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食をめぐる現状と課題・食の地域資源
ごぼう
繊維質を多く含む根菜。市内では深代・市津地区などで生産されている。
(1)食をめぐる危機的な現状と課題
第1章 計画策定の背景でも述べたように、全国的に食に関する様々な課題があり、本市におい
てもこれは例外ではありません。ここでは、本市の食に関する現状と課題を6つにまとめます。
低い食料自給率と食料廃棄
物流の発達とともに、安価な輸入農産物が大量に輸入され、価格競争力の弱い国内農業は衰退
の傾向にあります。現在の日本の食料自給率
*
(カロリーベース)は、41%(平成20年度概算
値)と先進国の中でも最低の水準で、食生活は大きく海外に依存しています(図表2)。本市の自
給率も、あまり高いとは言えません。世界的な人口の増加、水資源の枯渇や農地の砂漠化、地球環
境問題による気候変動の懸念等、安定的な食料供給への不安を感じている市民も多く(図表3)、
国内における農業生産のあり方を再考し、食料自給率の向上を図っていく必要があります。
図表2 食料自給率(カロリーベース)
昭和36 昭和51 15 年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
全 国 78 53 40% 40% 40% 39% 40% 41% 千 葉 県 - - 30 30 29 29 29 - 市 原 市 - - 26 27 24 - - -
主
要
先
進
国
オ ー ス ト ラ リ ア 204 235 237 カ ナ ダ 102 157 145 フ ラ ン ス 99 110 122 ド イ ツ 67 69 84 イ タ リ ア 90 78 62 オ ラ ン ダ 67 72 58 ス ペ イ ン 93 101 89 スウェーデン 90 104 49 ス イ ス 51 52 49 英 国 42 48 70 ア メ リ カ 119 137 128
食の現状1
資料:農林水産省調べ。
ただし、市原市のデータについては、農林水産省がウェブ
サイトで配布している「地域食料自給率試算ソフト」により、
図表3 現在の食料自給率に不安を感じている市民の割合(平成20年)
図表4 国内生産のみで2,020kcal 供給する場合の一日の食事のメニュー例
★
出典 農林水産省/食料自給率の部屋 http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/index.html
一方で、わが国の食品ロス
*
(本来食べられるにもかかわらず廃棄されているもの)は年間50
0万~900万トン(平成17年度)と言われています。現在、世界では、9億6千万人以上
*
と
も言われる人々が飢餓で苦しんでいると言われている中で、食料を大量に輸入し、現在の食料自給
率に不安を感じているにも関わらず、現実には食べ残しています。「もったいない」という日本語
を世界に広めようという動きがある中で、食のありがたみを再認識し、私たちのライフスタイルを
見つめ直す必要があります。
46.2 42.6 9.2
1.7
0.3
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 無回答 非常に
不安である
ある程度不安を 感じている
あまり不安を 感じていない
まったく不安を 感じていない 不安を感じている(88.8) 不安を感じていない(11.2)
トピック
*食料自給率 食料自給率とは、国内の食料消費が、国内の農業生産でどの程度賄えているかを示す指標のことで
す。食料自給率には重量ベース、カロリーベース、生産額ベースの 3 種類の計算方法があります。ここで用
いているカロリーベースは、重さが異なる全ての食料を足し合わせ計算するために、その食料に含まれるカロ
リーを用いて計算するものです。カロリーベース自給率の場合、畜産物には、それぞれの飼料自給率がかけら
れて計算されます。
*食品ロス 平成17年度の食品廃棄物は約1,900万トンであるが、この中には、製造過程で発生する製造副
産物や調理くずなど食用に供するには適さないものだけでなく、食品ロスが相当程度含まれています。(食品
ロスの削減に向けて(平成21年3月 農林水産省))
