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博 士 ( 水 産 学 ) 奥 村浩 美 学位論文題名 Molecular physiological studies on vitellogenin in Japanese eel, ATzguilla japonica

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Academic year: 2022

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博 士 ( 水 産 学 ) 奥 村浩 美

     学位論文題名

Molecular physiological studies on vitellogenin     in Japanese eel , ATzguilla japonica

(ニホンウナギのビテロゲニンに関する分子生理学的研究)

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  ニホンウナギ(Anguillajaponica)は飼育環境下では成熟しないことから、現 在、サケ脳下垂体などのホルモン投与により、人為的に催熟する試みがなされて いる。しかし、必ずしも安定した成果は得られていない。従って、本種の最適な 人為催熟法を確立し、安定した人工種苗を得るためには、生殖腺発達の制御機構 に関する基礎的知見を集積することが必要である。

  一般に、硬骨魚類を含む卵生脊椎動物において、成熟途上の雌の肝臓では、エ ストロゲン、主にエストラジオール‑17p (E2)の作用の下、卵黄夕ンパク前駆 物 質で ある ピテ ロゲニ ン(VTG)が盛 んに 合成 ・分泌 され る。 分泌さ れたVTG は血流を介して卵母細胞に特異的に取り込まれ、分子解裂し、卵黄夕ンパク質で あ るり ポピ テリ ン(LV)およ びホ スビチ ン(PV)と して 蓄積さ れる 。こ れら 卵 黄タンパク質は、胚発生に極めて重要な栄養分となる。従って、人為催熟により 安定的に孵化仔魚が得られないニホンウナギでは、卵黄夕ンパク質についての基 礎的知見を得ることは極めて重要である。

  そこで本研究では、ニホンウナギ雌の成熟過程におけるVTGおよび卵黄夕ン パク質の性状や動態をタンパク並びに遺伝子レベルで詳細に調べることを目的と して、  1)VTGの合成の場である肝臓の成熟に伴う形態学的観察、並びに血中 VTG量 の 変 化 、2)VTG cDNAの ク ロ ー ニ ン グ お よ び こ のVTG cDNAを プロ ー ブ とし て用 いたE2およ びサ ケ脳 下垂体 投与 に伴 う肝 臓VTG mRNAの発 現量 の

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解析、3)卵母細胞の成長に伴う卵黄夕ンパク質の生化学的変化について調べ た。

  先ず、成熟に伴うVTGの動態を調べるため、肝臓を組織学的に観察し、抗ニ ホ ン ウ ナ ギLV血 清(a‑LV)を用 いた 免疫 組織化 学に よるVTG産生 細胞 の観察 を行った。その結果、成熟に伴い肝細胞中に脂肪滴が増加し、核移動期には肝細 胞の大部分を占めた。一方、VTG産生細胞は成熟に伴い増加し続けた。また、

SDS‑PAGEを用 いて 血中VTGの電 気泳 動的変 化を 調べ たとこ ろ、血中VTGは、

a‑LVを用いたウエスタンブロト解析により、分子量約200 kDaの1本のバンド として検出され、成熟に伴いその反応性は増大した。次に、ELISAおよび一次元 免疫拡散法を用いて、より詳細に成熟に伴う血中VTG量の変化を調べた。その 結果、血中VTG量は、催熟前の個体においては測定系の検出感度以下であった が、投与を開始し、第1次卵黄球期に達した個体では増加した。しかし、さらに 成熟が進み、第2次および第3次卵黄球期に達した個体においては、やや減少す る傾向がみられた。核移動期に達すると、血中VTG量が再び増加する個体も観 察された。この変化は、これまでに報告されているニホンウナギの成熟に伴う血 中E2量の変化とほぼ相関していた。以上の結果より、ニホンウナギの成熟に伴 う血中VTG量の変化は他の魚種のそれと異なっており、人為催熟されたウナギ 特有の現象、すなわち人為催熟による結果の1つであると推測された。また、最 終成熟期において、肝細胞中の脂肪滴の異常な増加が見られたことも、ウナギの 人為催熟の問題点の1つであると推測された。

