別 紙 様 式1(修 士 申請 者 用)
修 士 学 位 論 文
マ ン モ グ ラ フ ィ 検 査 に お け る フ ェ イ ス ガ ー ドの 防 護 能 の 検 討
(西暦)2019年12月26日 提 出
首都 大 学 東 京 大学 院
人 間健 康 科 学 研 究 科 博 士 前 期 課 程 人 間健 康 科 学 専 攻 放射 線 科 学 域 学修 番 号:18897711
氏 名:辻 本 峻 二
(指導 教員名:加 藤 洋)
目 次
第1章 序論
1.1乳 房 用X線 装 置 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …"●'●"1
1)乳 房 用X線 撮 影 装 置 の 変 遷 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …1
2)乳 房 の 圧 迫 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …2
3)フ ェ イ ス ガv・ 一・一ド ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …2
1.2マ ン モ グ ラ フ ィ 検 査 に 対 す る 医 療 被 ば く の 現 状 お よ び 問 題 点 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …3
1)マ ン モ グ ラ フ ィ に よ る 被 ば く の 身 体 へ の 影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …3
2)乳 腺 吸 収 線 量 、 診 断 参 考 レ ベ ル(DRL)・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …4
1.3水 晶 体 の 線 量 限 度 の 推 移 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …5
1)水 晶 体 の 放 射 線 の 影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …5
2)水 晶 体 の 線 量 限 度 の 改 定 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …5
1.4自 身 の 先 行 研 究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … ● ●'●'8
1.5本 研 究 の 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …9
1.6本 論 文 の 構 成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …9
第2章 フ ェイ ス ガー ド材 の検 討
2.1鉛 含 有 ガ ラ ス ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … ● ● ● ● ●"● ●10
2.2ポ リ カ ー ボ ネ ー ト ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …11
2.3ア ク リ ル ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …12
2.4鉛 含 有 ア ク リ ル ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … ● ● ● ●"● ● ●13
第3章 モ ン テ カ ル ロ シ ミュ レー シ ョン
3.1モ ン テ カ ル ロ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン と は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …14
3.2放 射 線 分 野 で の モ ン テ カ ル ロ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 利 用 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …15
3.3PHITS・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …16
3.4本 研 究 で 使 用 す るPHITSコ ー ド ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …17
1)dumpソ ー ス ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …17
2)t‑track・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …17
19192022252525
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第4章 実験方法
4.1実 験1:鉛 当 量 の 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
1)鉛 当 量 と 測 定 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2)実 測 体 系 と 条 件 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
3)計 算 体 系 と 条 件 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
4.2実 験2:散 乱 線 遮 へ い 効 果 の 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
1)計 算 体 系 と 条 件 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2)計 算 に 用 い る 線 源 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2730
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第5章 実験結果お よび考察
5.1実 験1:鉛 当 量 の 評 価 ・ ・ ・ … 5.2実 験2:散 乱 線 遮 へ い 能 力 の 評 価 ・
・35
・35
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第6章 結論 お よび今 後 の検討
6.1結 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
