扶養義務の程度について
−扶養料の算定方式よりのアプローチー一
山 脇 貞 司
Ⅰ問題の所在
今日,生活保護行政当局は,生活保護法第4条第2頓に規定する親族扶養優 先主義を適用するにあたり,民法上の扶重義務を「生活保持義務」と「生活扶 助義務」に区別する。1968年度の保護の実施要領ほ.,前者を,扶養義務者が,
自己の最低生活費(保護基準額)を超過する部分を要保護者庭負担する義務と し,後者を,扶養義務者が社会通念上,自己にふさわしいと認められる程度の
(1)
生活を損わない限度で要保護者に負担する義務とする。その結果,前者ほ.生活 保持義務関係にある老〔配偶者と未成熟子(中学3年以下の子をいう)に対す
(2) る戴〕に過大な負担を余儀なくさせているのであるが,後者も叙上の規定にも
かかわらず,生活扶助義務関係にある老〔直系血族(生活保持義務関係にある
(4)
者を除くて),兄弟姉妹,及び相対的扶養義務者〕にかなりの程度と範囲におい
(1)1968年皮の保護の実施要領・生活保護芋帖(1968年度版)p,97
(2)要保護者が,(a伯巳と生活保持義務関係にない世帯に.転入した場合であって,同一世 帯として認定することが適当でないとき,(b)6ケ月以上入院を要する患者であり,出身 榔帯員のいづれとも生活保持義務関係に.ない場合であって,同一・世帯として認定すきこ とが出身棚帯員の自立助長を著しく阻害すると認められるとき,等の場合には,要保護
者が同一・付帯に属していると認定されるものでも掛帯分離して差しつかえないのであ る(生活嘩軍手帖(1968年度版)pp・81〜82)。生活保持義務関係にある者の間では,特 殊な例外を除いて粗描分離が認められていないことに注意する必要がある。そ・の結果,
(3)
精神病患者を除き,長期の入院患者や癖巷者の配偶者が,自己の生活費として低い保 護基準額を留保しうるのみで,その残額を扶養料としてすべて負担させられるととに・な る。従って,扶養義務を免れるために協議離婚をするといったケ−スも生じることにな り,生活保護法紅おいて,「生活保持義務」概念は家族の解体へと作用している。(西原
道雄「生活保護法における親族の扶養義務」私法16弓p、96,稲子宕子「生活保護法と生 活保持の義務」日本法社会学会編・社会保障の噸利p.60以下)
(畠)配偶者が精神病患者であって,入院している期間がすで紅1年を超え,かつ引続き,
おおむね5年以上の入院を要する場合ほ,その精神病患者とその配偶者は,生活保持義 務関係から除かれ,扶養の程度ほ生活扶助義務の程度となる。〔生活保謹手姑(1968年度 版)p79,p.97.〕
(4)直系血族及び兄弟姉妹以外の3親等内の親族の扶養義務者をいう。(民法§877Ⅱ)
雄42巻 箆1・2弓
−ユノ(7−
240(5)
て扶養義務が課せられている。
r5)大阪市A区福祉事務所の1占66年の資料によれば,被保護世靖661附帯のうち101世帯(
約20%)が(狭義の)親族扶養をうけて∵いる。その内訳ほ寛1衷のとおりである。ただ し扶養義務者調査処理簿(第2表,算3衷)に.より,昭和38年から40年にかけて:A区福祉 事務所とその他の福祉事務所間の調査依親を見ると,問合せ件数,解答数,扶巷能力が あるとみなされた扶養義務者数ほすべて−減少しており,少なくとも全国的に他地域にい る扶養義務者の詮索ほ減少しているようである。
箆1表 被保護世帯員と扶養義助者の関係及び扶養額
周知のように,生活保持義務と生活扶助義務ほ,中川首之助氏が埠姻家族の 保護を意図して打ち立てられた扶養義務のこ原型であるが,以上述べたよう に,それらの概念ほ,生活保護行政当局に.よって,扶助費をなるべく減らし て一国家,地方公共団体の負担を少なくせんとする目的のため紅悪用すらされる に至っでいる。従・つて,本稿の目的ほ,最近の審判例・決定例が生活保持義務 と生楕扶助義務の程度の差異とそれらの義務の限界をどのよう軋判示している かを分析し,ついでそれらの義務の程度の差異と限界がどうあるべきかを考え るこ.とによってニ,私的扶養と社会保障(特に.公的扶助)の責任分担の領域を明 らか紅し,家族の保護を確立していく基礎作業を行うことにある。
まず最初紅簡単軋学説をみておこう。昭和3年,中川善之助氏ほ.「親族的扶 養義務の本質」(法学新報38巻6号・7号)に.おいて,扶養義務を生活保持義 務と生活扶助義務を区別されたのであるが,それ以後今日に.至る迄の戌の学説 に.よると,生活保持義務とほ,(1)親子(この場合の子は未成熟子をさしてい
る。以下同じ)・夫婦間の扶養の如く,扶養をなすことがその身分関係の本質的 不可欠的要素であり,(2)扶養の程度は義務者が棒利者に.自己と同程度の生活を
させる必要があり,(3)その基盤ほ,−・体的な生活共同があるところの扶養義務 である。そして生活扶助義務とほ.,(1)扶養することが偶然的・例外的現象であ
(6) り,狭義の親族間の扶養の如く,扶養がなくともその身分関係が成立し,(2)扶
養の程度ほ権利者が生活に困窮したとき,義務者が自己の地位相応な生活を犠 牲にすることなしに.給与しうる生活必要賓だけでよいとこ.ろの扶養義務であ る。前者は夫婦間にあっては生活協同の義務であり,親子間に.あってほ養育義 務なのであり,それらは経済的給付と事実的監護性が不可分一・体となるぺき扶
(7) 養義務であり,従って一生清扶助義務とは質的差兵があると卓張される。
\
(6)夫婦間と親の未成熟子紅対する扶養を除いた三親等内の親族間の扶巷をいう。太稿に おいて,親族間の扶養という場合,狭義の親族間の扶養の意味で用いていることをおこ とまっりしておく。
(7)中川酋之助「親族的扶養義務の本質」法学新報38巻6号,同「扶養義務の二つの原型
について」学習院大学法学部研究年報1p.271以下,同・新訂親族法p月96以下
算42巻 簡1・2号 242
ー242−
以上が,中川説の概略であるが,これに対する評価と批判の展開がどのよう になされてきたかを次に述べよう。
中川説が婚姻家族の保護の観点虹立って,(1)夫婦・親子間の扶養義務を独自 のものとして私的扶養義務中の算1順位としたこと,(2)親族間の扶養義務の限 界を明らかにしたこと,(3)扶養法から家族制度的制約を排除する意図と機能を
(8)
有していたこと∴の3点のうち,(1)・(2)の2点ほ,現在でも継受される価値を
(9) 有するとして高く評価されている。しかしながら,戌が前提とされる家族
ほ,夫婦が各自の一資本制的商品生産様式による家族生活と生産の分離匿・と もない,主として家族外にあって二生産面を担当する大の−一私有財産を共同的 紅利用し;収益することに.よって維持され,そして,そこに生まれる子にのみ かかる財産的基礎に立つ親の養育が与えられるとこ・ろの近代市民家族であっ
