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1.はじめに
惑星間輸送を考えた場合、現行の宇宙推進シ ステムは全推進剤を地球から持参しなければな らず、ミッション期間が長くなるにつれて輸送 機の全質量に占める推進剤質量の割合が大きく なり、ペイロード(荷物)質量が制限されるこ とになる。
本研究室ではこの問題の改善策として、宇宙 空間に多数存在する数μサイズのスターダスト
(宇宙塵)を推進剤として利用することで、ちょ うど、車がガソリンスタンドでガソリンを補給 して長距離走行するように、ミッション途中で の推進剤補給を可能とし、推進剤の初期搭載量 を低減できるスターダスト推進機を考案し、研 究を行っている。その加速装置は、固体微粒子 を帯電させ、静電加速を用いて噴射することに より推力を得るシステムである。推進に静電加 速を用いることから、固体微粒子の帯電量が装 置の性能に大きく影響するため、微粒子の効率 的な帯電が必要とされる。
本研究は、固体微粒子の帯電率を上げるため にプラズマを利用することを試み、その帯電特 性を実験により明らかにし、加速装置につなげ ていくことを目的としたものである。
2.スターダスト推進機の基礎原理
一般に、プラズマの中に微粒子が挿入される と、微粒子はプラズマ中の荷電粒子との相互作 用により帯電することが知られている。図1にプ ラズマ帯電の様子を示す。通常、プラズマ中で は、その質量差異の影響からイオンよりも電子 の熱速度の方が大きいため、微粒子にはまず電 子が付着し、微粒子は周囲プラズマに対して負 に帯電することになる。微粒子がプラズマ内に 混在している状態をダストプラズマという。
宇宙塵を推進剤とする宇宙推進機に関する実験的研究
〔科学技術試験研究助成〕
静岡大学工学部機械工学科 山極 芳樹 [email protected]
宇宙塵を推進剤とする推進機の研究開発 固体微粒子の高効率帯電
宇宙にある物質を推進剤とし地球か らのペイロード(荷物)質量増加が 可能な惑星間輸送システムの確立
応 用 課 題
研究助成成果報告
(平成19年度)
図1 ダストプラズマの概念図
12 帯電した粒子は、複数枚の電極間に印加した
電位差を利用して、高速度で放出し、その反力 で推力を得る。静電加速を用いた代表的な推進 機としてイオンスラスタがあり、その静電加速 の概念図を図2に示す。イオンスラスタは正に帯 電した粒子を加速するが、本スターダスト推進 機は負に帯電した粒子を加速するので、与える 電位は逆になるが、どちらも排出粒子速度νは 帯電量が大きいほど大きくなるので、いかに効 率よく固体微粒子を帯電させるかが、スラスタ 性能向上に繋がることになる。
3.実験装置
実験装置の構成を図3に示す。
3.1.プラズマ生成装置
本実験で用いたプラズマは熱陰極直流放電プ ラズマである。このプラズマは、カソードにフ ィラメント等の熱電子放出を行う電極を用い、
アノードに印加した電圧により生じた電界でカ ソードから放出された電子を加速し、気体の電 離電圧を超えるエネルギーを持った電子を気体
分子に衝突させて気体を電離させることで得ら れる。図4に本実験で用いたプラズマ生成装置の 回路図を示す。プラズマのガス種には、アルゴ ンガスを用いた。
3.2.固体微粒子
供給する固体微粒子には、宇宙塵の主成分で ある炭素粒子(粒径50[μm])を使用した。
3.3.固体微粒子供給装置
微粒子供給装置は、帯電室上側に設置され、
帯電室内に供給する炭素粒子の流量を調整する。
供給装置は、炭素粒子を貯めておく本体、流量 を調整する軸、蓋に取り付けられた軸駆動用モ ータとギヤボックス、帯電室との接合のための 漏斗部からなる(図5)。軸先端は円錐形になっ ており、軸を上下に駆動させることで本体下の 粒子供給口の開口量を変えて流量を調整する。