6.2今 後 の 検 討 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
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●参考文献
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謝 辞 ・
第1章 序 論
1.1乳 房 用X線 装 置1) 1)乳 房 用X線 装 置 の 変 遷
低 エ ネ ル ギ ー のX線 を 用 い た 乳 房 撮 影 方 法 はR.Eganに よ っ て1956年 に 考 案 さ れ た(Fig.
1.1(a))。 こ の 装 置 は タ ン グ ス テ ン(tungsten:W)タ ー ゲ ッ トで あ っ た が 、1966年 に は モ リ ブ デ ン(molybdenum=Mo)タ ー ゲ ッ トを 用 い た 乳 房 用X線 装 置 が 発 表 さ れ た(Fig.1.1(b))。
現 在 の マ ン モ グ ラ フ ィ 装 置 はFig.1.22)の よ うな も の が 主 流 と な っ て い る が 、x線 管 装 置 に 接 近 し た 撮 影 で あ る と い う点 で 変 化 は な い 。
♂ 険、
(a)(b)
Fig.1.11)初 期 の 乳 房 用X線 装 置(a)R.Egan教 授 に よ る 撮 影 法 と装 置(b)C,MGros教 授 に よ る 撮 影 法 と 装 置
ぜ も
護'一、∫ 一 、r・
.ふ ・講 ∵
∵二 墨ll o
摯 ・
̲鹸 醜漉 融
Fig.1.22)現 在 の 乳 房 用x線 装 置
2)乳 房 の圧 迫3)
マ ン モ グ ラ フ ィ検 査 に お い て 乳 房 を圧 迫 す る こ と は 良 質 な 画 像 を 得 る うえ で 必 要 不 可 欠 で あ る。被 写 体 厚 を減 少 させ 、均 一 な 厚 さ に す る こ とが 第 一 の 目的 で あ る が 、次 の よ うな効 果 が 乳 房 圧 迫 に よ っ て 得 られ る。
①X線 の減 弱 が よ り均 一 に な り、 乳 腺 全 域 が 観 察 可 能 な 画 像 濃 度 に な る。
② 散 乱 線 が 減 少 し、 乳 腺 内 コ ン トラ ス トお よ び 解 像 度 が 向 上 す る。
③ 被 ば く線 量 が 減 少 す る。
④ 乳 房 組 織 と フ ィル ム 間 の 距 離 が短 くな り、 幾 何 学 的 不 鋭 が 減 少 す る。
⑤ 乳 腺 組 織 が 分 離 され 、 組 織 間 コ ン トラス トが 向 上 す る。
⑥ 乳 房 が 固 定 され 、 体 動 に よ る不 鋭 が 防 止 され る。
過 去 に は 放 射 筒 自体 で 圧 迫 す る 装 置 も存 在 して い た が 、 現 在 の 装 置 で は よ り均 一 な圧 迫 の た め に 装 置 に備 え つ け られ た 圧 迫 板 が用 い られ る。
3)フ ェ イ ス ガ ー ド
マ ン モ グ ラ フ ィ の 画 像 で は顔 は 当 然 、毛 髪 も大 き な 障 害 陰 影 とな っ て しま う。 しか し、マ ン モ グ ラ フ ィ検 査 で は 乳 腺 が 観 察 で き な い ブ ラ イ ン ドエ リア を減 少 させ る た め装 置 に 接 近 す る必 要 が あ る と と も に 、 乳 房 の 圧 迫 に 伴 う痛 み か ら被 検 者 が 顔 を 前 の め りに して しま う な どで 障 害 陰 影 の発 生 リス ク が 存 在 して い る。そ の た め 、頭 部 が 照 射 野 上 に存 在 しな い よ う にす る た め に フ ェ イ ス ガ ー ドが設 け られ て い る。
1.2マ ン モ グ ラ フ ィ 検 査 に対 す る 医 療 被 ば くの 現 状 お よび 問 題 点 1)マ ン モ グ ラ フ ィ に よ る被 ば く の身 体 へ の影 響
国 際 放 射 線 防護 委 員 会(lnternationalCommissiononRadiologicalProtection:ICRP)は 確 定 的影 響 に 関 して 、約100mGy未 満 の 吸 収 線 量 域 に お い て は 、1回 の急 性 被 ば く、繰 り返 した 年 間 被 ば くの い ず れ に つ い て も、 人 体 組 織 に 臨 床 的 に 有 意 な 機 能 障 害 は 生 じな い と して い る4)。 マ ン モ グ ラ フ ィ の 吸 収 線 量 は1乳 房2方 向 撮 影 で6mGy以 下 と少 な く 、 通 常 の線 量 や 検 査 頻 度 で あれ ば確 定 的 影 響 を 懸 念 す る 必 要 は な い と され る5)。 ま た 、生 殖 腺 は 照 射 野 に 含 ま れ ず 、 散 乱 線 も 非 常 に少 な い た め 、 遺 伝 的 影 響 に っ い て も 心 配 は な い と考 え られ る。
しか し、被 ば くに よ る乳 癌 発 生 の リス ク に つ い て は 考 慮 す る 必 要 が あ る。乳 腺 の放 射 線 感 受 性 は 高 く、ICRPの 分 類 で は 組 織 加 重 係 数(tissueweightfactor:WT)が 最 も 高 い 臓 器 グル ー プ に 属 して い る。 組 織 加 重 係 数 は 放 射 線 に 対 す る組 織 の感 受 性 を表 す 係 数 で あ り、ICRP の2007年 の 勧 告4)で 、 乳 房 の 組 織 加 重 係 数 は そ れ ま で の0.05か ら0.12に 引 き 上 げ られ た
(Table1.1参 照)。
Table1.1組 織 加 重 係 数(ICRP1990年 勧 告 →2007年 勧 告)
生殖 腺 骨髄(赤 色)
結腸 肺
胃 乳房 膀胱 肝臓
0.20 0.12 0.12 0.12 0.12 0.05
0.08 0.12 0.12 0.12 0.12
食 道 甲状腺
皮膚 骨表面
脳 唾液腺 残 りの組 織 ・臓 器
0.050.04 0.010.01 0.010.01
0.Ol
0.Ol
O.12※
※ 臓 器 の 平 均 線 量 に対 して0 .12を 与える
被 ば く線 量 が 増 え る と乳 癌 の 発 症 リス ク が 増 加 す る こ と は 、広 島 ・長 崎 の 原 爆 被 爆 者 や 、 乳 腺 を 照 射 野 に 含 む 放 射 線 治 療 歴 の あ る 患 者 を対 象 と した 疫 学 的 研 究 か ら 明 らか に され て い る6〜9)。診 断 レベ ル の 被 ば く につ い て も、脊 柱 側 弩 症 や 肺 結 核 に 対 す る繰 り返 すX線 検 査 に よ っ て 乳 癌 発 症 リス ク が 増 加 す る こ とが 報 告 され て い る10〜12)。これ ま で に マ ン モ グ ラ フ ィ に よ る 乳 癌 発 症 の増 加 を 直 接 観 察 した デ ー タ は な い が 、 さ ま ざ ま な モ デ ル 分 析 で マ ンモ グ ラ フ ィ に よ る発 癌 リス ク が 推 定 され て い る13〜15)。