  ニ ホ ン ウ ナ ギVTGの1次 構 造 解析 を 行 う た め 、 先 ず 、 精 製VTGお よ びLV の 部分 アミノ 酸配 列の 分析を 行った。その結果、精製VTGおよびLVから数種 の部分アミノ酸配列が得られ、それらは、これまでに報告されている硬骨魚類の VTGの アミ ノ酸 配列と 高い 相同性を示した。また、肝臓由来のcDNAライブラ リーを作製し、a‑LVを用いた抗体スクリーニングを行った結果、1644 bpの大き さを持つcDNA断片が得られ、その塩基配列を決定した。このcDNA断片は、ア ミノ酸配列においてこれまでに報告されている硬骨魚類のVTGのアミノ酸配列

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と高い 相同性を示 し、上述の ニホンウナ ギVTGおよ びLVの部分アミノ酸配列 と一致する部位が存在した。また、このcDNA断片をプローブとして用いて、ノ ーザンブロット解析を行ったところ、E2投与魚およびサケ脳下垂体投与により 成熟が進行した個体において、約5.8 kbの特異的バンドが認められ、投与前の未 熟魚では認められなかった。このことから、今回得られたcDNA断片はニホンウ ナギVTGをコード しているこ とが示され た。さらに 、得られたVTG cDNAをプ ローブに用いたノーザンブロット解析により、サケ脳下垂体およびE2の連続投 与に伴 うニホンウ ナギ雌の肝 臓でのVTG mRNAの発現変化を比較した。サケ脳 下垂体 投与後、第1次卵黄 球期に達し た個体にお いて、VTG mRNAは投与前の 1〜10倍のレベルにまで増加し、その後、第2次卵黄球期までそのレベルを維持 した。 しかし、第3次卵黄 球期に達するとそのレベルは急増し(40〜80倍)、

その後 、やや減少 する傾向が 認められた。一方、E2投与に伴うVTG mRNAの発 現 変化 を 調べ た 結果 、VTG mRNAは、投与後2週目 には、投与 前の約3.2倍の レベルにまで増加した。しかし、4週目には、その発現量は投与前のレベルにま で減少した。その後6週目には、再び発現量は増加し(約4倍)、8週目までそ のレベ ルを維持し た。E2投与に 伴う血中VTG量は、6週目まで直線的に増加し 続けたが、8週目には減少した。また、E2投与により卵巣は発達しなかった。以 上の結 果から、サ ケ脳下垂体 投与に伴う肝臓でのVTG mRNAの発現変化は、血 中VTG量の変化とほぼ相関していることが明らかになった。一方、E2投与によ り 誘導 さ れるVTG mRNAの 発現 変 化と 血 中VTG量 の 変化に は、相関関 係はみ られな かった。ま た、サケ脳 下垂体投与により誘導されたVTG mRNAの発現量 が、E2投与による発現量よりも多いことや、E2投与により誘導された血中VTG のほとんどが卵母細胞に取り込まれなかっ.たことから、サケ脳下垂体に含まれる 様々な 物質がVTG合成やVTGの卵母細胞への取り込みに必要であることが推測 された。

  最後に、VTGが、卵母細胞に取り込まれた後、解裂して卵黄夕ンパク質として 蓄積していく過程を形態学的および生化学的手法により調べた。また、近年、数

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種の魚種で卵中に存在することが明らかにされている甲状腺ホルモン(throxine:

T4、triiodothyronine: T3)とVTGおよびLVとの結合性についても調べた。そ の結果、a‑LVを用いたウエスタンブロット解析において検出された約110およ び80 kDaのバンドは、卵母細胞の成長に伴いの反応性が増大した。さらに、卵 母細胞が成長し、卵母細胞の周辺から次第に透明になる核移動期に達すると、約 110および40 kDaのバンドの反応性が急減し、変わって約30 kDaのバンドが 出現 した。一方、VTGおよびLVと甲状腺ホルモンとの結合性を調べた結果、

VTGお よびLVはT4と特 異的に 結合 した 。以 上のこ とか ら、 血中 で分子量約 200 kDaの2量 体とし て存 在す るニ ホンウ ナギ のVTGは 、T4と結 合して卵母 細胞 に取り込まれ、分子解裂して、サブユニットの分子量が約110および80 kDaのLVとなり、T4と結合して蓄積し、核移動期に達すると、LVの低分子化 が起こると考えられた。また、この低分子化は、卵母細胞の透明化および吸水に よ る 卵 径 の 増 大 と 密 接 に 関 わ っ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。

