3 章 リモー トセ ンシングで見る雲仙火山災害
後藤恵之輔
1
節 調査の内容
今回の雲仙 ・普賢岳火山災害ほど,いわゆるハイテク技術が活躍 している災 害 はないのではなかろうか
1) 。一昨年
(1990年)
11月1
7日の噴火以来活発な活 動のみな らず,火砕流および土石流が発生 してお り,災害の根源である普賢岳 頂上や溶岩 ドームに地上か らは近付けない。 このため,ヘ リコプター等で空中 か ら遠望するか,ハイテク技術を使 って空中や地上遠方よ り情報を収集す るし かない。
このハイテク技術の一つが, リモー トセ ンシングである。著者 らは,一昨年 の噴火以来,地上調査 と並行 して リモー トセ ンシング調査を実施 しており,本 文では広範にわたる,著者 ら独 自の リモー トセ ンシング調査を報告す るもので ある。
調査は,宇宙 ( 人工衛星)‑超低空 ( ヘ リコプター)‑地上 と観測 ステージ
を変え,いわゆるマルチステージ ・サーベイを行 った。衛星データの解析で
は,災害の推移 と植物活性による火山活動の把握,ヘ リコプター調査では,熱
映像装置による溶岩 ドームと火砕流跡の温度観測,地上調査では ビデオカメラ
による火災流発生の瞬間,を内容 とした。なお,普賢岳の噴火については,頂
上付近の樹木に前兆があったのではと考え,衛星データか ら樹木の活性度の変
化を調べようと したが,噴火直前 までのいずれの衛星データも頂上付近に雲が
かか り,前兆把握を断念せ ざるを得なか った。
2
節 リモー トセ ンシングの概説
人工衛星や航空機などにセンサーを搭載 し,地表か らの電磁波 ( 可視光線や 赤外線など)をとらえて,地表にある物質の種類や状態,あるいはそれを取 り 巻 く環境条件を知る技術を, リモー トセ ンシングと呼んでいる
2) 。対象物に触 れず電磁波を調べることで,この技術が可能なのはなぜか。そのカギは図
‑ 1にある。すなわち,地表にあるすべての物質は,太陽か らのエネルギーを受け て電磁波を反射 したり放射 した りしている。 しか し,その反射,放射の仕方 は,物質の種類や状態,環境条件に応 じて違 う
。したが って,これ らの電磁波 の強さをセ ンサーで測定 し特性を比較することにより,その物質の種類を識別
したり,状態や環境条件を知ることができる。
また,物質 は太陽光が当たっていな くて も赤外線などを反射 ・放射 してお り,その強 さは図
‑ 2に示す ように物質の温度が高いほど大 きい。 したが っ て,反射 ・放射の強さを測ればその温度が分り,陸地や海面などの観測対象物 の温度分布特性を求めることができる。さらに,人工衛星や航空機などか らマ イクロ波を発射 し,対象物か ら反射されて くるマイクロ波の強さを測ることに ょり,地表面の高低を求めたり,波高,海面の風向 ・風速,海流などを調べる
こともできる
5) 。水
l
図‑ 1 植物,土,水の反射特性3)
3
波 長
(〃n‑)反 射 の 強 さ
NEU\Jh)世職小
高
蚕10
1l一O
lHH
0. 10. 20. 5 1 2 5
10 2 0 5 0 1 00
波 長
(〃m)図‑ 2 物質の放射特性の例 (黒体)4)
このように,物質の もつ電磁波の反射,あるいは放射の特性を利用すること
によって,その物質がどの様な種類で, どんな状態,どんな環境条件下にある
かを知 ることができる。 これが リモー トセ ンシングの原理である。電磁波には
一般 に波長の長 さによってガ ンマ線か ら電波 まである。人間の 目に感 じる光
は, これ らの中のごく一部の可視光線 と呼ばれ る部分である。 リモー トセ ンシ
ングではこの可視光線 はもちろん,紫外線や赤外線 という人間の 目には見えな
い電磁波までとらえ,時にはより波長の長いマイクロ波を対象とす る。
リモー トセ ンシングには,次のような利点がある。①同時に広い範囲を同 じ 精度で調査できる。②労力,経費,時間が少な くてすむ。③人間が入 り込めな
