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博物館資料情報統合検索のためのコアメタデータ

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博物館資料情報統合検索のためのコアメタデータ

著者 山本 泰則, 安達 文夫

ページ 287‑294

発行年 2009‑12‑01

URL http://hdl.handle.net/10502/4789

(2)

博物館資料情報統合検索のためのコアメタデータ

山本 泰則 安達 文夫

国立民族学博物館 国立歴史民俗博物館

本稿では,博物館がもつ人文科学系の実在資料情報を統合的に検索・共有するために

「博物館コア」という小さなメタデータ要素セットを新たに提案している.また,人文 科学のより広い分野の研究資源の中で博物館の資料情報を共有・活用するために,イ ンターネット上の情報資源の発見や記述に用いられるDublin Core Metadata Element Setと博物館コアメタデータとの対応関係について議論している.

Core Metadata to Search for Museum Object Information across Databases

Yasunori YAMAMOTO Fumio ADACHI

National Museum of Ethnology National Museum of Japanese History In this paper, we proposes museum core, a small set of metadata elements used to search for information of non-digital museum objects across databases maintained by the sep- arate museums. We also discusses the crosswalk from the museum core to Dublin Core Element Set so as to retrieve the museum object information together with research re- sources in the humanities.

1 はじめに

博物館が収蔵する資料の目録情報は,従来は 台帳として記録されてきたが,近年これを電子 化してデータベースを作成し,インターネット に公開することが広く行われている.また,資 料の管理や博物館どうしの資料情報の交換・共 有を目的として,情報の標準的な記述法やその モデルが提案されている[1, 2, 3, 5].しかし博 物館では,すでに独自の様式で相当数の資料情 報を蓄積しているため,それらを新たな様式で 記述し直すことは必ずしも容易ではない.むし ろ機械的な対応づけ ―マッピング― 程度の操作 が現実的である.

一方,情報の記述と発見に比較的汎用的に 用いられているメタデータとして Dublin Core Metadata Element Set [7](以下,Dublin Core

呼ぶ)がある.これを共通メタデータとして,

人文科学分野のデータベースを横断的に検索す るシステムが公開されているが[8, 9]Dublin Coreは元来インターネット上の電子的な情報資 源の記述・発見を目的に規定されたものである ため,博物館のもつ実在資料に適用するにはな じまない面がある.

本稿では,博物館の特に人文科学系の実在資 料情報の統合的な検索・共有を目的として「博 物館コアメタデータ」(以下,「博物館コア」と 呼ぶ)を新たに提案する.さらに,人文科学の より広い分野の研究資源の中で,博物館の資料 情報を共有・活用するために,博物館コアメタ

データとDublin Coreとの対応関係について検

討を加える.

(3)

2 実在資料記述におけるDublin Core の問題

人間文化研究機構では,機構を構成する各機 関がもつ合計100以上にのぼる人文科学系デー タベースを横断的に検索する「統合検索システ ム」[9]を作成し公開しているが,それを実現す るための共通メタデータとしてDublin Core 用いている.しかし,人文科学分野の実在資料 に関する情報をDublin Coreに変換する場合,さ まざまな困難が生じる[10, 11]

まず,元の資料データベースの項目をDublin Coreのどの要素に割りあてればよいか判断に迷 う場面がある.たとえば,楽器の種類の情報はふ つうtypeに割りあてるのが自然であるが,デー タベースによってはsubjectあるいはformat 割りあてた方が適切な場合もある.土器資料の 形状情報もtypediscriptionなど,割りあて先 は複数の可能性がある.

次に,実在資料は,製作地,使用地,出版地 など資源に関わる場所の情報が重要である.し かし,Dublin Coreでは,資源のライフサイクル 上で生じた事象の時間情報(たとえば,製作時 期,使用年代,出版年月日など)を記述する要 dateはあっても,これに対応する空間的情報 を記述する要素はない.coverageは資源の内容 に関する時間的・空間的範囲を記述する要素で あるので,ここに製作地,使用地などの情報を 入れることは適切ではない.インターネットは 資源の空間的な位置がほとんど意味をなさない 世界であるが,実在資料では場所は重要な情報 のひとつである.

以上のような問題は,実在する資料,特に「も の」資料で顕著に生じる.それは「もの」資料 が必ずしも何かを明示的に記述しているわけで はないからである.それと同時に,「もの」資料 は形状や材質,その資料が置かれていた状況や 文脈など,さまざまな暗黙の情報をもっている.

