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組織風土変革のプロセス・モデルに関する一考察‑‑

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(1)

組織風土変革のプロセス・モデルに関する一考察‑‑

リーダーとフォロワーの相互作用関係を中心に (長 谷川義正教授御退任記念号)

著者 当間 政義

雑誌名 和光経済

巻 45

号 3

ページ 33‑40

発行年 2013‑03

URL http://id.nii.ac.jp/1073/00001866/

(2)

1.はじめに

 現代企業にとって,持続的な競争優位を構築す ることは,何よりも必要である。企業は,組織の 中に革新性や創造性そして柔軟性等を醸成させる ために,この上なく努力を注ぐ必要がある。これ らは,いわば組織を活性化することを意味する。

しかしながら,組織の実情を概観してみると,と りわけ人事管理の手法にとても重要な問題を抱え ていることに気づくのである。それは,組織が病 理現象を抱えてしまっているという問題である。

これは成果主義(performance-based pay system)

の導入によって,企業の中の組織メンバーの間 で,人事管理の認識の仕方に齟齬が生じることに よって起こる現象である[1]。従業員の精神疾患 や自殺等が増加の途を辿るという傾向は,組織の 風土となって形成されていく。そして,これらは

人材の能力発揮にとってとても大きな障害とな る。組織を活性化へと導くためには,これまで長 きにわたって定着してきた組織風土を変革してい かなければならない。そのため理念型としての組 織を問うならば,組織の中にホスピタリティを醸 成させた風土を形成させることが指摘され,検討 されてきた[2]。しかしながら,この変革は非常 に時間がかかる。そこで,これをプロセスとして 捉えることで,変革への着手が可能となる方法を 考えることにする。換言すれば,組織風土の変革 はプロセスとして捉えることで,概念的に成立す るモデルを考案できる可能性がある。本稿では,

これらの諸関係を検討するとともに,理想型とし て組織風土の変革モデルの提示を検討する。

組織風土変革のプロセス・モデルに関する一考察

─リーダーとフォロワーの相互作用関係を中心に─

A Study on the Process Model of the Organizational Climate Change:

Centered on the Interaction of a Leader and a Follower

当  間  政  義 Masayoshi Toma

Abstract

  It is important for a modern company to build the continuous competitive advantages. However, this has an important problem in the human resource management. It is a pathology phenomenon. For example, they are a mental illness, the increase in suicide, etc. It was made the framework for solving this phenomenon to reform the organizational climate. And it arrived at the figure into which the pathology phenomenon of an organization (cause) is changed to hospitality (result) . And the parameter was positioned between these 2 variables. This is the relation between a leader and a follower connected by the commitment. These variables were constituted as a model of this paper. And the change model of the organizational climate was presented as an ideal type. This is the purpose of this paper.

【キーワード】

組織風土の変革,ホスピタリティ,エンパワーメント,コミットメント,サーバント・リーダーシップ

(3)

ダーシップのスタイルが,どんな時でも状況に関 係なく有効であるという考え方はむしろ常に正し くはないと本稿では考えているためである[4,

p. 111 ]。そもそもリーダーシップという概念は,

マネジャーやリーダーが,追随するフォロワーを 導いていくものであるという定式化された構図が あるように見受けられる。本稿では,このような 固定観念的なものとはむしろ異なる視点に着目し ている。

