採用していない(1 デンマーク・クローネ=約 18 円、2013 年 9 月現在)。 一人当たり GDP(2012 年)は 56,202 ドルで、日本(46,736 ドル)を 20%上回っている。 要因は、①安定した労働市場政策(職業訓練、女性の社会進出支援など)、②国際競争力 の高い産業構造(グローバルニッチ企業や、輸出志向の強い中小企業)、③消費性向の高 い社会構造(高福祉制度や手厚い失業保険による安心感)といわれている。 ほとんどの国民が、ネイティブな英語を使い、平均 6~7 回の転職によって、グローバ ルな視野で自らに適した職業を見つけている。安定した社会を背景に、国民が安心感を持 って穏やか生活を送っている点は、人々の生活をみて筆者も実感した。

2-2. デンマークのエネルギー政策

デンマークの政府やエネルギー業界関係者が、必ず示す図表がある(図表 1 参照)。デ

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2013 年 10 月 7 日 3 ンマークの GDP 成長率とエネルギー消費のグラフである。1980 年を 100 とした時、GDP は 拡大しているが、エネルギー消費量は横ばいというものである。省エネルギーの推進、廃 熱利用の拡大、再生可能エネルギーの活用によって、エネルギー原単位が大幅に下がって いることになる。デンマークのエネルギー政策の成功を象徴するグラフとして使用される。 (図表 1)デンマークの GDP 成長率とエネルギー消費 (出所)駐デンマーク日本大使館 デンマークのエネルギー政策は、1970 年代の 2 度のオイルショックで大きく変化した。 当時、デンマークのエネルギー自給率は、日本(1980 年で 6%)と同様に、極めて低かっ た。1970 年で 2%、1980 年で 5%に過ぎなかった。オイルショックを受けて、エネルギー の安全保障のため、自給率の向上が図られた。1997 年には 100%になり、2009 年には 124% に達した(日本は 4%)。2011 年は 110%である。 エネルギー自給率の向上には、当初、風力発電と原子力発電の推進が考えられた。結果 的には、天然ガスと風力を中心とした再生可能エネルギーが担い手となった。 1976 年に、原子力発電所の建設が計画された。しかし、放射性廃棄物の処理問題で議論

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2013 年 10 月 7 日 4 がまとまらなかった。土地の限られた国であり、放射性廃棄物などの影響が大きくなると 懸念されたためである。その後、1979 年の米国スリーマイル島や、1986 年のソ連チェルノ ブイリで、原子力発電所の事故が起こり、デンマークの世論は原子力発電に対して厳しい スタンスとなった。また、北海油田の開発(1981 年)で、天然ガスの生産が可能になった ことも影響した。 最終的には、1985 年の国会決議で、原子力発電の導入を断念した。国民の 80%が反原 発となった。その後、2005 年には、世論によって、コペンハーゲンの対岸のスウェーデン の原子力発電所(バースベック原発)も廃炉に追い込んでいる(図表 2 参照)。 (図表 2)デンマークのエネルギー政策の変遷 (出所)駐デンマーク日本大使館

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2013 年 10 月 7 日 5

2-3. 再生可能エネルギーの動向

1990 年代以降、デンマーク政府の政策は、地球温暖化対策のため、化石燃料へ依存しな い方向性へ向かった。このため、石炭と天然ガスから、再生可能エネルギーへの燃料転換 が進んでいった。デンマークの電力供給における再生可能エネルギーの比率は、1994 年の 4%から、2011 年には 40%へ拡大している(図表 3 参照)。これは、世界的にも、極めて 高い水準である。大型水力発電を除いたベースで、他国と比較すると、スペインが 22% (2012 年)、ドイツが 19%(2012 年)、英国が 6%(2010 年)、米国が 4%(2010 年) で、日本はわずか 1.6%(2012 年度)である。世界全体では約 5%(水力を除く、2011 年) と推定される(データの出所は、資源エネルギー庁資料など)。 (図表 3)デンマークの電源構成の推移 (出所)駐デンマーク日本大使館

