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近藤明近藤仁美

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(1)

近藤明近藤仁美

|はじめに

1-1問題点

「泣きに泣く」「男泣きに泣く」のように,助詞「二」を介して同一の動詞または共通の構成要素 を有する動詞が繰返される形がある。これらを以下「動詞十二+動詞」型または「V+二+V」型 と呼。S:ことにする。

(1)

その中で「男泣きに泣く」「大まけにまける」「ひた走りに走る」「荒れ放題に荒れる」のように,

に」の前に位置する動詞が,名詞・接頭辞・接尾辞等の修飾的要素を伴う形のものがある。これ を,修飾要素,cを伴う型ということで以下「jc型」と呼ぶ。

一方,「泣きに泣く」「笑いに笑う」のように「二」を介して同一の動詞が繰り返される形がある。

これを「,c」に相当する修飾的要素を伴わないということで「⑦型」と呼ぶことにする。‘型は

(2)

動詞を重ねて強意をあらわす。/皆張り切って,漕ぎに漕ぐ(国立国語研究所1951)

意味を強め,ひたすらに,あるいは盛んにその動作を行う意を表す。/考えに考えた末/敵を 撃ちに撃ちまくった/待ちに待ったその曰が来た(松村明1971)

のように「強調」「意味を強める」といった説明がされることが多い。しかしそのような言葉で説明 するにしても,動詞の表す意味のどういう面を「強調」するのか,それには動詞の種類によってど のような差があるか,この形になり得る動詞.なり得ない動詞はどのようなものかといったことが 明らかにされていなければなるまい。

これに対して,c型は,

動作,作用の行われ方・状態を表わす/…男泣きに泣きました。(松村1971)

と説明されているように,「男泣きに」「大まけに」等の「x+動詞十二」の部分が下の動詞「泣 く」「まける」等を修飾しているものと把握できる。この,U型の「二」は

その連用形に立てる動詞を以て-の状態として情態副詞の如く仁下なる動詞の修飾の資格に立 たしめるものなり(山田孝雄1936)

動作・作用の行われ方・状態を表わす。(中略)成語としては,「……ずに」の形で連用修飾語 を作り,「現に」「常に」「互いに」のように副詞的語尾として用いられる。(松村1971)

等と言われるように副詞語尾「二」との連続性を持つものとの把握も可能だろう(ただし山田1936 は‘型も含めての発言である)。

しかしx型の中にも「強調」という説明が適用できそうなものがある。古代語・中世語の「ただ 泣きに泣く」「ひた斬りに斬りおとす」等の形はjc型に分類されるものだが,‘型と区別せずに「強 調」を表すものと説明されることがある。また現代語でも,例えば青木伶子1964は「大まけにまけ

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る」の「二」を「連用修飾語をつくる」用法の一つとして扱いながらも「強調表現」と説明してい る。確かに「大まげにまける」は「まける」ことの強調表現として捉えることができるし,○型の

「まけにまける」と置き換えることも可能である。他に「ひた隠しに隠す」「荒れ放題に荒れる」等 も,「隠す」ことや「荒れる」ことの強調表現であるとも言えるし,ある程度のニュアンスの差はあ るにしても○型の「走りに走る」「荒れに荒れる」と置き換えることも可能である。この種のものを 仮にx型a類と呼ぼう。これらx型a類にほどのようなものがあるかを明らかにし,それらについ て○型と同様の問題点を解明することは,の型と兀型a類の「強調」のあり方の異同を考察した り,①型と,c型が同質的なものであるか否かを検討する上で必要なことと思われる。更に,現代語 のの型や,c型a類について上記のような点を明かにしておくことは,この種の表現の歴史的変遷を 考える前提作業としても必要なことと考えられる。

1-2動詞の分類

以下考察を進めていくに当たって,動詞のアスペクトに注目し,「強調」が動詞の表す動作や変化 のどの局面に働いているかに注目したい。その際動詞をその性質によっていくつかに分類して考え ていく必要がある。

