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米本 土 ミサ イル 防衛 構 想 論 争
一 フ ォ ー リ ン ・ア フ ェ ア ー ズ 誌 に お け るNMD論 争 を 中 心 に一
林 亮
MissileDefenseDebateintheU.S.:
HovcrhasForeignAffairsdiscussedN11/ID?
HAYASHIAkira
は じめ に
ブ ッ シ ュNMD(NationalMissileDefense)構 想 は、 冷 戦 後 の新 しい世 界 に お い て も一 極 支 配 と もさ れ る米 国 の圧 倒 的 立 場 を維 持 し よ う とす る試 み で あ る と言 わ れ て い る。 長 距 離 核 ミサ イ ル か ら米 国 本 土 や 海 外 基 地 を 防衛 し よ う とす る こ の構 想 は 、 変 転 す る21世 紀 の 国 際 環 境 の 中 で 米 国核 抑 止 力 を継 続 して機 能 させ る こ と を狙 っ て 推 進 され て き た。
NMD構 想 は 米 国 攻 撃 核 戦 力 と結 び つ くこ とで 敵 対 勢 力 の ミサ イ ル 戦 力 の 完 全 な相 殺 を 目指 す 防衛 とい う言 葉 とは裏 腹 な攻 撃 的 性 格 も有 して い る。 そ の た め に 米 国 がNMD構 想 を推 進 す る決 定 自体 が 、 現 在 の相 互 核 抑 止 に 基 づ く核 保 有 国 間 の 戦 略 的 安 定 を崩 壊 させ 、 核 抑 止 力 の相 殺 を恐 れ る敵 対 国 の 攻 撃核 戦 力 の 増 強 を招 くで あ ろ う。NMD構 想 は 防衛 の名 の 下 に 核 不 拡 散 の
流 れ を逆 転 させ 、核 戦 争 の 脅 威 を高 め る非 常 に 危 険 な 政 策 で あ る。
米 国 は 日本 に と って 最 重 要 の 友 好 国 で あ り多 くの 価 値 観 ・利 害 を共 有 して い る。 しか し 日本 と米 国 は地 理 的 に も経 済 的 に も異 な る条 件 も ま た 多 い 。 NMD構 想 推 進 に よ る国 際 秩 序 安 定 を 目指 す 米 国 の政 策 は、 日本 の 生 存 に最 適 な 国 際 環 境 を与 え る もの と言 い切 れ るの だ ろ うかP少 な く と もブ ッ シュ 政 権 のNMD構 想 が 国 際 関 係 全 体 と くに 東 ア ジ ア 政 治 情 勢 に 与 え る影 響 に つ い て よ り慎 重 な検 討 が 必 要 で あ ろ う。 狭 小 な 国 土 に 高 い 人 口密 度 とい う地 理 的 条 件 、 唯 一 の被 爆 国 で あ る と同 時 に わ ず か 半 世 紀 ほ ど前 に近 隣 諸 国 を侵 略
した歴 史 的 条 件 な ど を検 討 す る だ け で も、 日本 が 米 国 と同 様 の 国 際 関 係 の 立 脚 点 に 立 つ に は 無 理 が あ る こ とが 分 か る だ ろ う。 ブ ッ シ ュNMD構 想 を無 条 件 に支 持 す る前 に、 そ の具 体 的構 想 、 国 際 関係 に 与 え る影 響 な ど を 日本 自 身 が 多面 的 に検 討 し国 内 で 十分 に 議 論 す る必 要 が あ る。
本 論 は まず ブ ッ シ ュNMD構 想 の 具 体 的 計 画 を 明 らか に す る。 内 外 の 新 聞 、 雑 誌 、 テ レ ビ等 で す で に 報 じ られ て い るが 、 同構 想 が 高 度 な 軍事 技 術 を 駆 使 した 計 画 で あ る上 、 主 に ・ロシ ア とのABM制 限 条 約 に よ る政 治 的 制 約 を 回避 す る た め に複 雑 き わ ま りな い 説 明 が な され て きた。 構 想 部 分 と政 治 的 発 言 、 現 実 の 研 究 ・配 備 計 画 と将 来 計 画 が 混 同 され そ の実 態 の 把 握 は 困 難 で あ る。 そ こ で今 一 度 原 点 に立 ち戻 っ て 米 国政 府 が 公 式 に発 表 して い る情 報 に 立 ち戻 っ て検 討 して み た い。 本 論 で は主 に米 国 国 防省 で公 開 され て い る各 種 委 員 会 の 報 告 書 、 実 験 計 画 な ど基 本 的 情 報 を用 い て具 体 的 な構 想 推 進 につ い
て 明 らか に して み た い。
さ らに 米 国 内 に お け るNMD構 想 論 争 を分 析 し、何 が 論 点 に な っ て い る か に つ い て 探 りた い。 米 国 で は 多様 な価 値 観 と政 策 目標 の優 劣 を巡 っ て公 開 の論 争 が 盛 ん に行 わ れ て い る。 ま して大 統 領 選 挙 の年 で あ る。NMDに 積 極 的 な ブ ッ シ ュ 陣営 とTMD(戦 域 ミサ イ ル 防衛)計 画 に さ え慎 重 に 見 え る ゴ ア 陣 営 の 聞 で 、 ミサ イ ル 防衛 構 想 推 進 が 大 統 領 選 挙 の論 争 点 の 一 つ とな っ た こ とは 間 違 い あ る ま い。 しか しす べ て の議 論 を取 り上 げ て そ れ ら を検 討 す る こ とは到 底 不 可 能 で あ るの で 、 本 論 で は 米 国外 交 評 議 会 の編 集 す る 『フ ォー
リン ・ア フ ェ ア ー ズ』 誌 中 でNMD構 想 を扱 っ た 論 文 を 取 り上 げ、NMD 論 争 の論 点 と論 争 の方 向性 を明 らか にす るす る こ と を 目指 して い る。
結 論 と して 明 らか に な る こ とは、 世 界 的 な核 拡 散 トレ ン ドに対 応 す る戦 略 をめ ぐっ て 米 国 国 内 に 大 別 して 二 っ の 選 択 肢 が 存 在 し論 争 が 続 い て い る こ と で あ る。 第 一 の選 択 肢 は 国 際 社 会 と協 調 し政 治 ・経 済 な ど多 面 的 な方 策 に よ って核 兵 器 と長 距 離 ミサ イ ル の拡 散 を止 め よ う とす る戦 略 、 第 二 の 選 択 肢 は 米 国 を攻 撃 目標 とす る全 て の長 距 離 核 ミサ イ ル を宇 宙 迎 撃 シ ス テ ム を構 築 し
て 無 力 化 す る こ とに よ っ て解 決 す る戦 略 で あ る。
二 っ の選 択 肢 の う ち よ り平 和 で豊 か な 日本 の 将 来 に役 立 つ の は どち らの 戦 略 で あ ろ うかP第 三 の選 択 肢 は 存 在 しな い の か 。 地 球 社 会 全 体 の 平 和 と繁 栄 とい う大 前 提 の 上 で、21世 紀 の 国 際 社 会 に 柔 軟 に 対 応 し生 き残 っ て い くた め
米本 土 ミサ イル防衛構 想論 争67
に、 米 国 国 内 で のNMD論 争 に 学 び 我 々 日本 人 の 進 む べ き道 の 参 考 と した
い 。
1核 軍事 力で単独優 位 確立 を 目指 すNMD構 想
① ブ ッ シ ュNMD構 想
2001年5月1日 大 統 領 選 挙 に勝 利 した ブ ッ シ ュ大 統 領 は 米 国 防 大 学 に お い て新 た な ミサ イ ル 防 衛 構 想 に 関 す る演 説 を行 っ た 。 大 統 領 は ま ずABM制 限 条 約 に よ っ て象 徴 され る相 互 抑 止 戦 略 を保 持 す る こ とに よ っ て 米 国 が 安 全 を確 保 して きた こ と を確 認 す る。 しか し彼 は冷 戦 の 勝 利 に よ る ソ連 消 滅 に よ って 数 千 規 模 で飛 来 す る ソ連 核 ミサ イ ル は もはや 米 国 に とっ て 脅 威 で は な く、
現 在 の 脅 威 は テ ロ ・脅 迫 国 家 に よ る大 量 破 壊 兵 器 を装 備 した ご く少,.の ミサ イル に あ る とす る。 核 ・生 物 ・化 学 兵 器 と長 距 離 ミサ イ ル 技 術 拡 散 に よ る新 た な脅 威 に対 抗 す るた め に は、 冷 戦 時 代 の よ うに 「核 報 復 の 脅 し」 の み に依 存 す る こ とは で きず 、 「ABM制 限 条 約 の 制 約 を 乗 り越 え て 」、 同 盟 国 と協 力 して 新 た な ミサ イル 防衛 網 を構 築 す る必 要 が あ る と提 起 した。 こ の新 た な ミ サ イ ル 防 衛 網 は 「米 国 とそ の 駐 留 部 隊 、 友 邦 、 同盟 国 を守 る こ との で き る」
