連邦政府報道情報局 ドイツ連邦議会における連邦首相アンゲラ・メルケル博士の2013年度予算 法説明演説 ベルリン(2012年11月21日)1
議長
親愛なる議員の皆様 ご参観の皆様
我々がこの予算を欧州でのそして国際的にも困難な情勢の中で提出することについて、この議会 では大方の認識が一致していると思います。我々がこの国の歴史の中で最大の景気後退を経験した のは、 3 年前のことでした。国内総生産の 5 %でした。我々は2010年には800億ユーロを越える新 規借り入れを伴う危機予算を提出せざるを得ませんでした。これはこれまでの予算の中で最大の新 規借入額でした。しかし2011年には我々は規模の大きな産業国家の中で最初に危機以前の水準に復 帰することができました。これらのことが過去 3 年のうちに出来したのです。
切望していたことに成功したのです。ドイツは危機に落ち込んだとき以上に、危機から脱出する ときにはより強くなっていることです。そのために多くの人が貢献しました。これは大連立内閣の ときに始まったのですが、キリスト教=自由連立政権が継承しました。すでに議論された成長促進 法によって不都合を除去することができたのです。つまり遺産相続を優遇し企業がドイツに留まる ことができるようにして、企業対策を強化したからです。
親愛なる議員の皆様、この成功の首尾について一度語っても許されるでしょう。データを一目見 ればわかることですが、この連邦政府は統一以降最も成功を収めた連邦政府なのです。お望みなら ば根拠をお示ししましょう。
我々が ― このことはこの国の人々にとって大事なことです。このことを議会でも忘れてはなり
ドイツ連邦議会における連邦首相
アンゲラ・メルケル博士の2013年度予算法説明演説
齋 藤 義 彦 訳
【翻 訳】
ません。― 統一以降最低の失業水準にあるという理由で、この連邦政府は統一以降最も成功を収 めた連邦政府なのです。これは、市民の方々やその家族である数百万人の人々が就業機会を得たと いうことなのです。
統一以降実施されてきた研究教育投資を最大化したことによって、我々はもっとも成功を収めた 連邦政府なのです。これは青年にとってより多くの機会が与えられることを意味します。
さらに統一以前も含めてと私は思うのですが、この国で地方公共団体に対し負担軽減がかつてな い規模で実施されたことで、我々は最も成功を収めた連邦政府なのです。2
我々は二つの壮大なプロジェクトに取り組んでいます。
ひとつはエネルギー転換です。この点について一言言っておきたいのですが、あなた方3が赤緑 政権の下で2022年を目標とする脱原発を指示したときには、送電線の建設、再生エネルギー法その 他の必要な措置にはまったく配慮をしていなかったことです。
我々は他方現実が変化したことを受け入れました。我々は兵役を中止しました。我々は連邦軍を 改革しています。これはわが国にとって重要な大規模プロジェクトのひとつです。これに関連して 他に例を見ないボランティアサービスを導入することに成功し、わが国のボランティア活動を強化 することができました。4
つまり我々は人々の期待に答えているということです。また人々は我々が未来を見据えているこ とを当てにできるのです。明日にも通用するような今日の良い状況のためには、常に新たに取り組 まねばならないとうこと、それも三つの分野で、つまり健全な財政、社会的弱者との連帯そして競 争力の維持と強化です。
まず健全な財政からはじめましょう。新規借入金は171億ユーロの水準まで低下しました。つま り、借り入れ制限規定が我々に要求する期限より 3 年早く、我々は構造的新規借入金を 0.35 %以下 に制限するという目標を達成するということです。これは、例えば州を見ても他に例がありませ し、連邦がこの点で達成したことの重要さがわかるというものです。5
さらに我々は ― このことは先に話題になった連立会議で決定したことですが ― 経済情勢が今 後健全に推移すれば、2014年には構造的新規借入を一段と引き下げること、すなわちゼロにするこ とに取り組みます。これも意欲的な目標です。2016年には ― このことは欧州中期財政見通しに読
み取ることができますが ― 新規借入をゼロにするという目標を達成していることを期待していま す。そうなれば40年ぶりのことになります。これが我々の展望です。これは理にかなったものです。
