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梵鐘音の特徴に関する基礎的考察II
大島静夫・伊藤禎紀*】
BasicConsiderationonCharacteristicsofSoundof JapaneseTempleBelllI
ShizuoOHsHIMAandYoshikilToH
(1999年11月25日受理)
Templebellshavealreadybeenthesubjectofmanystudies.Ourfirstreportanalyzedthe distributioninthetime‑frequencydomainofthebell'ssoundusingtheSTFT(short‑timeFFT) method・Theresultsshowedthatthepartialtonesthatmakeupthesoundofthetemplebell couldbeapproximatedastheproductofanexponentialattenuationtermandasinewave
ternl.
Inoursecondreport,weexaminedmethodsofreproducingtentemplebellsoundsmade upofpartsuptothethirdpartialtone・ Byestimatingtheexponentialattenuationtermand beatfrequencyofeachpartbySTFTandbyestimatingthecentralfrequencyofeachpartial toneanditsinitialphasebyentire‑intervalFFT,wefounditwaspossibletodigitally reproducethesoundofatemplebellasthesumoftheirproducts.Theenergyerrorbetween theoriginaltoneandthecompositetonewas5%orlessintheSTFTregion.
はじめに 2.解析方法
1 .
梵鐘に関しては,既に多くの研究がなされている。
その中で我々は,梵鐘音をできるだけ少ないパラメ ータで,合成音として再現し,各パラメータのもつ 意味を把握し,等価回路的な表現ができないかを検 討している。第一報として, STFT(Short time FFT)の手法を使用し,梵鐘音が時間一周波数領域 でどのように分布するかを示し, その結果,梵鐘音 を構成する主要な部分音は最大でも7次程度までで あり,各部分音の包絡線は指数減衰項と正弦波項の 積で近似できることを示した。
第二報では,CDに録音されている梵鐘音のうち,
ほぼ第三部分音までで構成される10梵鐘音に的を絞 り, その音を再現する手法について検討を行った。
その結果,STFTで各部分の指数減衰項と正弦波項 を推定し,全区間FFTで各部分音の中心周波数と その初期の位相を推定し, その積和として梵鐘音を ほぼ合成できることがわかった。以下に,本手法に よる合成音の再現法およびその評価を示す。
2. 1 データの収録
梵鐘の解析に関する文献によると,鳴り始めから 約1秒間の梵鐘音は,打音部といわれ,多数の部分 音と雑音成分から成る複雑な音であり,鳴り始めか ら0.8秒以降の梵鐘音を解析対象としていることか ら, ここでも同様の条件でデータを解析することに した。
CDからのデータ取り出しには,アプリケーショ ンソフト (WaveStudio) を用い,視察により梵鐘 の立ち上がり部分に近いゼロクロス点を仮のスター ト点とし,それから0.8秒間のデータを削除し,更に その点から65536ポイント (約6秒間)のデータを切 り出し,解析データとした。サンプリング量子化量 は16[bit],サンプリング周波数は,主に低周波数に 解析が限定されることから11025[Hz]とした。以降,
梵鐘の番号はCDの録音順にBONO1〜BON84とす る。
*'秋田高専専攻科学生
112−
大島静夫・伊藤禎紀
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(a) BONO3部分音と近似波形
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図1 梵鐘のスペクトル分布例 2. 2 短区間FFT分析
まず予備的な解析として, 84個の梵鐘音のSTFT 分析を行ない, そのスペクトル分布を調べた。サン プリングポイント数は512点としたので, STFT解 析の基本周波数は, fo=11025/512=21.53[Hz],約 6秒間(65536ポイント)の解析フレーム数は128と なる。 またデータの切り出しには, フレーム内での データの変動幅が小さいため矩形窓を用いた。
一般にスペクトル図において振幅は, その詳細を 見定めるためにパワースペクトルを取るが, ここで は概略の振幅分布を見定めることが目的なので,線 形軸のほう力討, その特徴が明確になると考え,線形 な軸を採用した。図1にSTFTの解析例として BONO3のスペクトル分布図を示す。
図1に示す,打音部以降のスペクトルは,比較的 に単純な構造であり, また基音から比較的低次の部 分音の和で再現できること力葡わかる。そこでこの梵 鐘音を(1)式で近似表現する。
