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Ceftriaxone 増量による β-lactamase-negative ampicillin-resistant Haemophilus influenzae type b 髄膜炎の治療経験

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Academic year: 2021

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(1)

Haemophilus influenzaetype b(Hib)は,本邦に おける小児細菌性髄膜炎起炎菌で最も分離頻度が 高 い1).H. influenzaeの 薬 剤 耐 性 に つ い て は,

β-lactamase-negative ampicillin-resistant ( B L N- AR)株が 1990 年代後半から急激な増加傾向を示 している.髄膜炎由来 Hib における BLNAR の分 離頻度も,遺伝子解析の結果に基づく報告では,

2000 年 6%,2001 年 14%,2002 年 23% と 上 昇 している2)

BLNAR の 耐 性 機 序 が penicillin-binding pro- teins(PBPs)の変異によることから,ampicillin

(ABPC)などのペニシリン系薬剤だけでなく,こ れまで良好な抗菌力を示した第 3 世代セフェム系 薬剤に対しても耐性化の傾向が認められ,cefo- taxime(CTX)や ceftriaxone(CTRX)低感受性 株も出現してきている3).このような状況のもと,

BLNAR 髄膜炎に対しては,新たな治療戦略を構 築する必要に迫られている.

今回,我々は BLNAR による細菌性髄膜炎幼児 例を経験した.分離菌の CTX,CTRX に対する感

受性の低下を認めたものの,CTRX 増量により後 遺症なく治癒し得た.BLNAR 髄膜炎 に 対 す る CTRX 増量による治療例の報告はなく,文献的考 察を加えて報告する.

患者:1 歳 4 カ月男児.

家族歴:両親および 3 歳姉に発熱や上気道炎症 状なし.保育園通園中.

現病歴:2003 年 2 月 22 日より湿性咳嗽,膿性 鼻汁が出現.近医耳鼻科を受診し,erythromycin を処方され 2 日間内服した.しかし,2 月 25 日未 明より 39℃ 台の発熱と不機嫌が出現したことか ら近医小児科を受診.傾眠傾向を認めたため当科 紹介入院となった.

入院時現症:体温 39.6 度,意識レベルは Japan Coma Scale 30-RI,痛覚刺激により開眼,啼泣あ り.項部硬直,Kernig 徴候を認めた.

入院時検査所見(Table 1):白血減少および核 の左方移動(2,400!µl,Stab 20%,Seg 27%),血 小板減少(13.5 万!µl),CRP 上昇(4.83mg!dl)を 認めた.また低 Na 血症(129 mmol!l),軽度の DIC 徴候(FDP 7.6µg!ml D-dimer 2.7µg!ml)を伴って いた.髄液一般検査では,多核球優位の細胞数増 多(348!3µl,多核球 97%,単核球 3%)と,蛋白

Ceftriaxone 増量による

β-lactamase-negative ampicillin-resistant Haemophilus influenzae

type b 髄膜炎の治療経験

1)千葉県こども病院感染症科,2)千葉大学大学院医学研究院小児病態学

須藤扶佐代

1)2)

中村 明

1)

星野 直

1)2)

石和田稔彦

2)

河野 陽一

2)

(平成 16 年 2 月 19 日受付)

(平成 16 年 5 月 7 日受理)

別刷請求先:(〒266―0007)千葉市緑区辺田町 579―1 千葉県こども病院感染症科 須藤扶佐代

bacterial meningitis,β-lactamase-negative ampicillin-resistant Haemophilus influenzae, ceftriaxone resistant

Key words:

(2)

Table 1 Laboratory data on admission CSF

Hematology

Cells  348/3 mm3(Neu 97, Ly 1, Mo 2)

WBC  2,400 /μl

TP  92 mg/dl

(Stab 20%, Seg 27%)

Glu  49 mg/dl

Hb  12.0 g/dl

Cl  112 mmol/l

Plt  13.5×104 /μl

Gram stain smear microscopy of CSF  Blood chemistry

Gram negative rods+

GOT  40 U/l

Antigen detection of CSF

GPT  18 U/l

Group B Streptococcus   (−)

LDH  394 U/l

Neisseria meningitis     (−)

BUN  4.9 mg/dl

Haemophilus influenzae type b  (+)

Cre  0.17 mg/dl

Streptococcus pneumoniae  (−)