仁田義雄l983aは,情態副詞成分(頻度の副詞成分を除く)のうち,動きが実現した結果の対象 または主体の状態に言及する「ポロポロニ,キレイニ,パラバラニ」の類を「結果の副詞」と称し ており,これら「結果の副詞」と動詞との共起には明確な制限があるという。そこに示された動詞 の分類は,本論における問題点の考察においても有効と考えられる。また「動詞十二+動詞」型自 体,副詞の修飾ということと必ずしも無縁ではない。前掲の山田1936の指摘のように「動詞+二+

動詞」型の「二」までの部分は,情態副詞との連続'性が多分に考えられ(特に,c型の場合),副詞の 修飾に関する仁田の論との関連が出てくる可能性があると思われる。

仁田は動詞の種類別に「結果の副詞」との共起の可否を次のようにまとめている I主体運動の動詞は,結果の副詞を取り得ない。

主体運動の動詞は,動きの結果が主体や対象の状態の変化を引き起こす必要がない動詞で,

「遊ブ,走叱歩夕,這ウ,位ク,笑ウ,殴ル,揺ラス,食ベル,噛ム」等がこれに当り,テ イルを下接した場合動作の最中の意味になる。

Ⅱ主体変化の動詞は結果の副詞を取り得る。

主体変化の動詞は,主体の形態や質の変化を表す動詞のうち/漸次'性・過程'性を有するもの で,「変ワル,濡レル,荒レル,燭ル,太山曲ガル」等がこれに当り,テイルを下接した場合 結果の残存の意味になる。ただし位置変えの動詞(離し山開夕等)は結果の副詞を取りにく

い。

Ⅲ対象変化の動詞は結果の副詞を取り得る。

対象変化の動詞は,主体の対象に対する働きかけによって対象に状態変化が引き起される意 味のもので,「切ル,削ル,曲ゲル,濡ラス,巻夕,磨夕,煮ル」等がこれに当り,テイルを下 接した場合には動作の最中の意味になる。ただし対象の位置変えの動詞(入レル,出入上ゲ

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叱降ス,置夕等)は,結果の副詞を取りにくい。

Ⅳ状態招来行為の動詞は結果の副詞を取り得ない。

状態招来行為の動詞は,主体の形態や質の変化を表す動詞のうち,漸次性,過程性を有せず 主体の新しい違った状態を招来する行為を表すもので,「結婚スル,死ヌ,着夕,到着スル,帰 山戻ル,届ク」(以上持続'性なし),「座ル,乗ル,寝ル,立ツ」(以上持続|性あり)等がこれ に当る。テイルを下接した場合は結果の残存の意味になる。

この他にアスペクトの存在・分化を有しない単純状態の動詞があるが,それらは当然結果の副詞

を取ることはない。

2○型

前掲の動詞の分類に従っての型から検討を加えていくが,この型の場合動詞のアスペクト素性だ けでなく,動詞の形態面からの制限もある。すなわち連用形が-音節の「見る」「煮る」「寝る」等 は`型になりにくく「*見に見る」「*煮に煮る」「*寝に寝る」などは考えられないのである泉1,

「見つめに見つめる」「煮込糸に煮込む」「煮つめに煮つめる」のように複合動詞を用いた形や,「*

寝に寝る」に対して「眠りに眠る」のような類義の多音節動詞を用いた形を使用することによって

対応しているように思われる。

【I主体運動の動詞】

《動作の継続・反復》

主体運動の動詞の‘型のうち,次のようなものは動作の継続・反復を強調的に表すものと考えら れる。なお①の例は「動詞十二」の部分が二回繰り返されているが,○型のバリエーションとして 把握できるものと考える。

①その余所事が気に懸って,気に懸って,どうにもならなし、。体えに,倣えに,倣えて見たが,

こら

とうとう体えきれなくなって (浮雲)

②それが幾日ともなく続きに続くこともあった。(新生)

③四年の間自己の心を隠しに隠そうとした岸本の心にも(新生)

④彼が二年の間一すじに焦れに焦れ(青銅の基督)

⑤その放送を待ち構へ,その間暇つぶしのため,計算尺を片手にスポーツ新聞を見ては近鉄の全 選手の昨日までの打率を計算し,さて,やうやく待ちに待った各地の途中経過があると

