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米国統一商法典下の 自己宛小切手の支払差止

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(1)

米国統一商法典下の 自己宛小切手の支払差止

蔑 木 慎 一

一 緒言

米国判例の潮流

1

自己宛小切手 の性質 2 統一商法典の規定

3

一般原則 の踏襲

・4 例外 の設定‑ 発行 当事者 間の詐欺 または約因の欠如

5 Hot e lRi v i e r a, I nc.Ⅴ.Fi r s tNat i onalBank& Trus t

Co.ofOkl ahomaCi t y

事件

6

約束手形的構成およびそれにもとづくアプローチ 7 発行依頼人 の抗弁 の援用

三 小括

一.緒言

債権者 た とえば売主が,債務者 た とえば買主 の売買代金債務の弁済能 力 を十 分 に把握 しえない場合,売主 は,しば しば買主 の取引銀行による信用 の裏付 け, すなわち広 い意味での保証を欲す ることがある。 また,買主 の側 も,取 引先 の 新規獲得等 を容易 にす るため,積極的 に銀行 の信用を利用す ることに意義 が あ る。 これを銀行 の側か ら観れば,自 らの信用をいわば商品 として顧客の利 用 に 供す ることであるといえよう。かか る業務 の典型 は,いわゆる支払承諾取 引で あるが,これにとどま らず,銀行が対価を得て顧客 に自らの信用 を提供 す る取 引は多岐にわたる。

渉外取引では,国際売買 に関 して,輸入信用状の開設業務がその代表である。

そ して,内国取引においては,売買債務 をは じめ,短期的 な債務 の決済 の ため

〔 1 31

(2)

にす るいわゆるビジネス ・チェックの発行業務がある。

ビジネス ・チェック

( bus i ne s sc he c k)

という用語 は,法律用語 と して定着 しているか否か必ず しも明 らかではないが,米国において,銀行 の支払保証小 切手

( c e r t i f i e dc he c k)

,自己宛小切手

( c as hi e r' sc he c k)

および銀行振 出の 他行払小切手

( bankc he c k)

など,銀行が何 らかの形で金銭債務を負 う流通証 券を総称する概念であり,銀行でない者を振出人 とす る通常の当座小切手す な わちパーソナル ・チェック

( pe r s onalc he c k)

に対す る用語である。取 引界 に おいて,ビジネス ・チェックは,銀行信用を背景 に,パー ソナル ・チ ェ ックよ

りも支払が確実なものとして,現金 に相当するものとみなされている。

ところで,銀行が何 らかの形で金銭債務 を負 う流通証券を現金 と同様 に扱 う という政策を徹底 させるためには,かか る証券の決済,換金の確実性 の確保 が のぞまれるわけである。 この一環 として,米国においては,古 くか ら証券上 の 債務を負 っている銀行の当該証券に対す る法律上の支払差止権の問題が焦点の ひとつになってきた。

本稿 は,わが国 と法制 と異なる米国の ビジネス ・チェック,とりわ け自己宛 小切手の発行銀行による支払差止権の問題を,統一商法典下の判例を中心 と し て検討 し,わが国におけるビジネス ・チェック制度のあるべ き姿の見直 しを 目 指す準備作業 とするものである。

二 .米 国判 例 の潮流 1.自己宛小切手の性質

最初 に,自己宛小切手が米国において どのような性質の証券であると考え ら れて きたのか概観 してみよう。

今 日の統一商法典中に,自己宛小切手 という用語それ自体を明確 に定義 した 条文 はない。 しか し,当該証券の性質を叙述す るために,従来か ら裁判所 にお いて確立 されて きた定義 に従えば,自己宛小切手 は,銀行によって 自 らの資金 を引当てとして振 り出された為替手形であって,当該銀行が振出人 と支払人 と を兼併するものである。換言すれば,自己宛小切手 は,銀行が自 らを支払人 と

(3)

米国統一商法典下の自己宛小切手の支払差止

1 3 3

して振 り出 した為替手形である1)0

自己宛小切手 の発行依頼人 は,発行銀行 の顧客であった り,一見の客であ っ たりす るが,この者 は,小切手の 「買主

( pur c has e r )

」 という表現で示 される。

したが って,自己宛小切手の発行 は,当該小切手の売買であると捉え られてい 2)0

実務上,自己宛小切手 は,上のような買主の請求 によって振 り出 され ること が一般的である (以下,買主を発行依頼人 と記す る)。発行依頼人 の氏名 は, 通常,証券の当事者 として券面に表示 され ることはない。 しか し, しば しば発 行依頼人が受取人 として表示 され,これによって発行依頼人が当該小切手 に裏 書をな した うえで,これを譲渡す るという場合 もある3)0

自己宛小切手を為替手形の一形態であるとす る捉え方 は,統一商法典制定前 か ら,米国判例がとる伝統的な立場であるといえる4)。米国判例 の主流 は,自 己宛小切手 は為替手形であって,かかる証券を振 り出す行為 は,発行銀行 によ る証券の引受 に相当す るものであると解 してきた5)。そ して,この見解 に基礎 を置いて,発行銀行および発行依頼人 は,自己宛小切手 に関す る支払差止権 を 否定 されるというのが,統一商法典制定前の判例 によって確立 された一般原則 であった6)

1

)Dav i dJ.Be ns on,St o p PayT ne ntO fCas h , i e r' sChe c ksandBankDr a ft s unde rt heUni for m CoT nme r C i alCode ,201 1 I O No R T H E R NL.RE V l 4 4 5,4 4 5 ( 1 9 7 5 ).

2 )Se eJE F F R E YB.RE I T M

AN (

e ta

l.)

,BA N K I N G

LAW §

1 3 3.1 0〔1

( 1 9 9 0 ).

3 )Dav i dJ. Be ns on,s u pr a̲ not e1at4 4 5 ‑ 4 4 6.

4)Wal ke rv.Se l l e r s,2 0 1Al a.1 8 9,7 7 S.7 1 5 ( 1 91 8); Dr i nkal lv.Mor i ons St at eBank ,l lN.D.1 0,8 8N.W.7 2 4 ( 1 9 01 ); Cans e y v.Ei l and,1 7 5 Ar k.9 2 9,1S.W.2 d1 0 0 8( 1 9 2 8 ); Kohl e rv.Fi r s tNat ' lBank,1 5 7Was h.

4 1 7,2 8 9P.4 7( 1 9 3 0 ).

5 )Dav i dJ.Be ns on, s u pr anot e1 ,at4 4 6.

6)Sc ot tv.Se aboar d Se c ur i t i e s Co" 2 2 5 P.6 6 0 ( Was h.1 9 2

7

) . , Manu‑

f ac t ur e r s

&

Me c hani c sBankv.Twe l f t hSt .Bank,1 6S.W.2 d1 0 4( Mo.

