長崎大学工学部研究報告第11号 昭和53年7月 81
松 本 川 河 口 に お け る 塩 水 根
古 本 勝 弘 *. 武 政 剛 弘 *
On the Salt Wedge in the Mouth of Matsumoto River
v d
'D
Katsuhiro FURUMOTO
(Civil Engineering)
Takehiro T AKEMASA
(Civil Engineering)
Most of the rivers, which empty into the Sea of Japan with a very smal1 tidal range, are of the weakly mixing type, where fresh and salt waters are little mixed and respectively form separate layers. On the results of the field observation made on the mouth of the Matsumoto River being one of above rivers this paper represents. Then the characteristics of saline wedge are explaned due to the measured data of the river discharge, the tide, the longitudinal and vertical distributions of salinity and velocity and so on.
Further, a mathmatical mode1 of saline wedge on the river with various f10w area has been considered and, assuming gradual1y.varied flow, the simultanious ordinary differential equations for surface leveI and interfacial1eve1 have been obtained. This system is solved numerically by the modified Euler‑Gauss's method, the characteristics of flow area being used at the boundaries of the domain. This method have been used for the calculation of the saline wedge in the Matsumoto River. Comparisons of the computation results with the measured have been made. Consequently it was made out that this proposed method was fairly useful.
1. まえがき
潮位差の小さな海に流入する河川の河口部では,河 水と海水の混合が小さく両者は明瞭な二層をなし,河 水は表層を流下し海水は底層を模状に侵入し,いはゆ る塩水棋が見られる.このような流れは河口部の流れ の一般的分類では弱混合型の河口密度流あるいは河口 二層流と称せられている.河口からかなり上流まで遡 上し滞留する海水は,そζから取水される工業用水,
農業用水の塩分汚染を惹起したり,河水lとより上流か ら運搬されてきた懸濁物質を沈澱堆積させ河口部を埋 没させる等の災害を起し,工学的にもかなり重要な問 題を提供している.
昭和53年5月13日受理
*土木工学科
一定幅の水平床矩形断面水路における塩水棋の界面 形状について, Schijf‑Shonfeldll は水深一定として 上下両層に対する平均流の運動方程式と連続の式から 基礎式を誘導しその解を得た. それ以来,Farmer‑
Morgan21,浜田一掘口3) その他の研究者lとより界面 形状の近似解あるいは異った水路条件に対する解が得 られた.しかし,それらの式を計算するに当っては界 面に働く勇断抵抗すなわち界面抵抗係数の具体的値 を知らなければならない.界面抵抗係数については Keulegaがり Ippen一Harleman5),Lofquist6),浜 田7) 岩崎8) 椎貝91 玉 井10】等によって理論的実 験的に研究がなされている.実河川における界面抵抗
82 松本川河口における塩水喫
係数は,大坪一福島11),金子12》,中村13),須賀14)
等によって実測され,その性質,,大きさなどが明らか になって来た.しかし,永路実験,現地観測ともそれ らの値は相当散乱するため,一定の表示では示されて おらず,更に資料の蓄積が必要である.
この報告は,昭和52年7.月14,15日の大潮時と同年
・9月6,7日の小潮時に実施した松本川河口における 塩水襖の観測結果と河川断面形状の変化を考慮した二 層流界面形状の計算法とその適用について述べている.
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F三g.1Location plan of Matsumoto River
2.松本川について
松本川の本流である阿武川は中国山脈の西端,阿武 山地にその源を発し,=山口県萩市を流れ日本海に注ぐ,
流路延長約82.2kn,流域面積635屈の河川である.阿 武川が流送した土砂は河口にデルタを形成し,こ、に 萩市が拓けている.阿武川はそのデルタに達する地点 で二本に分岐し,北に流れる松本川と西に流れる橋本 川とになる.松本川河口附近の平面図をFig・1に示 す.松本川河口部は航路および泊地として利用されて おり」波浪の侵入と沿岸漂砂による河口閉塞を防ぐた め導流堤が200鵬程度左岸に沿って延長されている.