シ ス テ ム で な け れ ば なち ず 、 当 面 の 限 定 的 な 脅 威 へ 対 抗 手 段 は 「中 間 軌 道 な い し大 気 圏再 突 入 後 の ミサ イ ル を迎 撃 す るた め に 、 陸上 お よ び 海 上 配備 の 既 存 の 技 術 」 と、 「ミサ イ ル 上 昇 段 階 」 で の 迎 撃 シ ス テ ム で構 成 され 、 す で に 国 防長 官 が 構 想 実 現 の た め に 調 査 に 入 っ た とNMD推 進 が 決 定 済 み の 政 策 で あ る こ とを強 調 した(1)。
ブ ッ シ ュ ・ミサ イ ル 防 衛構 想 の 内容 は 以 下 の 四 点 に 集 約 で き る と思 わ れ る。
(i)冷 戦 の勝 利 に よ って 米 ソ2核 超 大 国 に よ る相 互 核 抑 止 関係 が 崩 壊 した。
(ii)米 国 へ の 脅 威 は、 「テ ロ ・脅 迫 国 家 」 に よ る核 ・生 物 ・化 学 兵 器 な どの 大 量 破 壊 兵 器 を装 備 す る少 数 の ミサ イ ル に な っ た 。(iii)米 国 は 「米 国 とそ の 駐 留 部 隊 、 友 邦 、 同 盟 国 」 を守 る ミサ イ ル 防衛 網 を、 「陸 上 、 海 上 配 備 の 既 存 の 技 術 」 と新 た な 「ミサ イ ル 上 昇 段 階 」 で の迎 撃 シ ス テ ム に よ って 構 築 す る。(iv)シ ス テ ム の 開 発 と配 備 の た め にABM制 限 条 約 の 制 約 を撤 廃 し、
その 構 築 に あ た っ て は 同盟 国 や ロ シア と も協 力 す る。
レー ガ ン 大 統 領 のSDI計 画 を例 外 と して 、 旧 ソ連 あ る い は ロ シ ア と の相 互 核 抑 止 体 制 維 持 を原 則 と して き た 米 国 核 戦 略 で あ る が 、 ブ ッ シ ュNMD
構 想 は相 互 抑 止 の 原 則 を大 き く変 更 し よ う と して い るか に見 え る。
②NMD構 想 誕 生 の歴 史
冷 戦 下 の 米 ソ核 秩 序 は主 に三 っ の レ ジー ム に よ っ て維 持 され て きた と思 わ れ る。 第 一 にSALT(戦 略 兵 器 制 限 条 約)、START(戦 略 兵 ・器 削 減 条 約)、
ABM制 限 条 約 を 中 心 と し た 核 軍 備 管 理 交 渉 と条 約 に よ る二 核 超 大 国 の MAD(相 互 核 抑 止)体 制 の 維 持 、 第 二 にNPT(核 拡 散 防 止 条 約)を は じ
め とす る 国 連 常 任 理 事 国5力 国 に よ る核 兵 器 独 占体 制 、 第 三 にCTBT(包 括 的 核 実 験 禁 止 条 約)、MTCR(ミ サ イ ル 関 連 技 術 輸 出 規 制)な ど を は じめ
とす る大 量 破 壊 兵 器 とそ の 運 搬 手 段 で あ る長 距 離 ミサ イ ル 技 術 の独 占 と拡 散 防 止体 制 で あ る。
こ れ らの レ ジー一ム に よ って 曲 が りな りに も世 界 核 秩 序 は守 られ核 戦 略 上 の 安 定 は維 持 され て き た とい え る。(し か し一 方 で安 定 は相 互 に 自国 を相 手 国 の核 ミサ イル 攻 撃 に実 際 上 の 無 防 備 状 態 に お くこ とで守 られ て き た と も言 わ れ 、 自国 民 を核 攻 撃 の 人 質 とす る軍事 戦 略 を非 道 徳 的 と非 難 す る見 方 も存 在 した)。 だ が 防衛 ミサ イ ル が 米 ソ双 方 の 第 二 撃 能 力 を不 確 実 化 して 両 国 の 戦 略 的 安 定 を崩 壊 させ る ため に、 ま た一 方 で 高 速 で 飛 来 す る 多 数 のICBM弾 頭 を効 果 的 に 迎 撃 す る こ とが 技 術 的 に 極 め て 困 難 な こ と もあ っ て、 レー ガ ン 政 権 のSDI構 想 を例 外 と し て い ず れ の 米 政 権 もABM制 限 条 約 を維 持 し 米 ソ間 の相 互 確 証 破 壊 体 制 を事 実 上 容 認 して き た。 結 果 と して 旧 ソ連 の核 軍 事 力 が 崩 壊 し米 ロ間 の 軍事 力 バ ラ ン ス が 米 国 側 に 大 き く傾 くこ とで 、 これ ら核 戦 略 上 の 矛 盾 点 は 解 決 され る こ と無 しに放 置 され て い た と言 え る。
しか し1991年 の 湾 岸 戦 争 で ス カ ッ ド ・ミサ イル に よ る空 襲 で 弾 道 ミサ イ ル の政 治 的 影 響 力 が 再 確 認 さ れ 、 さ らに 北 朝 鮮 が ノ ドン ・ ミサ イ ル 、 テ ポ ド ン ・ミサ イ ル を相 次 い で開 発 し配備 に 向 か っ た こ とで、 小 国 が保 有 す る大 量 破 壊 兵 器 と弾 道 ミサ イ ル の 組 み合 わせ が 冷 戦 後 の 米 国 に とっ て 無 視 で きな い 脅 威 とな りつ つ あ る こ とが 次 第 に 明 らか に され た
1998年 の ラ ム ズ フ ェル ド委 貝 会 レ ポー トを受 け て 、 米 国 議 会 の要 請 もあ っ て2005年 ま で に 米 全 土 の ミサ イル 防衛 を可 能 とす る シ ス テ ム構 築 を決 定 した ク リン トン政 権 で あ っ た が 、NMDを 支 え る軍 事 技 術 の 不 確 定 さ、ABM制 限 条 約 をめ ぐる ロ シア との 関 係 な どか ら配備 計 画 を先 送 り し、NMD計 画 自
米本 土 ミサ イル防衛 構 想論 争69 体 を時 期 大 統 領 に 委 ね る先 延 ば し の 決 定 を行 っ た(2)。 問 題 の 多 いNMD構
想 推 進 を選 挙 の 結 果 に 問 う事 実 上 のNMD構 想 中 断 の 決 定 で あ っ た と言 え よ う。 これ に 対 しABM制 限 条 約 の 変 更 を言 明 し ロ シ ア と の相 互 核 抑 止 体 制 の 変 更 に まで踏 み 込 ん だ ブ ッ シュ新 大 統 領 は 、 そ れ ま で 米 政 権 の慎 重 な 姿 勢 を一 転 し冷 戦 期 核 レ ジー ム 全 体 の 変 更 に 関 わ る重 大 な戦 略 的 変 更 を行 っ た
と思 わ れ る。
③NMDシ ス テ ム 開 発 ・配備 計 画
米 国 政 府 の 公 式 ウ ェ ブ ・ペ ー ジ に よ っ て得 られ る米 国BMDO(弾 道 ミサ イル 防 衛 機 構)の 資料 に よ れ ば 、 米 本 土 ミサ イ ル 防衛 計 画 は1987年 か ら5つ の段 階 を踏 ん で 開 発 ・配 備 計 画 が 継 続 され て い る。 現 段 階 は1999年 か ら2005 年 にか け て進 め られ る数 十 基 の 地 上 発 射 迎 撃 体 の初 期 配 備 を 目指 す 第5段 階
に あ た る(3)。
基 本 的 なNMDの 迎 撃 シ ス テ ム は、 在 来 の 早 期 警 戒 シ ス テ ム と赤 外 線 監 視 衛 星 に よ っ て ミサ イル の発 射 探 知 し追 跡 す る。 ミサ イ ル 情 報 は 戦 闘 管 理 ・ 指 揮 ・統 制 ・通 信 ・情 報 シ ス テ ム(BM/C3)に 引 き継 が れ 、 一 方 で 地 上 配 備 レー ダー も ミサ イ ル を追 跡 、 地 上 か ら高 速 ミサ イ ル で 迎 撃 体(GBI)を 発 射 、GBIは 目標 に 直 接 衝 突 して破 壊 す る仕 組 み で あ る(4)。
配備 に 向 け て研 究 され て い る シ ス テ ム構 成 要 素 に つ い て簡 単 に 説 明 して お く。 まず 地 上 配 備 迎 撃 体(GBI)は 、 「ロケ ッ トブ ー ス ター で地 上 か ら打 ち 上 げ られ る。 高 速 で 突 進 して くる ミサ イ ル 弾 頭 をGBI自 体 の セ ンサ ー で追 尾 、
