第6章 サイクル再熱除湿サイクルにおける
室温・湿度制御方法
6.1 概 要
第 4 章 , 第 5 章 に お い て , ルームエアコンディショナの除湿機能としてサ イクル再熱除湿サイクルの研究開発を行い,主にその性能と冷媒音低減の検討を行 った.サイクル再熱除湿サイクルの構成の特徴は,除湿運転時に,室内熱交換器を 除湿弁を介して再熱器と冷却器に分け,吸込空気を冷凍サイクルにより冷却・除湿 すると同時に加熱することである.その結果,省エネルギーで吹出空気温度が室温 と同等の等温除湿運転が可能となり,特に梅雨時などの高湿で外気温がそれ程高く ない場合には,室温を保持したまま湿度を下げて快適な環境を実現できる. ここで除湿運転としては,以下の点が重要である. 1) 除湿能力の確保 2) 冷媒音の低減 3) 室温,湿度の制御 これらは互いに密接に関連している.除湿能力を増大させるには,圧縮機の回転数 を増して冷媒流量を増やす必要があるが,圧縮機の回転数を増すと除湿弁から発生 する冷媒音が大きくなるため,冷媒音の低減が必要になる.しかし湿度を下げる時 間を短縮したり,高湿時に低湿度まで下げるには,十分な除湿能力が必要になる. ところで,近年ルームエアコンディショナでは,オゾン層保護の点から冷媒が R 22 から R 410A へ切り替わった.また洗濯物の乾燥時間短縮等の点から除湿能力増 大に対するニーズが大きくなっている.これに対応して,第 5 章において,十分な 除湿能力を確保でき,冷媒音を低減できる「二段絞り除湿弁」を開発した. また,特に女性の方から,“温度および湿度を好みの値に設定したい”というニ ーズが大きい.しかし,4.5 節で述べた従来の制御方法では,湿度センサを組み込 んでいなかったこともあり,室温や湿度を十分精度良く制御できていなかった. 本章は上記 3)の室温,湿度の制御について検討したもので,第 5 章の R 410A 化 と除湿能力増大を可能にした二段絞り除湿弁を用いたサイクル再熱除湿サイクル において,温度センサに加えて湿度センサを組み込み,さらに圧縮機と室外ファン の回転数をそれぞれ湿度と室温に応じて操作することにより,室温と湿度を好みの値に制御できる除湿運転制御方法の研究開発を行った.
6.2 除 湿 サ イ ク ル の 構 成 と 使 用 セ ン サ
室内機と室外機からなるサイクル再熱除湿ルームエアコンディショナの冷凍サ イクルを図 6.1 に示す.図 6.1 のサイクル構成は,第 5 章の図 5.1 と同一で,これ に従来から使用されている室温センサと外気温センサに加えて,新たに室内湿度セ ンサを取り付けてある. 図 6.1 のサイクルの動作や冷媒流動状態は 5.2.1 項と同一であり,除湿運転時に は,室外機側の電子膨張弁を全開にし,室内機側の除湿運転時にのみ絞り作用を行 う除湿弁を絞り,冷媒を一点鎖線矢印のように流す(冷房運転と同様).これによ り,室外熱交換器は凝縮器,室内熱交換器は,除湿弁の上流側の山形の再熱器が凝 縮器の一部,下流側の冷却器が蒸発器となり,冷媒は,室外熱交換器および室内の 再熱器で放熱・凝縮し,室内の冷却器で吸熱・蒸発する.そして再熱器を通過した 空気は加熱され,冷却器を通過した空気は冷却・除湿され,そのあと各空気は混合Refrigerant flow direction : Dehumidification Cooling Heating Four-way valve Indoor fan Compressor Outdoor fan
< Outdoor unit > < Indoor unit >
Electronic expansion valve for cooling and heating
Inlet air (Humidified air)
Outlet air
(Dehumidified air kept at room temperature) Outdoor
heat exchanger
Indoor heat exchanger (Cooling device) Outdoor temperature sensor Expansion valve for dehumidification (Dehumidification valve)
Indoor heat exchanger (Reheating device)
Indoor temperature sensor Indoor humidity sensor
されて吹き出される. このように室内熱交換器において冷却・除湿と加熱の両方を行い,さらに冷却能 力と加熱能力を調節することにより,空気の温度を変化させずに除湿を行う“等温 除湿運転”,空気を冷却しながら除湿を行う“冷房気味除湿運転”,および空気を加 熱しながら除湿を行う“暖房気味除湿運転”が可能になる.