(男のポケット)

⑥キムは,やがて,こういうことにたえられなくなった。彼は考えに考えたあげく,ある夜,と うとうマッカリのドンブリ鉢をおいて,顔をあげた。(日本三文オペラ)

いずれも数日ないしは数年間といった長期間か,そうでなくても主観的に長く感じられる期間に わたる継続,もしくは多数回の反復というニュアンスが強い。⑥の「待ちに待つ」は「一夕」形で 連体詞的にしか用いられず,慣用句化している観もあるが,長期間にわたる動作の反復という点で

共通する。

(4)

この他「歩きに歩く」「祈りに祈る」「我慢に我慢する」「探しに探す」「耐えに耐える」「`悩糸に'悩

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む」「迷いに迷う」なども同様であろう。

動作を長期間継続・反復することは,動作の入念'性にもつながってくる。⑤の「考えに考える」

にはそういう面が多分にあるし,慣用句化している「選りに選って」もその方向で理解できるだろ

よよ

う。

なお,「食べに食べる」「飲糸に飲む」のように,動作の主体または対象の多数性・大量性に中心 があるように見える場合がある。動詞の表す動作が多くの主体や対象の上に次々と起こっていくよ うなものである場合,そのような動作が継続・反復することは,動作の主体・対象の多数`性・大量 '性につながっていていくわけであり,前述の「反復・継続」と矛盾するものではないと思う。

《動作の激しさ》

動詞の表す動作・作用がダイナミックなものである場合や,大きな声や音を伴い得るようなもの である場合には,《動作の激しさ》の強調的表現と解されることが多い。

⑦落語を聞くお客は,そのカンちがい.誤解・ヘマ・失敗に,笑いころげる。笑いに笑うことで 平素の余り笑わない日常I性のストレスが解消されるわけであるが (日本人の笑い)

⑧弘村伍長は重大なる命令を聯隊に伝えるべく新雪の中を転がるように走った。(中略)花田伍 長(引用者注:弘村伍長と伝令を交替した人物)は雪の中を走りに走った。花田伍長が青森の 屯営についたときは息も絶え絶えであった。 (八甲田山死の祐但)

⑨(すご承にすごんで)やい,誰もいわえのかい。おれさまは強盗さまだ。(同業者)

⑦⑧は動作の継続という面も考えられるが,⑦は先行文脈に「笑いころげる」とあるように笑い 方の激しさという面の方がより強いであろう。また⑧の「走りに走る」も「転がるよう」な激しい 勢いでの走り方であることの表現と言える。⑨「すご糸にすごむ」は動作の継続という面は稀薄 で,もっぱら凄糸かたの激しさを表したものと言えるだろう。

この他「暴れに暴れる」「慌てに慌てる」「はしゃぎにはしゃぐ」「逸りに逸る」「もがきにもが

I土や

く」「沸きに沸く」等も,動作の激しさが中心になると思われる。

【Ⅱ主体変化の動作】

《変化結果の著しさ》

主体の漸次的な変化を表す動詞が@型になったものは,変化結果の著しさの強調的表現と解され

る。

⑩日本列島を北へ南へとおいやられ,仲間はへりにへった蒸気機関車たち(常紋トンネル)

⑪荒ぴに荒んで,無心に光る蛍をさえ`憎む。(局限のなかの人間)

⑫(引用者注:ヨーロッパの野菜の種を日本で蒔いたところ)芽を出したまではよかったが,伸

びに伸び,太りに太り,特徴だったほろ仁がふむ香気もjZAんなどこかに四散して,脈ぬけに なってしまったと一度,聞かされた。(曰本人が外に出るとき)

⑬時代は変りに変った。(シベリア鉄道9400キロ)

同様のものとして「遅れに遅れる」「乾きに乾く」「茂りに茂る」「濁りに濁る」「曲がりに曲が る」「痩せに痩せる」等が考えられる。

(5)

【Ⅲ対象変化他動詞】

《変化結果の著しさ》

この種の動詞は主体運動と対象変化の二つの側面を持つが,①型として用いられた場合,対象の 変化結果の著しさに重点があるようである。

⑭絵の具のチューブをおしだすように,練りに練られた泥がいくらかの水といっしょにヌラリと

出た。 (日本三文オペラ)