ミサ イ ル の 中 間 コー ス あ る い は 大 気 圏 再 突 入 段 階 で 弾 頭 へ の 直 接 衝 突 で破 壊 す る。
Xバ ン ド ・レー ダー(XBR)は 開 発 中 で あ る。XBRは 地 上 に 前 進 配 置 さ れ 、 突 入 弾 頭 の探 知 、 追 跡 、 識 別 、 破 壊 評 価 ま で を担 当す る 多機 能 レー ダ ー で あ る。 従 来 の早 期 警 戒 レー ダ ー は 巨大 な 固定 式 段 列 位 相 レー ダー で あ り、
弾 道 ミサ イ ル の探 知 ・追 跡 用 で 目標 の 精 密 な 追 跡 、 識 別 、 破 壊 評 価 に は不 向 き で あ る。
戦 闘 管 理 ・指 揮 ・統 制 ・通 信 ・情 報(BM/C3)シ ス テ ム はBMDの 頭 脳 で あ り北 米 宇 宙 防衛 司令 部 はBM/C3シ ス テ ム に よ ってNMDシ ス テ ム 全 体 を指 揮 ・管 制 す る。
宇 宙 配 備 赤 外 線 探 知 衛 星 シ ス テ ム(SBIRS)は 早 期 警 戒 シ ス テ ム 改 良 の た め に 将 来 的 にNMDシ ス テ ム に 付 け 加 え られ る予 定 で あ り、ICBMの 弾 道 全 体 を追 跡 しXBRの 探 知 範 囲外 の水 平 線 以 遠 の デ ー タ をNMDシ ス テ ム に 与 え る役 割 を有 す る(5)。
現 在 配 備 に 向 け て 開 発 が 続 け ら れ て い るNMDシ ス テ ム は ク リン トン政 権 か ら引 き継 が れ た 開 発 計 画 で あ る。 早 期 警 戒 機 能 の一 部 役 割 は衛 星 軌 道 上 の 警 戒 衛 星 に依 存 す る もの の これ ら は冷 戦 期 よ り存 在 し、 基 本 的 に地 上 配 備 迎 撃 シ ス テ ム の 形 態 を維 持 して い る。 従 っ て新 型 の 早 期 警 戒 衛 星 へ の 交 換 や 追 跡 用 新 型 レー ダー の 地 上 配 備 が 付 け 加 え られ た と して もABM制 限 条 約 修 正 交 渉 に お い て ロ シ ア との 妥協 の余 地 を有 して い た に違 い な い 。 こ の シ ス テ ム は 基 本 的 に 限 定 的 な ミサ イル 防衛 と して 中 ロか ら認 識 さ れ う る。 ロ シア や 中 国 の 戦 略 核 ミサ イ ル を迎 撃 の 対 象 外 と して 、 「な らず 者 国 家 」 の 弾 道 ミ サ イル か ら米 国 海 外 基 地 や 同盟 国 を守 る戦 域 ミサ イ ル 防 衛(TMD)と して 中 ロ両 国 と くに少 な くと もロ シ アか らは理 解 を得 られ た可 能 性 は あ っ た と思 わ れ る。
ミサ イ ル 防 衛 構 想 は 一一般 にTMDとNMDが た て 分 け て 論 じ られ て い る が 、 両 者 に 明確 な 軍 事 技 術 的 差 違 が 存 在 す るわ け で は な い。 実 際 に は 米 国 は あ らゆ る軍 事 技 術 的 可 能 性 を追 求 して お り、 どの 技 術 が 実 際 に兵 器 と して 開 発 され 配 備 され るか の 判 断 は米 ロ関 係 を 中心 す る政 治 的 影 響 に よ る とこ ろが 大 き い と見 られ て い る。 実 際 、 米 国 国 防 省 の ウ ェ ブ サ イ トに はTMDに も NMDに も応 用 可 能 な航 空機 搭 載 レー ザ ー や 無 人機 に よ る ミサ イ ル 発 射 段 階 迎 撃 シ ス テ ム(6)、 宇 宙 配備 の レー ザ ー 衛 星 に よ る ミサ イ ル 上 昇 段 階 で の 迎 撃 シ ス テ ム な ど開 発 中 の 先 端 兵 器 の 開 発 計 画 が 掲 載 され て い る ⑦。 い ず れ もTMDに もNMDに も応 用 可 能 で あ り、TMDとNMDを 分 離 し て 考 え る こ とは 軍 事 技 術 的 に は 不 可 能 で あ ろ う。 こ の よ う な状 況 の 中、 ブ ッ シ ュ 演 説 がABM制 限 条 約 撤 廃 の 決 意 を示 せ ば 、 中 ロに とっ て は 明 日に で もNMD が 配 備 され 両 国 の 戦 略 核 兵 器 が 無 力 化 され 、 米 国 を抑 止 で き な くな る と言 う 恐 怖 感 を抱 か せ るの に 十分 で あ ろ う。
④NMD配 備 決 定 の 意 味
さ ら に ブ ッ シ ュ政 権 は相 互 確 証 破 壊 戦 略 の 制 約 を取 り払 う と同時 に、 こ れ
米本土 ミサ イル防衛構 想論 争71
ま で 自制 して き た戦 略 兵 器 の宇 宙 配備 へ の 道 を 開 い た 可 能 性 もあ る。 新 た に 国 防 長 官 に指 名 され た ラ ム ズ フ ェ ル ド氏 は、 大 量 破 壊 兵 器 の 拡 散 とそ の運 搬 手 段 で あ る長 距 離 弾 道 ミサ イ ル が ア メ リカ本 土 の 直 接 の 脅 威 とな る こ と を警 告 した ラ ム ズ フ ェ ル ド ・レ ポ ー ト(弾 道 ミサ イ ル 脅 威 評 価 委 貝 会 報 告1988 年)と 同 時 に 、 政 治 ・経 済 ・軍 事 の分 野 で 多 くを衛 星 に依 存 して い る故 に 、 宇 宙 空 間 に お け る軍 事 的 能 力 整 備 の 必 要 性 をア メ リカ議 会 へ 提 起 した 報 告 書
も2001年1月 に提 出 して い る(8)。
米 国 へ の新 た な 二 っ の 脅 威 、 核 ・化 学 ・細 菌 兵 器 な どの 大 量 破 壊 兵 器 とそ の 運 搬 手 段 で あ る弾 道 ミサ イル の世 界 的 拡 散 と、 宇 宙 空 間 に お い て米 国 が 挑 戦 を受 け る可 能 性 の 高 ま りを警 告 し、 ア メ リカ の 対 応 を促 した二 っ の報 告 書 で 中心 的 役 割 を果 た した ラム ズ フ ェ ル ドが 国 防 長 官 に選 ば れ た こ とは、 ブ ッ シ ュ 政 権 が 宇 宙 空 間 の 軍 事 的 制 圧 を狙 っ た戦 略 防 衛 構 想SDIば りの 宇 宙 軍 拡 に 踏 み 込 ん だ こ とを示 して い る可 能 性 さ え あ る。
さて この よ うな米 国 の 戦 略 転 換 の 目的 は何 な の で あ ろ うか 。 後 に安 全 保 障 担 当大 統 領 補 佐 官 とな る コ ン ドリー ザ ・ラ イ ス の 大 統 領 選 挙 中 の イ ン タ ビュ ー か ら、 ブ ッ シ ュ政 権 の安 全 保 障政 策 に 関 した発 言 を取 り上 げ検 討 して み た
い 。
彼 女 は 第0に 「弾 道 ミサ イ ル に対 す る 防衛 が 重 要 な の は 、 グ ロー バ ル な統 治 の鍵 を握 るの が ア メ リカ だ か らで す 。 ア メ リカが 脅 威 を感 じ る こ とが あ っ て は 、世 界 の た め に な ら な い の で す 。」 と、 国 際秩 序 の 源 泉 で あ る米 国 は い か な る勢 力 の 軍事 的圧 力 に対 して も安 全 が 保 証 され な け れ ば な らず 、 従 っ て NMD構 想 が 必 要 だ と主 張 す る。 そ して 「東 ア ジ ア に お け る ア メ リカ の 軍 事 プ レゼ ン ス に 反 発 して い る とい う点 で 中 国 は我 々 に とっ て 問 題 で す 。(核 拡 散 を巡 る)パ キ ス タ ン との 不 透 明 な 関 係 な ど、 南 ア ジ ア で も中 国 は 問 題 です 。 中 国 の 軍 事 力 増 強 が 問 題 な の も明 か です 。 で す か ら安 全 保 障 面 で は 中 国 の こ
と を懸 念 材 料 と と ら え て い ます 。」⑨ と して 冷 戦 後 の 安 全 保 障 上 の 懸 念 材 料 は ロ シア で は な く中 国 で あ る こ と、NMD構 想 の 主 目標 が 中 国 核 戦 力 で あ る
こ と を示 す 。 さ ら にAMB制 限 条 約 に つ い て は 「と も に新 た な 環 境 の も と に 置 か れ て い る こ と を ロ シ ア に 認 識 させ 、 新 た な 戦 略 概 念 と(ABM制 限 条 約 の一 部 緩 和 に よ っ て)他 の選 択 肢 を試 す 余 地 を作 る こ とだ と私 は考 え ま す 。」 と して 、NMD開 発 に はABM制 限条 約 が 技 術 上 の 制 約 で あ り、 ロ シ