 以上のような視点を念頭におき,リーダーシッ プの議論を行っていくものとする。個人や職務,

組織の様々な要素がリーダーシップの代理の役割 を果たすこともあると考えることが,本稿におけ るリーダーシップの捉え方である。ここで注目す るリーダーシップは,サーバント・リーダーシッ プという概念である[5]。リーダーシップ開発論 などでよく議論されているようであるが,本稿も この概念に注目する必要があろう。このサーバン ト・リーダーシップの概念は,他のリーダーシッ プの考え方と大きく異なる。この特徴は,組織階 層の上位に位置する経営者やマネジャー(あるい はリーダー)こそが,下位に位置するフォロワー に尽くす人でなければならないという考え方にあ る[6]。簡単に言えば,上に立つためには,下位 に受け入れられるように尽くすということであ る。これは,正に権限の受容説に準じるものであ る[7]。リーダーがフォロワーに尽くす,あるい は奉仕するという行為は,組織風土を変革する上 で重要であり,信頼をつくるものといえる。山崎 が,従業員の挑戦意欲やモラールの高揚,創造性 や能力の発揮といった個の活性化の根底には,信 頼という名の要素が必要であると指摘している通 りである[8]。また,この点について,ミンツバ ーグもコミュニティシップの基盤の 1 つとして,

信頼を育む土壌の必要性を指摘している[ 9 ]。こ れらの指摘は,正に,この土壌こそが本研究で扱 うところの組織風土となるのである。では,この サーバント・リーダーシップ概念が機能するため には,どのような状況の下であろうか。この点に ついて,次に検討していくこととする。

2. 組織の活性化へと導く過程に醸成させる 要因

2.1. 

組織風土を変革する新たなリーダーシッ

プへの着目

 さて,組織の中で職務を遂行するという行為 は,全て過程(process)ということができよう。

この職務を遂行していくためには,リーダー(あ るいはマネジャー)とフォロワーという組織メン バーの諸関係を通じて行われる。当然のことなが ら,これら二者の間柄に興味や関心が寄せられる のは当然のことである。組織の状況がこの諸関係 を強めたり弱めたりする作用を及ぼすという可能 性を考えなければならない。このような意味合い から,組織風土は,組織メンバーの行動や思考に 大きく影響を与えるものといえる。この組織風土 は,形成する過程において長い年月を要するもの である。それゆえに,組織風土の変革を着手する 場合,顕著に際立った変革を醸成しこれを固着化 させるためには,非常に長い年月がかかるものと なるであろう。そこで,本稿では,組織の風土全 体の変革について,リーダー(あるいはマネジャ ー)のリーダーシップが大きく影響を与える主体 として位置づけ,注目することにする。むしろ,

ここに焦点を当てて議論を行うことによって,マ ネジャーの行動と影響を与えられるフォロワーの 行動の二者間に視点を絞り考察することで,本稿 の目的であるモデルの考察に近づくのである。そ のうちここではリーダーシップについて考察する ことにする。

 マネジャーのリーダーシップの理論について は,研究論文からテキストのような書籍に至るま で,これまで数多くの研究が出版されてきたこと は周知の通りである。これらの文献をここで敢え て取り上げる必要もなかろうが,論文末注に参考 文献として一例を挙げておくにとどめることにす る[3]。

 さて,本稿で注目し取り扱うリーダーシップに

ついては,テキスト等で一般的に紹介されている

類のリーダーシップの理論ではない。それはリー

(4)

理由がある。作業現場において活力やエネルギー を注入すること,従業員間で責任を共有するこ と,そしてこのエンパワーメントを通じて業績改 善を行うことなどが主たる意味である[ 12 , p.

19]。しかしながら,このエンパワーメントとい う用語は,他の分野でも様々に用いられてきてい る。いったいどのような意味を持っているのであ ろうか。もともと公的な権威や法律的な権限を与 えることという意味の法律用語として,17 世紀 に使用されたのが起源であるとされている[13,

p. 10]。現在では,社会福祉,人間の能力開発,

医療と看護,ジェンダー問題,発達・教育心理学 等の分野に用いられている概念である。このエン パワーメントという用語が,経営あるいは経営学 の分野に登場し使われ始めたのは 1980 年代にな ってからのことである[14,p. 11]。そもそもエ ンパワーメント概念が取り上げられた背景には,

