足踏み式回転脱穀機の発明 : 特許資料からみた成 立前史
著者 近藤 雅樹
雑誌名 国立民族学博物館研究報告
巻 21
号 1
ページ 119‑176
発行年 1996‑10‑31
URL http://doi.org/10.15021/00004172
近藤 足踏 み式回転脱穀機の発明
足 踏 み式 回転 脱穀 機 の発 明 一一特許資料からみた成立前史
近 藤 雅 樹*
The Invention of a Pedal Driven Thresher:
The History of the Invention as Revealed by Patent File Data
Masaki KONDO
It is generally believed that the human powered thresher with a revolving cylinder (pedal driven thresher) was invented by a young man called Fukunaga Syoiti, who lived in Yamaguchi prefecture.
In fact, a number of other people had devised similar machines and applied for patents on them before Fukunaga.
The various human powered threshers which were the subject of patent applications in the Meiji period can be grouped into four types, as follows;
I Comb threshers, using parts like the teeth of a comb II Beat threshers, containing parts like mallets or sticks III Rub threshers, where grain is forced between saw teeth
N Flip threshers, using a revolving cylinder with many projections.
There are two main arguments in this paper.
Firstly, the designs of the various human powered machines in the patent applications and registations are examined, in order to distinguish the merely fanciful from the really practical inventions. Evidence is presented as to why the only machines which were eventually selected and put to practical use all belonged to type N.
Secondly, concentrating on the development of the human powered machines like the threshers, the essential processes which made the ap- pearance of the motive power machines possible will be made clear.
国立民族学博物館第1研 究部
Key Words : invention, patent, practical device, thresher, human powered machine キ ー ワ ー ド:発 明,特 許,実 用 新 案,脱 穀 機,人 力 機 械
国立民族学博物館研究報告 21巻1号
1. ア ウ トラ イ ン 1.1.小 論 の 目 的 1.2.資 料 の 範 囲 2.資 料 の 概 要
2.1. 1類(特 許15件 実 用 新 案1件) 2.2.∬ 類(特 許3件)
2.3.皿 類(特 許4件 実 用 新 案2件) 2.4.N類(特 許2件 実 用 新 案1件)
3.考 察 3.1 出 願 状 況 3.2.通 説 の再 検 討 4.結 章
4.1.セ ンバ コキか ら回転 脱 穀 機 へ 4.2.自 動 機 械 へ の あ こが れ 4.3.現 実 的 発 明 と空 想 的 発 明
1. ア ウ ト ラ イ ソ
1.1.小 論 の 目 的
足 踏 み 式 回 転 脱穀 機 は 明治 時 代 末期 に 「発 明」 され た 。 そ の後,種 々の 改 良 を経 て 実 用 化 され,大 正 時代 末 期 には セ ンバ コキ にか わ る有 力 な脱 穀 機 械 と して 全 国 に普 及
した とい う。 そ れ が ほ ぼ今 日の通説 で あ る1)0
発 明者 は 山 口県 の福 永 章 一 とい う青年 だ った と され て い る。 しか し,実 際 に は 「福 永 式 稲 扱 機 」(図27)が 特 許 出 願 され た1911(明 治44)年 以 前 か ら,足 踏 み 式 を は じめ とす る各 種 の 回 転 脱穀 機 が特 許 ・実 用新 案 と して 登 録 され て い て,早 くか らそ の 開発 と実 用 化 が 試 み られ て い た。 そ れ ば か りか,一 部 の 資 料 に 関 して は,試 作 段 階 な が ら 局地 的 に販 売 され て い た 可能 性 も捨 て きれ な い。
小論 で は,明 治 時 代 に考 案 され た 各種 の 回転 脱 穀 機 に 関 す る特 許 ・実 用 新 案 の諸 公 1) ま だ そ の 使 用 が 完 全 に 止 ん で いた わ け で は な い時 期 に 刊 行 され た 『日本 百 科 大 事 典 』(小 学 館)は 「脱 穀 」 「脱 穀 機i」を 次 の よ うに 解説 して い る 【昭 和 出 版 研 究 所 1964:1181。 百 科
事 典 とい う性 格 上,そ の記 述 は従 来 の 研 究 成 果 に負 うと こ ろが お お きか ったは ず で あ る。
脱 穀 (略)わ が 国 では 回 転 式 脱 穀機 が現 在 よ く用 い られ て い るが(略)大 正 時 代 に な る と,円 筒 にV字 形 の歯 をつ け た 足 踏 み の 回転 式 脱 穀 機 が 出現 し,現 在 で はそ れ を動 力 化 した も のに よ って脱 穀 が お こ なわ れ て い る(略)。 〈大 野 哲 夫 〉
脱 穀 機 (略)足 踏 み に よ る人 力 用 の もの は,回 転 胴 の周 囲 に植x込 ん だ こ き歯 で脱 穀 す る が,風 選 ・ふ るい 分 け は 別 個 に お こな わ な け れ ば な らな い。 明治 末 期 に 発 明 され, 大正 末 期 には 旧来 の 千 歯 こ きを ほ とん ど駆 逐 した。 脱 穀 機 の動 力化 ・自動 化 は 昭 和 の 初 期 に は実 現 した が,第 二 次 世 界 大 戦 前 は,一 〇 万 台 以 下 の普 及 に とど ま って い た 。 戦 後 は これ が 大 き くのび,足 踏 み 式 を ほ ぼ 完全 に駆 逐 し,三 〇 〇 万 台に 近 い 普 及 を み せ て い る(略)。 〈山 口雅 弘 〉