ア との 協 議 の 上ABM制 限 条 約 を 廃 棄 す る 決 意 を表 明 し て い る。 そ し て
「ジ ョー ジ ・ブ ッ シ ュ は、NMDは 同 盟 国 も守 るべ き もの で な け れ ば な ら な い とい う こ と を原 則 に し て い ます 。一 他 の 基 準 は とい う と、 そ れ が 海 外 に 前 方 展 開 して い る ア メ リカ 軍 を守 り、 問 題 国 家 に よ る限 定 的 な攻 撃 に対 処 で き る もの で な け れ ば な ら な い とい う こ とで す 。」 と し て 、NMD配 備 が 米 国 の 孤 立 主 義 に よ る もの で は な い と しなが ら、 同 盟 国 に も協 力 を求 め る と して い
る(10)。
ラ イ ス の 発 言 通 りブ ッ シ ュ大 統 領 はNMD配 備 実 現 の た め にABM制 限 条 約 の修 正 あ る い は廃 止 も含 め て具 体 的 に動 き始 め た 。 ま た彼 女 は米 国 の グ ロー バ ル な統 治 の 主 導権 を取 り続 け る意 思 を明 言 した 。 さ ら に米 国主 導 の秩 序 に 挑 戦 す る可 能 性 を持 って い るの は 中 国 で あ り、NMD構 想 が 実 は 中 国 の 弾 道 ミサ イ ル を対 象 に して い る こ とが 明 白 に され た 。 しか も長 距 離 弾 道 ミサ イ ル 迎 撃 に は、 宇 宙 配備 迎 撃 シ ス テ ム も含 め て あ らゆ る軍 事 技 術 的 可 能 性 を 追 求 す る と言 明 した。
NMD構 想 は 飛 来 す る敵 ミサ イル の迎 撃 を行 うか ら真 に 防衛 的 戦 略 で あ る と喧伝 され る。 しか し核 戦 略 上 の 圧 倒 的 優 位 を背 景 に ロ シア との相 互 核 抑 止 体 制 を変 更 し中 国核 抑 止 力 の 無 力 化 を 明 言 した ブ ッ シュ 政 権 を、 国際 社 会 が 核 兵 器 に よ る恒 久 的 優 位 を狙 う軍事 戦 略 へ の転 換 した と受 け 取 る こ とは ご く
自然 で あ る。
2『 フ ォ ー リ ン ・ア フ ェ ア ー ズ 』 誌 上 のNMD論 争
①NMD構 想 と中 国 核 戦 力 の 関 係
冷 戦 後 の 米 国 戦 略 問題 につ い て は実 に 多 くの 議 論 が 公 開 され て お り、 そ の す べ て に つ い て検 討 す る こ とは 困 難 で あ る。 そ こ で か つ て 米 ソ冷戦 の 開 始 を 告 げ た ケ ナ ン の 「X氏 論 文 」、 最 近 で は ハ ン チ ン トンの 「文 明 の衝 突 」 論 を 発 表 し、 米 国外 交 政 策 に 大 きな影 響 を与 え て き た 『フ ォ ー リン ・ア フ ェ アー
ズ』 誌 に お け る議 論 を取 り上 げ 、 そ こで 明 らか に な っ た論 点 を手 が か りに米 国 国 内 のNMD論 争 を分 析 して み た い 。 大 統 領 選 挙 を挟 ん だ こ の 一 年 ば か りの期 間 同 誌 はNMD計 画 に 批 判 的 な 論 文 を 中 心 に 掲 載 して き た 。 そ れ は 編 集 に 携 わ る米 国 外 交 評 議 会 の 立 場 を表 して い る と も思 わ れ 、 一群 の 国 家 の 政 策 決 定 に 関 与 し うる 人 々 の 意 見 を代 表 して い る と も言 え る だ ろ う。 こ こ で
米本 土 ミサ イル防衛構 想論 争73
はNMD構 想 にっ い て 書 か れ た8本 の 論 文 を取 り上 げ 、 そ れ らの 論 点 を詳 し く検 討 した い。
最 初 に2000年8月 に発 表 され た 「忘 れ られ た核 大 国 中 国 」 を取 り上 げ る。
本 論 文 は 、 中 国 がNMD構 想 を 自 国 核 戦 力 へ の 挑 戦 と捉 え、 大 規 模 な核 戦 力 増 強 と米 国 防衛 シ ス テ ム へ の 対 抗 手 段 獲 得 へ と動 き、 米 国 へ の 弾 道 ミサ イ ル の 脅 威 はNMDの 配備 に よ っ て 逆 に 高 ま る可 能 性 が あ る と警 告 し て い る。
ロバ ー ツ らは 中 国 の 核 戦 略 は60年 代 以 来 一 貫 して 「最 小 限 抑 止 」 っ ま り核 先 制 攻 撃 を受 け て もあ る程 度 の 第 二 撃(報 復 核 戦 力)能 力 を確 保 で き る よ う
に少 数 の ミサ イル を配 備 す る戦 略 を とっ て お り、 中 国 は本 質 的 に 防衛 的 な核 ドク ト リン を採 用 して き た とす る(11)。 しか し現 在 の 中 国 は 基 本 的 に は 防 衛 的 な核 戦 略 を維 持 しつ つ も、 従 来 の 「最 小 限 抑 止 」 を 「限 定 抑 止 」 へ とシ フ ト中 で あ り 「米 ロ に対 す る確 固 た る 『最 小 限 抑 止 』、 戦 域 核 戦 力 を用 い た 攻 撃 的 な 限定 抑 止 、 通 常 弾 頭 を装 備 した ミサ イ ル戦 力 の使 用 とい う方 向 に 向 か う と考 え て い る。」 つ ま り 「最 小 限 抑 止 」 か ら核 ・非 核 双 方 の ミサ イ ル 戦 力 の 抑 止 力 を政 治 的 影 響 力発 揮 に 利 用 す る 「限 定 的 抑 止 」 へ の 穏 や か な シ フ ト 中 で あ る とす る。
さ ら に 中 国 は 「今 後10年 間 に1000基 の ミサ イ ル(大 部 分 は 短 距 離 ミサ イ ル)を 新 た に生 産 す る能 力 を持 っ て い る と考 え られ て い る。 ま た、 中 国 は年 間 で10‑20基 の 大 陸 間 弾 道 弾(ICBM)を 生 産 す る能 力 を持 つ とい う報 告 も あ る。」 と して、 も し中 国 に そ の 意 思 が あ れ ば さ ら に 大 規 模 な核 戦 力 拡 大 の 能 力 を有 して い る と警 告 す る(12)。
当 然 中 国核 戦 力 が 増 強 さ れ る要 因 に はNMD以 外 に も イ ン ドの 核 軍 拡 、 日本 のTMD配 備 や 核 武 装 の 可 能 性 、 ロ シ ア の 戦 略 防 衛 体 制 の 強 化 な ど が 考 え られ る。 しか し 「核 の 先 制 不 使 用 」 に 消 極 的 な 米 国 とい う前 提 の下 で は 、 中 国 は米 国 の 意 図 につ い て 以 下 の よ うに考 え るで あ ろ う と ロバ ー ツ らは 推 論 す る。核 戦 力 に お い て 量 的 ・質 的 に優 位 に あ る米 国 は 中 国 に対 す る核 先 制 使 用 を計 画 して い る。 しか も米 国 はNMDに よ っ て 先 制 攻 撃 を受 け た 中 国 に
よ る報 復 攻 撃 を相 殺 で き る。 従 っ てNMDは 国 際 社 会 で の 米 国 の 発 言 力 強 化 と同 時 に 中 国 の 影 響 力 封 殺 を狙 う もの で あ る。 した が っ てNMD構 想 実 現 に 向 け た米 国 の動 きは 、 中 国 が 自国 戦 略 や 核 ドク ト リン を修 正 して大 規模 な攻 撃 核 戦 力 や 米 国 の 防衛 シ ス テ ム を圧 倒 す る よ うな 対 抗 手 段 構 築 に着 手 す
る動 機 を与 え て し ま うで あ ろ う と結 論 す る(ユ3)。
そ して 中 国核 戦 略 につ い て 、 第 一 に米 国 に対 す る 「最 小 限 抑 止 」 を維 持 あ る い は再 構 築 し よ う とICBMの 数 と性 能 向上 に 努 め る 可 能 性 、 第 二 に 中 国 が イ ン ドへ の 懸 念 を強 め 「最 小 限抑 止 」 とい う全 般 的 姿 勢 を維 持 しっ っ も、
戦 域 レベ ル で は よ り強 硬 な 「限 定 的 抑 止 」 に 向 か う可 能 性 、 第 三 に い か な る 状 況 下 で もす べ て の対 抗 国 に深 刻 な 打 撃 を与 え るに 十 分 な戦 力 の 開 発 と配 備