い山岳地帯の調査に効果的である。④反復観測が容易なため,地表面の変化を 発見 しやすい。 これ らの利点を生かせば, リモー トセ ンシングによる調査法
は,種々の自然災害に適用で きることになる。
3
節 人工衛星による火山災害の推移と火山活動の把握
1.火山災害の推移
雲仙火山災害については,現在多 くの人工衛星によ り観測が続け られてい る
6)。すなわち,米国の
LANDSAT, フラ ンスの
SPOT, 日本の
MOSと
JERS,およびロシアの
ALMAZなどによってである。 ここで は, 日本の MOS衛星による火山災害の推移
7)を紹介することとする。
MOS
衛星 ( 通称 もも)は我が国初の地球観測衛星であり,1
987年2月に
1号機が打ち上げられ 現在
1号機と
2号機(
1号
b)が稼働中である。この衛星
は高度約9
00k mの軌道を回 り
, 17日周期で同一地点を観測す る。搭載す るセン サーには
MESSR,VTI
R,MSR の
3種があり,とくに
MESSRは可視光線
と近赤外線をキャッチ し,解像度 ( 地上で見える大きさ)は
50mである。写真‑ 1 は, もも
1号およびもも 1号
bによる島原半島の
MESSR画像で ある。 この画像においては,植生域は赤色,雲は白色,噴煙は青白色に見える ( 原図はカラー) 。 ここでは,噴火前
(1987年11 月2
2日)か ら
1993年9月2
5日 までの画像を示す。
①の画像は噴火前の島原半島で,主として東西方向に走る多 くの断層が目に つき,島原半島がいわばモ ミクチャの状態にあることが分かる。②は噴火
5ケ 月 目の映像であ り,半島のほぼ中央 に位置す る普賢岳 より南東方向への噴煙 ( 青白色)が細長 く見えている
。1991年 6月
3日,
8日には大火砕流が起 こ り,
6月
30日には水無川で土石流が発生 したが,その
3ケ月後の画像が③であ る。普賢岳山頂か らの火砕流跡および土石流跡が明瞭に現れており,お しが谷 の途中で火砕流が止まっていることが分かる。山頂に大量の噴煙が見え,南南 西方向へ拡散 していることも認め られる。
③ と④の画像 との間では,
9月1
5日の大火砕流が発生 している。③の画像で
①1987年11月22日
噴火前の島原半島。
半島を東西方向に 横切る多 くの断層 が目に付 く。
⑤1992年9月16日
6月3日、8日の 大火砕流から
3ヶ月後。
火砕流及び土石 流跡がは っきり と見え、お しが 谷の途中で火砕 流が止まってい ることが分かる
普賢岳の東側斜面 のほとんど全域が 火砕流跡 となって いる。
②1991年4月25日
噴火 5カ月 目。
半島のほぼ中央に 位置する普賢岳よ り南東方向への噴 煙 (青白色)が見 える。
④1991年10月20日
⑥1993年9月25日
③ とこの画像との 間で、9月15日の大 火砕流が発生 して いる。お しが谷を 流下 した火砕流が 大野木場まで逮 し ていることが見て とれる。
最近の画像。
火山活動の影響が 東側斜面のみなら ず、千本木方向お よび北西方向にも 現れている。
写真‑ 1 雲仙火 山災害の推移 を示 す人工衛星 (もも)画像
お しが谷の途中で止まっていた火砕流が谷を完全に流下 し,大野木場地区まで
達 していることが見てとれる。⑤の画像 はその丁度 1年後の状況である。④ と
比べて火災流跡が大 きく広が っており,火山活動の活発さが うかがえる。さら
に,⑥の画像では,普賢岳の東側斜面のほとんど全域が火砕流跡 となるととも
に,火砕流が垂木台地を乗 り越えて千本木地区にまで達 していること,普賢岳 の北西方向にも火山活動の影響が及んでいることが分かる。
写真
‑ 1の①か ら⑥までの全画像を通 してみれば,雲仙 ・普賢岳の火山災害 は高度
900kmの宇宙か らも明瞭に見えるほどで,その規模の大 きさ,広が りに 驚かされる。地上においては,降灰,火砕流および土石流の三重苦に住民は苦 しめられてお り,本火山災害の調査研究に携わっている者 として,何とかせね ばの責務に駆 られる心境である。
2.
