Ⅰ.会長挨拶
太田哲生会長から,十全医学賞授賞式及び学術集会開 催に先立って総会議事を行う旨の挨拶があり,会長が議 長となって議事が進行された.
Ⅱ.十全医学賞授賞式
平成 26年度 (第11回) 授賞者と研究題目は次のとおり
である.
三枝理博先生 (金沢大学医薬保健研究域医学系 分子神経科学・統合生理学 准教授) 研究題目「オレキシンによる睡眠・覚醒調節の神経メ
カニズム」
坂井宣彦先生 (金沢大学附属病院 血液浄化療法部 助教) 研究題目「臓器線維化機序の解明と治療法への展開」
Ⅲ.庶務報告
中村裕之庶務担当理事が平成 26-27年度事業計画につ いて報告した.
1.会員数 (平成 27年5月現在 )
約 2,080名 (学外 1,882名,学内 198名) 2.役員について
1) 平成 27年役員について
集会担当理事 多久和 陽先生が退任され,河﨑洋 志先生が就任された.
他の役員については留任となった.
2) 新評議員について
昨年 (平成 26年 6月24日 ) に開催された総会でのご 報告以降にご就任された評議員は
学外 ) 石田文生教授 (昭和大学横浜市北部病院消化器センター ) 伊藤研一教授 (信州大学 )
岡田尚巳教授 (日本医科大学 ) 高見昭良教授 (愛知医科大学 ) 学内 ) 崔 吉道教授 (薬剤部)
田嶋 敦教授 (革新ゲノム情報学 ) 塚 正彦教授 (法・社会環境医学) 中田光俊教授 (脳・脊髄機能制御学 )
村山敏典教授 (病院臨床開発部) が就任された.
3) 定年・退任評議員について 平成 26年12月 31日を以て,
岡田保則先生 (慶応義塾大学 ) 加藤 聖先生 (金沢大学 ) 喜多一郎先生 (高知大学 ) 清木元治先生 (高知大学 ) 高田重男先生 (金沢市立病院 ) 友杉直久先生 (金沢医科大学 )
山本 博先生 (金沢大学 ) が定年となった.
3.会議開催日 (平成 26年) について
総会・学術集会は 6月 24日 (詳細は十全医学会雑誌 123巻 2号に掲載 ) に開催され ,定例の理事会は 2月 17 日,11月 7日及び評議員会は3月 5日,12月 3日に開催 された.
Ⅳ.会計報告
堀会計担当理事により平成 26年度収支決算報告 (河 原,佐々木監事による監査報告添付 ) が説明され,承認 された.また,引き続き平成 27年度予算計画が提案,
説明され,同様に承認された.
Ⅴ.編集報告
井関編集担当理事により,123巻は発行回数が 4回,
受付論文 (原著 ) 2編,総説 11編 (うち高安賞 3編,十全
医学賞 2編),研究紹介3編,修士論文要約 2編,見聞記
4編,留学報告 2編,学会開催報告6編であった旨,報告
された.
(文責:庶務担当理事 中村裕之)
金沢大学十全医学会総会・学術集会
日 時 平成 27年6 月23日 (火) 12 : 40 〜17 : 50 場 所 金沢大学十全講堂
【総会報告】
平成 27 年度 十全医学会総会次第
Ⅰ・会 長 挨 拶
Ⅱ・庶 務 報 告
平成 26 − 27 年 事業計画および報告
Ⅲ・会 計 報 告 1.平成 26 年 決算報告 2.平成 27 年 予算計画
Ⅳ・編 集 報 告
【第 11 回十全医学賞授賞式および記念講演】
「オレキシンによる睡眠・覚醒調節の神経メカニズム」
三枝理博先生
私たちは人生の約 3 分の 1 を眠って過ごす.睡眠は必 要不可欠であるが,起きているべき時に突然眠り込んで しまうと困る.脳には睡眠システムと覚醒システムが存 在し,適切なタイミングで両者が切り替わる.この制御 に重要なのが神経ペプチド・オレキシンで,オレキシン 産生ニューロン ( オレキシンニューロン ) の変性により 睡眠障害・ナルコレプシーが発症する
1).これは,不適 切なタイミングで睡眠と覚醒が切り替わってしまう病気 である.特徴的な症状に,日中の強い眠気や睡眠発作,
情動性脱力発作等があり,覚醒が長く維持できずノンレ ム睡眠が病的に出現したもの ( 睡眠発作 ) と,レム睡眠 関連の機構が異常なタイミングで出現したもの ( 情動脱 力発作,等 ) に大別される.
