園児集団においての
ランキングとリーダー
鳥
付属幼稚園 浜
全 全
川
田 居 上
正
鈴 シ
夫
子 ズ
田中富貴枝
本年度入園︵1年保育︶児の社会的行動について︑われわれは4
月以来研究をつづけてきたが︑だんだんと観察の焦点はリーダーと
ラγキγグにしぼられてきた︒第2学期末ひとつの実験を試みた︒
それは観察集績の総決算的仕事をしてくれた︒この集団の社会的構
造が浮び上り︑各園児の位置や役割が照らし出されて︑りーダーの活躍やラγキングの形成が精細にうつし出された︒ここにその実験
を中心とした報告をまとめあげたのである︒
︵文中幼児名は出生順位の序数であらわしている︒表2︑表3参
照︒赤門はゴヂツク︑女児は数字を青組は○でかこみ︑赤門は白
抜きとした︒︶
実 験 日 時1957・12・14︵土︶晴9・30−10・37
実 験 対 象全園児︵2組︶︒欠席者をのぞく︒
計画・討議・整理鳥居︑浜田︑川上︑田中
原 稿 執 筆全般・鳥居︑諸資料・川上︑田中︑鳥居実験時分担⁝実験具︵三輪車︶の場記録・田中︑他の場の記 録・川上︑全般観察・浜田︑8mm35mm撮影
・鳥居
1
実験前の歴史的状況
4月は不安と緊張の時期だつた︒なかまに入らないこどもが7︑8名いた︒これには気性がはげしく自己が強いためと気の弱いため
とあり︑その後しだいに社会化されてゆき︑2ケ月ぐらいまでには
くはなれごVは消失したが︑しかし現在でもその性格はなにかのか
たちで残っている︒赤組ナγバー・ワンの38︑同組でかれとならぶ
乱暴さをもつ42︑女児第1位の⑪などが前者の部類に入るが︑いま
もまだなかまから孤立している︒後者に属する16・24・⑧・㊥など
は︑かわらずおとなしい︒
全園の第一人者4ははじめから活発だつた︒約半数がすでに園生活の経験者︵2年保育・3年保育からの転入︶であった関係もあろ
うが︑1︑2週間立つうちに︑大多数の者は元気に遊び出した︒い
ま青組のラγキγグ6位の15はあばれまわり︑置引29bこの21の粗
暴ぶりもめだってきた︒
女 計 男
∩∪=﹂ 8じ∂ 8nU4 つ0 71
7n∠ じ0∩∠ ∩∠41 1 り0
000Q り000 貧∪ρ0∩∠ ワム 4
数数数数数数一席籍席籍席在欠 在欠在欠
働組担 諭 教青三
盆
駆動 組細
四二
㎝
韻 噸 縮数 糀硫 熟舗
表 L
5月6月は争斗の期闇であり︑毎日
けんかがたえまなく起つた︒強い子︑
弱い子があらわれてきた︒ラγキγグ
確定前のニホγザルやウサギの社会を
想い起させる︒ ︵今西錦司編﹃日本動
物記﹄些些伊谷純﹇郎﹁高崎山のサ
ル﹂河合雅雄﹁飼いウサギ﹂参照︶こ
れとともに女児の餌鳥からの分離が起
り︑女の児だけであそぶ傾向が起って
きた︒ 6月末ごろから幼児たちが頭にいた
だこうとする者がでてきた︒18・42の
一
11
一
姓がこどもたちのあつまりの中から聞えた︒前者は全国的に有名な
カステーラの老舗の長男であり︑後者はタクシー屋の長男で︑いつ
れも自動車で送り迎えされていた︵後からはやめてもらったが︶こ
とが︑幼児たちの尊敬をえたと思われる︒がむしゃらの気ま︑ぶり
を発輝する55も園長のこども︵長男︶ということで一目は置かれて
いた︒ 夏休みに入る7月中旬にかけてこれらの者はひっこんで︑こども の世界での実力者が登場してきた︒青組の肛︑赤々の瞼などで︑けんかに強い腕力での最高者である︒しかし一方7月ごろからけんかの仲裁行為がさかんにみられた︒げんざい園のリーダーである4の姓が口にされだしたのもそのころからで︑たしかにその点では彼はもっともきわだっていて︑われわれの目をもひいた︒ 9月10月ではボス的な現象がみられた︒ボスとその一味ができ
た︒年長の青組の強者の聞にラγキγグが作られてきた︒もっとも
験欠実話
通到刻をのン組てキ両じン
グンンラキ 併
同齢 両
順こ計いつ序強ごの
ウ位
ス順 モ
位 順 生
出
組
一一一一一 一一一 一欠一刻= 一欠一十一 遅 =
一10169一=一=3一 一87=2=
列列 列列列参宮714 10参参参9不不 不不不 列 列参12参36不不 列 定参85確一3不 末 列211参 不
61911110 四204017欠 21121858
列 22X715外2遅欠
4箇1019 7162011欠 18121335 17861519 2遅欠
17651 29153 87208 1 1 211 11 115223位14 上 42019
4 ︻﹂︐
勧
賂
〃6〃〃〃 〃11〃7〃 81111 119
〃〃〃〃〃 〃〃鱒厚〃〃 〃〃〃〃〃 〃〃〃
12345 67890 1234567890 12311112 222
青
組
=欠=一= 欠=一欠 一=一一 一一
一 ==11 一=一4 =一5一
一
列列参参︻76不不 列列 列一応参59︑=参41不不 不 列38一2一 一参一 不
29 S1 Q3 R0 Q5@3338371626 2732欠284 131439334 363135 819外910 列 倶171356 1115欠73 4218116 12遅20
2=6︻ =一4一5=
1
3= 一 一=
〃〃〃0〃 11〃〃1〃 2111 1111〃11〃 〃11 ノ7 ︐ アドア 酢 日45678 90123 4567822222 23333 33333 112 −舳厚〃〃〃〃 〃〃〃
90123 45634444 444
赤
組
おの い てど︒ て つんた し かとし・脱 わほ定いを いは推な域 た方しの 淋のだ定定 だ画名二十 て赤数がだ し︒︒グま をたいン在 ウめなキ現 モきらンは スてかう下 かせわめ以 回らでた番 何とのの数 来後い障は 以験な故て 園実し期い 入門て一つ はだつのに
鷺鷺野 騨鷲弊
2考 ロ く くく イ ロハ 男︶ ︶︶ 児
表備 ㌔スり者19ラ獄糊 ω
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獣 26
と
ての ごつ 順 強い
ゆ
枢 一 一
昏怠
民訴順こ列いつ序強この
か位ん
け順
順 位 良 組 出
=一一一一 一欠== 一=一欠
一3X2−43121075111欠4681516
354782 952610 63417
4〃511 6〃〃71111 8719
ド ア ノノ ノ ノ ド ダ ド ρ0ノノノ ︐ノ︐ノノ 〃〃〃〃〃
日静
①②③④⑤⑥ ⑦⑧⑨⑩⑪⑫ ⑬⑭⑮⑯⑰
青
組
一一欠一一一 一一=一一 一一欠
786133 592244 501
962115 834752 043
0−り乙︐︐−︐11︐
〃〃〃〃〃〃 − り4り0 ノ 7
7︐ノ〃 ノ ドド
日昏 〃〃〃 〃〃〃
⑳⑲⑳⑳㊧㊥ ⑳㊥⑳@㊥㊥ ⑳.④㊥
赤
組
た し し 随 は 灘下柳.