*世界の飢餓人口 FAO(国際連合食糧農業機関)の発表。平成20年 12 月。
市原の農業の現状
本市の農家戸数は、平成17年時点で 4,959 戸と県下第 1 位ですが、10年前に比べ 25%以上
減少しています。
兼業農家が全体の約9割を占めており、これは、比較的兼業しやすい稲作が多いためと考えられ
ます。
このような農家の減少傾向は、農業従事者の高齢化や後継者不足と相まって加速しており、さら
に言及すれば、家族経営による経営の難しさを反映しているとも捉えることができ、法人化や集落
営農等の新たな形態による農業経営等の検討が必要になってきています。
また、消費者である市民も一緒になって地域の農について考えるためにも、まずは市民に地域の
農業について知ってもらい、利用してもらうことが大切で、このためにも「地産地消」を推進する
必要があります。
図表5 市原市における農家戸数の推移
年 2 7 12 17
農 家 数 ( 戸 ) 7,597 6,623 5,617 4,959
内
訳
兼 業 農 家 数 ( 戸 ) 7,055 6,078 5,114 4,402
専 業 農 家 数 ( 戸 ) 542 545 503 557
※兼業農家には自給的農家戸数も含む。 資料:農林業センサス
生活習慣病が死因の6割に
「日本型食生活
*
」が、これまで私たちの健康を支え、「健康寿命(元気に健康に生きる期間)」
を世界一にまで押し上げましたが、食の欧米化、ライフスタイルの変化等により、栄養バランスの
偏った食事、不規則な食事の機会が増え、このことが肥満や生活習慣病の増加につながっています。
また、20代の女性を中心に、過度の痩身志向が見受けられることも問題視されています。
このため、将来にわたって健康な体を維持していくためには、食に関する情報を正しく理解し、
正しい食習慣の実践のもと、栄養バランスのよい食事を選択する力を身につけることが求められて
います。
トピック
*日本型食生活 日本の気候風土に適した米を中心に、野菜、魚、肉、さらには果物などが加わって、栄養バラ
ンスのとれた昭和 55 年頃の日本の食生活。
図表6 肥満者(BMI
*
≧25)の割合(平成21年)
男性 女性
資料:「健康いちはら21」市民アンケート調査結果より作成
トピック
*BMI Body Mass Index の略で、体格指数を表し、肥満度を判定する基準です。18歳以上で最も一般的に使われている
体格指数です。BMI・22は、生活習慣病になりにくい最も健康的な標準値、つまり適正体重といいます。
[BMI・22=適正体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22]
あなたのBMIは?=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
※BMI指数が高い場合でも、スポーツ選手のように筋肉の多い人や水分代謝が悪くむくみのある場合は、肥満とはいいません。
図表7 本市の死因別割合(平成19年)
資料:平成19年 千葉県衛生統計年報より作成
「食」の安全・安心
BSE ★
や鳥インフルエンザ ★
の発症、食品の偽装表示、残留農薬など、「食」の安全性に関わる
国内外の問題の発生によって、その安全性に対する消費者の関心が高まっています。このため、食
品の安全性の確保とともに、食の安全・安心について自らが考え、選択できるように、的確な知識
を身につけ、賢い消費者になることが求められます。
図表8 本市の消費生活センターへの食料品に関する相談件数の推移
資料:千葉県消費者センター「事業のまとめ」平成16~20年度より作成
食の現状4
子どもたちの「食」の乱れ
子どもたちの野菜嫌いや固いものを嫌う傾向が強まる一方で、糖分や脂肪分の摂取量は過多気味
にあり、栄養バランスの乱れによる体調面や情緒面への影響が懸念されています。
さらに、朝食を欠食する子どもが増える傾向にあります。本市でも毎日朝食を食べている小中学
生の割合はあまり高くありません(図表9)。きちんと毎日朝食を食べる子どもほど、ペーパーテ
ストの得点が高いという調査結果も公表されており、子どもの健やかな成長を通じて学習意欲や体
力の向上を図るための取組が必要です。
図表9 朝食の欠食率(平成21年)
資料:文部科学省「学校給食実施状況調査」のうち本市調査分、「健康いちはら21」市民アンケート調査より作成
