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工業化学科橋本守工業化学科(4年)立藤幸博

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(1)

窒素原子を配位原子とする大環状配位子を用いた      金属錯体の触媒化学的研究(第4報)

テトラアザ〔14〕アヌレンーコバルト(H)および    シッフ塩基一コバルト(H)錯体による       チオフェノール類の酸化反応

        (昭和59年11月30日 原稿受付)

工業化学科橋本守

工業化学科(4年)立藤幸博 環境工学科(4年)和田茂

自然科学教室坂田一矩

Catalytic Outlooks of the Metal Complexes Formed with Nitrogen−Containing Macrocyclic Compounds as Ligand. IV.

Catalytic Oxidations of Thiols with Molecular Oxygen

in the Presence of Tetraaza[14]annulene・Cobalt(n)

and Schiff−Base−Cobalt(II) Complexes.

by Mamoru HASHIMOTO

  Yukihiro TACHIFUJI   Shigeru WADA   Kazunori SAKATA

       Abstract

  (Dib。n・・〔6,ゴ〕〔1,4,8,11〕t・t・aa・a・y・1・t・t・adeci・・t・)・・b・lt(n)・nd凡Mdi・ali・ylid・ne−1・・yc−

、lohexene−1,2−diaminato)cobalt(H) are homogeneous catalysts for the oxidation of various thiophenols

with molecular oxgen in solution of chloroform at 25.0±1.0℃. Anumber of various substituted

thiophenols have been studied;in most cases the corresponding diphenyl disulfide which is a compound originating from coupling of thiophenoxy radicals was the main reaction product. Aspeculation on the mechanism of this reaction has been made.

      D一アミノ酸オキシダーゼ,後者の例としてはチトク

1・緒言         。一ムオキシダーゼなどがよく知られて、、る.チトク

 生体内の酸化反応は酸化還元酵素と総称される一群の  ロームオキシダーゼの反応中心には鉄や銅イオンなどを 酵素の作用によって行われている。酸化酵素(オキシ  含んでおり,その反応にはこれらの金属イオンが重要な ダーゼ)は水素受容体として酸素分子が使われる反応を  役割を演じていると考えられる:)オキシダーゼの反応

触媒する酵素であって,ある種のフラビン酵素のように  は合成化学的にも非常に興味ある酸化反応であるから,

過酸化水素を生成する場合と,チトクローム酸化酵素の   この反応を理解することは生化学のみならず合成化学の

ように水を生成する場合とがある1)前者の例としては,  立場からも重要な意味を持つものである。非酵素的モデ

(2)

24      橋本 守・立花幸博・和田 茂・坂田一矩

ル反応を通して,オキシダーゼ反応の作用機構を検討し

た研究例はほとんどない.V。nD。,,らはN,N・.エ 2・実験方法 チレンビス(サリチリデンアミナト)コバルト(n)錯体を   2.1.金属錯体の合成

使用して,フェノール類の酸化反応を㌍McKilloPらも   2.1.1.(ジベンゾ〔垣〕〔1,4,8,11〕〔テトラ

2V,N 一エチレンビス(アセチルアセトンイミナト)コ   アザシクロテトラデシナト)コバルト(n)(1−Co)

バルト(皿)錯体で,ヒドロキノン類やフェノール類の酸    以前に報告した方法に従って合成した:)

化反応を㌍またSim白ndiらもビス(ジメチルグリオキシ   分子量:測定値345(質量分析法), Co(C 1、 H 1、 N、)

マト)コバルト(H)錯体でヒドロキノンやフェニルヒド  としての計算値345.27。

ラジンの酸化反応5)を行っており,いずれもオキシ   分析値C62.41%,H4.19%, N 16.56%。 Co(C18 Hll、

ダーゼ類似の酸化反応生成物を得ている。しかしその反   N4)としての計算値C 62.61%, H 4.10%,, N 16.23%。

応機構などの検討は不十分な点が多い。そこで我々は,   2.1.2.(N,1V 一ジサリチリデンー1一シクロヘキセ 共役系の広がりを種々に変化できる(ジベンゾ〔6,τ〕   ンー1,2一ジアミナト)コバルト(n)(2−Co)

