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知的能力・社会生活能力と人物画の関係

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

知的能力・社会生活能力と人物画の関係

著者 桜井 茂男, 桜井 登世子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

26

ページ 79‑84

発行年 1990‑03‑01

その他のタイトル Relations between intelligence, social ability, and human figure drawing

URL http://hdl.handle.net/10105/6716

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知的能力・社会生活能力と人物画の関係}

桜井茂男 ・桜井登世子

 (心理学教室)   (桜井人間科学研究所)

要旨:精神遅滞児に鈴木ビネー法知能検査、S−M社会生活能力検査、人物画 知能検査を実施し、知的能力、社会生活能力と動作性能力の関係を検討した。

知的能力、社会生活能力はいずれも動作性能力と有意な正の相関を示し、知的 能力、社会生活能力の高い者は人物画の描写もすぐれており、動作性能力が高 いことが明らかにされた。人物画の採点について、グッドイナフ法とマッカー シー法の特徴が示された。

キーワード:知的能力、社会生活能力、動作性能力

 現在・精神遅滞児の心理判定において・主として知的面・社会面・情緒面といった3つの側面 から診断が行われている。知的面の測定については、ビネー式知能検査やウェクスラー知能検査 などの知能検査によって行う。比較的よく用いられている鈴木ビネー法知能検査(鈴木、1956)

では・いわゆる一般知能が測定され孔全部で76項目からなっており・その各々の項目は・言 葉の了解の程度、観念の連合、概念発達の初歩、概念内包の比較、数の熟達、記憶問題などを含 んでいる。これらの結果を総合的にとらえて、一般知能を査定するので、ウェクスラー知能検査 のように言語性能力と動作性能力を別々に測定することはできない。また、鈴木ビネー法では言 語性能力に関する問題が多いので、人物画のような動作性能力を測定する検査をあわせて行うこ

とが望ましい。

 実際の検査場面での人物画は、大体が子ども画である。子ども画は、子どもの知的側面とパー ソナリティの側面に関する情報を与えるものとして関心が持たれてきた。このうち本研究で取り 上げる知的側面に関しては・Goodenogh(1926)が考案した人物画知能検査法が最もよく知ら れており・これを受けっいで・Harris(1963)はGoodenough−H帥ris採点法を作成した。そ の後・McCar仇y(1972;小田はか、1977)は、マッカーシー知能発達検査の下位テストの1つ として子ども画を取り入れてい糺

 グッドイナフ人物画知能検査では、子ども画を描く能力は動作性の能力であり、視覚一運動系 の発達段階が査定される。マッカーシー知能発達検査では、子ども画が知覚一遂行尺度と運動尺 度にはいっている。知覚一遂行尺度では、非言語的な概念形成、視覚一運動の整合および身体像

 Relations between intenigen㏄,socia1ability,and human figure dmwing.

 Shigeo SAKURAI(Dψακme〃q/P8ツ。ん。工。醐,州〃ασπわer8 妙。/ ωωt土0π)

soyoko SAKURAI(Sαゐ〃α〃π8亡{ω e o/H山肌απSc{例。es)

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が査定され、運動尺度の場合には、細かな運動の整合が査定される(Kaufman&Kaufman;

1977)。このように、子ども画によって、非言語的表現による視覚一運動の整合および非言語的 概念形成能力が査定される。

 社会面の測定についてはS−M社会生活能力検査がよく用いられている。この検査は、日常生 活の中で容易に観察できる130の項目から構成されており、これらの項目は、次の6領域にまと められている。

①身辺自立:衣服の着脱、食事、排泄などの身辺自立に関する生活能力。

②移動:自分の行きたい所へ移動するための生活行動能力。

③作業:道具の扱いなどの作業遂行に関する生活能力。

④意志交換:ことばや文字などによるコミュニケーション能力。

⑤集団参加1社会生活への参加の具合いを示す生活行動能力。

⑥自己統制:わがままを抑え、自己の行動を責任を持って目的に方向づける能力。

 情緒面の測定については、面接中の様子や人物画の描写などによって判断される。

 本研究では、鈴木ビネー法知能検査と人物画知能検査との関係、及び、S−M社会生活能力検 査と人物画知能検査との関係について検討し、知的能力、社会生活能力と動作性能力の関係を明

らかにする。

方      法

 調査対象  調査対象は、精神遅滞児40名(男女各20名)であった。平均生活年令は11:1

(4:8−17:6)、平均精神年令は5:9(3:0−1O:6)。

 実施法  鈴木ビネー法知能検査を行った後、次のような教示を与えて男児には男の子の絵を、

女児には女の子の絵をA4版の白紙に描かせた。「ここに、男の子(女の子)の絵を描いてくだ さい。顔だけでなく、全体を描いてください。」描くのをためらっている場合には励ましてあげ てよいが、いったん描き始めたら援助しない。子どもが描くのを中止したならば、「それで終り ですか」と言うが、この促しは1回だけに限る。時間制限はないが、5分を過ぎても完成しない ときは、皐く完成するように励ましてあげる。しかし、子どもが絵に満足して自発的にやめるま では、用紙を回収しない。