運
年少組では58が暴威をふるうだけでついてゆく者はなかった︒あそびも1学期の2︑3人あそびから︑5︑6人あそびに移っている︒
男・女児の階層もほとんど完成してきていて︑10月のある日市内見学猷行った市電の申で腰かけているのは男児ばかり︑女児はみんな
立っている光景に引率者は驚きの目を見張つた︒1学期にはもちろ
んなかったことである︒
11月ごろからボス的なものが影をうすめて︑りーダー的なものに
かわってきた︒自分勝手なきま︑をする専制者についてゆくものは
減ってゆく︒あらそいに対して判決を下して裁き︑弱い者の正しさ
をもみとみて彼の場所を保ってやる︒みんなの世話をし︑りードす
る︒リーダーがいるとあそびもたのしい︒みんなをあつめて︑新しい
あそびを考え出し︑おもしろい集団あそびができる︒ボス的性格を脱しきれない21などをおさえて︑4がクラスの最有力者に上ってき さん﹂︑ ﹁Yiさん﹂と呼ぶ︒あるが︑ ﹁9・35i⑪のものを7がなぶった︒が近くにいた関係もあろうが︒10・131⑪21にもんくいう︒21だまって下をむいている︒﹂の記録がある︒1学期には女子の強いもので数人以上︵⑪︑③︑⑳︑⑫︑@など︶は男子のおとなしい子とけんかして負かしていた︒㊧・㊥は男子とつかみあいをした︒だがこのごろでは男子とのけんかは︑しかけられて立つ受身である︒20︑28などが女の児を泣かすと女児のこれらの上位者がつっかかっていってあらそいとなる︒そこまでは行ってもはげしいけんかとなると泣かされてしまう︒ 12月末までに青組では10番目ぐらいまでのうγキγグがだいたい推定できるようになった︒赤軍でも数名の強者がいるが︑1番﹇をの
ぞいてはその順位は確認できなかった︒両組を通じてのうγキγグ たひ4をリーダーとするグループの勢力は増し彼が青組のリーダーの位置を占めたのは︑11月末ごろだったろう︒年長組にラγキγグができあがった︒4につゴく数人の上位者の顔ぶれがわれわれにも平常観察できるようになった︒︑強弱がわかるにつれて︑そしてラγキγグができるに応じてけんかの数は急激に減ってきた︒けんかが起つたとなると︑はげしいものになった︒ 12月になると4は女児からも容認され︑つづいて両組を通じての全園児のりーダーとしてあおがれるようになった︒相手の女の児の髪をひつばりまわすほどのはげしいたたかいをして断然女軍で衆を圧している⑪は男児ともけんかするが︑4にはさからわず︑﹁Y一︵4の性︶ これは実験後の12月21日のことで ⑪7をたたく︒4
13 一
}
になると︑実験前は未知数であったと言ってよい︒
こんどの三輪車提出に類するようなケースは︑11月23日の︑不ツト
・クライミツグの施設だろう︒男児の上位者がはじめの間独占して
あそぶ風がみられた︒女子はあとまわしになった︒同日2台の木馬
も入った︒男児が女児を圧倒しているので︑それぞれ一頭つつあて
がったが︑この区別はわりあいよく守られに︒4が﹁ならべ﹂と言
って列をつくらせた︒そばに強い連中がもう集っていた関係もあっ
たが︑ラγキγグが出た︒強いのは順列に割りこんだが︑もんくを
言われなかった︒この遊具が園児たちにとっては幼稚すぎることも
あって︑できごとは静かに行われた︒21は寄りつかず︑4も乗りは
しなかった︒当園では遊且ハ施設がわりあいに多いためだろうか︑順
番をひどくけんかしてあらそうというような場面はこれまでみられ
なかったし︑遊具を使用してのあそびのときは1列にならぶという
しつけもほとんどやったことがなかった︒この指導強化の必要を感
じさせたのは︑三輪車の場合だつた︒
12月10日 12台の三輪車が等分して与えられた︒男児は青︑女児
は赤と車軸が色分けされ︑青組赤組もハンドル軸の色でそれぞれ区
別された︒交代して乗るように注意もされた︒けれども男児の強者
︵青組の上位︶が他の組や女児のをおかして乗り︑だんだん侵入はひろがって行った︒とくに数番目ぐらいまでの上位者はほかの者と
かわろうとせず︑青組の4・21︑赤.組の38などはいつまでも乗り廻していた︒男児ほどでないにしても︑女児の大部分も乗ってみたい
のだ︒まして男児になると︑たとえ家庭にはもっていても乗り廻し
たくてたまらないのだ︒しかしこれらのこどもたちはうらやましそ
うに立ってみていたり︑あるいは他のあそびをしている︒ネット・
クライミγグに上った赤組の数人がかたまって自分にちの組の車を
みてかる︒ブラγコの連中はゆられながら三輪箪をみている︒それ 不一1−1ーー1−lI一ε寸ぐllIIーーー1−1−1−l111
鵬
﹈1﹂﹂﹁﹂ ﹁コ﹂ ブランコ ζハシ︑ラ媚
図
取
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卿 囲鴇 ネ塀
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L 園
園
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藁負童量組系
垂組青基.戯遊
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}
}
㎝
皿
㎞皿
…一
…ロ
一
一㎝
陣一
でも女児は早くからあきらめて︑ほかのあそびにふけり︑男の児た
ちもそのうちに自分たちのやっている遊びに夢中になってゆく︒ 12月11日 自由あそび難業︵9−一10時︶の観察 4・21・38が
乗りまわしている︒青組にラγキγグがみられる︒認知で乗ってい
る者はわっかである︒女の児も少しのっているだけ︑12月下旬にな
ってから分つたことだが︑女子で三輪車によくのるのは︑ひとりあ