1 9 2 9 ).Se eDav i dJ.Be ns on,s u pr anot e1 ,at4 4 6.

(4)

1 3 4

2.

統一商法典の規定

現在の統一商法典 は,自己宛小切手の支払差止の可否 に関す る明文の規定 を 設 けていない。 しか し,小切手一般の支払差止に関 し,4‑

40 3

条が設 けられてお

り,同条

1

項の第

1

文 は,次のように規定 されている。

顧客 は,銀行 に対す る命令 によって,自己の勘定を引当て として支払 わ れるべ き支払手段の支払を差 し止めることができる。

自己宛小切手の発行依頼人が同条項にいう顧客 に該当 しないことは明 らかで ある。同条項 は,顧客に,顧客 自身の勘定を引当てに支払われるべ き支払手段 の支払を差 し止める権利を与えているにすぎないか らである。 自己宛小切手は, 顧客の勘定ではな く,計算上,銀行 自らの勘定を引当て とす るのであ る。 もっ

とも,自己宛小切手が引当てとす る資金 は,実質的に見れば発行依頼人が出指 するわけであるか ら,この小切手を,発行依頼人の勘定を引当てに支払 われ る べ き証券 と言 いうると示唆 した判決 もないわけではない7)。 しか し,この判決 は,上級審8)において

,

「自己宛小切手 は,統一商法典4‑

403

条 の意味 における 顧客の勘定を引当てとして支払われるべ き支払手段ではない9)」 と明確 に否定

されている。

また,自己宛小切手の勘定処理のうえで,自行に勘定を有す る発行銀行 も

,4 ‑

403

条 にいう顧客に該当 しない。「顧客」 という用語 に関 して,統一商法典4

‑ 1 0 4

1

e

号 は,これを 「銀行に勘定を有する者 または銀行が支払手段の取立委 任を受けた相手をいい,他行 に勘定を有する銀行を含む」 と定義 してお り,銀 行でない者あるいは銀行であれば 「他行」 に勘定を有す る者を対象 とする概念 であるか ら10)

,

「自行」 に勘定を有する銀行 はこれに含 まれない。

7 )Dz i ur akv.Chas eManhat t anBank,N. A. ,3 3 8N. Y. S.2 d4 9 6,2 0U. C. C.

Re p.Se r v.4 2 7( 1 9 7 6 ).

8)Dz i ur akv.Chas eManhat t anBank,N. A"4 0 6N. Y. S. 2 d 3 0,2 3u C. C, Re p.Se r v.9 5 8( 1 9 7 8 ).

9 )Dz i ur ak,2 3U. C. C.Re p.Se r v.at9 5 8.

1 0 )U. C. C.§4 ‑ 1 0 4

(1)(e)

andOf f l C i alComme nt3.

(5)

米国統一商法典下の自己宛小切手の支払差止

1 3 5

以上の理由により,統一商法典

4 ‑ 4 0 3

条が 自己宛小切手 の発行銀行 または発 行依頼人に支払差止権を付与するものであるとの構成 は排斥 される。

次 に,一定の事実が生 じた場合,支払差止命令が効を奏 しないとい う趣 旨の 規定がある。統一商法典

4 ‑ 3 0 3

1

項がそれである。

支払銀行が‑‑支払差止命令を受領 し,‑・‑それに基づいて行為す る相 当の期間が経過す るか相殺を主張する前 に;次のいずれかの行為をなせば, そのような‑‑‑支払差止の受領‑‑・は,支払銀行が支払手段を支払 いまた は支払手段 につ き顧客の勘定を引き落 とす権利義務を終了 させ,中止させ, 修正 させるためには,遅 さに失 したことになる。

そ して,同条項 において

,a

号か ら

e

号 までの行為が列挙 されているが,そ

a

号 は

,

支払手段の引受 または保証をなす こと」 と規定 されている。

次節で詳述するように,この条文 は,自己宛小切手の性質論 と相 まって,発 行銀行による自己宛小切手の支払差止権の問題 に,決定的役割をはたす ことに なるのである。

3.一般原則の踏襲

統一商法典制定後 も,米国判例の主流 は,自己宛小切手 を,発行銀行 によ っ て引き受 けられた為替手形であると解 し,発行銀行 は,原則的に自己宛小切手 の支払差止をな しえないとの見解を維持,踏襲 した。

一例 として

,Nat i o na lNe wa r k & Es s e xBa nkv.Gi o r d ano

事件11)を挙 げ てみよう。以下のような事実の下 に争われたものである。

Y

,F

か ら トラック

2

台を

9, 5 0 0

ドルで購入 した。 その代金 をⅩ銀行か ら の借入金でまかな うべ く,Yは,Ⅹ銀行 に

9, 5 0 0

ドルの借入申込をな し,銀行 は 融資に応 じることにな った

。Y

,9, 5 0 0

ドルを

2 4

回 に分割 して返済 す る旨の

l l )Na , t i o nalNe wa r k & Es s e xBa nkv .Gi o r da no,1 1 1NJ.Su pe r .3 4 7 ,2 6 8

A.2 d3 2 7 ,7

U.C.C

,Re p.Se r v .1 1 5 3( 1 9 7 0 ) .

(6)

1 3 6

約定書に署名 したが,当該約定書 には

,Y

が返済を怠った場合にⅩ銀行が トラッ クの所有権を取得する旨の合意が含まれていた。かかる合意が成立後,Ⅹ銀行 は,額面

9, 5 0 0

ドル,受取人

F

の指図式 自己宛小切手を発行 し,この小切手 は, Yか らFに交付 された。 ところがその翌 日,Yは,購入 した トラックが欠陥品 であると判明 したことを理由に,ただちにⅩ銀行に自己宛小切手の支払差止 を するよう要求 したが,銀行 はこの要求を拒絶 した。その後,自己宛小切手 は裏 書譲渡のうえ,最終所持人によって支払呈示 され,結局決済 されている。 この 処置を不満 として,Y,Ⅹに対す る返済を中止 して しまった。 そ こでⅩは,

Y

との約定 に従 って トラックを取得 し,これを

1 , 5 0 0

ドルで売却,貸付金債権に 充当のうえ,残額の弁済を求めてYを訴えた ものである。

本件 において

,

Ⅹ銀行が自己宛小切手の支払差止をなす ことが可能で あ った か否かが最大の争点 となったが,裁判所 は,以下のように述べている。

「自己宛小切手 は,銀行によって自らを支払人 として振 り出された為替手形 である。 自己宛小切手を振 り出せば,銀行 は,呈示 に際 して券面 に表示 された 金額を支払 う一次的義務を負 うことになる。その発行行為 は,将来に効力を生 じる取引ではな く,む しろその時点で履行済 となる売買である。 それ は,発行 依頼人に対 してす る銀行 による信用の売却である。‑‑・銀行 は,振出人 と支払 人 とを兼併す る。銀行 は,自らの資金か ら券面額を支払 うことを約束す るので ある。それゆえ,自己宛小切手の発行 は,発行銀行 による当該証券 の引受を構 成すると言わなければな らない。 〔統一商法典

