都市的機関論再考 : 都市営力と都市構造との関連 的理解を求めて
その他のタイトル A reconsideration concerning urban organs : Toward an understanding of urban potentiality and urban structure
著者 神谷 国弘
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 7
号 1
ページ 1‑31
発行年 1975‑11‑04
URL http://hdl.handle.net/10112/00023157
—都市営力と都市構造との関連的理解を求めて一一
神 谷 国
弘
序—問題の所在
鈴木栄太郎によって,はじめて体系化された都市本質論=結節機関説は現代日本の地域状況に 対して,ますますその現実充当性を高めつつあるかにみえる。周知のごとく,ほんらい村落・都 市の連続性の強かったわが国の地域秩序1)は1955年以降の高度経済成長の過程で両者の融合関係 は一層加速されてきた。その結果,これまでの伝統的な村落・都市の二分法的研究領域の分化は さらにその意味をうしない,両者の連続もしくは統合の現実を反映した地域社会学 (regional sociology) の要請が登場することとなる。かくして,自足完結性をモデルとするマッキーバー 流のコミュニティ概念に代る,より普遍的機能的なる nodalregion (結節地域)の概念が新た に脚光をあびてくる。
こんにち,わが国においては首都東京を頂点として全国に張りめぐらされた経済的,政治的,
文化的,社会的なネット・ワークは地方大都市をリレー・ボイントとして県庁都市,中小地方都 市,田舎町,農村市街地を経て,全国津々浦々の個々の世帯,個々の個人にいたるまで,水もも
らさぬ精妙な網の目を組織的に拡げている。それは「都市化社会」なるタームでよばれる新たな 地域構造の出現であり, 「都市化された全体社会」ともよびうる国民社会の高密度化である。そ
1)村落・都市対照説は本来, ヨーロッパ的地域秩序の理論的投影である。地理的にみてヨーロッパは森林 と沼沢,牧場と畑地からなる大平原であり,河川は水運として利用され,都市は河川や海岸の交通の要衝 にいわば線的に立地し,農村は内陸平野一帯に面的に立地する。山と海に挟まれて平野が狭く,勾配の急 な日本の川は土砂を河口に推積して,その三角洲に都市を育てる。農業も低地部に限られてくるとなれば 日本では都市も村落も立地自由性は制約され低地の沖積平野に同居を余儀なくされ,両者は連続的一体的 となる。歴史的にみても中世ヨーロッパ世界は都市と村落を支配する権力が分離していた。ヨーロッパの 在来都市は多く古代軍事都市の後裔であった。ローマ帝国が滅亡したあと,新たに進入したゲルマン諸族 は農業や牧畜に便な泉や牧場に居を移し,彼らを支配する封建領主が中世の城へと発展していく。ローマ 滅後,ーたん衰えた古代軍事都市も,中世の商工業の発展とともによみがえり,市民は封建領主への抵抗
を通じて都市の自治権を獲得していくのである。
北欧都市に典型的な都市自治の伝統は村落支配者としての封建領主が農村部分に城を構えたことに1つ の根拠がある。かかるヨーロッパ的な二元的地域支配の構造に対し, 日本では封建領主の居館や寺社,交 通要地などをとり囲んで,農村的市場集落が進化したごとき都市が生まれてくる。江戸時代, それらは 城下町としてはっきりと都市的様相を帯び,それはヨーロッパ大陸のように城と町とが分離せず,両者の 融合と連続とを象徴するのである。日本の地域秩序はむしろ当初より村落都市連続モデルがより現実充当 性をもっていたのである。上田篤,『日本都市論」(三一書房1968年) 20‑22頁。
関西大学『社会学部紀要」第7巻第1号
れはまさに,管理社会,ネット・ワーク社会などの別名でよばれる現代の社会状況の地域的投影 といえよう。かくして村落は崩壊と解体に直面するとともに,都市群の傘下に編入され,包摂さ れ,従属化されて自律性を喪失するとともに,一方都市も巨大都市を頂点とする都市群のヒエラ ルヒーの中に系列化されて, これまで村落と対比された都市の独自性は後退してくる。 いまや 全体社会における地域的配列なり,都市群の関係そのものに焦点をあてる地域分析の立場がより 現実充当的なものとなるのである。鈴木の機関説モデルは近江も指摘するように一種の都郵連続 説である2)。社会的文化的交流の結節的機能を果す機関の上下的配列に対応して,大,中,小の 諸都市に始まり,末端自然村にいたるまでの連続的な地域秩序が模型化されたのである。地域間 の機能連関の角度から都市の本質を模索した結節機関説理論はこんにちの地域状況解明のもっと
も有力な方法的武器といえるであろう。