図表10 朝食を毎日食べる子どもの方が正答率が高い傾向が見られる。
※グラフは、朝食を毎日食べていますかという問いに対して、上記の選択肢を選んだ児童・生徒の割合と国語A・B、算数A・Bのク ロス集計。国語、算数それぞれAは主として知識・技能の定着を見る問題、Bは活用に関する力を見る問題である。
資料:文部科学省「平成19年度 全国学力・学習状況調査」より作成
固く歯ごたえのあるものを嫌う傾向から、そしゃく力(噛む力・飲み込む力)が低下しています。
そしゃくは、丈夫なあごの発達に欠かせず、脳の活性化やだ液の分泌によるむし歯予防効果等もあ
ります。むし歯になると、噛みづらくなり、消化も悪くなります。生涯を通じて食を楽しく味わう
ためには、歯と口腔の健康を維持することが大切です。
また、子どもは親の台所に立つ姿を見て、できることを手伝い、家族団らんで食卓を囲んで手
づくりの料理を味わうことで、調理技法や食への感謝の心、作法等を覚えてきました。このように
台所や食卓は、子どもの成長にとって非常に重要な意味を持っていましたが、外食や中食
*
の過度
の利用、別々の時間に一人で食べることが社会問題になるなど、家族との食を通じたコミュニケー
ションも薄れつつあります。
その他、流通の発達により、年間を通して国内外で生産される農産物が入手できるようになり、
非常に便利になった反面、食べものの旬
*
が分かりにくくなり、自然の恵みであることを意識しに
くくなってきています。農作業体験の機会を作ることや、体験指導者の育成が求められます。
トピック
*中食(なかしょく) レストラン等へ出かけて食事をする外食と、家庭内で手作り料理を食べる「内食」の中
間にあって、市販の弁当や惣菜、家庭外で調理・加工された食品を家庭や職場・学校・屋外等へ持って帰り、
そのまま(調理加熱することなく)食事をすること。また、その食品(日持ちをしない食品)の総称。(農林
水産省ウェブサイト 農林水産関係用語集)
*旬 旬の食材とは、消費者が住んでいるそれぞれの地域の自然の中で、適期に適地で無理なく、食べごろに生産さ
れたものと言われています。旬のものは味が良く体に良いとされていますが、2000年にまとめられた五訂
日 本 食 品 標 準 成 分 表 で は 、 食 品 成 分 の 季 節 変 動 に 着 目 し 、 ホ ウ レ ン ソ ウ の ビ タ ミ ン C 等 に つ い て 、 冬 採 り
(60mg)と夏採り(20mg)に分けて記載しています。四季の変化がはっきりとした日本では、「初物を食
べると75日長生きする」ということわざがあったり、旬を表わす言葉を出始めの「はしり」、最もよく出回
る「さかり」、旬が終わりかけの「なごり」と使い分けたりするなど、食生活の中で旬を楽しんでいたことが
うかがえます。
成長期である子どもにとって、健全な食生活は健康な心身を育むために欠かせないものであると
同時に、将来の食習慣の形成に大きな影響を及ぼすものであり極めて重要です。大人になって食習
慣を改めることは非常に困難なことです。子どもの食について、真剣に考える必要があります。 資料:社会教育委員会議「家庭教育に関するアンケート調査(平成21年3月実施)」より作成
図表11 1日に1回以上、家族そろって食事をとっている家庭の割合
消えつつある地域の食文化
祭礼等の地域文化や風習には、五穀豊穣を祈念するなど、農耕作業に対応したものが多く含まれ
ています。
また、正月や節句、祭礼時に振舞われる「ハレ」の食事、日常食として受け継がれてきた「ケ」
の食事には、保存が効く、栄養成分が豊富でバランスが良いなど、先人が地域の農水産物を賢く使
って調理したものがあります。
こうした素晴らしい伝統は、残念ながら、日常生活の中で自然と継承される機会が少なくなって
きており、今後、いかに地域固有の食文化を残していくかが課題となっています。
図表12 地域の郷土料理・伝統食を食べたことがある市民の割合(平成20年)
食の現状6
無回答 食べた
ことはない 食べたことがある(89.9)
7種類 以上
5~6 種類
3~4 種類
1~2 種類
※結果数値(%)は表章単位未満を四捨五入してあるので,内訳の合計が計に一致しないこともある。
(2)食を守り育てるいちはらの地域資源
本市には、貴重な食に関する地域資源があり、前述した様々な課題を解決する上で、これらを活