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2013 年 10 月 7 日 6 デンマークの再生可能エネルギーの中核は、風力発電である。電力供給に占める比率は 28%(2011 年)に達している。他国と比較しても、高いことがわかる。スペインが 17%(2012 年)、ドイツが 8%(2012 年)であり、日本は、わずかに 0.5%(2012 年度)である。世 界全体では、2%強といわれている(EU 平均で 6%強)。 2012 年 3 月、デンマーク政府は、2050 年に、再生可能エネルギーの供給比率を 100%に して、化石燃料から脱却するという目標を提示した。風力発電は、2011 年の 28%を、2020 年までに 50%へ高めるという挑戦的な目標を提示している。

3. デンマークの風力発電

3-1. 風力発電の導入状況

1970 年代から、デンマークが、世界の風力発電を先行してきた。デンマークは、平地が 多く、風力発電に向いていたためである。オイルショックをきっかけに、風力発電所の建 設が進み、デンマーク国内の農業機械など多数のメーカーが風力発電装置の製造に取り組 んだ。風力発電装置の製造は、海外輸出を行うデンマークの戦略産業に育った。2000 年代 に入って、ドイツ、スペイン、米国、中国、インドなどで、風力発電の普及が急速に進み、 この 5 ヶ国が風力発電の導入量トップ 5 となっている(図表 4 参照)。 (図表 4)世界の風力発電の導入状況(2012 年末)

(出所)GLOBAL WIND ENERGY COUNCIL 資料より野村リサーチ・アンド・アドバイザリー株式会社作成

2012年末 2012年末 洋上 洋上風力 シェア 伸び率 風力全体 合計 風力合計 シェア 伸び率 順位 MW 構成比 順位 MW 1 英国 2,947 54.5% 40.8% 34.9% 6 8,445 3.0% 28.8% 2 デンマーク 921 17.0% 5.4% 22.1% 11 4,162 1.5% 5.2% 3 中国 389 7.2% 48.5% 0.5% 1 75,564 26.8% 21.2% 4 ベルギー 379 7.0% 94.4% - - - - -5 ドイツ 280 5.2% 40.0% 0.9% 3 31,332 11.1% 7.8% <参考:風力全体ベスト5>   3 中国 389 7.2% 48.5% 0.5% 1 75,564 26.8% 21.2% 米国 - - - - 2 60,007 21.2% 27.9% 5 ドイツ 280 5.2% 40.0% 0.9% 3 31,332 11.1% 7.8% スペイン - - - - 4 22,796 8.1% 5.2% インド - - - - 5 18,421 6.5% 14.5%     9 日本 25 0.5% 0.4% 1.0% 13 2,614 0.9% 3.1% 世界合計 5,410 100.0% 31.4% 1.9% 282,482 100.0% 18.7%

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2013 年 10 月 7 日 7 このため、デンマークの風力発電導入量(2012 年末)は、4,162MW(シェア 1.5%)であ り、世界で第 11 位にとどまっている。前年比の伸び率も 5%であり、世界全体の伸び率 19% と比べると低い水準である。 ただし、洋上風力発電の導入量(2012 年末)は、921MW(シェア 17%)と、英国(2,947MW、 シェア 55%)に次いで、世界で第 2 位である。デンマークは、陸上風力発電が一巡し、洋 上風力発電の本格的な成長期に入っているといえる。

3-2. 風力発電の普及策

デンマークの風力発電の普及策は、1970~80 年代は、建設補助金であったが、その後、 上乗せ固定価格での買取制度となった(図表 5 参照)。NORD POOL での取引価格(電力の 価値)に、再生可能エネルギーのプレミアムが上乗せされて、風力発電会社から送電会社 へ売電される。NORD POOL は、北欧 4 ヶ国による国際卸電力取引市場である。 (図表 5)風力発電促進のためのインセンティブ(2012 年末) (出所)駐デンマーク日本大使館

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2013 年 10 月 7 日 8 上乗せ固定価格は、普及状況や発電コストなどで変更されてきた。現状は、1kWh 当た りで 0.25 クローネ(25 オーレ、4 円強)である。陸上風力と洋上風力の区別はない。開発 事業者へのヒヤリングによると、他に、バランス補助金が 0.08 クローネ/kWh が付加され るとのことである。NORD POOL の取引価格(3.5~4€セント=0.3 クローネ)+0.25+0.08 =0.63 クローネ(8.5€セント、11~12 円)/kWh が、デンマークにおける風力発電の買取 価格となる。参考までに、日本の風力発電の固定価格は税込みで 23.1 円/kWh である。1 デンマーク・クローネ=18 円、1€=133 円で換算した。