鈴木栄太郎の都市理論については,これまですでに一般的に高い評価と部分的な,いくつかの 批判が加えられてきた。ここでは彼の都市的機関=結節機関に関する彼の理論にたいして加えら れた若干の批判を下敷としながら,機関概念についてさらに検討を加え,都市営力と都市構造を 関連的にとらえる方法的な試みを若干模索してみたいと思う。
鈴木の結節機関説については前稿においてすでに,ある程度吟味の形で問題点を指摘した。だ が,それは機関概念の根本的な分析や類型化の構想ではなかった。鈴木が雑然とならべた9つの 機関を立地論的に整理して,都市における 2つの営力に対応した都市群類型を構想したにとどま った3)。そこでは機能別の都市類型の構想から出発しながらも,どちらかといえば類型別都市群 の地域配列という,いわば空間的機制に力点を奪われ,都市の社会構造との関連のとり扱いが稀 薄であったという憾みは否定すべくもない。鈴木広もいうごとく,「構造分析(への視点)を欠く 類型化はたんなる分類以上のものではない」4)のであり, この観点からの批判はとうぜん甘受し なければならないであろう。だが,この作業自体は都市社会学内部でもいまだ試論的な段階であ り,体系的実証的な類型論の構築はなお将来の課題である。
前稿において試みた都市営力における 2つの基底変数(中心性機能と非中心性機能)の易l出と それに基づく都市類型や都市配列の理解は都市の内部的構造を把握する前提であり,基礎作業で ある。ただ,よりミクロに個々の都市の成長,停滞,衰滅の動態を判別予測したり,内部の社会 構造への視点を確立するためには,なお,いくつかの諸要因を加味した類型構成が要求されるに ちがいない。だが,この作業はなお,いくつかの経験的な調査や理論的な検討の積み重ねが前提 であり,おそらく今後かなりの経過をみなければならないであろう。本稿ではそのような<構造 分析への視点>を念頭におきながら,都市の類型構築の予備作業ともいうべき都市における諸機 2)近江哲男;「都市社会学における鈴木理論の独自性」(『鈴木栄太郎著作集Vll』未来社, 1969年) 570‑
571頁。
3)拙稿,「都市類型の分析図式ーー結節機関説の吟味を通して一ー」(『関西大学社会学部紀要』第1巻第4号)。 4)鈴木広,「比較都市類型論」(福武直監修,倉沢進編「社会学講座5,都市社会学,東京大学出版会) 44
頁。
関の類型について仮説的な検討を加えてみたい。
都市分析において<機関>の検討からはじめる理由にはおよそ次の 3点があげられる。
第1に,機関は経済と市民生活の連動点の役割を果す点である。機関は生業の社会的単位を意 味し,具体的には職場として人々の生活の根拠となる。経済発展を人口の上に照射した場合,そ の表面は職場という図柄であらわれる。市民は職場をもつことを通じて経済につらなり,事業所 は職場を与えることによって市民の経済生活を保証する。都市生活の根底は職場=機関の態様に あるといえる。この機関の成長性や発展性が都市営力の決定因であるとともに,そこに住む住民 の社会的性格をも規定していく最大の要因であるといえる。
第2に,機関の構成原理は人々の地域的移動性の規定因となる点である。後に詳論するよう に,機関はそれぞれ関与範域をもち,同一の機関システムの配列の中で有機的な機能を果してい る。全国に関与する機関は全国の拠点にその分枝を拡げ,県内に関与する機関は原則として県内 のみにその分枝を配置する。 1つの機関体系の中枢管理部門の責任と権限において,最終的な政 策や人事の決定がなされる。人事移動の範囲はその機関が関与する範域つまり分枝の延長範囲と オーバーラップする。いわゆる転勤である。もちろん,移動は単に同一機関系内部のみならず,
離村向都現象やUターン現象,転職などの場合にも発生する。だが,この場合も機関の成長性や 格位と関係することであり,移動要因として機関を問題とする点では同じである。
第3に,機関は人々の階級階層構成を規定し,同時に都市の格位を決定する要因となる点であ る。両者はそれぞれ楯の半面であり,一般に上位機関は上級都市に集まり,下位機関の所在地は 下級都市である。各都市にはそれぞれの機関がかかわる範域で最高の社会,経済的地位を占める 階層が集中することとなる。首都には国レベルのエリート層が,県都には県レベルのエリート層 が,そして地方小都市には小地方レベルの上級階層がそれぞれ蛸集する。
本稿ではまず鈴木栄太郎の結節機関概念を吟味しながら,その問題点を探り,続いて彼を中心 とする鈴木シューレによる機関説概念の修正展開の跡をたどりながら,最後に,都市的機関の類 型化とその組み合わせの中から,都市営力や都市構造に関する若干の仮説的命題を提出してみた
いと思う。
I 機 関 理 論 を め ぐ る 鈴 木 説 の 問 題 点
鈴木栄太郎の結節機関説についてはこれまで若干の批判が加えられており,それらについては すでにかなり詳しく紹介されているので,ここでは一応次節以下の行論の展開に必要と思われる 要点のみを整理して摘記しておきたい。