そびの傾向のこどもである︒ ︵⑬⑰⑮⑳㊥㊥㊥など︶立っている児
に浜田がきいたら﹁のりたい﹂という︒声をあげて乗り過ぎてゆく
58ノ話したら︑かわったが︑さしずして次には自分がまた乗っ沈︒4
14 一 一
・21ときどき交代する︒けれどもなんども乗る︒順番をとって待って
いる者もほとんどのれない︒10時50分以後30分受壷のできごと一
おとなしくて乗れない子をかわらせてのせたら︑強い者がからか
う︒21がネット・クライミγグの上に立って棒をふって﹁かかれ﹂
と言った︒数名が弱い乗車者にむかって行った︒4に注意してかわ
らせると乗った者は気がねしている︒
12月12日 今日もずっと早く登園して三輪車に乗り出す︒弱い者
はあとからきた強い者にとられてしまう︒昨日までは乗るだけだっ
たが︑今日は少し落ちついてきて場所を変化させたりしてゆっくり
乗っている︒三輪車での﹁ごっこ﹂も始まった︒9時50分現在 赤組で乗っているのは58だけ︒女児と弱い児は合せて3名︒上位者の数
名がラγキγグ順に列を作って乗り廻してあそんでいる︒38が5・
21フつぎにならんでいる︒学習の時間をのぞいて4と58はほとんど
乗りつづけていた︒記録をとっている鳥居の近くで︑﹁Yi︵4の
姓︶ざんにゅうてやる︒﹂という声がきこえた︒ ︵10・05︶赤組の
⑳だ︑浜田がたずねたら︑三組の㊥が三輪車をかわってくれないと
いう︒全園のりーダーとしての4を確認できた︒10時14分1③が4の
ところへ言いにきた︒4はすぐ行って︑﹁Tl︵23の姓︶なしてと
るか︒﹂と叱って三輪車をとりかえし︑さっさとこちらへきてしま
った︒③は車に乗り︑23は木かげてしばらくべそをかいていた︒おしごとはおさっと買物サイフ作り︒21が15をたたいて泣かした︒や
がてぼつぼつとび出してきて三輪車に乗り出す︒7が田申のところ
へ﹁のせんとばい﹂とつげにくる︒しばらくたってから女の児の乗
りすてたのをさっそくとって射つだ︒昨日も女の児のを﹁よかろ
う﹂と先生に言ってのった︒この児はひととあらそわず︑それでい
て要領がよくうまく乗る︒4が車を降りて部屋に入った︒通りかかっ
た16が﹁Yt︵4の性︶さんとか﹂と言ってとらない︒4の乗っ た車は乗り捨ててあっても誰ものろうとしない︒だいたい専用車ができているようだ︒21が14から車をとって乗っていった︒しばらく歩いて物色していた14は7のをとってしまった︒ ︵連鎖攻撃︒サルとウサギのについては︑前掲﹃日本動物記﹄参照︶ 12月13日 ときどき降雨するため実験を明日に延期した︒三輪車に乗りたいのだがのれない︒今日は園児の様子がおかしい︒なにかいらいらしている模様を感ずる︒池や台へ砂を投げこんで︑浜田から注意される︒
∬ 実
験
︿折表に記述V
経
過
皿 補 足 と 総 括
i 階層
浜田が三輪車をわたしたあと︑そのあにりに︑ざわめきうごく渦が
起つた︒15をのけて車にまたがった4の姿がかいまみられた︒かた
まりから抜け出てみなの方をふりかえり︑ニヤツと笑って4が乗っ
てゆく︒10秒だらずの時間だつた︒21を先頭に十数人が口汝にしゃ
べりながらお祭りの行列のようにおどりながらついてゆく︒行列あ
そびがみられるようになったのもリーダーができ︑ラγキγグがあ
る程度つくられてからであった︒ほかの者は︑しばらくは数人が残
っていたが︑他のあそびの場所へ散って行った︒三輪車が1台しか
与えられなかったのだから︑相当の混乱が起り︑はげしいけんかの
15 一 一
ふたつみっつは出るだろうと予想していたわれわれにとっては案外
だつた︒この幼児集団が予想以上に強く︑しなやかな社会組織を
もつていることを示してくれたのである︒ラγキγグさえもほと
んど存在しない奈良公園のシカの群れ︑種族のちがいによる上下
の階級とラγキングは持つが︑全体を統率するリーダーを欠く京
都動物園のサルの集りが︑突発事件や外敵出現に際しておちいった
大混乱に対して︑ボスと強固なラγキγグと階層的分岐をもつた野
生ニホγザルの集団の一糸乱れぬ行動をくらべてみるとよい︒︵﹃日
本動物記﹄の前出論罪の外︑川村俊蔵﹁奈良公園のシカ﹂︑徳田喜一郎﹁京都動物園のサル﹂参照︶ここの園児集団では階層的分節も熟成し︑ラ
γキγグも相当な範囲まで結節し︑全園児を統制できるりーグーも
後成されているのである︒
女児はわれわれの予想通り早くから三輪車外の遊びに心を向けて
いつ忙︒女子でもこの年令段階では三輪車に乗ってみたい者もある
数はいるのだから︑女児が場をはつれたことは男女の階層の存在を
あらわしている︒男児について概略的に言えば︑上層者は三輪車の
場に︑下層者はほかの場におもむき︑中間層のいくらかが三輪車の
かたまりにまじり︑大部分はほかのあそびに入ったのである︒この説明はしかし︑まだランキγグが広範囲にはできあがっていず︑両
組を通じての階序を作る機会もこれまでなかったといってよいのだ
から︑中閥層以下については根本的傾向を述べたにすぎないと言っ
た方がよいかもしれない︒男児の全部が本心は乗りたいのだから︑
各所であそびながらも三輪車に関心をもつている様子がみられた︒
ブラγコに乗っている連中の顔は三輪車に向いており︑ジヤγグル
にのぼった者たちも車に注目している︒ ︵時刻区分930の欄参照︶
29ニ⑪はタイコ僑の前に立って三輪車の動きをじっとみつめていた
ル︑園舎に入ってからもつづいていた︒ ︵930140︶砂場では43 が車の方をみていたし︵940︶︑12はそばで記録していた川上に
﹁三輪車1台しかないじやないか︒﹂と不平を言った︒ ︵930︶
