運転中の対話によるマインドディストラクション状 態の量的計測
著者 浅野 陽一
著者別名 Asano, Yoichi
雑誌名 博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査
結果の要旨/金沢大学大学院自然科学研究科
巻 平成20年6月
ページ 18‑23
発行年 2008‑06‑01
URL http://hdl.handle.net/2297/26788
氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目 論文審査委員(主査)
論文審査委員(副査)
浅野陽一 博士(工学)
博甲第940号 平成19年3月31曰
課程博士(学位規則第4条第1項)
運転中の対話によるマインドデイストラクション状態の量的計測 山崎俊一(自然科学研究科・客員教授)
内山吉隆(自然科学研究科・教授),押野康夫(自然科学研究か.客員教授),
藤川達夫(自然科学研究科・客員准教授),岩井智昭(自然科学研究科・講師)
1.EngIishSummery
Measurementofminddistractioncausedbyconversationwasexaminedunder
threeconversationconditions(routeguidancecondition,mentalarithmetic conditionandshadowingasacontrolcondition).Therouteguidancecondition
wassetupaslowsubjectivementalworkloadlnotherword,itmeansthatdriver isdifficulttonoticetheirdistractedstatethemselves・Duringtheexperiment,incrementofgapbetweenbotheyesgazepointswasobservedduringtheroute guidanceconditionFurthermore,driversperceptionperformancetosmall visualstimuluswasdeclinedwhileinthesamecondition・Astheresultof investigationaboutcerebralfunctionwhilethegapwasincreasingbymeansof
fMRI(functionalMagneticResonancelmaging),driversvisualfunctionwas
declinedinthestate・Therefore,itcanbeconsideredthatthedriversdeclined perceptionwascausedbythedeclinedonesvisualfunction・Fromtheseresults,theminddistractionthatdriversarehardtonoticethedistractedtheirstate themselvescanbequantitativelymeasuredbymeasurementofthegapandtheir perceptionperformancetothesmallvisualstimulus・
Theseexperimentswereoperatedonstraightroads,However,manytraffic accidentsareoccurredinaroundintersections・But,drivingsimulatorsmduce driverserioussimulator-sicknesswhenrepeatingleftandrightturnmaneuver、
Therefore,investigationoftheminddistractionatintersectionisneeded withoutserioussimulatorsickness・
Inthispaper,simulationmethodstoreducethesicknesswere investigatedbymeansof4typesofsimulationmethodsinadditionto aforementionedresearch・Astheresultofdrivingwithcityareadatabase included8intersections,themethodwhosecabincanturnforyawdirection independentlyinsideofroundscreenwasthelowestsubjectiveevaluation Furthermore,itcanmakedriverssightbehaviorclosetoreal-worldcase.
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2.和文要旨
運転中の携帯電話の発信・受信操作や側道への脇見など,視覚的な要因によるデイ ストラクション(注意分散)に限らず,携帯電話の通話や考え事などの思考によるドラ イバの処理資源の減少(マインドディストラクション)が問題となっている.先行研究 の多くは主観的な心的負荷がマインドデイストラクションを引き起こすと考えてき たが,交渉事のような難しい対話よりも日常的な簡単な対話のほうがドライバに与え る影響が大きいという報告もある.また,記憶したことの再生や,空間的な想起を伴 う対話時にドライバへの影響が大きいとする報告もある.すなわち,高い負荷だけで はなく,例えば楽しい対話のように,自身のマインドデイストラクション状態に気づ きにくい状況においても危険性が潜むと考えられる.このような背景から,近年,運 転中のマインドディストラクションに対する適切なタイミングの警報装置や音声コ マンド操作による将来の車室内装置の事前評価などのため,マインドデイストラクシ ョン状態の量的評価が行われつつある.しかしながら,マインドデイストラクション が運転行動に対して様々な影響を与えるとする先行研究はあるが,その発生メカニズ ムを説明した根拠のある評価指標は十分とは言えない.