⑮ソースは一般に,材料を煮こみに煮こんでつくられる。当然その加熱によって栄養素の多くは

失われている。 (丸元淑生のシステム料理学)

⑮「拡」は「新聞販売拡張員」をけずりにけずったものであり,「イ」は「美容インターン」を極 限までけずったものなのだ,さ・すがにこれ以上はだれにもけずることができないにちがいない。

(東京ブチブチ日記)

⑭は,溺死体の飲象込んでいた泥が,まるで丹念に練り上げたようにきめ細かく粘りけのあるざ まの表現で,比楡的ではあるが,「練る」ことによる変化結果の著しさの表現と把握できる。⑮は,

「その加熱によって~」以下の記述からしても,「煮込む」ことの結果として生じた,調理材料の性 質・栄養素等の変質の著しさに重点が置かれた表現と取るのが適切であろう。⑯は新聞の求人欄の 用語が極端に短く切り詰められていることを述べたもので,やはり「削る」ことによる対象の変化

の結果の著しさの表現である。

同様のものとして「鍛えに鍛える」「砕きに砕く」「ちぎりにちぎる」「縮めに縮める」「ひねりに ひねる」「拡げに拡げる」「減らしに減らす」「承がきに糸がく」等が考えられる。

【Ⅳ状態招来行為の動詞】

漸次的・過程性を持たない「状態招来行為の動詞」のうち,特に持続性のない「死ぬ」「生まれ る」「結婚する」「入る」「着く」の類はこの形を取りにくいようで,多数の主体の動きを表す場合で でもなければ「死にに死ぬ」「消えに消える」といった形は考えにくい。

一方持続'性を有するものは

⑰眠りに眠って夕方,目をさますと(曰本三文オペラ)

のような状態の持続を表す場合もあるようである。

【V単純状態の動詞】

動詞にはI~Ⅳの他にアスペクトの対立・分化を持たず,単なる状態を表すものがある。この種 の動詞には③「有ル,居ル」のようにテイル形を持たないもの,⑥「スグレル,似ル」のようにテ イル形だけのもの,。「似合ウ,劣ル」のようにル形とテイル形がアスペクト的対立をなさないも

のがある。

@のようなものが。型になることはまったく考えられず,⑥、に属するものも多くは‘型になら ないようであるが,次のような例は考えられる。

⑱この作品は凝りに凝っている。(作例)

のような場合,「擬ル」は⑤のテイル形で単なる状態を表すものと考えられ,「凝りに凝(ってい)

る」は作品の状態の著しさを表すものと解される。

(6)

以上をまとめると,‘型は動詞が【主体運動の動詞】の時は《動作の継続・反復》《動作の激し さ》を,【主体変化の動詞】【対象変化の動詞】の時は《変化結果の著しさ》を表し,【状態招来行為 の動詞】で持続'性を有するものでは《変化の持続》を表す場合が,【単純状態の動詞】では《状態の 著しさ》を表す場合があるということになる。

上の意味の中で《動作の継続・反復》は「動作の時間的累加」,《動作の激しさ》は「動作の程度 的累加」,《変化結果の著しさ》は「変化結果の累積」,《変化の持続》は「変化の時間的累加」と言 い換えることもでき,そうなると①型の意味は「動詞の表す意味の累加,累積」という点でほぼ共 通すると言うことができよう。

なおこの「二」は副詞語尾的な格助詞とする見方と,国立国語研究所l951のように「アンパンに キャラメル」等の「二」のような事物を累加的に列挙する並立助詞とする見方があるが,並立助詞

とした場合,英語の

⑲Hetalkedandtalkedandtalked

⑳Theyknockedandknocked

のような同じ動詞をandで結ぶ形が連想される。RQuirk他1985によるとこのような形は``the ideaofarepeatingorcontinuingprocess,,を表し,⑲は``Hetalkedforaverylongtime,,と,