また,手紙のように本来は紙に書かれた記述内 容が重要であるが,時代を経て古文書になると,

紙の大きさや紙質,折り目など,「もの」として の性質も重要性を増す場合が少なくない.

その他,Dublin Coreは何を記述対象と考える かよって,各要素の内容が非常に敏感に変わる メタデータであるといえる.たとえば,音楽演 奏を撮影したビデオテープがあったとき,録画し たビデオテープを記述対象とするなら,ビデオ撮 影者はcreator,音楽の演奏者はcontributorとな ろう.一方,音楽演奏そのものを記述するなら,

演奏者がcreator,作曲者などがcontributor,ビ デオ撮影者は,どの要素にも記述されない可能 性もある.Dublin Coreを使った情報検索では,

何を記述対象にしているかを常に意識している 必要があり,このことはデータベースの検索利 用者にとって必ずしも容易なことではない.

3 博物館資料情報の標準化

博物館資料情報の共有や情報交換のため,情報 記述の標準化の提案がさまざまになされている.

標準化を積極的に推進する組織のひとつに 国 際 博 物 館 会 議(ICOM)の 国 際 ド キ ュ メ ン テーション委員会(CIDOC)がある.CIDOC 1994年に「博物館資料の最小限情報分類勧 告」MICMO[1]を提案し,その中で博物館 資料の記述に必要な最低限の情報として17 カテゴリを規定した.また翌年の1995年には,

MICMOを発展,詳細化した「博物館資料情報

のための国際指針」IGMOI)を提案している.

IGMOI22の情報グループと74 の情報カテ

ゴリーから構成されている。

一方,日本では,2005年に東京国立博物館が

「ミュージアム資料情報統合化モデル」[6]を発 表している.これは,美術館・博物館における 歴史・民俗・考古・美術の各種資料がもつ情報と その記述をモデル化したもので,4種類の性格 に分類された34の属性から構成されている.

(4)

以上は,博物館資料情報を記述するためのな んらかの標準的なメタデータを提案するもの であったが,これとは別のアプローチとして

CIDOC1998年に発表した「概念参照モデル」

CRM: CIDOC Conceptual Reference Model[3]

がある.これは博物館資料にかかわるさまざま な基本概念とその関係をオントロジを用いて記 述したもので,基本概念と各博物館のもつ資料 情報を対応づけることにより,博物館ごとに構 造の異なるデータベースをオントロジを介して 橋渡しをしようとする試みである.

4 博物館コアメタデータの提案

前節のようにすでに提案されている博物館資 料情報のためのメタデータの利用を検討したが,

どれもわれわれの目的に適したものとはいえな

かった.MICMOはメタデータの要素数は妥当

であるが,管理的な情報を除けば資料の基本的 な物理的記述に限定されている.逆に,IGMOI や「ミュージアム資料情報構造化モデル」は,要

1 博物館コアメタデータの要素

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素数が多く,内容が詳しすぎる.また,CRMは,

情報科学的には興味ある枠組みであるが,内容 が複雑で,だれもが容易に理解して使えるもの ではないと判断した.

以上のことを考慮し,新たに提案する博物館 資料情報のためのコアメタデータに求める要件 を,以下のように定めた.

1. 資料情報の共有,横断的な検索,検索結果の 一覧表示を目的とする.(資料の管理や資料記 述の新たな標準を提案するものではない. 2. 資料の細分化した詳細記述ではなく,Dublin

Core程度の要素数で,既存の目録情報から簡 単に機械的に変換(マッピング)できる.

3. 博物館の人文科学分野の資料に適した要素を 含む.

4. 必要に応じて,元の(各博物館固有の)データ ベースのレコードが容易に参照できる環境で 利用される.

これらを念頭に置きながら,われわれが所属 する国立民族学博物館,国立歴史民俗博物館の 資料データベースを中心に資料情報を分析し,

前節の標準メタデータも参考にしながら要素を 抽出し,表1のように博物館コアを定義した.

要素35 には,資料そのものおよび資料に 記載された内容について,「時間」「空間」「人 物」の視点から情報を記述する.要素811 は,資料の物理的な属性を記述するもの,要素 14には,共通メタデータとして収容しきれない 各データベース固有の情報を収容するためのも のである.

5 Dublin Coreとの関係

本稿では,Dublin Coreになじまない博物館の 実在資料に適したメタデータとして博物館コア を提案した.しかし,世の中のさまざまな情報

Dublin Coreでメタデータが付与されている

以上,それらとの対応を考察し,より広範囲な 人文科学の研究資源の中で,博物館資料情報を

(5)

含めた統合的検索の可能性を探ることは有用で ある.