実験途中の10今ごろ︑13が母親にともなわれて登園した︒ ﹁2︑3日前から︑頭がいたいとか︑おなかがい沈むとか言って行きたがら
ない︒どうもおかしいのでやってきた︒﹂と言う︒三輪車にのれな
いためだと話して︑実験のあと午後いっぱい乗せてやった︒職員の
世話︑早目の登園︑スキをみての乗車などで︑実験富みんな1回は
乗っていた︒実験後の12月21日午前11時ごろ︑部屋の申では学習が
行われていたが︑弱い連申が園庭せましとばかり乗りまわしていて
ふきだしたくなるほどだった︒
実験始めは三輪車を忘れかねた者たちも︑時間が立つにつれてあ
きらめてめいめいの遊びに浸って行った︒
鴨1一 ランキング
ω 三輪車の行列に加わった15名のうちに年少の赤組の者が10名も入っていたことも思い設けなかったことである︒青組の序列の中
にきりこむことができるのは58ひとりだけで︑あとせいぜい数名の
ものが十数名の青膚のあとにならぶのではないかと老えていた︒58
が何番に入るかがこの実験のひとつの目的でもあっにのだが︑流感
のため欠席したのは惜しまれた︒赤組のならんだ者の大部分は強者
である︒︵28405742275259︒順位表参照︶他の3名は弱く︑41と36は
開始後5分以内にあきらめて去っていて︑がまん強い46だけが1回
乗せてもらってからよそへ行っている︒強い者といっても赤組と
してであって︑青黛といっしょになるならばそんなに上位にはゆか
ない︒1月に行われた﹁強い順ごっこ﹂の両組合同の場合に20番以
内にならんだのは42と実験日欠席の58だけである︒そうするとうγ
キング形成途上にあった赤組の園児の序列意識の不足が︑ワツとな
らばせたと考えてよいだろう︒両組を通しての強さからいえば︑毛
一
16
}
つとならんでいいはずの青魚の上位者たちが数名しか参加せず︑あ
との者はいち早く場を捨てたということは︑かえって抱負の順位制
の確立とその範囲の広さを物語っている︒同慶の下位の20が年少組
の間にまざりこんでいたのは︑あとでも紹介するように︑この児の
やはりランキγグ意識の未熟の性格のためである︒
実験時聞卜われわれが記録や写真をとったり観察したりしており
さらに全盛が出場して衆目環視のうちにあったことも︑根本的な影
響はなかったと老えているのだが︑園児たちの行動にブレーキを与
えたものがいくらかはあっただろうと思う︒
@ 青組のこどもの行列と整列の順番はよくうγキγグをあらわ
している︒ ︵表二のランキング欄をみよ︒︶赤組の上位連中は︑たと
えば行列の順序をみても推定ラγキ7グ順ではない︒ラγキブグ
︵以下Rであらわす︶1位の4が乗っているときの行列順序をラγキγグ順位で示せば2−415131であり︑2︑3分後には415と修正され︑乗車順番は一121413−5⁝となっている︒R・3
の14は病後であって︑4の指揮振りの強いこんな場合には4の配下であるR・4の5に先をとられたのである︒乱された順位はただ
す︒4︵R・1︶が15︵R・6︶をのけて乗る︒ ︹930︺5︵R・
4︶が18︵R・5︶をおしのけて乗る︒︹934︺14︵R・3︶が18
︵R・5︶の前に出る︒ ︹同時刻︺ 赤組の59︵同組R・3︶が27
︵同組R・7︶の前に出て︹940︺乗車している︹9⁝46︺のもう
γキγグ順位の回復の例となろう︒
上位者はならんでいる列の申へわりこみをやっているが︑これは
強さに相当のへだてのある者の前にである︒4と15が46の前にわり
こみ︑21と5が42の前に入っている︒︹935︺車から降りた18が7入の赤組列︵内14だけ青組︶を尻目に4115−2115のつぎに入
︑りこんだ︒︹9⁝37︺病気上りの14はおとなしかったが︑30分後には 赤組の3名をぬいて乗車している︒時刻区分1011には降りて間もない15が全様にこの59!27128のかたまりの先に立っている︒ せっかく順序に入ったものの上位者のこんなわりこみのためになかなか乗れず下位者は去って行った︒5720︹932︺︑52313641︹934︺︑35︹940︺︑46︹9⁝50︺︑40︹1010︺27は去ったり︹1000︑1016・30︺来てみたり︹1011︺している︒骨組の上位集団で去ったのは18︵この集りでは最下位︶だけである︒ ︹1004︺ 普通乗車時闇は1分なのに︑4・21などの最高位者は︑時聞も長く悠然と道草をして乗り廻した︒乗車回数は第5表のとおりである︒
牛 乗 車
0
15①
のの娘④4 21
Φ⑳
① 39
28①
の
限沙
⑳ 46 40娘
⑳
14限
①ゆ
5
①の
27
\
\即売 7 ρ0 ︻﹂ 4 りO ∩∠
1
乗った者は46をのぞいて
両組の上位者ばかりであDる︒青組ではうγキング
グでは欠席の1番と中途退 を ま1番から6番まで︑赤組糊
キ場の2番と4番をはぶい ン
乗がじゅうぶんに確立して 弾いているが︑ラγキγグ 数も八丁の方では順位が働 く うた8番までである︒度数 ン
詠いない玉上では序列がく
爽るつている︒R・6の15の
回数が多いのは乗車に対
する執心の深さ︵いちば
ん始めに三輪車に手をかけたのも彼である︒︶であり︑赤雪のR・6の
28フ比較的多いのや上位に入らない46の乗車できたのも︑かれらの
我慢強さの牲質にもとずくものとわれわれはみている︒訟ばり強さ
一
17
一
のない27は家庭的つきあいをしている⑱がのせた︒これらのことは︑
4が長い時間独占して乗っているのではないかという想像を裏切っ
てあっさりと1周りで交代したこと︑年少組の者が何回ものれたこ
となどと合せて︑前述の職員の臨場も影響したのではなかろうか︒
の ランキγグ形成の根本的な基礎は︑身体的な力の緊張関係で
