確認的因子分析のための総合確認システム? : Factormax型解法と総合評価システム
その他のタイトル Synthetic Confirmation System for Confirmatory Factor Analysis II : Factormax solution and the evaluation
著者 柴田 満, 辻岡 美延
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 15
号 1
ページ 145‑186
発行年 1983‑11‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00022771
確認的因子分析のための総合確認システム
1 I
-Factormax 型解法と総合評価システム—
柴 田 満 ・ 辻 岡 美 延
キーワード
確認的因子分析 ファクターマックス回転 斜交回転
Key Words
c o n f i r m a t o r y f a c t o r a n a l y s i s , Factormax r o t a t i o n , o b l i q u e r o t a t i o n
目 次
〔問 題〕・・・・......
• • • • • •
・...... ・..... ・.. ・.. • ・............. ・.. • • • ・........ ・.. • • • ・..・(146)
〔方 法〕・・・・....
• • • •...•.•...••.•.• • • • ••..•....•...• •.• • • • • ••..• •..• • • • • • ••.. (149)
総合確認システム1 解法部門
2 因子得点評価部門3
構造評価部門〔結果と解釈〕
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ( 1 5 8 )
1 結果の解釈上の留意点
2 Pa tternmax
型解法の結果との比較法3
解法部門における一意性4
因子得点評価部門における体系的検討5
構造評価部門における最終チェック〔考察〕・・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ( 1 7 1 )
1 本稿における総合確認システム 2 Patternmax型解法との比較
〔
Factormax
型コンピュータプログラム〕 ... ….........…•••
・・・・..…(173)
〔参考文献〕・・...
••.•....•..••.• ••.. •···• ••.•..••.•..•.• •
・....... •.• ••..•....•(177)
(註)本研究の中心的貢献は,柴田によるものであり,これに辻岡が加筆したものである。
‑145‑
関西大学『社会学部紀要』第 1 5 巻第 1
号〔 問 題 〕
本研究は,先の研究(辻岡・柴田
1 9 8 3 )
において展開したPatternmax
型解法を用いたシス テム化についで,因子分析における重要課題の1
つである因子的不変性( f a c t o r i a li n v a r i a n c e )
の問題を,因子分析モデルにおける因子得点( f a c t o rs c o r e )
の同定性の視点から検討し, これ に基づくシステム化を試みたものである。この因子の不変性に関する問題は,その解法,評価法 の両面にわたって,前論文で述べたような歴史的変遷をたどり,進歩発展をとげてきた。この過 程を通覧すると,研究のいくつかの発展段階が認められる。まず,不変性の評価に因子得点を用 いる立場がWrigley
&Neuhaus ( 1 9 5 5 )
やPinneau
&Newhouse ( 1 9 6 4 )
によって示され,さらに
N e s s e l r o a d e( 1 9 7 2 )
を代表とする縦断的因子分析法( l o n g i t u d i n a lf a c t o r a n a l y s i s )
が登場するにいたった。その後,清水・辻岡( 1 9 7 8 )
によって,横断的研究を対象とするF a c t o r ‑ max
法が提案され,さらに辻岡・柴田( 1 9 8 3 )
によって,Schbnemann( 1 9 6 6 )
やN e s s e l r o a d e
の最小二乗法的手続きを考慮した直交または直交化空間におけるFactormax
型解法が提案され た。本論文は,このFactormax
型解法を,さらに総合確認システムの立場から体系的に展開し ようとするものである。われわれは,一連の共同研究を通じて,確認的因子分析法
( c o n f i r m a t o r y f a c t o r a n a l y s i s )
の体系化を試み,先の論文(第6
作)では,所謂,Patternmax
型解法の体系化を企図したが,今回はその第
7
作として,因子得点行列の同定性の最大化をはかるFactormax
型解法に焦点を あて,その特徴と先のPatternmax
型解法との相違点を明らかにしようと試みた。この
Factormax
型解法のもっとも基本的な立場は,特に実質科学的要請から,因子得点を最 重視するという立場である。なんとなればこの因子得点を基礎として,その後の実質科学的研究 がよって立つ出発点となるからである。すなわち,因子得点こそが因子分析の最終段階において 獲得される個人特性の測度であり,実体( e n t i t y )
としての個人の属性についての測度として,個々人の行動の予測やその後の実質科学的検討の基礎となるということができるからである。
一般に,因子分析モデル公式は,次のような線形モデルを用いて,
(1)
Z=FA'+UD
とあらわされる。ここで,
Z(Nxn
次)は,N
人の被験者(行)とn
個の変量(列)からなる標 準得点行列であり,F(Nxm
次)は,m
個の因子を基礎とする直交または斜交の因子得点行列 である。また,A(nxm
次)は, 直交または斜交の因子パタン行列であり, さらに,U(Nxn
次)は,独自因子得点行列,D(nxn
次)は,独自因子得点を標準化してあらわすための対角の 重み行列である。前論文(辻岡・柴田
1 9 8 3 )
においては,このモデル公式中の因子パタン行列A
についての確 認手続きに重点をおき,Patternmax
型解法(因子パタン行列の類似性の最大化をはかる解法)確 認 的 因 子 分 析 の た め の 総 合 確 認 シ ス テ ム
I I (柴田・辻岡)
とよぶ一連の確認操作のシステム化,コンビュータ化を企図した。因子分析においては,同一変 量バッテリーに関する異なる集団の種々の因子分析解について,不変性確認の必要が生じる場合 が多く,プロクラステス問題も,本来このような目的のために開発されたものであり,必然的に
Patternmax
型諸解法が発展の主流を占めた。このことは, この問題の研究史をみれば明らかであり,
