1
口腔インプラント体による
MRI
金属アーチファクトの検討Study of metal artifacts on magnetic resonance imaging caused by dental implants
日本大学大学院松戸歯学研究科歯学専攻 福田 大河
(指導 金田 隆 教授)
2 Abstract
Dental materials can produce metal artifacts during magnetic resonance imaging (MRI)
procedures and can be problematic for clinical practice. Recently, the use of MRI for disease
diagnosis in patients with dental implants has increased. Concurrently, the range of sizes of
dental implants has also expanded in clinical practice. However, there are few reports
comparing the differences between metal artifacts in MR images owing to dental implants of
varying size and especially investigating metal artifact reduction in Diffusion-weighted
imaging (DWI). The purpose of this study was to investigate metal artifacts caused by
dental implants of various sizes (3.5 mm×8.0 mm, 3.5 mm×9.5 mm, 3.5 mm×11.0 mm,
4.5 mm×8.0 mm), and to investigate techniques for reducing metal artifacts caused by
dental implants in DWI in a phantom.
The phantom used in this study is a hollow cylinder with an outer diameter of 20 cm
and a removable rod 1.0 cm in diameter along the central axis of the phantom. MR
imaging was performed with a 1.5 T MRI machine (Philips Co. Intera Achieva 1.5 T),
using a SENSE head 8ch coil. Imaging conditions included spin echo (SE) T1, Turbo SE
(TSE) T2, short tau inversion recovery (STIR), and diffusion weighted imaging (DWI).
The TR/TE remained constant during DWI and the b-value, field of view (FOV),
rectangular field of view (RFOV), SENSE factor, frequency direction, and phase
3
direction were changed. ImageJ was used to measure changes in the gray values on
coronal images and showed changes up to 30% depending on the imaging conditions.
For all sizes of dental implants studied, the metal artifacts of on SE T1, TSE T2, and
STIR images were similar. DW images had the largest (in dimension) metal artifacts.
Results of this study decreased signal intensity was observed with a FOV from 100 to
250 mm. However, increased signal intensity was observed with a FOV that exceeded
300 mm. At the lowest RFOV the signal intensity was 50% and correspondingly
increased to 100%. A decrease in the SENSE factor resulted in signal intensity changes
from 1.0 to 3.0. Changes in the scan matrix and scan percentage increased the signal
intensity from 64 to 256.
SE T1, TSE T2, and STIR imaging conditions produced slight metal artifacts of similar