植物活性による火山活動の把握
火山地帯の樹木は,火山により何 らかの影響を受ける。 この原因には, 2つ ある。上空か らの ものと地中か らの ものである。上空か らの原因は火山噴火に よる降灰と火山ガスであ り,樹木に火山灰や火山ガスが降 りかかれば,莱,時 には樹木全体が枯れて しまう。地中か らの原因は,マグマ上昇による熱気 と火 山ガスである。樹木にはもちろん根があるため, ここに熱気,火山ガスが くれ ばこれにより根 は痛めっけられ,ひいては樹木全体が枯れて しまうことにな る。 これら2つの原因の他にも,火砕流 ・土石流が樹木を直撃 したり,火砕涜 の熱風が樹木に当たれば,樹木は完全に枯れて しまう
。このように樹木が火山の影響で弱ったり枯れて しまう現象は,樹木の活性度 ( 活力度とも言 う)を求めることにより調べることがで きる。活性度は リモー トセ ンシングデータを使えば,簡単に計算することがで きるため, ここではフ ランスの人工衛星
SPOTのデータを用いて求めることとした
8)。spoTはこ れまでに 1号 と
2号が打ち上げ られ,いずれも現在稼働中である。
1号,
2号
と も,観 測 高度 は
832km,観 測周期 は
47日で あ り,一 対 の光学 セ ンサ ー
(HRV)
を搭載 している。
HRVは可視光線のみを観測す る
パンクロマチ ッ クモー ド,可視光と近赤外線を観測するマルチスペク トルモー ドの,
2つの観 測モー ドで作動 し,解像度はそれぞれ
10mおよび
20mである。
樹木の活性度の計算方法にはいくつかあるが, ここでは近赤外線 と赤色光の 反射強 さの比
(RVIと言 う)で計算 し,その経時変化を調べた。植物 は元気 であれば,近赤外の反射が強 く赤色光の反射は弱いため ( 弱 ったり,枯れたり すればこの逆) ,
RVIの値が大 きいほど樹木は元気で活性度が高い。対象地は 普賢岳周辺か ら島原市,深江町にかけてで,
RVIの計算は噴火前
(1988年
10月
7日)を基準 として, これまで最 も活動が激 しかった
1991年夏か ら秋を対象
とし
た 。結果を写真‑ 2に示す ( 原図はカラー) 。各写真 とも,右端のカラーコー ド は樹木の活性度を示 し,上にい くほど活性度は低 く,下にい くほど活性度は高 い。写真‑ 2
(a)は噴火前であるため,当然樹木の活性度 は高いが,写真‑ 2
(b), (C)
で は普賢岳山頂周辺,火砕流 ・土石流の流下跡で,活性度 は大変低 く なっている。
写真‑ 2
(a)〜 (C)をこの順で見ていくとき,活性度の変化に奇妙な点があるこ とに気付 く
。普賢岳の南部,北部および眉山の西部においては
,1991年
8月の 結果 ( 写真‑ 2(
b))では噴火前 ( 写真‑ 2(
a))に比べて,活性度はかなり低 く なっている。 しか し,同 じ場所を
10月の結果 ( 写真
‑ 2(C))で見 ると,活性度 はかなり回復 し,例えば眉山の西部は噴火前の状態 と変わ らない。言い換えれ ば,樹木が元気を取 り戻 していることになる。 この ことは,噴火活動の推移 と 関係あるのではなかろうか。すなわち,
8月に活動は活発であったが
,10月に
はそれがある程度沈静化 していたと考え られる。
こう推察 していたとき,ある新聞記事
9)が 目に入 った。普賢岳で火山ガスの 調査を続けている大学のグループの研究成果である。 このグループが注目して いるのは,火山ガスに含まれる塩素イオ ンと硫酸イオンの比で, この値は一般 に火山活動が激 しいと大きいとされている。一昨年
(1991年)秋の火山学会で 同グループは,
8月に1
0以上だった値が秋には
1前後に下がったため, 「 活動 は沈静化に向か っている可能性がある」と報告 していた。著者 らが注 目したい のは, この報告である。本研究で樹木の活性度か ら火山活動の推移を推察 した 結果が,火山ガスの成分か ら行 ったそれ と一致 した。 この ことは,火山活動を 調査す る時,いままでは火山ガスや地磁気,溶岩量などか ら行 っていた もの が, これ らとは全 く別の角度か ら,樹木の活性度を調べることによって も可能 であることを示唆するものである。
広域に樹木の活性度を調べるには,人工衛星によるリモー トセ ンシングが威