M o s i e r ( 1 9 3 9 ) , Green ( 1 9 5 2 ) , Hurley & C a t t e l l ( 1 9 6 2 ) , Schonemann ( 1 9 6 6 ) , C l i f f ( 1 9 6 6 ) , Browne ( 1 9 6 7 )
など,これら著明な諸研究は,すべて,この
Patternmax
型解法に属するものといえよう。これら因子パタン行列に関する解法が,ほぽ完成の域に達したころ,
Pinneau& Newhouse ( 1 9 6 4 )
は,因子パタンの類似度を基礎とする因子の不変性の定義に疑問を投じた。彼らは, 因 子パタンの類似度を評価し,不変性の指標となるところの一致性係数( c o e f f i c i e n to f c o n g r u ‑ e n c e )
の測度としてのあいまいさを指摘し,これに変わって,W r i g l e y & Neuhaus ( 1 9 5 5 )
によって提案された
2
種の因子分析解における対応因子得点間相関を用いて,因子の不変性を定義 することを主張したのである。この対応因子得点間相関は,通常,同一被験者集団に対する調査 時点(あるいは調査状況)を変えた縦断的資料( l o n g i t u d i n a ld a t a )
において適用可能なもの であり,(2)
CAs=W
メRAB
町=WA'(
上ZA'Zs)w
戸 上FA'Fs
N N
とあらわされる。ここで,
RAB(nxn
次)は,時点A
とB
で実施された同一変量バッテリー間の 相互相関行列であり,前論文の異集団を想定した式との大きな相違点である。また,ZA(Nxn
次;時点A)
およびZs(Nxn
次;時点B )
は,同一被験者集団に対する縦断的な資料の標準得 点行列であり,WA(nxm
次),W8(nxm
次)は,2
種の標準得点行列のそれぞれに対する因 子得点のための標準重み行列である。また,FA(Nxm
次),Fs(Nxm
次)は,各時点のそれぞ れの因子得点行列である。彼らは,この対応因子得点こそ,相関係数という確実な統計的基盤を有する指標であり,先の 一致性係数のあいまいさを克服するものであると主張している。しかし,この指摘は,言うまで もなく, 不変性の評価に関する視座の相違によるものであり,
Patternmax
型解法そのものを 軽視しようとするものではないことに注意を要しよう。なんとなれば,前論文で述べたとおり,Patternmax
型解法を用いても,その評価部門(前論文,辻岡・柴田1 9 8 3参照)において,対
応因子得点間相関を求めることは可能であるし,Factormax
型解法といえども, 因子の心理学 的意味内容を示唆する因子パタンの類似性の評価には,一致性係数を用いることにならざるをえ ないからである。また,先述したように,因子分析における不変性の確認は,異なる被験者集団に対する横断的 な
2
種の因子分析解において要求されることが多く,この場合に対応因子得点間相関の指標をそ のまま適用することは不可能である。そこで,彼らは,異集団の標準得点行列ZA(A
集団),Zs (B
集団)と重み行列WA(A
集団),W
瓜B
集団)を交互に組換えて求められる4
種の因子得点‑147‑
問西大学「社会学部紀要』第
1 5
巻第1
号を比較することを提案した。
すなわち,
( 3 ‑ a ) FA =ZA WA ( 3 ‑ b ) FA =ZA WB ( 3 ‑ c ) FB=ZB WB ( 3 ‑ d ) FB=ZBWA
をそれぞれ求め,
( 3 ‑ a )
式の因子得点行列と( 3 ‑ b )
式の因子得点行列を比較すると同時に,( 3 ‑ c )
式と( 3 ‑ d )
式の因子得点行列を比較し,その類似度を総合的に判断しようとしたものである。し かし,このような手法は,複雑で判断しがたい状況をまねくと同時に,集団の数が増えれば,組 合わせが飛躍的に増大し,不変性の確認はおろか混乱さえきたしかねないのである。辻岡
( 1 9 7 5b )
は,この因子得点による不変性の定義に関して,上記の研究者と,理論的に,かなり異なる視点から検討を進め,この問題に
1
つの帰結を与えた。すなわち,確認的因子分析 の立場から,より安定した因子軸体系を有すると考えられる等質的な大母集団(結絆集団)を設 定し,標本集団をその下位集団として位置づけ,結絆集団の因子軸体系を基準として,標本集団 の因子分析結果の不変性の確認を進めようとしたのである。具体的には,基準となる大母集団の標準得点行列を
ZB
とし,確認を要する標本集団の標準得 点行列をZA
とし,それぞれの因子得点のための重み行列をWB, WA
とするとき, 対応因子 得点間相関を,(4)
CAB= 」-DA-½
町'Z
ぷZB
町=」ー凡' F B
N N
と設定するのであるp このとき,
D
―°;(mxm
次)は基準集団の標準得点行列ZB
と, 標本集団 の重み行列WA
からなる標本集団の疑似因子得点を規準化するための対角行列であり,( 5 ) DA‑t={diag
情W
心' Z B
叱)}―↓であらわされる行列である。また,
FA(NAxm
次)は,規準化( n o r m a l i z e d )
された標本集団 の疑似因子得点行列である。この手続きを一般化すると,標本集団の数がどれだけ増しても,すべてこの基準因子軸体系を 棟的として,この基準因子軸体系の中で,確認作業を進めることが可能となり,先の繁雑さをも 克服することができる。さらに,この手法の本質的な構想は,確認作業の手続きが,本来,なん らかの安定した基準を設定してこそ成しうるものであり,ただその場その場で問題となっている 因子の単なる
matching や f i t t i n g
では解決しえないものであると考えるところにある。辻岡ら
( 1 9 7 9 )
は,この結絆集団を基準集団とする方法を汎基準と呼び,ある特定の集団を基準 とする方法を転移基準と呼んだ。換言すれば,対象となるデータをいかなる集団の枠組でとらえ るかという数学的認識論の上に立ってこそ,問題の定位が明示的に開示されると考えるのである。確認的因子分析のための総合確認システム II
( 柴
Ill・辻岡)
上記のように,因子パタンの不変性の指標である一致性係数の実質科学的解釈上のあいまいさ を克服するため,不変性の評価法の側からの問題提起がおこなわれたが,他方,もう
1
つの観点 から,この因子得点の確認手続きに注目した研究がある。それは,因子得点を用いたプロクラス テス解法に関する研究であり, われわれは, これら一連の手法を総括してFactormax
型解法 と呼んでいる。この解法については,次の方法において詳述にされる。〔 方 法 〕
総合確認システム
本稿において検討される「
Factormax
型解法による総合確認システム」は,F i g .1
に示され るように,3
部門に区別される。前論文と同様に,解法部門から成る「解法システム」と,因子 得点評価部門と構造評価部門の2
部門から成る「総合評価システム」とに2
大別される。1 .