(10)
た。従って 市民法的性格を具有する「生活保持義洛」概念の現代的欠陥ほそこ に.原因を有して−いる。それは(1)夫婦・親子関係の破綻(的別居)に中心視点を おいた理論的操作が加えられていないこと,(2)生存権の観点が欠如しているこ
(11)(12)
と,(3)夫婦の実質的不平等を克服する原理を欠いていること,の3点だが,(1)
に.ついてこの批判ほ次のように展開されてきた。
(8)田中実「夫婦の扶養」家族問題と家族法Ⅴ所収p・231
(9)西原・前掲p.95,深谷松男「夫婦扶養の法的構造」金沢大学法文学部論集・法経篇 13p.125
(1籾 深谷・前掲p…99
肌 深谷・前掲p.127,(2匿つき中川氏は「『自ら生きる権利は他を養う義務に優先する』と いう原則は生活扶助の義務に.ついてのみいいうることである」といわれる(中川・新訂親 族法pり597)。その批判として,青山道夫氏ほ「生活保持の扶養義務者の扶養能力につい
ても,自己の健康で文化的な最低生活をなして:,その余裕があることが前提条件であ る。」といわれる。(周・家族法論pp.235〜236)
㈹(3)につき,田中・前掲pり232,深谷氏は「この間題の解明をなす為に・は,夫婦財産痛 属の実質的平等確保の法理論を確立する作業が平行してなされねばならない」とされて いる。(同・前掲p.129),なお(3)に関連する批判として:,鍛治良堅氏ほ,中川説が家制 度に対する反逆であったにもかかわらず,大きな抵抗もなく受け入れられた原因とし
て,「この思想(中川氏が主張された扶養義務の二元性の理論一山脇)が直接的に・は家 族内における個人の確立とは結びつかず,かえって『相手方の生活を扶養することが直 ち紅白巳の生活を保持する所似』という論理において,家制度的扶養の論理と構造的に
一致しているところ紅ある」と指摘されている。(同「夫婦間の扶養」総合法学No・
40pnlO)
川扶養の問題が法廷で争われる場合には,当事者揉原則として共同生活をし ておらず,この場合,・法のカによ.る直接的強制が可能なのほ,主として経済的
(18)
給付だけである。
(可従って,生活を共同して−いる夫婦・親子間の扶養義務ほ.経済的給付と事実
(14) 的監護性が−・体化しているので生活扶助義務とほ異質的だが,生活を共同しな
くなれば,扶養義務ほ経済的給付を内容とすること紅なり,生活扶助義務との 質的差異はなくなる。すなわち生活保持義務と生活扶助義務が本質的に異ると いっても,それは成立の根拠に.ついてだけいえ.ることであって−,義務の内容に 綾質的な差異はなく,実ほ程度の差であって,それも絶対的・画鵬・的なもので
(16)
はなく,−・般的な原則を示しているにすぎない。夫婦・親子関係の破綻(的別 居)の場合,中川氏も「生活保持義務ほなく,あるとしても扶助の義務がある に止る0 しかし一・方が他方の生活費を負担する了解甲下紅別居した場合,生 活費負担者の過失に基いて他方が同居不能となった等の場合は,−・方の他方
(16) に対する生活保持義務ほ消滅しない.」といわれる。それ故,この場合の生活保
持義務は,生活共同紅基く異質な生偏保持義務でほなく,経済的給付であり,
生活扶助義務と盟約紅比較しうるものとして観念されている。
M夫婦間の扶養義務と親子・間の扶養義務を中川民は生活保持の義務として同 等のものとして把えているが,その性質膵.別異のものである。
たとえば,稲子宣子氏は次のよう把.いわれる。「配偶者は.老齢であるとか,
不具廃疾であるとか,妻のときほ,こ.れ紅加えて乳幼児を保育しているという 場合を除けば,自活能力を持つので,夫婦間扶養ほ.相対的なものであるのに対
(1劫 西原「扶養」民法演習Vp.138,稲子宣子「遺族給付と扶養法」E】本福祉大学研究紀 要第7号,pp,30〜31,深谷・前掲pp,97〜98
仏側 招正也「親族の扶養」財産法の原理と家族法の原理p.月9
(は 西原・前掲p.138,鈴木禄弥他・民法の基挺知織(1)p.189,なお島津一・郎氏は「生活保 持義務と生活扶助義務とは極限概念なのであり,現実の扶養は両者を結んだ連続線上紅
ある」といわれる。(同・象旋法入門p,.17)
㈹ 中川・新訂親族法pい599,深谷・前掲p小146,p.148
第42巻 寛1・2号
ーー244− 244
し17)
し,未成熟子(少なくとも義務教育終了以前のもの)ほ労働能力を全く持たず,
(19)
自己名義の財産をもっているというごくまれな場合を除き,現在の条件のもと で牲,親又ほこれ紅代るものによる扶養を絶対的に・必撃とする○従って−,夫婦 間の扶養義務の程度ほ両者の責任の程度・資産能力・職業能力・その他諸般の 事情を考慮して決定するのであるから,親族間(特に.老親に対する子)の扶養義
し○(1\ 務との質的差異ほない」。深谷松男氏もまた,夫婦間の扶養義務と親族間の扶養
義務との質的差異を認めつつ,次のように.いわれる。「夫婦関係は,愛情的結 合を基礎にして‥いるので,不安定な面があり,かつ離婚という終局的解消の可 能性があるのに対し,親子関係ほ.運命的・静的・固定的結合である。従って夫、
婦間の扶養義務の程度ほ,夫婦関係破綻の度合紅応じて,その扶養義務の内容 が変化するものとし,最低限度生活扶助義務に至る(ただし,合意別居の場合 の扶養義務及び別居の有責配偶者の他方配偶老に.対する扶養義務ほ生活保持 義務)のに.対し,親子間の扶養義務ほ,親子関係それのみに.よって生活保持義
(21)(22)
務が根拠づけられる」。
(17)未成熟子の限界について:ほ,「義務教育終了以前(16才未満)」ないしは「18才未満の 子」紅おこうとする説(西原「親糎と親の扶養義務」神戸法学雑誌6巻1.・2号p・373,同
「親梅者と親子間の扶養」家族法大系Vp.103,沼・親族法の緒論的構造p・、129)と形式
的な区別ほ身分法の性賀檻合わないとする説(中川「扶養義務の二つの原型について:」前掲pい283)がある。判例については,扶養料の支払いを義務教育終了までとする事例 (18〉
〔大阪高裁決定・昭32.10い9(家月9−11岬飢)〕,同じく高校卒業の時期までとする事例
〔高松高裁決定・昭36い10小14(家月14一重・−150)〕,同じく成年迄とする事例〔東京高裁 決定・昭37り3.19(家月14−8・−・153)〕,同じく大学卒菜迄とする事例〔東京高裁決定・
昭35.9小15(象月13−9−53)〕など多岐に.わたっている。
(1掛 (家月9−11−61)とほ家庭裁判所月報9巻11号61京の略号である。