6.3 除湿制御実験装置
除湿運転の制御方法や除湿性能を実験するために,実際のルームエアコンディシ ョナの制御装置を改造し,パーソナルコンピュータ(パソコン)によって制御を行 えるようにした図 6.2 のルームエアコンディショナ制御システムを製作した.この 制御システムによって,従来室内のマイクロコンピュータ(マイコン)が行なって いた圧縮機や室外ファンの回転数の決定や除湿弁の開閉などの機能をパソコンで 実行できるようにした. 図 6.2 において,パソコンは,A/D 変換器を介して,室内機から室温と湿度を取 り込み,室外機から外気温を取り込む.またパソコンは,室内機側では,インター フェイスを介して駆動回路を駆動し,室内ファンや除湿弁を制御する.室外機側で は,インターフェイスを介して室外マイコンとデータを送受信し,さらに室外マイ コンは受信データに基づいて駆動回路を駆動し,圧縮機回転数,室外ファン回転数 及び電子膨張弁の制御を行う. 実験では室内機,室外機を,図 6.3 のように,それぞれ温度・湿度を制御できる 恒温室に設置し,一定の温湿度条件の下で特性の測定を行った.除湿能力は単位時 間当たりに排出される除湿水をメスシリンダで測定して求めた.熱交換器各部温度 や吸込・吹出空気温度は銅-コンスタンタン熱電対によって測定した.圧縮機の吐 出冷媒圧力と吸入冷媒圧力は圧力センサにより測定した.室内機用恒温室内には加 湿器と電気ヒータを設置し,必要に応じて負荷を与えた. また供試エアコンは,第 5 章と同じで,冷媒 R 22 使用で定格冷房能力 2.8 kW の 1999 年度機を改造して,圧力レベルが約 1.5 倍になる冷媒 R 410A を封入し,これ に伴い圧縮機の行程容積を定格冷房能力が R 22 の場合と同一になるように小さく した (67%).Fig.6.3 Experimental equipment
Humidifier Electric heater Indoor control device Outdoor unit
Personal computer Connecting pipe ( for outdoor unit)
< Constant temperature and humidity room > ( for indoor unit)
Outdoor control device Indoor unit
Fig.6.2 Room air conditioner control system
※Electronic expansion valve Compressor Outdoor fan E.E.V.※ Drive circuit Outdoor microcomputer Drive circuit Indoor fan Dehumidifiction valve Indoor microcomputer Indoor controller Interface Personal computer Outdoor sensor Temperature (thermister) Humidity Temperature (thermister)
< Outdoor unit > < Indoor unit >
A/D converter Outdoor controller
6.4 除湿サイクルの特性
新しい除湿制御方法の研究開発に際して,まず除湿サイクルの特性を把握するた めに先の 5.5 節の実験を行い,圧縮機回転数と室外ファン回転数が除湿能力や吹出 空気温度に与える影響を測定した.この結果,除湿弁として図 5.2-(a)の一段絞り除 湿弁(絞り部;V溝-2 個)を用いた場合,室外ファン回転数をパラメータとして, 圧縮機回転数を変化させた時の除湿能力と吹出空気温度をプロットした結果は図 5.3 のようになり,以下のことが分った. 1) 圧縮機回転数を増すと,除湿能力はほぼ直線的に大きく増加するが,吹出空気 温度の変化は小さく僅かに増加する. 2) 室外ファン回転数を増すと吹出空気温度が大きく下がり,除湿能力は増加する. 3) 以上より,湿度や室温を制御するためには圧縮機や室外ファンの回転数を制御 することが有効である. 4) 除湿運転では,冷房運転や暖房運転に比べて圧縮機や室外ファンの回転数が低 いことから,再熱器出口で過冷却度が比較的小さく,冷却器出口で過熱度がほ とんど取れない状態となった.しかし過熱度が過大になったり,液戻りが問題 になることも無く,安定したサイクル状態であった. なお室内ファン回転数は,除湿能力や吹出空気温度にはほとんど影響しない.6.5 新しい除湿運転制御