右岸680糀地点に合流する姥倉運河は幅員約20肌,
延長約800飢の水路で萩漁港と連絡しており,淡水 の流下はなく,漁船の泊地として利用されている.左 岸620肌地点に合流する新堀川は萩市内を流れて西 の橋本川と連絡しており淡水の流下量は非常に少ない.
塩水襖の侵入がある河口から1.5kmまでの河道平面 形状の特徴はFig.1に示されているように,姥倉運 河,薪堀川の合流点より上流はユ50鵬程度の幅員で 変化が少ないのに対しそれより下流では幅員を減じて 導流堤の取り付き部で約40糀となり,河ロ部狭窄が 著しいことである.
河川横断測量は流れに沿う50㎜間隔の断面で行な われており,その最深点を連ねた河道の縦断形状は,
Fig.5に塩水梗の形状と\もに示されている.また平 面図に示した位置の横断面形状をFig.2に示してい
る.同図には塩水模界面の平均的位置を入れている.
550篇より上流には土砂の堆積した浅瀬があり,上層 の淡水は下層塩水との勇断抵抗のみでなく,その河床 抵抗をも受けて流れている.
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Fig.2
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Shape of flow area in 6 sections of Matsurnoto River indicated on Fig.1
5.塩水襖の実測
昭和52年7月14,15日の大潮時と同年9月6,7日 の小潮時の2回に亘って同内容の観測を行った.観測 内容とその結果について項目別に述べる.
(1)河川流量
上記2回の観測時期はともに好天が続いた後であり 河川流量の変動は小さいと考えられたので,それぞれ の観測期に1回つつ河川流量の測定を行った.測定は 潮汐波の影響が及ばない河口から3.5km地点におい て,広井式プロペラ流速計により流速分布を測定し流 量を求めた.その結果は2回ともほゴ同流量であり,
古本勝弘。武政剛弘 83
90苓20.6㎡/sec (7,月14日14時), ρo=20.7㎡/sec
(9月6日15時)であった.
(2>水位変化
塩水模の侵入が見られる河ロから2km区間の短い 領域では潮汐波は極く短時間で伝播し水表面はほ強水 平であると考えられる.このためFig.1のPoint 3 に量水標を打って,この点のみで水位(潮位)の時間 的変化を読んだ.その水位変化をFig.3に示す.潮 位差は大潮時でほゴ70㎝,小潮時で15c彿程度であ った.外海の潮位は時間的に滑らかに昇降していると 予想されるが観測水位はFig.3が示すように滑らか な変化はしていない.量水標の読み取りは注意深く行 なわれており波浪の影響とは考えられないので,閉鎖 性の強い水域であり長週期の,例えば副振動のような,
波が存在していたことが予想されるが連続記録を取っ ていないので明確なことは言えない.
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1977.7.15
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Fig.3 Variations of water level under mean sea level at Polnt 3
(3)塩分濃度分布
塩水懊の形状,動きを捕えるためFig.1に示した 6地点(邸宅から0.20,0.50,0.75,0.93,1,16,
1.50k皿)における電気伝導度の鉛直分布を測定し塩素 濃度に換算した.塩水模を理論的に解析する上では河 口の境界条件が問題となり,河口での測定が必要であ ったが,そこは狭い水路である上に航行する船舶が多 く観測用ボートを止めるには危険であったため河口で の測定はなされていない.一隻のボートで川を上下し 上記6地点に順次停止し観測する方法をとったので各 地点での同時観測は実施されていない.従って,6地 点の同時刻の塩分々布を知るためにはその前後の時刻 の測定値から内挿しなければならない.各地点での鉛 直方向塩分々布の一例をFig.4に示す.躍層厚は Point 6を除けば40〜50㎝であり,界面は極めて明 糠である.Point 5までは下層には全く稀釈を受けな い海水が侵入している.また,躍層厚が下流地点ほど 大であるという傾向も上層中の塩分濃度が流下に伴い 増加するという傾向もそれ程顕著ではない.このこと から淡塩水境界面は安定しており,塩水の上層への連
行がかなり小さいことがうか負える.