朋)子ほまず自己の財産紅より,自己の生活費を負担すべきだとする見解(沼・前掲p 223,鈴木他・前掲p・・186,石井健吾「未成熟子の養育費請求の方法について」ジ′ ユLリス
トNo。302p.60)と子の財産の収益を未成熟子の養育費に.あ七ることまでは.肯定して■も,
収益が養育費をまかなうに足らない場合でも,元本財産を養育費紅充当することを否定 する見解(我妻栄・親族法p.338中川・前掲pp.294〜295)が対立している。
調 和子・前掲pp.30〜32 位1)深谷・前掲pp.134〜136
(22)親子間の扶養ほ,親子関係それのみによって生活保持義務が根拠づけられるとする見 解は多数説である。中川。新訂親族法p・・498,我妻・前掲p小332,西原「扶養」民法演習
Vp.139,反対説としては,顛の未成熟子紅対する扶養義務を板拠づける規定を親擬に
関する規定(民法§820)に求める説がある。(川島武宣他・家族法相続法講話P一・204)
以上で簡単紅学説をみてきたのであるが,私は次のように.考え.たい○
夫婦間の扶養義務の成立の根拠は法の上で共同生活を命ぜられているという ことに.ある(民§752,§760)。従って夫婦が生活を共同してこいるとき,又ほ合 意別居のときほ,夫婦ほ相互に生活保持義務を負い,破綻的別居につき一方は 全く無貴で他方のみ有責である場合(嘩独有畳)と夫婦双方に何らかの有責事 由があるが,一方の他方に比してより重大な有責事由があり,それが別居を決
(23) 定的に.したとみられる場合(相対的有責)の有責配偶者ほ生活保持義務を負
い,他方配偶者は生活扶助義務を負うこ.とになる○親子間の扶養義務は生活保 持義務であり,そ・の成立は親子関係亘・のものに.よって磯拠づけられる。夫婦間 の扶養義務と親子間の扶養義務の成立の根拠は異るが,婚姻家族保護の観点か ら,夫婦及び親子間の扶養義務を自己と同程度の生活をさせる生活保持義務と し,親族間の扶養義務との差異,特に後者の限界を明らかにした中川説ほ.評価 されるぺきである。しかし,怯は扶養義務者及びその婚姻家族に.健康で文化的な 最低限皮の生活を引き下げてまで扶養義務を課してはならない0従って,生活 保持義務は,扶養義務者及びその婚姻家族の最低生活贋が留保されるという条 件のもとに.,自己と同程度の生活をさせる扶養義務なのである。他方生活扶助 義務は.,自己の地位相応な生痕を犠牲紅することなしに扶養権利者の生活必要 費だけを彼に給付すればよい扶養義務であるから,法は扶養義務者に;疲とそ の婚姻家族及び同居の親族の最低生活費を引き下げてまで扶養料を負担させ右
ことを強制しえないし,又原則として,扶養義務の程度は扶養権利者の最低生 活費を上限とするところ申扶養義務なのである◇この両種の扶養義務は,経済 的給付であるという点では量的差異に帰するけれども,生活保持義務と生活扶 助義務の2原則は,生存権の観点や,生活共同の有無の要素によっで影響を受 けながらも,前者ほ夫婦及び親子,後者はその他の親族という身分関係紅決定 的に.その基礎をおいており,従って,扶養の程度もかなりはっきりした差異が あるように.思う。以上が私見であるが,それらを主として,親子間の扶養義務
位罰 深谷・前掲p.125
寛42巻 寛1・2号
−246− 246
と,子の老親に対する扶養義務を中心に.して,昭和26年以降42年迄の審判例・
決定例のうち約70例に検討を加えること紅よって明らかに.したいと思う。
本論に入る前に,審判例。決定例の分析道具として∫の扶養料の算定方式を検討する。
扶養料の算定方式は,「厚農大臣が定める生活保護基準」に依拠した「生活保護基準方 式」,「総理府及び各地方公共団体が実施する家計調査結果」に.依拠した「標聾家計費
方式」,「労働科学研究所が算出した最低生活費消費単位」に依拠した「労研生活費方
(24)
式(以下労研方式という)」の三種が最近の審判例。決定例において用いられている。
生活保護基準方式は,生活保護基準が.エンゲル方式に.よっで算定され,要保護者の年 齢・性・世帯の人員・構成・季節・その他保護の種類に応じて必要な加算がなされる
(25)
など,詳細な算出基礎があり,はば,物価の増減に応じて改定され,4つの級地紅分け
(26)
て−全国的に統一・されて:いる,といつたすぐれた背景をもっている。しかし,大阪高裁決
定・昭33・7‖28(家月10−9→71),広島家裁呉支部審判・昭34..7..28(家月11」10−
(27)
101),広島家裁竹原支部審判・昭33.12..23(家月11−3−158)はt ̄保護基準額が低いので,
それは,健康で文化的な最低限度の生活費となりえず,保護基準額で扶養料を決定する ことは妥当でない」と判示し,結論的紅は,一・般惜帯の標準生計費償.依拠する結果になっ でいる。ただ,保護基準額の比率で申立人方と相手方の生活費を按分する場合は,−・巧 有効な方法といえようか〔大阪家裁堺支部審判・昭39.611(家月16−11−156)〕。
標準家計費方式は,月単位で総理府及び各地方公共団体が実施する家計調査結果に.よ る標準世帯の平均的消費支出を基にして,当該事件当事者世帯の必要生活費を算出し,
朗湯沢雅彦・家庭事件の法社会学p.141
桧5)現行の方法は,諸種の実態調査の結果を参考として,栄養審議会の答申による日本国
民の栄養所要塩を摂取することの出来る飲食物費の額の算定を行い,次にこめ飲食物費 の額と現実紅同額の飲食物費の額を支出している地帯のエンゲル係数を調べ,これから
逆算して生活費総額を算出し,この総額から住宅・教育扶助などの対象となる部分を差し 引いた残りの額を生活扶助基準とする。(厚生省社会局保護課監修『一生活保護のあらまし.』
昭和42年版pい49,湯沢・前掲pp.144〜145)
朋湯沢・前掲pp..144〜145
但7)昭和42年度,東京都における被保護労働者世帯の一・般勤労者世帯に対する1人当り消 費支出の割合は52%であるこ.(厚生白番・昭和亜年版p..299)。なお保護基準の決定はその 作菜がすべて官庁内部で行われてこおり,財政負担軽減の観点から,カロリ一充足に.あた
り安価な食品が選択される等,非科学的な面を多分に賀している。(篭山京他・公的扶助
制度比較研究p,155以下)
それ紀要する扶養料を決定しようとするものである。だが標準家計調査結果は,調査方 法上の限定から次のような制約がある。(1博易者世帯,外国人世帯,世帯主が長期間不在