健全な財政は当然自己目的ではなく、最終的にはこの国の人々がそれからどのような利益を得る かということが問題であることを、我々はもちろん承知しています。我々が新たに借金をすること が少なければ、そして長期的には累積債務を削減できれば、我々の未来はより堅実なものになると いう事実と並んで、労働市場での良い状況の重要な結果のひとつが、過去数年の間所得格差が縮小 したということです。これは、例えば2005年と2010年の間に東ドイツで、インフレの影響を除去し ても、 1 家計あたり1,100ユーロ、西ドイツで600ユーロの所得向上があったことに見て取れます。
この発展は現在も続いています。我々はより多くの人々を就労させることによって、所得格差を縮 小することができるのです。これが過去数年からの教訓です。この流れを継続させなければなりま せん。6
わが国で現在見られるような良い状況は、わが国の労働者と企業家の努力によって大方もたらさ れたことを私は知っています。それも多くの情熱と心労と職業訓練によって日々新たにもたらされ ていることを知っています。しかしそうであるからこそ健全な財政は、我々が人々に機会を提供す ることができる場所で、現実に機会を提供しているのです。
我々が成し遂げたことは二つあります。
一方では我々がこの国で誇っていいものですが ― 年金保障、介護保障、失業保障 ― という社 会保障システムを強化し、持続可能なものにすることと、
他方では、より多くの雇用を創出するために、この流れを賃金随伴コストの負担軽減により継続 することです。これが、我々がこの国の人々を信頼しているので、我々が信頼している循環といえ ます。これはあなた方と我々との違いなのかもしれませんが。
ですから我々は主張します。我々は長期的には大きな課題に直面していることを知っていると同 時に、まさに現在非常に流動的な環境の中にあり、負担軽減を可能にすることはすべて成長促進効 果があることを知っているので、法的要請もあることもあり、年金保険料を引き下げることにした のです。同じことをちなみに大連立では健康保険料で行いました。お忘れの方もおありかと思いま すが。
そして我々は診療負担金を廃止しました。これも先日の連立会議で決めたことです。これは見事
に全会の支持を受けました。まぎれもなく社民党員であるドイツ連邦議会副議長が、このような幅 広い支持を得た決定が行われたことはまれであることに注意を喚起しました。診療負担金の廃止を 可能にした自民党にとにかく感謝してもいいのではないでしょうか。
我々は同時に次のような提案をしました。我々は長期にわたる賃金抑制の後でドイツで再び収入 が上昇する時期にあたり、税を引き下げるのではなく、まさに冷たい累進課税7とインフレによっ て所得を奪われた人々に、基礎控除を引き上げることによって税金を返すことを決定したのです。
国家が、本来課すべきではないものや副作用として懐に入ったものを、低所得層と中間所得層に 返還する一方で、同時に例えば幾らか所得が多いかもしれない自営業者の課税を強化することが、
どうして公正なのかあなた方は私に説明しなければなりません。私には理解できません。これは公 正ではありません。別の言い方をすれば、あなた方は、所得の多い人々から幾らか取ることができ ないのであれば、低所得層や中間所得層にまったく返そうとしないといっているようなものです。
これはここ数年の実質所得の上昇がみられる時期においてはおろかな政策です。このことはここで はっきり言っておかなければなりません。
我々の社会像は、地方自治体もまた行動の自由を持つということです。地方自治体では政治が 人々の近くで行われます。我々は将来の大きな課題の一つに人口動態的変化があることを承知して います。我々は高齢者の貧困が地方自治体でますます重要な意味を持つ課題となることを知ってい ます。だからこそ我々は、基礎保障のコストを連邦に移すこと、それも恒久的にそうすることを主 張しているのです。これはわが国でのより自由な政治、地方自治体のより大きな自由のための貢献 の一つなのです。地方自治体の全国組織はこのことを承認しました。あなた方もまたそうすべきで す。
将来の課題が問題となるとき、人口動態的変化は我々の社会にとって非常に大きな課題の一つで あることは明白です。そのため連邦政府は状況を分析し我々が行動しなければならない行動範囲を 決定したばかりではなく、この問題に関係するすべての共闘者と話し合いをしました。ちなみにそ うすることで建設的な回答を得ることができなした。今後我々はこの人口動態戦略を着実に実施し ていきます。地方自治体、州、地方自治体の全国組織その他の関与者とともに。
