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立正経営論集

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立正大学経営学会

立正経営論集

第46巻 第1号

育児期における意識と職務行動が 仕事満足度に及ぼす影響

― 社内メンターの役割に着目して ―

西 岡 由 美 ・ 石 原 直 子

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1.問題意識

本稿の目的は、女性正社員の出産前・復職後の働き方に対する意識や職務行 動が、その後の仕事の満足度に与える影響を明らかにするとともに、それらの 関係性に対する社内メンターの役割について検討することである。

企業の女性活用やワーク・ライフ・バランス(以下、 WLB)の推進にともない、

出産後も正社員として就業を継続する女性が増加しつつある。厚生労働省「第 9 回 21 世紀成年者縦断調査」によると、出産した後も現在の仕事を続けると 回答した女性正社員のうち、 85.6%が同一就業を継続している。しかしながら、

企業による両立支援策の充実により出産後に就業継続していても、復職後の仕 事に対するモチベーションが大幅に低下したり、仕事と育児との両立が上手く できずに悩む女性も少なくない。

育児をしながら働く女性正社員のモチベーションの低下は、働く女性のみな らず企業にとっても大きな問題である。なぜなら企業が彼女らに投資した人的 資本を回収できない可能性があるだけでなく、もし出産後に何らかの理由で離 職した場合、彼女らが保有していた企業特殊的な技能を別の人が補うために、

同様の人的資本の投資を行わなければならず、二重の損失になるからである。

復職後の女性正社員のモチベーションの低下を招く要因については、 法整備、

育児期における意識と職務行動が 仕事満足度に及ぼす影響

― 社内メンターの役割に着目して ―

西 岡 由 美 (立正大学経営学部)

石 原 直 子 (リクルートワークス研究所)

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家庭環境、保育所等の社会的支援、企業による取り組み等、様々な視点から検 討がなされている。なかでも企業の取り組みによって巧拙が生み出されやすい 両立支援制度の整備や、制度を実際に活用(=運用)する職場レベルのマネジ メントに注目した研究が増えてきている。そこでは制度の整備とともに、上司 の管理行動や同僚のサポートといった両立を支援する職場環境の必要性が指摘 されている(Allen2001, Frye & Breaugh, 2004; 佐藤・武石 , 2010; 武石 , 2011;

西岡 , 2012a など) 。

では、こうした企業側からの職場マネジメントの重要性が指摘されるなか、

支援を受ける側は自身の働き方に対してどのような意識を持ち、行動している のか。 前述のとおり職場環境は企業側、 とくに上司の管理行動が大きな鍵を握っ ており、当事者自身の希望や努力によって変えることができる部分は限定的で ある。一方、上司の管理行動が優れていたとしても、または同じ職場であって も本人の働き方に対する意識やとる行動によって仕事に対する満足度は異なる ことが予想される。言い換えれば、上司の管理行動とその指揮命令を受ける部 下の意識や行動の組み合わせによって育児をしながら働く人の意欲や満足度は 異なることが考えられる。したがって、職場環境において重要な鍵を握る上司 の管理行動についても、上司からの一方向からのサポートではなく、当事者の 意識や行動を含めた組み合わせによって考慮する必要がある。

本稿では職場マネジメントにおける上司の役割を包括的に捉えるために、メ

ンタリングの視点を取り入れる。出産、育児といった女性特有のライフイベン

トは、女性のキャリア形成を考える上でも大きな転機である。そのため、良き

指導者であり、支援者であり、理解者である上司や先輩、つまり社内における

メンターの存在は女性の就業継続に重要な役割を果たすことが予想される。実

際に、社内で点在している女性をつなぐネットワーキング活動や育児をしなが

ら働いている自社の女性をロールモデルとして紹介する企業も多い。また、メ

ンター(メンタリング)制度を女性活用の施策として導入する企業も増えてい

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る。

しかしながら既存研究を見ると、組織内でのメンタリングの重要性について は様々な研究で指摘されているものの、継続就業後の女性正社員の満足度につ いて社内メンターの属性(例えば、メンターは直属の上司なのか、異性なのか 等)による影響力の違いに注目した実証研究はほとんどなされていない。そこ で本稿では、女性のキャリア形成に大きな影響を及ぼす女性特有のライフイベ ント、すなわち出産・育児に注目し、社内メンターがどのような役割を担って いるのかを検討する。