第11こ,機関の概念規定をめぐる問題である。鈴木は都市の本質を社会的・文化的交流の結節 的機能に求めながら, 「機関」「結節機関」「非結節機関」などについて充分体系的な概念規定を 加えているとはいいがたい。彼の「都市社会学原理」の中の第6章附記6「機関の意味」, 第7 章補註2「結節的機関の意味」の2ケ所で定義風にのべているだけである。鈴木は「機関」をも
関西大学『社会学部紀要」第7巻第1号
って生業活動の社会的単位であるとする。それは「合理と打算を主導原理として活動している代 償獲得のための活動の常存的統一的な責任の所在に名付けた言葉である」5)とされる。そしてこ の機関の中に「社会的交流の結節としての意義を多くもっている機関」と「あまりもっていない 機関」が区別され6)'前者を結節的機関と称し,後者を非結節的機関とよぶ。具体的に商業者や 役人の生業は結節的機関に属し,労働者や第1次産業従事者の生業は非結節的機関に属するとい う。鈴木のこの機関の概念規定の中に,彼の機関説がはらむ根本的な問題点が潜んでいるように 思われる。鈴木自身,都市をもって結節機関の集結地域と規定するとき,彼の念頭にあったのは 全体社会(鈴木のいう国民社会)である。国民社会における文化の斉ー化と社会的自足性という 機能的要請に対応して社会的文化的交流の結節機関が国民社会内部に樹枝状に配列するのであ る。これはラドクリフ・プラウン風にいえば地域社会の社会的機能に着目した機関概念の規定で あるといえる。
しかるに,上記の鈴木の定義では機関のもっている交換価値の程度をもって機関の結節的もし くは非結節的性格の尺度としているようにみえる。交換価値の高いもの,すなわち物や技術また は知識と結びつく度合いが多いもの一ー商業,工業,サービス業,役人の仕事などー~は結節的 機関であり,交換価値の低いもの,すなわち物も技術または知識もほとんどともなわないもの
—第 1 次産業や単なる労働など―は非結節的機関であるという。ここで規定されているのは 機関の内的な属性であって(物や技術または知識との結びつきの程度による交換価値の程度),
機関の社会的機能(交流を目的とした機関であるか否か)によるものではない。鈴木の都市機能 の定義は本来,後者の視点に立ったものであるはずである。もちろん,機関の内的属性と社会的 機能は無関係ではない。たとえば第1次産業が非結節機関であるのは交換性が低い(自給部分を 含み,物や技術との結びつきが弱い)と同時に,それ自体は交流のための機関ではなく,農産物 生産のための機関であるからである(生産された農産物を流すための機関は結節機関である。農 協,公営市場,八百屋など)。機関の結節,非結節の区分は論理的にあくまで後者の基準—結 節機能を目的とした機関であるか否か一ーによって果さるべきであり,前者の基準‑機関の交 換価値の有無大小ーーによって果さるべきではない。つまり,機関の対社会的機能によるべきで
あり,機関の対個人的な利用関係から判別さるべきではないと考える。
第2に,結節機関系の相互関与関係の分析が鈴木説において欠落している問題である。これは 倉沢らの指摘したところであり,鈴木は「機関と機関との関係を同種結節機関の上下関係ー一 本・支店.本・支社,上・下司一ーなどをとりあげるにとどまっているとする7)。鈴木は都市の 前社会的統一の説明にあたって個人の生活行動軌跡や諸機関のサービス圏のみに注意を向け,結 節機関の相互関連的布置として位置付けなかったとされる。結機関節の相互関連的布置とはいう
5)鈴木栄太郎,『都市社会学原理」 (1975年有斐閣) 312頁。 6)鈴木栄太郎,上掲書332頁。
7)倉沢進,似田貝香門(『社会学評論」第21巻,第2号1970年) 22頁。
なれば都市における結節機関の相互関連的立地,すなわち集積の意味にほかならない。したがっ て,結節機関の集積の規模や範囲を規定する原理の解明が都市における社会構造の分析の前提と なろう。機関の集積にはその方向性という視点から,水平的集積と垂直的集積に類別されうる。
ここで水平的集積とははぼ同一格位の機関の集積を意味するのに対し,垂直的集積とは一般的に
basic, non‑basicとよばれる諸機関の縦の集積である。鈴木の結節機関理論には異種の機関の 相互関連的集積の論理について説明が欠落していることを否めない。