本研究では,ドライバが自身で気づきにくいマインドディストラクション状態を量 的に評価するため,運転に重要な'情報入力機能である視覚機能に着目した根拠のある 指標を見いだすことを目的とした.そのため,対話状況の模擬として,多くの先行研 究で使用された負荷の高い対話を模擬する課題である暗算課題に加え,心的負荷のさ ほど高くない対話として,通勤経路のような日常的に移動する経路を説明させる経路 説明課題を設定した.すなわち,経路説明時のドライバのマインドディストラクショ ン状態の評価指標を見いだすこととした.
実験1では,簡易型ドライビングシミュレータによる先行車追従課題において,経 路説明課題を実施し,主観的な心的負荷が必ずしも高くないにもかかわらず,周辺へ の検知能力が低下し,「ドライバが自身のマインドデイストラクション状態に気づき にくい状態」が起こりうることを確認した.さらに経路説明中は,ドライバの両眼 注視点が左右に広がる現象,すなわち本研究でいう注視点ギャップが観測され,本指 標によるマインドデイストラクション状態の量的評価の可能性を示唆した.また,注 視点ギャップは視対象に向けて一点に集中していた注視点がずれる現象であるため,
ドライバの視覚機能の低下が予想された.
続く実験2では,視覚」情報がより実車に近い広視野角ドライビングシミュレータに よる先行車追従課題において,実験lで観察された注視点ギャップの再現性を検証す ると共に,対話が運転行動に与える影響を調査した.そのため,ドライバの十分な視 覚機能を必要とする運転課題として,先行車の非常に緩やかな減速を含む先行車減速 イベントを設定し,ドライバの運転行動を調査した.その結果,経路説明時には,注 視点ギャップが増大すると共に,視覚刺激の弱いo,19以下の先行車減速に対しての み,ドライバのアクセルオフのタイミングが遅延した.本実験によって,より実車運 転状況に近い広視野角ドライビングシミュレータにおいても注視点ギャップの発生 を確認すると共に緩やかな先行車減速のように,弱い視覚刺激に対するドライバの 運転行動が遅延することがわかった.すなわち,注視点ギャップ発生時には,前方の 明視が困難になることが改めて示唆され,その結果,視覚的な刺激の弱い交通状況へ
の対応に影響が現れたと考えられる.実験2の対話による運転行動への影響調査において,緩やかな先行車減速のよう
に,弱い視覚刺激に対する運転行動が遅延することがわかった.そこで実験3では,
これをより簡便な手法に置き換える方法を検討した.具体的には,実験2における「非
I
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常にゆっくりとした先行車の減速」に対応する反応ターゲットとして,十分な視覚情 報処理が必要な「ゆっくりと輝度が上昇」するLEDを用い,反応時間計測による簡便 なマインドデイストラクション状態の評価指標を検討した.その結果,実験2の経路 説明時に生じるアクセルオフタイミングの遅延と同様に,視覚刺激の弱いLED発光に 対してドライバの反応時間が遅延し,反応時間計測による簡便なマインドディストラ クションの量的評価の可能」性を示唆した.
実験1から実験3では,ドライビングシミュレータを用いた室内実験においてマイ ンドデイストラクション状態の評価指標を検討した.実験4では,これまでに得られ た評価指標について,実路走行場面における適用可能`性を検討した.その結果,注視 点ギャップ,およびゆっくりと輝度が上昇するLEDに対する反応時間計測いずれを用 いても太陽光やドライバの頻繁な周辺への視線移動によって,マインドデイストラク ションの評価は困難であった.すなわち,両指標は,ドライビングシミュレータのよ うな限られた室内実験環境におけるマインドデイストラクション状態の評価指標と
考えられる.以上の実験1から実験4まで,マインドデイストラクションの有力な評価指標とし て,注視点ギャップおよび注視点ギャップから派生した反応時間計測に関する検討を 行ってきた.しかし,注視点ギャップの医学的な根拠や,経路説明時に視覚'情報の取 得と処理能力が低下するという仮説の妥当性については明らかではなかった.そこ で,続く実験5および実験6では,これらの疑問を明らかにし,根拠のある評価指標 の確立を目指した.