 子ども画の採点法  グッドイナフ法(小林、1977)とマッカーシー法(小田ほか、1977)に よって採点を行った。

{1)グッドイナフ法次に記した各項目の規律に合致するものに各1点を与える(最高51点)。

①頭のあること。

②脚のあること。

③腕のあること。

④a.胴があること。b.胴の長さが幅より大。c.肩がはっきりしていること。

⑤a.肺および脚のつけ方がほぼ正しいこと。b.肺および脚が胴の正しいところにある

 こと。

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⑥a.くびの部分のあること。b.胴または頭と連続したくぴの輪がくのあること。

⑦a.眼のあること。b.鼻のあること。c.口のあること。d.鼻と口に輪がくがあり、

  かつ唇は上下あること。 e.鼻穴のあること。

⑧a.毛髪のあること。b.毛髪が頭の輪がく以上に描出されていること。

⑨a.衣服があること。b.衣服の標徴2個以上。c.衣服全部。d.衣服の標徴4個以

  上。

⑩a、指があること。b.指の数が正しいこと。c、指の細部が正しいこと。d.おや指   がその他の指と区別されていること。 e1章が指および腕と区別されていること。

①a.胃あるいは腕の関節のあること。b.脚の関節、膝または股のあること。

⑫a.頭の面積が胴の半分以上でなく、または1/10以下でないもの。b1腕の長さと同   等以上で膝に達しないこと。 c.脚の長さが胴の長さより大で、胴の長さの2倍よりも短   く、足の幅はその長さよりも小であること。d.脚と足とが輪郭をもって描かれ、足の長   さは足のかかとから甲までの高さより長いこと。そして足の長さが脚の全長の1/3以下、1   /10以上のもの。 e.腕と脚のつり合いがよくとれて両者共に輪がくをもっていること。

⑮踵をとくに描いたもの

⑭a.描線A:描いた線がしっかりしていること。b.描線B:描線の一層進んで良好な   もの c.頭の輪がくが正確に描かれているもの。d.胴の輪がくが正確に描かれている   もの。e.腕と脚がいずれも輪がくを持ち、ことに胴にっくところが小さくならないこと。

  f.顔貌が左右相称であること。

⑮a.耳があること。b.耳の位置およびその大きさの正しいこと。

⑮a.眼の細部、眉か購毛あるいはその両者のあること。b、眼の細部、瞳のあること。

  c.眼の割合・横の長さがその縦の幅よりも大であるこ』 d.眼の向き・瞳の位置が両   眼一致していること。

⑰a.類および顎、眼の、口の下に相当する広さのあること。b.顎の突出をとくに描出   してあること。

 ⑱a.横向きA:頭・胴および足が横向きに正しく描かれているこ』b.横向きB:眼   の形を除く外、すべてが誤りなく横向きになっていること。

12〕マッカーシー法 表1に示す1O項目について・2点・i点・O点で採点する(最高20点)。

 S−M社会生活能力検査は、被調査者の日常生活をよく知っている保護者に回答させた。

結果 と 考察

 表2は、鈴木ビネー法知能検査、人物画のグッドイナフ法、マッカーシー法、およびS−M社 会生活能力検査の間の相関をしめしたものである。

 まず、鈴木ビネー法知能検査と人物画との関係をみると、表が示すようにグッドイナフ法と.制、

マッカーシー法と.60というように、決して高いものではないが有意な正の相関があった。鈴木 ビネー法では前述のように言語性の概念能力、言語表現、記憶力等を問う項目が多く、動作性能

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表1 子ども画採点規準(マッカーシー法)

2 点 1 点 0 点

頭  縦長(卵型)の頭がある 頭がある 頭がない

髪  頭の上にきちんと画けている 粗雑に髪が固いてある 髪が固いてない 目と眉毛(まっ毛、瞳)がある 目がある 目がない    立体的な鼻がある

   幅より丈が長い

平面的、又は立体的な鼻がある        鼻がない 女より幅が広い

口がIつで唇が1っ、又は2っ 口が1つで唇が画いてない 口が画いてない 2本の縦線で面かれている   1本、又は2本の縦線

頭か胴体のどちらかに続いている頭にも胴体にも続いていない 首が画いてない

体丈が横幅より長い 横幅が女より長い 首が画いてない

腕と手 2本の腕と2本の手 2本の腕と手は1本以下 腕が1本以下か 3本以上      2つの肩と2本の腕がしっかり

腕の取付け

    面かれている 両腕はあるが肩はない 腕の取付が悪い

脚と足 2本の脚と2本の足 脚は2本あるが足がない 脚が1本以下か 3本以上

齢2才半 3才 3才半 4才 4才半 5才  5才半 6才半 7才半 8才半

点  O.6  1.8  3.9  6.9 12,4   13,5   14,9   17.3 17,9   18,7

表2 検査間の相関係数

鈴木ビネー法 D A M

M S C A

D A M      .64

M S C A     .60  S M       ,77

.82

.56 @     、54..