発 癌 リス ク計 算 の 一 例 と して 、1方 向 撮 影 で 乳 房 に3mGyの 被 ば く が 生 じた 場 合 、放 射 線 加 重 係 数(X線 は1.0)と 組 織 加 重 係 数0.12を 乗 じて 求 め た 実 効 線 量0.36mSvに 、 生 涯 リ
ス ク係 数2.5%/Sv(41〜60歳 の 場 合)を 乗 じれ ば 、 被 ば くに よ る発 癌 の 生 涯 リス ク(死 亡 率)は0.0009%と 算 出 され る16)。 し か し、数 百mSv以 下 の 線 量 に お け る発 癌 リス ク を疫 学 的 研 究 か ら高 い 精 度 で 推 定 す る こ とは 不 可 能 と考 え られ て お り、 実 際 に は低 線 量 の被 ば く で 発 癌 リス ク が どれ く らい 増 加 す る の か は 不 明 で あ る。い ず れ に して も、マ ン モ グ ラ フ ィ検 診 に よ る 致 死 的 発 癌 リス ク は極 め て 低 い と考 え られ 、 日本 の 乳 が ん 検 診 の 対 象 年 齢 で あ る 40歳 以 上 で あれ ば マ ン モ グ ラ フ ィ検 診 の利 益 リス ク 比 は 十 分 大 き い と され る が16)、 検 診 の 至 適 推 奨 年 齢 に 関 して は 現 在 も議 論 が 続 い て い る。
2)乳 腺 吸 収 線 量 、 診 断 参 考 レベ ル(DRL)
ICRPは 放 射 線 防 護 の 最 適 化 を 推 進 す る た め に 、 そ れ ぞ れ の 国 や 施 設 で 診 断 参 考 レ ベ ル (diagnosticreferencelevel:DRL)を 設 定 し て 利 用 す る こ と を 推 奨 し て い る17)。 日本 で は 医 療 被 ば く 研 究 情 報 ネ ッ ト ワ ・一・一一・ク(JapanNetWorkforResearchandInformationonMedical
Exposures:J‑RIME)が2010年 に 設 立 さ れ 、 関 連 学 会 、 団 体 と 協 力 し て 、2015年 に はCT検 査 、 一 般 撮 影 、 マ ン モ グ ラ フ ィ 、 口 内 法X線 撮 影 、IVR、 核 医 学 検 査 のDRLを 公 表 し て い る18)。 マ ン モ グ ラ フ ィ のDRLは 、 日本 乳 が ん 検 診 精 度 管 理 中 央 機 構 の デ ー タ に 基 づ い て 、 平 均 乳 腺 線 量(averageglandulardose:AGD)で2.4mGy(95パ ー セ ン タ イ ル 値)と 提 言 され た 。 ち な み に 従 来 わ が 国 で は 国 際 原 子 力 機 関(IntemationalAtomicEnergyAgency:IAEA)ガ
イ ダ ン ス レベ ル の3mGy以 下 、 日 本 診 療 放 射 線 技 師 会 ガ イ ドラ イ ン の 低 減 目 標 値2mGyな ど が 目安 に さ れ て き た 。DRLは 線 量 限 度 で は な く 、 臨 床 目 的 に 寄 与 し な い 照 射 線 量 を 避 け る た め の 参 考 値 で あ る の で 、診 療 に 必 要 で あ れ ば 超 え て も よ い が 、各 施 設 の 通 常 の マ ン モ グ ラ フ ィ 線 量 がDRLを 超 え て い る 場 合 に は 対 策 を 講 じ な け れ ば な ら な い 。2.4mGyのDRLを
超 え て い る 施 設 は 少 な く な い と推 測 さ れ て お り19)、 自 施 設 の マ ン モ グ ラ フ ィ 線 量 を 把 握 し て お く 必 要 が あ る 。
近 年 普 及 が 進 む 乳 房 トモ シ ン セ シ ス に つ い て は 、J‑RJMEは 上 記 提 言 の 中 で そ の 被 ば く線 量 を 検 討 す る 必 要 性 を 述 べ て い る が 、 現 時 点 で 特 別 なDRLは 設 定 し て い な い 。European ReferenceorganisationforQualityAssuredBreastScreeningandDiagnosticservices(EuREF)は
デ ジ タ ル マ ン モ グ ラ フ ィ のDRL(PMMA板 の 厚 さ40㎜ で2mGy)に 準 拠 す る こ と を 推 奨 し て い る20)。
1.3水 晶 体 の線 量 限度 の推 移 1)水 晶 体 の 放 射 線 の影 響21・22)
眼 の 水 晶 体(Fig.1.3参 照)は 、 放 射 線 感 受 性 の 高 い 組 織 で あ り、 放 射 線 障 害 と して 白 内 障 な どが 引 き 起 こ され る 可 能 性 が あ る。水 晶 体 の 細 胞 は 他 の細 胞 と異 な り、赤 道 付 近 で 分 裂 した 後 、水 晶 体 外 に排 出 され る こ とな く、一 生 を 上 皮 細 胞 が 合 成 ・分 泌 した 嚢 の 中 で 過 ごす 。 水 晶 体 が 濁 り、光 を透 過 しな くな る こ とで視 力 障 害 を 引 き起 こ し、これ が 白 内 障 と呼 ば れ る。
主 な 原 因 は加 齢 で あ る が 、紫 外 線 、放 射 線 、糖 尿 病 に よ る も の な どが あ る。放 射 線 の被 ば く に よ っ て 誘 発 され る 白 内 障 は後 嚢 下 白内 障 が 最 も多 く、 次 に皮 質 白 内 障 で あ る とい わ れ る。
綴
舞
水 晶体 藷 遵
舞遂
Fig.1.31'21)眼 と 水 晶 体
2011年4月 に は 白内 障 の 閾 線 量 を以 前 ま で の8Gyか らo.5Gyに 修 正 し、 それ に 伴 い 水 晶 体 等 価 線 量 限 度 の 大 幅 な 引 き 下 げ(年 間150mSv→5年 平 均20mSv/年 か つ 年 間50mSv) が 勧 告 さ れ た 。線 量 限度 範 囲 以 内 で放 射 線 業 務 を行 っ て い て も 、水 晶 体 の 閾 線 量 を超 え る可 能 性 が あ り、 世 界 各 国 で 早 急 な 対 応 が進 ん で い る。2017年 の 時 点 で オ ー ス トラ リア や ハ ン ガ リー な ど は 法 律 改 正 をす で に 終 え 、 欧 州 原 子 力 共 同 体(Euratom)加 盟 国(ド イ ツ 、 フ ラ ン ス な ど)は2018年 に法 律 改 正 が 行 わ れ た 。
2)水 晶 体 の 線 量 限 度 の 改 定