size and intensity, regardless of dental implant size. DWI techniques resulted in the
largest metal artifacts compared with SE T1, TSE T2, and STIR techniques. The most
effective imaging parameters to reduce metal artifacts due to dental implants in DWI
were: 1) FOV and RFOV set as small as possible while still ensuring coverage of the
imaging area, 2) increasing the SENSE factor as much as possible, and 3) reducing the
scan matrix and scan percentage as much as possible.
4
要 旨口腔内の金属修復物のアーチファクトによる画像診断への障害が臨床上問題となっている。近
年では
,
日常歯科臨床においてインプラント治療が普及するにつれ,
口腔インプラント治療が増加し
,
インプラント体を埋入した患者のMR
画像を見る機会が多くなってきた。それと共に,
顎骨の骨量や骨質などに応じ,直径や長さが異なるインプラント体を使用するインプラント治療
が増えてきた。しかしながら
,
直径や長さが異なる大きさのインプラント体のアーチファクトの比較した報告はあまりみられず
,
特にインプラント体の拡散強調像(DWI
)への影響を検討した報告は未だ乏しい。
本研究の目的は
, 1.5 T
のMRI
装置を用いてアーチファクトの基礎的なファントーム実験を行い
, 1)
口腔インプラント体の大きさの違いによるMRI
金属アーチファクトの比較, 2) DWI
におけるインプラントのアーチファクト低減の検討を行うことである。
ファントームは
,
直径20.0 cm
の円柱体のアクリル容器に入れたものを使用し,
直径1.0 cm
の円柱棒の先が円柱体中央に位置するように設定した。
MR
装置はPhilips
社製のIntera
Achieva 1.5 T
で,
コイルはSENSE-Head-8 coil
を使用した。撮像法は, SE T1
強調像, TSE T2
強調像
, STIR
法,
およびDWI
であり, DWI
は繰り返し時間(TR)
とエコー時間(TE)
を一定とし
, b
値, FOV, RFOV, SENSE factor,
周波数エンコード方向,
および位相エンコード方向をそれぞれ変化させて撮像した。画像の評価は
, ImageJ
を使用し,
得られた信号強度の平均に対して
30
%以下を示した値を計測し,
アーチファクトの大きさの変化率の比較検討を行った。5
インプラント体の大きさおよび各種撮像シークエンスについては
, SE T1
強調像, TSE T2
強調像
,
およびSTIR
像は,
インプラント体の直径,
長さいずれを変化させてもアーチファクトの影響は少なく
, DWI
は直径が太くて長さが短いインプラント体でアーチファクトの影響が少なかった。
DWI
の検討については, b
値はアーチファクトの大きさの変化率に影響がなく, FOV
の変化は
100 ~ 250 mm
にかけてアーチファクトの大きさの変化率の減少が見られたが, 300 mm
で最大値となり
350 mm
ではそれより減少した。RFOV
は50 ~ 90 %
まではアーチファクトの大きさの変化率が見られず
, 100 %
時で上昇が見られた。SENSE factor
の変化は大きくなるにつれ
,
アーチファクトの大きさの変化率の減少が見られた。周波数エンコード方向,
および位相エンコード方向は画素数が大きくなるにつれ
,
アーチファクトの大きさの変化率の上昇が見られた。
以上の検討結果より
, SE T1
強調像, TSE T2
強調像,
およびSTIR
像 はインプラント体の直径および長さを変化させても
,
アーチファクトの大きさの変動はほとんど見られない。DWI
は,
他のシークエンスと比較して大きなアーチファクトが見られたが
,
直径が太く,
長さが短いインプラント体でアーチファクトの影響が少ない。
DWI
の検討については, FOV
は撮像領域を確保した上で可能な限り小さくする。
RFOV
は位相エンコード方向に留意し撮像領域を確保した上で可能な限り小さくする。
SENSE factor
は画質に影響しない程度で可能な限り大きくする。周波数エンコード方向
,
および位相エンコード方向は画質に影響しない程度で可能な限り小さくする。これらを考慮することでアーチファクトの影響を少なくできることが示唆された。
6
Keywords Magnetic resonance imaging Metal artifact Diffusion weighted imaging
Dental implants
MRI
金属アーチファクト 拡散強調像 口腔インプラント体7
緒 言磁気共鳴撮像法(
Magnetic resonance imaging ;
以下, MRI
検査)は,
放射線被曝を伴うことなく任意の断面像が得られることから
,
日常臨床において重要な画像検査法として用いられている。その後
,
近年に至るまでに頭頸部領域および顎口腔領域では,
顎骨骨髄変化や嚢胞および腫瘍の鑑別診断,また悪性腫瘍の顎骨浸潤の診断および治療効果判定などに使用されている1-8)。
しかしながら
,
同時にMRI
検査にて口腔内の金属によるメタルアーチファクト(
以下,