6.5.1 従来の除湿運転制御 従来のルームエアコンディショナでは,室温センサと外気温センサの温度に基づ いて除湿運転を行っていた.詳細は 4.5 節で述べたが,概要は以下のようである. 室温,外気温をそれぞれ段階的に数段に分割し,各室温範囲と各外気温範囲の組 み合わせで指定される各温度範囲ブロック毎に,圧縮機と室外ファンの回転数を, 以下のように,一定に設定して運転する. ・圧縮機回転数は,室温と設定温度の差に応じて変化させる. ・室外ファン回転数は,低外気温ほど低くする. ・室温が高すぎる場合には冷房運転に,室温が低すぎる場合には暖房運転に,自 動的に切り換える.しかしこの従来の除湿運転制御方法では,湿度を直接検出していなかったり,使 用しているマイコンの処理能力やメモリ容量の制限から圧縮機や室外ファンの回 転数設定が荒くなったりで,温度・湿度を十分精度良く制御できなかった.また従 来の除湿弁では,比較的大きい冷媒音や間欠音発生のために,圧縮機回転数を広い 範囲で変えることができなかった. 6.5.2 新しい除湿運転制御の考え方 新しい除湿運転制御方法は,次の 6.5.3 項に詳述するように,室内機に温度セン サに加えて湿度センサも取り付け,マイコンの処理能力やメモリ容量を高めて,従 来の方法に対して温度および湿度に対する補正項を追加し,室温と湿度を好みの値 に制御できるようにした.補正方法は,6.4 節の 1)~4)の特性に基づいている. この方法により,除湿運転では,冷房運転や暖房運転に比べて,使用温度範囲が 狭く,圧縮機や室外ファンの回転数可変範囲が狭いことから,大きなハンチングが 無く,実用的な室温・湿度制御が可能になると考えられる. 6.5.3 新しい除湿運転制御方法 使用マイコンの処理能力やメモリ容量を考慮し,さらには温度や湿度の応答速度 が速くないことを考慮して,できるだけ簡単な補正により,実用上問題ない精度で 室温や湿度を制御できるようにした. 具体的には,以下のように,圧縮機と室外ファンの回転数を,最初は室温と外気 温に応じて定める従来制御方法で設定して暫く運転し,そのあと室温,湿度それぞ れの測定値と設定値の差に応じて所定量の補正を時間的に交互に行う制御とした. (a) 運転開始 圧縮機,室外ファンの回転数の初期値を 4.5 節の従来制御方法により設定し, 所定時間 t0運転する. (b) 次の圧縮機回転数の設定 ΔRH = RH-RHS として, NC(n) - ΔNC1 (ΔRH<-ΔRH1) (6.1) NC (n+1) = NC(n) (-ΔRH1
≦
ΔRH≦
ΔRH2) (6.2) NC(n)+ΔNC2 (ΔRH >ΔRH2 ) (6.3)ここに,RH;測定相対湿度,RHS;設定相対湿度 ΔRH1 , ΔRH2;定数(相対湿度差) NC ;圧縮機回転数 ΔNC1 , ΔNC2;圧縮機回転数の補正量 n;サンプリング番号 (c) 次の室外ファン回転数の設定 ΔRT = RT-RTS として, Nf(n) - ΔNf1 (ΔRT<-ΔRT1) (6.4) Nf (n+1) = Nf(n) (-ΔRT1
≦
ΔRT≦
ΔRT2) (6.5) Nf(n)+ΔNf2 (ΔRT>ΔRT2) (6.6) ここに,T;測定室温,RTS;設定室温 ΔRT1 , ΔRT2;定数(温度差) Nf;室外ファン回転数 ΔNf1 , ΔNf2;室外ファン回転数の補正量 n;サンプリング番号 (d) t0時間の初期運転後,圧縮機回転数および室外ファン回転数を,それぞれ式(6.1) ~式(6.3),式(6.4)~式(6.6)によって,湿度や室温の測定値と設定値の差に応じて 補正し,それらの回転数変更指示を時間的に交互に出し,それぞれ所定時間 t1, t2運転する. 以上の(a)~(d)の操作をまとめた除湿運転の制御アルゴリズムを図 6.4 に示す. まず図 6.4-(a)のように,リモコンで除湿運転が選択されると,4.5 節の従来制御 方法のように,測定室温 RT とリモコン設定温度 RTSに応じて,RT が RTSより一定 値ΔRT3以上低い場合には暖房運転,RT が RTSより一定値ΔRT4以上高い場合には 冷房運転を行い,その間が除湿運転領域となる.そしてこの判定は常時行う.なお, ここで選択される暖房運転や冷房運転は,リモコンで除湿運転が選択された中での 運転である. 除湿運転領域が選択されると,図 6.4-(b)のように,まず圧縮機と室外ファンの回 転数の初期値 NC(0),Nf(0)を設定し,所定時間 t0の初期運転を行う.初期値は,4.5 節の従来制御と同じ値であり,室温と外気温によって決定される.初期運転が終ると,圧縮機回転数を補正した運転(図 6.4-(c);運転時間 t1)と室 外ファン回転数を補正した運転(図 6.4-(d);運転時間 t2)を交互に行う.