厚 生 労 働 省 労 働 基 準 局 安 全 衛 生 部 労 働 衛 生 課 電 離 放 射 線 労 働 者 健 康 対 策 室 は 、 「眼 の 水 晶 体 の 被 ば く 限度 の 見 直 し等 に 関す る検 討 会 」(座 長:永 井 良 三 自治 医 科 大 学 学 長)の 報 告 書 を 取 りま とめ 、令 和 元 年9月24日(火)に 公 表 した 。放 射 線 審 議 会 は 、平 成23(2011) 年4A「 組 織 反 応 に 関 す るICRP声 明 」 に お け る勧 告 や 諸 外 国 で の 被 ば く限 度 に係 る法 令 の 施 行 状 況 等 を踏 ま え、 平成30(2018)年3月2日 に 「眼 の 水 晶 体 に 係 る放 射 線 防護 の 在 り 方 に つ い て(意 見 具 申)」 を 取 りま と め て 、 関 係 省 庁 宛 て に 通 知 して い る。 こ の た め 、 厚 生 労 働 省 に お い て も 、 電 離 放 射 線 障 害 防 止 規 則(以 下 「電 離 則 」)に お け る眼 の 水 晶 体 の 被 ば く限 度 の 見 直 し等 に伴 う所 要 の 改 正 の 方 向 につ い て 、 昨 年12月(2018)か ら検 討 を 行 い 、 検 討 の 結 果 は 以 下 の とお りで あ る23)。
1新 た な 水 晶 体 の等 価 線 量 限度 の 取 り入 れ
(1)眼 の 水 晶 体 の 等 価 線 量 限 度 を5年 間 の 平 均 で20ミ リシ ー ベ ル ト/年か つ い ず れ の1 年 に お い て も50ミ リシ ー ベ ル トを 超 え な い こ と とす る こ と が適 当。
(2)十 分 な放 射 線 防 護 措 置 を講 じて も、 な お 高 い 被 ば く線 量 を 眼 の 水 晶 体 に 受 け る 可 能 性 の あ る者 に つ い て は 、一 定 の 期 間 、眼 の水 晶 体 の 等 価 線 量 限 度 を50ミ リシ ー ベ ル
ト/年を超 え な い こ と とす る こ とが適 当。
(注1)管 理 区域 において 医学的処置又は手術 を行 う医師の うち、当該業務 に欠 くこ とので きな い高度の専門的な知識及 び経験 を有す るものであって、眼の水 晶体が受ける等価線量 が20mSv/年
を超 えるおそれ のある もので、 かつ、後任者 を容易に得 ることができない場合 等が考 え られ る。
(注2)一 定 の期 間は、ガイ ドライ ン等の周知や 専門家 の指導等 によ り改善す るまで に要す る期 間や新たな放射線 防護用 品が開発 され るまでの期間 として、約3年 が見込まれる。
(注3)事 業者 は、対象 となる労働 者にっいて、可能 な限 り早期 に新 たな水 晶体 の等価線量 限度 を遵守す ることが可能 となるよ う努 めるこ とが望ま しい。
(3)眼 の 水 晶 体 に受 け る等 価 線 量 が 、継 続 的 に1年 間 に20ミ リシ ー ベ ル トを超 え る お そ れ の あ る者 に 対 して は 、 健 康 診 断 の 項 目の 白内 障 に 関 す る 眼 の 検 査 の省 略(電 離 則 第56条 第3項)は 認 め な い こ とが 適 当 。
(4)眼 の 水 晶 体 の等 価 線 量 限 度 の1年 間 及 び5年 間 の 始 期 は 、 実 効 線 量 の1年 間 及 び5 年 間 の始 期 と同 じ 日を 始 期 とす る こ とが 適 当 。
(5)施 行 時 期 は 、 電 離 則 以 外 の法 令 の 施 行 時 期 と整 合 を 図 る こ とが 適 当 。
2水 晶 体 の 等 価 線 量 を算 定 す る た め の 実 用 量
(1)外 部 被 ば く に よ る 線 量 の測 定 を 、 実 効 線 量 及 び 人 体 の 組 織 別 の 等 価 線 量 を算 定 す る た め 、放 射 線 の 種 類 及 び エ ネ ル ギー に応 じて 、1セ ン チ メ ー トル 線 量 当 量 、3ミ リメ ー トル 線 量 当 量 又 は70マ イ ク ロ メ ー トル 線 量 当 量 の うち 適 切 な も の に つ い て 行 う
こ とが 適 当 。
(2)眼 の 水 晶 体 の 等 価 線 量 を正 確 に 評 価 す る た め に は 、 眼 の 近 傍 や 全 面 マ ス ク の 内 側 に 放 射 線 測 定 器 を装 着 して 測 定 す る こ と が適 当。
(3)眼 の 水 晶 体 の 等 価 線 量 の算 定 は 、 放 射 線 の種 類 及 び エ ネ ル ギ ー に 応 じて 、1セ ン チ メ ー トル 線 量 当量 、3ミ リメ ー トル 線 量 当 量 又 は70マ イ ク ロ メ ・・一一一̀トル 線 量 当 量 の う ち い ず れ か 適 切 な も の に よ っ て 行 う こ と とす る こ とが 適 当。
(4)眼 の 水 晶 体 の 等 価 線 量 の 算 定 及 び 記 録 の期 間 は 、3.月 ご と、1年 ご と及 び5年 ご とに 行 うこ と とす る こ とが 適 当。
上 記 の 通 達 は 「放 射 線 業 務 従 事 者 の 受 け る眼 の 水 晶 体 の 等 価 線 量 限 度 」 で あ り、 「職 業 被 ば く」 の カ テ ゴ リに属 し、被 検 者 の 等 価 線 量 限 度 で は な い 。被 検 者 は 「正 当化 」の も とX線 検 査 を 受 け る とい う 「医療 被 ば く」 の カ テ ゴ リ とな る た め 、そ の 限 度 は適 用 され な い 。 しか
しな が ら、被 検 者 のX線 散 乱 線 防 護 に 関 して 多 くの 検 査 に 対 して は 、 防護 具 の 着 用 や 累 積 照 射 線 量 の 制 限 な どで 散 乱 線 に よ る被 ば く低 減 が推 奨 され て い る。
1.4自 身 の先 行 研 究
1.3で 述 べ た 水 晶 体 の 被 ば く限 度 の 低 減 は放 射 線 従 事 者 に 対 す る も の で あ る が 、 放 射 線 に よ る 水 晶 体 へ の 影 響 は 検 査 を 受 け る被 検 者 に対 して も考 慮 す べ き 問 題 で あ る。 特 に マ ン モ グ ラ フ ィ 検 査 に お い て は顔 を装 置 のX線 発 生 部 に 接 近 させ た 状 態 で の撮 影 に な る た め 、X 線 発 生 部 か ら の散 乱 線 に よ る水 晶 体 へ の被 ば くが 考 え られ る。ま た 、乳 房 お よび 圧 迫 板 か ら 発 生 す る 散 乱 線 に よ る被 ば く も考 え られ る。 しか し、マ ン モ グ ラ フ ィ検 査 に お け る被 ば く線
量 は1.2に も あ る よ うに 乳 腺 に 焦 点 が あ て られ た も の が ほ とん どで あ り、水 晶 体 に 対 す る報 告 は 少 な い の が 現 状 で あ る。
40cm
◆◆
(a)Ocm
フ ェ イ ス ガ ー ド
戸衷も蓼ヨ旨煮4母︑"﹁
総ソ 鰍
鑑 ・r.:
〕磯 竪
、 \.