⑳は“Theyknockedrepeatedly,,と同義であるという。なお⑲のように動詞が三回繰り返される形 があることは,①のようなめ型で動詞が三回繰り返される例の存在と比べて興味深い。一方宛型で は詩のリフレインででもない限り,「*男泣きに男泣きに泣いた」「*ひた走りにひた走りに走っ た」といった形は考えにくい。

このような英語の「V+and+V」との類似性や,前記の「累加・累積」という意味上の共通 点は,‘型の「二」を並立助詞とする見方を有力なものと思わせる。しかし半面,「結果の副詞」を

(5)

取り得る動詞と‘型になった場合変化結果の強調的表現になる動詞がほぼ共通のものであること は,‘型の「二」と情態副詞語尾の「二」との類似'性を思わせ,にわかに断じ難い。

3%型a類

1-1で述べたように,,c型a類はめ型と置き換えても意味の上でさほど相違が生じない。例え ば次のようなものである。

⑪海が大荒れに荒れて潮が逆流してきたりすると(街道をゆく9)

⑳「(引用者注夜尿症を)ひた隠しに隠して,中学三年までやっていましてね。

(男たちの真剣おむしろ話)

⑪の「大荒れに荒れて」は,‘型の「荒れに荒れて」と比ぺて「荒れる」動作の激しさという点 で共通'性があって置き換えが可能だし,⑫の「ひた隠しに隠して」はめ型の「隠しに隠して」と比 べて「隠す」ことに専念するという動作主体の心的態度が強調されている面はあるが,「隠す」動作 の継続という点では共通'性がある。

兀型a類に属するものは,このように動作の継続・反復,激しさ,変化結果の著しさといった点

(7)

で,‘型と共通の意味を有するものと理解できよう。なおx型a類にはある程度の生産性を有する もの(あるいは過去に有したもの)が多いが,これは上記のような意味と動詞の重複形式との親近

(6)

'性によるものであろう。

一方a類以外の,の型との置き換えがきかないものをb類と呼ぶ。

⑳男泣きに泣いても(新生)

これを「泣きに泣く」と置き換えることはできない。これらb類はa類と比べより具体的な意味 に関わるものが多く,また慨してjcと動詞との結合が「男泣き」のように固定的で生産性に乏しい。

これらb類については稿を改めて論じたい。

以下現代語で,c型a類に相当すると思われるものを見ていく。

オオ

(1)「大一」

現代語の妬型a類の中では比較的生産力のあるものと思われるが,この型で用いられる動詞は主 体運動の動詞がほとんどで,それ以外の種類の動詞では対象変化の他動詞の「大まけにまける」が

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考えられる程度である。

【I主体運動の動詞】

《動作の激しさ》

⑳平地に波潤を起して,勘てじぶくツて,大泣きに泣いて,そうしてお祖母さんに御機嫌を取っ て貰う。(平凡)

⑳阪妻が今,大受けに受けるのであります。(男のポケット)

⑳その計画を知った母親は大あわてにあわてて (無印良女)

この他「大あばれにあばれる」「大もてにもてる」「大揺れに揺れる」「大笑いに笑う」等も同様の ことが言える。

【Ⅲ対象変化の他動詞】

《変化結果の著しさ》

現代語でこれに属するのは「大まけにまける」だけのようである。値段という対象の属I性の変化 結果の著しさを表すものと考えられる。

⑰百ずつ下げていっても仕方がないから,大まけにまけてこれが三箱で千新円。(百貨売)

(2)「ヒター」

【I主体運動の動詞】

《動作の継続》

中世後期には盛んに用いられた形であるが,現代語では「ひた隠しに隠す」(前掲⑳の例)「ひた 走りに走る」が主なものであろう。いずれも主体運動の動詞であり,また人間の意思的動作を表す 動詞である。

⑳自動車は北西に向って,ひた走りに走る。 (サルが木から下りる時)

動作主体の心的態度としては「動作への専念」という面も指摘できるが,動作`性に着目した場

(8)

合,動作を中断せずに継続することの強調的表現と言えるだろう。ただ「ひた走りに走る」「ひた押

(8)