用した食育の展開が今後欠かせないものとなります。ここでは、いちはらの食の地域資源について
4つにまとめます。
養老川が育んだ肥沃で広大な農地
市を南北に流れる養老川の中流域では、周辺に広がる平野部の肥沃な土地を活用した稲作を中心
とする農業が盛んです。本市の耕地面積は 6,120ha(図表13・平成 18 年)と県下第6位の規
模を誇っています。
図表13 市原市の耕地面積の動向 (単位:ha) 年 平成5年 平成 10 年 平成 15年 平成 18 年
田 耕 地 4,810 4,530 4,170 3,970
畑 耕 地 2,270 2,200 2,220 2,150
計 7,080 6,730 6,390 6,120
資料:作物統計(関東農政局千葉農政事務所刊)
養老川中流域・三和支所付近(平成15年撮影) 農業センター付近(平成15年撮影)
地域性を活かした様々なこだわり農産物
本市は、南部の中山間地域から中
部 以 北 の 平 野 地 帯 な ど 地 域 に 多 様
性 が あ り 、 そ れ ぞ れ 地 形 に 応 じ た
様 々 な 農 産 物 の 生 産 が 行 わ れ て お
り、 平成 17 年の農 業 産出 額は、
121億5千万円で県下第4位とな
っています。
品 目 別 に 見 る と 、 米 は 全 体 の
31% を 占 め 、 本 市 の 農 業 は 稲 作 中
心であることを表しています。
畜産は、経営戸数が少ないものの、
専 業 農 家 に よ る 大 規 模 経 営 化 が 進
んでいます。また、市場での評価の
高いだいこんや梨、いちじく等が特
産品として生産されています。
図表14市原市の農業産出額品目別ベスト10(平成17 年)
第
1
位米
(367 千万円)
第
6
位だいこん
(43 千万円)
第
2
位豚
(233 千万円)
第
7
位らっかせい
(36 千万円)
第
3
位鶏卵
(123 千万円)
第
8
位さやいんげん
(29 千万円)
第
4
位生乳
(90 千万円)
第
9
位ほうれんそう
(23 千万円)
第
5
位梨
(57 千万円)
第
10
位いちご
(21 千万円)
「ふるさといちはら」の味!
先人の知恵が詰まった味わい深い郷土食の数々
いちはらの郷土料理・伝統食
*
の代表的なものとして、「太巻き寿司」や「とうぞ」などがありま
す。この他にも、眠っているふるさとの味は数多くあり、私たちは、これらのかけがえのない地域
の「食」を、様々な機会を通して味わうことができます。
トピック
*市原の主な郷土料理・伝統食
・太巻き寿司 = 花などの図柄を様々な具材を用いて表現した巻き寿司
・鶏雑炊(とりどせ・とっどせ) = 鶏ガラと生姜、味噌を合わせた団子とごぼうを入れた雑炊
・山椒餅 = 山椒の実と砂糖を入れた菓子
・豆造(とうぞ) = 味噌を作るときの大豆の煮汁に塩と麹、納豆・干し大根などを入れて4~10日位おいたもの
・コヅキ豆 = 大豆を水につけ臼でつぶしたもの
・落花生みそ = 味噌を砂糖と酒でのばし、炒った落花生を混ぜ合わせたもの
・はば雑煮 = はば(波葉、房州産の海藻)を入れた雑煮
★
食の地域資源
2
精力的に「食」を育む人々のちから
本市にはボランティアで料理講習をするグループや、地産地消を推進するグループ、賢い消費者
になるための研究や啓発を行うグループ、農業体験を企画するグループなど、様々な市民グループ
が食に関わる活動をしています。
栄養士や食生活改善推進員の活動も活発です。
また、小中学校では給食主任がいて、学校栄養職員や市と連携しながら、各学校での食育の推進
に取り組んでいます。
その日の地元農産物からメニューを考えて地産地消を実践する飲食店や、安全・安心な食材にこ
だわる飲食店、メーカーと連携して食育活動を行う食品小売店など様々な食育活動を行う食品関連
事業所があります。
農業部門においても、認定農業者や農業生産法人、消費者ニーズに応えて環境にやさしい農業に
取り組む農業者、加工業や農産物直売事業を展開している農業者、食育活動を行う女性グループな
どが存在します。
このように、本市には、既に地域の「食」を守り、育もうと精力的に活動しているたくさんの人々
がいます。
これらの人々は、「食」を通した地域の活性化を図る上で先導的な役割を果たすことが期待され
ています。