羅
蕪'ノ
ハ,、 ・ 輝f
繕
(b)(c)(d)
Fig.1.4マ ン モ グ ラ フ ィ 検 査 に お け る 散 乱 線 分 布 。 画 像 上 部 が 頭 側 に あ た る 。 タ ー ゲ ッ ト/付加 フ ィ ル タ はMo/Mo、 管 電 圧 は30kV。 フ ェ イ ス ガ ー ドの 材 質 を 変 え て 評 価 を 行 っ て い る。
(a)計 算 体 系 。図 中 の 赤 い 部 分 が 計 算 範 囲 に あ た る 、(b)フ ェ イ ス ガ ー ドな し 、(c)ポ リカ ー ボ ネ ー ト、
(d)0.07mmPb
マ ン モ グ ラ フ ィ 検 査 に お け る 散 乱 線 は 低 エ ネ ル ギ ー か っ 低 線 量 で あ る 。 測 定 限 度 な ど を 考 慮 す る と マ ン モ グ ラ フ ィ 領 域 に 対 応 し た 測 定 器 は 今 現 在 存 在 し て お らず 、 散 乱 線 の 実 測 は 困 難 で あ る 。 そ こ で 、低 エ ネ ル ギ ー 領 域 に も 対 応 で き る モ ン テ カ ル ロ シ ミ ュ レー シ ョ ン を 利 用 す る こ と で マ ン モ グ ラ フ ィ 検 査 に お け る 散 乱 線 の 評 価 を 行 っ た(計 算 体 系 をFig.1.4(a) に 示 す)。
そ の 結 果 、散 乱 線 は 乳 房 か ら 発 生 し て い る も の に 加 え 、線 源 側 か ら発 生 し て い る こ と が わ か っ た(Fig。1.4(b))。 加 え て フ ェ イ ス ガ ー ド(ポ リ カ ・・一一一・ボ ネv‑一一・ト)に よ っ て 散 乱 線 が 遮 へ い さ れ る か 評 価 し た と こ ろ わ ず か な が ら 遮 へ い 効 果 が み られ(Fig.1.4(c))、 フ ェ イ ス ガ ー ドが 鉛 で あ る と 仮 定 し た と こ ろ 散 乱 線 は よ り遮 へ い さ れ る こ と が わ か っ た(Fig.1.4(d))。
1.5本 研 究 の 目的
学 部 で の研 究 よ り、 フ ェイ ス ガ ー ドの 材 質 を鉛 当 量 の よ り大 き い も の に 変 え る こ とで 水 晶 体 へ の 被 ば く低 減 が 可 能 で あ る と考 え た 。1.1で も述 べ た が 、 本 来 フ ェイ ス ガ ー ドは患 者 が 装 置 に 寄 りか か る こ とで 髪 の 毛 な どが 障 害 陰 影 と して 写 真 に 写 る こ と を 防 止 す る こ とが 大 き な 目的 で あ り、ほ とん どの 材 質 が ポ リカ ー ボ ネ ー トで あ る。破 損 しな い よ うな機 械 的 強 度 お よ び 表 情 観 察 の た め の 透 明性 を考 慮 した うえ でX線 遮 へ い 能 力 を 有 す る プ ラ ス チ ッ ク 製 材 を フ ェイ ス ガ ー ドの材 質 に す る こ とが 望 ま しい 。今 回 、鉛 含 有 ア ク リル を 見 つ け た た め 、 そ の 材 質 の 遮 へ い 能 力 を 調 べ 、 散 乱 線 の 遮 へ い 材 と して 利 用 で き る か 調 べ る こ と を 目的 と
した 。
1.6本 論 文 の構 成
本 論 文 は全6章 か ら成 り、 各 章 で は 以 下 の 内容 につ い て 述 べ る。
第1章 本 研 究 の 背 景 、 目的
第2章 フ ェ イ ス ガ ー ド材 とな り うる 素 材
第3章 モ ン テ カ ル ロ シ ミ ュ レー シ ョ ン な らび にPHITS 第4章 行 っ た 実 験 の 方 法
第5章 各 実 験 の 結 果 と考 察 第6章 結 論 お よ び今 後 の 展 望
第2章 フ ェイ ス ガ ー ド材 の検 討
2.1鉛 含 有 ガ ラ ス
透 明 な材 質 で は あ るが 、ガ ラ ス の 性 質 上 、破 損 時 の 術 者 お よび 被 検 者 の ケ ガ の リス ク を鑑 み る と、フ ェイ ス ガ ー ド材 と して は 不 適 で あ る と本 研 究 で は判 断 した が 、以 下 に 述 べ る材 質
と の 比 較 の た め こ こ で 述 べ る。
高 鉛 ク リス タル ガ ラス(K20‑Pbo‑sio2)系 を 基 本 とす る鉛 ガ ラ ス の 用 途24)に は 、 以 下 に 挙 げ る物 に 大 別 され る 。
① ク リス タル ガ ラ ス
② 光 学 ガ ラ ス
③ 電 球 ・蛍 光 灯 の ス テ ム
④ ブ ラ ウ ン管 の 後 部 フ ァ ン ネ ル 、 ネ ッ ク 、 ス テ ム
⑤ ダ イ オ ー ド封 入 用 ガ ラ ス 管
⑥ 放 射 線 遮 へ い 用 ガ ラ ス
非 着 色 に した 鉛 ガ ラ ス は遮 へ い 能 力 を大 き くで き る う え に 、 長 時 間 放 射 線 を 照 射 して も変 色 が 少 な く、保 守 が 容 易 で あ る とい う特 徴 が あ る。代 表 的 な ガ ラ ス構 成 成 分 の 質 量 吸 収 係 数 をTable2.124)に 示 す が 、PbOは 最 も効 果 的 なX線 吸 収 成 分 で あ る こ とが わ か る。 ま た ガ ラ ス の 物 性 の 例 と して 、 板 ガ ラ ス の 物 性(機 械 的 強 度)25)をTable2.2に 示 す 。
Table2.124)光 子 エ ネ ル ギ ー20keVに 対 す る 質 量 吸 収 係 数
Sio2 Al203 Li20 Na20 K20 MgO
CaO Tio2
2.34 2.11 0.55 1.69 8.49 1.92 8.81 9.12
SrO BaO PbO ZnO ZrO2 As203 Sb203 CeO2
53.41 25.08 82.87 28.54 53.54 33.19 18.19 25.32
Table2.225)機i械 的 強 度
撚
49 0.23 7.16×104 548
※1物 体 に 力 を加 え て い っ て そ の 物 体 が破 壊 され ず に も ち こ た え る 限界 の最 大 応 力 で 、 単 位 面積 当 た りの 荷 重 で 表 わす 。