我々はもちろん最初の措置を開始しています。ここで具体的にお示ししたいのですが、まず認知 症の人々のための同盟と認知症患者のためのサービスの追加をようやく介護保険の中でより善く位 置づけることができます。さらに民間の介護保険の奨励です。これが人口動態的変動に対応するた めに我々が具体的に行動を開始する際の 3 項目です。
もちろん我々は知っています。まさに高齢化が進み幸い平均寿命が延びる時代には、未来を克服 するための自由と可能性を家庭に与えることが求められています。なぜなら国家が仲介することが できないような価値が家庭の中で伝えられるからです。
ですから我々は選択の自由に賭けます。そのため私たちは育児手当をここで議決したのです。こ のことについて十分に審議しました。さらに付け加えて話すことはありません。選択の自由の問題 は第一に、ドイツには数十年にわたって保育施設が少なすぎるということにもちろん明白に示され ています。ちなみに赤緑政権は政権担当期間中この問題をまったく解決しませんでした。そこでこ の問題に取り組むために我々が登場しなければならなかったのです。大連立の CDU 家庭大臣がい なければここまで来ることはできなかったでしょう。この国の人々はこのことを知るべきです。
我々は40億ユーロを幼児保育のために投資しました。我々は現在さらに 5 億 8 千万ユーロを追加 したところです。我々は運営費を支払っています。これを我々は連邦が義務付けられていないのに もかかわらず行っています。我が国の未来が掛っていると信ずるからです。
さらに追加的な支出をすると採決したのですから、私は、担当の大臣と一致して言わなければな りません。今度は我々がともに合意した目標、つまり保育園入所の法的権利を2013年 8 月 1 日まで に実現するという目標を州が実現する番です。
もちろん特定の世代が不当に負担を課されることがないように注意を払わなければなりません。
このことに我々は今後数年間集中的に取り組まねばなりません。なぜなら青年はかつてよりもずっ と移動しやすくなっているからです。ドイツではだれも労働するよう強制されません。ですから 我々は世代間の均衡に注意しなければなりません。
我々は、就業者が2030年までに 6 百万人減少する見込みであるという状況にあります。我々は、
就業者と年金受給者の比率が今日 3 対 1 から 2 対 1 に、つまりひとりの年金受給者に対し二人の就 業者という関係に変わろうとしている状況にあります。
親愛なる議員の皆さん、我々はこの問題に正しい回答を得ました。我々はこう答えました。人々 がより長く生きるのであれば、我々は就業年数を延長しなければなりません。ですから我々は67歳 定年制を決定したのです。人々を欺きこれらの措置があたかも必要ではないかのように、2020年ま で待ってそのあとで決定することがよりよいかのように振る舞うことはやめるよう我々全員に強く 忠告します。そんなことをすれば年金受給額の減額はもっとずっと劇的なものになってしまうで しょう。8
その代り我々が達成したことを見るべきです。2001年には60歳から64歳までの就業率は 21 % で した。つまり 5 人に一人が就業していたわけです。それが2011年には 44.2 %になりました。つまり、
我々は割合を倍増させたのです。私はこれで満足していません。またこの数字は社会保険が義務付 けられている雇用での割合ではより小さいものであることも知っています。人々にこれらの措置が 全く必要ないなどと強弁する代わりに、我々はこうした発展を積極的に受け止め、よりどころにす べきです。我々は、全員が64歳から65歳まで就業できることを望んでいます。そのためには多くの 企業が意識を変えなくてはいけません。しかしこの課題に我々は取り組まなければなりません。
正しく耳を傾けていればわかっているはずですが、もちろん我々は連立会議で高齢者の貧困問題 に取り組みました。我々が人々の関心がないことばかり議論しているので、高齢者の貧困問題に関 心が払われていないなどと主張するのであれば、それは全く事実に反します。高齢者の貧困問題が 課題の一つであることに疑いはありません。
あなた方はかつて赤緑政権の時基礎保障を導入しました。我々は当時この基礎保障を継承しまし た。それは正しい決定でした。まだそれほど歴史のないこの決定をあしざまに言って、人々にこの 決定が何か受け入れがたいことであるかのような印象を与えるようなことをしないよう全員に忠告 します。基礎保障のようなものは多くの国々ではそもそも存在していないのです。