の世帯,農業・林業・漁業を営む世帯,料理飲食店・旅館又は下宿露を営む世甫,腐つ きの同居人のいる世帯,又は住み込みの雇用者が4人以上いる世帯ほいずれも調査対象 から除外されている,(2)世帯の職業別による分類がないこと,(3)世帯内の個人別費用が わからないこと,(射世帯人員数別の表が総理府統計局の家計調査報告又は各地方公共団
体経済統討主管課が実施している家計調査報告の各月報には掲載されないこと,などで
く28) ある。標準家計費方式ほ,抽象的な標準世帯の平均的消費支出を基準にんて:いるので,
大まかな基準のわくを出ない。たとえば扶養料は個人として請求されるので,標準世帯 の平均的消費支出を世帯人員で割ることによって,扶養梅利者の扶養料算定の根拠とさ れるがどときである〔大阪高裁決定・昭37.1.31(家月14−5−150),神戸家裁審判・昭37 11い5(家月15…6−69)〕。特に老親の単身者世帯の扶養料算定の基準に.は不充分であろ
う。
労研方式についていえ.ぼ,同方式ほ,横浜家裁審判・昭371・8・25(家月15−6−48)
で用いられ,その有効性を東京高裁昭38・1.16(家月15−6−45)が是認して以来,今
(29)
日扶養料の算定にかなり用いられつつある。それは,昭和27・28年の調査に基き,労働 科学研究所が提示した最低生活費に倣拠している。最低生活費とは人間生活として望ま しい生活水準といpたものに・ははど遠いとして−も,現在の生活様式のはなほだしい変化 を前提としない限りにおいて,知能・栄養状態・体格・体力などは一応の水準に達し,
文化的生活の点でも人並みのものが写楽出来る最低限庚申水進であり(注佗9)参照),・そ
れ紅対し最低生存牽とは,これを下まわると健康ほ極端紅悪くなり,母の知能ほ.高くと
も子の知能が低くなるという水準であり,入浴・理髪といった衛生的な面でも,鍋釜と
(30)
いった最低必要用品についてもミニマムを確保出来ない水準(注脚参照)である。そこ 佗甜 湯沢・前掲p.146以下
個 労働科学研究所ほ昭和27年紅東京都,28年には東北・関西の虚村で,・それぞれ500世 帯を抽出し,生活状態調査・主婦と学童の知能検査・身体検査を行い,その階層的変化 を分析した。各指標紅ほぼ共通して消費単位100(軽作業をする60才未満の男子1日の 必要摂取熱量2600Ca叱相当)当りの生活費が調査当時,東京では月7,000円(鼓低生活 費)の層と月4,000円(最低生存費)の層との2つに転換点が,農村部では,はばこの80
%の層にそれが発見された。(労働科学研究所編・日本の生活水準p..5以下,p.296以下),
湯沢・前掲p−.150
冊 労働科学研究所編・前掲p.229
算42巻 第1・2号 248
−2ぜβ−
(31)
でこの最低生活費,月7,000円(時期・地域が異るときには.物価指数等で修正)に第6表 の個人別消費単位を乗じて加算すれば;世帯としての生活費が算出できる。
第6表 総合消費単位(都市)
男 l女
60才未満l60才以上
生生生 年年才才才 63
学校学呈630 学学=
大高中 小小41
下漠米英
似作 業 作作 作等 軽中壷激
二; ̄;
85既婚男子一既婚女子
0550 0012 1 111 0550065443
婦業業美
作
作 作
等主格中豊 0050
0099〇一
l 5050
6889
就労しない未婚女子/1 90 生計中心者でない未 」遡
婚男女
(1)軽作業とは必要摂取熱意(男子)2600Cal
(2)別居して独立世帯卑構成しているものについてほ20〜30加算
(3)事業を経営しているもの年ついては20加算
((2),(3)は湯沢。前掲pl.151に加えられている。)
(労働科学研究所編・日本の生活水準p・307)
飢 最低生活費の変化を保護基準額(生活扶助額のみ)との比較において示すと貨4表,
籍5表のようになる。
貨4表 労研の東京都調査結果による最低生活費及び保護基唾額(生活扶助額のみ)
資料,総理府統計局・消費者物価指数報告(昭和40−41),最低生存費・最低生活費・保護
前の2方式との比較において同方式を検討してみると,第1に標準生活費方式は標準 掛帯の平均的消費支出が基準となっているので,最低凍養料がいくら必要かといぅた問 題にほ直接答えることが出来ない。ところが扶養料ほ扶養義務者の俸利者に対する免責 額を意味するものであるから,扶養権利者にとっても義務者に.とっても,最低生活費の基 準は重要である。第2に扶養料決定にあたり,扶養権利者及び義務者を個別的・具体的 に把挺した基準が要求されてこいるのに.,標準生活費は−・般的・抽象的な基準でしかない ので不充分たるを免れない。生活保護基準方式と労研方式ほ,叙上の欠陥を有しな い。しかし,前者は保護基準が低いので,−・般世背の標準生計費をめどにして保護基準 の2ないし3倍を扶養権利者の生活費と認定しゼいるので,結局,標準生活史方式の欠 陥がそのままノ生活保護基準方式にもあではまることに・なる(本稿246頁の諸事例参照)。
これに.対し,後者の最低生活貿は,前者のそれより科学性があるし,「飲食費のみで
基準額の数値ほ私が計算したものである。
第5表 労研の東京都調査結果による最低生活貿及び保護基準額(生活扶助額のみ)
第42巻 算1・2号 250
ー2∂クー
なく,これと並んで飲食費以外の(社会的・文化的)費用を算定し,こ.れを総合した家族 別の最低生活費として算定されてこいるから,家族構成の差異による生活水準の実質的差
異を明確ならしめる点で,他の算定方式より,より実質的・合理的な配慮がうかがわれ
(82)
る。」しかし,調査世帯数がやや少数であり,調査年度が少し古いことに加え,昭和27
・28年の生活構造に基いて算定された最低生活彗が,その後大きく変化しつつある生活 構造に適用される最低生活蟄として,消費者物価指数で修正されただけでどの程度有効 かという疑問が残る。なお60才以上の既婚女子(特に主婦)の総合消費単位の低さは現 在では妥当しないように思うし,また前者のような詳細な算出基礎がないので,そ 陥は補われなければならない。従って最近の審判例・決定例で用いられてこいる労研方式 は.,職業上の必要経資の控除(手取収入の1〜2割)・住宅費の捷除・別居して独立世 帯を構成している者濫対する消費単位の20ないし30の加算・事業経営者紅対する消費単
(33)
位の20の加算・保護基準に従った地域差の加味等が配慮されている。つまり,最近の審 判例・決定例は,生活保護基準方式によって/修正された労研方式が用いられているとい
えよう。従って生活保護基準方式紅よって修正された労研方式においてほ,次のように して扶養料が算定される。
その適用例として沼辺愛一・審判官による,東京家裁審判・昭41.12.26(家月19−8−