※2物 体 に 弾 性 限 界 内 で応 力 を加 え た とき 、応 力 に直 角 方 向 に発 生 す る ひず み と応 力 方 向 に 沿 っ て発 生す るひ ず み の比 。
※3フ ッ クの 法 則 が 成 立す る弾 性 範 囲 に お け る 、 同軸 方 向の ひ ず み と応 力 の比 例 定 数 。
※4硬 さを 表 す 尺 度 の 一 つ で あ り、 押 込 み硬 さ の一 種 。
2.2ポ リ カ ー ボ ネ ー ト
ポ リ カ ー ボ ネv‑一一一トは1953年 に ドイ ツ の バ イ エ ル 社 が 開 発 し た 熱 可 塑 性 プ ラ ス チ ッ ク の 一 種 で 、 一 般 に ビ ス フ ェ ノ ー ルAと ホ ス ゲ ン と の 反 応 で で き る(ホ ス ゲ ン 法)ポ リ炭 酸 エ ス テ ル を 指 す も の で あ る26)(Fig.2.1)。 ホ ス ゲ ン 法 の 他 に 高 温 、 減 圧 下 で ビ ス フ ェ ノ ー ルAと
ジ フ ェ ニ ル カ ー ボ ネ ー トを 反 応 させ る エ ス テ ル 交 換 法 に よ る 製 法 が あ る27)。
H・創 鉄}・H
CH3 ビ ス フ ェ ノ ー ルA
一HCI
+ Cr鼠Cl ホ ス ゲ ン
+・一{=〉‑1昏 選+
CH3
ポ リ カ ー ボ ネ ー ト
Fig.2.1ポ リカ ー ボ ネ ー トの 製 法 と 構 造 式
衝 撃 強 さ と引 張 り強 さ の バ ラ ン ス が とれ に くい 欠 点 を有 す る も の の 、衝 撃 強 さ お よ び 引 張 り強 さ と も に高 い 値 を 示 す 。疲 労 特 性 は ナ イ ロ ンや ア セ ター ル 樹 脂 よ り劣 る が 、ク リー プ 特 性(荷 重 を か け続 け る こ と に よ る変 形)は 優 れ て い る。 ま た 、低 温 特 性 も よ く 、透 明 性 、 耐 候 性 も優 れ て い る。 物 性(機 械 的 強 度)に つ い て はTable2.328)に 示 す 。
利 点29)と して 、 衝 撃 へ の 強 さ、 高 い 透 明 度 、 優 れ た 寸 法 精 度 、 自 己 消火 性 お よび 耐 候 性 が あ げ られ る。特 に衝 撃 へ の 強 さは プ ラ ス チ ッ ク の な か で も最 高 と され 、ポ リエ チ レ ン や ア ク リル の50倍 、 ガ ラ ス の100倍 と され る。 カ メ ラ レン ズ に も使 用 され るほ ど高 い 透 明 性 を もつ うえ に 軽 い こ とか ら、航 空 機 ・自動 車 な ど輸 送 機 器 、電 気 ・電 子 光 学 ・医療 機 器 、 防 弾 ガ ラ ス の 材 料 な どに 広 く用 い られ て い る30)。
欠 点29)と して 、薬 品 耐 久 性 は あ ま りよ い とは い えず 、 特 に ア ル カ リ剤 、 溶 剤 で は劣 化 す る 。そ の た め 接 着 剤 な ど の使 用 が で き な い 。エ ス テ ル 結 合 を持 つ た め 、高 温 高 湿 度 の環 境 下 で は加 水 分 解 す る。 引 張 強 度 を 超 え る力 を か け る と、白化 して 透 明 度 が 著 し く低 下 す る 。表 面 の 硬 度 は 高 く な く、鉛 筆 のHB程 度 の硬 度 で あ るた め 、硬 い ブ ラ シ な どで 掃 除 を す る と傷 が付 き 、 透 明性 が 低 下 す る が 、 こ の 弱 点 を解 決 した 加 工 を ほ ど こ した 製 品 も あ る31)。
Table2.328)プ ラ ス チ ッ ク 製 材 の 機 械 的 強 度
,繕1 碁
勉 惣
貯 嘉 毎 葺
麟 験雄 礁 「
》 ・轡 ㌦1
黛 譲臓 齢 細
ll
灘 晦ヂク塑 、
闇,
γ}i
≡1
観 レ隔 駈
…紗 か「ず箪略
1夢
き 藝
̲融 隔 ジ 器
̲̲麟 馴 。1垂1̲。 讃̲,セ 。 ダ̲弾:i ,鍾 嚢・ 葵 ∵
引 っ 張 り 強 さ ※1[MPa]
曲 げ 強 さ ※2[MPa]
曲 げ 弾 性 率 ※3[MPa]
圧 縮 強 さ※4[MPa]
ア イ ゾ ッ ト衝 撃 強 さ ※5[kJ/m2]
ロ ツ ク ウ ェ ル 硬 度 ※6[Mス ヶ一ル]
ビ ッ カ ー ス 硬 度 ※7[kgσ ㎜2]
75 117 3200 124 2.7 100 196
65 90 2300
78 15 67 127
53 66 2100
‑
2.6
88
一
K‑7113 K‑7203 K‑7203 K‑7181 K‑7UO
‑
一
て げ※※※※※※※
物 体 に 張 力 が加 え られ る とき 、破 断 に至 るま で の最 大 の応 力 試 験 片 が破 壊 に 至 る ま で の 最 大荷 重 を基 に算 出 した 曲 げ応 力 の 値
二 つ の 支 点 に試 験 片 を水 平 に乗 せ 、 中央 上 部 よ りクサ ビで 曲 げ 荷 重 を与 え、 破 断 す る 際 の最 大荷 重 圧 縮 力 を受 け て変 形 や 破 壊 す る とき の圧 縮 荷 重 を材 料 の断 面積 で 除 して 表 す
衝 撃 に 対す る強 さ(靭 性)を 評 価 す る衝 撃 試 験 の方 法 材 料 の 硬 さを表 す 尺 度 の 一 つ で あ り、押 込 み 硬 さ の一 種
ビ ッカ ー ス硬 度 のみ 別 の 資料25)を 参 考 に してい る。
2.3ア ク リル
ア ク リル は メ タ ク リ ル 樹 脂 の 一 種 で あ る 。 メ タ ク リ ル 樹 脂 と は メ タ ク リル 酸 エ ス テ ル の 重 合 体 の 総 称 で あ る が 、一 般 的 に は メ タ ク リル 酸 メ チ ル を 主 成 分 とす る 。合 成 法 と し て は 多 数 の 文 献 、特 許 に 報 告 さ れ て い る が 、世 界 中 の メ ー カ ー が 工 業 的 に 採 用 し て い る 方 法 は 、ア セ ト ン シ ア ン ヒ ド リ ン(AcetoneCyanoHydrin:ACH)法 の み で あ る32)。
翫蓋.