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(b)の残差と残差の近似波形 部分音のパラメータの抽出例
(、
(C) 図2
青の中心周波数の時間波形の解析を試みた。 ここで は,BONO3の図1における300[Hz]付近の部分音を 解析例として示す。
図2(a)から,波形は指数関数的な減衰項および正 弦波的なうねりから構成されていることが推定でき る。そこで部分音6、r)を(2)式で近似できるものと する。
6"(/)=α"exp(‑6"r)
{"6"sin(2,Z/j"r+86")+d"}+eγγ (2) ここでα"は第〃部分音の初期振幅, 6"は減衰係 数, αb"はうなり周波数の振幅,鬼,,はうなり周波数,
96〃はうなり周波数の位相角, 必 は直流分とする。
まず(2)式の指数減衰項を求めるために, (2)式の自 然対数をとると(2)式は
Ioge6、r)=Ioge""‑6"/+loge(eγγ,) (3) となる。ただしgγγ'には,正弦波項の変動も近似に おける誤差として含めている。対数化した原波形を 最小二乗近似法を用い, y=班αx+〃αと直線近似す
ると,傾き〃zαおよび切片〃αより 6(/)=26"(/)sin(2嘘。+β"。)+2γγ (1)
〃=l
ここで6(#)は実際の梵鐘音の振幅6"(/)は各部 分音の振幅,んは部分音の中心周波数,β"・は部分音 の初期位相, gγγは全体の誤差である。そしてここで は基音も含め, 第三部分音までの和で表現すること より =3とした。
2. 3 部分音の解析
梵鐘のSTFT解析で得られたデータから各部分
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梵鐘音の特徴に関する基礎的考察II
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6"=−加α , α"=exp("α) (4) と定まる。図2(b)に対数化した部分音の原波形と(4) の係数による直線近似式を示す。
(4)で求まったα"exp(一〃)で, (2)式を割ると
い釜竺Zn="6"sin(27Z/M+86"+〃",
(5)
となる。この(5)式の平均値を求めると, #が十分長い とき
Z=αb"sin(2城"#+abn)=0,Ze""=0
と考えられるので, (5)式の平均値より鴎が定まる。
今フレーム数を〃、とすると
*=(""e¥M)=" (6}
となる。この直流分も除くと(5)式は 6"(#)
α"exp(−〃)−ぬ="6"sin(2Z/i"/+66"+g〃'′
(7)
となる。 (7)式までの処理を施した部分音の原波形を 図2(c)に示す。
この波形をαb"sin(27rfb"+86")に近似すると,図 2(c)の点線の波形となる。第一報では,更にこの残 差も正弦波近似していたが, より簡単にするために 本報ではここで近似を打ち切ることにした。
次に, ここまでのパラメータを使用した部分音の 合成波形をsM(t)とすると
s"(t)=a"exp(一〃)
{α6"sin(21Z/3"/+86")+diz} (8) となる。ここで部分音の原波形と合成波形のエネル ギー誤差を(9)式と定めると,図3(a)の場合では 0.43[%]となった。
州=図(普続(/))2×100[%] (9)
また10梵鐘の最大振幅をもつ部分音の(9)式による 誤差は, 0.008[%]〜1.361[%]であり, その平均値 は0.355[%]であった。
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9 124 l29−Z95 300 3C 31 436 44
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637 64
6
Frequency [HZ] Frequency [HZ] Frequency [HZ]
図3 全区間FFTの解析例
る。BONO3の全区間FFTの結果および部分音中心 周波数付近のスペクトルの拡大図を図3に示す。
図3より, jio=123.65,九0=300.46, jio=
436.22[Hz]と定めた。また各部分音の中心周波数の 初期位相azOは, FFT解析の実部脇。,虚部脇。の 逆正接として川式で定めた。
a,。=tan‑* @'
ここでの問題としては,部分音が近接した2つの 周波数で構成される場合, どのように取り扱うかが 上げられる。すなわち,振幅の大きい周波数を採用 するか, 2つの周波数の平均値を使うか, 2つの周 波数を合成波形に組み入れるかである。本報告では より合成波形に影響を与える振幅の大きい周波数の みを選択したが, この部分については更に検討を加 える必要があると思われる。
2. 5 合成音の作成とその評価
ここまでで(1)式の各部分音を構成するパラメータ が全て定まったことになる。そこでエネルギーの大 きい順に各部分音を順次積算した時間波形を図4に 示す。図4において(a)は原波形, (bXc)は各部分音の 振幅順の順次累積合成波形, (d)は第三部分音までの 合成音波形である。原波形と比較しても,微細な部 分も含め,近似できていることが分かる。
同様に他の梵鐘の原波形と合成波形の比較図を図 2. 4 全区間FFT解析
