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論文審査の結果の要旨
氏名: 竹内 久登
博士の専攻分野の名称:博士(生物資源科学)
論文題名: 河川におけるアユのエドワジエラ・イクタルリ感染症の疫学的研究
審査委員:(主査) 教授 塚本 勝巳
(副査) 教授 杉田 治男 教授 小島 隆人 准教授 間野 伸宏
本論文は、東京都の多摩川水系をモデル河川として、河川で発生するアユのエドワジエラ・イクタルリ 感染症 (以下 Ei 症) の発症状況、発生要因、および原因細菌E. ictaluriの河川動態を明らかにすること で、本症の発生抑制策の構築を目指したものである。
まず申請者は、2011 年から 2012 年にかけて、東京都の多摩川の下流域、中流域、上流域、および支流 域の計 4 調査地点でE. ictaluriの保菌調査を行い、E. ictaluriの保菌率はアユが最も高く、夏季に保 菌率が上昇することを明らかにした。また、分離したE. ictaluri株を用いて感染実験を実施したところ、
一様にアユに対して高い病原性を示した。さらに、2012 年 8 月には、支流域において Ei 症に起因するア ユの大量死が確認された。発症が認められなかった 2011 年の結果と比較すると、同月の平均水温は 7℃近 く高く、水温の上昇が Ei 症の重要な発症要因であるものと考えられた。一方で、大量死が認められた支流 の 8 月の平均水温は他の調査地点より低く、水温以外の発症要因の存在も予想された。
そこで申請者は、2013 年から 2015 年にかけて多摩川の支流および下流域 を調査地点として調査を継続 し、アユにおけるE. ictaluriの保菌率、発症状況、および環境要因に関するデータを集積した。結果と して、アユの大量死が認められた年の支流域は、他年や他地点と比較して、水温日較差 (1 日の最高水温 と最低水温の差) が 5℃以上の高いことを明らかにした。さらに、水温日較差が水温の上昇ならびに水位 減少により拡大することを示し、猛暑による河川水温の上昇および少雨に伴う渇水が、Ei 症の発症要因で あることを示した。
また、E. ictaluriの河川動態を知るため、申請者は E. ictaluriに特異的に感染するバクテリオファ ージを利用した Ei ファージ法ならびにE. ictaluri特異的プライマーを用いた qPCR 法を用いて、2014 年 から 2016 年に多摩川水系全域において周年にわたる河川水中のE. ictaluriの動態調査を実施した。結果
として、E. ictaluri は春季から夏季にかけて河川全域に分布域を拡大させ、秋季から冬季にかけて下流
~中流域や、支流域の一部の地点に収束することを明らかにした。加えて、上記調査で認められた収束地 点やその周辺地点の水生堆積物や石面付着藻類等の環境構成物 から、E. ictaluriが検出されることを確 認し、このような環境構成物が河川におけるE. ictaluriの感染源となっていることを示した。さらに、
申請者は春季から夏季における河川全域へのE. ictaluriの分布域拡大とアユの遡上動態の類似性に着目 し、環境 DNA を指標とした春季における多摩川のアユの遡上状況調査を行い、アユとE. ictaluriの動態 が有意な相関性を示すことを明らかにした。申請者は、当該時期における海産遡上アユからもE. ictaluri を分離しており、アユの遡上が河川におけるE. ictaluriを拡散させる要因となっていると結論した。
本論文は、天然水域における魚病の発症要因や原因菌の動態について明らかにしたものであり、世界的
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にみても同様の研究事例は少なく、新規性は極めて高い。更に、申請者は上記結果を基に、Ei 症抑制策と して、ダム等を利用した水温・水量の安定化、河床改善による感染源の抑制、ならびにE. ictaluriの感 染時期を外した放流法の提案など、Ei 症に対する複数の感染抑制策まで論文中で提案している。また、2011 年から 2012 年に実施した Ei 症の疫学調の成果は、査読付きの原著論文として既に学術雑誌に掲載されて おり、学術的意義もあると判断された。よって本論文は、博士(生物資源科学) の学位を授与されるに値す るものと認められる。
以 上
平成 29 年 2 月 21 日