実験5では,注視点ギャップの医学的根拠を明らかにするため,眼科的な眼位(個 人ごとに有する眼の向き)の測定手法であるプリズムカバーテストを実施した.その 結果,注視点ギャップは6本の眼筋でバランスされた眼位に近づく現象であることが 明らかとなった.眼球コントロールを司る脳領域は,視覚探索などの空間的注意の制 御機構とも係わっているといわれている.本研究で設定した空間的な想起を伴う経路 説明によって,この脳領域によるコントロールが乱れ,注視点ギャップが発生した可 能性を示唆した.
そこで,実験6では,仮説として設定した注視点ギャップ発生時の視覚的な情報の 取得と処理能力の低下について,fMRIによる一次視覚野近傍の脳活動レベルを調査 した.その結果,空間的な想起を必要とする課題の遂行時には,顕著に-次視覚野近 傍の脳活動レベルが低下した.すなわち,経路説明時には前方の映像を明視できてい ない可能性が高いことを示した.
以上のことから,本研究において,ドライバが対話による自身のマインドデイスト ラクションに気づきにくいにもかかわらず,反応が遅延するといった状況を模擬し,
そのマインドデイストラクション状態を量的に評価するための,発生メカニズムを説
明した根拠のある指標を見いだした.すなわちE」に示す:主つに:_想起iを必要≧丈一
る経路説明時には,中枢性のコントロールの乱れによって注視点ギャップが発生し,
同時に視覚的な情報処理能力も低下する.その結果,ゆっくりと減速をする先行車や ゆっくりと輝度が上昇するLEDに対する検知が遅れる.以上のことから,注視点ギャ ップおよびゆっくりと輝度が上昇するLEDに対する反応時間計測は,医学的な根拠に 基づくマインドデイストラクション状態の量的な評価指標といえる.
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----ディストラクション
グ ノ
、
、
ピジュアルディストラクション
運転に必要な注視の減少
脇見思考
(脇見なし)
(例)経路説
LH点垢'
視覚情報処理 中枢性の乱れ
個人固有の眼の向き 脳の視覚情報処理能力低下
ツ誰転
低視覚刺激の検知能力低下
・先行車緩減速に対するアクセルオフタイミングの遅延
⑭
鰯有効なマインドディストラクション評価指標
図1有効なマインドディストラクション状態評価指標と その発生メカニズム(根拠)
以上の実験は,ドライビングシミュレータおよび実路における直線路にて行ってき た.直線路のみで実験を行った主な理由は,単純な交通環境を設定することでドライ バの運転行動をシンプルにし,評価指標を見いだしやすい状況にするためであった.
さらに,ドライビングシミュレータは交差点の右左折を繰り返すことによって強いシ ミュレータ酔いが発生することも大きな理由の一つであった.しかし,現実には多数 の事故が交差点付近で発生しており,対話による運転行動の影響や,今後の増加が予 想される音声コマンドによる車室内装置の安全性評価において,直線路だけではなく 交差点付近の調査が重要であることは明らかである.
そこで本研究では,将来的に必須になると予想される交差点付近におけるマインド ディストラクションの評価方法を確立するために,交差点付近での実験を被験者の大 きな負担なく行えるドライビングシミュレータについて検討した.すなわち,ドライ
ビングシミュレータの問題点である交差点右左折によるシミュレータ酔いを低減し,今後の研究に耐えうるハードウエア作りの基礎的知見を得た.
酔いのメカニズムは十分に解明されていないが,一つの有力な説として,今までの
経験と現在の感覚に不一致が生じ,酔いが発生するという「感覚不一致説」がある.ドライビングシミュレータでは,ヨー方向の旋回を映像風景の左右の流れとして模擬
するため,ヨー方向の体感が現実の運転とは異なる.また,映像風景の左右の早い流
れは,現実の運転では生じない映像のちらつきやにじみを発生させ,視覚の点でも現 実とは異なる.実験7では,これらの感覚の不一致を改善する模擬方式として,スクリーン内部で 運転席が独立してヨー回転する回転型ドライビングシミュレータを提案し,その有効
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性について,従来の定置型ドライビングシミュレータと比較した.その結果,回転型 ドライビングシミュレータは,旋回の模擬を映像ではなく運転席部自体を回転させる ため,映像のにじみによる映像品質の劣化を防止できると同時に,体感の向上も可能 となり,右左折時の主観的なシミュレータ酔いを大幅に低減した.