ある︒スモウ順位とラγキγグ順位をみくらべても︑だいたい相関の関係がうかがわれる︒しかしそのことよりもわれわれの興味をよ
ぶのは︑相当数の不相応である︒だから体格とか体力とかの外に精神
的な力︑心理的な力︑社会的な力が含まれていることはたしかである︒R・1の4は小柄でスモウでは5位であるが︑まけてもまけて
も﹁こい﹂と立ち上る︒21はすぐれた体格と体力をもつている︵スモ
ウ順位2位︶ためにランキγグ2位を保持している︒スモウ順位10
位の14は精神的なシγの強さのために第3位にあるのだろう︒5は
体位的には上位ではなく気性もはげしいとはいわれぬが︑4の追し
よう者という社会的態度がR・4に上らせている︒18はからだつき
もよく知力もあるが︑性格に堅固さを欠くため少し落ちて5位︵ス
モウ3位︶になっている︒・tというような案配だ︒
もっとわれわれの注目を惹くのは︑ラγキγグに入らないこども
たちである︵青組178111316赤組の不参捌者全部︒表2参照︶この
中には争いがいやで加わらない者がいる︒スモウ順位1位の一は︑か
らだも1番たくましく走りつこも2番だ︒蛤はやせてからだは小さ
いがわぎで勝ち︑スモウは2位であり︑競走は1番﹇である︒1は実.験
時聞中︑ブラγコとその横のタイづ橋でほとんど終始した︒13につい
ては既述したが︹階層参照︺途中から入場しネット︒クライミγグ
とそのそばの砂場で過した︒不参加の他方は意地が強くてのもので
ある︒︵223︶2はスモウ順位︐7位でラツキγグも8位ぐらいと想定
されるのに︑ひとのあとにならぶのをいさぎよしとしない︒もっとも 不参列のこの積極的・消極的の区別は︑もっと深く掘りさげたら裁然と線を画することはむつかしくなるかもしれない︒1月8日第3学期第1日︑全児が乗車できるようにするために︑青組では班を作り︑じゃんけんで日をきめさせた︒円満な性質とみられている7が﹁勝ってものってやるもんか﹂と言った︒そのくせ彼は当日がくるとまっさきにせがんだのである︒こうゆう自己意識は︑鳥居が養育院児︵412才︶に対して行った三輪車実験では観取できなかった︒ 実験のときに三輪車に向わなかった幼児たちの社会心理学的構造も単純ではない︒仲よしグループ仲よし相手などのソシオグラム的構図もあらわれているが︑この報告では省略した︒ひとりあそびの性格のこどもたち︵女児については大部分既述︶のうち⑪⑳8132225
T5ネどには︑実験経過表にもその傾向が出ている︒⑪は自我のは
げしさのための孤立である︒また20は各場所をうろつき廻っている︒たくさんの写真に彼がうつっているが︑どの場面でも集団の外に
いる︒ ω 実験後の進行 実験時巽中の4と21のいさかいの尾は降園す
るまでつづいた︒部屋で椅子をふり上げるところまで行った︒12月
21卲゚前10時20分三輪車集団をひきつれてい沈4が︑車にのらずに
いた21を﹁MI︵21の姓︶三輪車がなか﹂とからかったことからけ
んかとなった︒くみあいから始まって︑21が棒をふりあげる︒4が頭
をかかえる︒4が石を手にもつ︒21が逃げて園舎裏から3mばかり
の竹をもつて大上段にかまえるケγゲキとなり︑4はオデコにつブをこしらえて田中へ言いに行った︒1月10日の記録一8454が
女の児の三輪車をとってのった︒4114158の順で走らせている︒
18ェ13のをとった︒13はブラγづへしよぼしょぼと行った︒そこへ19
が乗ってきて︑借りて乗ったが︑1分もたたないうちに請求されて
とりもどされた︒4114−38118の行進︒4が車をかえてくれとい
18 一 一
い︑けっきょく18のとかえた︒92013まだブラγづで頭を下げて
すねている︒その方面には誰もいない︒家にかえってからあばれることだろうと話し合う︒行列が長くなった︒4114158118155i
19P27︒5は4の車の横について走る︒2ージヤγグルのすみでひと
りで車に乗って行列に加らない︒10時保育始まる︒自由あそびにな
って21は19の車をとって乗った︒誰かが4に告げたらしく︑4が遊戯室から出てきて﹁田中先生MiがK一人13の姓︶の三輪車をと
った︒﹂と告げる︒21は﹁やる︑よかっと︒﹂と車をわたす︒この
あと行列は三輪車あそびをした︒︵後述︶行進が右まわりして戻って
くるときに︑18が14のあとに入ったら58が﹁おれ3番ぞ﹂と叫んで
押し出し︑﹁ここへこい﹂と自分のあとへっかせた︒しばらくあと
15ェやってきて38の前へ行こうとしたときも︑やはりおしのけた︒
15ヘ58の後についた︒4が撮影していている鳥居のカメラに興味を
起して降りてくると︑三輪車集団も近くにあそんでいた者もどっと
おしよせてきた︒1列にならびなさいと言ったら︑はからずもラγ
キγグ争いをさらけ出した︒4がひしめきをよそにいつまでもブア
イγダーをのぞきこんでいるのをきりあげさせると︑そのつぎの順番で大げんかが起つた︒21がつぎにみようとしたら︑﹁つぎはおれ
ぞ﹂と58がこぼんであらそいとなり︑21にとびか︑つて行った︒つ
かみあいになったとき4が21にだきついておさえ︹写真5︺て︑2
人の間に入り︑21の方を向いて両手をひろげて止めた︒58の後にな
らんでいた5の前に14がわりこもうとしたら︑38がたたいてあとへ
下らせた︒この児のはげしさは将来沓冠3位に進ませるかもしれな
い︒彼は2番にみおわったら︑﹁やめだ︑やめだ︒﹂と直宮ラノゾ
キをぶちこわした︒みようとした15とあらそい︑彼の首筋をギュウ
ツと2︑3分もつめって泣かせてしまった︒