様々な経営課題がある。それは,リエンジニアリ ングという課題,組織のフラット化という経営課 題,戦略創造という経営課題そして組織学習とい う経営課題においても,エンパワーメントという 概念は重要な一プロセスとして取り上げられてい る[ 14 ]。このように様々な視点から議論される エンパワーメント概念は,以下のように,大別す ると 3 つの見方が存在する[15,p. 30]。

 第 1 に,人間のあらゆる心理状態や思考態度を 示すものであり,心理的概念として捉えられる。

この見方は,心理的な作用からモチベーションを 導く概念として考えられ,個人の内面的すなわち 心理的な状態(psychological state)を扱う心理 的エンパワーメントである。別の言い方をすれ ば,動機づけに用いるエンパワーメント概念( a motivational empowerment)である。

 第 2 に,人間の関係性から生じるパワーの行使 に係わる概念であり,社会学的概念として捉えら れる。この見方は,権利を与えるという意味か ら,参加や権限委譲のエンパワーメントである。

別の言い方をすれば,関係性のエンパワーメント 概念(a relational empowerment)である。

 第 3 に,人間の心理的エンパワーメントを促進 させていく組織設計のあり方に係わる概念であ

2.2. 

変革のドライブとしてのエンパワーメン

 組織の病理現象を解決し,ホスピタリティ感の ある組織風土へと導くことが重要なことであるの は言うまでもない。そのためには,組織風土を過 程として捉え,なおかつ介在させる要因を検討す る 必 要 が あ る こ と も 既 に 指 摘 し た 通 り で あ る

[2]。そして,これまでマネジャーやリーダーが 発揮するリーダーシップを サーバント・リーダ ーシップ として検討してきたわけである。これ に対して,追随するフォロワーの側の行動とし て,いかなる概念が必要となるかを検討しなけれ ばならない。

 ここで,組織の中に変革を醸成させ,同時に,

組織の活性化を検討する必要があることから,組 織の革新性についての概念に焦点を当て,これを 検討することが重要なものとなる。しかしなが ら,この組織の革新性の概念についても,リーダ ーシップの理論と同様,これまで多数の研究論文 や書籍等が出版されてきた。これらの文献のレビ ューをする必要もあろうが,ここではわかりやす い参考文献として一例を挙げておくことにとどめ ることにする[ 10 ]。

 本稿で重要視しているのは,フォロワーである 個を活性化する心理的な意味での動機づけの概念 である。この点について,この動機づけの概念に ついても,研究論文からテキストのような書籍に 至るまで,これまで多数の研究論文や書籍が出版 されてきた。このような文献のレビューをする必 要もあろうが,わかりやすい参考文献として一例 を挙げておくことにとどめることにする[11]。

本稿で注目するのは,内発的な意味での動機づけ であり,とりわけ人の内面,すなわち心理に根差 すことから心理的な意味を込めた動機づけ,エン パワーメント( empowerment )の概念に注目す ることにする。この概念について,今一度,検討 する余地がある。

2.2.1. エンパワーメントの多様な見方

 さて,経営学の分野において,このエンパワー

メントという概念が注目されるのは,いくつかの

(5)

ものである。なお,日本企業を対象に行った研究 では,マネジャーの面倒見行動はフォロワーの人 間関係の満足と結びつき,フォロワーの有能感は 革 新 的 行 動 に 結 び つ く こ と が 証 明 さ れ て い る

[22]。この 2 つの変数に集約されており,組織の 活性化には,マネジャーの面倒見行動と個人の有 能感が重要であることが示唆されたのである。こ の点から,マネジャーの行動とフォロワーの行動 と 心 理 的 な 結 び つ き と し て の コ ミ ッ ト メ ン ト

(commitment)が重要である。そしてこの概念の 重要性とあわせて,組織の活力を引き出すには,

多大な努力が必要であることも指摘できる。

2.3. 