力を発揮す る。今回の調査ではフランスの
SPOTを用いたが,人工衛星には
この他に米国の
LANDSAT, 日本の
MOSと
JERS,および欧州宇宙連合の
EERSなどがある。いずれ も可視光と近赤外線を観測するセ ンサーを搭載 して
いるため,そのデータを用いて樹木の活性度を計算することは容易
10)である。
(a)1988.10.7
(b)1991.8.16
(C)1991.10.2
写真‑ 2 衛星(SPOT)データで とらえ た樹木 の 活性度 の推移 (⑥CNES)
4
節 熟 映像 装 置 を用 いた溶岩 ドーム と火砕 流跡 の温度 観 測
火砕流がどれ ほど高温であるのか, その発生時 に観測す ることは仲々難 し い。 このため,火砕流発生後 にその跡 の温度 を観測す ることと し,ヘ リコプ ターに熱映像装置 ( サーマルカメラ)を搭載 して遠隔観測
日 )を行 った。観測 は
,1991年5月
3日
,25日
,30日および
6月
7日の計
4回チャレンジした。第
1, 2回目はそれぞれ熱映像装置の電源の都合,普賢岳上空にかか った雲のた め断念 したが,第 3, 4回 目は観測に成功 した。測定機材 として熱映像装置 (日本ア ビオニ クス社製,
TVS‑2000),普通 カメラおよび ビデオカメラを, 有人ヘ リコプターに搭載 した。観測状況は図
‑ 3の とお りであるが,測定距離
と観測高度 は把握で きなか った。
6
月
7日に観測 した,その4日前の6月
3日に起 こった大火砕流跡の熱映像 を写真‑ 3
(a)のモザイク図に示す ( 原図はカラー) 。図の左か ら右へ溶岩 ドー ム‑火砕流上 ・中流部‑下流部であり,温度の レベルは各図の上に色で示され ている。図中,数字を付 した十の記号の位置の温度 ( o C ) は,各図の左下にあ
るとお りである。 このままでは温度分布がよ く分 らないため,熱映像による 測
ヘリコプター
図‑ 3 熱映像装置 による溶岩 ドーム ・火砕流跡の温度観測状況
写真‑ 3 ‑99‑年 6月 3日の大火砕流跡の温度分布
(a) 溶岩 ドームおよび大火砕流跡の熟映像 (199峰 6月7日後 2時前後観測)
写真‑ 3 1991年 6月3日の大火砕流跡 の温度分布
(b) 航空写真
(1991年6月8日撮影、提供 :㈱ 朝 日航洋、数値 は温度
( o C )
を示す)定温度を写真
‑ 3(b)のように航空写真上 におとした。なお, この航空写真は
6月
8日に撮影 した ものである。
測定 された溶岩 ドームの温度 は,最高31
9℃である。普賢岳 における噴出前 の,地下 における状態でのマグマの温度 は,鉱物温度計 によ り
700‑750℃で あ った
12)と見積 もられている。火砕流跡の上流部で最高温が1
74℃,中流部で 180℃前後,下流部で2
41℃である。上 ・中流部より下流部で温度が高いのは, 火砕流本体が溶岩 ドームか ら斜面を流下す るとき,上 ・中流部を高速で流下 し
(このため堆構厚 は薄い) ,下流部で速度を緩めて部分的に厚 く堆積\ したため
であろう
。再記す るが, この温度観測 は
6月
3日の大火砕流後
4日経 った 日に 行 った ものである。火砕流が発生 したとき,当時の温度 はどれほど高温であっ たろうか。
著者 らは,別途現地調査時に
6月
3日の大火砕流の被災者へインタビューを 行 った経験
13)1 4 )を持
っ 。この被災者 は当時,北上木場町の,樹木に囲まれた 広い家 に居住 していた。 その談 によれば, 「 やや熱風が治まってか ら外に出て みると,一瞬の うちに灰が20c m はど積 もっていた。その灰の上を歩いて避難 し たが,靴の底が溶け足を火傷 した。近 くの民家は,数秒の問に燃えるのではな く,溶けるように崩れた。当日来ていた使用人は,心臓発作で灰の上に寝て し まったが,叔父が抱 き上げ,助けに来た車に乗せた。その時,使用人は背中一 面 に火傷を負い,叔父 も右腕 を少 し灰 に触れただけで,皮膚が剥 けて しまっ た。その車で避難中,一人の男性が助 けを求めていたので車に乗せたが,大火 傷を負 ってお り,皮膚が魚の干物のようになっていた。その人はす ぐ亡 くなっ たが,今考えて も自分たちが生 きているのが奇跡のようだ」と。 これ らの証言 か らだけで も,火砕流がどんなに高温であ ったかが推測で きる。