〕3 ‑ 41 0

1

項 に規定 された引 受の要件 は,発行銀行の代理人が 〔振出の〕署名をなす ことにより満たされて いる。か くして,自己宛小切手 は,その発行時に,支払のための引受 がなされ ているとの原則が定め られるのである。

〔統一商法典

〕4 ‑ 3 0 3

条の規定の下で,支払差止命令 は,その命令が銀行が支 払手段を支払 う権利 または義務を終了 させまたは中止 させ るために別の法令の 下で有効であると否 とにかかわ らず,銀行が支払手段の引受または保証 をな し た後 にこれを受領 したのであれば,遅 さに失 したことになる。 自己宛小切手は, 発行時に引受 けられているのであるか ら,実際上

,4 ‑ 3 0 3

条 は,ひとたび自己宛

(7)

米国統一商法典下の自己宛小切手の支払差止

1 37

宛小切手が発行 されたな らば,この証券の支払を差 し止めることを不可能 にす るのである。

自己宛小切手の支払差止に対する法律上の禁止 に加えて,この種の小切手 の 性質および用い られ方が,かかる原則を必要 とす る。 自己宛小切手 は,取 引界 において,現金に相当す るものとして流通 している。個々の者で はな く,銀行 がその背後 にあるがゆえに,人々は,自己宛小切手を現金 に相当す るもの とし て受け入れる。事実,銀行 は小切手金額の引受人 となり,呈示 に際す る券面額 の支払 に備えて,自らの資金を取 り分 けている。かかる証券 の支払差止 を銀行 に許す ことは,小切手の発行の際に銀行がな した意思表示 に合致 しない もので ある。 このような原則 は,銀行およびその小切手の公的信頼を害す るものであ ろうし,それゆえ,自己宛小切手を役立 たせているその本質的な部分 を奪 うこ とになって しまうであろう。 もし自己宛小切手の換金 には何 らの障壁がないと いう点が確たるものでないとすれば,人々は,もはや これを現金 に相当す るも のとして受 け入れな くなるであろう12)。」

結局,Ⅹ銀行が支払差止を しなか ったことは正当であったとされ,Ⅹ勝訴 と なった。

同様の結論を採 るものとして,Kauf

manv.Chas eManhat t anBank,N. A.

事件13)がある

。Y

銀行 は

,A

の請求により

,A

の預金勘定 の残高 を見合 いに,

Ⅹを受取人 とす る自己宛小切手を発行 した。 しか し,Aは,本件 自己宛小切手 相当の金員を出指 しなか った。そればか りか,Aは,預金 も引き出 して しま っ

たので

,

Y銀行 は,自己宛小切手の支払を差 し止めた。そ こでⅩが

,

Y に対 し て小切手の支払を求めた ものである。

裁判所 は,ひとたび自己宛小切手が発行 され,これがⅩに交付 されれば,Ⅹ に対するか ぎり当該取引は完結 し

,A

の預金勘定か ら

Y

が小切手金額を取得 し

1 2 )Nat ' lNe war k & Es s e xBank,7

U.C.C.

Re p.Se r v.at1 1 5 4 ‑ 1 1 5 6.

1 3 )Kauf manvIChas eMa nhat t anBank,N・ A"3 7 0F.Supp.2 7 6,1 3

U.C.C

Re p.Se r v.4 7 7( S. D. N. Y.1 9 7 3 )

(8)

えなか ったことは,Ⅹの受領権限に何 ら影響するものではないとした うえで1

4 ) ,

統一商法典4‑

303

条を引いて

,

「自己宛小切手 は発行の時点で引受 け られている のであるか ら,銀行の支払差止のおよばないところにある15)」 と判示 している。

4.

例外の設定‑ 発行当事者間の詐欺または約因の欠如

自己宛小切手の支払差止禁止の原則が定着することにより,かかる小切手が 現金 に相当す るものであるという考え方を徹底 させて,発行銀行が決済 を撤回 す るという何 らかの権利を留保 していないか ぎり,自己宛小切手の発行 は現金 の支払 と同一であるという趣 旨の判決が見 うけられるに至 った16)。 さ らに,ビ ジネス ・チェックを授受することは,あたか も現金を授受す ることに相等 しい との判断が示 された判決 も存在する17)0

その結果,不正な取引を通 じて,現金の詐取にかえて,換金性 の保証 された 自己宛小切手を詐取 しようとす る企みが生 じるようになった。それゆえ,自己 宛小切手の支払差止の禁止 という一般原則 に対 して,発行銀行がその例外 の設 定を裁判所に求 める事例が,少なか らず存在することになったわけである。

一例 と して,Ande

r s on,Cl ayt on & Co.Ⅴ.Far me r sNat i onalBank of Cor de

ll事件18)を挙げてみよう。

Ⅹは,養豚家Sに対 して飼料を供給 し,その売掛金債権を有 してお り,一方, Y銀行 は,Sに対 して豚を購入する費用を融資 していたⅩおよびY銀行 は, その債権保全のため,ともにSの豚 に担保的利益を有 していた。ⅩYは,折衝 のうえ,両者の担保的利益の優劣に関する取 り決めをな し,ⅩがS所有 の一部

1 4 )Kauf man,1 3

U.C.C.

Re p.Se r v.at4 7 9 ‑ 4 8 0.

1 5 )I d.4 8 0 .

1 6 )Ci t i z e ns&・ Sout he r nNat ' 1Bankv.Youngbl ood,1 3 5Ga.App.6 3 8,2 1 9 S. E.2 d1 7 2( 1 9 7 5 ).

1 7 )st at eDe par t me ntofTr e as ur yv.Bankoft heCommonwe al

t

h,31 4N. W.

2 d6 8 8( Mi c h.1 9 8

1);

Fabme tCor p,Ⅴ.DJ.Andr e wsCor p. ,3 6

U.C.C.

Re p.Se r v.8 8 7( Bankr.Ct .W. D. N. Y.1 9 8 3 )

.

1 8)Ande r s on,Cl ayt on

&

Co.V.Far me r sNa

t

' 1Bank ofCor de

l

l ,6 2 4F・

2 d1 9 5,2 9

U.C.C.

Re p.Se r v.9 5 4( l o t hCi r.1 9 8 0 ).