解法部門Factormax
型解法における方法論の展開にあたっては, 確認を求められている各因子分析解 が縦断的研究によって得られたものであるのか,あるいは横断的研究〔辻岡ら( 1 9 7 9 )
は,これ を縦断的研究を含めた広義な立場から交叉断面的研究と呼ぶ〕によって得られたものであるのか に関して留意しなければならない。すなわち, 因子得点行列を用いた最小二乗解は, 基本的に は,同一被験者集団に対して実施された縦断的研究にのみ適用可能な手法であり,調鉦対象の異 なる横断的研究においては,通常,誤差関数を定義しえないと考えるのである。したがって,こ のFactormax
型解法に属する研究は,当初, 縦断的研究を想定して実施されており, その代 表的な手法としてはN e s s e l r o a d e( 1 9 7 2 )
の解法があげられよう。 この手法は, われわれの視 点からすれば,原理的には,前論文におけるSchonemann
のPatternmax
型解法に関する最 小二乗解と同一のものと考えられ,F i g .2
に掲げたモデルで説明されうる。すなわち, 前論文 のSchonemann
の解法の場合には,直交座標上での対応変量ベクトル頂点間のユークリッド距 離の最小化が,その解法の目標であったが,N e s s e l r o a d e( 1 9 7 2 )
の解法は, 同じ<贔支紺械i
において,対応個人ベクトル頂点間のユークリッド距離の最小化をはかっているのである。
解法部門
(解法)
N e s s e l r o a d e ( 1 9 7 2 )
の解法の変法
(相互変換型解法 を、基準時点を決 める転移変換型解 法に修正したもの)
因子得点評価部門
①対応因子得点間 相関
②誤差平方和
③ユークリッド距離
④角度
F i g .
1 Fa c t o r m a x
型総合確認システムの概要‑149‑
構造評価部門
①一致性係数
②誤差平方和
③ユークリッド距離
④角度
関西大学「社会学部紀要」第 1 5 巻第 1 号
彼の論文の主たる眼目は,
C o r b a l l i s & Traub ( 1 9 7 0 )
の解法モデルと正準相関モデルを関係 づけることにあったため,Schonemann
の解法との関係には言及していないが,原理的にきわ めて類似した手法であることは明らかである。すなわち,2
種の直交因子得点を用いた正準相関 モデルは,直交の2
種の因子得点行列をFAo(Nxm
次),Fao(NXm
次)とするとき,( 6 ‑ a ) ( 1 {
凡o ' F A o )
―'(責凡o '
ん ) ( * 凡o '
凡)―1(1rFa
。な)疇
FAo'Fao)(jr
凡o ' F A o )
( 6 ‑ b )
(責F a o ' F a o )
―'(責Fao'FAo)(jr
バF A o )
―1
位F A o ' F a o )
= ( j r F s o ' F A o ) (jr
凡o ' F a o )
となり,同一の直交因子得点の従積率が単位行列(*凡
o'FAo=jr
応o'Fao= 1 )
となることから,下段の簡潔なモデルで表現される。 このとき,
( 6 ‑ a )式および ( 6 ‑ b )
式の下段の正方対称 行列の固有分解(あるいは,H o r s t( 1 9 6 5 )
の基本構造解やEckart‑Young
分解)を,( 7 ‑ a )
責(F A o 1 F B o )( ‑ J r
凡o ' F A o )=P.4P'
( 7 ‑ b )
責(F B o 1 F A o ) ( ‑ J r F A o 1 F B o ) =Q,4Q'
(注)固有ベクトルには,
P'P=PP'=Q'Q=QQ'=I
となる性質がある。とすると, 直交因子得点
F A o , FBo
に関するそれぞれの正方正規直交プロクラステス変換行列TA(mxm
次),TB(mxm
次)が,( 8 ‑ a ) TA=P ( 8 ‑ b ) TB=Q
となることは,正準相関モデルにおける解法手続きからも明らかである。 また, この解の形式
A{i
(注)① ふ〔標本集団の第
i
番目の個人ベクトル,i=l,2・・・・・ •,N〕
③
Bfi (基準集団の第i
番目の個人ベクトル)③
直角三角形e g h
と各座標上における頂点間 の距離j , kの関係は g=j, h=kである。
このとき,座標上の頂点間の距離
j , k
と 頂点間のユークリッド距離eの関係は,e=
四 = 巧 百 面 と あ ら わ さ る ( 三 平方の定理)。したがって,座標上の距離 四 の 最 小 化 が , 頂 点 間 の ユ ー ク リ ッ ド距離e
の最小化に結びつくことがわかる。F i g . 2
対応個人ベクトル頂点間のユークリッド距離確認的因子分析のための総合確認システム I I (柴田・辻岡)
は,前論文で述べた
C l i f f( 1 9 6 6 )
の解と同様の形式であり,誤差行列E(Nxm
次)を,(9)
E=FAoTA‑FsoTB
と設定する相互基準
( i n t e r ‑ c r i t e r i o n )
にもとづく相互変換型解法にあたる。このとき,2
種の 変換行列T A , Ts
に,正規直交条件,U O ) TA'TA=TATA'=Ts'Ts=TsTs'=I
が加わることはいうまでもない。N e s s e l r o a d e
の解法は,上記のように相互変換を想定したものであるが,2