STFTの解析結果を用いても,梵鐘音の合成は可 能であるが, STFTの結果を利用した場合,周波数 分解能が21.53[Hz]と粗<,正確な中心周波数が定 まらない。そこで各部分音の中心周波数九。をより 正確に求めるために65536ポイントの全区間でハミ ング窓を掛けた上でFFT分析を行った。この場合 その周波数分解能は11025/65536=0.1682[Hz]とな
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大島静夫・伊藤禎紀
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(a) BON22原波形
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(b)第二部分音
Ti国⑧[sec・]
(b) BON22合成波形
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Ti田e [sec・]
(c)第一と第二部分音の累積波形
Time [sec・]
(c) BON39原波形
l4th+6th+20th
l8th+8th+21th
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Z 3 4
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(d) 第三部分音までの累積波形 図4 原波形と合成波形
3 6
0 2 3 4 5 6
Time [sec・]
(d) BON39合成波形 図5 原波形と合成波形の比較
5に示す。
まだ合成音の聴感上の評価は行っていないが,高 次の部分音を含む立ち上がり部分を除き,ほぼ同一 音として捉えることができ, また梵鐘のうなり音も 差異無く聞き取ることができる。
ただし,時間領域で原波形と合成波形の差分を誤 差として評価した場合,原音の部分音の中心周波数 が時間的に変動するため,周期的な逆相状態を作り 出し,時間領域での誤差が大きな値となる。そこで 合成音をさらにSTFTし,原波形との時間一周波数 領域での違いを誤差と定めた。
原波形および合成波形をSTFT処理すると,時間 tに関し128フレーム,各フレームの周波数項は256 次までのデータで表現できる。そこで,両波形を(11)
のように離散データとして表現する。
STFT(0γ狸"α/)=6[j,/]
STFT(co"ゅos")=s[/,/] 01) ただし,t=1,2, .…128, f=1,2, ・…256 これより,両式の差分のエネルギー誤差を(1))式の ように定めた。
g〃=図国(6[/,/]‑S[t,/])2×100[%]ZZ62[/,/] (1"
図6(a)に合成波形のSTFTのスペクトル'図6(b) に原波形と合成波形との残差のスペクトル図を示 す。
図から各部分音の主要なピークが取り除かれてい ることがわかる。BONO3の場合⑰式による誤差は
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梵鐘音の特徴に関する基礎的考察11
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(a) BON22の原音と合成音の誤差
0 100 200 300 400 500 600 700 800 Frequency(Hz)
(a)合成音のスペクトル
900 1000
BON39Error BONO3Error
と径 ‐ ヘヘ
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Frequency(Hz)
(b) BON39の原音と合成音の誤差 図7 他の梵鐘の合成音と原音との誤差
200 300 400 500 600 700 800 900 1000 Frequency(Hz)
(b) 原音と合成音の誤差 図6 合成音と原音との誤差
0 100
周波数とその初期位相を推定し, その積和として梵 鐘音を合成した場合, STFT領域でのエネルギー誤 差はBONO3の場合で約1.80[%]となった。また,こ
こで取り扱った10梵鐘では0.51[%]〜4.73[%]であ り,全体の平均値は2.55[%]となった。
このことから,第三部分音までの構成で近似できる 梵鐘の場合,各部分音を8パラメータで合成できるの で,全体として24パラメータで合成できることにな り, またエネルギー誤差が5[%]以下であることよ り,梵鐘音の95[%]以上を再現できたことになる。
今後はこのパラメータの持つ意味を把握し,等価 回路的な表現法についても検討したい。
1.80[%」であった。
図7に同様に, BON22, とBON39の原波形と合 成波形の時間 周波数領域における誤差を示す。
3.結
︾ 認
パラメータを指定するだけで,梵鐘の音色を再現 することを目的に, 第二段階として,第三部分音ま でで構成される梵鍾脊の合成音の作成とその評価を 試みた。
その結果, STFTで各部分音の指数減衰項とうな り周波数を推定し,全区間FFTで各部分音の中心
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大島静夫・伊藤禎紀
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小松沢昶,伊勢雅昌:実際の撞木が和鐘の音 色に及ぼす影響(和鐘の音色の研究その
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