博物館コアとDublin Coreの要素は表2のよ うに対応づけることができる.Dublin Core の変換を機械的に行うためには,いくつかの課 題がある.

ひとつは,たとえば博物館コアの「人物」には,

Dublin Corecreatorcontributorpublisher 相当する情報が含まれる可能性があるが,博物 館コアではこれらを区別していない.「時間」,

「空間」の要素についても同様のことがいえる.

もし,博物館コアにDublin Coreを意識した限定 子を導入し,より詳細な記述をしたたならば,こ れらの情報をスムーズにDublin Coreの各要素 へ対応づけることができるが,その場合simple なメタデータを目ざした博物館コアの基本方針 に反することになる.

一方,「形状」「材質」といった要素は,「もの」

の属性として明確な情報である.Dublin Core どの要素に対応づけるかはいくつかの選択肢が

2 博物館コアメタデータとDublin Coreとの対応

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最後に,博物館コアの「分類」には,原データ ベースにおいて,さまざまな基準でカテゴリー 化された情報項目が対応づけられる.それを Dublin Coretype要素に対応づけるのが適切 かどうかは,原データベースにおける情報項目 の定義や意味,内容に依存する.

6 むすび

本稿では,博物館の特に人文科学系の実在資 料情報の統合的な検索・共有を目的として「博物 館コアメタデータ」を新たに提案した.また,こ のような目的に,インターネット上の情報資源 の記述や発見のために開発されたDublin Core Metadata Element Setを用いた場合の問題点に ついて議論を行った.それと同時に,人文科学 のより広範囲の研究資源の中で,博物館の資料 情報を共有・活用するために,博物館コアメタ

データをDublin Coreに対応づけるときの課題

についても検討した.

今回は,われわれが所属する国立民族学博物 館と国立歴史民族博物館の資料情報を中心に分 析し,博物館コアメタデータを定義した.これ は,人間文化研究機構がもつ資料情報の統合検 索を考える過程で,ボトムアップ的に生じた問 題意識から生まれたメタデータであるため,既 存の博物館資料情報のための標準メタデータと の比較検討が不十分な面がある.今後はそれら との関係,博物館コアメタデータの位置づけを より明確にしなければならない.また,他館が 提供している博物館資料情報についても詳細に 調査し,博物館コアメタデータの適合性を検証 し,要素構成を改善していくことが必要である.

参考文献、URL

[1] Grant,A., Nieuwenhuis,J., and Petersen,T.:

MICMO: proposed guideline for an interna- tional standards: minimum information cat-

(6)

egories for museum objects, International Doc- umentation Committee, International Coun- cil of Museums, 1994.

[2] ICOM/CIDOC: International guidelines for museum object information: the CIDOC in- formation categories, International Commit- tee for Documentation of the International Council of Museums, 1995.

(http://cidoc.mediahost.org/

guidelines1995.pdf)

[3] ICOM/CIDOC: The CIDOC Conceptual Ref- erence Model.

(http://cidoc.ics.forth.gr/index.html) [4] Orna,E. and Pettitt, Ch.: 博物館情報学入

門,勉誠出版,p.1812003

[5] 村田 良二:ミュージアム資料情報構造化モ デルの開発,情報処理学会シンポジウム論 文集,vol.2005No.21pp.63–702005 [6] 東京国立博物館 博物館情報処理に関する

調査研究プロジェクトチーム:ミュージア ム資料情報構造化モデル,東京国立博物館 2005

http://webarchives.tnm.jp/docs/

informatics/smmoi/ [7] Dublin Core Metadata Initiative.

(http://dublincore.org/)

[8] 安達,山本,関野,原,柴山,安永:人文 科学研究データベースの統合検索システム の構築,2008年画像電子学会第36回年次 大会予稿集,R.2-12008

[9] 人間文化研究機構:研究資源共有化統合検 索システム,2008

http://www.nihu.jp/kyoyuka/tougou/ [10] 安達 文夫:人文科学情報共有化のための博

物館資料情報のマッピングの検討,2006 画像電子学会第34回年次大会予稿集,pp.

179-1862006

[11] 山本 泰則:人文科学系データベース横断検 索のための共通メタデータ −統合検索シ ステムにおける定義と課題−,2009年画 像電子学会第37回年次大会予稿集,T1-3 2009CD-ROM

(7)

付録 A 歴博,民博のデータベースから博物館コアメタデータへのマッピング

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