オレキシンニューロンは視床下部脳弓周囲野のみに限 局して存在し,小脳を除く中枢神経系全域に投射する.
特に,睡眠・覚醒制御に関わるモノアミン作動性ニュー ロンやコリン作動性ニューロンの起始核に密な投射が見 られ,またオレキシン投与によりこれらのニューロンは 興奮する.オレキシンニューロンはモノアミン作動性 ニューロンやコリン作動性ニューロンの活動を高めるこ とで覚醒を安定化しており,ナルコレプシーは覚醒を適 切に維持できないことに起因すると考えられる
1).我々 は,オレキシンによる睡眠・覚醒調節機構の全貌を理解 することを目的とし,研究を行っている.
Ⅰ. オレキシンニューロンの活動度と睡眠 ・ 覚醒量との 因果関係
In vivo でのオレキシンニューロンの発火頻度は覚醒 時に高く,ノンレム,レム睡眠時には殆ど発火しない.
我々はオレキシンニューロンの神経活動を人為的に操作 するために,組換え AAV ベクターと細胞特異的 Cre 発 現 マ ウ ス を 用 い,DREADD (Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs) をオレキシン ニューロンで特異的に発現させた
2).興奮性 DREADD によりオレキシンニューロンを活性化すると覚醒量が増 加し,抑制性 DREADD によりオレキシンニューロンを 抑制すると覚醒量が減少した.以上の結果から,オレキ シンニューロンの活動度と睡眠 ・ 覚醒量との間の因果関 係が示された.
Ⅱ. 睡眠 ・ 覚醒調節におけるオレキシン受容体 OX1R, OX2R の役割分担
二つのオレキシン受容体,OX1R, OX2R が存在する.
オレキシン A 脳室内投与による覚醒亢進,ノンレム・
レム睡眠抑制の効果を,野生型,OX1R 欠損,OX2R 欠 損マウスで比較した
3).OX1R 欠損マウスにおけるオレ キシン A の覚醒亢進・ノンレム睡眠抑制作用は,野生 型マウスと比較して若干ではあるが有意に減少した.
OX2R 欠損マウスに投与した場合は,野生型マウスに比 べ約半分に減少したが,有意な効果が見られた.よって,
オレキシン A による覚醒亢進・ノンレム睡眠抑制の主 要な経路は OX2R を介するが,OX1R を介した補足的な 経路によっても調節されると示唆される.一方レム睡眠 抑制に関しては,三者間でオレキシン A の作用に有意 な差が見られなかった.二つの受容体が同程度に,重複 して制御すると考えられる.
Ⅲ. オレキシンニューロンの直接の下流でナルコレプ シーを抑制するニューロンの探索・同定
オレキシン投与により活性化されるニューロンが,実 際に生理的条件下での睡眠・覚醒調節に重要であるかは 不明である.我々は,in vivo でオレキシンニューロンの 直接の下流でナルコレプシーを抑制するニューロンの同 定を試みた
4).オレキシン受容体欠損マウス (OX1R;
OX2R 二重欠損マウス ) はオレキシンニューロンの投射 には異常がないが,受容体を欠くためナルコレプシー症 状を示す.AAV ベクターを用い,オレキシン受容体欠 損マウスの様々なモノアミン作動性,コリン作動性神経 核で局所的にオレキシン受容体発現をレスキューし,ナ ルコレプシー症状が改善する神経核を検索した.背側縫 線核・セロトニンニューロンで OX2R 発現を回復させる と情動性脱力発作が抑制された.一方,青斑核・ノルア ドレナリンニューロンに OX1R の発現を回復させると睡 眠発作が抑制された.さらに,DREADD を用いて背側 縫線核・セロトニンニューロン,青斑核・ノルアドレナ リンニューロンを人為的に活性化しても,それぞれ情動 性脱力発作,睡眠発作が大幅に抑制された.したがって,
ナルコレプシーに特徴的な二つの症状は,異なる神経メ
図.オレキシンニューロンは 2 つの異なる神経経路でナルコレ
プシーを抑制する
カニズムを介してオレキシンニューロンにより抑制され ると考えられる ( 図 ).