淡塩水の境界を塩素濃度10%。にとり,その界面形 状の一例をFig.5に示す.同歯には小潮時の界面形 状は一本しか引かれていないが,観測期間中の界面変 動はその線を中心に上下10㎝の範囲内である.一大潮 時の界面変動の振幅は17π強であり,水位変化の振 幅70㎝に比してかなり大きい.下げ潮では下流側の 界面から降下しはじめ,上流に波及することが認めら れる.上げ潮時の状況はわずかしか測定にかかってお らず明確にはつかめていないが,河口に近い地点ほど 水位上昇よりも界面上昇の方が速く,そのため界面の 勾配が大となり上流への海水の侵入が促進される傾向 が見える.
Fig・4に示されているPoint 6における塩分左回 が特異であるが次のような原因によると思われる.
Fig.5に示されているように1.2〜1.3kmにかけて 浅瀬があり,潮位が高い一時期だけ塩水がこれを越流 し,その上流に溜るものと考えられ,越流塩水が高濃 度でないこと\越流時の混合の結果,図のような塩分 分布が形成されたものであろう.
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1977. 7」 ].4, 9:00
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Point 5 Point 6
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10 20 Cl Concentration 〔%)
Fig.4 Vertical distribution of Cl concentration at Point 1〜6
(4}流速分布
塩分濃度の縦方向観測とは別項目として塩水襖の1 断面における淡塩水の流動状況を知る目的でPoint 3 において舟を固定し,塩分と流速の鉛直分布を65分の 間隔で測定した.Fig.6に大潮時の代表的な流速分布 を示している.淡水層は順流,塩水層下部に逆流が現 われ,流速分布は密度流特有の形を呈している;指図 に記入されている矢印はその時刻の界面位置として塩 素濃度10%oの位置を示している.紙面の関係上観測 された全ての時刻の分布を描くことは出来ないが,小
84 松本川河口における塩水模
潮時の分布形も同図と大差ない.たゴし,流速の変動 幅は非常に小さくなり,順流,逆流の層厚も変化しな Surface工.evel(M)1
at 9:00 July 14
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Measured( 7.14 )
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situation at Distance
fo:r 9:00 July 14 from Mouth
層0 1.0 (1(m)
Fig.,5 1sohaline of 10 %o Cl concentration and calculated 6urve for salt wedge
4.河道形状を考慮した塩水襖の計算
単純化された一様勾配の水路における塩水模形状の 解析法はすでに確立されているようである.しかし,
多くの河川は水面幅,河床高,河床粗度等の変化が著 しく,単純な形状の水路と見なすには無理があるため,
このような河川における塩水模の形状を従来の計算式 で求めることは問題である.このような点から断面変 化の影響と界面抵抗以外にも上層流が受ける両側岸お よび河床での抵抗をも考慮した計算式を提案し,実際 的な計算法について述べる.
(1)平均流の運動方程式
二層流の基礎式の誘導15)を簡単に述べておく.座 標軸はFig.7に示すように,水平面内流下方向に X一軸,これに垂直にy一軸,鉛直上向きにZ一軸を とる.対象とする二層流は漸変流とし,圧力分布は静 水圧的であるとする.水路の轡曲,コリオリの力等は 考慮せず,水表面,界面はy一軸方向には水平とする.
界面における両層間の混合はなく,密度はこの面で不 連続的に変わるものとする.
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3π7Upw・・d
q2 0、1 0 0.1 Velocity (M!/3ecり Fig.6 Examples・of vertical velocity distribution at Point 3
F三g.7 Schema of coordinate system and control VOlume
上,下層中の任意点(X,y, Z)におけるゲージ圧 はそれぞれ次式で表わされる.
ρ1=ρ19(乃1+ぬ2+ζ一窒)コρ19(石τ一9)
齢齢・(碗+ζ一) }(・)
==ρ19正∫十(ρ2一ρ1)9石晦 一ρ29暮
こ\に,ρ1,ρ2;上,下層流体の密度,g;重力加速
古本勝弘・武政剛弘 85
度,衙,碗;上,下層の厚さ,ζ;河床高(河床の9),
耳,璃 ;水表面,界面の9一座標であり,これから 先,添字1,2で上,下層のそれぞれの量を示すことに する.二層流の理論展開には一般に従属変数として h1,碗が用いられているが,こ\では以後H,」晴を 用いることにする.その理由は次のようである.河川 測量の結果は,水位〜断面積曲線,水位〜水面幅曲線 等として作図され,それらの図を読みながら計算を進 めてゆくためには,勿,乃2よりもH,1%を用いて おく方が便利だからである.