94)ノの一部を示そう。
○ 女 ロ リ1 関係者の続柄
﹁一︼1一−︐一−1L
 ̄■ ̄一 ̄1 ̄一 ̄■ ̄l 生活費自己負担
I
婦人服チザイト :母国死亡
手取月収約3.5フラ円、他に月方のJ
収入として聞イ七月16,250円 1宮 宮
「‥ ̄ ̄「 I l し_−‥」
婚姻関係
離婚
失明子関係
好一世儲l
】 】
___.__」
﹁■■一■︼1−﹂
× 申立人
Y 相手方 BとYほ昭和38年婚姻し,昭和39年B・Y間に.Xが出生した。昭和40年,B・Yは調
(3功:衆京高裁決定・昭38.1.16(家月15−6−46)
脚 生活保護法払おいては,昭和32年4月1日の第14次改定紅おいて,それまで全国は5
停離婚し,Ⅹの親権者ほBと定められ,以来,ⅩほBに・よって監護養育されてこきた。Y とCは昭和41年婚姻した。BほⅩの法定代理人として,現実の養育料として月1‖5万円 を請求し,その後,月8,000円まで請求額を減縮したのだが,Yは月5,000円が椅一林で あると主張した。
かくして,昭和41年12月(YとCが嘲因した時)以降のⅩの養育費の算定は次のよう である。
(1)各人の消数学位;Ⅹは40,Bほ90,Yは115,Cは80
(2)Y方の家族の最低生活費
昭和41年度の東京都における消費単位100についての最低生活費碓12,300円であるの で,これに・よってY方家族の最低生活費を算出すると,12,300×=23,8鋸な 9
り,Y二右■の収入はこれを超えているから,Ⅹの養育費を負担することは可能である。
(3)ⅩがBとの共同生活においで費消すると認められる生活費(ⅩのB方における生活
程度)
35,000(Bの手取月収一)−3,500(職業上の必要経費を手取月収の1割とみる)=31,500 となるので,これ紅よりⅩのB方における生活程度を算定すると
31,500×=M92となる。
(4)ⅩがY方に引き取られ,Y方と共同生活をしていると仮定した場合に.,Ⅹの生活費
として認められる金額(ⅩのY方における生活程度)(3)と同様にして算定すると 45,000−4,500=40,500
40 40,500×115+釦_F面=6,894 となる。
(5)これによって−みると,ⅩのB方における生活程度の方が,ⅩのY方における生活程 度を超えているのであるが,この場合紅も,Y方はⅩに対し,少なくともB方における月 9,692円程度の生活をさせるようにⅩの養育費を負担すべく,又BはⅩとともに生活す
るために.アパ−トの間代として月16,250円を負担しているので,Y方はⅩの住居費と
レて16,250×=5,000
級地に分類されていたのが,4級地粧改訂された。1級地の保護基準額を100とすると,
2級地91・3級地82・4級地73の割合となっている。なお,各級地の分類表は生活保
護手帖・1968年度版pい63以下参照。ただし,生活保護法上の地域差の設定については問
題があるようである。(篭山東他・公的扶助制度比較研究pい147)
第42巻 算1・2号 252
・−252−
を前記金9,692円に加儲した額金14,692円をⅩの養育費として,Bとともに負担すべき である。
(6)Bの最低生活費 12,300×一=11,070
け)Ⅹの養育費濫ついて.BとYとが分担すべき額
前述のⅩの養育費としての必要額金14,692円は,BとYとがその手取月収から1割の 職真上の必要経費を控除した額から,さらに各自の最低生活費(Y方においてはYとC の最低生活費)を控除した額の割合によって分担すべきである。従って:Yの分担額は
40,500−23,885
589 14,692×
(40,500−23,885)+(31,500−11
そ・こで昭和41年12月以降,YはⅩに対し,その扶養料として月6,600円(10円未満4
(34) 拾5入)を支払わなければならない。
以上で扶養料の算定方式の検討を終えるが,生活保護基準方式に・よって修正
(誠 同審判に対する若干の疑問を述べると,Bは手取月収から職業上の必要経費を控除し た31,500円のうらから間代16,250円を支払っているのだから,ⅩのB方における生活程 度の額9,692円のうちに,Bの住居費も含まれていることたなる。従って額金9,692円に 改めてⅩの住居贋を加算するのはおかしいと思う。私は,住居費を消費単位で配分する 考え方がおかしいと思うので,手取月収から職業上の必要経費と住居費を控除した残額 を基礎粧して,消費単位を用いで生活費を算定すべきだと考える。従って−私の算定方式
は次のように.なる。(1),(2)同上
(3)31,500−16,250=15,250 15,250×一=4,692
(4)同上
(5)ⅩのY方における生活程度の方が高いから,YはBとともにⅩに対し,住居艶以外紅,
月6,894円程度の生活をさせるようにⅩの養育費を負担すべきである○
(6洞上
(7)Yの分担額
40,500−23,885
=5,508 6,894×
500−23,885)十(15,250−11,070)
YはⅩ紅対し,扶養料として月5,510円を支払わなければならない0
同様の算定方式を沼辺審判官は,東京家裁審判・昭42・3・14(家月19−10−135)で用 いられている。同じ労研方式といっても,労働科学研究所紅よる総合消費単位虞を用い ながら,算定の公式は審判官によって差異がある。長崎家裁審判・昭41・1u14(家月18
−9−64)(鍬守正一審判官),大阪家裁審判・昭42‖3 11(家月19−10−132)(矢部紀子審
判官),なお高島良一・弁護士の公式〔「未成熟子に対する親の扶養義務」(家月15−5−1)〕
された労研方式が,分析道具として最も有効であることが明らかに.なった。従 って:,本論においては,この労研方式を,算定方式の明示されていない審判例
・決定例に適用し,身分関係に基礎をおいている生活保持義務と生活扶助義務 の原則,及び生存権の観点や生活共同の有無といった要素が決定額をどのよう 紅規定しているか,すなわち,上述の原則が,2つの要素によってどのよう紅 修正されているかをみてみよう。
但し,この方法は,叙上の原則と要素によって一決定額を分類するものであ
(箪)
り,その他の事情は考慮されていないといった不充分な点がある。しかし今後 の扶養法研究をさぐる上での前提作業の1つと考えて検討を試みた次第であ
(36)
る。
ⅠⅠ夫婦・親子間の扶養義務の程度
こ・こでは,鱒偶者乃.び子が扶養料を請求する場合,扶養義務者が自己と同程 度の生活を扶養権利者に.保障する生活保持義務程度の扶養料が決定されている かどうか,扶養料を負担しても,扶養義務者及びその婚姻家族の最低生活費を 確保しているかどうか,の2点を姫合せて,48事例を4種類紅分類し検討を加 えた。