お わ り に
これまでの研究により,オレキシンニューロンの直接 の下流で覚醒を安定化させる神経経路が,初めて明らか になった.オレキシン受容体アゴニストが開発されれば ナルコレプシーの抜本的な治療薬となると期待されてい る
5).またオレキシン受容体拮抗薬は不眠症の新たな治 療薬として既に販売が開始され,注目されている.した がって,オレキシンによる睡眠・覚醒調節機構,二つの 受容体サブタイプの役割分担の詳細な理解は,ナルコレ プシーのみならずさまざまな睡眠障害の対処に応用でき ると考える.今後は,今回同定したセロトニン作動性 ニューロンなどのさらに下流でナルコレプシーを抑制す る標的ニューロンを特定し,ナルコレプシーの病態生理 に関わる神経回路の全貌を理解していきたい.
文 献
1 ) Sakurai T. The neural circuit of orexin (hypocretin):
maintaining sleep and wakefulness. Nat. Rev. Neurosci., 8, 171- 181 (2007)
2 ) Sasaki K, Suzuki M, Mieda M et al.: Pharmacogenetic modulation of orexin neurons alters sleep/wakefulness states in mice. PLoS One, 6, e20360 (2011)
3 ) Mieda M, Hasegawa E, Kisanuki YY et al.: Differential roles of orexin receptor-1 and -2 in the regulation of non-REM and REM sleep. J. Neurosci., 31, 6518-6526 (2011)
4 ) Hasegawa E, Yanagisawa M, Sakurai T, Mieda M: Orexin neurons suppress narcolepsy via 2 distinct efferent pathways. J Clin Invest, 124, 604-616 (2014)
5) Mieda M, Willie JT, Hara J et al.: Orexin peptides prevent cataplexy and improve wakefulness in an orexin neuron-ablated model of narcolepsy in mice. Proc Natl Acad Sci U S A, 101, 4649- 4654 (2004)
「臓器線維化機序の解明と治療法への展開」
坂井宣彦先生
は じ め に
線維化は,臓器障害に対する過度の創傷治癒反応,す なわちコラーゲンをはじめとする細胞外基質産生能を有
する細胞の集積と,過剰な細胞外基質沈着とを特徴とす る.この線維化の進展に伴い,臓器の構造的および機能 的恒常性は破壊され臓器不全にいたる.過度の創傷治癒 反応をもたらす分子生物学的基盤の中核として,コラー ゲン産生細胞および線維化関連メディエーターのはたす 意義の解明は,各種線維性疾患の新たな治療法開発につ ながることが期待される.これまで我々は,コラーゲン 産生細胞として骨髄由来コラーゲン産生細胞である bone marrow-derived fibroblast progenitor-like cells (BMDFP),および線維化関連メディエーターとして生 理活性脂質,lysophosphatidic acid (LPA) に着目し,線 維化進展機序における役割を検討してきた.
1.BMDFP と線維化 1-1. BMDFP の性状
線維化関連コラーゲン産生細胞として,臓器固有線維芽 細胞や上皮細胞,血管内皮細胞あるいは周皮細胞由来の 線維芽細胞などが知られている.近年,コラーゲン産生能 を有する骨髄由来白血球系細胞である BMDFP の存在が 明らかとなり, 新たなコラーゲン産生細胞の一つとして注目 されている
1).BMDFP の特徴として,骨髄由来白血球系 細胞表面マーカー (CD45) が陽性であり,同時に I 型コラー ゲンなど細胞外基質産生能を有することが挙げられる.