しに押す」は,動作の激しさとし、う面もあろうか。

(3)「イヤー」

【I主体変化の動詞】

《変化過程の進展》

上代,平安時代初期にはかなりの生産'性を持っていた型だが,現代語では動詞との結びつきは限 られており,殆ど「いやましに主す」だけに固定している。

⑳自派の主張の正当性と真実性への信仰はいや増しに増すばかりであろう。(中核vs革マル)

○型で数量・程度の増加を表す動詞が。型で用いられた「増えに増える」(「増しに増す」はいさ さか言いにくいが)等と比べて,変化の経過よりも変化の進展する過程に重点があると思われる。

(4)「一統ケ」「-通シ」「-ヅメ」

継続を表す補助動詞の類が伴うものを一括して挙げる。

【I主体運動の動詞】

《動作の継続》

⑳夕べから飲永つづけに酒でも飲んでいるのか(アメリカそれから)

⑳岸本には七年の月曰が経った。その間,不思議なくらい親しいものの死が続し、た。……彼のた

ゆすぶ

ましいIま揺られ通しに揺られた゜(新生)

⑫ここでも店内のスピーカーが喋り通しに喋ってゐる。(断然欠席)

⑬旧暦九月の半ばに昼夜兼行で江戸を発つから,十月半ばに近くの木曽の西のはずれにたどり着 くまで,ほとんど歩きづめに歩き,働きづめに働いて,休息することを知らなかった。

(夜明け前)

⑭研究室で老へるくらゐぢや足りないので,行往座臥,考へづめに考へてなくちやいけない。

(男のポケット)

「一通シ」は,一定の期間(⑪は「七年間」,⑫は店に入ってから出るまで)終始継続するという ニュアンスが強く,「-ヅメ」は,心身の負担になるような行為を,長い時間休まずにあえて続ける 場合に使われるといった相違点はあるが,いずれも動作の継続を強調的に表しているという点では 共通している。

【Ⅱ対象変化の他動詞】

《動作の継続》

「切り続けに切る」「磨き続けに磨く」等が考えられるが,いずれも対象の変化には重点はなく,

主体の動作の継続を表すものと考えられる。

【Ⅲ状態招来の動詞】

《状態の持続》

状態招来行為の動詞のうち,持続性を持たない「死ぬ」「着く」「卒業する」等とは結びつかない

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ようだが,持続'性を持つ動詞とは結びつき得る,その場合《状態の継続》となる。

⑮曰カミな一日彼は真実の休息を知らなかった。立ち続けに立っているような気がした。(新生)

ほんとう

他に「立ちづめに立つ」「座りつづけに座る」等も考えられる。

(4)「-放題」

本来恋意性にまかせ制限しないといった具体的な意味が濃厚とも思われるが,動作性に着目した 場合,動作の継続・反復や激しさ,変化結果の著しさにもつながってくる。

【I主体運動の動詞】

《動作の継続・反復》

⑳先生は私を脳の悪い子だと思って休承放題に体ませ(銀の匙)

⑰庶民は陰間茶屋やら何やらで遊びぼうだい遊んで (悠々として急げ)

⑳は「休む」ことを制限されずに継続・反復すること,⑰はそれに加えて「遊ぶ」ことを激しさ という面もあろうか,他に「甘やかし放題に甘やかす」「飲承放題に飲む」などが考えられる。いず れもマイナスの価値判断がともなっており,また動詞は努力や労力を要しない行為を表すものに限

られる。

【Ⅱ主体変化の動詞】

《変化結果の著しさ》

⑳例外なのは髪の毛で,これだけはくろぐろとのびぼうだいにのびていて(硫黄島)

⑳庭は荒れ放題に荒れていた。 (作例)

いずれも変化結果の著しさを表すものと考えられるが,この場合もマイナスの価値判断が伴って

いる。

4おわりに

以上,「動詞十二+動詞」型の中ので‘型・妬型a類について考察を加えてきたが,@型.x型a 類それぞれに用いられ得る動詞・用いられ得ない動詞,「強調」が動きの過程・結果等のどの局面 に働きどういう意味を強調するかを動詞の種類別にまとめると,大体次掲の表のようになろう。意 味上類似性のあるの型とjc型a類だが,共通点とともに多くの相違点もあることが分る。