以上の問題意識をもとに本稿では、以下の 3 点を検討する。第 1 に、女性正 社員が仕事と育児を両立させるために出産前と復職後の働き方として重要視し ている点を明らかにし、第 2 に、それらの意識と実際の行動が仕事に対する満 足度に与える影響を明らかにすることである。第 3 に、第 2 の傾向について社 内メンターが果たす役割を検討することである。

2.先行研究

2.1 両立支援と職場マネジメント

WLB の取り組みに関する研究については、企業レベルにとどまらず職場レ ベルのマネジメントに着目した研究が増えてきている。なぜなら、WLB の実 現には制度の導入が重要と考えられがちであるが、一律的な制度の適用だけで は不十分である。実際に制度が効果的に運用され、仕事と生活の両立を図るこ とのできる制度として機能するためには、職場マネジメントが重要である(佐

藤・武石 , 2010; 武石 , 2011) 。また、西岡(2012b)では、実証研究の結果を

もとに WLB を推進するためには、企業レベル(WLB 制度の導入) 、職場レベ ル(上司の管理行動および仕事の裁量) 、 個人レベル(WLB 制度の認知)といっ た 3 つのレベルの効果的な組み合わせを考慮する必要性が指摘されている。

職場マネジメントのなかで、最も注目されているのは制度利用者の上司であ

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る管理職の役割である。Hopkins(2005)は、管理職を職場マネジメントの担 い手であり、制度を効果的に運用するための「gatekeeper」であるとし、管理 職は部下の仕事と生活の問題に対して敏感であり、柔軟であり、助けになる ことが重要であると指摘している。このほか、管理職の支援的な行動は、制 度利用者の組織コミットメント、退職率の低下、キャリアに肯定的な影響を与 えることが実証的に確認されている(Ayee & Stone, 1998; Blair-Loy & Wharton, 2002; Frye & Breaugh, 2004 など) 。

また Allen(2001)は、家族支援策が単独でもたらす効果は限定的であり、

家庭支援的な上司の存在が仕事と家庭の葛藤や職務満足等にプラスの影響をも たらすことを実証している。Hammer, et al.(2007)は、両立支援策の導入だ けでは、仕事と家庭の葛藤を軽減したり、健康と福利の改善を図るには不十分 であり、家族支援的な管理者行動が重要であることを指摘するとともに、管理 者の役割として、とくに組織の提供するフォーマルな制度と職場文化や風土と いったインフォーマルな職場環境をつなぐ役割を指摘している。さらに、武石

(2012)は国際比較データにより、日本においてもドイツ、イギリスと同様に、

職務が明確で職務遂行に当たって個人の裁量があるような仕事、上司が個人の 業務遂行や育成に目配りしたマネジメントを行っていること、職場の中で協力 的な雰囲気が醸成されていることが WLB 満足度を高め、また職場のパフォー マンスを高めることを明らかにしている。

2.2 メンタリング

メンタリングとは「知識や経験の豊かな人々(=メンター)が未熟な人々

(=プロテジェまたはメンティー)のキャリア形成と心理・社会的側面に対し

て一定期間継続して支援を行うこと」である(久村 , 1999) 。つまり、メンター

はプロテジェよりも豊富な知識や経験などを持ち、かつ支援提供の意図を持つ

人物である必要がある。そのため、最近では、プロテジェのキャリア形成とそ

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の開発に影響力を及ぼすことができる組織内の支援者、例えば、上級管理職や 直属の上司、職場の先輩などをメンターと捉える傾向がある(Higgins & Kram, 2001) 。

またメンタリングの機能についてみると、Klauss(1981)は、管理職啓発プ ログラムで導入されたメンタリング関係の効果からメンターが遂行する機能と して、①キャリア戦略に対する助言(career strategy advising) 、②個人開発プ ランのカウンセリング (individual development plan counseling) ③スポンサーシッ プおよび仲介(sponsorship and mediating)④モニタリングおよび フィードバッ クの提供(monitoring and giving feedback)⑤ロールモデル(role model)など を明らかにしている。さらに Kram(1988)は、メンターがプロテジェに対し て行うメンタリング機能を、キャリア的機能と心理・社会的機能の 2 種類に分 類した。このうち前者のキャリア的機能は、 上位の人の経験や組織でのランク、