交互に行 うのは,室外ファン回転数は吹出空気温度と除湿能力の両方に影響するが,圧縮機 回転数は吹出空気温度にほとんど影響を与えないことから,室外ファンを変化させ て室温を設定値に制御したあと,ある程度時間をおいてから圧縮機回転数を変化さ せることにより,さらに湿度を設定値に制御するためである. 図 6.4-(c)の圧縮機回転数の補正は,室内相対湿度 RH を測定し,これを設定相対 湿度 RHSと比較して,その差ΔRH(=RH-RHS)が所定値-ΔRH1より小さければ圧縮 機回転数を所定値ΔNC1減少させ,所定値ΔRH2より大きければ所定値ΔNC2増加さ せ,その間では変えない. 図 6.4-(d)の室外ファン回転数の補正は,室温 RT を測定し,これを設定室温 RTS と比較して,その差ΔRT(=RT-RTS)が所定値-ΔRT1より小さければ室外ファン回 転数を所定値ΔNf1だけ減少させ,所定値ΔRT2より大きければ所定値ΔNf2だけ増加 させ,その間では変えない.
Fig.6.4 Flow chart of new dehumidification control method
Outdoor fan rotational speed setting Return (d) ΔRT = RT-RTS RT read ΔRT < -ΔRT1 ΔRT > ΔRT2 -ΔRT1 ≦ΔRT ≦ΔRT2 ΔNf1 decrease ΔNf2 increase ΔNC1 decrease ΔRH = RH - RHS
Compressor rotational speed setting Return ΔRH < -ΔRH1 ΔRH > ΔRH2 ΔNC2 increase (c) -ΔRH1 ≦ΔRH ≦ΔRH2 RH read
※ΔRT3,ΔRT4;Room temperature difference
(a) Dehumidification drive Return RT < RTS-ΔRT3 RT > RTS+ΔRT4 RTS+ΔRT4≧RT≧RTS-ΔRT3 Operation judge RT read Heating Dehumidifi -cation→(b) Cooling Operation
Initial rotational speed setting of compressor and outdoor fan NC(0) , Nf(0)
Dehumidification operaion
Compressor rotational speed setting → (c)
Outdoor fan rotational speed setting → (d) drive ; t1 Return (b) drive ; t2 Drive start or
After operation change Y Initial drive-time passing N Y Initial drive ; t0
6.6 除湿制御実験
前節の除湿運転での室温・湿度制御方法の実用性を実機により検討した. 6.6.1 実験方法 (1) 除湿弁と実験機 湿度が高く潜熱負荷が大きい時に湿度を目標値に制御するには,十分な除湿能力 が必要である.また冷媒の R 410A 化に伴い,圧力レベルが約 1.5 倍になることか ら,冷媒音の増加が懸念される.そこで除湿能力の増大と冷媒音の低減ができる, 第 5 章で新しく開発した図 5.2-(c)のV溝 2 個-4 個二段絞り除湿弁を使用した.この 除湿弁は,絞り量を出口大気開放で入口に 98 kPaG の空気圧をかけた時の出口側空 気流量で表すと 5.8 L/min で,従来の図 5.2-(a)の一段絞り除湿弁の 7 L/min に比べて 絞り量を大きくしてあり,第 5 章の表 5.3 のように,従来除湿弁に対して,圧縮機 回転数を増して除湿能力を 1.4 倍(530→745 mL/h)と増大させても,騒音レベル を低くできる (33.7→32.4 dB(A)). 実験機としては,5.2 節のように,R 22 使用で定格冷房能力 2.8 kW のルームエア コンディショナを R 410A 用に改造して使用した. (2) 実験条件と方法 供試ルームエアコンディショナの室内機,室外機をそれぞれ別の恒温室に設置し, 表 6.1 の条件で,冷房気味除湿運転と暖房気味除湿運転の場合の実験を行った. 冷房気味除湿運転は冷房負荷がある場合の運転であり,室内機側恒温室内に加湿 器と電気ヒータを入れて熱負荷とした.暖房気味除湿運転の場合には加湿器のみを 入れた.また室外機側恒温室内の温度は 24 ℃一定とした. なお熱負荷は,定格冷房能力 2.8 kW ルームエアコンディショナの場合に対応し た以下の条件に相当する値で,サイクル再熱除湿運転における代表的な条件である. 