1-2.BMDFP の腎線維化進展機序における役割
1-2-1.マウス腎線維化における,BMDFP の制御機構:
ケモカイン・ケモカイン受容体系
腎障害が進展し腎不全に至る過程において,各種腎疾 患はその病因を問わず,腎線維化という共通機序をとる ことを特徴とする.そこで,一側尿管結紮 (unilateral ureteral obstruction; UUO) によりマウス腎線維化モデ ルを作成し,線維化腎への BMDFP (CD45/I 型コラー ゲン二重陽性細胞 ) 浸潤を検討した
2).結紮腎において
BMDFP の腎浸潤が認められ,浸潤 BMDFP 数は線維化
進展に一致して増加した.
末梢血白血球の臓器浸潤には,ケモカイン・ケモカイン 受容体系が関与することが知られている.BMDFP におい ても各種ケモカイン受容体が発現しており,その臓器浸潤 機構を考えるうえで注目に値する.そこで腎線維化におけ るケモカイン - ケモカイン受容体系,ことに CCR7 とそのリ
ガンド (CCL21) シグナルに着目し,腎線維化進展機序に
おける BMDFP の制御機構としての意義を検討した
2).腎 内ハイドロキシプロリン量は抗 CCL21 中和抗体投与なら びに CCR7ノックアウトマウス (CCR7ko) で野生型マウス (WT) に比し低下した.これに一致して腎内 BMDFP 数も,
CCL21/CCR7 シグナル阻害により低下した.
さらに CCL21/CCR7 シグナル依存性の BMDFP の腎浸 潤経路についても検討した.High endothelial venules (HEVs) は末梢リンパ節の postcapillary venules に存在す る特殊に分化した CCL21を発現する血管であり,CCR7 陽 性 細胞のリンパ節へのホーミングに関与する.そこで,
UUO によるマウス腎線維化モデルにおいて HEVs 様血管
(MECA79 陽性血管 ) の局在を検討した.線維化進展に一
致して CCL21 陽性 HEVs 様血管 (CCL21/MECA79 二重 陽性血管 ) の発現が増加し,CCL21 陽性 HEVs 様血管は
BMDFP の腎浸潤経路として重要であることが推測された.
以上の知見より,CCL21/CCR7 シグナルは BMDFP の腎浸潤を制御することで,UUO による腎線維化進展 機序に関与することが示唆された ( 図 1).
1-2-2.マウス腎線維化における,BMDFP の制御機構:
レニン・アンジオテンシン系
レニン・アンジオテンシン系は血圧調節系としてだけ でなく,心血管リモデリングをはじめ各種病態に関与す る.一方アンジオテンシン II (Ang II) 受容体には 2 つの サブタイプ, AT
1と AT
2が存在することが知られている.
そこで腎線維化進展機序における BMDFP の制御機構 として,AT
1/AT
2を介したレニン・アンジオテンシン系 の意義について検討した
3).結紮腎において,AT
2ko で は WT に比し I 型プロコラーゲンα 1 鎖 (COLIAI)mRNA 発現が増加した.一方 AT
1阻害剤投与にて,WT および AT
2ko ともに腎線維化の改善を認めた.浸潤 BMDFP 数 は AT
2ko で WT に比し高値であったが,AT
1阻害にて AT
2ko,WT ともに低下した.また,AngII によるヒト BMDFP 由来 COLIAImRNA 発現は AT
1阻害で低下した が,AT
2阻害で亢進した.以上の知見より,レニン・ア ンギオテンシン系は,AT
1受容体 /AT
2受容体を介して
BMDFP の腎浸潤およびコラーゲン産生能を制御するこ
とで,腎線維化に関与することが推測された ( 図 1).
1-2-3.ヒト腎疾患のバイオマーカーとしての BMDFP の可能性
腎生検を施行した各種腎疾患 100 例を対象に,腎内
BMDFP 数と臨床病理学的指標との相関を検討した
4).
腎内 BMDFP 数は推算糸球体濾過量および 24 時間クレ
アチニンクリアランスと負の相関を認めた.病理学的指 標において,腎内 BMFP 数は腎線維化面積率と正相関
を認めた ( 表 1).またステロイド治療による疾患活動性
の低下に一致して腎内 BMDFP 数は減少した.このこ とから,腎生検時の腎内 BMDFP 数をモニタリングす ることは,腎機能ならびに治療効果を反映するバイオ マーカーとなりうることが示唆された.