〔1,4,8,11〕テトラアザシクロテトラデシナト)コバ   村瀬らの方法に従って合成した:)

ルト(n)錯体(1−Co)および(N, N 一ジサリチリデ    分子量:測定値377.06755(高分解能質量分析法),

ンー1一シクロヘキセンー1,2一ジアミナト)コバルト(H)  Co(C 20 H 18 N 202)としての計算値377.06945。

錯体(2−Co)を用い,チオフェノール類の酸化反応   2.2.チオフェノール類

を行った。この反応は(1)式で示され,ジフェニルジスル    チオフェノール類は,アルドリッチ社,和光純薬工業

フィド類への転化率やチオフェノールとコバルト(H)錯  および東京化成工業製の試薬を使用した。液体のチオ 体との相互作用を電子スペクトルで検討し,これらのこ  フェノールや4一メトキシ,2一メチルおよび3一アミノ とから反応機構も推定した。       チオフェノールはガスクロマトグラフ法*で,固体の4        一メチル,4一ニトロ,4一クロロ,4一アミノおよび2一        カルボキシチオフェノールは融点で,それぞれ純度確認

       1      後使用した。

       %〕o  蕊三騰÷㌶

         M=Co,1−(b       法で測定した。質量スペクトルは島津LKBガスクロマ        Ni J−Ni       トグラフ質量分析計GCMS−gooo型および日本電子ガ        スクロマトグラフ質量分析計JMS−DX 300型を用い,

       また高分解能質量の測定には日本電子ガスクロマトグラ

      艇xρ  蕉講1璽㌘三縷

       TMS基準で測定した。電子スペクトルは島津ダブル

       ビーム分光光度計UV−200 Sを用い,12500〜34000 cm−1

       2−Co       領域をクロロホルム中室温で測定した。

      2.4.チオフェノール類の酸化反応

      1−Co (または2−Co)(2.5×10−4モル)のクロロ

R⇔・・rR⇔ ◎R(1)當,穿゜㌶ノ1鷲1チ㍍三隠還

*島津ガスクロマトグラフGC−4CIで測定した。

(3)

(3・5〜4・51/分)を2時間吹き込む。反応溶媒である       表一1 チオフェノールの酸化反応 クロロホルムを減圧で留去後・メタノールや塩化メチレ      )        ジフェニルジスルフィド ン等で鞠晶して,ジフェニルジスルフ,ド類を得た。 触媒a使用したガスへの転化率(%)

また4,4 一ジメトキシ,3,3 一ジアミノおよび2,2㌧     1−Co   空気        71 ジメチルジフェニルジスルフィドは減圧蒸留にて粘稠な     1−Ni   空気        0 液体として得た。これらの生成物を融点・赤外吸収スペ    無触媒   空気         0

クトル・NMRスペクトルおよび質量スペクトル等より  、.C。 窒素   34

確認した・例えばチオフェノール類に認められる赤外吸

@。)、.C叫(ジベ。ゾ〔∪、〕〔1,、,、,11〕テトラアザシ,。テト

収スペクトルの2550〜2600cm−1領域のS−H伸縮振動に     ラデシナト)コバルト(n);

      1−Ni,(ジベンゾ〔b,」〕〔1,4,8,11〕テトラアザシクロテト 起因する吸収帯とNMRスペクトルのδ3・2〜3・5ppm    ラデシナト)ニッケル(n).

領域のチオールプロトンのピークが,ジフェニルジスル

フィド類で消失することにより確認した。さらに質量ス   (クロロホルム)中などに存在するわずかな酸素による

ペクトルにおいても,ジフェニルジスルフィド類の分子  と推測される。これらのことから,チオフェノールの酸 量に対応する分子イオンピークが認められる。      化には仁Co錯体は有効な触媒であり,さらに空気中

      の酸素を使って酸化できることがわかった。

 3.結果と考察

       3.2.種々の置換基を有するチオフェノール類の酸  3.1.1−Co錯体と酸素の有効性       化反応

 表1に示したように,チオフェノールはクロロホルム   種々の置換基をもつチオフェノール類の転化率と生成 中触媒量の1−Co錯体を加えて空気を吹き込むと,ジ  したジフェニルジスルフィド類の融点と分子量を表2に フェニルジスルフィドに酸化される。そこで1−Co錯  示した。面内配位子の共役系の広がりが相違している二 体を加えずにまた1−Co錯体の代りに1−Ni錯体を加  つのコバルト(n)錯体(1−Coと2−Co)は共に9種