リーダーとフォロワーの間に介在するキ

ー概念としてのコミットメント

 病理的状況に陥った企業では,組織変革や組織 メンバーへの動機づけなどといった,変革のドラ イブもかからない状況にある。エンパワーメント の概念を導入する手法において,これらの手法が うまく機能しないために,経営者(もしくはマネ ジャー)たちは,結局,新たな取り組みをするの ではなく,これまで長きにわたって行ってきた指 揮─命令という手法で部下たちをマネジメントす ることになる。これでは,成果主義の導入にみる 経営者の失敗と正に同じであり,組織に混乱を生 み出すだけで効果が期待できるはずがない[ 23 ]。

そこで,本稿で議論するエンパワーメントを機能 させる上で必要となる概念がある。この点につい て,次に検討していくこととする。

2.3.1. コミットメント概念の意味

 リーダーと組織メンバーの間には,信頼関係を 確立させる概念が必要となる。その概念が,本稿 で注目するキー概念としてのコミットメントであ る。コミットメントという概念について,少し検 討する必要があろう。このコミットメントという 概念は,法学,政治学そして心理学の分野で研究 されてきたようである。特に,心理学で研究され てきたものは,対象(object)に対する献身,系 統,没頭などを意味している。人々の心理的なコ ミットメントを引き出すカギ[24,p. 3]は,企 る。この見方は,創造性を発揮させるマネジメン

トのエンパワーメントである。

 以上のように 3 つの見方がみられるが,いずれ も組織のマネジメントにとって重要であるといえ よう。なぜならば,組織を単純に個人の集合体と して捉えるならば,第 1 の見方が出てくる。組織 の構造を階層という見方からすれば,第 2 の見方 が出てくる。そして,組織の中に場のパラダイム

[16]を適用させる考えを持つならば,それは第 3 の見方が出てくるからである。

2.2.2. エンパワーメントの構成概念

 ところで,このエンパワーメント概念は,いく つかの次元(dimension)から構成されているこ とが明らかとなっている[17]。例えば,ミド ル・マネジャーに焦点を当て,このミドル・マネ ジャーをエンパワーするにはどうしたらよいのか という視点から研究したものであり,具体的に,

自 己 効 力 感(self-efficacy), 有 意 味 感

( meaning ),自己決定感( the self-decision )を実 証研究より取り上げている[18]。また他には,

Thomas & Velthouse の研究[19],5 つのステー ジを挙げている Conger & Kanungo の研究[ 20 ] などが代表的な事例として挙げられよう。

 ここで心理的なエンパワーメントに影響を与え るいくつかの要因の 1 つとして,組織風土を位置 づけている代表的な研究を取り上げる。Spreitzer の研究では,以下のように,4 つの次元で構成さ れている[ 21 ]。第 1 の次元は,有意味感は個人 の持つ理想や基準に基づいて判断することを意味 する。第 2 の次元は,コンピタンス(competence)

は職務上の役割に特有の個人の能力に対して持っ ている個人の有能感を意味する。自己効力感と同 義語に考えてよい。第 3 の次元は,自己決定感

( sense of self-determination )は職務をどのように

行動し調整するかの選択権を自らが持っていると

いう個人の自己選択権を意味する。第 4 の次元

は,影響感(influence)は職務成果が組織の目的

や目標にどれくらい成果を与えるかということを

意味する。この 4 つの次元は,実証的検証に基づ

き,相関関係に有意を示し,これをモデル化した

(6)

れ,好意などが含まれる。すなわち,マネジャー との良好な関係を築くことは,組織の恩恵であ り,その場合,コミットメントが必要となる。し かしながら,仕事に伴うストレスおよびその対処 方略に及ぼす心理的風土の影響を検討するものと いう位置づけもあり,働く人々にとってストレス をもたらす組織環境要因ともなっている[25]。

例えば,仕事の負荷,役割葛藤や役割曖昧性,意 思決定の裁量の無さなどがそれである。政策の改 善が図られ,職務がストレッサーとなると一時的 にこれらが除去される。しかしながら,組織風土 の中にストレスを助長する要素が含まれていれ ば,未だ,ワークストレスが生じる結果となる。