温度,湿度;室内 24 ℃,50 % / 室外 24 ℃,80 % 部屋;床面積 16 m2 (10 畳相当),天井 2.3 m 在室者;4 人,静座 換気回数;1 回/h 電気品;400 W(照明,テレビ,パソコン等) (但し,夜を想定して,日射は考慮しない.)実験時の制御における設定値を表 6.2 に示す.記号は,式(6.1)~式(6.6)および図 6.4 の記号に対応している.表 6.2 の設定値は,インバータエアコンにおける従来 からの制御設定値を参考にし,さらに次の点を考慮して,幾通りかの実験を行なっ て決定した. ・ΔRH1,ΔRH2,ΔRT1,ΔRT2;快適性,能力. ・ΔNC1,NC2,ΔNf1,ΔNf2,t0,t1,t2;圧縮機や室外ファンの回転数変化時の 湿度や室温の変化勾配や制御の安定性. Table 6.1 Experimental condition
※ Temperature around constant temperature rooms = 17~18 ℃
Cooling-like Heating-like Set temperature of air conditioner (℃) 24 24 Set humidity of air conditioner (%) 60 50 Ambient temperature of outdoor unit (℃) 24 24 Heat load in the room Latent heat (420 ml/h) Sensible heat (700 W) Latent heat (420 ml/h)
Table 6.2 Set values for the proposed humidity and temperature control
Symbol Value Comments
ΔRH1 2 %
ΔRH2 2 %
Relative humidity difference
ΔRT1 0.8 ℃ ΔRT2 0.8 ℃
Room temperature difference
ΔNC1 50 rpm ΔNC2 50 rpm
Rotational speed change of compressor
ΔNf1 140 rpm ΔNf2 140 rpm
Rotational speed change of outdoor fan t0 1 min Initial driving time
t1 1 min
t2 1 min
6.6.2 制御結果 (1) 冷房気味除湿運転 冷房気味除湿運転の実験結果を図 6.5 に示す. スタート時は室温が高く冷房運転になっている. 約 30 分後に圧縮機回転数が下がり除湿運転に切り替わる.このとき一時的に湿 度が上昇している.これは,除湿弁の上流側の再熱器が蒸発器から凝縮器に変わり, この部分に凝縮していた除湿水が蒸発するためと,除湿弁の下流側の冷却器の面積 が小さくなり除湿能力が低下するためである.その後,湿度の上昇に伴い圧縮機回 転数は増加する.そして再び湿度が低下してくるにつれて,圧縮機回転数は減少し てくる.その後,湿度は設定値付近で安定している. 室温は除湿運転に入ってから若干上昇し,設定値付近で安定してくる.その後, 室温が徐々に上昇してくると,室外ファン回転数が増加して室温が下がり,設定値 付近で安定する. このように,湿度,室温とも設定値付近に良く制御されていることが分かる. (2) 暖房気味除湿運転 暖房気味除湿運転の実験結果を図 6.6 に示す.この実験では,最初から圧縮機回 転数が 2000 rpm で除湿運転に入っている. 最初,湿度が高いため圧縮機回転数が徐々に増加していき,それにつれて湿度が 低下して,ほぼ設定値で安定している. 室温は,設定値よりもやや低いレベルで安定している.この時,室外ファンは電 気品冷却のための最低回転数で回っており,再熱器の加熱能力は最大となっている. 従って表 6.2 の条件の暖房気味除湿運転では,室内機の加熱能力が不足気味である ことがわかる.そこでさらに加熱能力を増大させるために,室外ファンを断続運転 したり停止した実験も行ったが,室温はほとんど上がらなかった. 実際には,こうした暖房能力不足の場合には,四方弁により図 6.4-(a)における暖 房運転に切り替え,十分な加熱能力を発揮できるようにしてある. なお図 6.5,図 6.6 では,室温が±0.5 ℃以内でハンチングしているように見える. これは,使用サーミスタの分解能が測定系も含めて 0.33 ℃で,これによる±0.33 ℃ の変動も含まれているためであり,実際の室温ハンチングはもっと小さい.