      **ρ<.01

表㈲ DAMはグッドイナフ法、MSCAはマッカーシー法、SMはS−M社会    生活能力検査を表す。

力は測定されにくい。しかし、この結果は鈴木ビネー法で測定された一般知能が高い者は、人物 画の描写によって測定された動作性能力が高いことを表している。杉村・井上(1988)は、幼稚 園年長児にマッカーシー知能発達検査の中の子ども面とことぱの流暢さのテストを実施し、非言 語的概念能力と言語的概念能力との関係を検討したが、両者の間には有意な相関がなく、非言語 能力と言語能力の間にあまり関係がないことを示した。これは、本研究の結果と一致しないが、

鈴木ビネー法は概念能力以外の言語能力を含んでいるためであると考えられる。

 つぎにS−M社会生活能力検査と人物画との関係をみると、グッドイナフ法、マッカーシー法 の両方と有意な正の相関が縛られた。相関係数は、グッドイナフ法と.56、マッカーシー法と.54

というように、決して高くはないが、この結果は社会生活能力が高い方が、人物画によって表さ れる動作性能力が高いことを示している。一見、社会生活能力と人物画を描く能力は無関係のよ

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うに思われるが、S−M社会生活能力検査には作業領域が含まれており、その中に描写と関係の ある項目もあるので、人物画と何らかの関係が見出されるのも不思議ではない。また、人物画を 描く時、認知能力も要求されることは否めず、社会に積極的にはたらきかける能力は描写を豊か なものにするのではないかと考えられる。

 グッドイナフ法とマッカーシー法の関係についてみると、両者の間には、.82という有意で高 い正の相関が得られた。このことは、グッドイナフ法で採点してもマッカーシー法で採点しても 類似した結果が得られることを示している。したがって、子ども画を採点する際、いずれか1つ の方法で採点すればよいと考えられそうである。しかし、事例1と事例2が示すようにグッドイ ナフ法で採点すると同じ結果であるが、マッカーシー法で採点した場合には事例2の方が頭、鼻、

腕の取り付けの描写において高得点になり、事例ユと事例2との間には2才程度の差が生じる。

この2事例は、鈴木ビネー法による知的能力、S−M社会生活能力検劃こよる社会生活能力もほ ぼ同程度であるので・グッドイナフ法による採点の方が言語性能力と動作性能力の関係を顕著に 示すのではないだろうか。マッカーシー法は構成・概念的能力と関係が深いといえよう。このよ うにグッドイナフ法とマッカーシー法はそれぞれ特徴を持っているが、両方の特徴を兼ね備え、

さらに言語能力、社会生活能力との関係を一層明らかにするような人物画の採点方法の開発が望

まれる。

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事 例 i 事例 2

(7)

      引 用 文 献

Goodenough,F.L.1926珊e meα舳reme枇。ハ枇e{ {8例。eろツdrαω加8s.New York:Wor1d     book.

Harris,B.D.1963C肋〃r舳 3drαω肋8sα8㎜eαs〃e80/加fe〃ec肋αエmα地r{り.New York:

    Harcout,Brace,&World.

Kaufman,A.S.,&Kaufman,N,L.1977α加{ωエωαj㎜f{oπoゾッ。uη8cゐ〃reηω{肋McCαr一     伽ScαJes.New York:Grum&Stratt㎝.(茂木・杉村訳 1987マッカーシー検査     による知能診断 東京:日本文化科学社)

小林重雄 1977 グッドイナフ人物画知能検査 京都:三京房

McCarthy,D.1972McCαr 佃8cαたs o/α〃reπ s〃脇ツ.New York:The Psycho1ogica1     cOrpOratiOn。

小田信夫・茂木茂八・池川三郎・杉村 健 1977マッカーシー知能発達検査手引(1981年修     正版)東京:日本文化科学社

杉村 健・井上登世子 1988幼児における子ども面とことぱの流暢さの分析 奈良教育大学教     育研究所紀要,第24号 37−43.

鈴木治大郎 1956実際的・個別的智能測定法 東洋図害

参照

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