組織的な影響力があってこそ実行可能となり、 「スポンサーシップ」 「推薦と可 視性」 「コーチング」 「保護」 「やりがいのある仕事の割り当て」を提供できる。

後者の心理・社会的機能は相互の信頼と親密さが増すような対人関係によって 生じるものであり、 「役割モデリング」 「受容と確認」 「カウンセリング」 「交友」

を提供できる。

一方、メンタリングの効果については、プロテジェのみならずメンターに も、また組織自体に対しても効果を及ぼすことが指摘されている。メンタリン グ関係をもつことによって、 メンターとプロテジェは「キャリアの発達と成功」

「キャリア満足」 「高いモチベーション」 「好業績」を得ることが実証されてい る(Phillips-Jones, 1983; Kram, 1988) 。

3.データ

以下の分析で用いるデータは、リクルートワークス研究所が実施した Web

調査「仕事と育児の両立に関するアンケート調査」のデータである。調査対象

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は全国の 20 ~ 59 歳の販売サービス職を除く正社員の女性である。平成 19 年

「就業構造基本調査」に合わせて、 年代別に計画標本サイズ 3,500 を比例割当し、

Web 調査の特性を活かして 3,500 人のデータを回収できた時点で調査を終了し た。回答者は、ネットリサーチ会社のアンケートモニターである。調査の実施 期間は 2012 年 2 月 17 日から 20 日である。

本稿では育児をしながら働く女性正社員に焦点をあてた分析を行うため、上 記調査で回収したデータのうち、子どものいる回答者を抽出し 1,018 名を分析 対象とした。

分析対象となるサンプルの主な属性は、平均年齢 45.0 歳、子どもの人数は 平均 1.81 人、 末子の年齢は平均 14.3 歳である。職種はコーポレートスタッフ (経 営企画、法務、財務、人事、広報、総務等)が 32.7% と最も多く、これに専門

職 26.5%、 アシスタント職 10.2%が続く。役職は一般職が 71.0%、 主任・リーダー

クラスが 16.2% であり、課長相当職以上は 2 割未満にとどまる。また最初の出

産時の状況については、出産時期は社会人になって平均 6.9 年目、さらにその 際に育児休職を利用した割合は 47.3% である。

4.出産前と復職後の働き方に関する意識

女性正社員の働き方に対する意識や行動が本人の仕事満足度に及ぼす影響を 分析する前に、本稿の分析データを用いて仕事と育児を両立させるために子ど もを持つ女性正社員が出産前および復職後の働き方として、どのような点を意 識しているかを確認する。

図 1 に示すように、女性正社員は、仕事と育児を両立させるために出産前の

働き方として「上司の理解がある部署で働くこと(平均値 4.21) 」 「両立させ

やすい職務に就いておくこと(同 4.01) 」といった職場環境が重要だと認識し

ている。また、 出産の時期としては「なるべく若いうちに出産すること」が「な

るべく専門性を積んでから出産すること」 「管理職になってから出産すること」

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を上回っており、出産前に社内で一定のキャリアを構築しておくことはそれほ ど重視していない。

さらに図 2 に示すように、復職後の働き方は出産前の働き方に比べて数値が 小さく、各項目にそれほど大きな意識の差が見られないことから、子どもを持 つ女性正社員は仕事と育児を両立させるために復職後よりも出産前の働き方を 意識している。

なお、差は小さいものの復職後の働き方のなかでは、 「家庭に持ち帰らなけ ればならないほどの仕事を引き受けないこと(平均値 3.68) 」 「仕事制約の分、

生産性を上げること(同 3.68) 」 「出産前と同じ職務で働くこと(同 3.60) 」を 重視する傾向にある。逆に 「家庭での持ち帰り仕事をいとわないこと (同 2.87) 」 と「数値で実績を測りやすい仕事をすること(同 2.83) 」は 5 点尺度の 3 点(ど ちらとも言えない)を下回っていることから、これらの働き方はどちらかと言 えば重視されていない。

図1 出産前の働き方に対する意識

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5.変数の設定

5-1.従属変数

従属変数は仕事の満足度( 「自分自身の現在の仕事ぶりについて、総合的に 見て満足していますか」 )を用いる。同変数は、5 点尺度(大いに満足してい る =5 ~かなり不満が残る =1)であり、平均値は 3.546、標準偏差 0.803 である。

5-2.独立変数

独立変数は、子どもを持つ女性正社員の育児と仕事を両立させるための働き 方に対する意識と行動の変数である。前述の女性正社員が仕事と育児を両立さ せるために重視する出産前および復職後の働き方(とても重要= 5 ~まったく 重要でない =1、5 点尺度)について探索的因子分析を行った(プロマックス回 転、最尤法、固有値 1 以上) 。因子分析の結果、出産前、復職後について、そ れぞれ 2 つの因子が抽出された。