Na  129 mmol/l

4.1 mmol/l

Cl  94 mmol/l

CRP  4.83 mg/dl

Coagulation

PT  14.9 sec

APTT  37.3 sec

Fibrinogen  353 mg/dl

FDP  7.6 μg/ml

D-dimer  2.7 μg/ml

Table  2 Minimum  inhibitory  concentrations(MICs)of Haemophilus influenzae  isolated from cerebrospinal fluid(CSF), blood and nasopharynx of the patient

CP NFLX CAM

CTRX CTX

CVA/AMPC ABPC

1

< 0.06 4

0.5 1

6 2

CSF

1

< 0.06 8

0.5 2

6 2

blood

1

< 0.06 4

0.5 1

6 2

nasopharynx

MIC(μg/ml)

ABPC: ampicillin,  CVA/AMPC:amoxicillin-clavulanate, CTX:cefotaxime,  CTRX:cef- triaxone, CAM:clarithromycin, NFLX:norfloxacin, CP:chloramphenicol

の上昇(92mg!dl)を,髄液グラム染色塗抹検査で はグラム 陰 性 桿 菌 を 認 め,Slidex m!ningite-Kit

(bioM!rieux)を用いた髄液ラテックス凝集反応 は Hib 抗原陽性であった.

経過:迅速抗原検索およびグラム染色所見より Hib による細菌性髄膜炎と診断,CTRX 静注(初回 100 mg!kg,以後は 100 mg!kg!day,分 2)により 抗菌化学療法を開始した.また dexamethasone 0.15 mg!kg×4!day(2 日間)および濃グリセリン 投与を併用した.さらに,DIC および SIADH の合 併と判断して,メシル酸ナファモスタット持続点 滴静注と水分電解質制限を併用した.

治療開始翌日,CRP は 27.5 mg!dl まで上昇した が一般状態の増悪はなく,CRP 反応の時間的ずれ と判断して,治療は変更しなかった.入院時の髄 液・静脈血・鼻咽腔より Hib が分離されたが,後 日 判 明 し た 薬 剤 感 受 性 検 査 結 果 で は い ず れ も BLNAR と考えられた(Table 2).

治療開始翌日の髄液培養は陰性であったが,

CTRX の MIC が 0.5µg!ml と 比 較 的 高 値 を 示 し た こ と か ら,2 月 27 日(第 3 病 日)よ り CTRX を 150mg!kg!day 分 2 へ増量して治療を続行し た.2 月 28 日(第 4 病日)には解熱傾向となり,

CRP も 6.8mg!dl と低下.以後臨床症状,検査所見

(3)

とも順調に改善した.抗菌薬は計 10 日間投与して 終了とし,3 月 10 日(第 14 病日)に合併症および 後遺症なく完治退院となった(Fig. 1).

なお,髄液・血液・鼻咽腔より得られた菌株に ついて,インフルエンザ菌遺伝子検出試薬(湧永 製薬)を用いて PCR 法による遺伝子変異検索を 行ったところ,いずれもfts I 遺伝子上の耐性化に 関わる 3 カ所の変異のうち,1 カ所にのみ変異を 有する Low-BLNAR であることが判明した.

H. influenzaeの 薬 剤 耐 性 は 1980 年 代 ま で はβ ラクタマーゼ産生株によるものが主体であった が,近年 BLNAR によるものが増加しており,軽 度 耐 性 の Low-BLNAR が 25%,BLNAR は 15%

前後の分離率であるとする報告もある4).この報 告は遺伝子解析に基づくものであり,ABPC に対 する MIC を基準とした場合と完全にリンクする とはいえない.後者では,ブレイクポイントを 2

µg!ml もしくは 4µg!ml のいずれに置くかにより 数値にかなり差が生じるが,いずれにせよ 1980 年代半ば以降急速な増加傾向にある.

1990 年代に入ると,BLNAR 髄膜炎の報告が散 見されるようになったが,後半以降その頻度が増 加し5)〜8),遺伝子解析の結果 2002 年にはH. influ-

enzae髄膜炎の 20% を越えたとされている2)

これまで Hib 髄膜炎の抗菌化学療法では,抗菌 力 お よ び 髄 液 移 行 性 の 優 れ る CTX あ る い は CTRX が第 1 選択薬とされてきた.これは,1970 年代半ばより本邦における薬剤耐性の主体を成し てきた,TEM-I 型β-lactamase を産生するβ-lacta- mase-positive ampicillin-resistant(BLPAR)株に 対して,セフェム系薬剤が安定であるためである.