に 乗 り出す こ とで 中 国 が 全 面 的 に 「限 定 抑 止 」 に移 行 す る可 能 性 の 三 つ の選 択 肢 を提 示 す る。 中 国核 戦 力 が従 来 通 りの 小 規 模 で 単 弾 頭 の在 来 型 の核 ミサ イル で構 成 され 続 け る こ とが 米 国 国益 最 も適 っ て お り、 「ア メ リカ は ア ジ ア に お け る友 好 国や 同盟 国 に対 す る 中 国 の 脅 威 を緩 和 し、 中 国核 戦 力 の 近 代 化 が ロ シ ア核 軍 縮 の妨 げ とな らな い よ うに 努 力 す べ きだ 。」 と して 、 中 国核 軍 拡 が 国 際 的 緊 張 を刺 激 し て 全 地 球 規 模 の 核 軍 縮 を妨 げ る 危 険 性 も指 摘 す
る(14)。
中 国 はNPT(核 拡 散 防 止 条 約)、CWC(化 学 兵 器 禁 止 条 約)、CTBT (包 括 的核 実 験 禁 止 条 約)な ど に調 印 し、 軍 備 管 理 、核 不 拡 散 面 で米 国 の 望 ま しい と考 え る方 向 に 変 化 しつ つ あ る。 そ れ 故 に ミサ イル 防衛 に対 す る 中 ロ の 戦 略 的 対 応 に よ っ て 、 米 国 の安 全 保 障 が低 下 す る リス クは避 け なけ れ ば な
らな い(15)。
ロ バ0ツ ら はNMD構 想 が 比 較 的 穏 健 な 核 政 策 を と る 中 国 を刺 激 し て 大 々 的 な核 戦 力 増 強 を招 き、NMD構 想 の意 図 とは逆 に米 国 に対 す る核 ミサ イ ル の 脅 威 が 増 大 す る結 果 を招 く とす る立 場 か らNMD構 想 推 進 を批 判 す る。
②NMDに よ る核 拡 散 刺 激 論
ジ ョナ サ ン ・シ ェ ル は 「軍 備 管 理 の 愚 か さ」 と題 し て、 ブ ッ シ ュNMD 構 想 が ーロ シア や 中 国 の ミサ イ ル 増 強 を誘 発 して 、 そ の 結 果 す で に 危機 に 陥 っ
て い る核 軍 備 管 理 体 制 を崩 壊 させ 、 世 界 的 な核 拡 散 を呼 び 込 ん で しま う。核 拡 散 を阻 止 す るに は 米 国 が本 気 で核 廃 絶 を 目標 と しな け れ ば な ら な い と主 張 す る。
シ ェ ル は まず 軍 備 管 理 は4つ の 要 素 か ら成 り立 っ て い る とす る。 第 一 に SALT、STARTな ど モ ス ク ワ と ワ シ ン トン の 交 渉 に よ る 要 素 、 第 二 に
米本 土 ミサ イル防・衛構想 論争75
ABM制 限 条 約 に代 表 さ れ る対 核 兵 器 防衛 シ ス テ ム の 抑 制 に よ る もの 、 第 三 に核 拡 散 防 止 条 約 、 第 四 にCTBTな どの核 実 験 禁 止 交 渉 に よ る要 素 で あ る。
これ らの核 軍備 管 理 レ ジー ム は、87年 にINF全 廃 条 約 、91年 にSTARTI で米 ソ は ヨー ロ ッパ の 中距 離 核 を禁 止 す る と同 時 に 双 方 の 核 弾 頭 数 を約7000 に 削 減 、92年 に は核 弾 頭 数 を30003500程 度 に 削 減 す るSTARTIIを 調 印 した。 一 方 でNPT参 加 国 も着 実 に 増 加 す るな ど冷 戦 終 結 後 の 世 界 情 勢 は 核 の 縮 小 に む け て順 調 に進 行 して い た(16)。
しか し98年 の イ ン ド核 実 験 、 さ らにパ キ ス タ ン に よ る対 抗 核 実 験 に よ っ て 米 ソ冷 戦 構 造 外 に お け る新 た な核 の 対 決 が発 生 した とす る。 さ らに 北 朝 鮮 、 イ ラ ン、 イ ラ クが 核 開 発 と長 距 離 ミサ イ ル 開 発 努 力 を継 続 し世 界 は核 拡 散 ト レ ン ドへ 大 き く転 換 す る。 い わ ゆ る大 量 破 壊 兵 器 と長 距離 ミサ イ ル 拡 散 の脅 威 に 対 し米 議 会 はNMD構 想 推 進 へ と動 い た 。 ク リン トン政 権 はNMDに っ い て 配 備 へ の 態 度 を保 留 し たが 、TMD配 備 で は 日本 や 台 湾 と協 議 を始 め
た この 結 果 。 核 軍 縮 管 理 レ ジー ム はす で に解 体 に 瀕 して い る とす る(17)。
シ ェ ル は さ らに3つ の理 由 で核 拡 散 が促 進 され て い る とす る。 第 一 の理 由 は核 技 術 の 拡 散 で、 世 界 で核 開 発 能 力 を有 す る国 家 はす で に,.十 力 国 に の ぼ る。 米 国 務 省 は潜 在 的 核 保 有 国 を44力 国 と認 識 して い る(18)。第 二 に 対 核 兵 器 防御 技 術 の 進 化 で あ り、 「核 兵 器 に 対 す る防 御 シ ス テ ム は(攻 撃 用 核 戦 力 の バ ラ ン ス を不 安 定 化 させ)心 理 的 脆 弱 性 を高 め て し ま うの で 、 抑 止 を不 安 定 化 させ 、 攻 撃 用 軍備 の 増 強 を刺 激 して し ま う。」(19)第三 に 冷 戦 期 の核 の 兵 器 庫 を温 存 し よ う とす る核 保 有 国 の 決 定 で あ る。 つ ま り 「ワ シ ン トン は 、 核 の先 制 使 用 の標 的 を冷 戦 期 の 旧 ラ イバ ル 国 か ら世 界 の ど こか で 台頭 す るか も しれ な い 『ジ ェ ネ リッ ク(潜 在 的)』 な標 的 へ と シ フ トさせ た。」 「抑 止 論 は 、 ラ イバ ル に よ って 破 壊 さ れ る の を免 れ る た め に 、 自 ら が 核 武 装 せ よ と教 え る。」 「この よ うな状 況 下 で は 、 ア メ リカ の核 兵 器 庫 は抑 止 よ りも 『拡 散 を刺 激 す る』 と考 え た方 が 理 にか な っ て い る。」 と冷 戦 後 も強 大 な核 軍備 を維 持 し よ う とす る米 国 の 意 思 が 世 界 的核 拡 散 を結 果 と して 刺 激 して お り、 核 テ ロ
リズ ム の 危 険 を減 らせ るの は核 の廃 絶 政 策 だ け で あ る と主 張 す る(20)。
そ の 上 で シ ェ ル は 、 国 際 環 境 の革 命 的 変 化 が(冷 戦 終 結)核 政 策 の全 面 的 見 直 し を迫 っ て い た の に 、 これ ま で の 『世 界 の平 和 に とっ て核 兵 器 の 存在 は 不 可 欠 の もの で あ る。』 とす る政 策 が 再 認 識 され て し ま っ た とす る(21)。ア メ
リカが す で に破 綻 した核 不 拡 散 政 策 に 見 切 りをつ け 、核 武 装 の グmバ ル化 を支 持 し、 核 武 装 した世 界 に 向 け た安 定 的移 行 プ ロセ ス の 管 理 を次 の 政 策 目 標 に 転 換 した の で は な い か と米 国 の核 政 策 に 対 し深 刻 な疑 念 を呈 す る(22)。
③ シ ェル の 主 張 を め ぐる論 争
大 規 模 な核 拡 散 を 回避 す る ため に は核 廃 絶 を 目標 とす べ きで あ り、NMD は そ の 障 害 とな る。 米 国 の 強 大 な核 軍 備 の縮 小 こ そ が世 界 的核 拡 散 へ の 処 方 箋 とな る との シ ェ ル の 主 張 に 対 し、 『フ ォ ー リン ・ア フ ェ ア ー ズ』 誌 は 「放 任 され た核 兵 器 一 軍備 管 理 は 愚 か 者 の 居 場 所 で は な い一 」 の 中 で 対 立 す る二 つ の 意 見 を掲 載 した(23)。
まず ジ ョー ジ ・バ ー コ ビ ッチ は 「実 行 の 特 権 」 と題 して、 相 互 確 証 破 壊 に 基 づ く抑 止 の 時 代 は す で に過 ぎ去 っ た。 「相 互 確 証 安 全 」 とい う新 た な概 念 を生 み 出す 機 会 を有 して い る米 国 は核 廃 絶 へ の リー ダー シ ップ を取 らね ば な ら な い と した。