えて反応を行っても,チオフェノールの酸化反応は起ら  のチオフェノール類の酸化反応において,いずれも有効 ず, チオフェノールのままであることが認められた。1  な触媒であることが認められ,コバルト(n)錯体の面内

一C6錯体添加後,空気の代りに窒素ガスを吹き込むと  配位子の共役系の広がりの違いによる明確な触媒効果の

転化率が著しく低下する。これは空気中の酸素が,この  差は認められなかった。またチオフェノール類において,

酸化反応に関与しているためと考えられる。しかし一部  ベンゼン環への置換基による電子的効果および立体的効

チオフェノールが酸化されたのは,窒素ガスや反応溶媒  果が転化率へ影響していることが認められる。しかしこ

表一2 種々の置換基を有するチオフェノール類の酸化反応         ジフェニルジスルフィド        ジフェニルジスルフィド類        チオフェノールの    への転化率     融点(℃)  (文献値)8)     分子量c

  置換基 触劇.C。2.C。      測定値(M・)一燕)

4−H      71     67    55.5−56.0  (59−61)     218    218.02 4−CH3         49     56     45.0−46.0   (46−48)     246     246.05 4−NO2         66     65    180.0−181.0   (182)      308     307.99 4−Cl       54      55     68.5−69.5   (70−71)      286     285.94 4−NH2         43     37     70.0−71.5      248     248.04 4−OCH3        74     45     33.0−34.0      278    278.04 3−NH2         39     29      b)      248    248.04 2−CH3         91     65     29.0−31.0      246    246.05 2−COOH        29     25    298.0−299.0 (287−289)     306    306.00 a)1−Co,(ジベンゾ〔6,0〔1,4,8,11〕テトラアザシクロテトラデシナト)コバルト(n);

 2<o,(1∨N 一ジサリチリデンー1一シクロヘキセンー1,2一ジアミナト)コバルト(II).

b)粘稠な液体   c)質量分析法

(4)

26      橋本 守・立花幸博・和田 茂・坂田一矩

の結果からだけでは・この反応に電子的効果が有効か・  表_3チオフエノールの酸化反応における

また立体的効果が有効か明確に述べることはできない。         添加塩基の影響

ll㌔㌔㌶共に同一平面環状にある四つ角鷲←ア罐ジンジフエ輸墨フィド・

の窒素原子を配位原子とする平面型錯体であるが,表1    2.5×10 4    0        71

に示すように1−Co錯体は触媒活性を示すカ㍉ 1−   2.5×10−4  2.5×10−4     49 Ni錯体は活性を示さない。すでに筆者らは,電子スペ

クトルによりこの仁,Co錯体のアキシャル位ヘピリジ

ン分子が1個配位した5配位四角錐型錯体を生成するこ  コバルト(n)錯体とα一トコフェロールの塩化メチレン とを報告している:)またG・een・w・yらもトルエン中9・ 溶液に,置換ピリジンを添加した時の酸化反応への影 KのESRスペクトルの超々微細分裂から,1−Co錯体  響を一30℃のESRスペクトルにより調べ,ピリジン類 がピリジン分子1個をアキシャル位に配位していること  はフェノキシラジカルの生成を阻害することを見いだし を報告している3)さらに村瀬らも表2で触媒活性を示  ている劉これらのことから,塩基添加による高度に安 している2−Co錯体が, ESRスペクトルからピリジン  定なコバルトー酸素錯体の生成は,チオフェノール類の 等の塩基と酸素分子がそれぞれアキシャル位に配位した  酸化反応を阻害するものと考えられ,表3の収率低下の

6配位八面体型構造であることを報告しているlo)これ  要因の一つと推定される。

らのことより,平面型コバルト(11)錯体である1−Co   またBasoloらは酸素錯体生成におよぼす面内配位子 と2−Coはアキシャル位に塩基などを配位するが,1一  の影響を調べ,酸素錯体の生成しやすさは中心コバルト