第3に,鈴木の理論には機関別の立地に関する分析が欠落している。彼は結節機関が上下に樹 枝状に配列されるとする一種の単線型の都市系列を構想しているが,これはクリスクーラー流の 中心地の階層モデルに酷似した都市配置論である。だが,現実の都市は資源との関係や母都市と の従属関係,拠点への依存関係などの要因が加わるとき,偏俺した空間配置を示していることを 知っている。このような非中心性原理によって立地した都市群が中心性原理によって成立する都 市ヒエラルヒーとは独立にあるいは相互促進的に形成,発展していることは各種の研究が明ら かにしている8)。機関の立地原則は機関の種類によって異なり,そこに異った都市群を造り上げ ていく。われわれは立地原則別に機関の類型を整理する試みを提出してみたい。都市類型に在来 型の結節機関型都市と近代産業型都市の2系列を分けた田野崎の意図も鈴木の結節機関説に対す
る立地論的視点からする批判であったのである9)。 ]I 機関理論の展開と修正
鈴木栄太郎の都市社会学体系の構築にあたって資料の蒐集や実態の調査などの側面から,その 裏付けに寄与した多くの門下があったことは周知のとおりである。その後,彼ら鈴木シューレの 都市研究者たちは鈴木の理論を継受しながら,それぞれの分野で社会的現実の解明に生産的な業 績を積み上げてきた。ここではそうした成果の中から,都市的機関の理論に関連するいくつかの 諸説を整理しながら,機関の類型論構築への橋渡しとしたい。
(1) 機関概念の明確化と機能量の確立
鈴木の門下にあってとくに鈴木に近く,その理論構築にあたって基礎デークを提供したといわ れる笹森秀雄は鈴木説に全面的に依拠しながら,鈴木の機関概念をさらに精錬し,深化して現実 の都市分析に適用している10)。笹森は「都市の機能」 とは「各都市に存する各種機関のもつ機 能,またはその総体」であり, 「都市の産業振興や各種事業のあり方を決定するためには, まず その都市の機能的性格を分析して,国民社会や地域社会における各都市の役割に対して明確な位 置付けを与えることが必要である」11)とする。彼は鈴木の理論を具体的な機関の調査に便利なよ
うに,また,精密な量化可能な形にモディファイしている。それは次の2点にまとめうる。
8)国立国会図書館調査立法考査局,『都市地域の形成と計画」 (1965年) 6‑17頁。 9)田野崎昭夫,『現代の社会集団』(誠心書房 1971年) 143頁。
10)笹森秀雄,「都市の機能分析に関する方法論的考察」 (1960年,『マーケット北海道」 11巻, 12巻) 11)笹森秀雄,上掲論文11巻 22頁。
関西大学『社会学部紀要」第7巻第1号 第1は,結節機関の類型に関する独自の
展開である。鈴木は都市における結節機関 として9種をあげているのに対し,笹森は
「日本標準産業分類」をもとに産業を14の 大分類, 84の中分類, 412の小分類, 1,151 の細分類にしたものを手掛りとする。都市
狩猟業,
的産業とは大分類中, A•農業,
C・漁業,水産養殖業を除いた第 2次,第 3次産業であることはいうまでも ない。笹森は日本標準産業分類と鈴木の機 B• 林業,
関分類を対比しながら,彼独自の機関分類 を行なっている。第1表がそれである。こ れは実際の都市の機関について既存の資料
(事業所統計調査,国勢調査,商業統計調 査,工業統計調査など)を通して分析する 場合,分析の単位をそれに適合した形で整 理統合した点で,鈴木理論の現実適合化と
第1表 都市に存する各種機関の類型的把握
公 務
分類不能の産業
同同同同同 上 上J:.J:上
日本標準産業分類
農 業
林業・狩猟業
漁業・水産養殖業︐
鉱 業 建 設 業
製追業
卸売・小売業
金腺保険業
不動産業運輸・通信業
サー ビス 業
技術文化流布の緒節的機関一
商品流布の結節的機関
‑ l
一
‑
l ‑
l‑?
電 気 ガ ス 水 道 業 [ [ 町
ii
ぃ
同上
同上 金蘊の結節的機関 同 文 製 建 保 ^
上 化 造 設 健 鉱 流・の維業 布修結持の の理節の結
︵工
場︶
鈴 木 樽 士 に よ る 機 関 の 分 類
本研究において採用する機関の分類
して高く評価したい。ただし,指摘したい
1つの点は笹森が技術文化流布の結節機関の中に鉱業,製造修理の結節機関とともに保健維持の 結節的機関,文化流布の結節的機関を包含していることである。後2者は,通常,産業大分類の サービス業に含まれており,第2次産業たる鉱業,製造業とは異質なる機関である。技術文化流 布の結節機関には技術=生産機能と流布=結節機能の両面を同時に含意した内容であるが,生産 と結節とは一応別個の機能範疇に属すると考えねばならない。この点はすでにふれたところであ り,笹森もなお,鈴木の「機関の結節性」と「結節のための機関」の混同から完全に解放されて いない点を指摘しておかねばならない。
第2に,鈴木の機関説の発展として笹森が寄与した点は結節機関のサービス圏に関する精密な 分類基準を設定したところにある。アメリカの rurbancommunityの研究成果を参照しつつ機 関の機能的範囲としての関与圏, サービス圏の確定に進む。機関の機能の大小高低は関与サー ビス圏の広狭と関数関係に立つ。そこから機関のサービス圏または関与圏を次の7つに類別す る12)。
1.
2.
