企業からの分析依頼について
塩田 裕司
津山工業高等専門学校 教育研究支援センター 第2技術班 技術職員
【要旨】津山高専の地域協力は地域共同テクノセンターを通して地元企業からの技術相談を受付けている.走査型電子顕微鏡 と X 線マイクロアナライザーを使用し,企業が持参した製品の観察と成分分析を行っている.電子顕微鏡で観察できる試料に は様々な条件があり試料の前処理を行っている.企業の担当者に立会って頂き,製品についての詳細を聞きながらそれぞれの 要望に応じた分析を行っており,大変高い評価を受けている.
1.はじめに
津山工業高等専門学校では,平成7年に地域 産業等との交流を深め,地域産業の発展に寄与 するとともに,津山高専の教育研究の振興を図 ることを目的に「津山高専技術交流プラザ」が 発足した.また,津山高専技術交流プラザを通 じた活動や小・中学生および一般市民向けの公 開講座,そして地域企業からの技術相談のとり まとめ役となる地域共同テクノセンター(以下 テクノセンター)が平成15年に完成した.
津山地域では中小企業の製造会社が多く,高 度な測定解析機器を保持しておらず,地域協力 のための設備としてオートグラフ,走査型電子 顕微鏡(SEM)&X線マイクロアナライザー
(EDX),モーションキャプチャ等の装置が導入 され,各装置に教育研究支援センター技術職員 が保守担当となった.昨年度担当者が退職し,
私が担当する事となった SEM について報告する.
図-1 走査型電子顕微鏡
2.実施方法
テクノセンターには専属のコーディネータ ーが配置され,地元企業を訪問し,テクノセン ターが保有している計測機器の活用や技術相 談・共同研究などの取り組みを紹介している.
その技術相談で企業からの分析依頼がある.
企業からの分析依頼の受付けから分析終了ま での基本的な流れを図-2に示す. 企業から の依頼は,全てテクノセンターが受付け,技術 職員と企業との日程調整を行っている.
現在,私の実験・実習時間がなく,まとまっ た時間がとれる金曜日の午前中に分析依頼を 受けている.
図-2 分析依頼の基本的な流れ 企業からの分析依頼
テクノセンターが受付け
担当技術職員へ確認 テクノセンターが企業へ返答
立会いのもと分析
報告書を提出
3.内容
企業からの依頼で多いのが,自社製品のクレ ーム対策を目的としたものである.企業が求め ている情報を把握し,表面形状の撮影で傾斜を つけたり,分析では分布状況が把握したいのか,
定性・定量分析だけで良いのか,など最適な条 件を企業担当者と相談しながら必要な分析を 行っている.
SEM で観察できる試料には条件があり,試料 の調整が必要になる.導通性がない試料にはス パッタリング処理をし,粉末試料はテープに固 定し,固定できない場合はスパッタリング処理 を行う必要がある.
分析の基本的な流れは,まず表面形状の確認 で図-3に示すような異常個所を特定する.そ して様々な倍率や角度で撮影する.次に EDX で 分析を行う.表-1に示す定性・定量分析によ る結果の違いや,マッピングによる分布状況の 違いなどで何が原因として考えられるか企業 担当者と検討している.必要な分析結果をとり 分析した結果などを技術相談報告書に記載し テクノセンターに提出する.
図-3 異常個所の画像
表-1 定性・定量分析結果
元素 質量濃度[%] 原子数濃度[%]
O K 43.01 56.63 Na K 0.94 0.86 Al K 44.86 35.02 P K 6.26 4.25 S K 4.93 3.24 トータル 100.00 100.00
表-2 各年度の依頼件数と企業数
年度 件数 企業数 17年度 51件 11社 18年度 67件 8社 19年度 77件 14社 20年度 60件 10社 21年度 43件 10社
4.成果
最近 5 年間の依頼件数と企業数を表-2に示 す.依頼件数は年度によりばらつきがあるが,
各年度平均10社からの依頼がある.平成22 年度になり私が担当してから7月23日まで に,4社10件の分析依頼があった.コーディ ネーターが企業を訪問し,テクノセンターの計 測機器を紹介しているので今年度は新たに2 社から分析依頼があった.
5.課題とまとめ
前任者の引継ぎで SEM を使用しての企業から の分析依頼を行っている.前任者はほぼ専属で SEM の維持管理や分析依頼を行っていたが,定 員削減のため現在は専属者を配置できない状 態である.現在は金曜日の午前中に依頼分析を 行っているが,企業からの急な依頼があったり して金曜日以外にも対応する場合があり大変 な思いをしている.SEM を導入し7年目になり EDX が故障したり,不具合が起きたりと維持・
管理の面でも大変である.しかし企業からは製 品についての分析結果など,要望に応じた分析 を行っており大変高い評価を受けている.
私がまだまだ SEM に関して熟知していないた め,メーカーが開催する研修会などに参加し,
自身のスキルアップをはかっていきたい.また,
定員削減で技術職員の繁忙化が進む中,地域貢 献や企業からのニーズに対して技術職員全員 でサポートできる組織体制を構築していくこ とが今後の課題である.