κおよびκ+δκの位置においてκ一軸に垂直な面 で切り出される体積玩表面積8の流体に対して,κ 方向の運動量方程式は次式で示される.
んρ寄4吋,卿S
一一∫、側綱♂8+∫,螂
(2)
こ\に,砺κ方向流速,砺;閉曲面に垂直で外向き の速度成分,COS(κ,η);閉曲面に立てた外向き法線の κ一軸との方向余弦,姦;閉曲面に働く勇断応力の κ成分.上層,下層を分離して,Fig.7の検査面に 注目して②式の各項を求める.上層については
∫y・警47一(∫鴫4小
一・・(÷∫・・4オ・一恐誓
切B・∂髪)δ・
∫、卿8訥(誌∫軸+鴫誓
一・轟∂藷)δ・
∫,郷(繍8一角・{÷(駒諏
一z噌∂・}一ρ・9オ・要δ・
∫螂一一一幅仏喝)δ・
こ\に,オ;流水断面積,B;水面幅, T;潤辺長,
τ。1,τゴ;河床,界面における勢断抵抗であり,添字 s,ゴは水表面,界面における値を示している.界面お よび河床はκ一軸に対して傾きをもつがそれは一般に 微小であるので,τ多,τ。1はん方向に作用している ものとする.断面平均流速σ≒∫駕4・4μ,運動量補 正係数β篇∫濯凶4μσ2および連続の式(∂・4/∂の+
(∂σ・4/∂め=0を用いて上記各項を整理すれば,上層 の平均干た対する運動方程式として次式を得る.
書下+審(β、σ129)+(・一角)訟・学+讐
+濠9雪i+刎(Ts−T∫ρ19Z霊1)一・(3)
下層についても同様に平均流の運動方程式として 謬+÷(β・確 29)+(・一免)謡撫
+審{(エーε)1ノ十ε。研 }一峰,読2T 一・
(4)
たゴし,ε=(ρ2一ρ1)/ρ2,τ・2;下層流の河床におけ る勇断抵抗。
(2)静止塩水模の基礎式と境界条件
定常な二層流に対する運動方程式は,㈲,(4)式で夫 々第1,第3項を消去した式となる.また,上下層の 正味の流量ρ1,ρ2はそれぞれ一定であり,
船∫盈肱」・イ『厩であるので,(3),(4)
式の夫々第2項は次のように表わされる.
÷(β・薩 29)一一響(劃一劫饗 H
誓4・)
+∫
Hゴ
÷離一響(畷
+∫惚ぬ)
たゴし,運動量補正係数βは流下方向に変わらない としている.従って,(3),(4>式は次式のようにまとめ られる.
( 21一εF ぎ1)誓+・F11芸誓
=一 P1 (5)
(・一・)誓+・(・一瞬)嚢一一
こΣに,
F盈一!ll象綾)1
1、_・画+・・1(T・一丁の
・Fl・一一勲爵罷
・β・ρ1丑
(6)
ρ・9凶・ 9沼1 研
乃」E)劫一閃∫腰ぬ
(5),(6)式より水表面,界面の勾配を与える式として
器一{一∫・(1−F12)砺塞鴫}/D(7)
∫ 塑49 4κ
86 松本川河口における塩水霜
融{(∫r亀)/・一(ムー鴎!}/D
こ、に,
D−1一(劫/Bs)Flr F12一・F11
×{1一(B /135)一Fi,}
,(8}
(9)
定常な二層流の中でも塩水懊が静止した状態は下層 の正味の流量が無い場合に出現する現象であるので,
(7),(8),(9)式でρ2=0,F12=0,τ02=0とおいて得 られる式が静止塩水襖の基礎式となる.これから先は 定常な塩水襖に関して述べる.
