博 士 ( 工 学 ) 山 本 敏 雄
学 ′ 位 論 文 題 名
A Study on Numerical
Optical Waveguides by the Analysis of Curved Finite‑Element Method
(有限要 素法によ る曲がり 光導波路 の数値解析 に関する 研究)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
最 近 、情 報処 理分野への光技術導入に関 する研究開発が活発化して いる。光デバイスの計 算機 へ の本 格的 な導入のためには、光デバ イスの集積化、いわゆる光 集積回路として光デバ イスを一体集積化 することが必要である。
さ て 、光 集積 回路の構成部品には様々な ものがあるが、とりわけ、 曲がりをもった光導波 路は そ の最 も基 本的な構成要素のーつであ ると同時に、リング導波路 レーザーとぃった単体 の光 デ バイ スに も積極的に利用されるなど 、各方面で注目を集めてい る。こうした曲がり導 波路 を 用い た各 種光デバイスの高性能化を 図っていくためには、その 動作特性を正確に予測 でき る デバ イス シミュレータを開発してお くことが必要であるが、通 常の直線状導波路に比 べて 、 曲が り導 波路 の 解析 は格 段に 難し く、特に、集積化に必須の3次元(チャネル)導波 路の 場 合に は、 これまで主に、解析的なア プローチによって解析が試 みられてきた。解析的 方法は工学的な見 通しが良い反面、ー般に汎 用性に乏しい。実際、曲がり導波路の場合には、
矩形 の 断面 をも つ構造にのみ有効であり、 それ以外の構造には適用で きない。また、リング 導 波 路 の 導 波 モ ー ド の ー つで あ り、 実用 的に も重 要 なウ イス パリ ン グギ ャラ リー モー ド (WGM: Whispering Gallery Mode) の解 析もできない。WGMは内側の クラッデイングが不要 であ る こと 、リ ング 径 が小 さく なる とと も に通 常の 導波 モー ド がWGMに 近づ くこ とな どか ら、光集積回路の 構成に有利な性質をもって いる。
と こ ろで 、直 線状の光導波路の解析、設 計には、既に種々の数値解 法が利用され、デバイ ス特 性 の向 上に 役立 っ てい る。 特に 、ス カ ラ波 近似 に基 づく 有 限要 素法 (SFEM: Scalar Finite Element Method)は、極めて汎用性が高く、また、ベクトル有限要素法で問題となるス プリ ア ス解 も発 生し な いこ とか ら、 光導 波路デバイス設計用CADの解 析ツールとしても広く 利用されつっある 。
本 論 文は 、こ のような状況のもとで、曲 がり光導波路の解析ツール ならびにデバイスシミ ユレ ー 夕開 発に 関する研究結果をまとめた ものである。具体的には、 曲がりによる放射を無 視 し た 場 合 と 考 慮 し た 場 合 に 対 す る2種 類 のSFEMを 新た に開 発す る とと もに 、こ れら の SFEMを 解析 ツー ルと し て用 いた 曲が り光 導 波路 デバ イス シミ ュレー タを構築している。ま た、 リ ブ導 波路 にお け る導 波モ ード 、リ ン グ導 波路 や誘 電体 円 板に おけ るWGMの 伝送 特性 を解 析 し、 曲率 半径あるいは導波路の断面 形状がこれらのモードの伝 搬特性に与える影響を 明らかにしている 。
第 1章 で は 、 本 研 究 の 背 景 、 目 的 、 論 文 全 体 の 構 成 に つ い て 述 べ て い る 。 第2章では、ス カラ波近似を導入し、曲がり 導波路における準TE(Transverse Electric)モ ー ド 、 準TM(Transverse Magnetic) モ ー ド 解 析 の た め の 基 礎 方 程 式 を 導 い て い る 。 第3章 では 、 曲が りに よる 放射 を 無視 した 場合 のSFEMの定 式化 を行 っ てい る。 具体 的に は、 導 波部 から 十分離れた位置に仮想境界 を設定し、この境界にノイ マン条件を課すことに よっ て 、曲 がり 導波路の伝搬問題を通常の 一般化固有値問題に帰着さ せている。さらに、こ こで 定 式化 したSFEMを 解析 ツー ルと して 用 いて 、曲 がり 光導 波路デ バイス設計支援のため