Fig.6.5 Cooling-like dehumidification operation
Fig.6.6 Heating-like dehumidification operation
0
50
100
0
1000
2000
3000
4000
0
50
100
0
200
400
600
0
50
100
0
20
40
60
80
100
0
50
100
15
20
25
30
35
Setting humidityS etting tem perature
R ela ti ve hu m id it y (% ) R oo m t emp er at ur e ( ℃)
Time (min) Time (min)
4000 3000 2000 1000 0 600 400 200 0 35 30 25 20 0 100 80 60 40 20 0 0 50 100 0 50 100 0 50 100 0 50 100 Ou tdo o r fa n r ot at ion al s pe ed (r p m ) C om pr es sor r ot ati on al s pe ed (r p m )
0
50
100
150
0
1000
2000
3000
4000
0
50
100
150
0
200
400
600
0
50
100
150
40
50
60
70
80
0
50
100
150
20
21
22
23
24
25
26
Time (min) Time (min)
Ou tdo o r fa n r ot at ion al s pe ed (r p m ) R oo m t em p er at ur e ( ℃ ) 0 50 100 150 C om pr es sor r ot ati on al s pe ed (r p m ) 0 50 100 150 R ela ti ve hu m id it y (% ) 600 400 200 0 4000 3000 2000 1000 0 26 24 22 20 0 50 100 150 0 50 100 150 80 70 60 50 40 Setting humidity
以上のように,開発した新除湿制御方法によって室内の温度・湿度を精度良く制 御できるようになった.この結果,快適性の向上ができ,さらに従来機には無かっ た湿度設定機能や温湿度表示機能をリモコンに設けることが可能となる. 6.6.3 除湿運転の起動時特性 図 6.4 の新しい除湿運転制御方法および第 5 章の図 5.2-(c)の二段絞り除湿弁を搭 載した開発機と,第 4 章の図 4.6 の従来の除湿運転制御方法および図 5.2-(a)の一段 絞り除湿弁を搭載した従来機とで,室内湿度が下がる速度を比較した. 実験は,空調可能な実験室内に実際の家に近い部屋を設け,この部屋内に開発機 を設置して行なった. 最初,部屋内を室温 24 ℃,湿度 80 %(実験室内≒24 ℃)にし,その後は顕熱 負荷および潜熱負荷を与えずに,リモコンを低湿度に設定して除湿運転を行なった. その時の室内の相対湿度変化を図 6.7 に示す. 開発機では,従来機に比べて,湿度が 80 %から 40 %に到達するまでの時間を, 従来の 180 分から 60 分へと 1/3 に短縮できた.これは,従来機では除湿弁での冷 媒音のために圧縮機回転数の上限を高くできなかったのに対して,開発機では,低 冷媒音の二段絞り除湿弁の開発により,圧縮機回転数の上限を高くでき,除湿能力 を大幅に増加できたことによる. 30 180 20 80 相 対 湿 度 90 120 150 40 60 経過時間 (分)
前年度機
0 60開発機
(%) Time (min) R e la ti v e h u m id it y (% ) 80 60 40 20 0 0 30 60 90 120 150 180Previous year unit Developed unit
また図 6.8 に,ユニット性能がさらに改善された 2001 年度エアコンを用いて, 上記と同じ部屋・温湿度条件で,3 人相当の熱負荷を入れた時の,3.1.1 項で説明し た三つの除湿方式による室温・湿度の時間変化を示す. 図 6.8 より,低風量冷房運転やヒータ再熱除湿では,湿度が十分下がらず,しか も室温が下がってしまう.これに対して,サイクル再熱除湿では,室温は変わらず に湿度が十分低い 40%まで下がっており,強力除湿の等温除湿運転が可能になって いる. なお阿部ら35)の研究によれば,湿度が 40%くらいになるとカビ・ダニの繁殖を 抑制することができる.