出産前の働き方については、表 1 に示すように、第 1 因子は「なるべく実績 を積んでから出産すること」 「なるべく専門性を積んでから出産すること」等 の 5 項目で負荷量が大きく、出産前にキャリアの方向性を描くことや出産時期 について事前計画を練るといった本人のキャリアに関する意識の高さを示して いると判断し「キャリア志向」と名付けた。第 2 因子は「上司の理解がある部 署で働くこと」 「両立させやすい職務に就いておくこと」の 2 項目で負荷量が 大きいことから、 「職場環境」と名付けた。復職後の働き方については、表 2

図2 復職後の働き方に対する意識

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に示すように、第 1 因子は「スタッフ的な仕事をすること」 「数値で実績を測 りやすい仕事すること」 「チームで成果を出す仕事をすること」といった担当 する仕事に関する 3 項目で負荷量が大きいことから、 「職務構造」と名付けた。

第 2 因子は、 「自分がすべきこととそうでない仕事を選り分けること」 「時間制 約の分、生産性を上げること」 「仕事の選り好みをしないこと」等の本人の仕 事に対するスタンスに関連する 5 項目で負荷量が大きいことから、 「仕事の進 め方」と名付けた。

分析に際して、まず意識については各因子を構成する項目の総和の平均を用 いる。各変数の平均値(標準偏差)は、 「キャリア志向」2.850(0.704) 、 「職 場環境」 4.110 (0.824) 、 「職務構造」 2.930 (0.685) 、 「仕事の進め方」 3.578 (0.608)

である。

ついで行動については、 意識の変数を用いた因子分析で抽出された 4 因子 (出 産前の 2 因子、復職後の 2 因子)を構成する項目について、実際にそのように 行動した場合は 1 点、行動しなかった場合は 0 点とし、総和の平均を用いる。

各変数の平均値(標準偏差)は、 「キャリア志向」 0.167 (0.274) 、 「職場環境」 0.419

(0.447) 、 「職務構造」0.252(0.332) 、 「仕事の進め方」0.488(0.352)である。

この他「社内にメンター的な役割の人をもっているか」の質問項目を用いて、

社内メンターダミー(いる =1、いない= 0)を設定した。

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5-3.統制変数

統制変数には、個人属性変数として年齢、職種(コーポレートスタッフ、ア シスタント職、専門職について、それぞれ該当 =1、非該当 =0) 、現在の役職レ ベル(一般社員 =1 ~執行役員・役員 =6) 、最初の出産の直前の役職レベル(一

般社員 =1 ~管理職 =3)を設定した。さらに職場環境変数として、いきいきと

活躍する女性管理職のダミー変数(大勢いる =1、非該当 =0)を設定した。

6.分析結果

6-1.意識・行動と仕事満足度の分析

分析手法は、仕事満足度を従属変数、出産前と復職後の働き方に対する意識、

表2 因子分析:復職後の働き方に対する意識

因子1 因子2 職務構造 仕事の進め方 スタッフ的な仕事をすること 0.772 0.395 数値で実績を測りやすい仕事をすること 0.650 0.387 チームで成果をだす仕事をすること 0.632 0.401 仕事を選り分けること 0.478 0.649 時間制約の分、生産性を上げること 0.289 0.634 仕事の選り好みをしないこと 0.353 0.512 持ち帰らなければならないほどの仕事を引き受けないこと 0.226 0.440 出産前と同じ職務で働くこと 0.245 0.365

固有値 2.885 1.181

分散(%) 36.063 14.759

累積(%) 36.063 50.822

クロンバックのα 0.722 0.639

表1 因子分析:出産前に働き方に対する意識

因子1 因子2 キャリア志向 職場環境 なるべく実績を積んでから出産すること 0.844 0.237 なるべく専門性を積んでから出産すること 0.812 0.264 管理職になってから出産すること 0.524 -0.030 タイミングを事前に計画しておくこと 0.505 0.371 タイミングに関する計画を上司と共有しておくこと 0.467 0.268 上司の理解がある部署で働くこと 0.249 0.845 両立させやすい職務に就いておくこと 0.194 0.747