アーチファクト
)
による画像診断への障害が臨床上問題となってきている 9-18)。撮像シークエンスは,主に
spin-echo (
以下, SE)
法によるT1
強調像, T2
強調像, short tau inversion recovery (
以下,
STIR)
像が用いられているが,
近年, echo planar imaging (
以下,EPI)
法で撮像されるMRI
拡散強調像
(Diffusion weighted imaging
以下, DWI)
が臨床で頻用されている5.7.8.16)。DWI
は,
MRI
の水分子の拡散運動を画像化した撮像法である。通常用いられるSE
法のパルス系列では拡散による信号の減衰は無視できるが
,
大きな傾斜磁場を短時間印加し,
一定時間後に反転傾斜磁場を印加することで
,
拡散による位置移動で位相再収束が行なわれなかった水分子が低信号となる。こうして得られた画像が
DWI
である。DWI
は,
エックス線CT
で描出できない超急性期または急性期の脳梗塞診断に非常に有用で
,
救急医療で広く用いられている。また脳腫瘍の診断にも有用であることから
, DWI
は近年においてはMRI
検査の必須なシークエンスとなっている16)。これまでに
,
アーチファクトは歯科用矯正装置を中心とした材料中に含まれる強磁性体(
主にFe, Co, Ni)
の含有量によって影響範囲が異なることや,
撮像シークエンスにおいても大8
きさが異なることが報告されている9-18)。これらの報告に加え
,
日常歯科臨床においてインプラント治療が普及するにつれ
,
口腔インプラント体(以下インプラント体)を埋入した患者のMR
画像を見る機会が多くなってきた19-21)。しかしながら
,
これらの報告は日常臨床にて頻用されている単一のインプラント体の報告であり
,
直径や長さが異なる大きさのインプラント体のアーチファクトの比較
,
特にアーチファクトの影響が大きく見られるDWI
への影響を検討した報告はあまりみられない。
本研究の目的は
, 1.5 T
のMRI
装置を用いてアーチファクトの基礎的なファントーム実験を行い
, 1)
口腔インプラント体の大きさの違いによるMRI
金属アーチファクトの比較, 2) DWI
におけるインプラントのアーチファクト低減の検討を行うことである。
試料および方法
本実験に使用したファントームは
,
直径20.0 cm,
高さ30.0 cm
の中空の円柱体であり,
円柱体中央に直径
1.0 cm
の円柱棒の先が位置するように設定した。外壁および円柱棒はアクリル板であり
,
ファントームの内容物はMRI
像において体脂肪と同等の信号強度となるベビーオイル
(
ジョンソンエンドジョンソン株式会社,
東京)
を用いた(Figure.
1a)
。本実験では円柱棒の先端表面周囲にインプラント体の長さの違いにおける信号強度変化の検討のため
,
インプラント体の直径×長さ
(mm)
が各々, 3.5
×8.0, 3.5
×9.5,
および3.5
×11.0
の100 %
純チタン製のインプラント体
(
デンツプライ三金株式会社,
東京),
インプラント体の直径の違9
いにおける信号強度変化の検討のため
,
インプラント体の直径×長さ(mm)
が各々, 3.5
×8.0,
および4.5
×8.0,
の100 %
純チタン製のインプラント体をそれぞれファントーム内の円柱棒の先端に固定した
(Figure. 1b)
。山城の報告 12)において静磁場方向に強くアーチファクトが出現するとされ
,
静磁場方向と直交する方向で撮像することがアーチファクトの軽減に有用であるとされている。よって本検討はこの報告をふまえ
,
撮像方向はインプラント体の長さ
(
長軸)
に対して水平な体軸横断像と平行となるように設定した。またMRI
撮像の際には磁場が均一となるようにファントームの位置を
MRI
装置のガントリ中央に位置付けした。使用した
MRI
装置はPhilips
社製Intera Achieva 1.5 T
で,
使用コイルはSENSE head 8ch
coil
を使用した。 撮像法は, 1)
口腔インプラント体の大きさの違いによるMRI
アーチファクトの比較については
, SE
法T1
強調像, Turbo SE
法(以下, TSE
)T2
強調像, STIR
法, DWI
とした。これらの 撮像条件は
,
日常臨床で有用な検討にするため,臨床で頻用される可能性の高い本学付属病院放射線科で通常頭頸部領域に使用している撮像条件を用いた
(Table 1)
。2) DWI
におけるインプラント体のアーチファクト低減の検討については
,
繰り返し時間(TR)
とエコー時間
(TE), 3000/80 (TR/TE), b
値1000 sec/mm
2, field of view (
以下FOV) 250 mm,
位相エンコード方向の
FOV
を示すrectangular field of view (RFOV) = 100 %, Sensitivity encoding
(SENSE) factor = 2.0,
マトリックス数(
周波数エンコード方向×位相エンコード方向)
=128
×
128
を基本とし, b
値のみを100, 500, 1000, 1500 sec/mm
2 と変化させて撮像を行った。また,
FOV
については100, 150, 200, 250, 300, 350 mm
,RFOV
についてはFOV 250 mm
に10
対して
50, 60, 70, 80, 90, 100 %
,SENSE factor
については1.0, 1.5, 2.0, 2.5, 3.0