5
節 ビデ オ カメ ラによる火砕 流発 生 の 瞬間
火砕流 とは,高温の溶岩の破片や軽石,火山灰が,発生す る高温の火山ガス と共に,山腹斜面を高速で落下す る現象を言 う
。しか し,火砕流の発生 メカニ ズムはよく分か っていず,溶岩片が溶岩 ドームか ら離れ る,いわゆる火砕流発 生の瞬間については定説がなか った。そこで,著者 らはその瞬間について,島 原市に隣接す る深江町にある定点に据えつけた ビデオカメラにより観測 し,発 生 メカニズムを解明
15)した。
写真
‑ 4は火砕流発生の瞬間をコマ送 りで示 したものである。白い部分が高 温状態を示 し,黒い部分は低温状態にある。前節で述べたように,高温部分は 噴出前のマグマで700‑750℃程度であり,低温部分は約320℃の値が得 られて いる。
写真‑ 4①〜⑧によれば,火砕流は溶岩片が溶岩 ドームか ら離れ落下 してい
くうちに 「 次第に壊れ発生す る
」もの, と予想 していたが, このメカニズムは
LbLt溶 岩 ドーム の表面
・S.ドロ ドEl状億の溶岩 が流 出
②溶岩 ドームの一 部に クラ ック発生
⑥ ク ラックが広が る
⑧溶岩が クラ ックか らほ と走 り出る ⑥溶着 ブ ロ ックが崩れ始め る
⑦溶岩ブロックが完全に崩れ落ちる ⑥ ブ ロック片 と溶 岩 (冷 えて小 さな塊状) が一緒に落下
写真‑4 火砕流発生の瞬間を示す コマ送 りビデオ写真
当たっていない。すなわち,まず溶岩 ドームの一部にクラックが入 り ( 写真‑
4 ②) , ここか ら ドーム内部にある ドロ ドロ状態の溶岩が流出す るとともに ( 写真
‑ 4③) ,クラックが広が り ( 写真
‑ 4④,⑤) ,ついにはその ドームの 一部が崩れて ( 写真
‑ 4⑥,⑦) ,その破片 と ドロ ドロで 「 小 さな塊状」の溶 岩 ( 溶岩片は ドームか ら流出するとき,大 きな塊ではな く,最初か ら小さな塊 状)が一緒に落下 してい く ( 写真‑ 4 ⑧) ことにより,火砕流が発生するので ある。
したがって,火砕流 と溶岩の崩落との違いは,溶岩 ドームの一部が崩れると き,中の ドロ ドロ状態にある溶岩が流出 して くるか否かによっている。単に ドームの表面がはがれるように崩れれば 溶岩の崩落であり,上記のように ド ロ ドロで小 さな塊状の溶岩が流出 して くれば,火砕流となる。
6
節 今後の課題
以上,雲仙 ・普賢岳火山災害について,宇宙 ・超低空 ・地上か らの リモー ト センシングを行 ったが,今後の課題として,( 丑溶岩 ドームの温度推移,②火砕 流の発生か ら終息までの温度変化,③降灰の海中拡散,④土石流の土量把握な
どがある。
溶岩 ドームの温度は,
4節で述べたように熱映像装置で調べ ることがで き る。 しか し,その推移を知るには,ヘ リコプターを随時飛ばすか熱映像装置を 常設 しなければな らず,容易でない。 このため,地表温度を少 し粗 く ( 解像度
120m)ではあるが周期的にキャッチできる
LANDSATの
TMセンサーを用 いて行いたい。火砕流そのものの温度については,著者の知 る所まだ測定 され てないようである。そこで,発生 してか ら終息す るまでの火砕流の温度を,熱 映像装置により連続 して観測す る計画である。
2 部にあるように,火山灰が有明海の漁業に与える影響は無視で きない所に
まで来ている。その影響は,陸上か らは土石流に含まれて,また空中か らは降
下火山灰の形で有明海に注 ぐ。著者 らは降灰の海中拡散について,その基礎的
な研究 として降灰を含む海水のスペ ク トル特性
16)を既に調べている。今後,
この成果を人工衛星による有明海の降灰汚染の調査に役立たせてい く所存であ
る。土石流の土量把握 は復旧工事を進めるうえで重要である。今の所は地上で の測量に頼 っているが, これでは労力と くに時間がかか って しまう
。そこで著 者 らはこれを超低空か ら行 うこととし,飛行船 とディジタルカメラにより土量 把握を試みる予定である。
参 考 文 献
1)後藤意之輔 ・中沼達也 ・大河意二 ・三 浦国春 :雲仙 ・普賢岳火山災害調査 (その 2) リモ ー トセ ンシ ング調査,第10回 日本 自然 災害学会 学術講 演要 旨集,pp.