は,新潟家裁審判・昭42牒・6(家月19−12−52)、に・用いられて.いる。以上の4つの審判 例はすべて公式が異って:いるが,扶養義務者世帯の最低生活費を留保するかどうかとい
う点と,生活保持義務の程度,すなわち自己と同程度の生活をさせるという扶養義務の 程度をとのように.公式化するかという点で分れて:いるようである。私ほ本稿の分析道具
として,主として沼辺審判官の公式を用いる。
本論において∴私の用いる労研方式の説明をもう少し加えておくと,手取収入とは収入 から祖税,社会保険料,組合費等を控除したものを意味し,それから職業上の必要経費
(審判例では1ないし2割とまちまちだが私は1割としで静定した)と住宅費を差引い たものを実収と呼ぶこ.とにする。
由 農村部紅おける扶養料の算定について,地域差を考慮しただけの都市総合消費単僚を 用いたことも不充分な点である。
(調 保護基準は,今日,生活・教育・住宅・医療・出産・生業・葬祭の7種類の扶助及び 妊産婦・母子・障害者・老齢・在宅患者・精神薄弱児養護の加算があるが,本稿で掲げ
た保護基準は.,原則として生活・教育扶助に限り,母子。老齢加算は−・部考慮し,また
控除についてほ.考慮していないので,あらかじめお断りしておく0
算42巻 籍1・2号 254
−254−
1妻とその子(嫡出子)が生活共同体を構成していて,生活を共同していな い夫に生活費を請求した事例0012例〔①東示高裁決定・昭27・7l29(家月4−8
−100),⑧大阪高裁決定。昭30小6.7(家月7−8−63),⑧東京家裁審判・昭31l・3・17(家 月8−−5−50),④大阪高裁決定・昭32.1030(家月9−11−74),⑤東京高裁決定・昭38 1.16(家月15丁6−45),⑥東京家裁審判。昭38い2.25(家月15−6−75),⑦大阪家裁審 判・38.320(家月15−8一−90),⑧大阪家裁堺支部審判昭39ふ11(家月16−11−156),
⑨松山家裁審判・昭40小9.24(家月18−2・エ82),⑲新潟家裁審判・昭41・52(家月19
−4一台4),⑪大阪家裁審判.・昭41い10.3(家月19−5−99),⑲大阪家裁審判・昭42り9い29
(37)
(家月20−6−44)r〕一本文中の①④⑩ほ上にあげた事例の番号,以下Ⅱ。Ⅲの事例 の引用ほすべてこれにならう。
(1)12例のうち,10例は殆どが生活保持義務の程度の金額ないしは請求額が 認められている(ただし,⑨例のみ生活保持義務の程度が,月22,000円である が,月16,000円と決定されている)。その理由ほ「別居生活をしているとほ いえ,離婚する紅至ったわけではないから,抗告人(夫)は相手方(妻)を自 分の能力に応じ,自己と同一・の生活程度に.おいて扶養する義務がある」から である(⑤)。この原則ほ,離婚訴訟係属中でも適用され(㊤),婚姻関係破綻 の原因につき,別居配偶者が単独有責の場合は,特に相手方の婚姻費用分担義 務が強調されて\おり(⑧),別居配偶者が相対的有責の場合にも生活保持義務
しお\ の原則は適用されている((む,⑦)。
(2)相手方は生活保持義務を履行することに.よって,自己及びその家族(重 婚的内縁配偶者も含む)の生活費ほ留保されているのだろうか○代表例として
⑧例を検討しよう。
同事例ほ別居配偶者が重婚的内縁関係に.ある事例である。10例中5例が重婚 的内縁関係にある事例であるが(⑧,⑨,⑧,⑨,⑲),扶養料の算定にあた ってほ5例とも,扶養義啓関係に.ない重婚的内縁配偶者の生活費は配慮されて
8Ⅵ これらの事例紅おける請求権の法的根拠は,婚姻費用の分担義務(民法§760)であ
る。
(38)本稿,pい 参照
(39)
いない。同事例に.おいても,「yが女Z及び その連れ子かと共同生活をしている為,そ・の 生活費を支弁しているこ.と,そのことほ前記 責任(yのg方に.対する婚姻費用分担義務 鵬山脇)を免除又は減少せしめるに.催する 事項では.ない。yのZ・かに対する扶養は,
法律上正当に.して必要なるもノめでない」と判 示されている。この点につき考えるに.,yが ぞ・かを事実上,扶養しているのであるから,
yとg方で生活費を配分するに.あたり,Z・
かの生活費を配慮しないとすれば,法的には 生活保持の義務(相手方に自己と同程度の生 関係者の総柄
盛婚的内縁関係 養頼子関係
活を保障する義務)が履行されたということが出来ようが,実際に.は,ズカ に.,より高い程度の生活を保障したことに.なる。何故なら,yに.配分された 生活費ほ必然的にZ・βの生活費としても消費されること紅なるからである。
「生活保持義務」概念が配偶者又ほ親が,他方配偶者又ほ子紅対し,本来,生活 を共同して同程度の生活を保持すべきであるのに.,生活を共同しないこと紅よ って生じる責任の限度(同程度の生活をさせるぺき経済的給付)を示す概念で あるとするならば,その概念を用いること紅よって,実質的に.,扶養義務を履 行するyより芽方の方が,より高い生活程度になるのはyの貴任限度を超えて いるといえよう。
扶寒料の算定にあたり,Zの生活費が留保される為には,それが法的保護に 値するものでなければならない○ 重婚的内縁の保護を厚ぐする見解として,
「法律上の婚姻関係に.ある者が事実上の協議離婚をしているか,あるいはその 間の夫婦関係が事実上破綻している場合に・ほ,重婚的内縁関係を結んでも良俗
㈹ 有責配偶者が他の女と同棲関係にある場合,重婚的内縁関係なのか,それとも婚姻ある
いは内縁関係以外の男女の同棲関係なのか,という区別ほこれらの審判例・決定例ふら
は明らか紅することが出来ないが,一応,重婚的内縁関係と考えてよいと思われる。
寛42巻 簡1・2号
−256 256
(40)
に反する不法な行為とはいえ.ない,」という見解がある。この見解では重婚的内縁 関係を結ぶ時にほ,すでに法律上の婚姻慨係が破綻していることが前提となっ ている。ところが5例をみると,法律上の婚姻関係の破綻の原因が重婚的内縁関 係それ自体に.あるから,たとえ重婚的内縁関係が長期間継続しているとしても
(同事例ほ約8年である),不法性は.阻却されない。ただし,叙上の見解の要件を 充す重婚的内縁関係であれほ,婚姻費用分担請求がなされて−も,重婚的内縁配偶 者ほ扶養料算定にあたり,その者の生活費ほ留保されるべき法的利益が生じる
(41)
こ・とになる。しかしこ・の見解からほ婚姻準用分担請求紅際し,結局,叙上の如き 重婚的内縁配偶者の生活費を留保しうる根拠ほ㌧見出せない。