3-3. デンマークの電力供給システム

デンマークの電力供給システムは、図表 6 のようになっている。全国に約 6,000 の発電 所があり、うち、風力発電所が 5,400 ヶ所を占めている。送電会社は、国営で、エネルギ ー省の管轄である。国内の発電会社の他に、電力の約 10%は、NORD POOL から調達してい る。送電会社から、地域送電会社と配電会社(135 社)を通じて、消費者に電気が供給さ れる。消費者は、配電会社を選択できる。 (図表 6)デンマークの電力供給システム (出所)駐デンマーク日本大使館

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2013 年 10 月 7 日 9 NORD POOL は、北欧 4 ヶ国(デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウエー) による国際卸電力取引市場である。各国の電源は特徴があり、相互に補完している。例え ば、ノルウエーの電源は大部分が水力発電だが、冬季は凍結して止まり、夏季はフルに発 電する。スウェーデンやフィンランドには原子力発電がある。デンマークは、国内の発電 では原子力はないが、電気の輸入を通じて、原子力由来の電気を使用していることになる。 デンマークの送電網は、NORD POOL のほか、ドイツとも繋がっている(図表 7 参照)。 2014 年には、欧州の 7 つの電力ネットワークが統合される計画がある。デンマークの電力 システムは、欧州全体の需給バランスの中で運営されていくことになる。 (図表 7)デンマークの電力供給システム (出所)駐デンマーク日本大使館

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2013 年 10 月 7 日 10

4. 風力発電への参入企業

4-1. 風力発電装置・部品メーカー

デンマークの主要な装置・部品メーカーは、図表 8 の通りである。デンマークは、風力 発電装置の製造に関して、長い歴史があるため、裾野が広く、多くの参入企業がある。 風力発電装置(タービン)メーカーは、かつては、デンマークに、グローバル企業が数 社あった。2004 年に、デンマークの Bonus が独 Siemens に買収されるなど、業界再編が起 こり、現状は、デンマークを本社とする主要なメーカーは、Vestas のみである。Vestas は、2012 年末での世界の累積導入量で、51,567MW(世界シェア 21%)と断トツのトップであ る。しかし、年間シェアは低下している。2012 年単年の導入量は 6,020MW(シェア 14%)で、 GE Energy(6,696MW)に抜かれて、前年の首位から 2 位に転落した。 Vestas は、2013 年 9 月に、事業の建て直しのため、三菱重工業と洋上風力発電装置の 分野における提携を発表した。両社の洋上風力発電装置の事業を集約する方針である。2014 年 3 月に、両社の合弁会社をデンマークのオーフス市(デンマークの第二の都市)に設立 し、洋上風力発電装置の開発、設計、製造、販売を担当する。従業員は 300~400 人で、当 初 2 億€(約 270 億円)を投じ、実績をみて、4 億€まで投資する計画である。洋上風力発 電装置の強力なグローバル・プレーヤーが、デンマークに誕生することになる。 (図表 8)デンマークの主要な風力発電装置・部品メーカー (出所)各種資料より野村リサーチ・アンド・アドバイザイリー作成 部品名 風力発電装置 Vestas Siemens (旧 Bonus)

タワー Titan AH Industries Aluwind Elcon Marsh Wind Technology ブレード SSP Technology LM Wind