図2 静電加速の概念図
図3 固体微粒子帯電装置
図4 プラズマ生成装置
図5 固体微粒子供給装置の概略図
3.4.測定装置
3.4.1.プラズマ診断装置
プラズマ特性(電子温度、プラズマ密度)計 測にはステンレス製の平面ラングミュアプロー ブを用いた。
3.4.2.帯電量測定装置
帯電量測定としては、プラズマ生成装置の下 に2枚の加速電極をもった測定装置(図6)を設 置し、プラズマ生成装置中を通過した帯電粒子 が落下中に、2枚の電極に加えた静電場により軌 道が曲げられ落下した位置から求める。飛距離 測定用プレートはアクリル製で、落下してきた 粒子の質量を飛距離ごとに計測できるよう、仕 切りが設けられている。
実験は、真空槽内で行われ、10-3[Pa]オーダー の真空環境に維持されている。
4.実験結果 4.1.帯電量測定
図7はプラズマの状態(アノード電圧、電流)
を変化させずに電子温度とプラズマ密度をほぼ 一定に保って粒子を落下させた時の結果である。
このときのプラズマ密度は約3×1015[m-3]程 で、帯電量は約1×10-12[C]オーダーであり、過 去に行われた接触帯電法(1)による帯電量からは3 桁向上した。また、加速電圧によって測定帯電 量が変化しないということから、帯電量測定装 置の信頼性も裏付けていると考えられる。
4.2.プラズマの状態と帯電量の関係
プラズマ密度、電子温度、プラズマ電位の変 化に対する帯電量の変化について実験によって 得られた結果とその考察を示す。
4.2.1.プラズマ密度と帯電量の関係
プラズマ密度と帯電量の関係を図8に示す。グ ラフからプラズマ密度の上昇(アノード電流を 高くする)によって帯電量も増加し近似的に比 例関係を示していることがわかる。プラズマに よる粒子の帯電は周囲プラズマからの電子収集 によるもので、周辺電子密度、つまりプラズマ 密度が上昇すればそれに伴い帯電量も増加する ことは妥当である。
4.2.2.電子温度と帯電量の関係
電子温度と帯電量の関係を図9に示す。グラフ から電子温度が4[eV]を過ぎたあたりからは帯電 量に影響を与えていないことを示しているが、
電子温度が4[eV]より低くなるにつれて帯電量が
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(c)飛距離測定プレート
(b)加速電極
図6 帯電量測定装置
(a)帯電量測定装置概念図
帯電量[C]
加速電圧[V]
図7 加速電圧と帯電量の関係
14 上昇している。これは電子温度が高くなる(ア
ノード電圧が高い)ことで電子の熱速度が大き くなり、微粒子に付着しにくくなるためだと考 えられる。
5.結論
宇宙塵を推進剤とする宇宙推進機の実現を目 指し、宇宙塵のような固体微粒子を効率よく加 速するために、ダストプラズマを用いて固体微 粒子を帯電させることを考え、プラズマの状態 と帯電量の関係について実験的に調べた。
その結果、ダストプラズマを用いると、粒子 帯電量が、過去に試みた接触帯電法によるもの より3桁向上することがわかった。
また、各プラズマパラメータと帯電量の関係 から、帯電量を上げるにはプラズマ放電におけ るアノード電流を大きく(プラズマ密度を高く する)、アノード電圧を小さく(電子温度を低く する)設定すればよいことがわかった。
参考文献
(1)水野淳生、山極芳樹、ほか「ダストプラズ
マを用いた宇宙推進用固体粒子加速装置に おけるダストの帯電特性に関する研究」、平 成 1 9 年 度 宇 宙 輸 送 シ ン ポ ジ ウ ム 論 文 集 、 pp.455-458, 2008.1.
*本研究の一部は、(財)浜松科学技術研究振興 会からの助成金で行われました。ここに謝意 を表します。
図9 電子温度と帯電量の関係
負の帯電量[C]
プラズマ密度[m-3]
負の帯電量[C]
電子温度[eV]
図8 プラズマ密度と帯電量の関係