同審判はA方とyの収入合計額を各々の生活保護基準額をもって二最低生活需 要費として,この比率により按分する生活保護基準方式をとっている。生活・
住宅・教育の各扶助の合計額ほズ方が19,571円,yが8,791円となり,その比率 は.X方:y=69:31となる。従ってyの負担額は
(8,000+34,000)×−8,000=2p卿
ただし,昭和39年10月迄の債務月賦支払金ほ婚姻費用であるので,その半額 月1,500円はgの負担となり,従って−,昭和39年10月迄は,yの負担額月19,480
(42)
円,それ以後,別居期間中はyの負担蘭,月20,980円となっている。この結果,
yの生活費は,昭和39年8月迄ほ,34,000−19,480−3,000(債務月賦支払金)
(40)大審院判決昭124 8大審院民事判例集籍16巻上418貢
(41)ただし.「重婚的内縁を理由なしに.破棄されたとしで,慰謝料を請求する場合に,請求 者側に不法性があるときには慰謝料の請求は認められないが,そうでないときには認め
られる」とする見解紅立てば,壷婚的内縁配偶者が他方の雷婚的内縁者に適法な配偶者 があることを知らなかったことが法的保護の要件紅なる。
(島津・前掲p−.78)
嘩2)労研方式で算定すると
(1)各人の消費単位:Y;中等作業に.従事,別居独立世帯を構成,105+30=135,Ⅹ;歪作 業に・従事,100!A;80,B;60,C;60
(2)Ⅹの実収:8,000(職業上の必要経費は既に控除されている)−1,200(住宅費)=
6,800,Yの実収:34,000−3,400(職業上の必要経費)−2,350(住宅費)=28,250
(3)Yの負担額
十60
(6,800+28,250)× 一6,800=17,372円
135+100+80+60+60−7,000(借入金月成金)=4,520円となり,借金をするか他に収入の道を考え ない限り,Z・βは勿論のことyも又生活保護基準を下まわることに.なる。また
昭和39年10月迄のyの生活費は34,000−19,480−3,000=11,520円となり,yの 生活保護基準は.確保しうるが,Z・かをも含めた世帯の生活保護基準月14,200
円(昭和39年4月1日算20次改定)を下まわっており,昭和39年11月以降は14,520 円となり,y・Z。上)の生活保護基準をかろうじて確保することに.なる。
以上のことから明らかなように,婚姻費用分担義務はかなり高い程度紅課せ られている。このような程度の高い負担額が果してどこ.まで履行されるのだろ うかという疑問を禁じえ.ない。しかしながら,婚姻費用申分担義務ほ自己と同程 度の生活をさせる義務であるとすれば,程度が高くならざるを得ず,従って,
職業上の必要経費の控除や,別居独立世帯を構成しているこ.とによる加算な どによって,高い程度の負担が緩和されることが望ましいのでほ.な・かろうか。
生活保持義務は同程度の生活を保障するという責任限度の原則を示して−いる概 念であることが忘れられてほならないと思うのである。
(3)残り2例ほ,申立人(妻)の生活費請求が否定され,子にのみ生活保持 義務の程度の生活費が認められた例である(⑪,⑲)。⑲例ほ申立人が形式的 紅婚姻届を出しており,実際にほ,家族生活を形成していないで,相手方が婚 姻届の無効確認の訴を提起している事例であり,この場合,扶養料の算定龍.ほ 相手方と重婚的内縁配偶者の生活費が配慮されている。本件の場合,最初から 婚姻関係の実態がなくブ重婚的内縁関係は不法性がないのだから,当然の結果
といえよう。⑪例は,申立人の別居ほ止むを得ずしてなされたものでなく,夫 婦間の協力扶助義務に反する傾向がうかがわれ,申立人ほ婚姻費用分担請求の 資格に.欠けるとする○
以上,子と生活を共同している妻より,生活を共同していない夫紅対する生
活費請求事例を魂てきた甲であるが,こ・れらの事例紅関する限り,夫婦関係破
綻の度合に㌧応じて,その扶養義務の内容が変化することほなく,扶養能力ある
有責配偶者が生活保持義務を負担させられるか,扶養能力のない有資配偶者の
生活費請求が却下されるかのどちらかである。そして子に.対しては,サぺて−の
第42巻 籍1・2号
258−−2∂β・−
事例において,父に生活保持義務程度の養育料が負担させられている。
2.未成熟子から,親に対する扶養料請求
(1)相手方(以下、相手方個人の意味と同居の親族も含めた相手方世帯の意味の両方 に用いる)(抗告入,親)が最低生活費を確保し,かつ,生活保持義務の程度で 子の扶養料を認めた事例飢山一13例(相手方は1例を除き父親である。)
(イ)子の扶養料と,子と生活を共同している親(母)の養育費〔実収入か ら親(母)と同居の親族の最低生活費を差引いた額〕を加えると子の最低生活 費より1.5ないし2倍近くなる例−7例〔⑲東京家裁審判・昭391L4・1(家月16一夕
−176),⑭長崎家裁審判卜昭41 1,.14(家月18−9−64),⑯福岡家裁審判。昭41.11.4(家 月19−6−87),⑲東京家裁審判・昭41.12.26(家月19−8−94),⑲大阪家裁審判・昭 42.2い3(家月19−9−55),⑲束京家裁審判・昭42い計14(家月19−10−135),⑩新潟家裁
(48)
審判・昭42。ふ6(家月19−12−52)1
相手方(親)が相当余裕のある反面,子と生活を共同している親は最低生活 費さえ下まわっているのが2例あるが(⑲,⑲),最も典型的な事例は.,両方
とも最低生活費は確保しているが,相手方の方が生活程度が高いので請求する
(44) 事例(5例)である(⑲,⑲,⑲,⑫,⑲)。このような事例には,両方(子
を除く)の最低生活費を確保しつつ,子の生活程度をレベルの高い方の生活程 度に確保せんとする労研方式が典型的に妥当する(5例中3例が労研方式,
⑲,⑲,⑲)。相手方に余裕がある場合,相手方に同屏する親族の生活費も音 のそれと同程度に配慮される(⑬・⑲・⑫ほ父母,⑲ほ兄弟姉妹,⑲は労研方 式により叔母の最低生活費を留保している)。
(ロ)子の扶養料と子と生活を共同している親(1例を除き母)の養育費を 加えると,おおよそ,子の最低生活費か,若干それを下まわる生活費となる
(姻 これら鱒事例における請求権鱒法的根拠は,民法第877粂ないし第880粂であるが,⑳ 例のみは,家庭裁判所は親権者変更の隙紅扶養料の給付を命ずることが出来ると規定す
る家事審判規則第72条及び第53粂である。
舶 ⑭例の算定方式の一・部(昭和40年10月以降)を示すと,
昭和33年の調停後,物価の高騰著しく,又Ⅹl・Ⅹ2は学齢期に達しているため,月
5,000円の仕送りだけではⅩ1・Ⅹ2の生措を維持することは困難である。従ってYはⅩ1・