2.LPA と線維化 2-1.LPA の生物学的背景
LPA は生理活性脂質のひとつであり,G タンパク質共役 型受容体である少なくとも 6 種類の LPA 受容体 (LPA
1-6) により情報伝達される.このうち LPA-LPA
1シグナルは,
線維芽細胞遊走を増強することで線維化に寄与すること が示されている.そこで LPA-LPA
1シグナルに着目し,
腹膜透析や癌腹膜転移などで認められる腹膜線維化の進 展機序における意義を検討した
5).
2-2.腹膜線維化進展機序における LPA-LPA1 シグナル LPA1 ノックアウトマウス (LPA
1−/−) ならびに LPA1
阻害剤 (AM095) を用いて,グルコン酸クロルヘキシジ
ン (CG) 誘発腹膜線維化にあたえる LPA-LPA
1シグナル の意義を検討した.腹膜内ハイドロキシプロリン量は LPA
1−/−で LPA
1+/+に比し低下した.I 型プロコラーゲン プロモーター下で green fluorescent protein (GFP) を発
現する Col-GFP マウスを用いてコラーゲン産生細胞の
動態を検討したところ,GFP 陽性細胞数は AM095 投与 により低下した.また,GFP と proliferating cell nuclear antigen (PCNA) の二重染色において,GFP/PCNA 二重 陽性細胞数は AM095 投与群で低下した.
続いて線維芽細胞増殖を制御する増殖因子として知ら れる connective tissue growth factor (CTGF) の腹膜内発 現を検討したところ,CTGF 発現は LPA
1依存性に腹膜 中皮細胞で亢進した.さらに,LPA 刺激後 CTGF を含 有した腹膜中皮細胞培養上清は,NIH3T3 細胞の増殖能 を亢進させた.一方,CTGF siRNA 前処置により CTGF 発現を抑制させた腹膜中皮細胞培養上清の NIH3T3 細胞 増殖誘導能は低値であった.以上より,LPA-LPA
1シグ ナルは腹膜中皮細胞由来 CTGF を介したコラーゲン産 生細胞増殖能を制御することで,腹膜線維化機序に関与 することが示唆された ( 図 2).
お わ り に
臓器線維化は,臓器固有細胞,浸潤細胞,液性因子が 複雑なネットワークを形成しながら成立しており,臨床 上いまだ有効な治療法は確立していない.また近年,多 臓器をつなぐ臓器間ネットワークによる臓器障害進展も 注目されている.今回述べた BMDFP や LPA は,この 複雑なネットワークを制御する細胞・液性因子して機能 し,治療標的細胞・因子となることが示唆される.
図 2.腹膜線維化進展機序における LPA-LPA
1の役割
図 1.腎線維化進展機序における BMDFP の制御機構
血清クレアチニン CRP HbA1c
推算糸球体濾過量 24hCcr
糸球体硬化 間質線維化 尿蛋白
NS; not significant, 24hCcr; 24
時間クレアチニンクリアランスP r
<0.05
<0.05
<0.05 NS
<0.05
<0.01 NS NS 0.331
0.317 -0.271 -0.352 -0.451 0.144 0.374 0.12
表 1.腎内 BMDFP 数と臨床病理学的指標の相関
文 献
1 ) Bucala R, Spiegel LA, Chesney J, et al: Circulating fibrocytes define a new leukocyte subpopulation that mediates tissue repair.
Mol Med, 1: 71-81, 1994
2 ) Sakai N, Wada T, Yokoyama H, et al: Secondary lymphoid tissue chemokine (SLC/CCL21)/CCR7 signaling regulates fibrocytes in renal fibrosis. Proc Natl Acad Sci U S A, 103: 14098- 103, 2006
3 ) Sakai N, Wada T, Matsushima K, et al: The renin- angiotensin system contributes to renal fibrosis through regulation of fibrocytes. J Hypertens , 26: 780-90, 2008
4 ) Sakai N, Furuichi K, Shinozaki Y, et al: Fibrocytes are involved in the pathogenesis of human chronic kidney disease.