Power Siemens Vestas 制御・ブレーキシ

ステム DEIF kk-electronic Mita Teknik

SVENDBORG

BRAKES Siemens Vestas 洋上向け変電ス

テーション Bladt Industries Ramboll

洋上基礎部 Bladt Industries Aarsleff MTHojgaard Ramboll Universal

Foundation COWI 海底ケーブル NKT Caables DRAKA

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2013 年 10 月 7 日

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デンマークには、ブレード(羽根)の専門メーカーがある。SSP Technology と LM Wind Power である。ブレードは、装置(タービン)メーカーが内製する場合と、専門メーカーが製作 する場合がある。 今回のデンマーク訪問で、筆者は、SSP Technology のプレゼンを聴く機会があった。当 社は、2001 年、デンマーク中部のフューン島、オーデンセ市(デンマークの第 3 位の都市) の近くで創業し、ブレードの専業メーカーとして発展してきた。従業員は 116 名、2011 年 の粗利益は 940 万€(約 13 億円)であった。 当社の特徴は、最適な形状設計、ハブとのボルト接続部分の軽量化と作業性の向上(特 許技術)、高精度な生産技術(作業工具など)である(図表 9 参照)。2012 年には、世界 最長である 83.5m のブレードを生産し、2013 年 7 月に、Samsung(韓国)の 7MW 風車向け に納入した(スコットランドのテストサイト向け、図表 10 参照)。三菱重工業が新開発し ている 7MW 機(製品名 Sea Angel)のブレードが 81.6m、Vestas の新開発 8MW 機(同 V-164) のブレードが 80m である。

(図表 9)SSP Technology の技術(ブレードとハブの接続部分)

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2013 年 10 月 7 日 12 (図表 10)SSP Technology の世界最長のブレード(83.5m) (出所)SPP Technology

4-2. 発電事業者と開発事業者

風力発電事業者では、DONG Energy が大手である。当社は、風力発電のみならず、石油・ ガスの資源開発、火力発電、エネルギー販売などを行う総合エネルギー企業である。洋上 風力発電では、デンマークのほか、英国などで発電事業に取り組んでいる。 デンマークには、風力発電の開発事業者やコンサルティング会社も多数ある。今回の現 地調査の中では、European Energy、K2 Management、Make などの名前が聞かれた。

European Energy は、2004 年に創業した再生可能エネルギーのプロジェクト開発会社で ある。従業員は 45 名で、欧州を中心に、風力発電とメガソーラーのプロジェクト開発に取 り組んでいる。事業展開を積極化する独立系の新興企業として注目される。

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2013 年 10 月 7 日 13

5. 洋上風力発電の動向

5-1. デンマークの洋上風力発電の現状

2012 年末のデンマークの洋上風力発電の導入量は 921MW で、英国に次いで世界第 2 位(シ ェア 17%)の規模である。2013 年上期(1~6 月)の導入量は 352MW であり、欧州全体の 導入量 1,045MW に対して、シェア 34%に達している。2013 年現在での累積導入量は 1,273MW で、13 ヶ所のサイトが稼動している(図表 12 参照)。 100MW 以上の大型サイトは、ユトランド半島の西側(北海)とバルト海の 4 ヶ所であっ たが、2013 年に、スウェーデンとの海峡(カテガット海峡)に、これまでで最大の 400MW の Anholt 発電所が完成した(デンマークで最大、世界で 3 番目)。

Anholt 発電所は、DONG Energy が開発したプロジェクトで、総投資額は 100 億デンマー ク・クローネ(約 1,800 億円)とみられている(図表 11 参照)。事業持分は、DONG Energy が 50%、Pension Danmark(デンマークの年金ファンド)が 30%、PKA(デンマーク最大の 職業年金基金)が 20%である。沖合い 21km、平均水深 14~17mに、Siemens の 3.6MW 機が 111 基設置されている。

(図表 11)Anholt Offshore Wind Farm

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2013 年 10 月 7 日

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(図表 12)デンマークの洋上風力発電所

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2013 年 10 月 7 日 15

5-2. 今後のプロジェクト計画

デンマークでの洋上風力発電プロジェクトの計画は、大型洋上風力発電プロジェクト 2 ヶ所(400MW と 600MW)と、Nearshore プロジェクト(6 ヶ所で 450MW)、大型タービンの 研究開発用(50MW)の合計 1,500MW である。デンマークのエネルギー省が入札をして、事 業者を募っている。エネルギー省は、許認可も担当する。国営送電会社が、変電ステーシ ョンと海底ケーブルの資金調達、建設、運営を担当し、送電網との連系を行う。 図表 13 は、二つの大型洋上風力発電プロジェクトの計画予定地を示している。北海の Honrs Rev3(400MW)は、2014 年秋に入札を行い、2015 年の建設許認可、2017 年の系統連 系、2020 年にフル稼働のスケジュールである。バルト海の Kriegers Flak(600MW)は、2015 年春夏に入札を行い、2015 年秋の建設許認可、2018 年に系統連系、2020 年にフル稼働の スケジュールである。 (図表 13)大型洋上風力発電プロジェクト計画(2 ヶ所)