1月11日午前10蒔20分ごろ︑クイづ橋鮒近で三輪車の行列が止ま ってなにか騒動が起つ沈︒そのうちに21が職員室にやってきて﹁Ki︵38の姓︶が石を投げた︒﹂とうったえた︒あとでしらべると近頃行列集団からはなれていた21がやってきて︑4114138一⁝⁝の行列の14の前にわりこもうとして38とのけんかになったのであった︒ラγキγグ2位の21としてはあたり前の行動だつたろう︒それを38が拒否したのは︑階無意職はそれほど深刻でなく︑ただ順番を守ろうとしてわりこみの不正を怒ったためであろうか︒1もちろん順位意識がないわけではないが︒以前には彼のあとについていたのだが︵たとえば12月12日越記録をみよ︒ ︹本稿1﹁実験前の歴皮的状況﹂︶それを忘れたのか︑あるいは21不参列の昨今の順位での3番という強い表象のためだったのか︒翌13日彼の父親がやってきて︑ ﹁4番になったから幼稚園へゆかん︑と︑だだをこねるがわけがわからないのででてきました﹂と話した︒三輪車事件をきいて事情がのみこめて帰って行つ沈︒ 1月17日郵便局見学に出発の際︑赤組の37が﹁強い順にならべよ﹂と言って第1列に42と38︑第2列に34と28をならばせ︑自分は35
ニともに第3列に入った︒これに刺激されて︑いっそ強い順にな
らばせてみたらということになり︑教育上の立場も考慮はされた
が︑翌18日︵a・m・935155︶敢行した︒その結果が第2・3表
の強い順ごっこの序列だが︑だいたいにおいてはわれわれの観察し
てきたところと一致しているといえよう︒先生のいいつけだっ沈の
で不参列者はでなかった︒20だけが列に見出せなかったのは︑例の
とおりである︒きょうは面白いあそびをするからいっぺん強い順に
ならんでみようね︑というようなことで︑始めは組別︑男女別に︑つぎに男児だけ両組合併で行った︒けんかが一方ではあそびでもある
幼児たちは案外無邪気にならんでいる︒しばらくで上位の方のさわ
ぎはおさまつ元︒末尾の方はしっかに緩慢に動いて静まった︒列の中
19 一
[
ごろの騒動はなかなか止まなかったひ男児の両組合せての順番のと
きは︑大蛇ののたうちのように腹部は動揺をつづけていた︒18と15と
くみあってあらそい︑15が投げられて下った︒ところがあとできいて
みると︑どっちが強いかやってみようというのでやったそうで︑勝つ
た18が15の上位にならんだのである︒︵写真8︶降卒では4が順位を
しらべた︒7をつれて歩いて︑﹁これより強かか﹂ときく︒やっと11
のところへきて11が﹁つよか﹂といわなかったので入った︒7自身は
﹁ぼくの方がつよか︒﹂とはいわなかった︒赤組では38が自分まで
の順を作った︒1番先頭に42︑つぎに40を置いて自分は第3位にな
らんだ︒この児の行動にはこの日以後ガラツとかわった風がみられ
た︒祖母や両親も兄弟げんかなどにあらわれるその強暴さを心配し︑
園でも指導はしてきた︒ ﹁けんか1番はいけない︒べんきょう1番
でなくては︒﹂というような家庭でのいいきかせがきいてきたのだ
ろうか︒きいてみると﹁TI︵40の姓︶くんよりスモウも弱い︑け
んかも弱い︒﹂という返事だつた︒ ﹁Tl︵40の姓呼びすて︶︑
おまえK ︵38の姓呼びすて︶より前か︒﹂と誰かからいわれ
て︑40がおかしな顔をする︒33ははじめ2番にならんだが︑38やみ
んなからいわれてあとへ下げられた︒42はがむしゃらなひどさがあ
り︑1学期にボス振りを発輝したこどもである︒全児でのときには
4︑21につづいて42を立て38は3番にならんだ︒赤鼠の三位以後の順位決定はもたついた︒39が﹁ぼくはTl︵40の姓︶より強いの
に︒﹂とこぼした︒41は女児連中から赤ちゃん扱いされる子だが︑
ビリから3番目に立っている︵赤平だけのとき︶のを︑42がひっぱ
り出して中ごろに入れた︒あとでまた元の位置にもどっているので
きいてみたところ︑42になにか言われたためらしい︒
全男児の順位をきめるときは青組が赤組の列へ突進して行ったこ
とも影響して︑赤面の者が後の方に連続してならんでいる︒下組の 8がびとり粗製のかたまりに入ってビリから2番に立っているひ彼はいちばんしんがりの25とともにきわだった孤立児だ︒28が﹁YiI︵36の姓名よびすて︶がくれば1番ビリよ﹂と言ったが︑36は泣きベンツ児だからそうなったかも︑しれない︒ 女児の方はさわぎもなくならんだ︒青組では⑨がならべた︒③がまんなかごろにいたのを︑﹁あん真うしろではないたい﹂と言って2番にすえた︒⑨は同意随一のリーダー的性格の所有者で︑⑤とともにあそびのグループの中心となっている︒あそびの計画をしている数人の女児に田中が遊戯室へゆくように話したとき︑﹁Nl︵⑨の姓︶さんがゆうぎ室にはいれんと言うた︒﹂と答えた︒⑤のグルプのメンバーはおとなしい子ばかりである︒⑨のさしずでならべられたので︑けんか順位とはところどころくいちがうところの理性的な序列になっている︒⑪は冷然と先頭に立っていた︒赤組では誰もならべ役をしたものはなかった︒1番の㊥はがむしゃらのところがあり︑2番の㊧は彼女よりもつと孤立的な性質がある︒3番の@6番の⑳にはりーグー的なところがある︒㊥⑳などは弱いけれどもみんなからかわいがられていて︑4番5番にならばせられた面がある︒@は泣きベソで︑このときもビリをはがゆがって泣いた︒ ⁝m リ 一 ダ 一 ラγキγグ社会に入るということは︑その階序集団の上位者に服従することでありナγバーワ7の部下になるということである︒1月14日午前10時ごろ遊戯室で御殿を作り︑4がひとり中に入って︑その前に141381181321319一⁝⁝という序列が廊下までつづき︑﹁おれたちはYlのけらいそ﹂と言っていた︒5は4に対して︑みつぎものをしたり︑へつらい的な行動をするのがしばしばみられた︒実験時3番にのれたのも4がいたからであり︑彼の上位保持