種の直交因子得点 を用い,その対応個人ベクトル頂点間のユークリッド距離を最小化するFactormax
型解法の基 本原理から考えれば,この解法を,基準を決めて回転する伝統的な転移変換型解法に導くことも 可能である。また,実質科学的観点から考えるとき,相互変換型解法の場合,因子の実質科学的 解釈が困難となる場合が多く,この観点からも転移変換型解法の必要性が強調されよう。本稿において提案される転移変換型解法とは,まず基準となる直交因子得点行列を
F s o ,
回転 される標本の直交因子得点行列をF A o
とした場合,誤差行列を,U l l E=Fso‑FAoTi
。と設定し,この誤差行列を用いた従積率のトレースー
‑ t r ( E ' E )
を,変換行列T
。(mxm
次)のN
正規直交条件,
U 2 l T i
。' T i
。=T i
。T
。'=I
のもとで最小化する問題に発想を転換したものである。
また,このとき直交因子得点の従積率が単位行列となることと,
U 2 l
式の条件を考慮すると,誤 差行列の従積率のトレースは,U 3 l
一tr(E'E)=
一t r ( F s o ' F s o ‑ 2 T i
。' F A o ' F s o + T i
。' F A o ' F A o T i
。)N N
=2m- —tr(Ti。'FAo1
2 F s o ) N
と展開される。したがって,この問題における目的関数は,
U 2 l
式の条件のもとで,U4l /(Ti。)=—tr(Ti。'な'Fso)-tr
{ A . ( T i
。' T i
。‑/)}N
と設定され,これを最大化する未知の変換行列
T
。を求めることになる。ここで,A.(mxm
次) は,ラグランジェの未定乗数からなる行列である。この目的関数を最大化するため,未知の変換行列
T
。の各要素で,/ ( T i
。)を偏微分し,その結 果をすべて0
とおくと,U 5 l
鱈 = 上a r i
。N F A o 1 Fso‑Ti
。I=O
とあらわされる。ただし,
I = A . + A . '
で対称行列である。まず上式を移項して,US)
‑FAo1 F s o = T i
。2N
‑151‑
関西大学『社会学部紀要」第 1 5 巻第 1
号とし,さらに両辺の左から,それぞれの転置を乗じ,
U 2 l
式を考慮して展開すると,聞(責
F s o ' F A o )
責(F A o 1 F s o ) =ZTi
。' T i
。Z=Z2
となる。このとき
Z
が対称行列であることから,U B ) Z ={ ̲
N ) ( N ) }̲ l ̲ ̲ F s o ' F A o
上 凡o ' F s o ½
とあらわすことができる。なお,
U B )
式の右辺は,( 7 ‑ b )式の固有分解によって表現される時,
(19) { (炉凡
' F A o ) (
責F A o 1 F s o ) }'= Q
砂となる。一方, US)式に右から
z ‑ ,
を乗じ,さらに, UB)式の関係を考慮して整理すると, 嵐交変 換行列T
。は,( 2 0 ) T i
。碕F A o 1 凡{情 F s o ' F A o )
(‑}凡o ' F s o ) }
―i
とあらわされる。ここで,( 7 ‑ a )式および ( 7 ‑ b )
式の関係から,(21)
‑FAo1
N1 Fso=Pd½Q'
となることは明らかであり,さらに, U9l式の関係および(7)式中の(注)を考慮すると
' ( 2 0 )
式は,(22) Ti。 =Pd½Q'Q.1-!Q'=PQ'
と整理される。
上記の展開は明らかに
Schonemann
の解法に符合するものであり,対応変量ベクトル頂点間 に関する彼の解法を,対応個人ベクトル頂点間に関する解法におきかえたものであるといえよ う。すなわち,F i g .2
の関係において,前論文の対応変量ベクトルa;(mx1
次),b;(mxl
次) に代わって,対応個人ベクトルAf;(NX1
次),sf;(Nxl
次)の頂点間のユークリッド距離( e )
を最小化する解法であるとみなすことができる。たとえば,上記の転移変換型解法は,因子得点 軸の回転による標本個人ベクトルA f i
の布置の変化によって,距離g ,h
を最小化し,結果とし て頂点間の距離e
を最小化する解法であり,先の相互変換型解法は,因子得点軸の同時回転に よるベクトルA f ;
とs f ;
の布置の変化によって,距離g , h
を最小化し, その結果として,頂 点間の距離e
を最小化する手法である。このように,操作手続きの検討を進めると,当然,逆に,
A f i
を基準として,s f ;
のみの布置 の変化によって, ユークリッド距離( e )
を最小化する手法が存在するはずである。 この発想に おける誤差行列は,いうまでもなく,( 2 3 ) E=FAo‑FsoTi
。とあらわされる。この場合の変換行列
T
。は,U 2 l
式の条件のもとで, 先のFso
を基準とする転 移変換型解法と同様の手続きを経て,( 2 4 ) T i
。=QP'
と与えられる。
確 認 的 因 子 分 析 の た め の 総 合 確 認 シ ス テ ム
I I (柴田・辻岡)
このように展開される 3種の手法を最大化されたトレース ((14)式)に関して整理すると, ま ず,
F n o
を基準とする転移変換型解法では,1 2 2 )
式から,(25) ―
t r ( T i