結局,組織文化や風土の変革が必要となり,本稿 で注目するのもそのためである[26]。

 ストレス反応を増大させる方向に作用する風土 は,事なかれ主義と敵対的集団主義である。ポジ ティブな心理的風土としては,業績規範と指示的 風土であり,間接的にストレス反応を提言する効 果を持つものと言えよう。反対に,ネガティブな 心理的風土は,敵対的集団主義と事なかれ主義で あり,直接的ストレス反応を高める働きをするの である。

2.4. 組織風土を変革する可能性

 まず図 1 を参考にして欲しい。これまで議論し てきた組織メンバーの精神的な心の病は,組織の 病理現象として解決すべき問題である[2]。これ を原因として位置づける。ついで,解決すべき方 向性としての理念型として組織のホスピタリティ という組織風土の現象を取り上げた。これを結果 としての変数と位置づける。しかしながら,この 構図はそう簡単ではない。この 2 つの変数の間 に,介在する概念が必要となる。それは,これま で検討してきた概念である。マネジャーやリーダ ーの行動とフォロワーの行動として,サーバン 業の業績と社員の充足感をうまくバランスをさせ

ることである。組織のメンバーを威圧する,解雇 をちらつかせるといった古き時代の経営やマネジ メントを行うのでは,うまくいくはずがない。核 と な る 組 織 メ ン バ ー( 一 般 に, 最 前 線 で 働 く 人々)からの心理的なコミットメントを引き出す ことに長い間にわたって成功している企業には,

重要な共通点がある。それは,次の通りである。

第 1 に,一人ひとりの社員の価値を大変重んじて いる。第 2 に,企業業績と社員の充足感をバラン スさせている。第 3 に明確な判断のもとに規律あ る行動を作り上げている[24,p. 3 もしくは p.

14]。このことからもわかる通り,コミットメン トの概念が重要であることが理解できよう。

 ところで,このコミットメントの概念は,外因 的コミットメントと内因的コミットメントとして 大別すると 2 つの概念に分けられる。前者は,職 務における契約や規定の遵守などといった労働条 件を示しており,組織が自分に与えるものを意味 している。一方,後者は,本人のやる気,自発性 に基づく取り組みを意味している。このコミット メントの概念は,個の持てる能力が発揮されもす るが,逆に意欲の喪失を引き起こす可能性もあ る。換言すれば,媒介となる変数を強めたり弱め たりする効果のある変数である。したがって,こ のコミットメントという概念は,ローカス・オ ブ・コントロール(locus of control)としての意 味を持ち,変数の 1 つとして取り扱う必要があろ う。したがって,本稿で取り扱うエンパワーメン トを活かす上では,このコミットメントの概念を 付加したモデルを検討しなければならない。

2.3.2. 

コミットメントの機能化と信頼性の向上

 そもそもリーダーシップというのは,リーダー とメンバーの間の取引関係であるとも解される。

その取引関係は,物品や金などの他に,尊重,誉

リーダーの行動

(サーバント・リーダーシップ概念) コミットメント フォロワーの行動

(エンパワーメント概念)

図1 組織風土を変革させるモデル

(7)

4.むすびにかえて

 現代企業にとって,持続的な競争優位を構築す ることが必要である。そのために,組織を活性化 させることが重要となろう。ところが,組織の実 情を概観してみると,成果主義の導入によって,

人材管理の手法に重要な問題を抱えているもので あった。そのため,組織は病理現象(従業員の精 神疾患や自殺が増加)に陥ってしまったのであ る。これでは組織は活性化しない。この現象を解 決するための枠組みとして組織風土に着目したの である。そのため理念型として,組織風土の中に ホスピタリティを醸成させることとした。さら に,この理念型の中の構成要因を示すこととし た。そこでは,リーダーとフォロワーという二者 の間にそれぞれ相応しいと思われる理念型を提示 した。前者は,サーバント・リーダーシップの概 念であり,後者はエンパワーメントの概念であ る。そして,この二者の間に媒介する概念として コミットメントの概念に着目した(図 1 参照)。