(7},(8)式を解くためには境界条件が必要であるが,
これは一般に河口で与えられている.上層の流れが河 口から外海へ出ると水路面積が急激に拡大するためそ の流況も急激に変化し,(41ヲ74κ),(4璃・/4κ)は大 きな値をもつ,従って,河口では限界状態となってお り,㈲,(6)式の微分項の係数で作られる行列式が0,
すなわち⑨式の.D=0が近似的に成立している.故 に,静止塩水喫の河ロ条件は次式で与えられる.
エF11一蟹銑低)1一{・+(・」・)景} q①
地形的な意味での河口地点の決定法は無いので,この 式を満足する地点を水理学的意味から河口とみなせば よい・この条件式は中村,稲松16}によって得られた 式と同一であり,神通川河口に於ける実測結果により 確認されている.
(3)実河川における計算
実河川について{7},(8)式を解析的に解くことは不可 能であり,逐次近似計算が必要である.(7),(8)式の右 辺11,乃に含まれる諸量にどのような式あるいはど のような値を干し}るかゴ重要であり,計算結果の適合 性を左右する.問題となる物理量のみを引き出して説 明を加える.
界面における勇断抵抗寛は一般に次式で表わされ ている. τ∫=ρた1σ1一砺i(σ1一硫) (11}
こ\に,ρ=(ρ1+ρ2)/2.抵抗係数みに関して多くの 研究がなされているが,その値は水路実験,現地観測 とも相当散乱するため,一定の表示式として確立した ものは無いようである.しかし,その傾向は次の形で 表示されている.
あ あ
ゐ一・〔R・・F幻一・〔σ1/・・9〕(1助
ひに・R・一の・/・・Fl』σ1/・9い・上層
水の動粘性係数, ,η;定数である.
金子ユ2}が提案した6=0.1,7z=0.5の値は河川の実
測値に平均的には遡合しており,実河川の計算には用 い得るようである.
上層の流れが接する側岸および河床における勇断抵 抗τ01に対しては等流近似を行ないMann量ngの平均 流速公式を用いれば次式で求められる.
・・1一ρ・(3・・/R折)薩 (13)
こ\に,η;上層が接する側岸および河床の平均の粗 度係数,R1=刃i/(劫+Ts−Tの;上層の後深.
上式に径深R1を用いることの意味が曖昧であるが,
粗度係数ηの評価の不確実性に比較すればその影響 は小さいと言える.
ムの項に含まれる∫翫(4鯛4・1ま与えられた
水位且〜三間の流水断面積のκ方向増分を意味し ており,κ方向に適当な間隔で水位〜断面積曲線が描 かれておれば読み取れる量である.
河川流量91は外的条件から与えられる.断面積 沼,水面幅B,潤辺長丁は水位が与えられ、ば,断 面測量図から読み取り得る量である.水位9〜」,B,
丁曲線を描いてお.くと計算には便利である.
以上のことから基礎式(7},(8)の右辺はH,猛 .う91 が与えられると決まる量:ばかりであるので,(7),(8>式 はH,・瓶○に関する連立常微分方程式を構成する.連 立常微分方程式の数値解法は種々あるが,水位9〜』,
.8,丁曲線を読み取りながら逐次計算を進める必要か ら複雑な解法は用い得ない.
この場合,Euler−Gaussの予測子修正子法17)くら いが適当であろう.この方法を用いた計算の手順を次 に示す.
塩水模が存在する流れは常流であるので境界条件を 与える点から上流に向って逐次計算を進める.境界条 件を与えるべき河口地点においては後に述べる問題が
あるので,一般的に或る地点(1)でH,璃●が与えら れた場合,それより△κ上流地点(∬)におけるH,
璃 を求める方法について示す.断面1,皿での値を 示すため添字1,豆を用い,また,基礎式(7),(8)を 記述の簡単のために次のように置いておく.
4H/4震∫(H,.研),4劫齢μκ=9(私邸 ) (1の
断面1でのHI,璃1をもとに∫1,91を計算しう 断面∬の予測値を次式によって求める.
H聲)一H・一∫・・△・,H置目砺一9エ・△κ㈲
次に,断面皿での予測値HIP,E鑑をもとに断面 皿における瓦」隣の勾配!界),gll)を計算し,断 面五の修正値を次式によって反復計算して求める.