バ ー コ ビ ッチ は 米 国 と競 争 す る だ け の 資 源 を持 た な い ため に 、 核 イ ン フ ラ と指 揮 系 統 の極 度 の 混 乱 に も関 わ らず ロ シ ア は今 後 も核 抑 止 に依 存 す る。 ま た 欧 米 中 心 の核 シ ス テ ム に ロ シア が 統 合 され る こ と もな い ため に、 ロ シア が 米 国 の潜 在 的敵 国 に核 技 術 を輸 出 す る可 能 性 も ま た 高 い と予 測 す る。 しか も 米 国 の ミサ イ ル 防衛 シ ス テ ム 配 備 を受 け て 中 国 も戦 略 ミサ イ ル を増 強 す るで あ ろ うが 、 米 中 間 に 危機 下 に検 証 可 能 な米 ロ 間 と同 等 の 危機 管 理 合 意 は 存 在 し な い。 も し も中 国 が 台湾 に通 常 ミサ イ ル を打 ち込 ん だ場 合 、 歴 史上 初 め て 核 武 装 した米 中 間 で通 常 ミサ イ ル の応 酬 が行 わ れ る可 能 性 が 大 で あ る(24)。
ま た世 界 各 国 は 米 国 の核 の優 位 追 求 政 策 を覇 権 国 の傲 慢 さ と無 意 味 な 軍事 主 義 と認 識 して い る。 平 和 と繁 栄 に は条 約 に裏 付 け られ た協 調 的 国 際 シ ス テ ム 形 成 が不 可 欠 で あ り、 そ の ため に は核 保 有 国 と非 核 保 有 国 双 方 の協 力 が不 可 欠 で あ る とす る(25)。
結 論 と して バ ー コ ビ ッチ は 米 国大 統 領 が 各 国 を ま とめ て核 兵 器 庫 の安 全 で 段 階 的 な廃 絶 に 向 うべ きだ とす る。 新 政 権 は相 互 確 証 破 壊 に 基 づ く旧 来 の 米 国核 ドク ト リン放 棄 を国 民 に働 きか け る と同 時 に核 不 拡 散 体 制 の 強 化 を優 先 す べ きあ る。 そ の ため に 大 統 領 が 明確 な リー ダー シ ップ を とっ て信 頼 で き る 核 の専 門 家 に よ る詳 細 を押 さ え た 賢 明 な全 面 的核 廃 絶 政 策 構 想 を示 す べ きだ
米本 土 ミサ イル 防衛 構 想論争77 と主 張 す る(26)。
0方 で アー ネ ス ト ・W・ レ フ ィー一バ ー は 「現 実 対 理 想 」 と題 して 「核 兵 器 は平 和 の た め の道 具 で あ る」 と断 言 し、 現 在 ま で核 兵 器 は平 和 の た め の 道 具 と して 機 能 し て き た 。 国 家 の 死 活 的 利 益 を守 る た め に はABM制 限 条 約 に 違 反 した と し て もNMD構 想 を実 現 す べ き だ と核 抑 止 論 の 正 統 性 とNMD 構想 推 進 を主 張 し た。
彼 は 四 点 に わ た っ て シ ェ ル の 提 案 を批 判 す る。 第 一 に核 兵 器 の 存 在 が 惨劇 の 悲 劇 を我 々 に突 きつ け て い る とシ ェ ル は 主 張 す るが 、 核 兵 器 は半 世 紀 に わ た り米 ソニ 超 大 国 間 の 平 和 の維 持 の 助 け とな っ た の が事 実 で あ る。 戦 略 レベ ル の相 互 抑 止 が 機 能 して きた こ とで平 和 が 守 られ た 。 第 二 に ア メ リカ の核 抑 止 政 策 が 他 の 国 家 を必 然 的 に核 保 有 に 走 らせ て きた と言 うが これ も間 違 っ て い る。 イ ン ド、 パ キ ス タ ン両 国 の有 識 者 た ち は核 能 力 は抑 止 や 交 渉 の 材 料 、 あ るい は 国 家 威 信 の 高 揚 以 外 に 利 用 で きな い と考 え て い る。核 兵 器 の 存 在 は 逆 に カ シ ミー ル を巡 る両 国 の対 立 を緩 和 す る は ず だ。 第 三 に核 政 策 が 軍 縮 か ら軍 備 管 理 に 退 行 した とシ ェ ル は 嘆 くが 、 これ は根 拠 の な い道 義 的 均 衡 を求 め る ドク ト リンだ 。 ソ連 の 挑 発 的 態 度 に 対 しア メ リカ は常 に安 定 化 を重 視 し た対 応 を して き た。 第 四 に 世 界 全 体 の 非核 化 を支 持 しな い ア メ リカ の 態 度 が SALTとABM、NPTと い う軍 備 管 理 合 意 を遮 っ て い る と す る。 さ ら に NMDを 強 引 に 配 備 し よ う とす るア メ リカ の 態 度 がABM条 約 を形 骸 化 させ 、 新 た な 軍 拡 レー ス を呼 び込 む と シェ ル は 批 判 す る。 しか しダ イ ナ マ イ トや 銃
と同 様 に核 兵 器 や ミサ イ ル 技 術 も世 界 か ら消 し去 る こ とは で きな い。 国 際 条 約 よ り も米 国 国 家 の 死 活 的 利 益 が優 先 され るの だ(27)。
シ ェ ル は ア メ リカ の 指 導 者 た ち が核 廃 絶 実 現 に 向 け て努 力 して初 め て これ が実 現 す る とす る。 しか し現 実 政 治 で は 指 導 者 た ち は攻 撃 を抑 止 し、 あ る程 度 の 平 和 と 自由 を提 供 す る受 け 入 れ 可 能 な勢 力 均 衡 を模 索 しな け れ ば な ら な
い。 レ フ ィー バ ー は結 論 と して潜 在 的 な 危 険 を秘 め て い る とは い え これ まで の と こ ろ核 兵 器 は平 和 を維 持 す る手 段 と して機 能 して きた。 国 家 の 死 活 的 利 益 は 国 際 条 約 に優 越 す る もの で あ る と して 、 核 兵 器 が 存在 す る以上 核 拡 散 の 危 険1生は 無 視 で き な い と してNMD構 想 推 進 を正 当化 す る の で あ る(28)。
④ 「限 定 的 ミサ イ ル 防 衛 網 」 に よ る相 互核 抑 止 体 制 の 維 持
次 に2001年2月 米 国 外 交 問題 評 議 会 か ら出版 され た 『優 位 の 対 価一 新 型大 量 破 壊 兵 器 とア メ リカ の リー ダー シ ップ の 課 題 一 』 の 第3章 、 弾 道 ミサ イ ル 防衛 を検 証 した ジ ャ ン ・ロー ダ ル の 「弾 道 ミサ イ ル 防衛 を考 え る」 を検 討 す る。 ク リン トン政 権 の 政 策 担 当 国 防 次 官 を務 め た ロー ダル の 論 文 は事 実 上 民 主 党 の核 戦 略 上 の 立 場 を代 表 して い る と思 わ れ る。NMD構 想 推 進 に 対 して 、 実 際 に選 択 さ れ得 た も う0つ の 米 国核 戦 略 の代 案 と して 重 要 で あ る と思 わ れ
るの で 取 り上 げ る。 ロー ダル は相 互 核 抑 止 戦 略 に 基づ く防 衛 戦 略 を優 れ た戦 略 と して評 価 す る。 そ の上 で ブ ッ シ ュ支 持 勢 力 は 防衛 支 配 を重 視 す る ミサ イ
ル 防衛 構 想 を実 現 し よ う と して い るが 、 こ の よ うな世 界 の 戦 略 的均 衡 を損 な う戦 略 は 危 険 で あ る と してNMD構 想 を批 判 す る。 彼 は な らず 者 国 家 に よ る少 数 の ミサ イ ル と大 量 破 壊 兵 器 に 対 抗 す るた め に は 限 定 的 ミサ イ ル 防 衛 と 核 抑 止 力 で攻 撃 を抑 止 す るの が優 れ た戦 略 で あ る と主 張 す る。
・ロー ダ ル の 主 張 は 以 下 の 通 りで あ る
。25発 か ら50発 程 度 の ミサ イ ル に対 抗 可 能 な 限 定 的 ミサ イ ル 防 衛 網 は1発 か ら2発 の核 兵 器 に よ る桐 喝 を無 意 味 に す る。 こ の程 度 の 抑 制 され た 防衛 網 で あ れ ば 、 同 時 に大 規 模 核 攻 撃 を可 能 と す る ロ シ ア との 核 の 均 衡 は 相 互 核 抑 止 に よ っ て 維 持 で き る。 従 っ てABM 制 限 条 約 の範 囲 内 の探 知 と追 跡 を行 う地 上 配 備 の レー ダー と、 弾 頭 直 撃 技 術