産 業考 古 学 の入 門書 も 「千 歯 こ きは や が て足 踏み 回転 脱 穀 器 に取 っ て代 わ られ るが,そ の 時 期 は 明 治末 期 か ら大 正初 期 に かけ て であ る」 とす る 【黒 岩 ・玉 置 1978:143】。
近藤 足踏み式回転脱穀機の発明
報(以 下 「公 報 」 とい う)を 通 覧 して足 踏 み 式 回 転 脱穀 機 の開 発 過 程 を 点検 し よ う と 思 う。 これ は,つ ま り,試 行錯 誤 に み ち た足 踏 み 式 回 転脱 穀 機 の発 明前 史 の確 認 作 業
て あ る。
1.2.資 料 の 範 囲
明 治 時 代 のr特 許 発 明分 類総 目録 』r実 用 新 案 分 類 総 目録 』 は,共 通 の 分 類 項 目に よって整 理 され て い る。農 具 は 「第13類 」 に区 分 され,回 転 脱 穀 機 は そ の 細 目の 「脱 穀 器 」 に分 類 され て い る(表1)。
明 治時 代 に 出願 され た脱 穀 機 器 と して検 出 しえた 資 料 件 数 は278件2)て,回 転 脱 穀 機 は ほぼ10%に あ た る28件 を確 認 した。 登 録 区分 は特 許25件 と実 用新 案3件 で,大 半 は足 踏 み 式 てあ る。 これ らは脱 穀 部 の形 状 に よ って4類 に整 理 す る こ とか て き る。
1類 脱 穀 部 か扱 歯 ・櫛状 を呈 し,引 扱脱 穀 作 業 の機 械 化 を め ざす もの
∬類 脱 穀部 か槌 ・杵 状 を 呈 し,叩 打 脱 穀作 業 の機 械 化 を め ざす もの 皿類 脱 穀 部 か擦 りあわ せ 構造 を呈 し,揉 擦 脱 穀 作 業 の機 械 化 を め ざす も の
】V類 脱 穀 部 か羽 ・桟 状 を呈 し,弾 発 脱 穀 作業 の機 械 化 を め ざす もの
表1 「第13類 農 具 」
1耕 転 器 梨 鋤 馬鍬 鍬 田舟 ・畦 切 器 ・碑 土 器 ・耕i転器 株 切 器 な ど 2撰 穀器 千石 万石 ・簾 ・漏斗 ・唐箕 籾取器 穀類除石器 落花生洗浄機 な ど 3田 植 定規 田植定規 田植綱 植付標準器 な ど
4施 肥 具 肥 料 桶 ・汲 取 杓 覆器 ・ア ル カ リ肥 料 撒 布器 な ど 5肥 料粉砕器 豆粕粉砕機 ・豆粕削機 魚粕切断機な ど
6除 草器 草取 爪 ・除草 器 ・草 取鍬 ・田打 車 除 虫兼 除 草 器 案 山 子 な ど 7播 種器 種埋具 種蒔具 播種器 ・種蒔機械 煙草植付 用整理器な ど 8収 穫器 鎌 稲刈機 ・綿花収穫機 ・草刈機 薯掘機械 自働稲刈機な ど 9脱 穀器 稲扱 麦扱 稲麦扱機械 連枷 脱穀機 ・自働 稲扱機 など 10株 切器 株切器 苗取器 な ど
ll茎 切 器 枯穂切器 ・枯穂切鎌 稲虫茎切器 な ど 12刻 切 器 藍切 機 械 ・藁刻 器 ・押 切 な ど
13農 業 用 雑 具 畦立 器 鳥獣威機械 苗代排水器 鳥威 草刈機 ・配合機な ど
2)資 料 の 検 出に あ た っ て は,大 阪 府 立 夕 陽 丘 図書 館 か架 蔵 す る 「特 許 公 報綴 」 と 「通 産省 特 許 公 報 デ ー タベ ース 」 を使 用 した 。 な お,出 願 件 数 に は,西 暦 年 か 明治45年 と同 じ大 正元 年 に 出願 され た2件 を くわ えて い る。
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2.資 料 の 概 要
本 章 て は個hの 資 料 を概 観 し,あ わ せ て それ らの実 用 化 の可 能 性 を検 討 す る3)。こ の点 に関 して は,復 元 製 作 を 試 み るか,残 存 機 か あ る な ら実 際 に 使 用 して判 断 す るの か理 想 的 なの た か,そ れ か 望 み え な い現 状 ては,添 付 図 を吟 味 して製 作 使 用 上 の 技 術 的 経 済 的 合 理 性 を勘 案 す るほ か は な い。 そ れ て も,あ る程 度 まて 推 測 す る こ とは て き
る た ろ う。
2.1. 1類(特 許15件 実 用 新 案1件)
引 扱 脱 穀 作 業 の機 械 化 を め ざす ものて,脱 穀部 に セ ノハ コキ を使 用 して い る。 扱歯 部 を回 転 させ る もの(1類A)と,そ うて な い もの(1類B)と か あ る。
211 1類A 扱 歯 部 分 を 回転 させ る もの(特 許11件 実 用 新 案1件)
種別 番号 名称 出願年月 日 特許年月 日 出願者氏名 図番 特許 S 稲麦扱機械 18年7月1日 18年8月14日 宮本孝 之助 1
稲 麦 用,足 踏,穂 束装 填 装 置,歯 車 使 用
特許 893 稲扱器械 22年3月2日 23年6月2日 仁科養 2 稲 用,手 回,穂 束 固定 装 置,歯 車 使 用
特許 6881 脱穀機 35年7月25日 36年11月30日 野村新右衛門 3 稲 麦 用,足 踏,穂 束装 填 装 置,歯 車使 用
特許 7534 稲 麦 扱 器 37年2月13日 37年6月25日 笠井三藏 4 稲 麦 用,足 踏,穂 束装 填 装 置,塵 芥 除去 具,歯 車 使 用
特許 15284 稲 扱 器 械 41年ll月12日 41年ll月28日 尾 西庄之助 S 稲 用,足 踏,穂 束 装填 装 置,歯 車 使 用
特許 16302 稲扱機 42年4月3日 42年5月20日 野村敬 治 6
稲 麦 用,足 踏 ・発動 機 利 用 可,穂 束 装 填 装 置,歯 車 使用 3)掲 出 上 の表 記 に関 す る几 例
1検 出 の た め に 使 用 した の は 「特 許 公 報 綴 」 と 「通 産 省 特 許 公 報 デ ー タベ ー ス」 に 収 録 され て い る 「特 許 護 二属 ス ル 明細 書 」 「明 細 書 」 「実 用 新 案 公 報 」 て あ る。 小 論 て は, これ らを す へ て 「明細 書 」 と略称 す る。
2「 明細 書 」 の 不 明部 分 は,特 許 資料 に関 して は 『特 許 発 明分 類 総 目録 上 巻』(1909),『 続 特 許 発 明 分 類総 目録』(1914),『 特 許 発 明分 類 総 目録(第 三 輯)』(1915)に よ り,ま た, 実 用 新 案 資 料 に関 して は 『実 用 新 案 分 類 総 目録 上 巻 』(1911)に よ り補足 した。 小論 て は,便 宜 上4件 を一 括 して 『目録 』 と記 す 。
3「 明細 書 」 な らびにr目 録 』 の 引 用 に あ た って は,人 名 ・地 名 を除 き異体 字 旧字 を 極 力常 用 漢 字 に あ らた め,適 宜 原 文 に は な い 句 読 点 を ほ ど こ した 。 な お,地 名 は 「明 細 書 」r目 録 』 に記 載 され た当 時 の もの て あ る。
近藤 足踏み式回転脱穀機 の発 明
登録 15173 稲扱 42年10月10日 42年10月30日 鷹合安治郎 7
稲 用,足 踏,歯 車 使 用
特許 17396 森 田式 万 歳 稲 扱 42年10313日 42年12月9日 森田定造 8