,周波数方向の画素数については
64, 128, 192, 256
,位相方向の画素数については64, 128, 192, 256
と変化させた撮像もそれぞれ行った。
画像の評価は
, ImageJ (Wayne Rasband
アメリカ国立衛生研究所, ver.1.50f )
を用いた22)。アーチファクトの計測は
,
低信号域が最大の大きさを示すインプラント体と上部構造との連結部相当を使用した。
ImageJ
に読み込んだ画像をAnalyze (Plot Profile)
を使用し,
アーチファクトの最大距離を含むファントーム外形部相当の両端(境界)を設定し
(Figure.2 :
直線),
その領域
(
直線ROI
全体)
のImageJ
で測定した信号強度を求めた後,
直線ROI
全体の信号強度の平均値を算出した。その後
,
得られた信号強度の平均に対して30
%以下を示した値に基づき23),
アーチファクトの大きさの測定を行った。アーチファクトの大きさを求める計算式は「
(
得られた信号強度の平均値-得られた信号強度の最小値
)
×0.3
+ 得られた信号強度の最小値」とした。そして
,
各々のアーチファクトの大きさの変化率を求める計算式は下記式(
日本磁気共鳴医学会
,
安全性評価委員会)
に従い23),
比較検討を行った。∆S | |
100 %
∆S ∶
アーチファクトの大きさの変化率S
o:
インプラント体のアーチファクトの大きさS ∶
インプラント体の元の大きさ 直径11
口腔インプラント体の大きさの違いによる
MRI
アーチファクトの比較については, SE T1
強調像
, TSE T2
強調像, STIR
像,
およびDWI
上で,
インプラント体のアーチファクトの大きさを各々
6
回ずつ計測した。そして,
アーチファクトの大きさの変化率を算出し,
その平均値を比較した。また得られた平均値の精度の確認として変動係数(標準偏差/平均
, coefficient of
variation
以下CV
)を求め, CV < 0.05
をもって測定精度に問題はないと考えた。DWI
におけるインプラント体のアーチファクト低減の検討については
,
得られた計測値に対してPearson
の相関係数を用いてアーチファクトの大きさの変化率と各々の撮像条件の間の相関係数を求め
,
有意水準
(p) 0.05
以下をもって確認した後,
有意であったものに関して相関係数を示すこととした。
結 果
1
.インプラント体の大きさおよび各種撮像シークエンスについてインプラント体の大きさを変化させた各種撮像シークエンスのアーチファクトの大きさの変
化率についての結果を
Figure. 3
に示す。SE T1
強調像, TSE T2
強調像はインプラント体の直径
3.5 mm
に対して長さを変化させても アーチファクトの大きさの変化率は40.0 % , STIR
像は
12.0 %
で変化しなかった。また,
インプラント体の長さ8.0 mm
に対して直径4.5 mm
の場合は
, SE T1
強調像, TSE T2
強調像,
では52.4 %, STIR
像では8.9 %
であった。DWI
の基本条件ではインプラント体の直径
3.5 mm
に対して長さを変化させたところ,
アーチファクトの大きさの変化率はインプラント体の直径×長さ
(mm)
が, 3.5
×8.0, 3.5
×9.5, 3.5
×11.0,
の順で345.7 %,
12
401.4 %, 457.1 %,
でインプラント体が長くなるにつれアーチファクトの大きさの変化率が大きく見られた。また
,
インプラント体の長さ8.0 mm
に対して直径4.5 mm
の場合は, 246.7 %
で直径
3.5 mm
と比較してアーチファクトの大きさの変化率が小さく見られた。CV
はすべての撮像シークエンス
,
およびすべてのインプラント体の直径×長さにおいて0.05
以下の精度が示され,
測定精度に問題はみられなかった。
2. DWI
におけるインプラント体のアーチファクト低減の検討について撮像条件を変化させたアーチファクトの大きさの変化率について測定した結果を
Figure 4 ~
9
に示す。b
値は,
値を変化させてもアーチファクトの大きさの変化率は変化せず,
アーチファクトの大きさの変化率と
b
値の間に相関は見られなかった(Figure. 4)
。FOV
は, 100 ~ 250 mm
にかけてアーチファクトの大きさの変化率の減少が見られ
, 300 mm
で最大値となり350 mm
ではそれより減少した。また
,
アーチファクトの大きさの変化率とFOV
の間に有意に高い相関(r)
が見られた(Figure. 5)
。RFOV
は, 50 ~ 90 %
まではアーチファクトの大きさの変化率は変化せず
, 100 %
時で上昇が見られた。しかしながら,
アーチファクトの大きさの変化率とRFOV
の間に有意性はみられなかった(Figure. 6)
。SENSE factor
は値が増えるにつれアーチファクトの大きさの変化率の減少が見られ
,
アーチファクトの大きさの変化率とSENSE factor
の間に有意に高い相関
(r)
が見られた(Figure. 7)
。周波数エンコード方向は,
画素数が大きくなるにつれアーチファクトの大きさの変化率の上昇が見られ
,
アーチファクトの大きさの変化率と周波数エンコード方向の間に有意に高い相関
(r)
が見られた(Figure. 8)
。位相エンコード13
方向も画素数が大きくなるにつれアーチファクトの大きさの変化率の上昇が見られ
,
アーチファクトの大きさの変化率と位相エンコード方向の間に有意に高い相関
(r)
が見られた(Figure.