この 3 つの概念に着目し,本稿では,これまでの 定説となる議論を行うのではなく,必要となる議 論のみを提示するものとした。なぜならば,本稿 ではこれらの諸関係を示すとともに,理想型とし て組織風土の変革モデルを提示することが主たる 目的だからである。とりわけ基点となるエンパワ ーメントという概念を介入させる本稿のモデル は,独特な視点といえよう。動機づけられたフォ ロワーが,仮に組織の下位のポジションであった 場合は,サーバント・リーダーシップは有効に機 ト・リーダーシップとエンパワーメントという概

念の関係で成立する諸関係の間に,コミットメン トという概念を介在させることで,組織の活性化 を可能ならしめるモデルが構築されよう。図 1 は,まさにこれらの諸関係を示したものである。

3. 組織の活性化モデルの提示─活力のある 組織風土の醸成へ向けて─

 これまで議論してきたように,成果主義の導入 によって組織の人材の退職行動や精神的な病は,

組織の風土となって表出してきている。この風土 を変化させ,組織のメンバーがホスピタリティを 感じるような居心地のよい風土づくりが何よりも 重要なものとなろう。この関係は,まさに因果関 係となって描くことができる。しかしながら,こ の 2 つの変数の間には,プロセスとしての概念を 介在させる必要がある。ここに本稿の特色があ る。媒介となる変数を信頼という名のコミットメ ント概念であると位置づけた。信頼関係を構築さ せることは,マネジャーやリーダーの行動とフォ ロワーの行動の間の諸関係で成立するものであ る。したがって,この二者の間の相互作用が重要 なものとなる。これによって,組織の病理現象が 解消されるばかりか,変革の途を辿ると考えた。

コミットメントは,リーダーとフォロワーという 組織メンバー間で成立する概念である。したがっ て,これらの諸関係をとりまとめ,組織を活性化 させる風土変革のモデルを提示すると図 2 の通り となる。

リーダーの行動

コミットメント

フォロワーの行動 組織の病理現象

図2 組織風土を変革させるプロセス・モデル

組織のホスピタリティ

(8)

[5]池田守男・金井壽宏(2007):『サーバント・リーダーシッ プ入門』かんき出版。

[6]中村久人(2011):「経営教育におけるリーダーシップの開 発理論とサーバント・リーダーシップ」,『日本マネジメン ト学会第64回全国研究大会報告要旨集(於:流通科学大 学)』。

[7]バーナード,C.I.著,山本安次郎・田杉競・飯野春樹訳

(1968):『新訳 経営者の役割』ダイヤモンド社。

[8]山崎秀雄(2010):「組織の活性化・個の活性化─「信頼」

を基盤としたマネジメントの実現に向けて─」,『和光経済』

第42巻第2・3号,pp. 105─121。

[9]ミンツバーグ,H.著,有賀裕子訳(2009):「コミュニティ シップ経営論」,『ダイヤモンドハーバードビジネスレビュ ー』,November, pp. 58─70。

[10]Kotter, J. K. (1996) : Leading Change, Harvard Business.

[11] ダ イ ヤ モ ン ド ハ ー バ ー ド ビ ジ ネ ス レ ビ ュ ー 編 集 部

(2009):『動機づける力』ダイヤモンド社。

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[13]久木田純(1998):「エンパワーメントとは何か」,『現代の エスプリ─エンパワーメント─』No. 376,至文堂。

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[15]青木幹喜(2006):『エンパワーメント経営』中央経済社。

[16]伊丹敬之(1998):『場のマネジメント』NTT出版。

[17]当間政義・岡本眞一(2006):「組織の活性化におけるマネ ジャーのリーダーシップ行動と組織メンバーのエンパワー メント─」,『東京情報大学研究論集』,第9巻第2号, pp.