稲用,足 踏 歯車使用
特許 19241 藤 原式 自働 稲 扱 機 43年3月11日 44年1月27日 藤原宇太郎 ほか 9
稲 用,足 踏 手 回,穂 束 装 填 装置,塵 芥 除 去 具,節
特許 19320 改良稲麦扱器械 43年9月3日 44年2月9日 神野萬吉 10
稲 麦 用,足 踏,穂 束 装 墳 装 置,扇 風 機
特許 21638 発動機掛稲扱機械 44年2月21日 45年2月13日 永 田光廣 11
稲 用,発 動 機 に連 結 す る部 品,歯 車使 用
特許 24559 改 良稲 扱 器 44年10月20日 T2年9月9日 三上庄藏ほか 12
稲 用,足 踏,穂 束 装填 装 置,緊 急 停 止 用 ブ レー キ,歯 車 使 用
1類Aは 基 本 的 に稲 用 足 踏 み 式 回 転 脱 穀 機 た か,手 回 し式 の 「稲 扱 器 械 」(特 許 第 893号 図2)や,足 踏 み 手 回 し兼 用 の 「藤 原式 自働 稲 扱 機 」(特 許 第19241号 図9), 発 動 機iへの接 続 を 企 図 した 「稲 扱 機 」(特 許 第16302号 図6)と 「発 動機i掛稲 扱 機 械 」
(特許 第21638号 図11)も あ る。
212 1類B 扱 歯 以 外 の 部 分 を 回転 させ る もの(特 許4件)
種別 番号 名称 出願年月 日 特許年 月 日 出願者氏名 図番 特許 257 稲麦扱機械 19年7月30日 19年9月14日 宮本孝之助 13
稲 麦 用,足 踏 揺 動,穂 束 装 填 装置
特許 1939 稲 扱機 25年12月23日 26年5月24日 天野秀之助 14
稲 用,足 踏,セ ノ ハ コ キ,筋,歯 車 使 用
特許 16389 大 倉 式 省 労 稲 扱器 械 42年2月10日 42年5月31日 大倉幸之丞 15
稲 用,足 踏,穂 束 装填 装 置
特許 18064 滑車 式 稲 扱 器 械 42年10月13日 43年5月23日 有馬貞吉 16
稲用,足 踏 反 復,穂 束 装 填 装 置,塵 芥 除 去具,歯 車 使 用
1類Bは 足 踏み 式 。 「稲 麦 扱 機械 」(特 許 第257号 図13)と 「滑 車 式 稲扱 器 械 」(特 許 第18064号 図16)は,扱 歯 部 を揺 動 また は 開 閉 させ る。
213 1類 の 特 徴
1類 には 大半 の資 料 に 共 通 す る特 徴 か い くつ か あ る。 回転 数 を た か め るた め に歯 車 を使 用 して い る こ と,穂 束 装 填 装置V'代 表 され る複 合機 能 を装 備 して い る例 か 多 い こ とな どで あ る。 と くに1類Bは セ ノハ コキ の た め の 穂 束 自動 装 填 機 能 の 開 発 を め ざ
国立民族学博物館研究報告 21巻1号 して い る とい って よい か,複 合 的 な 装 置 の装 備 に 強 い 関 心 を 示 して い る点 は,1類 Aの 諸 事 例 もか わ らな い 。1類 の 各 資 料 に は,ほ か の 各 類 の 資 料 に く らへ て あ き ら か に複 合 ・付 加 機 能 か 多 く装 備 され て い る。 と くに 出願 者 か もっ とも関 心 を寄 せ て い た の か穂 束 装 填 装 置 の装 備 て,16件 の うち12件 に な ん らか のか た ち て装 備 され て い る。
扱歯 の あ いだ を 掃 除 す る工 夫 か も りこ まれ た もの も3件 あ る。 塵 芥 の除 去 は,セ ノ ハ コキ の 改 良 にあ た って重 要 な問 題 の ひ とつ た った の た が,こ れ らの回 転 脱穀 機 は 改 良 セ ノハ コキか 取 り組 ん て い た こ の問 題 を ひ きず って い る。 つ ま り,1類 の諸 資料 は
セ ソバ コキ の 自動 機 械 化 を め ざ して開 発 か試 み られ た もの た った の て あ る。
複 合 ・付 加 機 能 の 装 備 は,一 見 便 利 さを追 求 してい る よ うにみxる 。 しか し,構 造 か 複雑 に な るた め に トラ フル か生 しや す く,操 作 面 て も非 能 率 的 た った た ろ う。概 し て1類 の 「発 明」 に は無 理 か 多 い。 「滑 車 式 稲 扱 器 械 」(特 許 第18064号 図16)は, そ の見 本 の よ うな もの て あ る。 「発 動 機 掛 稲 扱 機 械 」(特 許 第21638号 図ll)も あ や
しい。 ど うや って発 動 機 に取 りつ け る のた ろ うか。
も っ と も,な か には 実 用化 の可 能 性 を 感 しさせ る資 料 もな くは な い。 穂 束 装 填 装 置 へ の こた わ りを強 く示 す 資 料 とは別 に,セ ノハ コキ の回 転 だ け に専 心 した もの もあ る。
「稲 扱 」(実 用 新 案 第15173号 図7)と 「森 田式 万 歳 稲 扱 」(特 許 第17396号 図8) は,余 分 な機 能 を装 備 して い な い の て,そ れ ほ ど構 造 上 の無 理 か な い。 また,両 者 の 形 態 はN類 に通 しる部 分 か あ る。 製 作 面 て も,使 用 効 果 の面 て も,引 扱 脱 穀 方 法 か ら 脱 して 弾 発脱 穀 方 法 に移 行 す る まて あ とひ と工 夫 とい う段 階 に あ る。 しか も,回 転 機 構 たけ を み るな ら,福 永 章 一 が 出願 した 「福 永 式 稲扱 機 」(特 許 第19621号 図27)よ
り合 理 的 て あ る。
とこ ろ て,両 者 は ク ラ ノク と歯 車 を組 み合 わ せ た 回転 機 構 や,屈 曲 した扱 歯 の形 状 な とか 非 常 に よ く似 てい る。 と もに大 阪 在 住 者 か ら明 治42年10月 に 出願 され て い る こ と も気 かか りて あ る。考 案 者 た ち は,な ん らか 接触 す る機 会 か あ った のか も しれ な い。
2.2 ∬ 類(特 許3件)
脱 穀 部 か 槌 ・杵 状 を呈 し,叩 打 脱穀 作 業 の機 械 化 を め ざす もの て,カ ラサ オか ら着 想 され て い る。
種別 番号 名称 出願 年 月 日 特許年 月 日 出願者氏名 図番
特許 12613 脱 穀機 手 回,斜 台
40年5月13日 40年7月29日 立石丑五郎 17
近藤 足踏み式回転脱穀機の発明
特 許 15652篠 崎 式籾 麦 粟 打 落 機 42年1月29日 42年2月10日 篠 崎 幸 太 郎 18 麦 粟 用,足 踏 杵 揚,穂 束 装填 装 置,筋,歯 車 使 用
特許 18078 河北式脱穀機 足踏,発 動機使用可
42年12月8日 43年5月25日 河 北 錬 三 郎 19
221 皿類 の 特 徴