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のシミュレー夕COW (Curved Optical Waveguide)を構築し、そのプログラム、ファイ´レ構成 につ いて 述 べて いる 。な お、cowでは 、 上記 の一般化固有値問 題をジェニングス法を用いて 解いている。
第4章 では 、曲 がり に よる 放射 を考 慮し た 場合 のSFEMの 定 式化 を行 って いる 。 具体 的に は、 導波 路 の外 側境 界におぃてハン ケル関数を用いた解析的関 係式を接続することにより、
放射 を伴 う 曲が り導 波路の伝搬問題 を非線形の複素一般化固有 値問題に帰着させている。さ らに 、こ こ で定 式化 したSFEMを 解析 ツー ルと して 用 いて 、曲 げ損 失 の評価が可能なシミュ レー夕COWL (Curved Optical Waveguide with curvature Loss)を構築し、ハンケル関数の評価 方法 、プ ロ グラ ム、 ファ イル 構 成に つい て述 べて い る。 なお 、COWLでは、上記の非線形の 複素一般化固有値問題 を反復法を用いて解いている 。
第5章 で は 、COW、COWLの 性 能 評価 を詳 細 に行 って いる 。 まず 、リ ング 導波 路 、リ ブ導 波路 を取 り 上げ 、COWLによる曲げ損 失値の数値的安定性につい て調査している。この結果、
ハン ケル 関 数を 用い た解析的関係式 を接続する境界の位置が曲 げ損失値に比較的大きな影響 をも っこ と 、境 界の 位置を適当に設 定することにより、曲げ損 失が安定に算出されることが 確か めら れ た。 また 、これらの曲げ 損失値は実験による結果と よく一致している。次に、リ ン グ 導波 路、 誘 電体 円板 内のWGMの角 度伝 搬 定数 を評 価し 、 曲率 半径 が十 分に 大 きく 、曲 げ 損 失が 無視 で きる 場合 には 、COWとCOWLと で、 ほぽ 一致 し た結 果が 得ら れる こ とを 確認 し た 。CPU時 間 を 比 較 す る と 、COWはCOWLの 約25倍高 速で あ るこ とか ら、 曲げ 損 失が 無視 できる場合や初期設計 にはCOWが有効であると半|J断される。
第6章 では 、光 集積 回 路の 構成 に多 用 され るりブ導波路を取 り上げ、断面の形状を台形と して一般化し、断面の 形状が光強度のピーク位置、 角度伝搬定数に与える影響を調ぺている。
ピー ク位 置 は、 曲率 半径が小さくな るとともにりブの外側に移 動すること、このピーク位置 の移 動量 と 角度 伝搬 定数の間には正 の相関があること、角度伝 搬定数と曲率半径の間には負 の相関があること、な どを見出している。
第7章 で は 、 様 々 な 応 用 が 期 待さ れて いるWGMにつ いて の 検討 を行 って いる 。 まず 、リ ング 導波 路 にWく 珊dが存在すること を示し、そのための最小の 導波路幅を求めるとともに、
その 最小 幅 と曲 率半 径の間には正の 相関があることを見出して いる。次に、誘電体円板にお け るWGMの 基 本 モ ー ド と1次 、 お よ び2次 の 高 次 モ ー ド の 伝 搬特 性を 調ベ 、い ず れの モー ドも 、曲 げ 損失 は曲 率半径が大きく なるとともに急速に減少す ること、高次のモードほど曲 げ損 失が 大 きい こと を示している。 また、角度伝搬定数は曲率 半径が大きくなるとともに急 激に 増加 す るが 、こ れは、角度伝搬 定数と曲げ半径との間に負 の相関があるりブ導波路と対 照的 であ る 。さ らに 、円板のエッジ の傾きや凹凸の影響を調べ 、凹凸の影響はエッジの傾き の影響に比ぺて小さい ことを明らかにしている。
第8章では、各章の結 果を総括している。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
A Study on Numerical Analysis of Curved Optical Waveguides by the Finite‑Element Method
( 有限 要素 法に よる 曲が り光 導波路の数値解析に関する研究)
最近、情報処理分野への光技術導入に関する研究開発が活発化している。光デバイスの計 算機への本格的な導入のためには、光デバイスの集積化、いわゆる光集積回路として光デバ イスを一体集積化することが必要である。