都市局部圏 (P型)・・・機関のサービスや関与の圏が都市の局部的地域の住民または機関の みに限られているもの
都市全域圏 (A型)…都市全域の住民または機関のみに限られているもの 12)笹森秀雄,上掲論文1哨§ 22頁。
3. 周辺地方圏 (L型)・・・都市以外の地域,つまりヒンターランドの村落あるいは小中都市の 住民または機関に及んでいるもの
4. 小プロック圏 (D型)…周辺地方圏の2ないし3を含む地域に及んでいるもの
5. 大プロック圏 (R型)・・・機関のサービスまたは関与の圏が,例えば北海道全域とか,ある いはまた近畿全域とか九州全域とかいう広範囲に及ぶもの
6. 全国地域圏 (N型)・・・機関のサービスまたは関与の圏が全国各地に及んでいるもの 7. 国際地域圏 (W型)…機関のサービスまたは関与の圏が世界の一部または全部に及んでい
るもの
機関の関与圏もしくはサービス圏は以上の7種のいずれかであるという。これらの圏は都市を 中心として同心円状に波紋を拡げる。これによって各都市の機能の特性と大きさを知ることがで きるとする。この点での笹森の所説に対してここでは2点のみを指摘しておく。
第1点は機関別の関与圏,サービス圏の問題である。機関の関与,サービス圏には円環状に明 確な圏構造をなすものもあれば(典型的には行政的機関), 地元性とは直接関係なく広域的全国 的関係圏との間の単一機能的な収支関係において成立するものもある(典型的には巨大工場,有 名観光施設など)。後者は明確な圏構造を示すことなく,機能的関与があるだけであり,前者と は異質な機関として位置付ける必要がある。
第2点は機関の関与,サービス圏の広狭における質的断層の問題である。笹森は7つの関与,
サービス圏をあげているが,彼のいう(1)都市の内部の住民または機関のみにサービスしているも のと (2)都市以外の地域つまり村落や他の都市の住民または機関のみにサービスしているものとの 間には都市営力に対して質的に異なった機能をもつものであることを指摘しなければならない。
それはいわゆる地元向け活動型 (non‑basic)機関と移出活動型 (basic)機関の差であり,一般 的には前者は後者の従属変数といえる。後者は独立変動要因であり,前者は従属変動要因であ る。その意味で彼が関与, サービス圏別に類別した7つの機関類型の中, 1. 都市局部圏 (P) および(2)都市全域圏(A)は地元向けの機関であり, 3.周辺地方圏(L),4. 小プロック圏(D), 5. 大ブロック圏 (R), 6. 全国地域圏 (N), 7. 国際地域圏 (W)は一括して移出型の機関群
といえる。われわれは両者の都市営力における機能差をふまえた機関群の類型設定を試みたい。
(2) 機関機能の指標化とその論証
鈴木の門下の他の 1人の都市研究者須田直行は鈴木の「機関的方法」に全面的に依拠しなが ら,行政機能の指標化を通じて都市の機能分析を試みている。彼はこれまでの都市の機能分析を 批判しつつ,鈴木・笹森と同様に「都市における機関の質と黛を分析指標とする立場に立つ」18)。 そしてこの「機関的方法」の長所として(1)構造的理解の期待可能性, (2)的確性, (3)一般性の確保 という 3点をあげる。この方法によって彼は都市の行政機能の測定を展開する。須田の都市機能 13)須田直行,「我国都市の行政機能の一考察一一北海道都市の実証的研究ー一」(『社会学評論」 43, 44合
併号, 1961年) 39頁。
関西大学『社会学部紀要」第7巻第1号
分析の功績は次の諸点にまとめられよう。
第1に,行政機関の機能量=行政都市度を測定するための指標を明確化したことである。行政 機能の具体的指標としては管轄範囲,業務量,職員数などがあげられ,それによって「行政機関 の格位」が定められ,それがそのまま「行政機能の水準」を表わすのである。行政機能は「行政 機能は個々の行政機関の格位に反映しているため,都市全体の行政機能の測定は都市内の全行政 機関の格位を適当な方法によって評価し,数量化することによって可能となる」14)とし,行政機 能を端的に現行行政機関の管轄範囲の広狭に求める。具体的にはA級(全国), B級(府県内),
C級(郡内), D級(市町村内)という 4段階を設定し,それぞれの機関に対してA:4, B:
3,C:2,n:1という測定値を付けて加重する。 1都市の行政機能量は次の算式であらわさ れる。
都市行政機能量=:E行政機関x行政機能量
この算式に基づいて彼は北海道54都市の行政都市度を個別的に算出している。管轄範囲の大小 によって,行政機能量を測るという方法はその後の都市機能分析において一般的に用いられるよ うになった方法であり15), その意味で須田の研究は1つの先駆的業績として高く評価されるで あろう。
第2に,行政機能の測定結果が包蔵する社会学的問題性に触れた点である。すなわち,行政機 能のヒエラルヒーは(1)統治, (2)密居規模, (3)社会成層, (4)生活水準, (5)都市経済力, (6)都市化な どのヒエラルヒーそしてその集約としての(7)総合的都市機能のヒエラルヒーを随伴する。社会学 的にとくに重要性をもっているのは(2)密居規模と(3)社会成層のヒエラルヒーの問題であろう。須 田は行政機関と都市人口の関連を 1.直接的関連人口(イ,職員(A), ロ,職員の家族(B)) と 2.間 接関連人口とに分け,間接的関連人口をさらに業務関連機関人口(イ,職員(C),ロ,職員の家族 (D)) と生活関連機関人口(イ,職員(E)と職員の家族(F)) とに分ける。都市人口は(A)‑(F)の各部分 をつなぐ連鎖によって,波及的に影響しつつ,雪ダルマ式に増加していくとする。この直接,間 接の両機関人口という概念はそのまま都市地理学者らのいう, basic,non‑basic人口に相対する ものではない。なぜなら,行政直接関連人口の中には都市域内のみを管轄する機関もあり,須田 があげたD級(市町内)の行政機関は都市外需要に応ずるbasicな機関とはみなしえないからで ある。しかし,都市営力における主導的なものと従属的なものとを区別し,上級行政都市がより 大なる密居規模をもつ根拠を提示しながら,実証的に裏付けた功績は大きい。