。' F A o ' F n o )
=—tr(FAo'.I'i。Fno')= 一tr(FAoPQ'Fno')N N N
となる。また,
FA
。を基準とする転移変換型解法では' ( 2
如式から,(26) ―
1 t r ( F ' A o F n o
Ti。)=—tr(FAo'.I'i。'Fn0')=‑tr(FAoPQ'Fno')
N N N
とあらわされる。さらに,先の
Ne s s e l r o a d e
の解法では,( 8 ‑ a )
式および( 8 ‑ b )
式から,( 2 7 ) ‑tr(T'AF'AoFno T
砂 = 一t r ( F A oT A T n ' F n 0 ' )
= 一t r ( F A o P Q ' F n o ' )
N N N
となり,
3
種の解法が,同形に整理され,等しい値となることがわかる。したがって,S c h o n e ‑ mann
のPatternmax
型解法と同様, このFactormax
型解法でも,対応個人ベクトル頂点 間の距離に関する最小二乗解は,一意に定まるのである。なお, この
Factormax
型の解法においても,M o s i e r( 1 9 3 9 )
のPatternmax
型解法と同 様に, (12)式の条件(この条件を有する場合を制限解法と呼ぶ。)によらず, 単に変換行列 T(mX m次)のノルムが
1
であるという条件,すなわち,( 2 8 ) diag(T'T) =I
にもとづく解法が可能である(この条件を有する場合を無制限解法と呼ぶ)。 この解は,規準化 のための対角行列
D
パを,とするとき,
( 2 9 ) D 1‑b { d i a g
(N 上凡凡)(上N 凡氏)}(30)
T=‑FA' N
凡D パ
とあらわされる。
一方, 横断的データに関する
Factormax
型解法は, 清水・辻[ I f ; ] ( 1 9 7 8 )
により, はじめて"Factormax
法 として提案された。また,その後,辻岡・柴田( 1 9 8 3 )
は,この清水の考想とSchonemann
の最小二乗解法の考想を結合したFactormax
型解法の一例を提案している。この種のモデルの特徴は,異集団のうちのいずれか一方の集団の標準得点行列をそのまま(辻 岡・柴田
1 9 8 3 ) ,
あるいは加工を施して(清水・辻尚1 9 7 8 ) ,
両集団の標準得点行列とし,個人間 の対応を可能にしているところにある。しかし,両集団の因子得点算出の基礎となる標準得点行列が,同一あるいは類似のものである ということと,囚子負荷行列によって表現される因子軸と因子得点行列によって表現される囚子 得点軸が基本的には表裏一体のものであるということを考え合わせると,この解法による分散0)
処理が,
Patternmax
型解法による分散の処理と本質的に相迩するのか否かという疑問が生じよ う。事実,標準得点行列として,両集団で同一の行列を用い,因子得点の推定に際して誤差を含 まない主成分分析を基礎とするモデルについて,その分散処理の過程を検討すると,以下のよう‑153‑
関西大学『社会学部紀要』第 1 5 巻第 1 号
なことが明らかとなる。両集団に共通の標準得点行列を
Zn(Nxm
次;B
集団の標準得点行列)とし,これを用いて構 成される直交の主成分因子得点行列をF'Ao(Nxm
次),FBo(Nxm
次)とすると,これら各行列の 関係は,(31)
FAo=ZB J J
な=ZBA
。(A
。'A
。)‑ 1
(32)F o o =ZB Wn =ZBB,
。( B ,
。' B ,
。)一1
とあらわされる。ここで,
A
。(nxm
次)は,ZA
を基礎とするA
集団の主成分負荷行列であり,B
。(nxm
次)は,ZB
を基礎とするB
集団の主成分負荷行列である。また,標準得点行列Zn
のn
次までの完全主成分分解モデルを,(33)
ZB=FBoB, 。 '
とする。ただし,
FBo(Nxn
次)はn
次までの完全主成分因子得点行列であり,氏(nxn
次)もn
次までの完全主成分負荷行列である。前論文(辻岡・柴田,
1 9 8 3 )では,
(31)式のFAo
に,規準化の手続きや直交化の手続きを加え て,直交座標上における最小二乗解を可能にしたが,分散処理の観点からすれば,本質的なこと ではない(規準化や直交化によって分散の内容そのものは変化しない)。そこで,今,仮にFAo
の各列ベクトルが直交で,各ノルムの長さが1であるとすれば, (2)式および(31)式, (32)式, (33)式を 考慮した両空間の因子得点間相関は,1
A(34) 刃凡
0'Fn0=(A0'A
。)一IA
。,i J o ( f l
凡。も。池' B ,
。( B ,
。' B ,
。)一1
と表現される。ここで,(35)
‑Fno'FBo=l N
であること,および,
nxn
次の完全主成分負荷行列h
。のm
次までの主成分解(列ベクトル)は,
m
次のB
。と全く同一であり,m+l
次以降,n
次までの主成分解(氏とする。)がB
。と 完全に独立直交であることを考えあわせると, (33)式は以下のように整理されることがわかる。すなわち,先の (35)式と,上記の関係をあらわした 2つの式,
(36)
B o ' B ,
。( B ,
。' B ,
。)一1=1 (mxm
次) (31)B o ' B ,
。( B ,
。I B ,
。)一1=0 ((n‑m)xm