自身が4に負うている︒12月23日︑46が包紙︵クリスマスかぎりの用
20 一 一
紙︶を4にやった︑23も何かやった︒赤々の38も4には一目を置い
て﹁Y くん︑Y一⁝くん﹂と呼んでついている︒入園当初彼が
いちばん最後まで社会化せず︑みんなの中に入らないので︑母親が
その頃同方向から通っていた4に頼み︑やっと付添をやめたという
事情もあるだろうし︑あるいは全高一致で押す4には敬服するとい
うこともあるかもしれない︒4に反抗できるのは21だけである︒し
かし4と対立するということは現在のこの園では仲間はつれになる
ことである︒21が数名のあつまりを指揮したケースは前述した︒ ︹
1﹁実験前の歴皮的状況﹂12月11日記録︺12月12日午前10時40分ご
ろ14が18の三輪車をとろうとしたとき︑しかった︒しかしこんな例
はごくまれであって︑彼がりーグーになれるためには︑場がかわる
ことによってか︑彼自身の内部的成熟によってか︑いつれにしても
自分本位の性格が社会的なものへ止場されることが必要である︒12
月下旬10名ばかりのものがかたまって彼をとりまき︑この上位者を
つるし上げている風景からみられた︒21は衝動にまかせてけんか相
手をひどくやっつける︒女の児をもよく泣かせる︒38には気分にひ
きずられての狂暴さがある︒1月20日午前10時0分青組赤組がまぎ
っての8名ばかりが三輪車であそんでいた︒38が﹁川上先生のとこ
まで競走しようや︑ね︑やろうや︒﹂と声を高くして言つだがいうことをきかず︑2名︵10と32︶だけが彼とならんで走った︒これに
反して4はとことんまで相手をやっつけない︒自分の腕でたやすく
処置できないときは先生に告げる︒もちろん相当の武力がなければ
上位者になれないから実力はもっているのだが︑暴力をさけて理性
に訴えるのである︒ 4はよくみんなの乗っている三輪車の修繕をしてやる︒1例をあ
げると12月11日午前9時40分ごろ女児の車をとってのり故障をしら
べてわたした︒鳥居は精神薄弱児を牧容する浦上学園でリーダーが 隣室の年少のこどもたちのコマをなおしているのを観察したα リーダーがいる方が遊びが面白いことは泌剛言した︒1月10日︵a・m・9師55︶三輪車行列︹前出︺は4の指揮のもとにいろいろとかわったあそびをし沈︒﹁みんな三輪車にぶつかれ﹂﹁やめよ﹂﹁ズック︹靴︺をひとつとれ﹂ ﹁一足すてろ﹂﹁一列にならべ﹂5が4にわきから告げ匂して﹁青組と赤組と2列にならべ﹂﹁1列になった者げんこつ﹂︵これも5の進言︶33が﹁Ytくんアイスクリ屋になるけん︒﹂といって三輪車をひっくりかえし︑列を﹁アイスキヤγデー︑アイスキヤγデー︒﹂と売りあるく︒ ﹁うしろに乗れ﹂と言って後向乗車︑﹁こんどわね︑こぎやんせろ︒﹂という4の指図で︑うつぶし乗車の行列ができ上った︒︵1005︶12月4日︵a・m・10鱒45︶園庭の柵外で数人が大きな石を動かしていた︒ ﹁Y一を呼んでこい︒﹂という声がきこえた︒行ってみたら4がきていて
﹁ほりやよいのさん︒﹂と拍子をとって力をあわせた︒半分ほど動
いた︒4が小石を下にあてがった︒みんなよぼうという声があって
﹁みんな集れ︒﹂と誰かが言ったが徹底しなくてこない︒18が2︑
3人をつれて行って大きな材木をもつてきた︒あてがって4のかけ
こえでやり︑とうとう大石を移動させてしまった︒
リーダーは集団員を指揮し統率するとともに︑集団の秩序を維持
し安定を保持する責任をひきうけなければならない︒4は実験時聞
で︑行列のときは乗車者のわきについて廻り︑自分が降りたときし
ばらくは列に入ることもあったが︑たいていは列の横にいて監督し
た︒下駄箱前の整列で弱い連中がならんでいるときから﹁つぎは一−
つぎは一﹂というさしずが始まった︒養育院での鳥居の実験では
意想外にも女のリーダτがあらわれて︑名前をよんでつぎつぎに乗
せ︑ひつばってやった︒幼いこどもも乗せてやった︒自分を始め強
い者は二回以上乗っている︒男の一番強い児はあとになってりーグ
一
21
一
1がいなくなるといつまでも乗っていて︑けんかが起つた︒しかし
車がとり上げられるまではなさなかった︒4の仲裁行為については
いくつかの場合を紹介してきたが︑なお一例を加えておこう︒11月
25冝ia.m・1115︶20が23にくみしかれている︒23と7が﹁く
るい﹂をしていたのを20がじゃましたそうだ︒4などやってきて20
分後とけた︒しばらくして20が23にとびかかってゆこうとしたら︑
4が両手をひろげて︑ニヤツと笑った顔で例の大見得を切って止め
た︒長崎公園のニホンザルについての鳥居の観察記録だが︑ナγバ
ーワγは向いあっている両頭の間に入って緊張を解消させ︑いちば
ん狂暴性のはげしい20.悼のメスがけんかしているときには︑彼女の
上に馬乗りになっておさえてしまう︒
12月21日︵a・m・230︶保育中で先生がい忙が︑4は﹁ラジオがやかましい﹂とスイッチを切った︒そのあとの自由あそびの時
間︑﹁Y一−つみきしよう﹂といって数人が遊んだ︒⑩が﹁Ylーー
さんがよいといった︑あいているからいいわね︒﹂と言って男児用
の木馬に乗った︒先生2人がいたが先生にはきかなかった︒青組担
任の田中はこのごろ﹁こどものりーダーにはかなわないわ︒﹂と慨
嘆している︒
リーダーの個人的特質について言えば︑体力知力ともに人並み以上である︒体力がなければこの段階の集団では服従されず︑知識や
技能が劣っても軽べつされる︒入園時の非社会化幼児の中には︑ゆ
うぎができないための孤立があった︒しかし体力のナンバーワンが
リーダーになるとはかぎらず︑知能の最優秀者がりーダーになるわ
