ハ兄≡一〇 苑
満 蒙 事 愛 と 國 際 聯 盟
苫米地英俊
●
去る九月十八目に突如勃襲した満蒙事攣は國際聯盟
との關係に於て寧ろ悪化し︑世界の重大問題となり︑
吾國は今や一大危機に直面すること製なつた︒本問題
の塵理に當つて若し一歩事を過れば國際李和の殿堂は
崩壌する運命に立ち︑我國は浮沈の深淵に臨むことに
なるやも計り難い︒於是乎内外の議論が沸騰して︑或
満蒙事墜と國際聯盟 は國際聯盟腕邊をも欝せずと硬論するあり︑東京駐在
大公使引上げ乃至は経濟絶交を以て吾國を脅迫せんと
する議ありと風評せられてゐる︒然るに我國民申には
世界の大勢に通ぜざるのみならす︑我國と満蒙との關
係すら正解し得すして︑或は極論に走り︑叉或は徒ら
に杞憂を懐くものがある︒
凡そ國際關係の諸問題は彊腰ばかりでよき解決を得
らる﹂ものでなく︑さりとて浮腰では正當なる主張も
入三
滴蒙事愛と國際聯盟
貫き得ぬ恐れがある︒我國が國際聯盟を脱退しても必
すしも聯盟崩壌とはならぬばかりでなく︑脱退は聯盟
の規定する制裁の冤除を意味しないことは聯盟規約第
十七條第三項で明かである︒而も我日本が過去十飴年
に亘つて國際聯盟の稜達に努力し︑國際準和に貢献し
來つたことが無意味になる︒併しながら國際聯盟をし
てその判断を過らしめ︑我國の生命線に危害を與へし
むるが如きは断じて許すべからざるところである︒
この重大時期に際して國民はよろしく冷静を保ち︑
事に當つて善塵し︑満蒙事攣をして軌道より逸走せし
むることなき細心の注意を梯ふと同時に︑叉最悪を十
分豫想して︑確固たる決心と︑銀苦持久の用意とを持
つべきである︒
醐一
十月二十四日の國際聯盟第二次理事會に提出せられ
た決議案が我國の代表を除く他の十三票をかち得たこ 八四
とは吾人の頗る奇怪に感するところで︑世間ではこれ
を稻して﹁認識不足﹂と呼んでゐる︒而して我國民申
には聯盟理事會が=彊國の國策途行に利用せられ︑
その偲偲となり奴隷となつて國際問題に公正なる判噺
を喪つたのだと憤慨する向も勘からすある︒
國際聯盟の各國代表者が各々國策を背景として動い
た傾は確かに認められる︒そして支那も亦巧な宣傳戦
を用ひ︑各方面の外人を利用して公正なる判噺を過ら
せた事實も否定し難い︒併し同時に我一般國民も亦果
して満蒙問題に付疋確なる認識を有し︑事攣勃嚢の必
然性と自衛横獲動の不可避とを十分知悉し居るやに疑
なきを得ぬ︒こ︑に満蒙問題の本質を明かにする必要
を鍋える︒
近時よく耳にする世論によると︑満蒙の利櫃は日清
日露の爾役を経て︑十萬の生漿と二十億の財寳とを投
じてかち得たるもので︑條約により確認せられてゐる
ものであるが故にどこ迄もこれを保持すべく︑正當の
権利として主張しなければならぬといふ瓢のみを強調
してゐる︒悪した主張が動もすれば日本は軍國主義の
國であるとの誤解を海外に招く恐があり︑叉現に招い
・てゐる事實もある︒
満蒙は我國の生命線である︒満蒙の問題は︑その性
質が政治的︑軍事的︑経濟的であると︑將叉それが肚
會的︑思想的であるとを問はす︑総て我生命線上の問
題である︒満蒙に於ける総ての問題が直ちに我國の死
活にか玉はるといふ事實が我國をして已を得す十萬の
生難と二十億の亘財とを犠牲にせしめたのである◎
満蒙が若し日本に封する他國の策源地たるが如き事
態が起つたとするならば︑我國民は全く安佳の地を喪
ふことにならう︒國艦叉は政饅に封する重大なる影響
を蒙ることもあり得る︒國防を全し得ぬ危瞼の生する