Hum Pathol , 41: 672-8, 2010
5 ) Sakai N, Chun J, Duf field JS, et al: LPA1-induced cytoskeleton reorganization drives fibrosis through CTGF- dependent fibroblast proliferation. FASEB J , 27: 1830-46, 2013
【学術集会報告】
十全医学賞授賞式および記念講演に続きまして、平成 27 年度十全医学会学術集会が開催されました。本年度 のテーマは「臓器連関」でした。会場となった十全講堂 には 363 名が参加し、学外からの 3 名の気鋭の研究者と 学内からの 2 名の演者による講演が行われました。はじ めに、東京理科大学理工学部応用生物科学科教授の大谷 直子先生より「細胞老化と炎症・がん:腸内細菌代謝物 による肝がん促進作用」、次いで本学医薬保健研究域医 学系革新予防医学科の飯田宗穂助教より「腸内細菌叢の 癌と炎症における役割」の講演が行われました。コーヒー ブレイクをはさみ、東北大学大学院医学系研究科糖尿病 代謝内科学分野教授の片桐秀樹先生による「Metabolic Information Highways 〜個体レベルでの糖・脂質・エネ ルギー代謝調節機構〜」、宮崎大学医学部内科学講座神 経呼吸内分泌代謝学分野教授の中里雅光先生から「自律 神経・ペプチド連関を基軸とするエネルギー代謝と免疫 制御機構の研究」に関する講演が行われました。最後に 本学医薬保健研究域脳・肝インターフェースメディシン 研究センター生体統御学部門の井上啓教授から「視床下
部インスリン作用による肝糖代謝調節」の講演が行われ ました。
最新の研究成果に対して大変に活発な議論が行われ、
本学の学際的な研究の発展に大きなインパクトを与える 充実した学術集会となりました。医学類生からの質問も 出て、最新研究のおもしろさを再認識するとても良い機 会となりました。講演の要旨は以下の通りです。
(文責:学術集会担当理事 河﨑洋志)
大谷直子先生
がん抑制機構としての細胞老化とその副作用 SASP 細胞には様々な恒常性維持機構が備わっている.「細 胞老化」もそのような恒常性維持機構のひとつで,発癌 の危険性のある損傷が細胞に加わった際に誘導される不 可逆的細胞増殖停止であり,もともと細胞に備わった重 要な発癌防御機構である.しかし,自ら死滅するアポトー シスとは異なり,細胞老化を起こすと,生体内において 長期間生き続ける可能性がある.最近,生き残った老化 細胞から,様々な炎症性サイトカインやケモカイン,細 胞外マトリクス分解酵素といった多くのタンパクが産 生・ 分 泌 さ れ る こ と が 明 ら か に な り, こ の 現 象 は SASP( 細胞老化関連分泌現象,senescence-associated secretory phenotype) と呼ばれている (1).もともとが ん抑制機構として働いたはずの細胞老化であるが,時間 とともに逆に生体に悪影響を及ぼすという,諸刃の剣の ような現象を起こすのである.
肥満で増加した腸内細菌の代謝物による SASP 誘導が 肝臓がんを促進する
生体において,SASP がどのような役割を担っている のかを証明していくことが重要である.我々は,肥満に 伴い肝がんが発症するマウスモデルで,がん微小環境に おける SASP が,がん促進に重要な役割を担っているこ とを最近見出した (2).多くのヒトのがんで高頻度に変 異が見つかっているがん遺伝子の Hras 遺伝子に活性化 型変異を起こすことが知られている化学発がん物質 DMBA (7, 12-dimethylbenz( α )anthracene) を生後 4 〜 5 日の乳児期のマウスの背中の皮膚に一回塗布すること で,全身性に oncogenic なシグナルを活性化させ,さら にこれらのマウスを高脂肪食摂取群と普通食摂取群に分
十全医学賞授賞式 (左から 太田哲生会長,坂井宣彦先生,三枝理博先生,
河﨑洋志先生