次) から, (34)式は,(38)
(Ao'A
。)一IA
。I i J ,
。B
。' B ,
。( B ,
。' B ,
。)一l=(A
。'A
。) ‑ I A
。, h
。i
と展開されることがわかる。 このとき,
1 (nxm
次)は,mxm
次の単位行列と,(n‑m)xm
次のゼロ行列からなる行列で,(39)
l= I
m n
゜
確 認 的 因 子 分 析 の た め の 総 合 確 認 シ ス テ ム
I I (柴田・辻岡)
と表現される行列である。さらに,
( 4 0 ) B ,
。l=B
。であることから,
( 3 4 )
式は,最終的に,(41) —FAo'Feo=(A。'A。)
‑IA
。' B ,
。N
とあらわされる。
Factormax
型解法で,( 4 1 )
式の左辺をS=‑FAo'Feo
とするとき,その変換行列が,無制限解N
法では,
( 4 2 ) T=S{diag(S'S)}
一i
となり,制限解法では,( 4 3 ) 1 ' i
。=S(S'S)
一i
となることは,先に明らかにされたとおりであるが,ここで
( 4 1 )
式の右辺においても同様に,S=
(A01A
。)‑IA
。' B ,
。とし,展開を試みることが可能である。まず, 無制限解法において,( 4 2 )
式と同 様に,規準化を施すと,( 4 4 ) T=S{diag(S'S)
日=(A
。'A
。)一IA
。IB ,
。{ d i a g ( B ,
。'A
。(A
。'A
。戸A
。' B ,
。)日 となり,Patternmax
型解法におけるMosier( 1 9 3 9 )
の無制限解法と同一の解となる。また,
Schonemann
などの解法手順から明らかなように,( 4 3 )
式右辺の逆行列(A
。'A
。)‑1は,⑫式の条件の制限解法のもとでは,目的関数の構成の時点で,
( 4 5 ) t r ( T i
。'A
。'A
ぶ)=tr(A
。T
。T 0 ' A
。')=tr(A
。A
。')となり,変換に無関係に一定となることがわかる。したがって,
( 1 2 )
式の条件のもとでは,( 4 0 )
式の 右辺は,S=A0'B,
。となり,変換行列T
。は,( 4 6 ) T i
。=S(S'S)
一1=Ao'B
。( B ,
。'A
。A
。'B
。)一i
となる。この式は,いうまでもなく,
( 4 3 )
式と同形であり,またSchonemann
の解法によって与 えられる変換行列そのものである。以上のように,一見,因子得点に関する最小二乗解と考えられるこの種のモデルは,主成分分 析の場合に限って,分散処理の基本過程においては,
Patternmax
型解法と全く同一のモデルで あるといえよう。しかし,上記の展開においては,より本質的な分散の処理を取扱うため,先に述べたような種 々の前提をおいている。すなわち,この展開で用いた主成分分析に代わって,共通因子分析を用 いた場合,その因子得点の推定にあたっては,誤差を内包することになり, さらに
FA
。の規準 化や直交化の問題(辻岡・柴田1 9 8 3 ) ,
標準得点行列に加工を加える問題(清水・辻岡1 9 7 8 )
な ども含めて,種々の検討が必要となる。しかしながら,先にも述べたとおり,これら諸問題によ る誤差や差異は,この解法モデルの分散処理過程の数学的根拠の本質にかかわるものではない。このような観点から,本論文で使用される検証例においては,まず
N e s s e l r o a d e
流の縦断的研―:
155‑
関西大学「社会学部紀要」第 1 5 巻第 1
サ究のみを対象としたときの
Factormax
型解法を中心とし,これとPatternmax
型解法との相 違を検討することにした。そして,これに加えて,R横断的研究におけるFactormax
型解法の 結果と,Patternmax
型解法の結果を比較し,その類似性を検討することにした。なお,上記のような解法過程を経て求められた直交の
Factormax
型プロクラステス解は,そ れにひきつづいて,前論文(辻岡・柴田1 9 8 3 )
におけるPatternmax
型プロクラステス解と同 様の手続きによって,斜交変換を施すことが可能である。すなわち,縦断的研究におけるそれぞ れの集団の斜交因子得点FA(Nxm
次),FB(Nxm
次)は,(47) 凡
= F A o 1 ' i
。T 1 B
幽 凡=FBoTJB
とあらわされ,単に基準集団の斜交因子軸変換行列
T1B(mxm
次)を右から乗ずるだけで求めら れる。ここで,両集団を同一の斜交因子軸変換行列によって回転した理由は,Patternmax
型解 法の場合と同様,因子軸間相関を両者とも同一体系に固定するためである。また,この手続きに よって,斜交時の誤差行列を,( 4 9 ) E=FB0T1B‑FA01'i
。T 1 B
とするとき,( 5 0 )
{diag(EC1B―1か))½={diag(EE'))½
と展開されるので,直交プロクラステス回転によって得られたユークリッド距離は,斜交時にお いても一意的に保持されることが可能となる(柴田
1 9 8 3 ;
辻岡・柴田1 9 8 3
参照)。なお,( 5 0 )
式の 右辺の誤差行列E
は,U l l
式のE
に対応することはいうまでもない。 また,( 5 0 )
式におけるC 1 B ‑ 1 (mxm
次)は,基準集団 (B集団)の因子間相関行列の逆行列である。2 .