固有値 2.913 1.531

分散(%) 41.611 21.872

累積(%) 41.611 63.482

クロンバックのα 0.872 0.773

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行動と社内メンターの有無を独立変数、個人属性および職場環境変数を統制変 数とする重回帰分析である。モデル 1 は意識を、モデル 2 は行動をそれぞれ独 立変数として投入したものである。分析結果は表 3 に示したが、以下の 2 点が 注目される。

第 1 に、いずれのモデルにおいても、社内メンターダミーが仕事満足度に有 意な正の影響を示した。つまり社内にメンターが存在する女性正社員は自身の 仕事ぶりに対する満足度が高いことを示す。第 2 に、モデル 2 の行動を独立変 数とした分析では「キャリア志向」 、 「職場環境」 、 「仕事の進め方」が仕事満足 度に有意な正の影響を示したのに対して、モデル 1 の意識を独立変数とした分 析では「仕事の進め方」のみしか有意な影響を示さなかった。これは出産前・

復職後の働き方は意識よりも行動の方が仕事満足度により影響を及ぼしている ことを示す。

表3 重回帰分析 ( 出産前・復職後の働き方に対する意識・行動と仕事満足度)

モデル1 モデル2 β SE β SE

(定数) 2.465 ( .247 ) *** 2.896 ( .161 ) ***

年齢 .066 ( .003 ) ** .094 ( .003 ) ***

職種:コーポレートスタッフ .086 ( .065 ) ** .074 ( .064 ) **

職種:アシスタント職 -.033 ( .092 ) -.042 ( .091 ) 職種:専門職 .031 ( .067 ) -.003 ( .067 ) 役職レベル -.026 ( .022 ) -.033 ( .022 ) 出産時の役職レベル .039 ( .074 ) -.013 ( .076 ) 女性管理職ダミー(大勢いる=1) .151 ( .062 ) *** .130 ( .061 ) **

社内メンターダミー(持っている=1) .064 ( .058 ) ** .063 ( .057 ) **

意識:キャリア志向 .004 ( .039 ) 意識:職場環境 .029 ( .040 ) 意識:職務構造 .011 ( .043 ) 意識:仕事の進め方 .098 ( .045 ) ***

行動:キャリア志向 .082 ( .112 ) **

行動:職場環境 .084 ( .068 ) **

行動:職務構造 .013 ( .095 ) 行動:仕事の進め方 .112 ( .092 ) ***

Adj R2 .046 .079

F値 4.882 *** 7.850 ***

注: ***:p<.001 **:p<.01 *:p<.05

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6-2.社内メンターの役割の分析

表 3 に示したとおり、メンターの存在が仕事満足度に正の影響を与えている ことから、以下の分析では、女性正社員の出産前・復職後の意識や職務行動と 仕事満足度との関係に対する社内メンターの属性の影響を明らかにする。具体 的には、 分析データをまず社内に「メンター」的な役割の人が「いる」 、 「いない」

に分割した後、さらに「いる」について、その人との関係性が①上司である場 合と上司以外(先輩等)の場合、 ②社内メンターが男性(異性)の場合と女性(同 性)の場合にそれぞれ区分した。分析手法は、独立変数から社内メンターの有 無を除外した以外は、 6.1 で示した分析手法と同様である。分析結果は表 4(モ

デル 1)と表 5(モデル 2)に示した。

まず表 4 に示すように、女性正社員の出産前と復職後の働き方に対する意識 が仕事満足度に及ぼす影響は、社内メンターの有無、さらに社内メンターのタ イプによって傾向が異なる。社内メンターがいない場合には、 「仕事の進め方」

が有意な正の影響を、 「職場環境」が有意な負の影響を示した。さらに社内メ ンターがいる人のうち、 それが組織で垂直的な関係性にある上司の場合には 「仕 事の進め方」が有意な正の影響を示すのに対して、上司以外の場合には回帰式 そのものが有意でない。性別については、社内メンターが異性の男性である場 合には、 「職場環境」で有意な正の影響を示すのに対して、同性の女性の場合 には「仕事の進め方」で有意な正の影響を示した。