6‑ 7,1991.10
2)後藤恵之輔 :衛星情報で知 る土砂崩れの危険,科学朝 日,No.552,pp.24‑29, 1987.1.
3)NASDA :地球観測セ ンター (リーフ レッ ト),4p.
4)大森豊明 :赤外線 のはな し, 日刊工業新聞社,p.48,1986.3.
5) (財) リモー ト・セ ンシング技術セ ンター :宇宙か ら地球 を見 る,47p.1989.4.
6)後藤意之輔 :マクロ リモセ ンか ら ミクロ リモセ ン‑〜新 しい調査 ・計測技術を求 めて〜,地盤工学分野での リモー トセ ンシングデー タの活用 シンポ ジウム発表請 文集,pp.111‑116‑ 2,1993.ll.
7)後藤恵之輔 :人工衛星 リモー トセ ンシングによる雲仙 ・普賢岳火 山災害 の推移調 査, 雲 仙 岳 の火 山 災害 ‑ その土 質 工 学 的課 題 を さ ぐる‑,土 質 工 学 会,pp.
87‑95,1993.6.
8)後藤恵之輔 ・浜崎一弘 ・松岡朋秀 ほか :雲仙 ・普賢岳の現地調査 と リモー トセ ン シング調査,雲仙火 山災害 の調査研究,雲仙火 山災害 長崎大学 調査研究 グル ー プ,pp.40‑61,1992.6.
9)朝 日新聞,1992.4.9朝刊.
10)後藤恵之輔 ・湯藤義文 ・吉本雅利 :雲仙 ・普賢岳噴火活動 による周辺樹木の衛星 被害調査,平成4年度科学研究 費補助 金 (重点領域研究 1)研究成果報告書 (課 題 番号04201135),pp.60‑65,1993.3.
ll)後藤患之輔 ・板坂修二 ・中沼達也 :熱映像装置によ る雲仙普賢岳 ・火砕流跡の温 度観測,土 木工学 におけ る非破壊評価 シンポ ジ ゥム講演論文集,土木学 会,pp.
213‑219,1991.10.
12)荒牧重雄 :雲 仙火 山の噴火 と火砕 流,科学,Vol.61,No.8,pp.495‑498,
1991.8.
13)後藤恵之輔 ・浜崎一弘 ・松 岡朋秀 ほか :雲仙 ・普賢岳火山災害調査 (その1)覗 地調査,第10回 日本 自然災害学会学術講演要 旨集,pp.4‑ 5,1991.10.
14)前出8),pp.49‑51.
15)大河憲二 ・後藤恵之輔 ・湯藤義文 :定点写真 ・ビデオ観測 による雲仙普賢岳溶岩 ドームの成長過程 と火砕流発生の瞬間, 日本 リモー トセ ンシング学会第13回学術 講演会論文集,pp.189‑192,1992.12.
16)後藤恵之輔 ・全 柄徳 ・湯藤義文 ・吉本雅利 :雲仙 ・普賢岳 の降下火 山灰が混入 した海水 の スペ ク トル特性 に関す る室 内実験,雲仙火 山災害 の調査研究 (第2 編),雲仙火山災害長崎大学調査研究 グループ,pp.45‑54,1993.6.