社会成層に関していえば上級行政機関は高位者を含む機関である。つまり上級機関は管理機能 を有して必然的にエリートを求める。事実,上級行政機関の多数集中する都市ほど多数の高位 層,高学歴層を集めているのであり,その意味で行政都市度のヒエラルヒーは同時に社会成層の ヒエラルヒーに対応する。それは同時に結節機関のビラミッド的系列にほぼ対応した都市の格位
14)須田直行,上掲論文40頁。
15)国土計画協会,『都市機能の地域的配置に関する調査』1967年。
でもある。かくして都市にはそれぞれの機関がかわる範域内で最高の社会,経済的位置を占める 階層が集中することになる。各地域段階のエリート層ないし上位階層が各段階における中心的な 都市に蛸集するのである。
須田の論証は要するに都市結節機関説の有効性を行政機関の機能分析を通して計量的に測定し たものであり, 「機関的方法」のもつ「実際的有効性」と「構造的照射性」の長所がそこにいか んなく発揮されているといえる。ただここで若干のコメントを付け加えておく。行政都市度の増 大すなわち「行政機関の質的量的増大を都市化の根本契機の1つとして眺める」16)のは地域活動 における行政機関の役割=地域振興の牽引車的機能を指摘したものとして多くの都市ーーとくに 地方大,中,小都市ーーに妥当する理論といえよう。ただし,特異都市ー一信iー機能型都市(鉱 工業都市,衛星都市)一では彼自身も指摘しているように,行政機能は低く,行政機関が都市 の中で占める役割は相対的に低い。
都市化過程において果す行政機関の役割を重視する点において,われわれは人後に落ちるもの ではないが,さらに鉱工業をも含めて都市化を促進する要因がなんであるか,行政機能と生産機 能がいかなる関連に立つか,先進地域都市と後進地域都市がいかなる内的構造関連によって結合 されているか,それが都市発展といかなるかかわりをもつかなどの諸問題をなお理論的に詰めて いく必要があると思われる。
(3) 機関概念の拡張と統合
鈴木の系絹を継受しながら,マルクス主義的方法論に傾斜する布施鉄治は鈴木の機関概念に修 正を加えつつ,機関概念をより広く拡張し,それを体系化しながら現代の地域分析に適用してい る17)。彼は現代日本の地域構造を国家独占資本主義体制の地域的投影として把握する。彼は地 域の概念の下に(1)同質地域, (2)分極地域, (3)計画地域の3つを類別する。こんにちの段階では資 本関係による地域統合以前の地域構造たる(1)同質地域は崩壊し, (2)分極地域が優位を占め全国を 系列的組織に編成していると主張する。さらに部分的に(3)の計画地域が混入しはじめているとい う。かくして「現在の国家独占資本主義段階のわが国においては,全国各地域は首都東京を頂点 として,そのすぐ下に高次の各分極地域の中核都市がつづき,その下にさらに低次の各分極地域 が含まれるといった形で結びつけられている」18)とする。これらの上下的系列関係を担当する機 関を結節機関と規定するのは鈴木と同じであるが,布施は鈴木の結節機関に加えて社会的生産機 関と消費機関なる概念を導入する。ここで社会的生産機関というのは第1次産業の生産組織と第 2次産業の生産組織を含み,消費機関というのは基本的には消費単位としての世帯を意味してい る。そこで結節機関というのは個々の生産機関と生産機関,あるいは生産機関と消費機関をとり 結ぶ機関であり,さらに各種の情報的諸機関,体制反体制の諸組織などを含む。布施は都市に存
16)須田直行,前掲論文58頁。
17)布施鉄治,「地域」(北大教育経済研究会編『経済と教育」 1964年東洋館出版社)
18)布施鉄治,上掲論文161頁。
関西大学『社会学部紀要』第7巻第1号
在する諸機関として次のようなものをあげる19)。 (1)工業的生産機関(修理をも含む)
(2)金融の結節機関 (3)交通通信の結節機関 (4)教育の結節機関
(5)生活・サービスの結節機関
( イ
) 商品流布
(口)一『
J
物質紺幾関(6) 国民統治・治安の結節機関
り 文 化
目 娯 楽 ] 岬 暉 関 紺 宗 教
(7)経営者のための結節機関(経営者協議会,商工会議所など)
(8) 労働者のための結節機関(地区労,各企業労組)
(9)消費機関 UOl農漁民の結節機関(農協,漁協など)
布施の所説についてここでは次の2点を指摘するにとどめる。
第1に,鈴木が結節機関の名の下に包括的にとり扱っていたものの中から,生産機関を分離独 立させた点である。これはすでに鈴木説の問題点として最初にとりあげた点であり,鈴木が結節 機関に関して「機関の結節的性格」と「結節のための機関」を混同して使用している点を指摘し た。結節機関と非結節機関の区分はあくまで機関の社会的機能に即して規定さるべきであり,