ついで表 5 をみると、モデル 1 の意識と同様に社内メンターの有無、社内

メンターの属性によって女性正社員の出産前と復職後の職務行動が仕事満足度

に及ぼす影響は異なる。社内メンターがいない場合は、 「キャリア志向」と「仕

事の進め方」が有意な正の影響を示した。社内メンターがいる女性正社員につ

いては、それが上司の場合には「職場環境」と「職務構造」が有意な正の影響

を示すのに対して、上司以外の場合には回帰式そのものが有意でなく、いずれ

の傾向も確認できない。性別では、異性の男性の場合には「職場環境」が、同

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モデル1 社内メンターあり社内メンターなし ①上司/上司以外②性別 上司上司以外男性女性 βSEβSEβSEβSEβSE (定数)2.958(.531)2.965(.736)***3.448(.545)***1.952(.606)***2.363(.297)*** 年齢-.054(.006)-.029(.008).036(.006)-.042(.007).086(.004)** 職種:コーポレートスタッフ-.056(.140).135(.186)-.161(.142).277(.175)**.088(.078) 職種:アシスタント職.002(.191).089(.333)-.059(.196).141(.296)-.058(.110) 職種:専門職-.217(.143)**.114(.173)-.227(.165)**.114(.150).051(.083) 役職レベル.045(.044)-.040(.054).053(.043)-.076(.054)-.046(.029) 出産時の役職レベル-.063(.133).022(.336)-.177(.142)*.078(.221).071(.092)* 女性管理職ダミー(大勢いる=1).258(.109)***.124(.164).246(.122)***.142(.132).129(.079)*** 意識:キャリア形成-.098(.081).102(.114)-.118(.088).145(.096).017(.049) 意識:職場環境.118(.067).078(.094).199(.074)**-.068(.078)-.074(.043)* 意識:職務構造-.017(.088)-.015(.114)-.071(.096).078(.106).003(.053) 意識:仕事の進め方.242(.106)**.015(.131).094(.110).237(.121)**.161(.061)*** Adj R2.115-.055.096.108.051 F値2.729***.5102.198**2.273***4.480*** 注: ***:p<.001 **:p<.01 *:p<.05 モデル2 社内メンターあり社内メンターなし ①上司/上司以外②性別 上司上司以外男性女性 βSEβSEβSEβSEβSE (定数)3.574(.342)***3.477(.584)***3.657(.361)***3.071(.467)***2.691(.195)*** 年齢.026(.006)-.015(.008).086(.007).011(.007).125(.004)*** 職種:コーポレートスタッフ.001(.141).123(.183)-.154(.146).277(.178)**.077(.077)* 職種:アシスタント職-.011(.193).118(.334)-.068(.198).182(.298)*-.066(.108)* 職種:専門職-.150(.144).088(.168)-.207(.168)*.155(.152).004(.083) 役職レベル.053(.043)-.051(.054).034(.043)-.052(.054)-.045(.028) 出産時の役職レベル-.147(.140).007(.357)-.223(.145)**.063(.248).005(.095) 女性管理職ダミー(大勢いる=1).250(.113)***.103(.166).220(.129)**.141(.134).120(.078)*** 行動:キャリア志向-.074(.195).080(.305)-.008(.202)-.003(.287).124(.146)*** 行動:職場環境.175(.136)*.132(.177).201(.151)**.006(.162).066(.085) 行動:職務構造.180(.187)*.021(.271).006(.210).210(.220)**-.025(.119) 行動:仕事の進め方-.014(.202)-.061(.280).010(.210).055(.267).141(.112)*** Adj R2.096-.052.073.083.085 F値2.417***.5341.882**1.950**6.960*** 注: ***:p<.001 **:p<.01 *:p<.05

表5 重回帰分析 ( 出産前・復職後の働き方に対する行動と現在の仕事満足度)

表4 重回帰分析 ( 出産前・復職後の働き方に対する意識と現在の仕事満足度)

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性の女性の場合には「職務構造」がそれぞれ有意な正の影響を示す。

さらにモデル1とモデル 2 の分析結果を比較すると、社内メンターが上司以 外と男性の場合は同じ傾向を示すのに対して、社内メンターがいない場合、上 司の場合、女性の場合で仕事満足度に影響する働き方の項目が異なる。社内メ ンターがいない場合には、 「仕事の進め方」はモデル 1、モデル 2 ともに有意 な正の影響を示すのに対して、 「職場環境」はモデル 1 のみで有意な負の影響、

「キャリア志向」 はモデル 2 のみで有意な正の影響を示している。社内メンター が上司の場合には、モデル 1 では「仕事の進め方」が有意な正の影響を示すの に対して、モデル 2 では「職場環境」が有意な正の影響を示している。社内メ ンターが女性の場合には、 モデル 1 では「仕事の進め方」が、 モデル 2 では「職 務構造」がそれぞれ仕事満足度に影響を及ぼしている。