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学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 助教授

山内晧平 山崎文雄 原   彰彦 上田   宏 足立伸次

    学位論文題名

Molecular physiological studies on vitellogenin     in Japanese eel, A7zguilla jaク 〇 髭ZC口   (ニホンウナギのビテロゲニンに関する分子生理学的研究)

  一 般 に 、 硬 骨 魚 類 を 含 む 卵 生 脊 椎 動 物 に お い て 、 成 熟 途 上 の 雌 の 肝 臓 で は 、 エ ス ト ロ ゲ ン 、 主 に エ ス ト ラ ジ オ ー ル ―17p (E2)の 作 用 の 下 、 卵 黄 夕 ン バ ク 前 駆 物 質 で あ る ビ テ ロ ゲ ニ ン(VTG)が 盛 ん に 合 成 ・ 分 泌 さ れ る 。 分 泌 さ れ たVTG   血 流 を 介 し て 卵 母 細 胞 に 特 異 的 に 取 り 込 ま れ 、 分 子 解 裂 し 、 卵 黄 夕 ン パ ク 質 で あ る り ポ ビ テ リ ン(LV)お よ び ホ ス ビ チ ン(PV)と し て 蓄 積 さ れ る 。 ニ ホ ン ウ ナ ギ の 雌 に お い て 、 こ の 一 連 の 過 程 は 、 サ ケ 脳 下 垂 体 の 連 続 投 与 に よ り 成 熟 を 進 行 さ せ て い 。 し か し 、 こ の 方 法 で 得 ら れ た 孵 化 し た 孵 化 仔 魚 の 生 存 期 間 は 未 だ3週 間 を 越 え て い な い 。 こ れ は 初 期 餌 料 な ど の 問 題 の ほ か に 、 孵 化 仔 魚 の 栄 養 源 と な る 卵 黄 夕 ン バ ク 質 に 問 題 が あ る と 考 え ら れ る 。 従 っ て 、 人 為 催 熟 に よ り 安 定 的 に 孵 化 仔 魚 が 得 ら れ な い ニ ホ ン ウ ナ ギ で は 、 卵 黄 夕 ン パ ク 質 に つ い て の 基 礎 的 知 見 を 得 る こ と は 極 め て 重 要 で あ る 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 ニ ホ ン ウ ナ ギ 雌 の 成 熟 過 程 に お け るVTG お よ び 卵 黄 夕 ン バ ク 質 の 性 状 や 動 態 を タ ンバ ク並 びに 遺伝 子レ ベ レで の発 現変 化を 解 析 し た 。 得 ら れ た 結 果 は 、 以 下 の 通 り で あ る 。

  成 熟 に 伴 うVTGの 動 態 を 調 べ る た め 、 肝 臓 を 組 織 学 的 に 観 察 し 、 抗 ニ ホ ン ウ ナ LV血 清(a‑LV)を 用 い た 免 疫 組 織 化 学 に よ るVTG産 生 細 胞 の 観 察 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 成 熟 に 伴 い 肝 細 胞 中 に 脂 肪 滴 が 増 加 し 、 核 移 動 期 に は 肝 細 胞 の 大 部 分 を 占 め た 。 一 方 、VTG産 生 細 胞 は 成 熟 に 伴 い 増 加 し 続 け た 。 こ の 最 終 成 熟 期 に お け る 肝 細 胞 中 の 脂 肪 滴 の 異 常 な 増 加 、 お よ びVTG産 生 細 胞 の 増 加 は 、 ウ ナ ギ の 人 為 催 熟 の 問 題 点 の1つ で あ る と 推 測 さ れ た 。

  SDS‑PAGEを 用 い て 血 中VTGの 電 気 泳 動 的 変 化 を 調 べ た と こ ろ 、VTGは 、 a‑LVを 用 い た ウ エ ス タ ン ブ ロ ト 解 析 に よ り 、 分 子 量 約200 kDa1本 の ノ ヾ ン ド と し て 検 出 さ れ 、 成 熟 に 伴 い そ の 反 応 性 は 増 大 し た 。 そ こ で 、 次 に 、ELISAお よ び 一 次 元 免 疫 拡 散 法 を 用 い て 、 よ り 詳 細 に 成 熟 に 伴 う 血 中VTG量 の 変 化 を 調 ぺ た 結