9)
。考 察
本実験より
,
インプラント体の大きさおよび各種撮像シークエンスについては,SE T1
強調像,
TSE T2
強調像,
およびSTIR
像は,
インプラント体の直径,
長さいずれを変化させてもアーチファクトの影響は少なく
, DWI
は直径が太くて長さが短いインプラント体でアーチファクトの影響が少なかった。
DWI
におけるインプラント体のアーチファクト低減の検討については, b
値はアーチファクトの大きさの変化率に影響がなく
, FOV
の変化は100 ~ 250 mm
にかけてアーチファクトの大きさの変化率の減少が見られたが
, 300 mm
で最大値となり350 mm
ではそれより減少した。
RFOV
は50 ~ 90 %
まではアーチファクトの大きさの変化率が見られず, 100 %
時で上昇が見られた。
SENSE factor
の変化は大きくなるにつれ,
アーチファクトの大きさの変化率の減少が見られた。周波数エンコード方向
,
および位相エンコード方向は画素数が大きくなるにつれ
,
アーチファクトの大きさの変化率の上昇が見られた。よって, b
値以外はアーチファクトの大きさの変化率の影響を受けることが判明した。
1.
インプラント体の大きさの違いについてSE T1
強調像, TSE T2
強調像,
およびSTIR
像 はインプラント体の長さを変化させてもアー14
チファクトの大きさの変化率は一定であったが
,
インプラント体の直径を変化させたところ,
直径が長いいほうでアーチファクトの大きさの変化率が大きく見られた。
DWI
は直径が太く,
長さが短いインプラント体でアーチファクトの大きさの変化率が小さく見られた。体軸横断像の
SE
法では静磁場方向とMR
画像の情報を得る読み出し(read out)
方向が同方向であり,
アーチファクトの形態は静磁場方向と
read out
方向の影響が強いとされている11.12.14)。その為,
今回の実験では低信号域が最大の大きさを示すインプラント体と上部構造との連結部相当を使用し
た画像を用いたことから
,
インプラント体の長さにはアーチファクトの大きさに影響が見られず
,
インプラント体の直径が太いほうでわずかながら影響が見られたためと考えられた。DWI
は
,
傾斜磁場を用いることで,
観測する場所にて異なる強度の磁場をかけることが可能となる。各々の信号に空間位置情報が得られ
,
立体的な観測ができる。その為,
インプラント体が長い方では傾斜磁場の影響によりより多くの
MR
信号を得られることからアーチファクトの大きさの変化率が大きくなったと考えられた。また
,
直径が太く,
長さが短いインプラント体でアーチファクトの大きさの変化率が最も小さく見られた理由は
,
傾斜磁場によるMR
信号の影響が少なく
,
インプラント体の直径にはほとんど影響が得られなかったことでアーチファクトの大きさの変化率の比較検討を示す式に代入した際
,
インプラント体の元の大きさを基準(3.5 mm, 4.5
mm)
で比較したところ小さく見られたためと考えられた。2.