「結果の副詞」を取り得る動詞とめ型や,c型a類になった場合《変化結果の著しさ》を表し得 る動詞とはほぼ共通しているようだが,これらの型の「動詞十二」「,c+動詞+二」の部分が下の動 詞に対してどのような関係にあるかは,兀型b類の場合も含めて更に考えていく必要がある。特に の型の「二」が副詞語尾的な格助詞なのか並立助詞なのかは,の型と妬型との同質性を認めるか否 かに関わる大きな課題である。

動詞の種類別に見た場合,特に注目されるのは【主体変化の動詞】と【対象変化の動詞】である。

兀型a類では,‘型と比べて【主体変化の動詞】【対象変化の動詞】が用いられることが少ないのが 目につく。【主体変化の動詞】は「-放題」と「イヤー」に用いられるだけであり,【対象変化の動

(10)

詞】に至っては「大一」の「大まけにまける」が考えられるだけである。

また,【主体変化の動詞】【対象変化の動詞】を用いて主体・対象の変化の過程を強調するような 表現が,x型a類・‘型ともにほとんど見られない。これに該当するのは「イヤー」だけであり,

しかも前述のように現代語ではこの型で実際使われるのは「いやましにます」くらいである。古代 語で盛んに用いられている「イヤー」・「タダー」では,動詞が【主体変化の動詞】【対象変化の動 詞】である場合《変化過程の進展》の強調的表現になる(近藤明l993b)ことと比べて大きな違い であり,「動詞十二+動詞」型の歴史的変遷を考える際の視点として興味深いことと思われる。

[]内は一部の動詞のみ可能なもの

(1)「二」の前の動詞は居体言と見るのが適切と思われ(関谷浩1971,白藤礼幸1982等),正確には「動詞(連用形)

相当の外形を有する語」とでも言うべきであろうが,煩雑になるのを避け,ここではそのような意味合いも含めて

「動詞」と呼ぶこととする。

(2)この名称は類似の外形を有する,U型の「苑」に相当する部分を持たないという現象面に着目してのもので,型 と。型が同質的なものであるが杏かについての積極的な判断を示すものではない。)

(3)古代語ではやや不確実な例ながら「……など言ひてねにねぬ」(蕗窪物語巻四)という-音節動詞の例がある。

(4)「我慢に我慢する」「気兼ねに気兼ねする」のような「語幹十二+語幹+スル」の形は,サ変複合動詞のの型に該 当する形と考えられる(近藤明1993a参照)。

(5)○型の意味・用法は古代語もほぼ同様と把握できる(近藤明1993b・山口康子1978も○型を「累加型」として把握 している)が,森野宗明1973によると並立助詞としての「二」の確立は中世末期で,一見並立と見えるものも情態修 飾的なものであるという。そうなると古代語の‘型の「二」については並立助詞と考えるのは難しく,むしろ山田 1936の言うように状態副詞語尾的なものということになる。

(6)ESapirl921では「重綴法」は一般的に「分布,複数,反復,習慣的活動,大きさの増加,強度の増大,継続など の概念を表示する」(泉井久之介訳p71)という。

(7)「大一」が盛んに用いられた江戸時代~明治初期頃には,主体変化の動詞を用いて変化結果の著しさを表した例 がある。

「久しく便りをしませなんだが,替ることはございませぬか」(中略)「替るとも替るとも,大替り仁替つたわ」

(黙阿弥島衞月白浪)

(8)研究社『新英和大辞典』では「ひた走り」ないし「ひた走りに走る」を「runningwithoutstopping」「runas

10-

主体運動 主体変化 対象変化 状態招来 単純状態

d型 継続・反復

激しさ 結果の著しさ 結果の著しさ [状態の持続] [状態の著しさ]

jC

類 大一

ヒター

イヤ 一統ケ ー通シ

-ヅメ

-放題

激しさ 継続・反復

激しさ

継続 継続・反復

激しさ

過程の進展

結果の著しさ

[結果の著しさ]

(主体動作の)