穂 束 装 填 装置 な どを装 備 して 自動 機 械 化 を め ざ して い る 「篠 崎式 籾 麦 粟 打 落 機 」(特 許 第15652号 図18)か 「籾 麦 粟 用 」 と明記 され て い るほ か は,具 体 的 に 脱 穀 対 象 と す る穀 類 の種 別 か わ か らな いか,皿 類 は カ ラサ オ の使 用 に よる叩 打 脱 穀 方 法 を も とに そ の 自動 機 械 化 を は か ろ う と して い る。 ほ か の2件 は 回 転軸 に取 りつ け た 小槌 状 の打 秤 や 角 棒 て台 上 の 穂 先 を 叩 打 す るた け て あ る。 「河 北 式 脱 穀 機 」(特 許 第18078号 図 19)は 足踏 み 使 用 以 外 に 動 力機 へ の接 続 も可 能 とい うか,添 付 図 か らは いず れ の 操 作 方 法 も読 み とれ な い。 手 回 し式 の 「脱 穀 機 」(特 許 第12613号 図17)は ひ と り使 用 の 比 較 的 小 型 の道 具 か と思 わ れ る。 しか し,ス ケ ー ル表 示 が な い ため 規 模 は 不 明 て あ る。
あ る いは,ひ と りか ハ ノ トル を操 作 し,い まひ と りか穂 束 を支 え る とい う よ うに作 業 分 担 した のた ろ うか。 量 的 処 理 能 力 に は限 界 か あ りそ うた か,実 用 化 可能 な現 実 味 か 感 じられ る。 足踏 み式 に して穀 粒 の 滑落 斜 台 を横 向 きに 変 更す れ は,さ らに使 いや す
くな った の ては な い だ ろ うか。
2.3 皿類(特 許4件 実 用新 案2件)
脱 穀 部 がす りあわ せ 構 造 を 呈 し,揉 擦 脱 穀 作 業 の機 械 化 を め ざす もの。 カ ラ ウスか 発 想 の ヘ ースY'な って い る と考 え られ る 。 円 筒 内 て 脱 穀 す る も の(皿 類A)とt受 盤 上 て脱 穀 す る もの(皿 類B)と か あ る。
231 皿類A 円 筒 内 て揉i擦脱 穀 を お こな う もの(特 許3件 実 用 新 案1件)
種別 番号 名称 出願年 月 日 特許年月 日 出願者氏名 図番 特許 436$ 脱穀機 年 月 日 33年10月29日 三澤 友吉 20
穂 摘 穀 物 用,手 回,円 筒 内揉 擦
特許 6411 連 枷 代 用 機 35年8月12日 36年7月8日 井田孝平 21 穂 摘 穀 物 用,手 回,円 筒 内揉 擦,歯 車 使 用
登録 1361 連 枷 代 用器 38年12月9日 39年2月28日 磯野 再太郎 22 穂 摘 麦 用,足 踏,楕 円 筒 内揉 擦,節, 歯車使用
特許 13035 連枷代用機 40年8月12日 40年10月12日 谷本清兵衛ほか 23
穂 摘 麦 粟 用,手 回,円 筒 内揉 擦,歯 車 使 用
国立民族学博物館研究報告 21巻1号 皿類Aは 穂 摘 み され た 穀 物 を 揉 擦 脱 穀す る も の て,麦 を 主対 象 と して い る こ と と, 手 回 し式 か 主 て あ る こ とか特 徴 て あ る。 穂 摘 み を前 提 とす る点 て ほか の回 転脱 穀 機 と は 性 格 か こ とな っ て い る。
232 皿類B 受 盤 上 て籾 擦 脱 穀 を お こな うもの(特 許1件 実 用 新 案1件)
種別 番 号 名称 出願年 月 日 特許年月 日 出願者氏名 図番
特許 17457 稲扱機械 42年11月10日 42年12月27日 宮崎煮 24
稲 用,起 動 方 法 不 明回 転, 穂束装填装置, 歯車使用
登録 24124 脱穀器 45年1月16日 45年4月19日 長澤嶽三郎 25
麦 用,手 回,歯 車 使 用
皿1類Bは 脱 穀 部 に も うけ られ た 受 盤 面 を鋸 刃 状 の 板 金 の刃 先 か な て る よ うに 回 転 し,穀 穂 をす りち き る よ うに 脱 穀 す る もの て あ る。 「脱 穀 器 」(実 用 新 案 第24124号 図25)は 麦 用 たか,穂 摘 み を しな くて も使 え る点 を強 調 して い る。 「稲 扱 機 械 」(特 許 第17457号 図24)は 皿類 の な か て 唯 一 穂 束 装 填 装 置 を 装 備 して い る。 しか し,起 動 方 法 も不 明 て,は た して想 定 され た とお りの機 能 が 発 揮 て きた か ど うか わ か ら な い。
初 期 の人 力機 械 に顕 著 な空 想 的 発 明 のひ とつ た った よ うな気 か す る。
233 皿類 の特 徴
皿類 の特 徴 は,多 くか麦 の脱 穀 用 に 考案 され てい る こ とて あ る。 製 麺,製 パ ソ業 な と との か かわ りか 深 い。 それ もあ って,こ れ らを 農 具 の範 疇 に分 類 して お いて よい の た ろ うか とい う疑 問 も抱 く。 小 麦 加 工 業用(も ち ろん,自 家 消費 用 て も よい)の 機 器
と した方 か よ いの か も しれ な い 。
2.4.1▽ 類(特 許2件 実 用 新 案1件)
脱 穀 部 か 小 突 起 の あ る 円筒 状 を 呈 し,弾 発 脱 穀 作 業 の 自動 機 械 化 を め ざす もの 。
種別 番号 名称 出願年月 日 特許年月 日 出願者氏名 図番
特許 17511 米麦扱取機 42年11月27日 43年1月19日 中桐彦太郎 26
稲麦 用,足 踏,歯 車使 用
特許 19621 福氷式稲扱機 44年1月27日 44年3月27日 福 永 章 一 27
稲 用,足 踏
近藤 足踏み式 回転脱穀機の発明
登録 30809 穀物 脱 離 機 稲 麦用,足 踏,節
Tl年12月20日 T3年3月17日 田尻 榮 太 郎 28
241 ]v類 の特 徴
従 来 の脱 穀 技 術 に は な か った 弾 発脱 穀,つ ま り,は しき とば す とい う方 法 を採 用 し てい る。 中空 に支 え た穀 穂 を は じき とぽ そ うとい う もの た った。 この方 法 た と穀 粒 か 広 範 囲 に飛 散 す るた め,従 来 は 敬 遠 され て いた の ては な い か と思 う。 一 粒一 穎 を惜 し ん て 極 力脱 粒 の逸 失 を 防 こ う と して い た の か従 来 の農 民 の 基 本姿 勢 だ った とすれ ぽ, 弾 発 脱 穀 とい う方 法 の採 用 は あた ら しい 時代 の感 覚 だ ろ う。 セ ノハ コキや カ ラサ オ な
どを 自動 機械 化 しよ うと して発 想 され た もの は,い ず れ も従 来 慣 れ親 しんて きた脱 穀 用 具 を もち いた 作 業 を 念 頭 に お い てい た 。 そ れ に対 して脱 粒 の 飛散 を厭 うこ とな く開 発 され た 「福 永 式 稲 扱 機 」(特 許 第19621号 図27)は,在 来 の脱 穀 作 業 のイ メ ー ノ と 因 習 を 脱 して い る。 た た し,中 空 ては じき とは そ う とい う発 想 は彼 以前 に もあ った。
2連 に 架 した鋸 刃状 回転 体 の あい た に穂 先 を挿 入 して穀 粒 を そ ぎ落 とす 構造 に して い る 「米 麦 扱取 機 」(特 許 第17511号 図26)か そ れ て あ る。
3.考
察
本 章 て は 次 の2点 に つ い て 述へ る。
1は 回 転 脱穀 機 の 出願 状 況 に つ い て て あ る。2は 通 説 の点 検 て あ る。 と くに足 踏 み 式 回転 脱 穀 機 の発 明者 を福 永 章 一 と して よ い のか ど うか につ いて 検 討 した い。