実験7では,回転型ドライビングシミュレータによるシミュレータ酔いの改善効果 が,ドライバにヨー方向の体感を付与したことによるものであるのか,または映像品 質の劣化を防止しためであるのか,その主要因は不明であった.そこで,実験8では,
旋回の模擬方式を4種類に変更できる装置を製作し,回転型ドライビングシミュレー タによる酔い改善の効果を明らかにした.すなわち,①映像品質の劣化が生じ,体感 も得られない方式(定置型),②映像品質の劣化は生じないが,体感が得られない方式 (プロジェクタ群回転型),③映像品質の劣化は生じるが,体感が得られる方式(両回 転型),④映像品質の劣化が生じず,体感が得られる方式(運転席部回転型)の模擬に より,回転型ドライビングシミュレータによる酔い改善効果の寄与度合いを調査し た.その結果,ドライバにヨー方向の体感を与える(両回転型)ことによって,主観的 な酔いの低減が可能であり,体感と同時に映像品質の劣化を防止する(運転席部回転 型)ことによって,さらに低減が可能であることがわかった.また,ヨー方向の体感 を与えることによって,ドライビングシミュレータを運転中の視線移動パターンが実 車による右左折時のパターンに近づくことがわかった.
以上のことから,最も主観的な酔いを低減し,かつ,より実車運転時の視線移動パ
ターンに近づけることができるシミュレータ模擬方式は,図-2隆云す運転席部回転型一一
ドライビングシミュレータ(実験7における「回転型ドライビングシミュレータ」)
であることがわかった.
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運転席部の回転による ヨー運動の模擬 CGによる併進運動の模擬
一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
lCGによるヨー運動の模擬が不要|
(映像品質の劣化防止)
0-------------------------------- ̄U
図2右左折時の酔いを最も低減する運転席部回転型による模擬方式
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学位論文審査結果の要旨
当該懲煙論工隆関上笈1-悪成ユSL集1HaQ且に篭JL回審査委員会塗開催上盗.提出蔓延迄 論X撞主.α関連資撒にnkK議紙』こ』童討.L左1-要成ユa集ユーHaL且@目頭j蓋菫殿2-第2回 審査i委員L含塗開催と1-慎重!≦鰯議Q結果2-以王n通、判崖L迄2----------
-杢論Xl主!…」f乏弘岱丞zfZ-E量iZi上宣玄ヱョヱー(MQjL汰態に気づき』三量.1Mt態塗 量的1二j薑PM1H式量二・≧撞圭ZKZ三畠Lf=ごz量酔い塗J1哩鰄式量ニーと、塗貝的上上進jM)Lri迄畳譽一 一泰』iHi寵宣煙,…MMi:態1皇気づ劃三式・Mt態塗j霊i{m1i式量ため貼窒間飽なj雷M髪Lを催。心的負 撒囚低111戯誌課題と上預通勤経j1髄i;ji姐壹辻払_視覚機能に責且LL迄根拠QjjbL量指標童殿]
だL左1-腹Zffざの心的負荷溌低食、)し反応懇j驫延式量:-M、斌態臆気づきl三宝.!』状態(Zごi 煙雨服Q注視哀。=j學ノtLLl1iii増太士重鳧一注視点差.:YMZの発生≧_同謄}皇脳@t見覚j責i報処醗助 溌低xL4-ZZ迄卿j鑿f匡溌遅延丈量などQ有Fi雄jfq具を見世・L2-注視哀釜髄以乏鎧主jQiLZ 庭睦間計測魁…屡裳l』jll三掻拠Qiji?ゑMpL状態の彙飽な譲価指|霊煮迄量上lL1z量呈と塗丞比 迄:…ま_た2…貞動事J9P)壷全砥褒に用141巨妊、.)箆薑E三ゴーごZZヱニ晶膣罵久」p貝ノーQZ三・
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