Ⅹ2に対し,1人当り月5,000円の扶養料を支払うよう申立(なお,BほZとAに・月1.7
関係者の続柄
万円の援助を与えている)(1)Ⅹ1。Ⅹ2の現住所(3級地)に
おける最低生活費・・・…・東京都(1級 地)の82%
Yの現住所(2叔地)紅おける最低
生活費……東京都の92%(2)Y方の最低生活費
11,600××一一旦−=
100
19,210く33,861,故に,YはⅩ1・
Ⅹ2の扶餐料を負担することが可
能
(3)Z・Ⅹ1・Ⅹ2の最低生活費
90+55×2
×_里_=11,600×
100 100
19,024く26,046
故にZ・Ⅹ1・Ⅹ2ほ展低生活費を 確保している。
(4)Ⅹ1・文2のY方紅おける生活程度
55×2 33,861×−一山¶−−一山
100+80十55×2 −−・===12,844
(5)Ⅹ1・Ⅹ2のZ方紅おける生活確度
」旦竺乙 26,046×−−−__■=14,325
90+55×2
(6)zがⅩ1,Ⅹ2の養育費を分担することによって,Yは.それだけ支出を免れ,生活程度 が上るわけだから,Yの分担すべき額は
55×2
(33,861+14,325)×
100+80+55×2−14,325=3,925円
従って現在YがⅩ1・Ⅹ2紅対し負担している扶養料月5,000円を超えるものでないか ら申立却下,となる。
. 私の算定方式(沼辺審判官の方式と同じ)によると,
(1卜(2)同上
(4)33,861−3,386(聴築上の必要経費)=30,475
55\、2
30,475× 100+80一十55×2 =11,559
(5)26,046−2,605=23,441 Zは別居独立世滞を形成しているから
55×2
23,441×
(90+30)十55×2
=11,211(6)Zの最低生活費
90+30
11,600× =13,920
30,475−19,210 100
(7はってYの負担額ほ
11,559×
(30,475−19,210)+(23,441−13,
92の =6,264円籍42巻 貨1。2号 260
−260−
例仙−【−6例〔⑳広島家裁竹原支部審判・昭33・1223(家月11−3−158),㊧広島家裁呉
支部審判・昭34…7、28(家月11−10−101),⑳仙台高裁決定・昭37い6・15(家月14−11−
103),⑲大阪家裁審判。昭37い6‥26(家月14−11−158),㊧大阪家裁審判・昭4011い27(家
(45)
月18−5−58),㊧大阪家裁審判。昭42.3・11(家月19−10−132),なお,㊧。㊥例ほ.相 手方に相当余裕のある事例で,労研方式が適用されている。〕
(4¢)
相手方が最低生活費を確保した残りを支給している例が3例(㊧,㊨,⑳)
をしめ,申立人方(子を除く)でほ最低生活費すら確保しえていないのが1例
現在のYのⅩ1。Ⅹ2に対する扶養料より1,260円増額しなければならないこと紅なる。
ただし,BがA。Zに.対し月1。7万円を援助していることを考慮しなければならないの で,必ずしも1,260円の増額とはならないだろう。
(45)これらの事例における請求権の法的根拠は,民法寛877条ないし籍880条であるが,㊥
例のみ,家事審判規則寛53条(家庭裁判所は,子の監護者の指定その他子の監護につい て必要な事項を定め,又は子の監護者を変更し,その他子の監護について相当な処分を
命ずる審判に‥おいてほ,子の引渡又は扶養料その他の財産上の給付を命ずることが出
来る)である。舶 ㊧例の算定方式を示すと
関係者の続柄
「一一・−・・−・−・1−−− ̄− ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄■ ̄■ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄■ ̄ ̄ ̄ ̄■ ̄ ̄ ̄ ̄
「
(1)Aは自活可儲だから,算定より除去する。
(2)Bの月収をBとⅩ1。Ⅹ2合計3名の生活費に.均分すると1人月4,000円
(3)Yの月収をY・C・Ⅹ1。Ⅹ2合計4名の生活費に均分すると1人月4,000円
(4)Yが女性であること,Ⅹ1・Ⅹ2が長じて収入を得るようになったとき,Bとは生活を 共に.しても,Yとは生活を共にし難い現状にあるこ.と,その他親子の情の親疎等一切の
事情を掛酌する。
15JYはXJ.。Ⅹ2紅対し,中学校を卒業する迄1人月1,500円の扶養料の負担を決定。
(6)Ⅹ1・Ⅹ2の生活費月8,000円をBは月5,000円,Yは月3,000円分担することになり,収
入の少ないBの負担が大きいのは一見不合理な結果のようであるが,諸般の事情からし
でやむを得ないとする。
(⑳),最低生活費を確保するとわずかしか養育費が出せないのが1例(㊨)
というように,川の事例と比較すれば,全般的に.生活レベルが低く,特に相手 方の生活レベルが低いこ.とを示している。
生活を共同して−いない子の扶養料算定にあたり,相手方の同居の親族の生活 費が留保されているかどうかについてほ,生痕を共同していない子の生活費
も,同居の親族(相手方の母)の生活費も,相手方の収入を等分するこ.とに.よ って,同レベルの生活費を同居の親族にも認めている(⑳,㊧)。
r2j 相手方〔抗告人,親(父)〕が最低生活費を確保し,子の痍養料を生活保 持義務の程度より低い程度で認ゅる事例−−11例「⑳松山家裁審判・昭32爪立‖4−(家 月9−3−39),㊥大阪高裁決定・昭32・10.9(家月9−11−61),⑳大阪高裁決定・昭33巾2.
25(家月ユ0−2−66),⑳東京家裁審判・昭33い12.10(家月11−3−151),⑳佐賀家裁審判
・昭36 2 10(家月13−7−121),㊧千葉家裁松戸支部審判・昭36.6u30(家月13−10−
103),⑳静岡家裁沼津支部審判・昭37.7小2(家月14−11−140),⑲東京家裁審判・昭37…7.
労研方式で算定すれば
(1)Bの実収12,500−1,250=11,250,よって■B方の実収は
11,250+3,500=14,750(2)Y方の実収
17,000−1,700=15,300
(3)A・Bの最低生活費
8,400×意×彗許=12,995
(4)Y・Cの最低生活費 8,400××号12,230
(5)Ⅹl・Ⅹ2のB:右一における生活程度
80+60
14・750×了由両手両手面 ̄=6,661(6)Ⅹ1・Ⅹ2のY方における生活程度 80+60
15,300×
95+65+80+60
=7,140 r7)よってYの負担額15,300−12,230 =4,543無4,540 7,140×