機関の属性によって類別さるべきではないという立場に立つ。もちろん現実の生産機関は単独に 生産機能を果すにとどまらない。それが1つの企業として営まれる場合,販売や管理と一体とな っており,純粋に生産機能のみが独立しているわけではない。もっとも,この生産的機能と結節 的機能の結びつきは経済の発展段階によって異なる。資本主義初期の自由競争段階では,一般的 に産業資本は生産に専念し,流通の問題はもっぱら商業資本にゆだねた。後者は多数の前者の生 産物を集中し,配給業務に専念する結果,社会的には生産と消費の間の流通費用や流通時間を節 約し短縮する。かくして総資本にとってかかる社会的分業関係は有利であった。しかし,資本主 義が高度化し独占的段階に入ると,独占的産業資本は大量生産された自社製品を独占利潤をえて 販売するため,流通過程にも介入し,それを支配しようとする。かくして,産業資本自ら多数の 販売員を雇用して営業所,直売店など自己の販売組織をつくり,いうなれば商業資本を排除して いく傾向すらでてくる。それはかつての分業関係を否定するような傾向である。その他,既存の 商業資本として自社製品の販売に専心させる系列化という方法も広く一般化してくる。かくなれ ば生産機能と結節機能は完全に一体化したわけであり,その機関が生産機関か結節機関かの判別 はきわめて難しい。また,小規模な自営的手工業や修理業などは生産的機能とサービス的機能が もともと一体となっており,まさに技術文化流布の結節機関という鈴木の規定が妥当性を帯びて
19)布施鉄治,上掲論文164頁。
くる。しかしながら,本来,生産機能と結節機能は論理的に別個のカテゴリーであることをここ に再度確認したい。 とくに企業規模が拡大すれば本社=結節的部門は都市に残留もしくは集中 し,現場工場=生産部門は立地的諸条件を顧慮しながら原料地,原料輸入港近辺,低地価地域,
余剰労働力地域などを求めて地方に分散する傾向すらみられるのは両機能が別個の空間原理に規 定されていることを物語るものである。その意味で工場はあくまで生産機関であって結節機関で はない。都市における生産機関と結節機関をわけて捉えた布施の所説は都市営力における諸機関 の異なった機能を明確にした点で高く評価さるべきである。
第2は布施が都市的機関として結節機関と生産機関に加えて消費機関なる概念を導入した点で ある。たしかに生産を単に物や情報のみに限定せず労働力の再生産という視点からみれば鈴木の いう世帯も 1つの機関といえるかも知れない。ただ,ここで「機関」なる概念についてもう一度 再確認しなければならないことは鈴木流の表現を借りれば機関とは生業の社会的単位なのであ る。生業活動とは代償を得るための活動であり,代償を支払って他の人の活動を得る生活活動と 区別される。前者を生産といい後者を消費という。
布施は鈴木の主張する機関と人間との関係に関する基準を援用して自身の所説の裏付けとす る。人は機関の活動に従事するとき,合理と打算に従ってあたかも機械のごとく行動するのに対 し,機関から離れて人と人との関係として行動するとき,そこに情誼や愛情が行動の原理になる という。しかるに「資本主義の社会においては消費単位としての世帯それ自身,合理と打算を生 かして物質的に労働力の再生産を営まざるをえない労働力再生産機関(消費機関)である」20)が ゆえに,世帯も 1つの機関になるという。だが,鈴木が合理打算と非合理情誼の区分をしたのは あくまで機関と世帯における人間行動のあり方を問題としたのであって,両者の本質的な差異は 前者が代償獲得行為の単位であり,後者が代償支払行為の単位たることにあるのである。機関と は代償獲得行為の単位としての職場であるはずである。その意味で世帯を結節機関や生産機関と 並列して消費機関なる規定によって,機関概念の中に包摂し,都市的機関の1類型として位置付 ける布施の所説に疑義を提せざるをえない。
皿 都 市 的 機 関 の 類 型 と 機 能
鈴木栄太郎の結節機関説に関する批判的諸説の紹介と鈴木シューレに属する都市研究家達によ る修正発展理論を跡付けた総括として,ここで一応都市的機関の類型について私見をまとめてお きたい。ここでも機関の単なる分類に終ることなく,都市営力やその動態,さらには都市内部の 社会構造の把握が可能となるような総合的な類型への展望を含むものでなければならない。それ は単なる資本主義の一般原理への解消といった経済史学的偏向に陥ることなく,また,単なる空 間的秩序原理を志向する地理学的立場に偏俺することなく,社会学的視点に立脚したものでなけ
20)布施鉄治,上掲論文172頁。
関西大学『社会学部紀要」第7巻第1号
ればならないと思われる。これまで都市の類型化を論じた諸研究はいずれも都市間の差異の検出 整理に力をそそいできたといえる。さまざまな指標が設定され,厳密な数理的処理が行なわれて きたが,それが差異そのものを追いかけて個々の都市の特性の背後にある都市群全体の成立機構 について,なおざりにしてきた憾がある。人口規模による大,中,小都市,産業構成による行政 都市,工業都市,文教都市などは単なる分類にすぎず,それよりむしろ,それらの都市間の構造 的な関係そのものの理解が先決である。この都市間の構造的な関係やその内部的な社会構造を規 定するのは都市における機関の種類やその間の関係である。ここではそうした都市群全体の成立 機構の解明を志向しながら,都市構造の把握にも適用できるような機関の類型について仮説的モ デルを構成してみたい。
(1) 基盤型機関と非基盤型機関