各種撮像シークエンスの検討についてインプラント体は
, DWI, SE T1
強調像およびTSE T2
強調像, STIR
像 の順でアーチファク15
トの大きさの変化率が大きくみられた。
SE
法は, 90
°の励起パルスと180
°パルスの収束パルスの
2
つのラジオ周波数(
以下, RF)
を使用して, MR
信号を得る。局所的に磁場が不均一となる位相方向の乱れは
180
°パルスを使用することにより位相方向の差を揃えることができる。その為
,
磁場の不均一によるアーチファクトの影響が少ないと考えられた。EPI
法は,
傾斜磁場の強化により臨床に用いられるようになった撮像法であり
,
撮像時間はSE
法と比較して短いが,
傾斜磁場をかけて多数の
MR
信号を得ることから,
位相方向の差が蓄積され,
アーチファクトが大きくなる11.14.18)。以上の理由から
, SE T1
強調像とDWI
ではDWI
でアーチファクトが大きく見られたと考えられた。
SE T1
強調像とTSE T2
強調像の結果は,
アーチファクトに大きな差がないとの報告があり11.18)
,
本実験でも同様な結果が得られた。STIR
像の結果は, STIR
法でアーチファクトが
SE
法よりも大きく出現したとの報告があるが18),
本実験ではSTIR
像はSE T1
強調像よりもアーチファクトが小さく見られた。これは
,
撮像法によるものではなく,
浅野ら18)で行なった撮像条件よりもマトリックス数が小さかったためと考えられた。
3. DWI
におけるアーチファクト低減の検討について(b
値)
DWI
では,
撮像時に1対の傾斜磁場(motion probing gradient :
以下MPG)
を加える。MPG
を印加している時間に,
拡散により移動したプロトンのスピンは位相方向に分散を生じる。その分散の程度により
,
信号低下の程度をきたす。つまり,
移動距離が大きく,
分散が大きい場合には
,
信号が強く低下し,
移動距離が小さく,
分散が小さい場合には,
信号低下が乏しくなる。つまり
, b
値は拡散の強調程度を表す。b
値は,
磁気回転比をγ (MHz) , MPG
の大きさをG
16
(mT/m), MPG
の印加時間をδ (msec),
1対の傾斜磁場のそれぞれの始まりの時間を Δ(msec) ,
とすると
, b
値は以下の式で表される。b =γ
2Gx
2δ
2(Δ
-δ/3)
(s/mm
2)
臨床上において
, b
値が増加すればT2
値,
および毛細血管流の影響が小さくなり,
拡散強調の程度が強くなる。一方で
, b
値が減少すればT2
値,
および毛細血管流の影響が大きくなり,
拡散強調の程度が弱くなる。
b
値を変えるとシーケンスの内部ではMPG
の大きさ,
印加時間,
印加間隔が変化する24)。
b
値は三つの因子の積で決定され,
アーチファクトの大きさの変化率も変化することが予測された。しかしながら
,
今回の実験ではアーチファクトの大きさの変化は確認できなかった。これは
,
アーチファクトの大きさの変化率の変化による画像の歪みの影響がMPG
の印加時間δ (msec)
より小さいためと考えられる。アーチファクトの大きさに影響を及ぼす位相エンコード方向を変化させてないためアーチファクトは
b
値の影響を受けなかったと考えられる。
4. DWI
におけるインプラント体のアーチファクト低減の検討について(FOV)
FOV
は,
アーチファクトの大きさの変化率が100 ~ 250 mm
にかけてアーチファクトの大きさの変化率に減少傾向が見られ
, 300 mm
で最大値となり350 mm
ではそれより減少した。FOV
は
MRI
やCT
などの撮像において,
画像化するためのデータを収集する範囲のことである。MRI
においては
, FOV
を小さくする(
絞る)
と空間分解能は向上するがS / N (S:
関心領域の信号強度
, N:
その画像のバックグランドノイズ)
比が低下し, FOV
を大きくする(
広げる)
と空間分解17
能は低下するが
S / N
比が向上する11.24)。今回の実験では, FOV
が100 ~ 250 mm
にかけて信号強度の減少が見られたが
, FOV
が撮影対象よりも小さい場合,
撮像領域外の像が画像内に入り込み
,
画像上にて折り返したような像として現れる折り返しアーチファクトが描出される。今回の実験では
,
撮像領域外のファントームの外形がインプラント体付近に入り込んだことで折り返しアーチファクトが出現したと考える。折り返しアーチファクトは
,
撮像領域外からの折り返しの原因となる信号を減少させる方法で抑制が可能である。従って
,