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果、血中VTG量は、投与により、第1次卵黄球期に達した個体では増加し、第2 次および第3次卵黄球期に達した個体に達すると、やや減少し、低値を推移する 傾向がみられ、核移動期に達すると、血中VTG量が再び増加することが明らかに なった。この変化は、これまでに報告されているニホンウナギの成熟に伴う血中 E2量の変化とほぼ相関していた。しかし、ニホンウナギの成熟に伴う血中VTG 量の変化は他の魚種のそれと異なっており、人為催熟されたウナギ特有の現象、す なわち人為催熟による結果の1つであると推測された。

  ニ ホ ン ウ ナ ギVTGの1次 構 造 解 析 を 行 う た め 、先 ず 、精 製VTGお よびLVの 部分アミノ酸配列の分析を行った。その結果、精製VTGおよびLVから数種の部 分アミノ酸配列が得られ、それらは、これまでに報告されている硬骨魚類のVTG のアミノ酸配列と高い相同性を示した。

  ニホンウナギのVTG cDNAの単離および塩基配列の決定を行った。その結果、

1644 bpの 大き さを持 つcDNA断 片が得 られ 、そ の塩 基配列 を決 定した。この cDNA断片は、アミノ酸配列においてこれまでに報告されている硬骨魚類のVTG のアミノ酸配列と高い相同性を示し、上述のニホンウナギVTGおよびLVの部分 アミノ酸配列と一致する部位が存在した。また、このcDNA断片をプローブとし て用いて、ノーザンブロット解析を行ったところ、E2投与魚およびサケ脳下垂体 投与により成熟が進行した個体において、約5.8 kbの特異的バンドが認められ、

投与前の未熟魚では認められなかった。このことから、今回得られたcDNA断片 はニホンウナギVTGをコードしていることカミ示された。

  得られたVTG cDNAをプローブに用いたノーザンブロット解析により、サケ脳 下 垂体お よびE2の 連続 投与に 伴うニホンウナギ雌の肝臓でのVTG mRNAの発現 変化を比較した。その結果、サケ脳下垂体投与に伴う肝臓でのVTG mRNAの発現 変化は、血中VTG量の変化とほぼ相関していることが明らかになった。一方、E2 投 与によ り誘 導さ れるVTG mRNAの 発現 変化 と血中VTG量の 変化 には、相関関 係はみられなかった。また、サケ脳下垂体投与により誘導されたVTG mRNAの発 現量が、E2投与による発現量よりも多いことや、E2投与により誘導された血中 VTGのほとんどが卵母細胞に取り込まれなかったことから、サケ脳下垂体に含ま れ る様々 な物 質がVTG合成 やVTGの卵母細胞への取り込みに必要であることが 推測された。

  VTGが、卵母細胞に取り込まれた後、解裂して卵黄夕ンノSク質として蓄積して いく過程を形態学的および生化学的手法により調ぺた。その結果、血中で分子量約 200 kDaの2量体として存在するニホンウナギのVTGは、分子構造に大きな変化 を示さず卵母細胞に取り込まれ、サブユニットの分子量が約110および80 kDa のLVとして蓄積し、核移動期に達すると、LVの低分子化が起こるとが示唆され た。また、この低分子化は、卵母細胞の透明化および吸水による卵径の増大と密接 に関わっていることが示唆された。

  発生のエネルギー源として働くばかりではなく、胚発生に必要な生理活性物質と 結合して、それらを卵母細胞に輸送する働きがあるVTGの物理化学的性状の解析 の手始めとして、甲状腺ホルモン(throxine:T4、triiodothyronine: T3)とVTG お よびLVとの 結合 性に ついて 調べ た。 その 結果、VTGは、T4と 結合して、卵 母細胞にT4を輸送する働きがあることが明らかになった。また、卵母細胞内で、

T4はLVと結合してしゝることも明らかとなった。

(7)

  上述のように、本研究では、ニホンウナギの人為催熟に伴う肝臓でのビテロゲニ ン遺伝子の発現変化|血中ビテロゲニンの変化、および卵黄タンパク質の変化を明 らかにした。これらの結果は、ニホンウナギの生殖線発達の制御機構の解明に重要 な基礎的知見を提供したものとして高く評価され、本論文が博士(水産学)の学位 請求論文として相当の業績であると評定した。

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