Fig.6.8 Comparison of dehumidification methods
サイクル再熱方式 ヒータ再熱方式 弱冷房方式
サイクル再熱方式 ヒータ再熱方式 弱冷房方式
Cycle reheating dehumidification Heater reheating dehumidification Weak air flow cooling
Fan Fan
Fan
Comfortable
air cold air
Weakly cold
air
Wet air Wet air Wet air
Condenser Evaporator Heater Evaporator Evaporator サイクル再熱方式 ヒータ再熱方式 弱冷房方式 サイクル再熱方式 ヒータ再熱方式 弱冷房方式
Cycle reheating dehumidification Heater reheating dehumidification Weak air flow cooling
Fan Fan
Fan
Comfortable
air cold air
Weakly cold
air
Wet air Wet air Wet air
Condenser Evaporator
Heater Evaporator
Evaporator
Weak air flow cooling
0 30 60 90 120 Time (min.) Hu m id it y (% ) 80 60 40
Heater reheating dehumidification
Cycle reheating dehumidification
T e m p e ra tu re ( ℃ ) 0 30 60 90 120 Time (min.) 28 24
20 Weak air flow cooling Heater reheating dehumidification Cycle reheating dehumidification
<Condition> Unit : RAS-2810MX (2001, 2.8kW) Room : 10 mats, 3 persons
Indoor and outdoor temperature : 24℃, 80 %
Weak air flow cooling
0 30 60 90 120 Time (min.) Hu m id it y (% ) 80 60 40
Heater reheating dehumidification
Cycle reheating dehumidification
T e m p e ra tu re ( ℃ ) 0 30 60 90 120 Time (min.) 28 24
20 Weak air flow cooling Heater reheating dehumidification Cycle reheating dehumidification
Weak air flow cooling
0 30 60 90 120 Time (min.) Hu m id it y (% ) 80 60 40
Heater reheating dehumidification
Cycle reheating dehumidification
T e m p e ra tu re ( ℃ ) 0 30 60 90 120 Time (min.) 28 24
20 Weak air flow cooling Heater reheating dehumidification Cycle reheating dehumidification
<Condition> Unit : RAS-2810MX (2001, 2.8kW) Room : 10 mats, 3 persons
6.7 本章のまとめ