31.出 願 状 況
まず,回 転 脱 穀 機 の 出 願 状 況$'つ い て 。
311 類別 ・年 次 別 に み た 出願 状 況
類別 件 数 を み る と1類 か 全 体 の 半数 以上 に達 し,ま た,初 期 の4件 を 占 め て い る。
まず この点 に 注 目 した い。 これ は 回転 脱 穀 機 か セ ノハ コキ に よる引 扱 脱穀 方 法 の機 械 化 を め ざ して 開 発 され は じめた こ とを示 して い る。 次 に,明 治42年 の 出願 件数 か突 出 してい て,し か も,出 願 の大 半 か そ の 前後 の数 年 に集 中 して い る こ とも注 目 され る。
この 年 を は さん た5年 間 に17件 か 出 願 され て い る のて あ る。 また,明 治33年 に は1類 とは 別 の着想 を具 体 化 した 皿類Aに 属 す る 「脱 穀 機 」(特 許 第4368号 図20)か 登 録
国立民族学博物館研究報告 21巻1号 表2 類別 出願年別一覧
類系 件数 (第1期 ・萌 芽 期)
【 (第2期 ・空 白 期)(第3期 ・開 発 期)
1類 A B
16 (12) (4)
目 目 目
M20 1
1目 目1
25 30目 田 目i i目1
35 40 ii
45
1
1 1
1‑一 一1‑一 一 一一一 一一1‑3‑2‑2‑一 一
2
II類 3 1
l l
1‑一 一2‑一 一一一一一
III類 A B
7 (4) (3)
i
i t
(1)一一一1‑一一一一1‑一一1
2 1一
IV類 2 1
i i
M20
i i i i i
25 30 i i i i i
35 40 i I l l
1‑1‑
45 1 1
合計 28
■11111■1
(1)一 一2‑一 一1‑1‑一 一2‑1‑9‑2‑3‑2‑
1
1‑1 1 1
*注 (1)数 字 は 登 録年 て あ る
。
され てい る。 こ う した現 象 を 手 か か りにす る と,明 治時 代 の回転 脱 穀 器 の 「発 明 」 は 3期 に区 分 す る こ とか て き る。1類 た けか 出願 され て い た 第1期(萌 芽 期),そ の後 出願 か とた え る第2期(空 白期),そ して 明 治33年 以降 の第3期(開 発 期)て あ る(表 2)o
312 府 県 別 にみ た 出願 状 況
各期 ご との 状 況 を さら に詳 し く把 握 す るた め に 出 願者 の居 住 府 県 名 を確 認 す る と, 大 阪6件,山 口5件,東 京4件 て,こ の3府 県 か 総 件 数 の過 半 数 を 占め て い る(東 京 4件 の うち2件 は宮 本 孝 之 助 に よ る)。 兵 庫,広 島 も各2件 あ る。 しか し,複 数 の 出 願 か な され た 府 県 の うちJ第1期 ・第3期 ともに 出 願 例 かみ られ るの は大 阪 と東 京 た け て あ る。 山 口,兵 庫,広 島は 第3期 に たけ 登 場 す る。第3期 に は 大 阪 とな らん て山 口か らの 出願 件 数 か1位 に な る。 と ころ か,第1期 に 回転 脱 穀 機 の 開発 を リー トして い た東 京 か ら の出 願 は,明 治40年 に2件 か相 次 き 出願 され たた け て,そ の後 は 登 場 し な い 。第3期 に回 転 脱穀 機 の開 発 に努 力 して先 駆 的 な 役 割 を はた した の は,大 阪 と山 口の 人 た ちた った 。 そ して,前 節 て吟 味 した実 用 化 の 可 能性 を感 しさせ る脱 穀 機 の考
近藤 足踏み式回転脱穀機 の発 明
表3 年別 ・類別 居住地別出願状況
年代 類別 図番 地域 出願者 地域 件数 類別
第1期(萌 芽期)
明治18年 IA 1 東京 宮本 東京 2 IAIB
明治19年 IB 13 東京 宮本 大阪 1 IB
明治22年 IA 2 福島 仁科 福 島 1 IA
明治25年 IB 14 大阪 天野
第3期(開 発 期)
(明治33年) 皿A 20 (大阪) 三 澤 大阪 5 IAIA皿AN N
明fR35年 皿A 21 (不 明) 井 田 山 口 5 IAIAIBIBN
IA 3 山 口 野 村 東京 2 皿 皿A
明 治37年 IA 4 三重 笠 井 広 島 2 IA皿
明 治38年 u・ 22 (兵庫) 磯野 兵庫 2 皿AIA
明 治40年 IHA 23 東京 谷本 三重 1 IA
皿 17 東京 立石 和歌山 i IA
明 治41年 IA 5 和歌 山 尾西 高知 1 IA
明x'42年 IA 6 高知 野村 大 阪 3 北侮道 i 五
IA 7 大阪 鷹合 山 口 2 千葉 1 皿B
IA 8 大阪 森 田 広島 1 愛知 1 IA
IB 15 山 口 大倉 群 再 1 皿B
IB 16 山 口 有馬 不明 1 u・
皿 is 広島 篠崎
皿 19 北侮道 河北
皿B 24 千葉 宮崎
N 26 大阪 中桐
明治43年 IA 9 兵庫 藤原
IA io 愛知 神野
明治44年 IA ii 山 口 永 田
IA 12 広島 三上
N 27 山 口 福氷
明{x'45年 mB 25 群 馬 長澤
大正1年 N 28 大阪 田尻
案者 の多 くは 大 阪 に集 中 してい る。 大 正時 代 に 普 及 した 回転 脱 穀 器 の 原型 とな る 】V類 に 分類 され る回 転脱 穀 機 の考 案 者 も,両 府 県 か ら輩 出 して い る。 つ ま り,明 治 時代 の 回 転脱 穀 機 の開 発 は,第1期 に は 東 京(実 際 は 宮 本 ひ と り)て,第3期 に は 大 阪 と山 口てす す め られ た の て あ る(表3)。
3.2.通 説 の 再 検 討
足踏 み 式 回転 脱 穀 機 の 発 明者 を福 永 章 一 と して いた 根 拠 は 何 か。 そ れ は 川 上 米 男 か
国立民族学博物館研究報告 21巻1号 著 した調 査 報 告 てあ る。
321 川 上 米 男 の調 査
足 踏 み式 回 転 脱 穀 機 の発 明者 を 福 永 とす る根 拠 は,川 上 の調 査 報 告1川 上 1935】
と,彼 に そ の執 筆 を 促 した 二叛 貞一 か彼 の報 告 に も とつ いて 起 源論 を展 開 した こ とに も とめ られ る。
二 瓶 は 「今 日広 く使 わ れ て い る回転 脱 穀 機 は,も ち ろ ん欧 米 の もの て,明 治 三 十 年 代 に 日本 に渡 来 した 」 とい うい っぼ うて,す くに続 け て 「しか しこれ とは別 に,山 口 県 の福 永章 一 氏 か,螺 旋 式 扱 歯 の 足踏 脱 穀 機 を 発 明 した。 そ の後 大 い に 改 良 され て,
今 日の足 踏 脱穀 機 か完 成 した 」 と解説 した の てあ る 【二瓶 1947145】 。