折り返しアーチファクトが起こらない最低限の撮像範囲内の大きさの確保
(FOV)
は必要であると考える。5. DWI
におけるアーチファクト低減の検討について(RFOV)
RFOV
は50 ~ 90 %
にかけてアーチファクトの大きさの変化率はほぼ一定であり, 100 %
時で上昇が見られた。
RFOV
は位相エンコード方向のFOV
を減少させることで,
空間分解能を維持しながら撮像時間の短縮を行う技術である。例えば
, RFOV
を100
%から50
%まで下げた場合,
半分の位相エンコーディング数しか測定しないため
,
撮像時間は1/2
となるが,
空間分解能は低下しない。従って
, RFOV
の値が小さくなるにつれて,
位相エンコード方向の蓄積が減るため画像全体の歪みが小さくなり
,
アーチファクトが小さくなると考えられる。6. DWI
におけるアーチファクト低減の検討について(SENSE factor)
SENSE factor
におけるアーチファクトの大きさの変化率は,
値が大きくなるにつれ減少が見られた。
SENSE
は,
シナジーコイルを構成するコイル素子各々の感度分布を信号のエンコードに用いる事により
k
空間のサンプリング数を減らし,
撮像時間を短縮する方法である。SENSE
18
法を用いた場合
,
サンプリングラインの間隔を2
倍に広げることでラインの数が半分に減少し,
撮像時間が
1/2
に短縮する。通常の画像構成法ではFOV
が1/2
となり折り返しアーチファクトを生じるが
, SENSE
法はシナジーコイルを用いた信号のエンコードによって折り返しアーチファクトを元に戻すことができる。
SENSE
法は主に撮像時間の短縮や空間分解能の向上に用いられてきたが
, single shot EPI (
以下SS-EPI)
の磁化率アーチファクト低減に用いることもできる。磁化率アーチファクトが低減する理由は
k
空間のサンプリング時間が短くなるからである。SS-EPI
は1
回のRF
励起後, k
空間のすべてのラインに対してサンプリングを行う手法である。よって磁化率の違いがある場合
,
位相エンコード方向の位相シフトが蓄積されて磁化率アーチファクトが生じる。今回の実験において
,
アーチファクトの変化はSENSE factor
が大きくなるにつれ減少がみられた。これは
, k
空間のサンプリング時間の短縮による磁化率の差から位相シフトの蓄積が減少した結果と考えられる。
7. DWI
におけるアーチファクト低減の検討について(
周波数エンコード方向,
および位相エンコード方向
)
周波数エンコード方向
,
および位相エンコード方向におけるアーチファクトの大きさの変化率は
,
マトリックス数が大きくなるにつれ上昇が見られた。Scan matrix
は周波数エンコード方向のマトリックス数を設定するパラメータであり
, 64 ~ 1024
まで16
ステップで変更することが可能である。一方で
Scan percentage
は周波数エンコード方向に対する位相エンコーディング方向のマトリックス数の割合を示す。この値を下げることで撮像時間が短縮すると同時に
,
空間19
分解能が低下する。 通常
, MRI
画像の縦方向と横方向は周波数エンコード方向と位相エンコード方向からなる11)。
MRI
画像の縦方向と横方向どちらかを周波数エンコード方向および位相エンコード方向にするかは
MRI
装置において撮像時に任意に決定できる。位相エンコード方向では位相の違いでスライスの位置情報を認識する。それに対して周波数エンコード方向では周波数
の違いでスライス内の位置情報を認識する。位相エンコード方向にはアーチファクトとして
aliasing artifacts
やmotion artifacts
が生じる一方,
周波数エンコード方向にはSE
法の場合chemical shift artifacts
が生じるとされている。本実験では,
周波数エンコード方向の歪みの蓄積が位相エンコード方向にも蓄積されていくため
,
マトリックス数が大きくなるにつれてアーチファクトの大きさの変化率の上昇が見られたと考える。
結 語
口腔インプラント体の大きさの違いによるアーチファクトの比較については,
SE T1
強調像,
TSE T2
強調像,
およびSTIR
像ではインプラント体の直径および長さを変化させても,
アーチファクトの変動はほとんど見られなかった。
DWI
におけるインプラント体のアーチファクトの低減には
, 1. FOV
は撮像領域を確保した上で可能な限り小さくする。2. RFOV
は位相エンコード方向に留意し撮像領域を確保した上で可能な限り小さくする。
3. SENSE factor
は画質に影響しない程度で可能な限り大きくする。
4.