さて、光集積回路の構成部品には様々なものがあるが、とりわけ、曲がりをもった光導波 路はその最も基本的な構成要素のーつであると同時に、リング導波路レーザーとぃった単体 の光デバイスにも積極的に利用されるなど、各方面で注目を集めている。こうした曲がり導 波路を用いた各種光デバイスの高性能化を図っていくためには、その動作特性を正確に予測 できるデバイスシミュレータを開発しておくことが必要であるが、通常の直線状導波路に比 ぺて、曲がり導波路の解析は格段に難しく、特に、集積化に必須の3次元(チャネル)導波 路の場合には、これまで主に、解析的なアプローチによって解析が試みられてきた。解析的 方法は工学的な見通しが良い反面、一般に汎用性に乏しい。実際、曲がり導波路の場合には、
矩形の断面をもつ構造にのみ有効であり、それ以外の構造には適用できない。また、リング 導波路の導波モードのーつであり、実用的にも重要なウイスパルングギャラリーモード (WGM: Whispering Gallery Mode)の解析もできない。
本論文は、このような状況のもとで、曲がり光導波路のスカラ波近似に基づく有限要素法
(SFEM:Scm証Fini他ElementMemod)の開発、ならびにデバイスシミュレータの開発に関す る研究結果をまとめたものである。
第1章 で は 、 本 研 究 の 背 景 、 目 的 、 論 文 全 体 の 構 成 に つ い て 述 べ て い る 。 第2章では、スカラ波近似を導入し、曲がり導波路における準TE(Tr加sver艶Elecmc)モ ー ド 、準TM(Tr孤sver鱒Magne此)モ ード解析 のための 基礎方 程式を導 いてい る。
第3章では、曲がりによる放射を無視した場合のSFEMの定式化を行っている。具体的に は、導波部から十分離れた位置に仮想境界を設定し、この境界にノイマン条件を課すことに よって、曲がり導波路の伝搬問題を通常の一般化固有値問題に帰着させている。さらに、こ こで定式化したSFEMを解析ツールとして用いて、曲がり光導波路デバイス設計支援のため のシミュレー夕COW(CurvedopncmWaveguide)を構築し、そのプログラム、ファイル構成 について述べている。
第4章では、曲がりによる放射を考慮した場合のSFEMの定式化を行っている。具体的に は、導波路の外側境界においてハンケル関数を用いた解析的関係式を接続することにより、
放射を伴う曲がり導波路の伝搬問題を非線形の複素一般化固有値問題に帰着させている。さ らに、ここで定式化したSFEMを解析ツールとして用いて、曲げ損失の評価が可能なシミュ レー夕COWLくCurved()pticmWaveguidewithcurvatumLoss)を構築し、ハンケル関数の評価
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則 彦
久 光
正
精
利
利
柴
藤
間
倉
小
伊
本
朝
授
授
授
授
教
教
教
教
査
査
査
査
主
副
副
副
方法、プログラム、フんイル構成について述ぺている。
第5章では、COW、COWLの性能評価を詳細に行っている。まず、リング導波路、リプ導 波路を取り上げ、COWLによる曲げ損失値の数値的安定性について調査している。次に、リ ング導波路、誘電体円板内のWGMの角度伝搬定数を評価し、曲率半径が十分に大きく、曲 げ損失が無視できる場合には、COWとCOWLとで、ほぼ一致した結果が得られることを確認 している。CPU時間を比較すると、COWはCOWLの約25倍高速であることから、曲げ損失が 無 視 で き る 場 合 や 初 期 設 計 に は COWが 有 効 で あ る こ と を 示 し て い る 。 第6章では、光集積回路の構成に多用されるりプ導波路を取り上げ、断面の形状を台形と して一般化し、断面の形状が光強度のピーク位置、角度伝搬定数に与える影響を調べている。
第7章では、様々な応用が期待されているWGMについての検討を行っている。まず、リ ング導波路にWGMが存在することを示し、そのための最小の導波路幅を明らかにしている。
次 に、誘電体円板におけるWGMの基本モードと1次、および2次の高次モードの伝搬特性 を調ペ、いずれのモードも、曲げ損失は曲率半径が大きくなるとともに急速に減少すること、
高次のモードほど曲げ損失が大きいことを示している。
第8章では、各章の結果を総括している。
これを要するに、著者は、曲がり光導波路の解析ツールならびに曲がり導波路を用いた光 デバイス設計支援のためのシミュレータを開発することに成功し、光集積回路の設計指針を 与える有益な新知見を得ており、光エレクトロニクスの進歩に貢献するところ大である。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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