Fig.2.2メ タ ク リル 酸 メ チ ル の 構 造 式
ア ク リル 樹 脂(acrylicresin)が 工 業 化 され た の は1934年 で 、 ア ク リル 酸 エ ス テ ル あ るい は メ タ ク リル 酸 エ ス テ ル の重 合 体 で 、透 明 性 の 高 い 非 晶 質 の合 成 樹 脂 で あ る。特 に ポ リメ タ ク リル 酸 メ チ ル 樹 脂(Polymethylmethacrylate:略 称PMMA)に よ る透 明 固 体 材 は ア ク リル ガ ラ ス と も呼 ばれ る。擦 る と特 有 の 匂 い を 発 す る こ と か ら、匂 い ガ ラ ス とも 呼 ば れ た 。ま た 、 ポ リカ ー ボ ネ ー トな ど と共 に 有 機 ガ ラ ス と も呼 ば れ る33)。
大 き な 特徴34)と して 光 学 的 性 質 と く に透 明 度 が 極 め て 高 く 、 可 視 光 線 は ほ とん ど完 全 に 透 過 す る とい う もの が あ る。 ま た 、比 重 も小 さ く、 曲 げ 強 度 と 曲 げ 強 度 が 高 い 。 表 面硬 度 も
比 較 的 高 く、傷 が つ き に くい な どの 多 く の優 れ た性 質 を もっ が 、衝 撃 強 度 や 熱 変 形 温 度 な ど が 若 干 低 い 。 物 性(機 械 的 強 度)はTable2.3に 示 す 。
2.4鉛 含 有 ア ク リル35)
熱 可 塑 性 、可 燃 性 、一 部 有 機 溶 剤 可 溶 性 樹 脂 で 着 火 温 度 は約4000Cで あ る。吸 収 線 量1000 Gyの 照 射 を受 け た後 に も機 械 的 強 度 は 大 き く変 化 しな い 。 用 途 と して 、 一 般 撮 影 室 な どの 観 察 窓 や 鉛 当 量 の 高 い も の で は 防 護 衝 立 な どに 用 い られ て い る。た だ し、この 鉛 含 有 ア ク リ ル は鉛 を 含 有 して い る た め 、廃 棄 処 分 す る場 合 に は 法 令 各 自治 体 の 条 例 な どに 従 っ て 公 認 の 産 業 廃 棄 物 処 理 業 者 ま た は 地 方 公 共 団 体 な どへ 委 託 し、適 切 に 処 理 しな け れ ば な らな い 。 光 透 過 性 は 鉛 当 量 が 大 き く な る に した が っ て 低 下 す る が 、 本 研 究 で 用 い る鉛 当 量 厚 で は ポ
リカv‑一一・ボ ネ ー ト同 様 の 透 過 率 が あ る。 物性(機 械 的 強 度)はTable2.3に 示 す 。
第3章 モ ン テ カ ル ロ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
3.1モ ンテ カ ル ロ シ ミ ュ レー シ ョ ン と は
モ ンテ カ ル ロ シ ミ ュ レー シ ョン は 乱 数 を利 用 して種 々 の 確 率 現 象 を シ ミ ュ レー トす る確 率 論 的 数 値 実 験 法 で あ り、主 に複 数 の確 率 的 要 素 を含 ん だ 事 象 を対 象 と して お り、電 気 や 水 道 な ど の ラ イ フ ライ ン の 信 頼 性 評 価 や 交 通 シ ス テ ム の 予 測 を は じ め と した 工 学 分 野 を は じ
め と して 様 々 な 分 野 に 応 用 され て い る。 放 射 線 分 野 にお い て は1950年 代 か ら放 射 線 の物 質 透 過 計 算 に利 用 す る提 案 が な され 、 コ ン ピ ュv‑一一・タ の発 達 に伴 い 脚 光 を浴 び て い る36)。
放 射 線 と物 質 と の 間 で 起 こ る相 互 作 用 はす べ て 量 子 力 学 的 な 確 率 分 布 に 従 っ て い る。 放 射 線 の 物 質 中 に お け る振 る舞 い は 、複 数 の 確 率 的 要 素 を 含 ん だ 事 象 で あ る。モ ンテ カ ル ロシ ミ ュ レー シ ョン で は 、 多 くの 数 の放 射 線 粒 子 の 一 個 一 個 の 振 る 舞 い を観 察 す る こ と に よ り、
求 め よ う とす る放 射 線 輸 送 に 関す る物 理 量 を 評 価 が 可 能 に な る 。
モ ン テ カ ル ロ法 で は 、計 算 効 率 を 向 上 させ る た め 、放 射 線 粒 子 に物 理 現 象 を識 別 可 能 な ウ ェ イ トW(便 宜 上 、粒 子 に ラベ ル した 任 意 の 実 数 値)を 定 義 し、粒 子 に物 理 現 象 の 整 合 性 が 成 立 す る よ うな 人 為 的 操 作 を行 っ て い る。モ ン テ カ ル ロ法 に よ る放 射 線 の 輸 送 計 算 で は 、ま ず 個 々 の過 程 で 乱 数 を発 生 させ 、線 源 の どの 位 置 か ら、ど の く ら い の エ ネ ル ギ ー と ウ ェ イ ト
を 持 っ た 粒 子 を ど の 方 向 に 発 生 させ る か を決 定 して い る。 そ の 後 媒 質 中 の ど の 核 種 と反 応 し、 どの よ うな エ ネ ル ギ ー と ウェ イ トを 持 っ た 粒 子 が どの 方 向 に散 乱 す る か も個 々 に 発 生 させ て 決 定 して い る 。 粒 子 の 発 生 か ら消 滅 な い し体 系 の 外 へ 漏 れ 出 る ま で の ひ とつ の 過 程 を ヒ ス ト リ とい い 、 統 計 精 度 を 上 げ る た め に こ の 過 程 を何 度 も繰 り返 す 。
3.2放 射 線 分 野 で の モ ン テ カ ル ロ シ ミ ュ レー シ ョ ン の利 用36)