古本勝弘・武政剛弘 87
瑠+1)一H・一聯(!・+∫霊))△萌
暗1)一玩・一宇(9・+99))△・ (1⑤
こ\に,(ゴ=0,1,2・…).必要な精度で
Hl古1)=H望,璃霊1)=H留となれば反復を止
め,断面皿の〃互,璃∬を確定する.この計算を順 次上流の断面に移して行う.この方法では,κ方向の 断面変化が激しくない部分の計算は3〜4回忌反復で 充分な精度で一致することが確認された.
前項目で述べた境界条件を与えるべき河口では,潮 位からμを,条件式⑳から.璃を決めるζとはでき
るが,条件式α①は(7),《8)式の分母を0とするためこの
地点ではdH/4κ,げ猛/4κの値が理論的には無限 大となっており,上記の計算法はこのま\では用い得 ないこと、なる.この点を避けるため次のような方法 が考えられる.
河口と微小距離△κ上流地点との界面位置の変化を 考える.添字。,・κにより両地点の量を示すこと\し,
研沿一猛㎏=△ぬとおく.また水表面の変化は現実に は非常に小さく無視できるものとし,△κ地点の上層 の流水断面積をオ1・κ=沼10+動0・△12と近似すると,
△κ地点での(7),(8)式の分母Dは次のように近似で
きる.
ワ D−1一{ε+(1一ε)器}舞i震1鍵
一3×
レ(glB、。・9沼1。)歩3×辮△姻
たゴし,・4に比較しBの変化の影響は小さいので,
△κ地点のβめ値に河口における値を使用している.
(7),(8)式の分子の計算は問題なく行われるが,右辺と 左辺が等しくなる△乃を試行錯誤により探がさねばな
らない.
この方法により△κ地点のH,葛.を決:定できれば,
あとはEuler−Gauss法を支障なく使うことができる..
松本川で観測された塩水懊に対応する計算を試みた.
Fig.5に大潮満潮時の計算例を示している.塩水模が 静止すると考えられる満潮時を対象にした計算はかな りうまく合致するが,それ以外の時刻に対しては適合 しない.計算に用いた諸量は次の通りである.
Q1=20。6㎡/sec, ε=0.026, η・=・0.025 β1=1.0,レー1.0×10−2c涜/sec
また,界面の抵抗係数為については,松本川の実測 値が前述の金子提案の式に近い値であったのでその式 を用いた.
(4)界面抵抗係数について
く 二層流界面形状の解析は上述のように;上下層の平 均流に関する運動方程式と連続の式を基にした手法が 用いられ,界面抵抗,河床抵抗の評価が妥当であれば 実測値とよく合致する.逆に〆解析式が確立されてお れば界面形状の実測から界面抵抗を逆算し得る.しか し,解析手段として用いられる基礎式の誘導には種々 の仮定,単純化がなされており河川の実況を正確に反 映しているとは言い難いので,この基礎式から逆算さ れる抵抗係数みの中には,その式のもつ不正確さ」す なわち,界面抵抗以外の影響をも含んでいる.従らて,
界面附近の流れを純理論的に考察して誘導される界面 抵抗係数みと河川での観測から逆算されるみとの間 には多野の差異が出るのは当然であろう.
実用的立場からすれば実河川における界面抵抗をで きるだけ正確に算定する式を必要とするので,実測資 料を蓄積し,その中から普遍的に通用するたの算定式 を見出さねばならない.
従来,実河川における塩水懊の実測結果からゐを計 算する式として
ゐ一o一(・一転)砦+,轟
劇/轟・砺毒碗 、.掬
を用いるか,上式の分子第2項を省略した,すなわち 水路幅の変化が無いとした式が用いられていた.この 式は水路幅が流下方向に変化する矩形断面水路におけ る二層流の基礎式を々について整理したものである.