(9)

米国統一商法典下の自己宛小切手の支払差止

1 3 9

のグループの豚およびその売却代金 についてのみ,優先権を有す る旨の合意が 成立 した。 しか し,Ⅹは,当初の合意を超える範囲の豚 についてY銀行 に優先 した担保的利益を有す る旨の約定書を作成 し,Y銀行の代表者を して これに署 名させた。その後

,S

は,数回にわた り一部の豚を売却 したが

,ⅩY

は,とも にその売却代 り金を自己の債権の弁済 に充当 しようと考えた

。Y

銀行 は,い っ たんSか らその売却代 り金を受納 したが,Ⅹとの約定な らびに自己およびⅩが 通知 してきたⅩの

S

に対す る債権残高等を勘案 した結果

,S

か ら受納 した金額

2 9, 0 00

ドルをⅩに引き渡 したとして も自己の債権保全に支障はない と判断 し,

Ⅹに対 して,同人を受取人 とす る

2 9, 000

ドルの自己宛小切手 を作成 し,これを 交付 した。 ところが,後 になって

,

Ⅹとの約定書の内容が当初の合意 と異 な っ ていた こと,および,Ⅹが故意 にSに対する債権残高を過少 にY銀行 に通告 し ていたことが判明 したため,Y銀行 は,Ⅹに編 されたとして,自己宛小切手 の 支払を差 し止めた

Ⅹは,自己宛小切手の支払差止の禁止の原則 を主張 して, Y銀行 に本件 自己宛小切手の支払を求めて訴を提起 した ものである。

裁判所 は,自己宛小切手が銀行 によってあ らか じめ引受 け られた為替手形 で あり,銀行 はその支払差止を許 されないという一般原則を認めつつ も19

) ,

「自己 宛小切手の受取人が直接 に銀行 と取引を し,かつ支払銀行か ら当該小切手 の発 行を得 るために何 らかの詐欺をな した場合」および 「直接 に支払銀行 と取引を した受取人側に起因す る約因の欠如の場合」 に例外を認めて,支払銀行 が支払 差止をな しうると述べている20)。本件 において,裁判所 は,ⅩがY銀行 に自己 宛小切手を発行 させようとして,自己の

S

に対す る債権残高につ き詐欺 的な不 実の通告をな したと認定 した21)。そ して

,X

,goodf ai t hで行為 していない

のであるか ら正当所持人 とはいえず,また,か りに正当所持人であ った として ち,本件小切手の取得につ き直接 にYと取引を したのであるか ら,詐欺 の抗弁 の対抗を受 けると判示 している22)

F]

.

5

i

f‑iL'

.;:.

..

An

此花乃

ヽI

ヽ′ヽノー

Cl ayt on

&

C

0

. ,2 9

U.C.C.

Re p.Se r v.at9 5 8.

(10)

1 4 0

同様 の例 と して,Tr

aviCons t r uc t i on Cor p.Ⅴ.Fi r s t Br i s t olCount y Nat i onalBank

事件23)を挙 げることができる。

Ⅹは

,L

が振 り出 し

,Y

銀行を支払人 とする金額7,

5 00

ドルの当座小切手を所 持 していた

Ⅹは,当該小切手 と引 き換えに,自己宛小切手を発行す るよ う

Y

銀行 に依頼 した。その時点で,L振出の小切手 は,すでにLによって支払差止 がなされていたが,Y銀行 は,その差止を失念 して自己宛小切手 の発行 に応 じ て しまった。後 に,これに気づいた

Y

銀行 は,本件 自己宛小切手 の支払 を差 し 止めた。そこで,Ⅹが この自己宛小切手の支払を求めてY銀行を訴えた もので ある。

裁判所 は,一定の状況の下では自己宛小切手の発行銀行がその支払差止 を認 め られるべ きであるとして

,

「自己宛小切手が銀行 と取 引を した者 によ って所 持 されている時は,約因の欠如のゆえに発行銀行 は当該 自己宛小切手 を支払 う

ことを拒絶 しうる24)」 と述べている

Ⅹは

,L

がその当座小切手 の支払 を差 し 止めていることを知 らずに本件 自己宛小切手を受領 した と主張 したが

,

「自己 宛小切手の約因の欠如 は,受取人 によるその呈示があった場合 に,決済 を拒絶 す る結果を招 くとともに,銀行 にはそ うす る権利がある25)」 と判示 された。

上 に挙げた2つの例 は,発行依頼人が受取人かつ原告であって,これ以外 の 第三者 は登場 しない ものである。統一商法典3‑

305

2

項 によれば,正 当所持 人でさえ も,その直接 に取引を した者の抗弁を免れて証券を所得することはあ りえない旨が明定 されている。 したが って,かか る例 において は

,

「自己宛小 切手の流通性および信頼性を鼓舞すべ き政策への強 い配慮 をなす必要性 はな 26)」 ことになろう。 この場面では,従来の一般的な流通証券法理 がそのまま 適用 されている。

2 3 )Tv av iCons t r uc t i onCor p.Ⅴ.Fi r s tBr i s t olCount yNat ' 1Bank,4 0 5N. E.

2 d6 6 6,2 9

U.C.C.

Re p.Se r v.1 8 8( Mas s.App.1 9 8 0 ).

2 4 )Tr av iCons t r uc t i onCor p. ,2 9

U.C.C.

Re p.Se r v.at1 9 0.

25)Id.192.

2 6 )Ande r s on,Cl ayt on

&

Co"2 9

U.C.C.

Re p.at9 5 9.

(11)

米国統一商法典下の自己宛小切手の支払差止

1 4 1 5.Hot elRi vi e r a,J n c .V.Fi r s tNat J ' onaIBanka Tr u s tCo.of

Okl ah omaCi t y事件

前節 と異なり,自己宛小切手に基づ く請求者が発行依頼人以外の第三者であ る場合 において,支払差止の可否 に関す る判例の結論 には,主 として 自己宛小 切手 という証券の特異性を理由に,かな りの振幅があるように思われる。

結論 に差異 があるとい う象徴的な例 と して,Hot

e lRi vi e r a,I nc .Ⅴ.Na‑

t i onalBank & Tr us tCo.ofOkl ahomaCi t y事件を挙げてみよう。 自己宛

小切手発行の原因契約 に詐欺があったものの,その詐欺を知 らずに裏書譲渡 を 受けた所持人が原告 と して登場 した例 であ るが,Di

s t r i c tCo ur t

27)と

Cour t ofAppe al s

28)で,その結論が反対 となった ものである。

この事件 は,以下のような事実の下に争われた。

P,A社の副社長であ ったが

,

Y銀行 か ら金員 を詐取 しよ うと企 てた。

1 9 8 2

1

5日

,Pは,A社を振出人 とし,A社の実在の取引先 を受取人 とす る額面48

, 0 0 0

ドルの当座小切手を作成 し,当該取引先の裏書 を偽造 の うえ,そ の小切手をオクラホマ州のY銀行のPの個人 口座 に入金 した。Pは,当該 口座 の預金を引当てとす る金額2

5 , 0 0 0

ドルの小切手を振 り出 し,この小切手 と交換 に,同額の自己宛小切手の発行をY銀行 に依頼 した。Y銀行 は,これに応 じて, 他店券過振 りにより (すなわち,Pの口座 に入金 された