けでもない︒リーダーは機敏で適確な判断力の所有者でなければな
らない︒彼はまた積極的な精神をもつていなければならない︒外向
的で社交的な性質が要求されるわけだ︒くだいていえば︑よく気がつ
べ.気がきく.よく索くという性格がこの殺階のりーブーに共通し ているようである︒4などの性格もそうで︑悪く言えば︑顔をみる・教師などの顔色を伺う・お調子ものといった面も出てくる︒さきほど述べた精薄施設のりーダーは︑キャッチボールなどうまくできるが︑知能指数はその園の申下だつた︒だが世話好きだつたし︑ひとに対して敏感だつた︒T精神病院の男子ではなかなかのイγテリも多くいるのにりーダーはよたもん出身だつたし︑女子の陰然たる指導者は﹁あねこ﹂の経歴をもつていた︒ リーダーの生活歴をわれわれは考えねばいけない︒4の兄も本園のりーグーだつた︒4・21・38はともに家庭の職業は医師であるし︑18
ヘ土地の旧家のこどもである︒浦上学園長の話によると︑リーダ
ーになったこどもは家庭がよいそうだし︑二つヨγや農業などの貧
困家庭のこどもは下積み的性格を身につけているという︒4もみか
んをたくさんもってきてもらえることを自慢したことがあるが︑家
庭自身の上層的風格がこどもたちの上位意識を作ったこともみのが
されない︒21・18・38・42はみんな長男である︒長男とか多数姉弟
の長女とかの事情がりーダー的性格を形作ることもあるだろう︒ひ
とりつ子に対するお山の大将さん式の育てかたが︑こどもに高い自
意識を植えつけるということも働いていよう︒ニホンザルの集団で
も腕力の最強者がりーダーではなく︑氏と育ちがりーダー成立過程
に重要な作用をしている︒ ︵今西錦司﹃ニホγザル研究の現実と課
題﹄団二日掛︒ω<o一・H・Zo●H参照︶さらに近隣のあそび仲間におい
てのやくわりが指導者的要素を養成した事情も考えられる︒これら
の前歴についてはわれわれの調査は進んでいない︒
現在の園児たちの間のラγキングやリーダーが小学校入学以後大
きく変動してゆくことは見通される︒ラγキγグやりーダーについ
ての記述を読んだ人は幼児たちの社会に存在している弱肉強食のみ
にくさに眉をひそめボスの横暴にいきどおりをおぼえるかもしれな
22 一 一
い︒そうゆうぴとたちにはわれわれは暗さばかりでなく︑明るさをも
感じとっていただくようお.願いする︒牛島義友博士は児童の根底に
未開人的なものを置き︵﹃小学生の心理﹄︶田中冨次郎氏も幼児の集
団を未開野蛮の社会に類比させている︒ ︹﹁子供の社会生活﹂﹃幼児児
産教育講座﹄第一巻︺動物的である︑未開人的であるというだけでそ
れを批難する人は︑彼自身も動物的︑未開人的︑あるいは中世人的
層をそのうちにもっていることを知らないのである︒現代人も動物
から1歩1歩進展してきたのだ︒動物の社会にも相互扶助は行われ︑
20「紀の人類の世界にも﹁弱肉強食﹂はある︒われわれは発達史的
認識をもたなくてはならない︒イヌに対する食事実験で︑鳥居は強
弱の順位をみたが︑救急行為の実験では︑イヌの集団になんらかの
救助行為があらわれることを認識した︒ニホγザルではほとんどの
餌づけ場所で強固なラγキγグとリーダーの存在が記録されてい
る︑が同時にグループの聞の愛.情的行動や救助や保護の行為がうか
がわれる︒青組ではうγキγグがはっきりと形成されりーダーが活
躍しているのに︑年少の赤組になると形成・成立途上にあるという
ことは︑ラγキγグや順位制がより高い発達段階の産物であること
を示している︒言葉をかえていうとそれらは集団のよりよい生活様
式であるということである︒伊谷氏︹前掲書︺や水原洋城氏︵﹃日本
ザル﹄参照︶が考えるようにラγキγグやりーダーは﹁集団の知恵﹂
であって︑われわれ現代人の目にはどんなに低劣にみえても︑前の
段階にくらべればすぐれた集団組識である︒養育院の実験にあって
は︑リーダーが乗る者を交代してひっぱったが︑順番はなく︑列を
作ることも起らなかった︒こんな風に述べても︑順位制がこのまま存
続することを望んでいるのではなく︑いまみられる性格のリーダー
がいつまでもその位置を保ってゆくとは老えていない︒にだ教育に
おいてはレディネスがあっていっきょにおとなの理想の段階へ引き あげようとすることは有害であることを言いたいだけであるσおわりに指導上の問題にふれて置くならば︑実はその難かしさを感ずるばかりである︒知能はすぐれ活動力も盛んだがともすると狂暴な行動を示すこどもに︑ ﹁おとなしくせよ﹂﹁ひとの先に立つな﹂というたぐいの訓戒だけでは︑矯正できるものではない︒ひどくしかれば︑親や教師の顔色をうかがう裏表のある人聞になってしまう︒臨床心理学や精神衛生学などの立場からの処理も必要だし︑場をかえて集団力学的に.鼠毛スナリテイを改造してゆくやりかたも有効だろう︒けれども︑たとえば自由と平等の民主主義社会の理想型の人格を考え︑すべてのこどもをひとつの型に鋳込もうとするならば︑それは夢に出てきた斧で現実のビルデイγグを建てようとするような︑こっけいな︑そして危険な仕事になるだろう︒こどもたちが現在現実に生活している集団においてどんな位置にあり︑どんな役割をつとめているかの実態を確認して︑それにもとつかせてゆくことがただしい指導の第1歩ではないだろうか︒ 1958.1.5 2 あ と が き
知能指数順位についてはこの報告では公表を見合せねばならなか
ったので︑めだった者について一言だけしておく︒
最上位t381965⑨⑪㊥⁝⁝ 上位一513⁝⁝ 中位i1141839⁝⁝ 中の下位一421⁝⁝ 下位12042⁝⁝
女児2名をのぞいて一・Q・は百以上である︒ ︹住田式知能検査
法による︒︺
23 一 一