因子得点評価部門本稿の主題である
Factormax
型解法は,この因子得点評価部門を直接の評価目標とする解法 である。すなわち, U2)式の条件のもとで,最大化されるトレースは,解法部門で述べたとおり,—tr(To'FAo'FBo) とあらわされ,直交時の因子得点間相関の跡和に他ならない。
N
この因子得点に関する評価を重視する立場は,先述したように,第一に,因子得点が,実体と しての個人の属性についての測定であり,その後の実質科学的研究の出発点となる(たとえば,
個人の行動予測などに用いられる。)という観点に立つものであり, また,第二に,因子パタン を用いた不変性の評価には,あいまいな点が多く,不変性の基盤の確立には,因子得点間相関の 指標が必要であるとする観点である。
この評価部門で,もっとも重要な役割をはたす評価指標は,いうまでもなく,①対応因子得点 間相関であるが,これを補足する指標として,本稿では,新たに②対応因子得点間の誤差平方和
枷
( E ' E ) ] ,
⑧対応個人ベクトル頂点間のユークリッド距離[{ d i a g ( E E ' ) }
!], および④対応 個人ベクトル間の角度の3
指標を加えることにした。これらの新たに追加された3
指標,特に誤確 認 的 困 子 分 折 の た め の 総 合 確 認 シ ス テ ム]I
(柴田・辻岡)
差平方和とユークリッド距離の指標は,本稿における解法の目的関数と密接に結びついているこ とは明らかであり,その一意的な性質は,この解法の特徴をよりよく明示することになる。
これらの指標のうち,まずその中心となる対応因子得点間相渕は,縦断的研究においては,直 交,斜交を問わず, (2)式が用いられ,横断的研究においては,直交,斜交を問わず,辻岡の評価
システムによる(4)式が用いられる。
なお,
Patternmax
型解法においては,一般に,横断的研究を想定する立場上,前論文(辻岡•柴田 1983) においても (4)式を採用しているが,縦断的研究においては, Patternmax 型解法と いえども,
( 2 )
式が採用される。また,変換行列T
。が,Schonemann
の解法によるT
。におきか えられることはいうまでもない。結果と解釈における数値例の検討でも,この観点から,
Factormax
型解法とPatternmax
型 解法との比較がおこなわれることになる。すなわち,まず,縦断的研究において, (2)式を用いた 両解法の結果が比較され,次に横断的研究において, (4)式を用いた両解法の結果が比較される。一方,対応因子得点間の誤差平方和の指標は,最小二乗解の目的達成度をあらわし,
2
種の因 子得点空間の絶対誤差をあらわす指標であると同時に' ( 2 5 )
式'( 2 6 )
式および(2 7 )
式 か ら 明 確 な 一 意 性を有する指標であることがわかる。この一意性は,2
種の因子空間の不変性の問題に関して,きわめて客観的な保証を与えるものといえよう。また,この誤差平方和の指標は,先の対応因子 得点間相関と密接に関連し, (13) 式が, (2) 式および—FAo'FAo=l, —Fs0'Fso=l の関係から,
N N
(51) —
Ntr(E'E)= —
Ntr(Fso'Fso) +‑tr(Ti
N 。' F A o 1 F A o T i
。)‑‑tr(Ti
N2
。1 F A o 1 F s o )
=2m-2~Cp ( C p
は各対応因子得点間相関)P=I
と展開されることから明らかなように,両者は表裏一体の関係にある。すなわち,この誤差平方 和の指標は,対応因子得点間相関を別な視点から表現したものにすぎないが,この解法モデルの 本質を知るうえで,また
Patternmax
型解法との体系的比較を行なう上で, 重要な指標である(結果と解釈参照)。
また,対応個人ベクトル頂点間のユークリッド距離は,個々人の,その調査時点の変化による 絶対誤差を代表するものである。さらに,
F i g .3
に示されるような,対応個人ベクトルのノルム の大小からくる必然誤差を検討するため, 対応個人ベクトル間の角度( 0 1 , 0 2 )
の指標が禅入さ れる。このような多面的検討によって,より詳細に因子得点空間の同定性を検討し,全体的な因子得 点空間の類似性についての確認を行なわんとするのが本稿の立場である。
3 .
構造評価部門因子の不変性を論ずる場合,
Factormax
型解法といえども,因子負荷行列に関する構造評価‑157‑
{i
関西大学「社会学部紀要」第 1 5 巻第 1
号(注)① 必(第一標本集団の第
i
番目の個人 ベクトル;i = l , 2 ,
…・・・,n)R ふ(第二標本集団の第
i
番目の個人 ベクトル)③
fi (基準集団の第i
番目の個人ペ クトル)④ 頂点間のユークリッド距離は等しく
(e1=
約)ても, 個人ベクトル間の 角度は明らかに異なる(81<8
分。Fig.3
対応個人ベクトル間の角度を無視することはできない。なんとなれば,因子の解釈や命名は因子負荷を用いて行なわれるも のであり,その土台となる因子負荷行列の類似性の評価をぬきにして,実質科学的な不変性を論 ずることは困難であると考えられるからである。 このような立場から,本稿では,
F a c t o r m a x
型解法によって求められた解の最終チェック部門として,この構造評価部門をもうけた。この構造評価部門では,前論文(辻岡・柴田
1 9 8 3 )
と同様に,①一致性係数,R因子負荷行列 間の誤差平方和,⑧対応変量ベクトル頂点間のユークリッド距離,④対応変量ベクトル間の角度 の4
指標が用いられる。ただし,各指標で用いられるプロクラステス変換行列T
。は,先の(2 2 )
式 で定義されるFactormax
型解法によって求められた解である。たとえば,誤差平方和の指標に おいては,因子負荷行列間の誤差行列を,( 2 2 )
式のT
。を用いて,(52)・E=B,
。‑ A
。T
。とあらわし,これを基礎として誤差平方和
t r ( E ' E )
を求めるのである。他の3
指 標 に お い て も,これと同様,P a t t e r n m a x
型解法によるT
。が,F a c t o r m a x
型解法によるT
。におきかえ られる。〔 結 果 と 解 釈 〕
1 .