しかし,BLNAR の耐性機序は PBPs へのβラク タム系薬剤の親和性低下に起因しているため,当 然セフェム系薬剤への感受性も低下する9).気道 感染症由来 BLNAR では第 3 世代セフェムへの Fig. 1 Clinical course ofβ-lactamase-negative ampicillin-resistant(BLNAR)Haemo-

philus influenzaetype b(Hib)meningitis

(4)

感受性の低下が指摘されており10)11),1990 年代は これらに対して良好な感受性を示した全身感染症 由 来 b 型 株 で も 近 年 同 様 の 傾 向 を 辿 り つ つ あ る12)13).既に会沢らは,1999 年以降の全身感染症 由来 BLNAR における,CTX,CTRX に対する耐 性化傾向を報告している3).今回の自験例では,

CTX および CTRX に対する感受性が共に低下し ていたことから CTRX の増量を試みた.

しかし,現時点での BLNAR 髄膜炎の治療に関 しては,CTRX がなお最も優れた抗菌薬のひとつ と考えられる.CTRX の他に,piperacillin や me- ropenem の有用性が報告されているが7)14),どち らもβラクタム系薬剤であることから,いずれ耐 性化が進むことが予想される.副作用の点で小児 では使用しにくい薬剤ではあるが,chlorampheni- col や静注用ニューキノロン薬の使用も検討する 必要がある.

いずれにせよ,BLNAR 髄膜炎に対する選択抗 菌薬は限られており,本来は Hib conjugate ワク チンの導入による予防が優先されるべきである.

本邦でもワクチンは近日中に認可される方向にあ るが,公的集団接種に関しては未だタイムテーブ ルに載っていないのが現状である.したがって,

今後も抗菌化学療法が唯一の対抗手段である状態 が続くことになる.

本症例では,分離菌の感受性が判明した時点よ り CTRX を増量し,順調な経過で治癒した.増量 前の髄液培養が既に陰性化していることや,後の PBP 遺伝子解析の結果で起炎菌株の耐性度が低 かったということもあり,通常量(100 mg!kg! day,分 2)でも治癒せしめえたかもしれない.し かしながら細菌性髄膜炎における致死性の高さや 重大な後遺症を考えると,より確実性の高い治療 が求められ,具体的には MIC90の 10 倍,できれば 20 倍以上の髄液中濃度得られることが抗菌薬の 選択条件と言われる15).細菌性髄膜炎の小児に CTRX を 100mg!kg!day 分 2 で投与 し た 際 の 急 性期における髄液中濃度は 7.69±4.75µg!ml であ る と い う 報 告 が あ り16),CTRX の MIC が 0.5 で ある本症例では安全性を考えて 1.5 倍量へ増量し た.これまでに同様の報告例はなく,増量した際

の副作用や髄液移行の問題など検討すべき課題も あるが,本法は BLNAR 髄膜炎に対する有効な治 療法となるものと思われる.

1)上原すヾ子:日本における Hib 感染症のこれま での推移.小児感染免疫 1998;10(3):197―

203.

2)長谷川恵子,小林玲子,千葉菜穂子,諸角美由紀,

生方公子:化膿性髄膜炎由来・耐性インフルエ ンザ菌の遺伝子解析―BLNAR と BLPACR-II の ftls遺伝子について―.第 51 回日本感染症学会! 第 49 回日本化学療法学会合同学会口演 2002;仙 台.

3)会沢治朗,石和田稔彦,黒木春郎,満田年宏,相 原雄幸,菅野治重,他:細菌性髄膜炎の初期治療 における臨床細菌学的検討.日化療会誌 2003;

51(3):115―9.

4)生方公子:BLNAR(耐性インフルエンザ菌).日 本臨床 2003;Suppl 3:p. 61.

5)森川嘉郎,宍田紀夫:βラクタマーゼ陰性,am- picillin 耐性インフルエンザ菌(type b)による化 膿性髄膜炎およびβ-ラクタム剤に対する薬剤感 受性.日化療会誌 1998;46:156―60.

6)秋葉 香,荒井崇彦,太田智子,坂本美千代,矢 崎 棗,秋場伴晴:β-lactamase 陰性,ampicillin 耐性インフルエンザ菌 b 型による化膿性髄膜炎 の 1 幼児例.小児科臨床 2000;53:1485―8.