安 田誠 三 も川上 の報 告 を 引 用 した 【安 田 1952109‑110]。 も っ と も,彼 は 当時 の状 況 をか な り正 確 に把 握 して い て 「回 転脱 穀 機 へ の 努 力 は,明 治 の中 葉 以 来 多 くの人 々 に よ って な され て いた か,こ れ らの 人hの 試 み は,お しなへ て 回転 胴 に 取付 け た千 歯 て籾 を扱 き落 とそ うとす る もの た った 。(略)明 治30年 代 に近 代 的 短 床 摯 か 独 立 に各 地 て発 明 され た よ うに,回 転 脱 穀 機 も これ を要 望 す るそ の 時代 の全 般 的 な環 境 の 内 に 生 れ た と考 え るへ きて あ ろ う。 これ は 福 永 に相 前 後 して,こ の よ うな着 想 か独 立 に 各 地 て な され た こ とて もわ か る」 と記 して い る。 と こ ろか,そ れ て もなお 彼 の文 面 に は 福 永 を足 踏 み 式 回 転脱 穀 機 の開 発 者 とみ る意 識 か 強 くあ らわれ て い る。 そ して,こ う した 態度 は そ の後 の研 究者 た ち の あい た て もかわ る こ とか な か った。 後 年,堀 尾 尚 志 は 「千歯 扱 きに とって か わ った 回転 型 の脱 穀機 す なわ ち今 日の脱 穀 機 の原 形 は,す て に 明 治 四三 年 に,山 口県 の福 永 章̲y>よ って発 明 され,特 許 か 出願 され て い た 。 そ の 後 は 数年 も しな い あい た に続 々 と,種 々の 回 転脱 穀 機 か開 発 ・発 売 され,ま た た く間 に全 国 に 普 及 して い った 」 と述 へ 【飯 沼 ・堀 尾 1976196‑197],筑 波 常 治 も全 面 的 に 川 上 の報 告 を採 用 した 【筑 波 1978228‑229】 。
322 い くつ か の エ ピ ソ ー ト
特 許 ・実 用新 案 登 録 され た もの の な かに は,局 地 的 な範 囲 て商 品 と して流 通 して い た ものか 存 在 して いた 可 能 性 か じ ゅ うふ んに 考 え られ る。 そ の よ うな こ とも あ って, 考 案 老 た ち の な か に は,わ れ こそ か足 踏 み 式 回 転 脱穀 器 の発 明者 てあ る と 自負 す る者 た ち も少 な くな か った よ うてあ る。 一 例 をあ げ るな ら,原 野 喜 一 郎 か紹 介 した高 野 長 次郎 てあ る 【原 野 197521】 。
近藤 足踏み式 回転脱穀機の発明
大 正7年(1918),堺 市 の高 野 長 次 郎 は,霰 が 降 っ て も籾 か 落 ち る のを 見 て,稲 穂 に何 か を あ て る と脱穀 て き る と考 え,自 転 車 の廃 品 て 足 踏 式 の脱 穀 機 を発 明 した 。 千 歯 扱 き て1 時 間 に45把 しか 処 理 て きな い と ころ を,250〜300把 も脱 穀 て き る の て,画 期 的 な近 代 的 農 具 と して,僅 か1年 て 全 国 に広 ま った か,高 野 氏 は 農家 に 役 立 て は 満足 と,あ え て 特許 の 申請 を しなか った 。
本 館 所 蔵 の回 転 脱 穀機 は,高 野 氏 の発 明 原機 て,生 前 当 館 に 寄 贈 され た 。
生 前 に 寄贈 され た とい うか ら,お そ ら く本 人 か語 った こ とを 記 録 して い る部 分 か 多 い のた ろ う。 この文 面 か らは,高 野 か い ま まて に な い新 規 の農 具 を発 明 した とい う認 識 を も って い た こ とか うか か え る。 つ ま り,当 時 は また福 永 らか 開 発 した脱 穀 機 か ど れ も全 国 的 に 普及 して いな か った とい うことて あ る。
高 野 の 「回 転脱 穀 機 」 は 「発 明 原 器 」 たか らか,写 真 を見 るか き り商標 か な い。 し か し,同 形 の脱 穀 器 か 『写真 集 大 阪農 業 の あゆ み 』 に 紹 介 され て い た 【大 阪 府 農 業 会 議 198581】 。 そ れ に は 「大 阪府 農 務 課 御 推 奨 脱 穀機 國 策 型 浪 速 號 大 阪 株 式 会 社 盛 農 社 製 造 」 と記 され た プ レー トか あ り 「脱 穀 機 は 大正 七 年 に堺 市 石 津 町 て発 明 さ れ た」 と図版 解 説 され て い る。 回 転 脱 穀 機 は,大 正 時 代 の な か ごろに な って も また各 地 て さ ま ざ ま な もの か 開発 され 続 け てい て,局 地 的 な商 品 と して それ ぞ れ か 流通 して い た の て あ る。
福 永 か考 案 した 脱 穀器 もそ の点 は 同様 た った4)0
農 具研 究史 の上 てr福 永 以前 に試 作 され た もの か顧 み られ な か った 理 由は,別 に考 え て み な けれ ぽ な らな い 問題 な の か も しれ な い 。
と ころ て,高 野 か 「霰 か 降 って も籾 か 落 ち るの を 見 て」 足 踏 み 式 回転 脱 穀 機 の アイ テ アを 着 想 した とい うのは お も しろ い。 弾 発 脱 穀 方 法 か偶 然 に 発 見 され た とい うの て あ る。 と ころ か,福 永 か 足 踏 み式 回転 脱 穀 機 を 開 発 す る こ とに な った契 機 に関 す るエ
4) 川 上 に よれ は 「福 永式 稲 扱 機 」 は 改 良 をか さね つ つ 製 造 販 売 され た。 明x'45年 の 販 売 実 績 は,山 口県 下59台 の ほ か に 県 外 か5台 。 また,大 正2年 に は,県 内60台 と県 外1台 か 売 れ た 【川 上 193572】 。
福 永 は 自作 機 の宣 伝 に も力 を い れ た。 以 下 は 川 上 の記 事 。 「中央 都 市 の新 聞 を 初 め 関 門 日 日新 聞 ・防長 新 聞 等 の 広 告 を し,或 は型 録 を配 付 して 大 い に宣 伝 に 努 め た。(略)明X45年 末 頃 に は相 当一 般 世 人 の 認 む る所 とな り,照 会 ・注 文 等 相 次 い て至 るに及 ひ,職 工6人 を置 い て製 作 に従 事 した か,完 備 した工 場 の な い片 田舎 の事 とて 製 作 思 ひ に委 せ ず,且 つ 研 究 時 代 に家 産 の 大 半 を 傾 け 尽 く した の て資 金 の欠 乏 に悩 み,(略)東 京 の 西 谷繁 藏 な る人 か 本 機 の 有 望 な事 に着 目 して,特 許 実 施 権 譲 渡 方 を 交 渉 した の を機 と し,大 正2年4月 同 氏 に 山 口 県 を 除 い た,帝 国 領 土 内 に於 け る特 許 の 実 施権 を 金5000円 て 譲 り渡 した」 【川上 193567】 。 な お,福 永 はそ の後 も改 良 に つ とめ て 「弾振 改 良 稲 麦扱 機 械 」(特 許 第25820号 出願 大 正 2年6月5日 特 許 大 正3年4月17日 図29)も 考 案 した か,そ れ か ら2年 後 の1916年 に31 歳 の若 さ て没 した 。 よ うや く足 踏 み 式 回転 脱 穀機 か 全 国 に普 及 しは じめた こ ろた った 。
国立民族学博物館研究報告 21巻1号 ピ ソー トもこ の話 とよ く似 て い る のて あ る。
川上 の報 告 を 要 約 して,筑 波 常 治 か わ か りや す く紹 介 して い る。