しかしまた我々は、40年間働き、民間の年金保険に入っていた人は、年金を年金基金から受け取 るべきです。キリスト教=自由連立はこれを支持しており、我々の提案を提出する予定です。
次に我々が豊かさを維持するうえで最も重要な要因が、教育と研究への投資であることを思い起 こして下さい。このことでは現連立は以前の連立に比べより多くのことを成し遂げました。年間ほ とんど40億ユーロを追加的に投資してきました。ドイツでの研究条件の安定性が立地ブランドに なったことで科学者が外国から帰国していることは周知のことです。
我々が州と協力している分野で成果を出していることも思い出して下さい。2008年に我々は州首 相と教育の質に関する首脳会議を開きました。この間私たちは大学進学率50%を達成しました。こ の間中退者が減少しました。この間学校を修了する移民の子弟が増えました。もちろんまだ修了し ない者が多くいすぎることも確かです。修了者数をさらに倍増させなければなりません。しかし改 善が進んでおり、この改善をさらに進めなければなりません、特に移民統合の分野では。なぜなら この分野でも将来私たちの社会の課題をどのように解決できるかが問われているからです。
親愛なる議員の皆さん、若年失業がヨーロッパで最低の水準にあること、過去数年の間に半減し
たことは、とてつもない成果です。青年に呼びかけましょう。この問題に我々は一層取り組んでい くと。ひとりの青年も見捨てられてはなりません。ドイツを悲観的に見ることはやめましょう。
協働禁止の問題に関しては、基本法第91b 条の提案された修正に賛成することを薦めます。まさ にそうすることによって学術分野での協働禁止を廃止したいのです。バーデン=ヴュルテムブルク 州であれ、大学付属病院とマックス・デルブリュックセンターの協働問題のあるベルリン州であ れ、連邦教育相に必要なことを実施するだけの勇気があるのは幸いです。もちろん共同の基礎の上 に築くことができればそれに越したことはありません。ですから、抵抗はしないでください。勇気 を持ってください。可能なところから協働禁止を廃止するという我々の願いに同意してください。
あなた方に要求します。
もちろん我々はエネルギー分野で大きな課題に直面しています。我々は今幸いなことに州首相と 協働の仕方について合意を得たばかりです。ガブリエルさん(社民党党首)、まっとうな協働です。
あなたが知っているように、我々は、思い違いでなければ、2011年の 6 月にエネルギー転換を議決 しました。協働手続きは 1 年後発効しました。12月には最初の監視報告を受け取ります。この報告 書を審議することが出来るでしょう。
我々は、一連の緊急の課題がないと言っているのではまったくありません。どのような課題に直 面しているのかは、太陽光発電に関する再生エネルギー法の改定の際に知ることができました。迅 速な減産を妨げたのは、連立与党ではなく、結局は連邦参議院との協議手続きでした。
ここで言いたいことは、調整が必要だということだけです。これはやらなくてはいけません。で すから 3 月までにこれに関係する提案を提出する予定です。我々は州首相と次の点で合意しまし た。相互の送電網を改善し、増加している、この間多くの分野、多くの時間で安定してきている再 生可能エネルギーによる供給を基礎負荷の可能な発電所で確実なものにすることです。その際、蓄 電の可能性が改善され、そのための送電網を用意できるように、相互の調整がされることです。そ のために現在一連の立法手続きを準備中ですが、ここでは詳細は割愛します。
我々は、エネルギー効率の分野でも成果を出してはじめて、エネルギー転換を成し遂げることが できます。この問題では、あなた方が「エネルギー効率」という言葉を弄している一方で、社会全 体が、すべての団体が、 ― 労働組合から環境団体、地方自治体の全国組織、職人団体、その他の 経済団体までが ― 建物リフォームのための税法上の刺激策をとるよう要求しているのです。この 問題に関してあなた方はまだまともな回答をしていません。これが現状です。
建物リフォームのこのような税法上の振興が元が取れるだけではなく、付加価値を生み出すこと をあなた方は分かっているはずです。事情に通じている人ならば、誰でも言うことです。ですから この問題についてもう一度考え直していただきたい。