A

社の小切手の決済 に 懸念な しと決断 して) Pの口座残高を引き落 とし

,P

を受取人 とする本件 自己 宛小切手 を発行 し,同人に交付 した。翌

1

6

,Pは,本件 自己宛小切手 を 携帯 してネバダ州の ラス ・ベガスに赴 き,Ⅹホテルに投宿,そこで賭博 をな し,

Ⅹに債務を負 うに至 った。 このため,Pは

,

Ⅹに本件 自己宛小切手 を裏書譲渡 した。 この際,Ⅹは,Y銀行 に電話を し,本件小切手が真正 に振 り出 された も

2

7

)Hot e lRi v i e r a,I nc .V.Fi r s tNa

t

' lBank & Tr us tColofOkl ahoma ci t y,3 8U. C. C.Re p.Se r v .2 1 9( W. D. Okl a・1 9 8 3 ) ・

2 8)Hot e lRi v i e r a,I nc .Ⅴ.Fi r s tNat ' 1Bank

&

Tr us tCo.ofOkl ahoma

ci t y,4 1U. C. C.Re p. Se r v.3 6 3( l o t hCi r.1 9 8 5 ) I

(12)

のか否か照会 して,大丈夫であるとのYの返答を得たうえで,これを取得 した。

Ⅹは,直ちに自己の取引銀行を通 じて,これを取立手続 に付 した。翌

1

7

日, Pは,オクラホマ州 に戻 り,Y銀行の自分の口座か ら残金をすべて引 き出 して 失綜 した。PY銀行 に預入 したA社の小切手が,18日に,裏書偽造 を理 由に不渡返還 されて きたため

,Y

銀行 は,本件 自己宛小切手の支払 を差 し止 め たところ

,1

1 2

日,本件 自己宛小切手が取立銀行を通 じて支払呈示 された。

当然にY銀行 は支払を拒絶 した。そこでⅩが本件 自己宛小切手の支払を求めて Y銀行を訴えたものである。

Ⅹは,自己宛小切手 の支払差止禁止の一般原則を前面に押 し出 して支払 を主 張 した。 これに対 しYは,賭博 に基づ く債務 は履行強制 しえないというネバ ダ 州法を根拠 に,賭博 の債務支払のため譲渡 された流通証券 は履行強制 しえない 旨,たとえ履行強制 しえて も,ⅩはPに対する原因債権が履行強制 しえない こ とを承知で本件小切手を取得 したのであるか ら

,ⅩP

間の原因契約上の堀庇 に よってⅩは正当所持人た りえず,詐欺および約因の欠如 という抗弁の対抗 を受 ける旨を主張 した。

両者の主張を前 に,Di

s t r i c tCour t

,P

の自己宛小切手発行依頼 の一連 の 行為が詐欺的行為 にあたるとするとともに,ⅩがかかるPの詐欺 またはPY の約因の欠如 に関 して善意であったことを認定 した29)。 その うえで,Di

s t r i c t Cour t

は,次のように述べてY銀行を勝訴 させた。

「 Y

銀行 に対する関係 につ き

,

Ⅹは 〔本件 自己宛小切手 〕が詐欺的に発行 さ れたものであることを知 らない所持人である。それにもかかわ らず,Ⅹは,賭 博行為 により,当該取引が非難 されるべ きであることを十分知 りつつ,対価 客 得て証券を譲 り受 けることを選択 したわけであるか ら,商業社会的観点 か ら言 えば,完全 に正 しいとは認め られない。統一商法典 は,Ⅹに正当所持人 た る地 位を与えず,その結果,Ⅹは,他の当事者 によって主張 され る有効 な請求権 お

よび抗弁の対抗を受 けることになる (統一商法典3

‑ 3 0 6

条)0

2 9 )Hot e lRi v i e r a,I nc . ,3 8U. C. C.Re p.Se r v.at2 2 9 .

(13)

商 学 討 究

4 1

2

143

‑‑自己宛小切手が発行の際に引き受 けられた ものとみなされるという基本 的原理 は,本件の判決 によって妨 げられるものではない。銀行 は,善意 の正当 所持人に対 して裏書 された自己宛小切手の支払拒絶 はで きないのである。‑‑

Pが本件 自己宛小切手を賭博の債務の弁済のために譲 り渡 し,Ⅹが当該取 引が 無効であることを知 ってそのようなものとして これを譲 り受 けたという事実は,

Ⅹを正当所持人の地位に立た しめることを妨 げるものである。Y銀行 は,Ⅹが 正当所持人でないという理由で,統一商法典

3 ‑ 3 0 6

C項 の下 でなす ことので きる詐欺および約因の欠如 という自らの抗弁を主張 しているにすぎないのであ る30)。」

この判決を不服 として,Ⅹが控訴 したわけであるが

,Co u r tofAppe a l s

は, 次のように述べて,Ⅹを勝訴 させた。

Co u r tofAppe al s

は,問題の焦点 は 「自己宛小切手 の詐欺的な取得に,関与 もしていなければ知 りもしない被裏書人が,詐欺的行為者の被 るべ き負担 を被 らなければな らないか否かである31)」 と位置づ けた。 そ して

,「

Ⅹが賭博行為

の債務の弁済 として本件 自己宛小切手の譲渡を受 けた ことは事実であるが,そ の譲受 は,Y銀行 に損害を生 じさせるものではない。本件 自己宛小切手 の発行 の際,入金 された当座小切手への

P

による偽造裏書 は,Y銀行が

P

の預金残高 を確認せずに自己宛小切手を発行 したことと相 まって,Y銀行 に損害を生 じさ せた

Ⅹはその損害に関知せず,その後

P

か ら裏書譲渡を受 けた ことは

,

Y銀 行の損失 とは無関係である32)」 と述べ

,

Y銀行 は,裏書 が賭博 による債務 の弁 済のためになされたか らといって,自己宛小切手の引受の効力を免れることを 許されるものではないと判示 している33)

さらに

,Co l l r tOfAppe a l s

は,かかる結論をとることは,ネバ ダ州法 の効力 を否定す るもので もなければ,正当所持人でない者 に対する人的抗弁の主張 を

)Id.2291230.

)Ho t e lRi v i e r a,I nc . ,4 1U. C. C.Re p.Se r v .a t3 6 5 .

)Id.366.

)Ibid.