あ る 秋 の夕 くれ の こ とて した。 工 場 の仕 事 を お え た章 一 は,い つ もの よ うに 自転 車 て, 田 ん ぼ の な か の 小道 を,家 に むか っ て走 って い ま した 。 そ の とき,道 ば たへ つ き て てい た イ 不 の穂 か,自 転 車 の車 輪 に接 触 しま した 。 とた ん に,数 粒 の もみ か パ ラハ ラ と こほ れ 落 ち ま した。
あ りふれ た て き ご とにす き ませ ん。 た か こ の瞬 間,章 一 の(略)才 能 か,じ つ に め さ ま し くは た ら き ま した。 「これ を 応 用 して,イ 不 の脱 穀 か て きる て は ない か1」
家 に か え った彼 は,収 穫 を お えた は か りの イ 不を,さ っ そ く持 ち だ しま した。 そ して 自 転 車 の ペ ダルを 手 て まわ し,イ 不 の穂 首 を 回転 す る車 輪 に ふれ させ ま した 。 予 想 どお り,
そ の穂 につ い て い た穀 粒 は,い っせ い に まわ りに とひ 散 ります。
章 一 は 自信 を 得 て,そ の実 用 化 の研 究 に着 手 しま した 。(略)
こ う して苦 心 のす え,一 九 一 〇(明 冶 四 十 三)年 に,よ うや く回 転 式 脱 穀 機 か 発 明 され ま した[筑 波 1978228‑229】 。
安 田 も,別 の 人 物 の 事 績 と して,似 た 話 を 紹 介 して い る[安 田 19521101。
衝 撃 式籾 摺 機 の 発 明者 と して有 名 な岩 田継 清 は,大 正 元 年 頃 の あ る 日,川 口市 付 近 の 田 圃 て偶 々 コー モ リ傘 をふ り廻 した こ とか らこ の事 実 を見 出 し,翌2年 に は完 成 して全 国的 に売 り出 して い る5)0
3者 と もに 偶 然 性 を強 調 してい るの は偶 然 た ろ うか 。 私 に は,ど の話 もひ らめ きの 源 泉 を もっ と も ら し く語 りか け て印 象 つけ よ うと,文 芸 的 に演 出 され て い る よ うに思 xる 。
4.結
早
回転 脱 穀 機 の 分 析 を通 して あ き らか に な った こ とを 以 下 に整 理 して お く。
5) これ に続 け て 安 田は 「また,逆V字 型 歯 拝 の発 明者 といわ れ る広 島 の河 野 駒 一 も,明 治末 年,独 立 に 足 踏 回転 脱 穀機 を考 案 して売 り出 してい る。 お そ ら くそ の 当時,こ の 他 に も多 く の人 ひ とか 同 じ よ うな事 柄 を 経験 した の てあ ろ う」 と述 へ て い る[安 田 1952110]。
近藤 足踏み式回転脱穀機 の発明
4.1 セ ソ バ コ キ か ら 回 転 脱 穀 機 へ
明 治時 代 に 自動 機 械 化 を 志 向 して開 発 され た 各種 の 回転 脱 穀 機 は,そ の大 半 か 人 力 機 械 た った 。 な か て も,種h考 案 され た 回 転脱 穀 機 の半 数 以 上 か セ ノハ コキの 自動 機 械 化 を め ざ して い た。 もっ と も,脱 穀 機 の改 良 を 全 般 的 にみ るな ら,明 治時 代 には 引 扱 能 率 の 向上 を め ざす 改良 セ ノハ コキ の 開発 か 中 心 に な って い て,湾 曲 セ ノハ や 扇 型 セ ノハ な ど,扱 歯 の形 状 の 改 良 に主 眼 を お くもの と,扱 屑 の歯 詰 ま りを 防 くた め の工 夫 を こ ら した も の とか あ った 。 そ して,そ う した な か か ら,引 扱 時 に歯 列 を左 右 また は 上 下 に 開 閉 させ る扱歯 列 可 動 式 の 改 良 セ ノハ コキ も登 場 した。 さ らに,そ の 人 力機 械 化 に取 り くん た もの か あ らわ れ る。1類Bに 分 類 した 「滑 車 式 稲 扱 器 械 」(特 許 第 18064号 図16)な どは そ の1例 て あ る。 しか し,こ の 種 の 「発 明」 は,い た ず らに そ の構 造 を 複雑 化 させ た た け た った 。 扱 歯 を 開閉 操 作 す る よ うな反 復 運 動 に よ って セ ノハ コキ の 自動 機 械 化 を完 成 させ よ うと した人 力脱 穀 機 は,結 局,実 現 しなか った 。 そ の理 由は 「公 報 」の説 明 文 と図解 を 吟 味 す れ は あ き らか て あ る。 ひ と こ とて い えぽ, それ らは 非 能 率 的 た った の て あ る。
複雑 な機 構 を 装 備 した回 転 脱穀 機 に は,作 業 効 率 や構 造 面 ての 欠 陥 か あ った 。 結 果 的 に脱 穀 部 に回 転 機構 を採 用 した単 純 な もの か 残 った の たか,そ れ て もセ ノハ コキ を ヘ ー スに して考 案 され た も の は残 らな か った 。1類Aの な か に もか な り現 実 味 の あ る 「発 明」 か あ った の に,そ れ らは,結 局 淘 汰 され て し ま った。
足 踏 み式 回転 脱 穀 機 か登 場 した 背 景 に は,こ れ に 先 た ってす す め られ て い た セ ノハ コキ の改 良 か伏 線 とな って い た こ とか あ き らか て あ る。 しか も,改 良 セ ノハ コキ や 改 良 カ ラサ オ な ど もふ くめ た 各種 の改 良 脱穀 器 と,よ り一 層 の機 械 化 をめ ざ して 開 発 さ れ た脱 穀 機械 とを比 較 す る と,明 治 時 代 に は圧 倒 的 に前 者 の 出願 件数 か多 か った 。 な か て も,各 種 の 改 良 セ ノハ コキ の登 録 件 数 は188件 に達 して い て,ほ か の もの とは 比 較 に な らな い 数 量 的 な ひ ら きか あ った 。 しか し,さ ま ざ まな 試 行 錯誤 の なか か ら,や か て従 来 慣 れ 親 しん て きた 道 具 の形 態 に と らわ れ な い新 機 軸 の 脱 穀 機 か発 想 され て い
った の て あ る。
足踏 み 式 回転 脱 穀機 の ア イ テ アは,あ き らか に セ ノハ コキ の改 良 と 自動 機 械 化 を 模 索 す るな かか ら登 場 した の たか,機 能 性 と生 産 性 を 追 求 す る過 程 て,こ き取 る とい う 方 法 は,た た き取 る,は じ き取 る とい う行為 の有 効 さに 気 つ い た者 た ちに よっ て転 換
され て い った。 そ う した な か か ら皿類 に示 した よ うな 打 穂式 の脱 穀 機 もい くつ か考 案 され た の た か,そ れ ら の多 くも,所 詮 は カ ラサ オ な と の操作 経 験 の延 長 上 て発 想 され
国立 民族学博物館研究報 告 21巻1号 た もの て しか な か った の て あ る。 回転 脱 穀 機 の アイ テ アか 現 実 味 を帯 ひ て近 代 的 な商 品 と して成 立 す るた め に は,い ま1歩 発 想 の飛 躍 と形 態 の変 更 か 必要 た った 。 そ れ か