もちろんドイツは私がこれまで述べてきたこと、そして我々がこれから取り組まなければならな いことに関して、孤島ではありません。世界経済そしてヨーロッパ経済と深く結びついているので す。ヨーロッパはむしろ深刻な状態にあります。ですから我々はヨーロッパで起こっていることに 冷静さと謙虚さを保ちつつ注目しなければなりません。しかし同時にこれらの事柄が 1 , 2 年で解 決できるものではないという認識も必要です。
EFSF と ESM の専務理事であるレークリング氏は我々に数日前こう述べました。北ヨーロッパ と南ヨーロッパの個別賃金コストの幅は50 % から20 % に縮小したと。これがすべてではありません が、これは、この進展から雇用が生まれる可能性を示す重要な指標です。我々がドイツで遂行した 労働市場改革の前例があります。
あなた方に送付したギリシャでの変化についての500頁の報告に目を通せば、緊縮履行義務が優 先されているわけではないことが分かるでしょう。確かに、特に公的セクターでの緊縮が問題と なっています。しかし他でもなくギリシャ国家の抜本的で必要な再構築が問題なのです。その目的 は、ギリシャの人々が長期的には、豊かな生活ができ、未来を自ら作ることができるような機会を 獲得することです。9
ギリシャがユーロ圏に留まることを望む、と言うことは、政治的な決定だ、と言うのはその通り です。もちろん我々はヨーロッパで共通の価値で結ばれています。しかしそのことは、ギリシャで の改革がギリシャの人々のために実際に遂行されなければならない、ということに配慮することか ら我々を解放するわけではありません。ですから一方での変化に関する要請と他方での連帯の組み 合わせは、こうした状況の中でのヨーロッパの正しい答えなのです。
ギリシャでの変化の基準が満たされ、事前に実施されなければならない措置も ― いわゆる先行 行動ですが ― 実施されたとトロイカが既に言明したことは良い知らせです。これは重要な進歩で す。このことがギリシャ政府に多大の骨折りを強いたことを、私は承知しています。
ですから改革への期待は一切減じません。ちなみにドイツは、改革の実施にあたり保健分野で も、地方の行政再建分野でも援助をしているところです。しかしギリシャ、またヨーロッパと世界 での経済の動向から、見積もられていた基礎収支の黒字化を達成するために、ギリシャに 2 年間の
猶予を与えることにしたのです。ちなみに我々もまたこの経緯を知っています。なぜなら我々のと ころでも年初の成長見通しは同じように半減しているからです。ギリシャに対する見通しだけが正 しくなかったというわけではないのです。経済危機の発生以降しばしば何か新しい知らせを聞くこ とに我々は慣れてしまいました。
今問題なのは、必要な財源を確保することです。初めにまず連邦財務相に心から感謝の意を表し たいと思います。昨夜徹夜で職務にあたり、引き続きあなた方全員に報告を終えてもまだ政府席に 座っているのです。ありがとうございます。この報告からあなた方は計画の全容を知ることができ ます。私はここでその詳細について述べません。正確には分かりませんが、月曜日には問題解決を 見られる可能性があります。
この関連でもう一つ申し上げます。あの切望 ― このことはもう何度も言及しましたが、― 明 日には一連の問題が全く姿を消してしまうという効果を持つような唯一の行動。唯一の打開策、唯 一の真実があってほしいという切望には存在の余地がありません。この切望があることはもちろん 承知していますが、この切望はかなえられることがありません。この切望は人間として理解できる ものですが、それへの答えは与えられることはないでしょう。ですから我々は今後も一歩一歩進ん でいくしかないのです。
明日欧州理事会が始まります。これは重要な会議です。我々が明日か明後日には最終的な結果を 得られるか私にはわかりません。我々はそれを望んでいます。しかし必要であれば我々は来年初め に再び会わなければなりません。
問題は中期財政見通しです。ここで成長についての質問がありましたから、我々は成長協定を結 んでいることをもう一度確認したいと思います。この成長協定はもちろん実施されます。我々がす でに欧州投資銀行に送金したことを情報通は知っています。さらに情報に通じている人は、ホイ ヤー氏 10 の当初計画が実施されたことも知っています。
欧州委員会が補助金に関するすべての問題を整理すれば、これまでできなかったポルトガルとギ リシャに対する 5 億ユーロその他が準備できます。成長と投資の強化、欧州投資銀行の役割拡大に 我々が注力したのは、正しい決定だったのです。我々はこのことで合意ができていたのです。全計 画が進捗していることだけをここではお知らせしたかったわけです。