結果の解釈上の留意点前論文では,
P a t t e r n m a x
型解法の性質上,横断的研究を想定し,等質的な大母集団(結絆集 団)を基準, その下位集団を標本とする資料にもとづいて,数値例の検討が行なわれた。 しか し,本稿におけるF a c t o r m a x
型解法は,方法の節において述べたとおり,基本的には,縦断的 研究を想定した手法であり,数値例の基礎となる資料も,それに従って,縦断的なデータであることが望ましい。
確認的因子分析のための総合確認システム
I I
(柴田・辻岡)Table1
単純構造解による斜交準拠構造値(下段.基準B
時点;上段,標本A
時点)と 因子間相関(左下三角,基準B
時点. ;右上三角.標本A
時点)~11.
情緒不安定2 .
主導性3 .
非内省性4 .
不満性5 .
輝 性6 . 活動性 7 .
空想性D
抑うつ性大0 0 6 ‑074 ‑122 ‑029 ‑043 0 6 6
i
』0 5 3 ‑009 ‑139 ‑032 0 3 5 ‑149
c
回帰性大5 8 9 1 6 1 0 3 4 ‑060 1 1 5 0 7 7 0 8 0 5 9 9 1 2 9 0 4 1 0 5 2 1 0 2 ‑034 0 1 3 I
劣等感の強いこと 爵‑138 ‑316 1 1 5 0 8 0 ‑096 0 5 9 ‑263 0 2 1 0 0 7 4 5 6 ‑009 1 2 0 N
神経質5 e l ‑014 ‑216 0 6 7 0 4 3 ‑072 ‑065 6 8 0 6 4 ‑041 0 3 2 ‑052 0 3 1 ‑007
〇
客観的でないこと‑001 0 2 3 0 0 9 4 5 7 ‑117 0 2 3 0 1 2 3 8 0 ‑095 ‑148 ‑001 0 6 7
欝Co協調的でないこと 0 0 3 4 0 1 ‑056 ‑048 0 0 8 0 2 1
畠‑003 1 8 7 ‑092 ‑007 0 0 8 1 4 3
Ag愛想の悪いこと‑010 0 8 1 ‑072 1 7 1 i s e 2 0 7 ‑086 0 3 9 0 3 1 ‑116 ‑006 9 8 ‑012 ‑155 G
一般的活動性‑113 4 8 5 ‑168 1 2 4 ‑193 1 8 1 ‑077 0 1 3 0 1 5 ‑081 ‑007 ‑007 n ‑023 R
のんきさ‑125 0 4 1 ‑067 0 6 5
秤9 6 ‑098 0 3 8 1 2 0 9 0 9 7 0 7 8 6 6 0 2 5 4 0 0 T
思考的外向‑058 0 4 7 8 4 1 0 7 3 ‑071 0 6 2 ‑065 0 5 3 0 2 4 9 0 ‑006 ‑134 ‑073 ‑209
A 支配性大0 0 0 4 9 6
叫6 9 0 0 4 3 4 1 ‑085 ‑040 1 0 7 0 1 1 ‑069 ‑063 0 0 5 5 6 7
s
社会的外向0 9 6 7 4 i 0 9 6 ‑043 0 0 0 ‑090 0 0 7 0 4 0 6 1 0 3 5 ‑025 0 0 6 0 9 2 0 0 1
1 .
情緒不安定性
‑382 ‑070 3 4 9 2 0 7 ‑102 6 4 6
2 .
主導性‑378 ‑131 ‑060 2 9 3 5 0 2 ‑208 3 .
非内省性‑107 1 9 6 ‑299 ‑061 0 9 2 ‑246 4 .
不満性2 2 8 0 1 2 1 0 5 ‑055 1 1 8 3 2 9 5 .
進取性1 3 6 5 2 1 2 8 0 3 6 1 1 3 8 3 4 6 6 .
活動性‑446 5 0 4 2 3 8 1 1 8 3 4 6 ‑189 7 .
空想性4 9 9 0 0 1 0 5 1 3 7 9 4 6 6 ‑008
このような観点から,本稿における数値例のための被験者群は,基準集団として,高校
1
年時(時点
B)
のY G
性格検査に関する1 0 5
名(女子)の資料を用い,標本集団として,その1
年 後 の高校2
年時(時点A)
の同一被験者群に対するY G
性格検査の資料を用いた。 ここで,基準 を明確にする転移変換型解法を用いた理由は,方法で述べたとおり,この変換法が因子の解釈容 易性にすぐれ,数値例による実質科学的な不変性確認の重要要件であると考えるからである。ま た,因子間相関の固定による確認の立場から,U 2 l
式の条件にもとづく,制限解法が用いられる。さらに,第 1施行時である高校1年次を基準としたのは,本稿が,パーソナリティ特性の推移・
変化の把握を目的とした研究ではなく,因子の不変性確認を目的とする研究であるという理由か らである。すなわち,