すでに倉沢の指摘にみられるように,鈴木は結節機関の相互関係,したがって都市という地域 的集住における諸機関の相互連関的布置については積極的な立論を展開していない。都市の都市 たる所以のものは清水もいうごとく21), 集まるということそれ自体にあるとすれば,諸機関が 集まる原理そのもの,ならびに集まった諸機関の種類がまず問題となる。機関の集積には 2種の クイプがある。 1つはほぼ同一格位の同種または異種の諸機関が水平的に結合集積するクイプで あり,他は既存の集積との関係で従属的に集積するクイプである。水平的集積には管理的サース ビ的機能ーー中心的機能――—の場合と立地依存的単一収支的機能—特化的機能—の場合とで は異なった原理が働らく。前者についていえば,各段階の中心的位置に求心し,一定のひろがり に分布する住民や他の機関に対して統御やサービスの機能を果している組織なり施設である。中 心地の階層的配列についてはしばしば論ぜられているところである。各段階の中心地はそれぞれ の範域について関与する各種結節機関の中心地となる。首都は国段階の,県都は県段階の,地方 小都市は小地方段階の,それぞれ中心として各段階の機関が求心的に集まる。さらに同一格位の 機関は相互に利用,依存,連絡,提携,調整の便を求めて近接立地する動機をもつ。現代におけ る生産機関,金融機関,情報機関,行政機関などの相互の癒着とその地域的投影としての首都や 地方中心都市の肥大化についてはすでに多くの研究が積み上げられている。立地依存的な諸機関 は国土における有利な位置に蛸集する。温泉湧出地に各種ホテル,旅館が立ち並ぶ情景を想起せ ょ。また,古くから工業における「集積の利益」として論ぜられている課題も同じカテゴリーに 属する。水平的集積にはこのように,求心的構造のものと立地論的構造の2種類があげられる が,これについてはさらに詳しく次項でとりあげたい。
ここでは機関が縦に垂直的に集積する場合,都市営力=都市の形成発展において異質的な機能 を果すとみなされる基盤型機関と非基盤型機関について一応の類型設定を試みておく。そして両 者は単に空間的機能における異質的な機能分化にとどまらず,一都市内における支配と従属とい
21) 清水馨八郎,「地理学的考察~ (日本都市学会編,『都市学の進展と地 城理論」 1968年) 75頁。
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う階層分化とも深くかかわり合う類型構成とも考えられる。
都市の産業活動に主として都市の外部に働らきかける活動と,その結果として内部に新しい需 要が生じ,それを充足するための活動という 2種類を分けることは1920年代より都市経済,都市 計画,都市地理などの分野で並行して進められてきた。そしてそれを整理し,その重要性を指摘 したのはR.B.アンドルースである22)。すなわち都市の産業活動のうち,都市の外部地域に働き かける活動部分をとくに都市産業の baseとよんで,他の活動部分から区別する発想である。そ して都市の内部の必要から起ってくる活動部分を前者の basicに対して non‑basicな活動とす る。都市活動におけるこのbasic,non‑basicの区別はすでにw.ゾンバルトの都市創設者(Sほd‑ tegrtinder)と都市充当者 (Stadteffiller)の区分という古典型見解以来,主として都市地理学 者の間で精錬されてきた概念である。両者の区別はおよそ次の3つの意味があると思われる。
第1は,都市の発展を規定する要因の発見である。都市が存立し発展するためには,その収源 は都市の外部に求めなければならないのは事実である。これはいわば国における輸出活動にあた るものであり,都市も1国の経済と同様,この活動を通じてその盛衰が規定されるという発想で ある。基盤産業はあたかも列車における機関車のごとく,より強力な機関車はより多くの客車や 貨車を牽引できる。この場合,客車や貨車はいうまでもなく,非基盤産業とその従事人口である
ことはいうまでもない。
基盤産業は都市営力のきめ手であり,この移出産業の活況,沈滞を決めるのは域外からの需要 である。だが,都市営力において作用する基盤産業は狭義の経済的範疇に属するものだけではな く,より広く非経済的な要素をも含んで解するべきであると思う。ゾンバルトはかつて農業生産 カの発展,農耕人口,農耕地域の広さを一定とした場合,より大なる住民の搾取度を伴う専制君 主国家の方がより民主的な政治制度,したがってより低い搾取度をもつ国家よりも大都市を出現 させる可能性を多くもつと主張した28)。 ローマ帝国は皇帝クラウディウス (A.D41)の時代に 最大の規模である125万に達したといわれるが, この厖大な人口は広大な属州支配と苛酷きわま る徹底した搾取の結果である。ローマは他の一切を顧慮することなく属州から食料その他を貢納 としてとり立てた。属州が荒廃し, もはや搾取に耐えられなくなると新しい征服地が求められ た。道路の設備,海運の整備,官僚制の充実もみなこのための手段であった。共和制末期から本 土のローマ市民には無料で十分な小麦が配付されたという。古代ローマの都市収入の巨大さを想 像するにあまりある。しかるに地方分権的な中世ヨーロッパ世界では都市人口は数千が普通で1 万をこえるものはまれであった。これは要するに土地の支配権が細分化され,したがって都市収 入が減少したからにほかならない。現代においても都市の盛衰における経済外的な要素を等閑視 することはできない。とくに旧城下町から出発した県庁都市級の地方都市は着実に人口の増加を
22) R.B. Andrews, Mechanics of the Urban Economic Base, Land Economics 1953 23) W. Sombart, Der moderne Kapitalismus, Bd. I. I. Halfte, S 130