実河川においては界面形状に影響を及ぼす要素は,界 面抵抗のみではなく,上層の流水断面積の変化および 上層が接する側岸,河床での抵抗がある.姻式での々 の算定値にはそれらの影響をも含んだものとなってお
り一C界面抵抗のみを評価することにはなっていない、
上層の流水断面積の変化および河床の抵抗を考慮して 互を算定するためには,(8)式から微少項を省略し整理
した次式を用いる方がよい.
ゐ一m←一構舞聡響ボ)
+轟∫撫ぬ〕/絵←+象)
この式を用いて松本川の塩水懊形状から たを逆算し た.小潮時の観測と大潮時は満潮に当る時刻の観測か ら計算して,その結果をFig.8に示している.種々 の河川流量に対する観測が行なわれていないので㌍
の広い範囲の資料は無く,数個の点をプロットし得た にすぎないが,金子提案の式に近い.
88 松本川河口における塩水懊
2k 1♂
1σz
ユ♂
ユ♂
4
\ 逃
濃鱈.。ぐ長・
.漏:欝
ヴM醐um(E雁R1鯛r)
\344i\くムム
ム 二四ASハ}く工
▲ トいM勘A・同OR劇。闘1 ロoTsロBO・Pσゆε踊覇(酬1融紀工}
ロ顕L酬8σ1ε
=灘ぢ瓢,、糊)
ま:無二二五E晶,
O,4UT月正…RSぐ鰯弔丁∫U珂0丁0尺1レ石尺)
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一一一一一ゥ1q4工夷犀6.σΨ髄 o
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ロど む .・窟㌔
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Fig.8 Correlation of interfacial resistance coe−
fficient k and μ「. (extracted from Suirikδshikisyu)
5しま と め
松本川における観測から海水の河道への侵:入状況を 述べた.同河川には明瞭な塩水襖が見られ,二層流と
しての解析が有効であることが確認されたが,潮汐が 大きな時には塩水模の挙動に非定常性が顕著に現われ,
特に界面の昇降に関して流れ方向に位相のつれがありゴ 定常な塩水喫の形状から大きく歪むため,停潮時を除 けば定常流としての解析は無理であることが解った.
潮汐が小さい場合は塩水模はほゴ静止の状態となり,
こ、で提案した計算法である程度の形状鯉析が可能で
ある.
従来,河川の不等流水面形あるいは塩水模界面形状 の計算において用いられて来た方法は(7),(8)式のよう な常微分方程式を差分式に直して,求めようとする断 面の仮定水位をもとに二断面間の平均水理量から両辺 を計算し,左右の辺の値が等しくなければ水位の仮定 をやり直すという,try and errorの手法であった.
こ\で提案した計算法は勾配そのものを計算し,所要 の断面の水位をsystematicに仮定することができ,
反復回数を増やすことにより容易に精度をあげ得ると いう利点をもっている.
こ\で述べた基礎式およびその計算法にも多くの問 題を含んでいる.断面変化の影響を一次元漸変流とし てこ\で述べた取り入れ方をすると断面が急激に変化 する区域ではその影響が大きく現われすぎるようであ る.現実には断面急変点では死水域あるいは逆流域が 形成されるので,全ての流水断面積に平均流速を与え てしまうことは問題である.また,1E面と河床との勇 断抵抗の大きさには相当の差があるため,上層が側岸 および河床に接して流れる領域では流速は遅く,上層 水はより抵抗の小さな界面上を平均流速よりも速い速
度で流れる傾向をもつであろう.理論はこのような流 れを平均流に置き換えてしまっている.これらの効果 を界面の抵抗係数為の値に含めて評価しているためた の値が散乱するのは当然と言える.しかし,実河川に おける計算において,種々多様な影響を式の中に取り 込むことは徒らに繁雑なものとなり実用的ではないか
も知れない.現段階では界面抵抗係数たの中には,
そのような多種,不明の影響が含められたものと考え ておくべきであろう.
おわりに,松本川での観測ならびに資料整理に熱心 に御協力戴いた,深田三夫氏(山ロ大学工学部),松 尾貞己氏(本学技官),隈治道氏(現竹下建設),野田 博竹下(現佐世保市役所)に対し心から感謝の意を表 します.また,河川測量図等の多くの資料を提供して 下さった山口県萩土木事務所に感謝の意を表します.
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