に よ る地 上 配 備 の100基 の 迎 撃 ミサ イ ル に よ っ て 構 成 され る 「限 定 的 ミサ イ ル 防衛 」 の 配備 が合 理 的 で あ る。 ま た迎 撃 に は 特 に 発 射 され た ミサ イ ル を打 ち上 げ 直 後 の 加 速 段 階 で迎 撃 す る シ ス テ ム を積 極 的 に 活 用 す べ きで あ る。 こ の 技 術 はTMDに もNMDに も応 用 可 能 な 上 に 、 弾 道 ミサ イ ル の 発 射 地 点 近 くに 配備 す る 必 要 が あ る た め に領 土 奥 深 くICBMを 配 置 可 能 な ロ シ ア と
中 国 の ミサ イ ル に は有 効 で な い ため 外 交 面 で も優iれ て い る(29)。
しか し防 衛 シ ス テ ム の 配 備 まで に、 米 国 は従 来 の 「即 時 報 復 戦 略 」 を見 直 して ロ シ ア と中 国 へ の核 の先 制 使 用 を事 実 上 停 止 す る 「核 の 先 制 不 使 用 ドク
ト リン」 へ 転 換 しな け れ ば な ら な い。 そ の ため に は 米 国核 戦 略 と戦 力 構 造 の 再 編 成 に よ っ て 米 核 戦 力 を一 千 基 の 戦 略 核 弾 頭 と最 大200基 の ヨー ロ ッパ 配 備 の 戦 域 核 に 削 減 す る必 要 が あ る。 この 削 減 に よ って 「限 定 的 ミサ イ ル 防衛 網 」 は 中 ーロの核 報 復 戦 力 に対 す る脅 威 とは な ら な くな る。
米本 土 ミサ イル 防衛 構 想論争79
ブ ッ シ ュ新 政 権 が 主 張 す る新 戦 略 構 想 す な わ ちABM制 限 条 約 修 正 交 渉 の 立 脚 点 と も な るSTARTIIIの 米 国 提 案 で あ る核 弾 頭2500個(ロ シ ア 側 の 提 案 は核 弾 頭1500基)と 将 来 的 に は 増 強 さ れ る最 低100基 のNMDミ サ イ ル 配 備 と い う条 件 は 、 米 国 の 単独 先 制 核 攻 撃 能 力 の 獲 得 を 「ロ シア や 中 国 、 そ の ほ か の 国 に強 要 す る 内容 で しか な い。 低 レベ ル の核 戦 力 と将 来 的 に 増 強 され る で あ ろ う本 格 的NMDの 配 備 は 、 米 国 の 防 衛 支 配 獲 得 へ の 行 動 と受 け 取 られ 、 ロ シ ア か ら も中 国 か ら も受 け 入 れ られ な い だ ろ う とmダ ル は ブ ッ シ ュNMD構 想 を強 く批 判 す る(30)。
ヨー ロ ッパ 諸 国 との 協 調 は 、NATO諸 国 が イ ラ ンや イ ラ ク のWMD(大
量 破 壊 兵 器)へ の対 抗 手段 を米 国 と共 有 して い る とい う実 感 が 必 要 で あ る。
可 搬 型 の 打 ち上 げ 段 階 迎 撃 シ ス テ ム 配備 と200基 の 戦 域 核 兵 器 の ヨー 『ロ ッパ 配備 に よ って 米 国 が 核 の傘 提 供 の 意 思 を しめ す 。 こ れ に よ っ て 米 国 の 防衛 戦 略 は ヨー ロ ッパ 独 自の 防衛 プ ロ グ ラ ム と共 存 可 能 とな ろ う(31)。
また 彼 は ア ジア の 勢 力均 衡 の た め に は 日本 の役 割 増 強 が 必 要 だ とす る。 そ の た め に は 日本 に対 し米 国 は核 の傘 を提 供 し続 け る と同 時 に、 北 朝 鮮 や 中 国 か らの 戦 域 ミサ イ ル の 脅 威 へ の 対 抗 手 段 も不 可 欠 で あ ろ う と言 う。 しか し米 国 が 配備 す る100基 の 迎 撃 ミサ イ ル で さ え 中 国核 攻 撃 能 力 を大 き く削 減 す る 可 能 性 が 高 く、 結 果 と して 中 国 のICBM増 強 の 圧 力 とな る で あ ろ う。 結 果
と して 日本 や 台 湾 に は さ らに 強 力 な 戦 域 ミサ イ ルへ の対 抗 手段 が 必 要 に な る だ ろ う とす る。 しか し実 際 に 中 国 戦 略核 が100基 か ら200基 に 増 加 して も米 中 の 戦 略 バ ラ ン ス に は 変 化 は な い と、 中 国 戦 略 核 の 戦 力 拡 大 をむ し ろ歓 迎 す る(32)。
ロー ダ ル は 「限 定 的 ミサ イ ル 防 衛 網 」 に よ っ て 、 「な らず 者 国 家 の ミサ イ ル 」 へ の 防衛 とABM制 限 条 約 の 枠 組 み 内 の 相 互 抑 止 体 制 の 均 衡 が 同 時 に 維 持 可 能 で あ り、 中 「ロ との安 定 した 戦 略 関 係 が 守 られ る と主 張 す るの で あ る。
⑤ 安 定 化 の た め に対 中政 策 是 正 を
デ ー ビ ッ ト ・シ ャ ン ボ0は 、 東 ア ジ ア の 地 域 安 全 保 障 の た め に 中 国 は 重 要 で あ る。NMD構 想 の 推 進 は 中 国 の 戦 略 核 兵 器 増 強 を招 き、 米 国 の 安 全 保 障 を逆 に 脅 か す 可 能 性が 高 い 。 大 量 破 壊 兵 器 や ミサ イ ル の 不 拡 散 な どマ ク ロ レ ベ ル の安 全 保 証 問 題 は 米 中 共 通 の 利 益 で あ り、 中 国 も ク リン トン政 権 の ミサ
イ ル 技 術 輸 出 規 制 を始 め 米 国 主 導 の核 レ ジー ム に 同 意 す る姿 勢 を示 して きた。
世 界 の不 安 定 化 を 回避 しす る た め に対 中政 策 を是 正 せ よ と主 張 す る。
シ ャ ン ボー は 新 政 権 が 早 急 に解 決 す べ き4つ の 課 題 に 直 面 して い る とす る。
第 一 に 中 台 関 係 は ア ジア 太 平 洋 地 域 の 平 和 と安 定 に とっ て 重 大 な脅 威 で あ り、
北 京 、 台 湾 問 の 対 話 開始 の枠 組 み構 築 の た め に ア メ リカ は仲 裁 の 必要 が あ る。
第 二 に 中 国 は 米 国NMD構 想 に 対 して核 弾 頭 を10倍 に 、 さ ら に 現 在16‑‑20 基 に過 ぎ な いICBMを200‑一 一250に 増 強 す る と警 告 して い る。 結 果 と して
NMDの 配 備 が ア メ リカ の安 全 保 障 を逆 に 脅 か す 可 能 性 が 非 常 に 高 い 。 さ ら に 日本 や 台 湾 へ のTMD配 備 も、 危 機 や 地 域 的 ミサ イ ル 拡 散 を誘 発 す る 可 能 性 が 大 き く危 険 で あ る。 第 三 に朝 鮮 半 島 の 情 勢 変 化 は、 中 国 が 受 け 入 れ る
形 で 米 軍 の 前 方 展 開 を維 持 で き る よ う な地 域 安 全 保 障 の 枠 組 み の 構 築 を必 要 と して い る。 も し 中 国が 米 国 中心 の 同盟 に敵 対 す る な ら東 ア ジア は不 安 定 化 す る と警 告 す る。 第 四 に ク リン トン政 権 は 中 国 か ら弾 道 ミサ イ ル 輸 出 規 制 制 度 化 に 関 す る合 意 を取 り付 け たが 、新 政 権 は これ を促 進 す べ きで あ る。 中 国
に よ る核 や ミサ イ ル の 拡 散 を防 が ね ば な ら な い(33)。
さ ち に ビ ジ ネ スや 個 人 的 関 係 を通 じて 密 接 な ネ ッ トワー ク を共 有 して米 中 間 の 絆 は深 ま る一 方 で あ り、 対 中 エ ン ゲ ー ジ メ ン ト政 策 は動 か しが た い現 実 で あ る と して 彼 は 米 中 関 係 の 重 要 性 を主 張 す る(34)。大 量 破 壊 兵 器 や ミサ イ ル の 不 拡 散 な どマ ク ロ レベ ル の安 全 保 証 問 題 は米 中共 通 の利 益 で あ る。 ま た 台 湾 の安 全 保 障 と東 ア ジア に お け る 日本 とア メ リカ の 軍事 的 役 割 につ い て 米 中 間 は 、 二 国 間 の 緊 張 を管 理 す るだ け で な く、 溝 を埋 め 、 安 定 を促 進 す る合 意 を得 る こ と を政 策 目標 に す べ きで あ る。 米 中 関 係 に は協 調 と競 争 の バ ラ ン
ス が 重 要 で あ る とす る(35)。