同時にあなた方が、いかに柔軟に構造基金が今日利用できるかを見れば ― 例えば欧州投資銀行 に融資の申請ができる中小の企業のための協調融資ですが ― そうすれば成長協定からの決定の実
施に対して正しい答えを見出したことがお分かり頂けると思います。
中期財政見通しは首尾一貫した継続計画となっています。ドイツは今、2012年末に決定が下され るよう強く申し入れています。最近こう聞かれました。これも今やらなくてはならないんですか と。それに対し私はこう答えました。計画可能性と計画確実性を確保するためですと。なぜなら目 下財政健全化を進めている欧州連合の多くの国にとって欧州の投資資金は、未来のための投資のた めに使うことができるほとんど唯一の手段だからです。ですから我々はこの計画可能性を必要とし ており、ドイツはその実現に注力しなければならないのです。
もちろん一連の個別利害があることを皆さんも理解していると思います。我々も交渉の中で利害 を代表することになる農業分野から新しい連邦州までの個別利害です。外務省が、この問題では副 大臣リンク氏が、集中的に準備をしています。我々はこの問題にここ数日の間交渉の中で取り組む ことになります。全体としては、2014年から2020年の間ヨーロッパがどのような立場を取るかとい う問題です。我々は近代的なネットワークにより多く投資します。研究と開発により多くの投資を します。いくつかの分野で公的部門を縮小します。いくつかの事柄が欧州委員会の管轄になったの でより善く投資することができます。と最後に言えるようにしたいと考えています。
我々はそうなるよう取り組みます。
もちろん重要であることが明らかな、ヨーロッパのもう一つの分野について述べさせてくださ い。金融市場の規制が十分ではなかったために金融危機が生じたことは、我々皆知っています。で すからここではっきりとした答えを出したいと思います。協力を強化する中で金融取引税に取り組 む十分な数の加盟国を見出すことができました。我々がこの問題を具体的に迅速に実施に移すこと が最優先事項であることを、欧州委員長自ら改めて言明しました。このように交渉は進展していま す。
あなた方も知っての通りドイツは銀行規制の多くの問題で先駆的な役割を果たしてきました。
我々は空売りを禁止しました。これは今やヨーロッパの共有財産となっています。我々は高頻度取 引を禁止しました。我々は、ヨーロッパが続くことを期待しています。我々は銀行再建法をいち早 く策定しました。幸いにもヨーロッパでようやく人々はこの問題に取り組み始めました。
次回のG20会議では、― 私はロシア大統領とこのことについて話し合ったばかりですが、ちな みにロシアは次回G20会議の議長国となります、― 事実大きな問題であるノンバンクの問題が主 要な議題となるでしょう。金融安定委員会が日曜日にちょうどこれに関して提案を行ったばかりで
す。私は全力を尽くし ― あなた方の支援を期待して ― まさにこの分野で前進したいと考えてい ます。さもなければ我々が企てたことを実現できないからです。つまりできればドイツだけではな く、できればヨーロッパだけではなく、できれば世界規模で、すべての金融市場、すべての金融市 場参加者、すべての金融商品に規制の網をかけることです。
イギリスの財務相とともに税避難地の問題を再び議題に乗せた財務相の提案に注意を喚起したい と思います。これもまた重要な提案です。ですから、我々は協力してこの問題に取り組む必要があ ります。なぜなら抵抗はドイツにあると言うよりも、抵抗はドイツの外にあるからです。これにつ いてはまだ多くの解決すべき課題が残されています。
ヨーロッパの状況について話しましたから、次は世界情勢にも目も向けなければなりません。昨 今いくつかの地域で人々が極めて危うい状況の中で生活していることを我々は目の当たりにしてい ます。私は連邦外務相に感謝したいと思います。外務相は近東を訪問し、休戦を実現するために貢 献し、また、― このことははっきりと言っておきますが、― イスラエルに明確なしるしを伝える ために重要な役割を果たしたばかりです。なぜなら暴力はハマスの側からイスラエル地域に向けら れた射撃から始まったからです。当地にいない我々は皆、射撃されるという恐怖に家族とともにさ らされるということがどんなことなのか想像することすらできないと思います。ですからはっきり 申し上げますが、自国民を防衛するという権利があります。この権利をイスラエル国家は持ってい ます。そして国家はそうする義務があります。