継続・反復 [状態の持続]

(11)

fastonecan」「runforalloneisworth」等と訳している。

参考文献

○青木伶子1964「二とへ」(『講座現代語6口語文法の問題点」明治書院)

○奥田靖雄1977「アスペクトの研究をめぐって-金田一的段階一」(「宮城教育大学国語国文」8)

○国立国語研究所1951「現代語の助詞・助動詞一用法と実例一」(秀英出版)

○小泉保他(編)1989『日本語基本動詞活用辞典』(大修館書店)

○近藤明1993a『動詞十二+動詞」型における動詞の重複範囲一『ひたぎりにきりおとす』

『ただあしにあしうなる」等一」(『国語語彙史の研究13』和泉書院)

○近藤明1993b「『強調』の『動詞十二+動詞」型一①型と「イヤー」型「タダー」型」(『語源探求4』明治書院

く予定>)

○関谷浩1971「『ただあきに』の構成について-『ただ」は、はたして副詞か-」(国学院大『国語研究』31)

○白藤礼幸1982「古代の文法Ⅱ」(築島裕編『講座国語史4文法史」大修館書店)

○仁田義雄1982「動詞の意味と構文一テンス・アスペクトをめぐって-」(『日本語学』1-1)

○仁田義雄1983a「結果の副詞とその周辺一語彙論的統語論の姿勢から-」(渡辺実編『副用語の研究』明治書

院)

○仁田義雄1983b「アスペクトについての動詞小レキシコン」(『ソフトウェアのための日本語処理の研究5』情報

処理振興事業協会)

○松村明(編)1971『日本文法大辞典』(明治書院「に」の項の執筆は阪田雪子)

○森野宗明1973「格助詞」(『品詞別日本文法講座9助詞」明治書院)

○山口康子1978「同一動詞反復形式の通史的考察一『に』を介する形式の変転一」(『長崎大学教育学部人文科学研

究報告』27)

○山田孝雄1936「日本文法学概論」(宝文館)

○EdwardSapirl921:LANGUAGEAnlntroductiontothestudyofspeech 引用は泉井久之介訳『言語ことばの研究」(紀伊国屋書店1957)による。

○RandolphQuirk,SidneyGreenbaumGeoffreyLeech,JanSvartvikl985:ACOMPREHENSIVEGRAMMAR OFTHEENGLISHLANGUAGE(Longman)

*本文献は山口治彦氏(本学教育学部助教授英語学)の御示教による。

用例の出典(ほぼ筆者の出生年の順)

二葉亭四迷『平凡』(新潮文庫)/島崎藤村『新生』(新潮文庫)/同『夜明け前」(岩波文庫)/中勘助『銀の匙』

(岩波文庫)/長与善郎「青銅の基督』(新潮文庫)/新田次郎『八甲田山死の祐裡」(新潮文庫)/小池喜孝『常紋ト ンネル』(朝日文庫)/尾)||正二『局限のなかの人間』(筑摩書房)/阿川弘之『断然欠席』(講談社文庫)/安岡章太 郎『アメリカそれから』(角川文庫)/同『サルが木から下りる時」〔角)||文庫)/犬養道子『日本人が外に出るとき』

(中公文庫)/深作光貞『日本人の笑い」(玉川大学出版部)/司馬遼太郎『街道をゆく9』(朝日文庫)/菊村到『硫 黄島」(新潮文庫)/丸谷才一『男のポケット』(文春文庫)/宮脇俊三「シベリア鉄道9400キロ」(角川文庫)/開高 健『日本三文オペラ」(新潮文庫)/同「悠々として急げ」(角川文庫)/井上ひさし「同業者」『井上ひさし笑劇全集

(下)』(講談社文庫)/丸元淑生「丸元淑生のシステム料理学」(文春文庫)/東海林さだお「東京ブチブチ日記』(文 春文庫)/立花隆『中核vs革マル」(講談社文庫)/椎名誠『男たちの真剣おもしる話』(角川文庫)/かんくむさし

「百貨売」『SF街道=人旅』(徳間文庫)/群ようこ『無印良女」(角川文庫)

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参照

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