6-3.追加分析

社内メンターの役割の分析結果より、当事者である女性正社員とメンターと の関係性により、出産前・復職後の働き方に対する意識や行動が仕事満足度に 与える影響は異なることが明らかになった。そこで、当事者と社内メンターと の関係性による仕事満足度の違いをより詳しく検討するために、社内メンター を上司・上司以外と性別の組み合わせで 4 つのタイプに分類し、それぞれのタ イプの仕事満足度を示したものが図 3 である。

第 1 に 4 つのタイプはいずれも社内メンターがいない場合よりも仕事満足度

が高い、第 2 に同性の上司が社内メンターの場合に最も仕事満足度が高いのに

対して、異性でかつ上司以外の人が社内メンターの場合に最も仕事満足度が低

い。第 3 に社内メンターが上司の場合に比べて、上司以外の方が性別による仕

事満足度の差が大きいことから、社内メンターが職場組織の垂直的関係ではな

く、当事者が所属する組織から少し離れて存在する場合には、社内メンターと

当事者である子どもを持つ女性正社員との性別の組み合わせが重要な鍵となる。

(16)

7.まとめ 7-1.結論

本稿では質問票調査のデータを用いて、子どもを持つ女性正社員の出産前・

復職後の働き方に対する意識・行動および社内メンターの存在と仕事満足度と の関係を明らかにするとともに、それらの関係性に対する社内メンターの属性 の影響を検討した。主な分析結果は以下となる。

第 1 に、子どもを持つ女性正社員の出産前・復職後の働き方に対する意識の うち、仕事満足度に影響を与えるのは「仕事の進め方」のみであった。これに 対して、行動については、 「職務構造」を除く「キャリア志向」 、 「職場環境」 、

「仕事の進め方」で仕事満足度に影響を与えていた。これは、出産前・復職後 の働き方については当事者である女性正社員が重要であると認識していたとし ても、当事者の裁量によって実現できる部分は限られており、意識よりも実際 にそのように行動できたかが、 仕事満足度に大きく影響することが示唆される。

なお、 「仕事の進め方」 については意識・行動の両面で影響が確認された。 これは、

育児をしながら働き続けるためには、出産前とは異なり時間的・体力的な制約 図3 メンターとの関係性別にみた仕事満足度

仕事満足度

(17)

が大きくなることから、育児期の女性正社員はそれを前提とした効率的な仕事 の進め方を意識し、実行する必要性があることを示している。

第 2 に、社内メンターの存在は、仕事の満足度を高める傾向にある。メンタ リングのプロテジェに対するポジティブな効果として、先行研究でも「職務遂 行意欲」や「職務満足」が指摘されており(久村 ,1997) 、育児をしている女 性正社員についても同様の結果であった。

第 3 に、社内メンターの有無、社内メンターの属性(上司か上司以外か、男 性か女性か)により、出産前と復職後の働き方に対する意識や行動が仕事満足 度に及ぼす影響は異なる。まず意識の面をみると、社内メンターがいない場合 には、働き方のうち「仕事の進め方」は仕事満足度につながるが、 「職場環境」

は逆効果となる。社内にメンターがいない場合には、社内の両立支援の状況等 について出産前に十分な助言を得ることができず、逆に上司の理解や同僚の支 援といった職場環境を意識しすぎることにより理想と現実のギャップに悩まさ れ、それが仕事に対する不満につながっていることが考えられる。性別に注目 すると、メンターの性別により傾向が異なり、男性の場合には「職場環境」が、

女性の場合には「仕事の進め方」が影響を与えている。つまり、社内メンター が男性の場合には、上司の理解や同僚の協力などの職場のサポート体制を意識 することが仕事の満足度につながり、女性の場合には他者からのサポートでは なく、個人レベルで効率的な仕事の遂行を意識することが仕事の満足度につな がる。これは、当事者と社内メンターとの関係性が性別によって異なることを 示唆しており、同性である女性メンターには仕事面でのサポートや共感を求め るのに対して、異性である男性メンターには職場の環境整備を求める傾向にあ る。

ついで行動の面でみると、メンターがいない場合には、仕事満足度に影響を

与える女性正社員の行動は「キャリア志向」と「仕事の進め方」である。意識

の面では影響が見られなかったが、出産前にキャリアの方向性を見出しておく

(18)