(14)

1 4 4

許容す る伝統的な流通証券法上の概念を無視す るもので はないが,「自己宛小 切手の特異な性質を認めて,かかる証券の目的を果たす ものであ る34)」 と述べ ている。すなわち,「自己宛小切手 は,商業界 において 『現金 た る威光

( aur a ofc as h)

』を有 している。‑‑・発行銀行の支払確約の産物である自己宛小切手 に対 して普遍的な商業上の畏敬の念が存在することのみが重要なのであ る35) というのである。か くして,被裏書人が発行銀行を欺 くために何 もしていない 場合には,自己宛小切手の支払差止禁止の原則が貫かれるとし,約因 の欠如 の 抗弁 は,本取引には適用がないと結論づけたのである36)

伝統的な流通証券法理 によれば,約因の欠如 または失効 という事 由は,正当 所持人の権利を有 しない原告 によって流通証券 に基づいて訴え られた被告が主 張 しうる抗弁であるとされる37)。かつて米国統一流通証券法28条 は,「約因の 欠如 または失効 は,正当所持人を除 くすべての者 に対 して抗弁事由となる」 と 規定 していた し,これを受 けて,統一商法典

3 ‑ 3 0 6

C

号 も同 じ旨を明定 してい る。 したが って,本事件 における

Di s t r i c tCour t

の判断 は,統一流通証券法 以来の伝統的な流通証券法理 によって結論を導 いた ものといえるであろう。

これに対 して

,Cour tofAppe al s

は,自己宛小切手の現金代替性という側面, 商業社会におけるその特異な位置づけに着 目し,これを強調することによ り,

その決済の確実性をいっそう確保 しようとしている。 しか し,その理論 的根拠 は,伝統的な流通証券法理の観点か らは,不明確であるといえよう

。Cour tof Appe al s

のような結論をとる判例の根拠 は,自己宛小切手 という証券の特異性 か ら,その授受を 「履行済の信用 の売却

( e xe c ut e ds al eofc r e di t )

」 とみ る ことにあると思われると示唆す る見解がある38)

0Col l r tOfAppe al s

の考 え方 は,自己宛小切手の支払差止禁止に対す る例外の許容範囲をなるべ く狭 く解 し ようとす るものであ り,本章第

3

節で紹介 した

Nat i onalNe war k & Es s e x

34)Ibid.

35)Id.367.

36)Ibid.

3 7 )

C HARL

E SM.

W EBER. CoMMERCIAL P APER

2 3 1( 2 de d.1 9 7 7 )

3 8 )Se e Dav i d J. Be ns on ,Su pr anot e1 ,at4 5 3 .

(15)

米国統一商法典下の自己宛小切手の支払差止 145

Bank

事件の系譜 に連なるものであるといえる。 しか し

,Col ユ r tOfAppe al s

が採用 した信用の売却論 は,裁判所を伝統的な流通証券法理か ら遠ざけて しま うという危険のきざ しがある39),との指摘がなされている。

6.

約束手形的構成およびそれにもとづ くアプ ローチ

前節のような,自己宛小切手の支払差止の問題がやや もすれば伝統的 な流通 証券法理か ら帝離す るという傾向に対 し,この間題を出発点か ら考え直 そ うと する判例 も存在する。

統一商法典

3 ‑ 1 1 8

a

号 は,次のように規定 している。

証券が為替手形であるか約束手形であるか疑わ しい場合 には所持人 はこ れをそのいずれとして も取 り扱いうる。振出人を支払人 とする為替手形は, 約束手形 としての効力を有する

この条文を根拠 とすれば,銀行が作成 した自己宛小切手 は,銀行 の約束手形 であるとの構成が可能なわけである。

この構成 によれば,振出人の署名が引受 に相当す るという擬制が不要となる。

発行銀行 は,約束手形の作成人

( make r )

として扱われ,統一商法典

3 ‑ 41 3

1

項に従 って第一次的な義務を負 う。また

,3 ‑ 8 0 2

a

号 によれば,約束手形 の作 成人が銀行である場合,当該証券の取得 は,原因関係上の債務者 に対す る証券 上の償還請求権がないかぎり,債務者の原因債務を免責すると規定されている。

したが って,この構成 によれば,発行銀行は,自己宛小切手 の発行依頼人 の債 務 に関す る支払 につ き,当該小切手を取得 した発行依頼人の債権者 に対 して, 責任を負 う唯一の当事者 となるわけである。それゆえ,原因債権を保留 してお きたいと欲する債権者 は,債務者たる発行依頼人に,発行依頼人 自身 を受取人 とす る証券の発行を依頼 させ,これに発行依頼人の裏書を要求す ることになろ う。

3 9 )I d.4 5 4 .

(16)

1 4 6

自己宛小切手が銀行作成の約束手形であるとの構成を示 した比較的著名な例

,でPO, I nc.Ⅴ,Fe de r alDe pos i tI ns ur anc eCor p.

事件40)であ るが,この事 件における裁判所 は

,

「自己宛小切手 は,銀行作成 の流通可能 な約束手形 に相 当す るが,これまで漠然 と主張 されてきたように現金 と同一の もので はな く, この特殊な種類の証券を検討 した判例 は注意深 く分析 されなければならない41) と述べている。問題の解決 に対す る慎重な姿勢が うかがえるものといえよう。

裁判所 は,銀行 は自己宛小切手の支払を約束 しているが,原告が正 当所持人で ないとすれば,統一商法典3

‑ 306

条および

3‑ 40 8

条の下で,銀行 は約因 の欠如 ま たは詐欺の抗弁を対抗 しうると結論づけている42)0

TPO,I nc.

事件を先例 として,約束手形的構成 に基づ くアプローチ によ り, 発行銀行が主張 しうる抗弁を整理 した判例の一例 として,Banc

o Ganade r oy Agr i c ol av.Soc i e t yNat i onalBankofCl e ve l and事件 3

)を挙 げてみよう。

V

,Y

銀行を支払人 とす る

H

振出,金額7

3, 2 00

ドルの当座小切手 を所持 し ていた。1

97 4

9

17日

,

Ⅴは,当該小切手をⅩ銀行に取立依頼 した

Ⅹ銀行 は,支払呈示のためこの小切手をY銀行宛発送 し,同時に,代 り金 を 自己宛小 切手で送付す るよう

Y

銀行 に依頼 した。同年

9

2 7

日,当該小切手の送付を受 けた

Y

銀行 は

,

Hの当座勘定を他店券過振 りにより引 き落 と し,金額7

3, 2 00

ル,受取人をⅤとす る自己宛小切手 を発行 し,これをⅩ銀行 に発送 した。1

0

4日 ,

Ⅹ銀行 は,本件 自己宛小切手を受領 し,同 日

,Ⅴの当座勘定 に73, 2 00ド

ルを入金 した。1

0

1 0

,

Ⅹ銀行 はY銀行 に本件 自己宛小切手を支払呈示 した (Ⅴの裏書な し)が,同 日,Y銀行 は,Hの当座勘定に入金 され,過振 りによる 本件 自己宛小切手発行の引当て となっていた小切手の不渡通知を受 けた。 この 日,本件 自己宛小切手 は,裏書不備を理由に支払拒絶 された

Ⅹ銀行 は,あ ら

4 0)でPO,I nc.V.Fe d.De pos i tl ns.Cor p.4 8 7F.2 d 1 31 ,1 2U. C. C.Re p.