それにもかかわらず ― このことは今日外交政策をめぐる議論で改めて論じられると思います が ― 暴力の拡大を防ぎ、休戦を実現し、― それがいかに困難なものであっても ― 可能なかぎ り早期に政治プロセスを再び軌道に乗せることに我々は全力を挙げます。なぜならそれ以外に中期 的、長期的に見て選択の余地がないからです。
何ヶ月もの間暴力により千人万人の人々が死亡すると言うシリアの耐えがたい状況を我々は体験 しています。シリアの隣国には40万人を超える難民がいます。国連安全保障理事会が合意に達する ことができないということを体験しています。これは耐え難いことです。我々は我々の同盟国、す なわち NATO 同盟国の一つが攻撃されたことも体験しています。ですから連邦政府は、もちろん 皆さんと緊密な連絡を取ったうえで、言明しました。NATO 加盟国から我々に依頼があれば、そ の可否を検討します。そしてもちろんこの依頼に応えられるよう努力します。もちろん我々は条件 を検討します、そして自明のことですがそれらすべてのことをここ連邦議会で包括的に審議しま す。これは我々の議会軍の本質だからです。
これは同時に、いかに我々は危機的地域に近いか、平和という財産がいかに貴重なものであるか を教えてくれます。
もうひとつの重点事項に言及します。マリです。我々は欧州連合の訓練任務が編成されるよう着 手しました。この問題でも議会との緊密な調整が行われます。この問題でも、自国部隊の派遣はし ないということは正しいことだと考えます。しかしテロに対する戦いが問題であれば、訓練に関す る我々の知識と能力を提供する義務があります。ですからこの問題を集中的に審議します。
我々は今年中にも新規のアフガニスタン委任任務について審議を開始します。これに関しては はっきりと申し上げておきます。アフガニスタンではなおやるべきことが多くあります。しかしこ の間我々は責任ある責任の引き渡しのプロセスに取り組んでいます。我々は兵士の数を削減するこ とができます。これはいい知らせです。我々はアフガニスタン軍の訓練とアフガニスタン警察の訓 練に関しかなりの実績を上げました。これも重要なことです。ここで美化するつもりはありませ ん。私は問題を知っています。しかしこれが重要なプロセスであることは変わりません。決して簡 単ではない任務にあたっている我々の兵士に我々は心から感謝することで一致しています。11
あらゆる軍事的紛争について言えることがここでも言える、― これは連邦政府の関係閣僚の協 働でも示されていますが、― という点でも我々は一致しています。つまり軍事だけでは勝利を勝 ち取ることができないことです。さらに政治的協働。開発的協働、安全保障的協働が必要です。こ の点については何ら見解の相違はないと信じます。
親愛なる同僚の皆さん、この審議はヨーロッパでの困難な状況の中で、世界の多くの地域での危 機的な状況の中で行われています。それだけ一層我々はヨーロッパで暮らしていることを幸運なこ とだと考えることができます。この欧州連合が、12月10日にノーベル平和賞を受賞することも幸運 なことです。それも大きな成功を収めることができた時代、― 冷戦が終結した時、欧州連合が拡 大された時、ユーロが導入された時 ―、ではなく、我々が自らのヨーロッパの未来を信じている ことを証明しなければならないときに受賞するのは幸運なことです。
皆さんに約束します。ローマ条約50周年記念の時に我々が言明したこと、「我々は幸運なことに 統合されている」と言う言葉が、未来にも通用しているように、連邦政府の我々はあらゆる努力を 惜しみません。これはキリスト教=自由連立の仕事の重要な部分です。他の仕事についてはすでに 述べたとおりです。我々は自らの仕事をします、今日のために、明日のために、未来のために、ま ず第一にこの国の人々のために。これが我々の特徴です。
訳注
1 この政権 3 年目の予算説明演説は例年の様式とは違い、明らかに2013年 9 月に予定されている連邦議会選挙 を意識した選挙演説という性格を示している。「ドイツ統一以降最も成功した連邦政府」という自己賛美にその 意図は端的に示されている。
2012年11月28日に発表された世論調査(Forsa)によれば中道右派の同盟(キリスト教民主同盟・キリスト教 社会同盟)の支持率は37%、中道左派のドイツ社会民主党(以下社民党)は26%、環境政党である緑の党16%、