Ni錯体はアキシ・ル1位に配位しない・この曄1雌媒原子上の電子徽を高くする配位子ほど大きいことを報

活性の差に影響しているのではないかと考えられる。   告している12)そこで配位子場の強さが異なる1−Co錯  1−Co錯体を触媒として,チオフェノール類を空気  体と2−Co錯体を使って,チオフェノール類の酸化反

中の酸素で酸化できるのは,コバルトー酸素錯体を生成  応を行い,その結果を表2に示している。置換基が相違

して酸素分子を活性化するためではないかと考えられる。 することによる転化率への影響は認められるが,触媒で

またコバルトー酸素錯体の生成機構は,動力学的研究の  ある1−Co錯体と2−Co錯体の違いは認められない。

結果から(2)と(3)式の二段平衡で起こっていることが示さ  またジメドニルヨウドベンゼン触媒による酸化反応では,

       2一カルボキシチオフェノールは大きな転化率を示して

C・1L・・2ユLC。・。2 (2)いるが三 本研究では2一力・レボキシチオフエ・一ルは小

       さい転化率であることより,触媒の相違によりその反応       K2

LC♂02・C♂L=LC。°02C♂L(3) 機構が異なるため・これが転化率に大きく影響している

       と考えられる。

      1−Co錯体と1−Ni錯体のクロロホルム中での電子 れている11)さらにBasoloらはN, N 一エチレンビス  スペクトルをそれぞれ図1と図2に示した。1−Ni錯

(ベンゾイルアセトイミナト)コバルト(H)錯体のアキ  体に4一アミノチオフェノールを添加してもスペクトル

シャル位へ配位する置換ピリジンが,電子供与性の大き  は変化しないが,1−Co錯体は367 nmの吸収強度が弱 いほど酸素錯体を作り易いことを報告している12)そこ  まり,394nmの吸収強度が増大しており,さらにこの でチオフェノール類の酸化反応における添加塩基(例え  スペクトル変化は1−Co錯体ヘピリジンが1個配位す ば4一アミノピリジン)の影響を検討した。表3に示し  る5配位錯体生成の場合に類似している:)従って,4一

たように,触媒である1−Co錯体と等モルの4一アミノ  アミノチオフェノールは第5配位子と:して,平面型の1一

ピリジンを添加するとジフェニルジスルフィドへの転化  Coや2−Co錯体のアキシャル位へ配位し,5配位四角

率は大きく減少した。石津らはビタミンE (α一トコ  錐錯体(3)を生成しているものと考えられる。またチー

フェロール)の酸化反応において,軸配位子をエタノー  ルの硫黄よりピリジンの窒素がコバルト(H)イオに強く

ルとする(5,10,15,20一テトラフェニルポルフィナト)  配位することが知られており,そのためチオフェノー

(5)

ルの酸化反応において,ピリジンを添加すると,これが チオフェノールのコバルト(n)錯体への配位を阻害する

ため,表3のように転化率が大きく減少すると考えられ

る。

 これらのこととオキシゲナーゼモデルとしてのフェ

ノール類のシッフ塩基コバルト(幻錯体などを触媒とす る酸化反応機構川などを参考にすると,式(4)〜(6)のよ うに考えられる。すなわちチオフェノールがまずコバル ト(皿)錯体へ配位し,次に配位したメルカプト基(S−

H)のラジカル的解裂によって生成したチオフェノキシ ラジカルが,2分子結合してジフェニルジスルフィドを

生成する機構と考えられる。

  350   400   450   500

図一11_∴∴ル   H\Sか眺

    (クロロホルム中,室温)

;:ぽ』一・・一・一  (▽/\N_N)

      (3)

愚・く一窓 (4)

愈』⑭・⑭一(5)

、       2φ,S・→φ一SS一φ   (6)

350   400   450   500

     波長(nm)

図一2 1−Ni錯体の電子スペクトル     (クロロホルム中,室温)

A:1−Ni錯体;

B:1−Ni錯体に等モルの4一アミノチオラェノール添加後

(6)

28      橋本 守・立花幸博・和田 茂・坂田一矩

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 Cゐε〃2., 43, 2676 (1978)o       

参照

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