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濫用的会社分割における残存債権者の直接請求権

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Academic year: 2021

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濫用的会社分割における残存債権者の直接請求権

一「害することを知って」会社法からのアプローチ

〈 目 次 > 1.問題の所在

2.濫用的会社分割における残存債権者の救 済についての判例

3.平成16年破産法改正と民法改正案 4.濫用的会社分割にかかる直接請求権の解

5°残された問題

1.問題の所在

いわゆる会社分割制度は平成12年商法改正 で導入され,会社法にも継承された。会社法 は,後述の通り,この制度にかかる規制を大 幅に緩和したため,同制度とりわけ新設分割 は企業再生の方法として多く利用されるよう になった。しかし,会社法の規制緩和は,同 制度の濫用の危険が増加し,一部の債権者を 害することになると批判された。

この問題に関する会社法と商法(第2編会 社)との差はおおむね次の通りである。すな わち,①商法では,分割の客体は「営業」で あることを要するのに対し,会社法では「権 利義務の全部または一部」である。②商法で は分割会社が債務超過ではないことが要件と されていたが,会社法ではこの要件は外され た.'。特に前者は「机一つ,ペン1本でも分 割できる」などと郷撤されながらも,認定の 難しい「営業(事業)」を外したことで,手続 が迅速になった一方,分割会社経営者による 窓意的な「切り分け」を可能にしたのである。

このことは特に,分割会社に残される債権者 (以下「残存債権者」とする)を害する結果 になった。

後述するように(2)判例は,かかる債権 者については,法人格否認ないし詐害行為取 消権(民法424条),事例によっては商法22条

若 色 敦 子

の類推適用などにより救済したが,十分とは 言えず,会社立法による救済が求められてい た。この事情を受けて,平成26年改正会社法 は,一定の場合に残存債権者に新設会社ない し承継会社への直接請求を認める規定を新設 した(759条4項,761条4項,764条4項,76 6条4項)。

この規定は,一見したところ,詐害行為取 消による判例の到達点をそのまま規定したよ うに見える。そのため,同条の「害すること を知って」という要件を,民法の詐害行為取 消権の要件と同様に解釈すべきであるとする 見解がある。しかし,筆者はこの見解に疑問 を抱いている。確かに,「害することを知っ て」の用語は同じであるものの,詐害行為取 消権とはかなり構造を異にしていることに加 え,現在の債権法改正の状況を見る限り,そ の差異は増大している。筆者はこの規定はむ しろ法人格否認の法理の一種の具体化として,

民法ないし倒産法とは別のアプローチが必要 ではないかと考える。

本稿では,以下,当該問題についての法人 格否認および詐害行為取消権による救済が認 められた判例の到達点を確認した後,現在の 債権法改正にかかる詐害行為取消権の規定を 紹介したのぢ2,これと比較することで濫用 的会社分割における直接請求権の要件につい て若干の考察を試みようとするものである。

2.濫用的会社分割における残存 債権者の救済についての判例 (1)法人格否認の法理・3

債務逃れのために別会社を作るという法人 格の悪用は会社分割制度創設以前から存在し ていた。すでに昭和48年,債務逃れないし時 間稼ぎのために債務者会社の営業をそのまま

熊本ロージヤーナル第12号(2016.12)15

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