71─82。

[18]開本浩矢(2000):「研究開発におけるミドルの心的活力」,

『商大論集』第51巻第5号,pp. 132─142。

[19]Thomas, K. W. & Velthouse, B. A. (1990) : Cognitive dements of empowerment : “An Interpretive Model of Intrinsic task motivation,” Academy of Management Review, Vol.15, pp.

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[21]Spreitzer, G. M. (1995) : Psychological empowerment in the work place : Dimensions, Measurement, and Validation, Academy of Management Jouma1, Vol. 38, No. 5, pp. 1442─

1465.

[22]當間政義(2006):「組織の活性化モデルの検証」,『経営教 育研究9─経営教育と経営の新課題─』学文社,pp. 174─ 190。

[23]アージリス,C.著(2007):「第6章 エンパワーメント:

マネジャーが抱く幻想と矛盾」,ダイヤモンドハーバードビ ジネスレビュー編集部編訳『コミットメント─熱意とモラ ールの経営─』ダイヤモンド社,pp. 179─207。

[24]カッツェンバック,R. J.著,黒田由貴子監訳(2001):『コ ミットメント経営』ダイヤモンド社,p. 3もしくはp. 14。

[25]坂田桐子・岩永誠・横山博司(2006):「心理的風土が看護 職のワークストレスに及ぼす影響─対処方略採用への影響 を考慮したモデルの検討─」『産業・組織心理学研究』第

能するように考えられる。反対に,仮にフォロワ ーを動機づけることに一生懸命になっているリー ダーは,当然,はじめから動機づけられているで あろう。このときのリーダーシップは,本稿でこ れまで議論してきたものとはむしろ反対の議論に なるであろう。なぜならば,リーダーの行動はあ くまでフォロワーに指示・命令することを念頭に 置いて行動しているからである。一般的に取り扱 われるリーダーシップの考え方は,フォロワーを 引っ張っていくあるいは導いていくという概念で あり,適当と考えられる状況も当然のことながら ある。しかし,それが機能するか否かは,組織の 中においてリーダーシップのあり様が,部下のお かれた状況や能力の度合いによって変化すること はいうまでもない。本稿で取り扱ったエンパワー メントの概念がうまく機能するためには,サーバ ントとしてのリーダーシップ行動がとても重要な 意味を持つことになる。したがって,本稿では組 織を活性化させる視点から状況づくりを考え,う まくマネジメントしていくという着想に至った。

重要なことは,リーダーシップのあり様が,組織 風土の変革へ向けて,フォロワーを先行させる行 動であるのか後行追随させる行動であるのかを見 極め,判断し,意思決定して器用に立ち回る必要 がある。これが本来,組織の上層部に位置づけら れるリーダーの行動のあり方ではなかろうか。

 最後になるが,これまで検討してきたように,

本稿で示したものは,組織風土の変革モデルを提 示するというアイデアにとどめている。これはあ くまでも仮説である。この仮説をモデルとして実 証的に研究をしていく必要があろう。具体的に は,操作化として各変数を構成する概念を考え,

統計的分析手法を用いて概念の精緻化をする必要 があろう。以上が今後の課題である。

【参考文献】

[1]中村圭介(2006):『成果主義の真実』東洋経済新報社。

[2]当間政義(2012):「組織の活性化を導く風土変革に関する 一考察」,『和光経済』第45巻第1号,pp. 21─25.

[3]Northouse, P. G. (1997) : Leadership: Theory and Practice, SAGE Publications.

[4]ロビンズ,S. P.著,清川幸美訳(2002):『マネジメントの 正体』ソフトバンクパブリッシング。

(9)

2013年1月11日 受稿 2013年2月 8 日 受理 19巻第2号,pp. 13─23。

[26]コッター,J.P.著,梅津祐良訳(1997):『21世紀の経営リ ーダーシップ』日経BP社。

参照

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