周波数エンコード方向,
および位相エンコード方向は画質に影響しない程度で可能な限り小さくする。これらを考慮することで金属アーチファクト
20
の影響が少なくできることが示唆された。文 献
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24 Figure. 1 Phantom (a) and dental implants (b)
(a)
(b)
25
Table 1 Imaging sequences and conditions
Sequences TR (msec)
TE (msec)
FOV (mm)
Thickness (mm)
Matrix NSA TI (msec)
SE T1 500 15 250 5 256 2
TSE T2 5000 100 250 5 256 2
STIR 2500 60 250 5 256 6 180
DWI 3000 80 250 10 128 1
26
Figure 2 An example of measurement of signal intensity area including the largest sizes
of metal artifacts
Measurement of metal artifacts were the largest dimension of low signal intensity area on
MR images.
27
Figure. 3 Rate of Change in Size of Artifact (%) and imaging techniques.
*CV<0.05 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
SE T1 TSE T2 STIR DWI
Rate of Change in Size of Artifact (%)
3.5 × 8.0 mm 3.5 × 9.5 mm 3.5 × 11.0 mm 4.5 × 8.0 mm
28
Figure 4 Rate of Change in Size of Artifact (%) : b values
0 100 200 300 400 500
100 500 1000 1500
Rate of Change in Size of Artifact (%)
b value (sec /mm 2 )
3.5 × 8.0 mm
3.5 × 9.5 mm
3.5 × 11.0 mm
4.5 × 8.0 mm
29 Figure 5 Rate of Change in Size of Artifact (%) : FOV
0 100 200 300 400 500 600 700
100 150 200 250 300 350
Rate of Change in Size of Artifact (%)
FOV (mm)
3.5 × 8.0 mm 3.5 × 9.5 mm 3.5 × 11.0 mm 4.5 × 8.0 mm
p= 0.04 r= -0.83p= 0.03 r= -0.83 p= 0.01 r= -0.91 p= 0.07
30
Figure 6 Rate of Change in Size of Artifact (%) : RFOV
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
50 60 70 80 90 100
Rate of Change in Size of Artifact (%)
RFOV (%)
3.5 × 8.0 mm 3.5 × 9.5 mm 3.5 × 11.0 mm 4.5 × 8.0 mm
p= 0.15p= 0.15 p= 0.15 p= 0.15
31
Figure 7 Rate of Change in Size of Artifact (%) : SENSE factor
0 100 200 300 400 500 600
1 1.5 2 2.5 3
Rate of Change in Size of Artifact (%)
SENSE
3.5 × 8.0 mm 3.5 × 9.5 mm 3.5 × 11.0 mm 4.5 × 8.0 mm
p= 0.04 r= -0.89p= 0.01 r= -0.94 p= 0.01 r= -0.95 p= 0.18
32
Figure 8 Rate of Change in Size of Artifact (%) : scan matrix
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
64 128 192 256
Rate of Change in Size of Artifact (%)
scan matrix
3.5 × 8.0 mm 3.5 × 9.5 mm 3.5 × 11.0 mm 4.5 × 8.0 mm
p= 0.05 r= 0.95p= 0.10 p= 0.10
p= 0.05 r= 0.94
33
Figure 9 Rate of Change in Size of Artifact (%) : scan percentage
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
64 128 192 256
Rate of Change in Size of Artifact (%)
scan percentage
3.5 × 8.0 mm 3.5 × 9.5 mm 3.5 × 11.0 mm 4.5 × 8.0 mm
p= 0.04 r= 0.96p= 0.07 p= 0.13 p= 0.05 r= 0.94