(出所)Danish Energy Agency

Horns Rev 3

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2013 年 10 月 7 日 16 Nearshore プロジェクトは、沖合い 4~20km の比較的、陸地に近い洋上での風力発電プ ロジェクトである(水深は 5~10m)。6 ヶ所が候補に挙がっており、合計 450MW の計画で ある(図表 14 参照)。今後、調査を進めていき、プロジェクトの場所が決まる見通しであ る(1 ヶ所が最大で 200MW)。2015 年初めに入札があり、2016 年の春に、事業者が決定す る予定である。 (図表 14)Nearshore プロジェクト(6 ヶ所候補、合計 450MW)

(出所)Danish Energy Agency

5-3. コストダウンの目標

デンマークの風力発電は、製造インフラが整っており、平地が多く建設が容易なため、 発電コストが低い。陸上風力の発電コストは 5€セント(6.5~7 円)/kWh といわれている (販売価格は 8.5€セント)。日本は 18 円前後/kWh、英国は 11 円(7 ペンス、8.5€セン ト)/kWh とみられる(£1=158 円)。 洋上風力でも、遠浅で建設コストが安く、風況が良いため、発電コストが他国よりも低 くなるポテンシャルがあるとみられている。今回ヒヤリングした開発事業者では、6~8MW 機が本格化すれば、洋上風力で、5~7€セント(6.5~9.5 円)/kWh に下げられる可能性 があるというコメントがあった。

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2013 年 10 月 7 日 17 DONG Energy の資料では、欧州での洋上風力発電のコストを、2012 年の 16€セント(21 円)/kWh から、2020 年には 10€セント(13 円強)/kWh へ下げるという目標が提示され ている。英国における洋上風力の発電コスト削減の国家目標は、現状の 14~16 ペンス(22 ~25 円、16.5~19€セント)/kWh を、2020 年に 10 ペンス(16 円、12€セント)/kWh へ 下げるというものである。ドイツの洋上風力発電のコストは、送電網の投資コストなどが かさんで、現状、12~14€セント/kWh といわれている。デンマークの洋上風力が、コスト 競争力を持っていることがわかる(5~7€セント/kWh という挑戦的な目標)。 コスト削減の大きなポイントは、風力発電装置の大型化である。陸上風力は、タービン と周辺機器のコスト比率が 80:20 で、2MW 機でも 6MW 機でも大きな差はない。洋上風力で は、現状の 4MW 機では、タービンと周辺機器(基礎部やケーブルなど)のコスト比率が 50: 50 である。周辺機器のコスト負担が大きい。洋上風力では、6~8MW 機へ大型化すれば、周 辺機器のコスト比率が 30%へ下げられる可能性がある。1 基当たりの基礎部や海底ケーブ ルのコストが下がるためである。大型化で建設基数が減れば、工事期間も短縮できる。MW 当たりの投資額のターゲットは約 200 万€(3 億円弱)である。 このように、洋上風力発電では、風力発電装置の大型化が重要なファクターとなる。 Vestas は、8MW 機の新規開発を進めており、2014 年度にプロトタイプができる見通しであ る。Siemens は、6MW 機の新規開発に取り組んでおり、スコットランドとデンマークでテス トを行っている。デンマーク政府も、テストサイトの設置に積極的で、前述のように、50MW のサイト建設の計画がある。 他に、デンマークにおける洋上風力発電のコストダウンのポイントは、エネルギー庁に よる一元的なプロジェクト管理(入札、許認可など)や、国営の送電会社の責任によるイ ンフラ投資と系統連系の実施があると思われる。

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2013 年 10 月 7 日 18

6.Middelgrunden 洋上風力発電の見学

今回の視察の中で、コペンハーゲン市の沖合い 3kmにある Middelgrunden 洋上風力発 電所を、海上より見学した(図表 15 参照)。運営主体であるコーポラティブと、風力発電 装置メーカーの Siemens(旧 Bonus)の担当者が見学に同行し、解説と質疑応答に対応した。