放 射 線 の 物 理 特 性 や 放 射 線 量 の 測 定 ・評 価 に は 電 離 箱 検 出 器 や 半 導 体 検 出 器 を は じめ と して 種 々 の 測 定 装 置 お よび 測 定 技 術 が 応 用 され て い る 。 しか し測 定 対 象 とす る放 射 線 の 物 理 的 性 質 や 線 量 に よ っ て は測 定 が 不 可 能 な 場 合 が あ る。例 と して 、人 体 内 の 吸 収 線 量 を1次 成 分 と散 乱 線 成 分 に分 離 で き れ ば 吸 収 線 量 の 高 精 度 評 価 に 非 常 に 有 用 で あ る が 、 実 際 に こ れ ら を分 離 して 測 定 ・検 出 す る こ と は 物 理 的 に 不 可 能 で あ る。仮 に 可 能 で あ っ て も 放 射 線 と 検 出器 と の相 互 作 用 な どの 特 性 に よ り、 測 定 装 置 か ら直 接 出 力 され るデ ー タ だ け で は 正 確
に評 価 で き な い 場 合 が あ る。 こ の よ うに 実 測 定 が 非 常 に 困 難 な 問 題 に対 して は モ ンテ カ ル ロ シ ミュ レー シ ョン を利 用 して 解 決 法 を 見 出 す こ と が 非 常 に有 効 な 手 段 とな る。
モ ン テ カ ル ロ シ ミ ュ レー シ ョ ン で は 次 々 に お こ る放 射 線 と物 質 との 相 互 作 用 の 結 果 を 確 率 分 布 に 従 う乱 数 を サ ン プ リ ン グ す る こ とで 決 定 し な が ら、 物 質 中 で の 挙 動 を数 値 か らた ど る こ と が で き る。 これ を照 射 条 件 に 合 わせ て 多 数 回 繰 り返 す こ と で 実 際 の放 射 線 照 射 で 起 こ る物 理 現 象 を コ ン ピ ュ ー タ 上 で 再 現 で き る。ま た 、任 意 の 位 置 に 理 想 的 な 検 出器(カ ウ ン タ)を 自由 に 設 定 で き るた め 、実 際 の 照 射 で は 測 定 が 不 可 能 な 物 理 量 を も予 測 す る こ と が 可 能 に な る。
放 射 線 分 野 で 用 い られ て い る例 と して 、ICRPが 採 用 して い る線 量 当 量 換 算 係 数 は 、 人 体 組 織 を模 したICRU球 に種 々 の エ ネ ル ギ ー を持 っ た 光 子 お よ び 中性 子 線 が 照 射 され た 場 合 を想 定 し、モ ン テ カ ル ロシ ミュ レー シ ョ ンに よ っ て 算 出 され た 数 値 で あ る。他 に も放 射 線 医 療 に 関 して モ ン テ カ ル ロシ ミ ュ レー シ ョン を利 用 した 様 々 な 解 析 ・研 究 が 報 告 され 、放 射 線 分 野 に お い て モ ン テ カ ル ロ シ ミ ュ レー シ ョ ン技 術 は 不 可 欠 な も の とな っ て い る。
3.3PHITS37)
粒 子 ・重 イ オ ン輸 送 計 算 コ ー ド(ParticleandHeaVyIonTransportcodeSystem:PHITS)は 任 意 の 体 系 中 に お け る さ ま ざ ま な 放 射 線 の 挙 動 を 、核 反 応 モ デ ル お よ び 核 デ ー タ を 用 い て 模 擬 す る モ ン テ カ ル ロ 計 算 コ ー ドで あ り、 日本 原 子 力 研 究 開 発 機 構(JapanAtomicEnergy Agency:JAEA)で 開 発 され た 。加 速 器 工 学 、放 射 線 医 療 、宇 宙 工 学 な ど多 くの 分 野 の 研 究 に 使 用 され て い る。 特 徴 と して 以 下 の 項 目が あ げ られ る38)。
・ 入 力 デ ー タ形 式 が 任 意 フ ォ ー マ ッ トのASCIIコ ン トロ ー ル
・ ユ ー ザ ー がFortranプ ロ グ ラ ム を 書 く必 要 が な い
・ 幅 広 い エ ネ ル ギ ー 範 囲 の す べ て の 放 射 線 の 挙 動 を解 析 可 能
ま た 、 核 反 応 と核 デ ー タ を組 み 込 ん で い る こ とか ら よ り正 確 な 放 射 線 輸 送 解 析 が 可 能 で あ る が 、解 析 対 象 の 形 状 が複 雑 な 場 合 は 形 状 作 成 が容 易 で な く、高 精 度 の数 値 解 を得 る た め に は 大 量 の 粒 子 の 挙 動 を 追 跡 す る必 要 が あ る こ とか ら計 算 時 間 が 非 常 に 長 くか か り、 日常 的 に発 生 す る 多 くの 解 析 対 象 に 手 軽 に使 用 す る こ とが 難 しい 欠 点 が あ る39)。Table3.1に 他 の モ ンテ カ ル ロ計 算 コ ー ド との 比 較 を示 す38)。
Table3.138)他 の モ ン テ カ ル ロ 計 算 コ ー ド と の 比 較
鍼 羅 騒,鵜 灘叢 鱗 灘 灘 難 巽灘 羅灘 灘 雛 蟻灘
GEANT 高 エ ネル ギー 物 オブ ジ ェ ク ト指 向 。世 界 中 で 開発 した 様 々 な核 反
GEANT4 C+÷
Etc. 理 、 医療 、宇 宙 応 モ デ ル や ツー ル を統 合 す るプ ラ ッ トフ ォ ー ム
CERN、 加 速 器 、 医療 、 加 速 器 の 遮 へ い 設 計 で実 績 多 数。 ヨー ロ ッパ を 中
FLUKA FORTRAN
INFN 宇宙 心 に普 及 。
電 磁 カ スケ ー ド計 算 専用 コー ド。医学 物 理 分 野 で
EGS KEK、SLAC 医療 FORTRAN
実績 多 数 。
ITERが 主 目的 。CADと の 親 和性 や 可視 化 ソ フ ト
SuperMC FDS 核 融 合 、 医療 C++
ウェ ア に優 れ る。
JAEA、 加 速 器 、 医 療 、
PHITS FORrRAN 加 速器 、 医療 、意 中 分 野 で 幅広 い実 績 。
RIST、KEK 宇宙
開 発 機 関:Geant(GEometryANdTracking)、CERN(EuropeanOrganizationforNuclearResearch)、INFN(Nationallnstimte forNuclearPhysics)、SLAC(SLACNationalAcceleratorLaboratory)、KEK(HighEnergyAcceleratorResearch Organization)、JAEA(JapanAtomicEnergyAgency)、RIST(ResearchorganizationforInformationScience&
Technology)、