Se r v.1 1 5 6( 3 dCi r.1 9 7 3 ).

4 1 )でPO,I nc. ,1 2U. C. C.Re p.Se r v.at1 1 6 0.

4 2 )I d.1 1 6 1 .

4 3 )Banc oGanade r oyAgr i c ol a,S. A.V.Soc i e t yNat ' lBankofCl e v e l and

,

41 8F. Supp.5 2 0,2 1U. C. C.Re p.Se r v.2 3 3( N. D.Ohi o1 9 7 6 ).

(17)

米国統一商法典下の自己宛小切手の支払差止

1 4 7

ためてⅤの裏書のある本件 自己宛小切手 を

1 0

月2

8

日以降

,3

回 にわたって支払 呈示す るも,Y銀行 は,その都度 これを支払拒絶 した。 そ こで Ⅹ銀行 が,支払 を求めて訴 を提起 した ものである。

裁判所 は,自己宛小切手 は銀行が作成 した約束手形 として扱われるべ きで あ るとし44),本件 の問題を以下 のよ うに捉 えている。

「自己宛小切手を銀行 の約束手形 として扱えば,問題 は,銀行 が それ に基 づ く支払を差 し止 め うるか とい うことではな く‑ とい うの は,支払差止 とい う 用語 は,振出人が他の当事者 たる支払人の証券の支払を妨 げることを欲 す る場 合 の概念 としてのみ意味をなすか らである‑ ,む しろ,証券 の作成者 た る銀 行がそれに基づ く責任を負 うか否かに帰着す る。‑・‑そ う結論づ ければ,正 当 所持人でない者 に対 して,約束手形の作成者 は,約因の欠如 の抗弁 を主 張 しう るという,統一商法典 の規定 に頼 ることが適切 であ る。 統一 商法典

3 ‑ 3 0 6

条 お よび

3 ‑ 4 0 8

条参照45)

」 。

本件 においてⅩは,自己が正当所持人である旨を主張 したが,裁判所 は,そ の判断をす ることな く,本件 の事実の下で,約因の欠如があったか否 か に関す る判断をな し,その うえで次 のよ うに結論づ けている。すなわち,統一 商法典

4 ‑ 2 1 1

1

d

号 の下で,取立銀行 たるⅩ銀行 は

,H

振出の小切手の決済 として,

Y銀行 の自己宛小切手を受領 しうる。 そ して,Y銀行がかか る決済 として 自己 宛小切手を交付 した時点で,統一商法典

4 ‑ 21 3

1

項の下で

,H

振 出の小切手 は 最終的に決済 された ものとみなされ る。そ うである以上,その後

Y

銀行 が

H

当座勘定 に入金 された小切手 の不渡通知 を受領 したとして も,その事実 は

Y

行の立場 を変え るためには遅 きに失 した ものというべ きであ り,本件 にお いて 約因の欠如 はないことにな り,Y銀行 は本件 自己宛小切手 に責任 を負 うことに な名と判示 されている46).

最後 の部分 は,統一商法典第

4

編 の支払手段の取立手続 に関す る規定 に則 っ

4 4 ) Banc oGanade r o

y

Agr l C Ol a,S. A. ,2 1 U. C. C. Re p.Se r v.at 2 3 9 . 4 5 )I d.2 3 8 1 2 3 9.

4 6 )I d.2 41 1 2 4 2.

(18)

て導かれたものであるが,この部分の結論 はともか く,本判例 は,自己宛小切 手の性質につ き約束手形的構成を とるとともに,発行銀行が主張 しうる抗弁を, 統一商法典の流通証券法理 に則 して整理 した点に意義があるものといいうるで

あろう。

7.

発行依顛人の抗弁の援用

これまで概観 して きた諸判例のほとんどは,自己宛小切手の発行銀行 が,自 らの抗弁を所持人に対 して主張す るという類型のものであった。 しか し,自己 宛小切手の支払差止の類型 としては,顧客たる発行依頼人が,自 らの原因取 引 上の個人的な抗弁を主張 して,発行銀行 に支払を差 し止めるよう要求す る場合 があろ う。 このよ うな場合 は,いわ ゆ る

j ust e r t i iの問題 が生 じる。 j us

t e r t i iは,̲

一般 に 「第三者の権利」 と称 される。

j ust e r t i i

の問題が生 じるのは,流通証券 に基づいて訴 え られた被告 が,自 らの抗弁 は有 していないが,原告の前者たるいずれかの者が,原告 か ら証券 を 取 り戻す ことのできる請求権

( c l ai m)を有することを知 ってい るとい う状況

においてである47)0

統一商法典 は,j

ust e r t i iに関 し ,3 ‑ 3 0 6

条が,正当所持人の権利 を有 しない 所持人の服すべき権利制限 という側面か ら

,3 ‑ 6 0 3

条が,第三者の権利を知 って

いる債務者の免責 という側面か ら,各々規定 している。

これによれば,自己宛小切手の発行銀行 は,発行依頼人またはその他 の者 に よって,証券 に対す る請求権 または抗弁の存在の通知を受 けたと して も,その 状況 において,原則 として支払を拒絶すべ きではないという結論 になろう。 す なわち,統一商法典

3 ‑ 6 0 3

1

項 に従えば,窃盗 による所持人の場合および制限 的裏書の趣 旨に合致 しない場合を除いて,発行銀行 は,たとえ他 の者 によって 証券に対す る請求権があることを知 らされていて も,所持人 に対 して支払えば, 免責 されることになるのである。統一商法典が採用 した立場 は,流通証券上の

4 7 )Char l e sM. We be r,Su pr anot e3 7,at2 8 7

(19)

米国統一商法典下の自己宛小切手の支払差止 149 債務者 は,所持人に対 して権利を主張する当事者が,担保を提供 す るか支払 を 禁 じる裁判所の命令 を所得 しないか ぎり,同一の証券に対 して権利を主張す る 二当事者の紛争の渦中に立っべ きでないというものである48)。 この趣 旨は,疏 一商法典3

‑ 30 6

条のオフィシャル ・コメントにおいて も指摘 されている。 す な わち

,

債務者が契約 したのは証券の所持人 に支払 うとい うことであ り,所持 人に対する他人の請求権 は一般 に債務者の関知す るところではない。債務者は, 一般 に,他人間の争 いにつき十分な証拠を有 していないであろうか ら,そのよ

うな他人の権利を抗弁 として主張す ることを要請 されない。そ して,債務者が これを主張 しえないとする本規定 は,所持人の保護 と同 じほどに債務者 の保護 をも意図 しているのである49)」。

以上 によれば,発行銀行が

j ust e r t i iの適用を受 ける事例 というのは,きわ

めて限定 され ることになろう。通常 は,発行銀行が特定の受取人を証券上 に記 載 して自己宛小切手を発行 したところ,盗人が これを当該受取人 か ら盗取 し, 受取人の裏書を偽造 して小切手の取立を図 る場合 くらい しか考え られない。 こ の場合 も,実務上 は,発行依頼人 が補償 の趣 旨で発行銀 行 に対 して預 託 金

( i nde mni t y)を積む ことになっている5

0)0

発行銀行が,発行依頼人の原因契約上の抗弁を援用 しうるか否かが実際 に争 点 となった事例 として,Loui

sFal c i gnoEnt e r pr i s e s ,I nc .Ⅴ.Mas s ac hus e t t s Bank & Tr us tCo.