左派党(旧ドイツ民主共和国の社会主義統一党の後継政党。社会保障改革を巡る党内抗争の結果社民党左派の 一部が合流した。その中には当時社民党党首で財務相であったラフォンテーヌが含まれる。)8 % となっている。
同盟の現在の連立パートナーである自由主義政党である自由民主党(以下自民党)とベルリン州議会など州議 会で勢力を伸ばしているデジタル情報革命に棹さす新興の海賊党はいずれも 4 % であり、このまま推移すれば 5 % 条項(極小政党排除規定)に抵触し次回選挙では議席を持つことができなくなる(なお海賊党はまだ連邦 議会に議席を持っていない。)。この数字から予測すれば、次回選挙では再度同盟と社民党との大連立政権が成 立する可能性が最も高い。なお同盟は自民党と、社民党は緑の党との伝統的な小連立政権を目指すと主張して いる。
本演説では、ユーロ危機と言う目下最大の政策課題は後半になって初めて具体的に言及され、最初に失業対 策の成果が披露されている。その次に現在取り組んでいる最も重要な政策課題として言及されているのが、エ ネルギー転換と連邦軍改革である。前者は既に赤緑政権(社民党と緑の党連立政権)が開始したものである。
しかし2011年 3 月の福島原発事故を受けて現政権は、原発容認姿勢を転換し、赤緑政権の脱原発の方針を踏襲 することを決定し、10年後の原子力発電全廃を発表した。後者は黒黄政権(同盟と自民党連立政権。本演説で はメルケルはキリスト教=自由連立と呼んでいる)のグッテンベルク前国防相(博士論文盗用問題で辞任)が 開始した、徴兵制中止、基地縮小再編を伴う軍事費削減計画である。現在は前内務相ドゥメジエール国防相が 引き継いでいる。次に実現された政策として言及されているのは社会保障政策である。しかしドイツ統一後に 社会保障改革に着手したのは、赤緑政権であり、それ以降政策的には、実質的に左派党を除き、構造改革路線 を進める大連立体制(2013年体制)が成立していると見ることができる。現政権もこの路線を引き継いでいる。
今後連邦議会選挙でいかなる選挙結果が出るにせよ、連邦レベルでも州レベルでも構造改革の中での修正を巡 る極めて狭い範囲での議論になることが予想される。この演説の中でも大連立を容認する示唆を、特にユーロ 危機対策で見ることができる。
2 同盟は州議会選挙で11回連続して敗北を続けている(2012年12月11日現在)。しかし2012年12月11日の党大会 ではメルケルは98% という圧倒的な支持を得て党首に再選された。国民の間でもメルケル個人は高い支持率を 維持している。
3 「あなた方」と言われているのは、野党の社民党と緑の党の議員のことである。
4 兵役を拒否する場合には、社会奉仕が義務付けられていた。兵役中止とともに、この社会奉仕義務も中止さ れた。
5 この実質的な政府借入禁止措置をメルケル政権は、欧州連合に拡大しようとしている。イギリスとチェコを 除く欧州連合諸国が支持した財政協定プロセスが現在進行中である。
6 現在労働省が起草した第 4 回連邦政府貧困富裕報告の表現を巡って関係省庁の間で調整されている。この報 告によれば、確かに所得格差はユーロ危機の間に若干縮小しているが、極端な資産格差の拡大は続いているこ とを確認できる。
7 中間所得層に最高税率が課されること。
8 大連立政権が選挙公約がないまま選挙直後実施した年金受給開始年齢の引き上げ(65歳から)のこと。社民 党はこれに関連して、年金基準額となる収入の50% 受給を維持すべきであるという提案をしている。
9 2012年11月26日にギリシャ援助会議が開催され、437億ユーロに上る援助の政治決定がなされた。予定されて いた第 2 次ギリシャ融資の分割融資分が加算されたほか、改革達成を 2 年延期することが認められた。これに よりドイツには2013年度に初めて現実に 7 億 3 千万ユーロの負担が求められることになった。ドイツは IMF が 提案した債務削減には応じなかったが、将来的な可能性は否定していない。いずれにしろ債務削減が実施され
れば、50% の場合でもドイツには175億ユーロの負担が生じると見積もられている。現政府はこの問題を選挙後 に先送りした。
10 欧州投資銀行総裁
11 ドイツ政府は、アメリカ政府のアフガニスタン撤退の決定に従い、2014年末までに戦闘部隊の撤退を完了す ることを決めた。ドイツ部隊は2003年12月(先遣隊は10月)以来北部アフガニスタンに展開している。現在 4600人が駐留し、ISAF やアフガニスタン軍と協力して作戦を遂行している。これまでに52名が死亡している。
そのうち34名は戦闘によるものである。