7)大塚岳人,奥山敬祥:Meropenem が有効であっ た BLNAR による細菌性髄膜炎の一例.Jpn J An- tibiot 2002;55(6):861―5.

8)中林玄一,住田 亮,嶋大二郎,黒木春郎,上原 すゞ子:同時発生した BLNAR 株 b 型インフル エンザ菌による化膿性髄膜炎の 2 例.第 104 回日 本小児科学会口演 2001:仙台.

9)Ubukata K, Shibasaki Y, Yamamoto K, Chiba N, Hasegawa K, Takeuchi Y,et al.:Association of amino acid substitution in penicillin-binding pro- tein 3 with β-lactam resistance in β-lactamase- negative ampicillin-resistant Haemophilus influen- zae. Antimicrob Agents Chemother 2001;45:

1693―9.

10)Ohkusu K, Nakamura A, Sawada K:Antibiotic resistance among recent clinical isolates ofH. in- fluenzaein Japanese children. Diagn Microbiol In- fect Dis 2000;36:249―54.

11)石川信泰,杉岡竜也,杉本和夫:洗浄喀痰由来の インフルエンザ菌および肺炎球菌の薬剤感受性 試験.日本小児呼吸器疾患学会雑誌 2000;11

(2):138―44.

12)相田隆虎,田中美紀,山口 覚:化膿性関節炎を

合併したβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐

(5)

性インフルエンザ桿菌による髄膜炎の 1 例.第 34 回日本小児感染症学会口演 2002:札幌.

13)鈴木香代子,奥山健一,志賀健太郎,武下草生子,

中村智子,菊池信行,他:シプロキサン投与を 行った多剤耐性インフルエンザ菌による化膿性 髄膜炎の 1 乳児例.第 35 回日本小児感染症学会 口演 2003:富山.

14)松崎 薫,小山英明,大美賀薫,長谷川美幸,佐 藤弓枝,小林寅":呼吸器感染症由来の各種耐性

菌に対する Piperacillin 抗菌活性.Jpn J Antibiot 2000;53(8):566―72.

15)春田恒和,大倉完悦,黒木 茂:Ceftriaxone(Ro 13―9904)に関する基礎研究.CHEMOTHERAPY 1984;10:126―35.

16)目黒英典,金保 沫,有益 修,平岩幹男,田島 剛,中條真美子,他:小児の化膿性髄膜炎におけ る ceftriaxone の臨床的,薬物動態的検討.小児科 臨床 1985;38:261―8.

Successful Treatment ofβ-lactamase-negative Ampicillin-resistantHaemophilus influenzae Type b Meningitis with High-dose Ceftriaxone Administration

Fusayo SUDO1)2), Akira NAKAMURA1), Tadashi HOSHINO1)2), Naruhiko ISHIWADA2)& Yoichi KOHNO2)

1)Division of Infectious Diseases, Chiba Children s Hospital

2)Department of Pediatrics, Chiba University Graduate School of Medicine

Haemophilus influenzaetype b(Hib)is the most frequent pathogen of bacterial meningitis in Japa- nese children. The prevalence of beta-lactamase-negative ampicillin-resistant(BLNAR)Hib strain has been increasing in recent years. Furthermore, antibiotic activities of cefotaxime(CTX)and ceftriax- one(CTRX)have decreased against some of those BLNAR strains. We report a case of one-year-old boy who suffered from meningitis caused by BLNAR Hib. The MICs of CTX and CTRX for the strain isolated from cerebrospinal fluid was 1.0 and 0.5µg!ml, respectively. The patient was adminis- tered high-dose CTRX(150 mg!kg!day)and recovered completely without any sequela. The high- dose CTRX administration may be a considerable choice of the treatment of BLNAR meningitis.

〔J.J.A. Inf. D. 78:604〜608, 2004〕

Table 1 Laboratory data on admission CSFHematology Cells  348/3 mm 3 (Neu 97, Ly 1, Mo 2)WBC 2,400 /μl TP  92 mg/dl(Stab 20%, Seg 27%) Glu  49 mg/dlHb 12.0 g/dl Cl  112 mmol/lPlt 13.5×104 /μl Gram stain smear microscopy of CSF Blood chemistry Gram negative

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