】V類の脱 穀 機 た った。
明 治時 代 に お け る脱 穀 器 の改 良 ・発 明 は,改 良 セ ノハ コキか 中 心 だ った。 明治18年 に特 許 法 が 施 行 され た初 期 には,改 良 セ ソバ コキ が 出願 の主 流 た った のだ か,明 治41 年 を ピー クに そ の後 の 出願 件 数 は急 速 に減 少 す る。 かわ って,当 初 は少 なか った 各種 の脱 穀 機 械 の出 願 件数 か増 加 しは じめ る。 福 永 章 一 か 出願 した 明 冶44年 は,ち ょ うと この よ うな転 換 期 に あ た っ てい た 。
4.2.自 動 機 械 へ の あ こ が れ
人 力 自動 機 械 の 開発 は,初 期 の 「発 明」 の 宿 命 て あ る。 今 日か らみれ は,そ れ らは 未 成 熟 な機 械 て あ る。 しか し,人 力 にか わ る動 力 を獲 得 した と きに よ うや く本 当 の機 械 が誕 生 す るた め に は,未 成 熟 な機 械 の開 発 は 装 置 を整 備 す るた め に避 け て通 れ な い 試 行 錯 誤 た った の て あ る。 最 後 に,回 転 脱 穀 機 を 例 に,こ の 点 に つ い て述 へ る。
421 r稲 麦 扱機 械 」(特 許 第5号)
セ ノハ コキ を 回 転 させ る足 踏 み 式 回転 脱 穀 機 の ア イ テ アは,思 い の ほか 早 く出現 し て いた 。 宮 本 孝 之助 の考 案 した 「稲 麦 扱 機 械 」(特 許 第5号 図1)は,「 専 売 特 許条 例 」 か 施 行 され た 当 日の 明治18年7月1日 に 出願 され てい た 。 満 を持 して 出願 した 自 信 作 た った の た ろ う。
この資 料 はr工 業 所 有 権 制 度 百年 史 』 上 巻 に 「回転 脱 穀 機 の 萌芽 かみ られ(略)そ の後 の 自動 脱 穀機 の原 型 とな って い る」 と紹 介 され て い る 【特 許 庁 1984119】 。 目下 の とこ ろ 「専 売 特許 条 例 」 施 行 以 前 に遡 る資 料 の存 在 を 確i認す るに は至 っ て い ない か ら断 定 は て きな い か,宮 本 か 考 案 した この 資料 を も って 足 踏 み 式 回転 脱 穀 機 の アイ テ ア をは じめ て 具体 化 した も の とか んか えて よい の て は ない か と思 われ る。 そ の ア イテ ア は,同 書 に も紹 介 され た よ うに機 械 と して の構 造 を理 論 的 に は構 成 してお り,じ ゅ うふ ん に 現 実 味 を感 しさせ る。
! しか し
,こ の機 械 に結 実 した アイ テ アの 欠 陥 は,こ れ を 人 力 に よっ て稼 動 させ よ う /
と した 点 に あ る。 実際 に稼 動 させ た と して も,考 案 者 の宮 本 か 予 期 した成 果 を あ げ る こ とは 困 難 た った よ うに思 う。 この機 械 を 使 い こなす には,か な りの熟 練 を 要 した た ろ うか ら。 とは い え,足 踏 み 式 回転 脱 穀 機 の初 出 てあ る 「稲 麦 扱機 械 」 には,早 くも 人 力 機 械 と して完 成 した セ ノハ コキ の理 想 的 な形 態 か 描 きた され て い る。
近藤 足 踏み式 回転脱穀機の発明
回転 機 構 を導 入 して扱 歯 を 運 動 させ る と い うこの 発想 は,試 作 機 か 紹 介 され た 当 時 どの程 度 の イ ノパ ク トか あ った の か,ま た,は た して実 際 に商 品化 され た の か ど うか, そ の 点 は ま たわ か ら ない か,後 年 相 次 き考 案 され る こ と とな る各 種 の足 踏 み 式 回 転 脱 穀 機 の先 駆 と して,ほ ぼ完 壁 な アイ テ ア の完 成 を 示 して い る。
422 「稲 麦 扱 機i械」(特 許 第257号)
1類Bの な か の 「稲 麦 扱 機 械 」(特 許 第257号 図13)は,同 名 の特 許 第5号 と 同 じ く宮 本 孝之 助 が 出願 した ものて あ る。彼 は,ほ ぼ1年 後 に,今 度 は 前 作 とは こ とな る着 想 に よっ て考 案 した ものを 出願 した の たか,穂 束 装填 装 置 の構 造 だ け は ほぼ 前 作 を 踏 襲 して い る。 この 装置 の性 能 に よほ と自信 か あ った の た ろ う。 執 心 して い た のか も しれ な い。 これ は 憶 測 にす き ない か,宮 本 は 自分 か 考 案 した 穂 束 装 填 装置 の 円滑 な 作 動 を完 成 させ るた め に脱 穀 部 の改 善 に取 り組 んた の た と思 う。 特 許 第5号 は 回転 す る扱 歯部 に うま く稲 穂 か か らま らな か った のた ろ う。 そ こて,扱 歯 の 運動 を変 更 した の か この特 許 第257号 た った の て は な いた ろ うか 。
2作 と も,実 際 に販 路 か獲 得 て きた の か ど うかわ か らな い。 しか し,こ の人 物 に 関 して は 今 後調 査 してみ る必要 か あ る と思 う。
4.3.現 実 的 発 明 と空 想 的 発 明
脱 穀機 の発 明 と改 良に 関す る アイ テ アの なか に は,興 味深 い複 合 要 素 か あ っ た。 な か て も,穂 束 装 填 装 置 を 装備 す る も のか 多 か った。 そ れ は,当 時 の人 ひ との 自動 機 械 化 志 向 を 明瞭 に示 してい る。
新 時 代 の 到 来 に よせ る期 待 を こめた 文 明 開 化 意識 の高 揚 と と もに,西 洋 文 明 に対 す る あ こか れ の 気持 ち か大 き くふ く らんて い た 当 時 の風 潮 は,輸 入 製 品 を 多 用 した 「発 明」 の 氾 濫 を もた ら した 。具 体 的 には,ス プ リ ノグ,不 ノ,歯 車,輸 入 鋼 材 な どか 多 用 され た こ とて あ り,新奇 な形 態 や 性 能 に対 す る関 心 の 強 さ か うか が え て お も しろ い。
しか し,現 実 に それ らの部 品や 素 材 を 使 用 す る こ とに よ って,は た して どれ ほ どの 効 果 か 得 られ た か とい うと,は な はた 疑 問 て あ る。 む しろ,そ の よ うな 目あた ら しい 素 材 を 使 用 して 「発 明」 され た 出願 資 料 のな か に は,そ の効 果 を疑 いた くな る例 も少 な くな い。 新 奇 な 材料 を使 うこ とて新 時 代 の感 覚,つ ま り,文 明 開 化現 象 を演 出 し,自 ら もそ れ を 満 喫 して い る とい った気 配 か 濃 厚 に 感 しられ るの て あ る。 そ こに,明 治 と い う時 代 の 意識 か反 映 して もい るの た ろ うが,新 製 品 の開 発 とい う実 用 の レベ ル て 判 断す るな ら,こ れ らの資 料 の 大 半 は夢 想 的 な もの て しか なか った。