中 国近 代 化 を支 援 し経 済 的 に繁 栄 して安 定 化 させ て 中国 が 責 任 あ る態 度 を とる よ うに誘 導 しな け れ ば な ら な い 。 一 方 で 軍 の 海 外 展 開 能 力 な ど近 代 化 を 妨 害 す べ き領 域 を明 確 にす る必 要 も あ る。 合 理 的 な 対 中 エ ンゲ ー ジ メ ン ト政 策 ビ ジ ョン を明 確 化 し、 世 論 を啓 蒙 し、 論 議 を尽 くさ ね ば な らな い。 結 論 と
して 彼 は世 界 の不 安 定 化 を 回避 す る ため 、 現 在 の 敵 対 的 な対 中政 策 を早 急 に 是 正 せ よ と して対 中政 策 の 抜 本 的 見 直 し を求 め る(36)。
米本 土 ミサ イル防衛構 想論 争81
⑥ 宇 宙軍 拡 競 争 の 危 険 を 高 め るNMD
マ イ ケ ル ・ク レ ポ ン は 「宇 宙 の迷 子 一 対 衛 星 兵 器 を 目指 す 間 違 っ た 動 向 一 」 に お い て、NMD構 想 に よ っ て 加 速 さ れ る宇 宙 で の 軍 拡 競 争 を 回避 し な
け れ ば な ら な い と主 張 す る。
1998年 の ラ ム ズ フ ェ ル ド ・レ ポ ー ト(弾 道 ミサ イ ル 脅 威 評 価 委 員 会 報 告 1988年)に 続 い て 、2001年1月 に第 二 の ラム ズ フ ェ ル ド ・レ ポー一 トと して ア メ リカ の 宇 宙 空 間 に お け る軍事 的 能 力 整 備 の 必 要 性 を求 め る報 告 書 を ま とめ た ラ ム ズ フ ェル ド国 防 長 官 と、 ブ ッ シ ュ新 大 統 領 の コ ン ビが 宇 宙 空 間 で の 戦 略 的 優 位 確 立 に 動 くな ら、ASAT(対 衛 星 攻 撃 兵 器)を は じめ とす る宇 宙 空 間 で の 兵 器 配 備 競 争 とNMDを め ぐっ て 冷 え込 ん で い る 同 盟 関 係 が 緊 張
し ロ シア と中 国 が協 調 へ と向 か う と ク レ ポ ンは 予 測 す る(37)。
NMDは 宇 宙 配 備 の 監 視 シ ス テ ム 抜 きに機 能 しな い 。 この 監 視 シ ス テ ム を 安 定 して稼 働 させ る に は衛 星 攻 撃 兵 器 の実 験 や 配 備 が 行 わ れ な い こ とが 前 提
で あ る。 ロ シ ア も中 国 も独 自 のASATを 開発 し、 低 コ ス トでNMDを 機 能 不 全 に で き る。ASATは ミサ イ ル 防 衛 に 悪 影 響 を 与 え る 上 に 、 ロ シ ア と中 国 の 協 調 体 制 がASATを め ぐっ て進 展 す る だ ろ う。 さ らに ブ ッ シ ュ 政 権 の 提 案 す る先 端 型 ミサ イ ル 防衛 シ ス テ ム は衛 星 破 壊 に も利 用 可 能 で あ り、 中 国 とロ シ ア はNMDを 自 国核 抑 止 力 と衛 星 機 能 双 方 を 無 力 化 す る試 み と見 な す だ ろ う(38)。
ま た グ ロー バ ル経 済 は衛 星 に大 き く依 存 して い る。 米 国 衛 星 とビ ジネ ス を 守 る最 前 の方 法 は宇 宙 戦 争 の 可 能 性 を無 くして し ま う こ とだ 。 まず ミサ イ ル 防衛 の対 象 地 域 を脅 威 が 認 め られ る地 域 に 限定 す る こ とで宇 宙 軍 拡 競 争 を回 避 で き る は ず で あ る。 しか しNMD研 究 開 発 は 限 定 さ れ た シ ス テ ム で あ っ て もASAT技 術 の 入 手 に 繋 が る。 宇 宙 に お け る す べ て の 兵 器 、 と くに ASATに 特 化 した 兵 器 の 実 験 や 配 備 を禁 止 す る 「非 公 式 の 合 意 」 を ま とめ 上 げ るの が 、 軍 事 的 に も経 済 的 に も米 国 国益 に最 も合 致 した 手 段 だ と思 わ れ
る(39)。
米 国 が 宇 宙 空 間 あ る い は地 球 上 に・衛 星 攻 撃 兵 器 シス テ ム を配 備す れ ば 、 同 盟 国 も潜 在 的 敵 対 国 も 「唯 一 の 超 大 国 に よ る傲 慢 で 、 帝 国 主 義 的 な拡 大 指 向 に他 な ら な い」 と して 、 そ の独 善 的 路 線 に対 抗 策 を と るの は 目に見 え て い る。
ク レ ポ ン は宇 宙 空 間 で の 軍拡 競 争 を呼 び込 ん で は な らな い と結 論 す る(39)。
⑦ 世 界 の 不 安 定 化 と米 国 の 孤 立 を招 くNMD構 想
ジ ョン ・ニ ュー ハ ウ ス は 「ミサ イ ル 防 衛 論 争 」 に お い て 、 モ ス ク ワ も北 京 も さ ら に 懸 念 を抱 く ヨー ロ ッパ 諸 国 も、 ブ ッ シ ュ政 権 のNMD構 想 を 「戦 略 的優 位 を完 全 に確 立 して い る国 が さ らに単 独 で(防 衛 上 の)優 位 を模 索 し
よ う と して い る意 図 」 と見 な す 。 ミサ イ ル 防衛 構 想 は 、 ア メ リカ の単 独 主義 へ の 各 国 の 不 満 を象 徴 す る存 在 と な っ て い くだ ろ う。 彼 はNMDは 世 界 を
よ り不 安 定 に す るだ け で な く、 ア メ リカ を孤 立 に 誘 い 、他 か らの 攻 撃 に も ろ い 存 在 に して し ま う とす る。
ニ ュ ー ハ ウ ス は、 ミサ イ ル 防 衛 構 想 に 対 す る 米 国 内 の 見 解 を4つ に 分 類 す る。 第 一 の 類 型 は 「そ う熱 心 で な い支 持 者 達 」 で 、NMD構 想 に 対 して 一 部 の 暴 力 的 政 権 に対 す る抑 止 効 果 、 ミサ イ ル の偶 発 発 射 に 対 す る保 証 措 置 、 あ る い は ア メ リカ社 会 全 体 の 安 堵 感 を高 め る程 度 の小 さ な効 能 しか 求 め な い 。 第 二 の 類 型 は 「熱 心 な ミサ イ ル 防衛 支 持 勢 力 」 で あ り、NMD構 想 に 中 国戦 略 核 戦 力 を相 殺 す る役 割 とロ シ ア の ミサ イ ル攻 撃 能 力 を も相 殺 で き る陸 海 お よび 宇 宙 配 備 を組 み 合 わせ た 多 層 式 の 「厚 い」 ミサ イ ル 防衛 の 整 備 を求 め て い る。 第 三 は 「反 対 派 」 で あ る。NMDは 相 互 抑 止 体 制 やABM制 限 条 約 を は じめ とす る軍 備管 理 体 制 全 体 を脅 か し、 米 国 と同盟 諸 国 間 の 軋 礫 を招 き、
さ らに か つ て の敵 対 勢 力 で あ る 中 国 とロ シ ア を刺 激 す る と警 告 す る。 さ らに 攻 撃 を受 け て か らで なけ れ ば 実 証 され な い不 確 実 な兵 器 で あ る と して ミサ イ ル 防 衛 の 実 効 性 に 疑 問 を呈 す る。 第 四 は 「穏 健 な 反 対 勢 力 」 で あ り、 小 規 模 防衛 シ ス テ ム(TMD)で あ れ ば 他 国 へ の 刺 激 もな く軍 備 管 理 体 制 崩 壊 の 危 険 もな い 。 大 規 模 戦 略 核 戦 力 に よ る抑 止 が ミサ イ ル の 脅 威 に対 抗 す る も っ と
も効 果 的 な 方 法 で あ る。TMDレ ベ ル を越 え な い小 規 模NMD構 想 な ら相 互 抑 止 を崩 壊 させ ず 米 国 の安 全 保 障 を 高 め る こ とが で き る と主 張 す る(39)。
しか しニ ュ ー ハ ウ ス は 現 実 に は事 前 の 牽 制 策(priorrestraint)の 重 要 性 が さ らに 増 大 して い る と言 う。 軍備 管理 合 意 締 結 、 予 防外 交 促 進 、 国 際 法 徹 底 、 ミサ イ ル発 射 ま で の 時 間 延 長 、 監 視 デー タ共 有 、 情 報 公 開 な ど グ ロー バ ル 環 境 を安 定 化 させ る政 治 的 措 置 を大 規 模 戦 略 核 戦 力 と組 み合 わせ れ ば 米 国 の安 全 保 障 環 境 は よ り安 定 す る。 米 国 に対 す る核 兵 器 の脅 威 は現 実 に は な ら