ルームエアコンディショナにおけるサイクル再熱除湿サイクルの室温・湿度制御 方法を検討し,以下の特徴を持つ制御方法を開発した. 1) 室外機ファン回転数を室温に基づいて制御し,圧縮機回転数を室内の湿度に基 づいて制御し,さらにこれらの制御を時間的に交互に行うことにより,室温, 湿度を好みの値に制御できるようになった. 2) 本除湿制御方式と二段絞り方式除湿弁の開発により,相対湿度が 80 %から 40 %に到達するまでの時間を従来の 1/3 にできた. 開発したサイクル再熱除湿サイクルの室温・湿度制御方法は,以下の共通の特性 や制御の考え方を適用して実現したものである. ・圧縮機回転数を増すと,除湿能力が増すが,吹出空気の温度変化は小さい. ・室外ファン回転数を増すと,除湿能力が増し,吹出空気の温度が下がる. ・室外ファン回転数を変えて室温を調整した時に生じる湿度の変化を,続いて行 う圧縮機回転数の調整により補正するといった準定常的な考え方により,室温, 湿度を好みの値に制御する. 従って空調機の容量が変わった場合には,表 6.2 における温湿度差,回転数の増 減幅,サンプリング時間といった設定値を修正することで対応できる.第2部のまとめ
ルームエアコンディショナでは,冷凍サイクルがもっている蒸発器を使って除湿 機能を容易に実現できるため,これまでに以下の3つの除湿方式が開発されてきた. ① 弱冷房運転:冷房運転において室内側風量を減らして除湿能力を高める方式 で,吹出空気温度が低く,足元付近が冷えるという問題がある. ② ヒータ再熱除湿:冷却・除湿後の空気を,蒸発器後の風路に設けた電気ヒー タで再加熱して吹き出す方式で,入力が多い. ③ サイクル再熱除湿:冷却・除湿後の空気を,冷凍サイクルの凝縮熱で加熱し て吹き出す方式.サイクル構成がやや複雑になるが,除湿能力や加熱能力を大 きくできる. 本論文では,最近,圧縮機やファンの回転数制御が可能になってきたことやマイ コンの普及によりアクチュエーターの制御が容易になってきたことを十分活用し て,③のサイクル再熱除湿サイクルの研究開発を行った.また冷媒が R 22 から R 410A に変換されたことから,R 410A を使った冷凍サイクルでの研究開発も行った. この場合,サイクル再熱除湿は,冷房や暖房での性能を損なうことなく実現する 必要があるため,室内熱交換器を上側の再熱器(凝縮器の一部)と下側の冷却器(蒸 発器)に分離し,その間に除湿運転時にのみ絞り作用を行う除湿弁を設けた構成と した.そして室内機の吸込空気を冷却器で冷却・除湿し,再熱器で加熱するように し,さらに室外ファンや圧縮機の回転数を制御して,省エネルギーで,吹出空気温 度を室温以下から以上まで可変にできるサイクル再熱除湿サイクルを開発した. また除湿弁で発生する冷媒音の低減や除湿能力の増大に対する強いニーズに対 応して,弁座に複数のV溝を二段に設けた二段絞り除湿弁の開発を行い,大幅な冷 媒音の低減と除湿能力の増大を実現した. 以上の結果,初期の R 22 使用エアコンに対して冷媒音の増大が予想される R 410A 使用エアコンにおいて,等温除湿(室内機の,吹出空気温度≒吸込空気温度) を保ち,騒音を抑え,省エネルギーを保った状態で,除湿能力を約 1.5 倍にできた. また除湿能力が 400~500 mL/h の時,上記②のヒータ再熱除湿に比べて,除湿成績 係数を 3 倍以上にできた. 次に,サイクル再熱除湿サイクルの室温・湿度制御方法を検討し,以下の特徴を持つ制御方法を開発した. ・ 室外ファン回転数を室温に基づいて制御し,圧縮機回転数を室内の湿度に基づ いて制御し,さらにこれらの制御を時間的に交互に行うことにより,室温,湿度 が精度良く制御できるようになった. ・本除湿制御方法と二段絞り除湿弁により,湿度が 80 %から 40 %になるまでの時 間を,従来除湿制御方法と一段絞り除湿弁を用いた場合の約 1/3 にできた. ここで,第2部で得られた結果は,蒸気圧縮式空調機の冷凍サイクルに対して共 通の特性に基づくものであり,除湿弁の仕様の修正,除湿制御に使う設定定数の修 正を行うことにより,広い容量範囲の機種に適用できる. すなわち第 5 章の除湿能力の増大に関しては,蒸発温度を変えずに冷媒流の運動 エネルギーを減らしたり,除湿弁の絞り流路であるV溝の仕様を冷媒流同士および 冷媒流が管壁に当るときの衝撃が小さくなるようにして冷媒音を低減することに より,広い容量範囲の機種に対して,除湿能力を増大できる. また第 6 章の室温・湿度制御方法に関しては,圧縮機や室外ファンの回転数を変 えるかどうかの判断をするための温度・湿度差,回転数の増減幅,サンプリング時 間といった設定値を修正することにより,広い容量範囲の機種に対して,適用でき る.