ことは復職を円滑にし、 その後の仕事に対する満足度を高める。この背景には、

自分でキャリアを選択しているという自己効力感があるのかもしれない。 「仕 事の進め方」は意識、行動の両面で女性正社員の仕事満足度を高める重要な要 因といえる。さらに社内メンターの属性別にみると、社内メンターが上司であ る場合には、 「職場環境」と「職務構造」といった働き方のなかでも、とくに 職場マネジメントに関わる部分で影響が確認できる。なお、この傾向は社内メ ンターの性別で違いがみられ、男性の場合には出産前の「職場環境」 、女性の 場合には復職後の「職務構造」が仕事満足度に影響を及ぼしている。このこと からもメンターが同性か異性かによって両立支援におけるメンターの役割は異 なることが示唆される。

第 4 に、追加分析から、組織で垂直的関係にある上司が社内メンターの方が 上司以外に比べて仕事満足度が高く、社内メンター上司の場合に比べて、そう でない場合の方が仕事満足度に対する性別の影響が大きいことが明らかになっ た。 つまり子どもを持つ女性正社員の社内メンターとして、 上司以外をメンター とする場合にはできるだけ同性を選択すべきである。

7-2.含意

本稿の分析結果から得られる含意は以下の 2 点である。第 1 に、これまでの 研究は仕事と家庭生活の両立を実現するための取り組みや効果について主に企 業の視点から検討してきたが、子どもを持つ女性正社員の仕事満足度は出産前 および復職後の当事者の意識や行動、さらに当事者とその指導者、支援者、理 解者であると社内メンターとの関係性にも影響を受けていることを明らかにし た。今後、職場マネジメントを検討する際には、当事者や当事者と管理(支援)

者との関係性といった視点も考慮すべきである。

第 2 に、 実務的な観点としては、 育児をしながら働き続ける女性正社員にとっ

ての社内メンターの重要性を実証的に明らかにした点である。ただし、その際

(19)

に考慮しなければならないのは、メンターとプロテジェとの関係性により期待 される効果は異なる可能性がある。とくに本稿の分析結果は、メンターの性別 による効果の違いを示唆している。Kram(1988)は、メンター関係において 異性間の関係性は非常に複雑であり、とくにジェンダーに関連した問題につい て、男性メンターが共感したり、役割モデルを提供したり、女性のプロテジェ を同一視するのは難しいと指摘している。本稿でも育児期の両立支援について 女性正社員は、男性メンターには職場環境の整備を求め、女性メンターには共 感を求める傾向が示唆された。メンタリングは人がキャリアを発達していく上 で、極めて重要な役割を果たすが、働く女性にとって就業を継続する上で大き な障壁となる出産、 育児に関しても、 男性メンターが果たす役割は女性メンター と異なることが想定される。今後、企業におけるメンタリングの取り組みの促 進が期待されるとともに、企業組織におけるメンターとプロテジェの関係性に ついてはさらなる検討が必要である。

7-3 今後の検討課題

最後に本稿の限界と今後の検討課題を述べる。第 1 に、本稿の分析ではデー タの制約から、調査時点での社内メンターの存在を変数として用いたが、出産 前・復職後の意識・行動については、その時点のメンターの存在と属性が最も 影響を及ぼすことが考えられる。またメンタリング関係は 1 対 1 の関係にだけ 成立する関係ではなく、1 対複数にも成立することが指摘されていることから

(Higgins & Kram, 2001)、社内メンターは複数存在することも想定される。さら

に、意識・行動のいずれにおいても、上司以外のメンターについては有意な傾

向が確認できなかった。これは上司以外メンターには、先輩社員等を含む上司

以外の多様なタイプが含まれており、その属性を特定できないためと考えられ

る。社内メンターの役割についてはこれらの点を考慮した、より詳細な検討が

求められる。

(20)

第 2 に、所属する企業の労務構成や両立支援への取り組み状況をコントロー ルできていない点がある。職場における女性正社員の意識・行動は、自社の WLB や両立支援に対する制度の整備状況や職場の取り組みの現状に依存する 部分も少なくない。今後は、当該女性社員を取り巻く企業および職場環境の状 況を考慮した上での検討が必要である。

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September, 2013

RISSHO MANAGEMENT REVIEW

Vol. 46, No.1

PUBLISHED BY

RISSHO MANAGEMENT ASSOCIATION

Mentoring affects women's work attitudes, behavior, and job satisfaction.

Yumi Nishioka & Naoko Ishihara

参照

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