事件51)を挙 げてみよう

Ⅹは,ボクシングのタイ トル ・マ ッチを独 占テ レビ中継する権利をCに与 え た。 これに付随 してⅩは,テ レビ放映の前 に,自己宛小切手 で47,

30 5

ドルを手 渡すよう

C

に強要 した

。C

は,不承不承,Y銀行 に自己宛小切手 の発行 を依頼 ,Y銀行 は,Ⅹを受取人 とす る自己宛小切手を発行 した。 Cは,これをⅩに

4 8 )Dav l dJ.Be ns on,Su pr anot e1 ,at4 5 0.

4 9 )uCC

§

3 ‑ 3 0 6,Of f i c i alComme nt5.

5 0 )Se eJe f

f

r e yB.Re i t man( e ta

l.

),Su pr anot e2

, §

1 3 3.1 0〔4

〕 .

5 1 )Loui sFal c i gnoEnt e r pr i s e s,I nc.V.Mas s ac hs e t t sBank& Tr us tC

0

. ,4 2 6

N. E. 2 d9 9 3,3 4U. C. C.Re p.Se r v.2 0 6( Mas s.App.1 9 8 2 ).

(20)

1 5 0

交付 したが,その後,テ レビ放映 は実現 した ものの,XCとの間で,放 映権 に関す る契約上 の紛争が生 じ,その結果

,C

,Y銀行 に本件 自己宛小切手 の 支払 の差止 を請求 した。 そ こでⅩが,本件小切手 の支払を求 めて

,

Y銀行 を訴 えた ものである。

裁判所 は,本件 において銀行 によって 「主張 されている抗弁 は,銀行 自身 の 抗弁ではな く, 〔発行依頼人たる 〕顧客の抗弁である。 さ らに,原因契約 に関 す る抗弁 は

,

『証券 に対す る‑‑請求権 』には該当 しない52)」 と述 べ た。 そ し

,

銀行小切手の信頼性 を確保す るための政策 として,銀行 は,その顧客 に代 わ って,ここで主張 されているような原因契約上 の抗弁を主張す ることを妨 げ られ るべ きであるという原則が要請 されているのである53)」 と して,Y銀行 を 敗訴 させている。

三.小

以上,米国統一商法典下の自己宛小切手 の支払差止 の問題を概観 して きたわ けであるが,米国判例 は,自己宛小切手 の現金代替性 に十分配慮 し,その換金 ない し決済 の確実性を確保す るという観点か ら,支払差止の許容 に慎重 な態度 をとって きた もの と言 い うる。

わが国 にあ って も,自己宛小切手 は,取引界 において現金 と同様 に取 り扱 わ れてお り,この事実 は,最高裁昭和

3 7

9

月21日第

2

小法廷判決 (民集

1 6

9

2 0 41

頁) によって も認 め られている。

一方で,わが国 において,自己宛小切手 の発行依頼人か ら発行銀行 に対 して, いわゆる事故届が提出された場合,当該届 の効力および支払呈示期間経過後 の 銀行 の支払 に関す る免責法理等 について,困難 な問題があることもまた事実 で

ある。

とりわけ,支払呈示期間の経過後 は,小切手法上,発行銀行 の振 出人 と して

5 2 )Lo ui sFal c i gnoEn t e r pr i s e s ,I nc . ,3 4U. C. C.Re p.Se r v .at2 0 7

53)Id.209.

(21)

米国統一商法典下の自己宛小切手の支払差止 151 の義務が消滅 し,銀行 は,もっぱ ら支払人 として期限後支払をなす ことになる。

この支払 は,義務 に基づかないいわば任意の支払であると構成せざるをえない。

したが って,この段階で発行依頼人か ら事故届の提出ないし支払差止の請求が あれば,これを無視 して支払 った場合の銀行の免責法理が必ず しも明確 で はな いことか ら,実務上,発行銀行 は,支払差止 に応 じることが多 い と言 え よ う。

この事実 は,一面では,自己宛小切手の現金代替性を阻害するものであ ると評 価す ることも可能であろう。

これ らに鑑みれば,現金代替性を有す るとされるかかる証券の発行の法律関 係か ら始 まり,そ もそ も現金代替性 とい う機能確保の面か ら,かか る証券 が, 小切手法上の規整を受 ける 「小切手」 という形式をとるのが最 もふさわ しいの か,といった点を も含めて,広 く再検討がなされたとして も,あなが ち無益 で あると言えないのではなかろうか。

たとえば,かかる証券 につ き

,

手形」 という形式ではどうかといった点を, 多面的に再検討 しえないだろうか。今 日,「手形」 とい う形式 を銀行が採用 し 難い主たる理由のひとっは,おそ らく印紙税の問題であろ うが,これ とて も, 銀行業務 における手数料体系の見直 しという作業 によって,解決を図 るとい う 方法 もあろう。 いずれにせよ,証券の形式 につ き,柔軟な対応の容易 な米国 の 法体系 と異なるわが国の法規整下 においては,現金代替性の確保にとって も最 もふ さわ しい証券形式の決定につき,所持人や発行依頼人の利害を も勘案 して, 慎重な検討が要求 されることになろう。

また,かかる証券の形式のみな らず,発行依頼人 による事故届 または支払差 止命令 自体 の効力およびそれに対す る発行銀行の対応 とその根拠等 もあわせて 検討 されなければな らない。その際,とくに銀行 にとって実際的な結論 のあ り 方 としては,先 に述べた統一典

3 ‑ 3 0 6

条および

3 ‑ 6 0 3

条 とい った ところに基づ く 対応が,実務上 も現実的であろうし,参考 になるものと思われる。

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当該不開示について株主の救済手段は差止請求のみにより、効力発生後は無 効の訴えを提起できないとするのは問題があるのではないか

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The undersigned hereby certifies that the above details and statements are correct and that the goods specified in this Declaration of Origin meet all the

と。 9(倒産手続の開始原因・申立原因の不存在)

はありますが、これまでの 40 人から 35

手話の世界 手話のイメージ、必要性などを始めに学生に質問した。