ことも起り得る︒又経濟産業生活の脅威を惹起するこ
ともあり得る︒而してその影響を受くる程度は策源地
を支配する力の張弱に依て定まるのであるから︑その
満蒙事慶と國際聯盟 劃策者が支那自身であると︑第三國であるとに依て攣
化を生するものでない︒
満蒙問題は激米人が世界到る虞に領土︑殖民地︑叉
は租借地等を獲得し︑その利欲を恣にし來つたのとは
本質に於て全く異る︒近世史は軍國主義︑資本帝國主
義と︑これに依て建設された産業の嚢達との記録であ
る︒かくて欧米は職前に於て既に飽和状態となり︑現
歌維持政策が平和論を産み︑現状に満足し能はざる猫
逸の侵出が欧洲大戦となり︑職争の惨劇は平和思想を
助長した︒この時代に於て我國民が満蒙の生命線であ
る所以を強調しないで︑利椹を云々するが故に黒き史
的背景を持つ各國民に樹し誤解を惹起すことになるの
である︒
満蒙の生命線を防衛するのは我國の自衛樺の焚動で
あつて︑それは利樺拉に駐兵に關する條約を離れても
樹日本が當然有する権利であつて︑不職條約でも明か
に認めて居る國際法上の原則である︒満蒙に日本が利
八五
滴蒙事憂と國際聯盟
椹を有し︑駐兵が條約に依て認められてゐるといふ事
實は軍に具燈的の場合が明示されてゐるに過ぎない︒
元來利樺の保護に駐兵を許するいふことは國際慣例
からいふと例外的のことであるが︑これが各國に許さ
れてゐるのは支那の無力と不信とを物語るもので︑支
那政府が國内の安寧秩序を保つ丈けの實力を有せす︑
叉その誠實さを信頼し得ないためである︒斯る歌態の
もとにあつて若し満蒙が支那の手に全然委ねられたな
らば︑必す往時の滲劇を再び繰返さねばならぬことに
なるのは晴天に白日を仰ぐより伺明かである︒この故
に我國は満蒙に利権と駐兵権とを有して國家の生活線
を防衛することが緊喫なる要件となつたのである︒
今度の事墾に於て錦州に我偵察搬が自衛上無巳爆弾
を投下したことが國際聯盟を硬化せしめ︑米國々務卿
ステイムスン氏をして憂慮せしめ︑我國の軍除が錦州
方面に出動した報が傳はると聯盟に異常のセンセイシ
ヨンを起し︑ステイムスン卿の繹明問題までも惹起す 八六
のは何故であるか︒某國の利椹侵害を恐れるが故であ
る︒これに依て見るも満蒙利櫻保護の自衛樺行使が正
當である許りでなく︑各國の利槽が満蒙に錯綜するこ
とが如何に我國生命線防衛の障害になるか壁如實に見
られる課である︒︑
我國が満蒙開獲に精進すること鼓に二十有五年︑こ
の閤人智の限りを豊し︑科學の精を傾け︑十五億の資
本を投じ努力奮働至らざるなき有様であつた︒そのた
めに産業は飛躍的の進歩を途げ︑人ロは三十倍の激檜
を見︑而もその生活程度は昔日の比でない裕幅さを示
すに至つた︒昨年度の貿易総額は六億二千三百八十七
萬五千海關爾に蓮し︑支那國民が職調の街を遁れて満
洲に安佳の地をもとめて移佳し來るものが近年頗る多
く︑最近十五ケ年間に満洲の人ロが九百萬以上増加し
た事實は満蒙開嚢の成功を物語るものである︒
嘗て露國が満洲に事を構へた當時猫逸は近代國家の
意義に於て満洲は支那の一部でないと世界に聲明して
ゐる︒この事實から見ても若し我國なかりせば現在満
蒙が支那の領土であり得ないことは明かである︒併し
日本は支那の領土保全といふ恩恵的の立場から國蓮を
賭したのではなく︑自國の生命線防衛のために鹸儀な
く職つたのである︒從て職後に日本の需めたところも
その目的保持に必要なる最少限度で︑支那の領土橦を