6-1. 概要と沿革

当発電所は、デンマークで 3 番目に稼動した洋上風力発電プロジェクトである。2MW 風 車が 20 基で合計 40MW のプロジェクトである。1996 年に、二つのグループが建設計画を検 討し始めた。ひとつは、個人が集まったグループであり、もうひとつは、企業(DONG Energy) であった。両者が合体して、ひとつのプロジェクトとなった。20 基のうち、北側 10 基を DONG Energy、南側 10 基を個人グループ(コーポラティブ)が保有・運営している。 (図表 15)Middelgrunden 洋上風力発電所(2MW 機×20 基=40MW) (出所)野村リサーチ・アンド・アドバイザイリー撮影

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2013 年 10 月 7 日 19 1997 年から 1999 年までの 3 年間、計画立案と、関係者との話し合いがもたれた。元々、 首都コペンハーゲンの市民が幅広く、洋上風力発電を見て、認識を深めることができる立 地という観点で選ばれた。風況が良い場所を選んで、建設されたわけではない。観光や漁 業への影響なども考慮された。風車の配列は、景観を配慮して、カーブ状に設定された。9 ヶ月の工事の後、2000 年 12 月に完成した。 総投資額は 4,800 万€(約 60 億円)で、MW 当たりの投資額は 1.5 億円と極めて低い。水 深が 4~8mと浅く、基礎部分の工事コストなどが低減できたことが要因である。

6-2. コーポラティブによる保有と運営

コーポラティブは、個人が株式(持分)を出資することが資金を集めた。当初、40,500 株で 2,300 万€の資金調達となった。1 人当たりの株数は 5 株に制限されたが、現状は、14 ~15 株保有することができる。現在の株主数は 8,850 人である。配当利回りは 8%程度で ある。株式の売却が尐ないため、購入希望者は待ち時間が長くなっている。

6-3. Siemens の取り組み

Bonus は、1980 年創業だが、2004 年に、Siemens に買収された。洋上風力発電において、 デンマークでの経験とドイツの技術知見が合体している。従業員は、2004 年の 800 人が、 現在 9,000 人に増加している。デンマークに技術センターがあり、アジアでは、中国・上 海に販売拠点を持っている。

7. 日本への示唆

デンマークの洋上風力発電への取り組みから、日本での洋上風力発電の普及への示唆を 考えたい。日本とデンマークでは、立地状況や気象が異なるため、そのまま、当てはめる ことは難しいかもしれない。しかし、政府、事業者、市民の取り組みのエッセンスを抽出 することで、日本でも活用できる知見がみつかると考える。 日本への示唆を整理すると、①政府の腰を据えた普及への方策、②事業者の活発な連携、 ③市民の主体的な参画が挙げられる。

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2013 年 10 月 7 日 20 ①政府の腰を据えた普及への方策では、開発地域の明確化(ゾーニング)と、許認可や 規制の一元化である。デンマークでも、英国と同じく、政府が、洋上風力発電の開発地域 を決めて、事業者を応募している。事業者からみると、開発地域が明確になっているので、 事業を進めやすい。また、許認可や規制の窓口を一元化することは、手続きコストの削減 や期間の短縮から有効と考えられる。 ②事業者の活発な連携は、業界全体で情報やノウハウを共有していくことである。異業 種からの事業参入や、ベンチャーの設立など業界の活性化が望まれる。欧州で知見のある 海外企業との積極的な提携も有意義と考えられる。 ③市民の主体的な参画も重要である。市民の主体的な参加があれば、洋上風力発電への 理解が深まり、景観などの課題解決に結び付くことが期待される。再生可能エネルギーREIT など、一般投資家へ新しい金融商品を提供していくことが肝要とみられる。

8. まとめ

洋上風力発電で先行するデンマークの政策や業界動向を研究することは、日本での普及 促進のために、非常に有用と考える。筆者は、今後とも、デンマークの洋上風力発電の動 向調査を続け、日本への示唆を抽出する作業を続けていきたい。 デンマークの洋上風力発電の関連企業は、日本市場への関心が高い。市場参入には、日 本企業との連携が不可欠である。日本企業も、デンマーク企業の欧州での知見を学ぶ良い 機会と思われる。また、デンマークなど欧州での洋上風力発電プロジェクトは、日本の企 業や投資家からみて、グローバルでみた投資検討のテーマと考えられる。日本企業とデン マーク企業の間で、積極的な交流が図られることに期待したい。

参照

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