確立せしめたのである︒且叉その後の開嚢により文化
の恩澤︑産業の幅利を第一に受けたものは満蒙の佳民
であるo支那本土に於けるが如き年々絶え間なき兵
臥︑惨禍︑謙求︑掠奪等を冤がれ︑而も滞鐵の施設に依
て病苦を署し︑敷育せられ︑物産は改良せられ︑産額
は増加し︑債額は昇騰し︑職業を與へられ︑かくして
得た満蒙佳民の利盆は實に計り知られぬものがある︒
第二に利釜を享有したものは支那自身である︒満洲
の秩序安寧が我國に依て維持せられ︑産業が開襲せら
れたるがために政府の牧入を檜加し︑支那自身の産業
が興り︑交通が開かれ︑その他一般文化の施設が可能
浦蒙事墜と國際聯盟 ●となつたのである︒
第三に利釜を受くるものは我國であることは勿論
で︑他の諸外國に比して頗る有利の地位にあることは
疑を容れない︒併しこれは資本と勢苦とに封する當然
の報酬であり︑決して門戸開放︑機會均等主義を侵し
て得たる不當の牧獲ではない︒
斯く観するときに我國の利権は共存共榮の基礎の上
に建設せられたる正當のものであつて︑支那叉は第三
國がこれに封して批議すべき何等の根擦をも認め得な
いのは明白である︒
三
この生命線が・支那の暴戻に依て近時頻に脅かされて
ゐる︒支那が三民主義を奉じて革命の旗を墨げたとき
から︑國権同牧︑打倒帝國主義︑平等條約の締結︑關
税の自主︑領事裁判の巖止その他各種の標語を設けて
國民運動を起した︒この運動の申心勢力はカラハンの
八七
満蒙事髪と國際聯盟
組織指導したところの左傾學生團であつた︒この左傾
國民運動を巧に利用し︑宣傳職に先づ勝を占めたのが
彼の蒋介石で︑彼は嘗て我が士官學校に學び︑後に赤
露士官學狡に政事を研究したことがあるQ革命蓮動の
頭初に當つて政事は赤露に︑軍事は日本に則るべきこ
とを公言し︑廣東の軍官學校に於て先づこれを實施し
た︒斯くて革命に成功し︑南京に都を遷したが︑その
成功の裏面には勢農政府の莫大なる援助のあつたこと
﹂︑日本を初め各國の同情が與つて力あつたことは否
み得ない︒而もその聞に各國闇に暗圃が絶闇なく行は
れ︑或る國の如きは支那に封して好意の押費さへする
に至つたので︑支那は諸外國を輕侮する慢心を生じ
た︒而も列國の歩調が紫れた間隙に乗じ︑干和思潮を
利用し︑これに基づく安全保障を悪用し︑條約を無覗
せる行動を敢てし︑先づ英國を槍玉に上げ排外蓮動の
火の手をあげ︑これに成功するや直に矛を我國に向
け︑日貨排斥を手始めに排日侮日の極を鑑し︑遽に族 入八
大同牧︑満⁝鐵奪還を唱ふるに至り︒邦人の生命財産を
脅し︑支那・満洲等に於て我國民の準和的佳居を不可
能に陥らしめ︑以てその目的を達せんと企つるに至り
而も近年に及び教育の神聖を汚し︑排日敷材を各學校
に使用せしむるに至つた︒斯る教育は軍に教育本來の
目的に反し︑その神聖を冒漬する許りでなく︑日支爾
國の親善關係を根底より永遠に破壊せんとする言語に
絶した暴學といはざるを得ぬ︒而も歴史の明示する我
國の悲幾なる犠牲より蒙つたる國恩を忘れ︑吾國の智
麟と資本と螢力とを以て築き上げたる文化的牧獲を掠
奪し︑その生命線を断絶せんとする暴戻に至つては國
民の断じて許し能はぬ所である︒而もこの聞に庭して
我國は久しきに亘り冷静を守り︑隠忍自重し︑國際平
和を念とし︑只管支那政府及國民の反省の日を待つた
のである︒年月を経ると共に事態は釜々悪化し︑支那
國民は上下を通じて我國を輕侮し︑事を構へて我國民
に迫るに至つたが︑支那外交部長王正廷氏が本年二月