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ディプロマプログラム (DP) 化学 指導の手引き 2016 年第 1 回評価

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(1)

「化学」

指導の手引き

2016 年 第1回評価 ディプロマプログラム(DP)

(2)

「化学」

指導の手引き

2016 年 第1回評価 ディプロマプログラム(DP)

(3)

2014 年2月に発行の英文原本Chemistry guideの日本語版 2014年 11 月発行

本資料の翻訳・刊行にあたり、

文部科学省より多大なご支援をいただいたことに感謝いたします。

注: 本資料に記載されている内容は、英文原本の発行時の情報に基づいています。ただし、

ディプロマプログラムの概要を説明している「ディプロマプログラムとは」のセクションに限 り、日本語版刊行時現在の新たな情報が反映されています。

ディプロマプログラム(DP)

「化学」指導の手引き

International Baccalaureate Organization

15 Route des Morillons, 1218 Le Grand-Saconnex, Geneva, Switzerland

International Baccalaureate Organization (UK) Ltd Peterson House, Malthouse Avenue, Cardiff Gate

Cardiff, Wales CF23 8GL, United Kingdom www.ibo.org

© International Baccalaureate Organization 2014

www.ibo.org/copyright http://store.ibo.org

[email protected]

International Baccalaureate Baccalauréat International Bachillerato Internacional International Baccalaureate Organization

(4)

この「IBの学習者像」は、IBワールドスクール(IB認定校)が価値を置く人間性を 10 の人物像として表して います。こうした人物像は、個人や集団が地域社会や国、そしてグローバルなコミュニティーの責任ある一員と

なることに資すると私たちは信じています。

探究する人

私たちは、好奇心を育み、探究し研究するスキルを身につけま す。ひとりで学んだり、他の人々と共に学んだりします。熱意 をもって学び、学ぶ喜びを生涯を通じてもち続けます。

知識のある人

私たちは、概念的な理解を深めて活用し、幅広い分野の知識を 探究します。地域社会やグローバル社会における重要な課題や 考えに取り組みます。

考える人

私たちは、複雑な問題を分析し、責任ある行動をとるために、

批判的かつ創造的に考えるスキルを活用します。率先して理性 的で倫理的な判断を下します。

コミュニケーションができる人

私たちは、複数の言語やさまざまな方法を用いて、自信をもっ て創造的に自分自身を表現します。他の人々や他の集団のもの の見方に注意深く耳を傾け、効果的に協力し合います。

信念をもつ人

私たちは、誠実かつ正直に、公正な考えと強い正義感をもって 行動します。そして、あらゆる人々がもつ尊厳と権利を尊重し て行動します。私たちは、自分自身の行動とそれに伴う結果に 責任をもちます。

心を開く人

私たちは、自己の文化と個人的な経験の真価を正しく受け止め ると同時に、他の人々の価値観や伝統の真価もまた正しく受け 止めます。多様な視点を求め、価値を見いだし、その経験を糧 に成長しようと努めます。

思いやりのある人

私たちは、思いやりと共感、そして尊重の精神を示します。人 の役に立ち、他の人々の生活や私たちを取り巻く世界を良くす るために行動します。

挑戦する人

私たちは、不確実な事態に対し、熟慮と決断力をもって向き合 います。ひとりで、または協力して新しい考えや方法を探究し ます。挑戦と変化に機知に富んだ方法で快活に取り組みます。

バランスのとれた人

私たちは、自分自身や他の人々の幸福にとって、私たちの生を 構成する知性、身体、心のバランスをとることが大切だと理解 しています。また、私たちが他の人々や、私たちが住むこの世 界と相互に依存していることを認識しています。

振り返りができる人

私たちは、世界について、そして自分の考えや経験について、 深く考察します。自分自身の学びと成長を促すため、自分の長 所と短所を理解するよう努めます。

IB 学習 者 像

IB 学習者像

すべてのIBプログラムは、国際的な視野をもつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと 地球を共に守る責任を認識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てます。

IBの学習者として、私たちは次の目標に向かって努力します。

IBの使命

IB mission statement

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(5)

この「IBの学習者像」は、IBワールドスクール(IB認定校)が価値を置く人間性を 10 の人物像として表して います。こうした人物像は、個人や集団が地域社会や国、そしてグローバルなコミュニティーの責任ある一員と

なることに資すると私たちは信じています。

探究する人

私たちは、好奇心を育み、探究し研究するスキルを身につけま す。ひとりで学んだり、他の人々と共に学んだりします。熱意 をもって学び、学ぶ喜びを生涯を通じてもち続けます。

知識のある人

私たちは、概念的な理解を深めて活用し、幅広い分野の知識を 探究します。地域社会やグローバル社会における重要な課題や 考えに取り組みます。

考える人

私たちは、複雑な問題を分析し、責任ある行動をとるために、

批判的かつ創造的に考えるスキルを活用します。率先して理性 的で倫理的な判断を下します。

コミュニケーションができる人

私たちは、複数の言語やさまざまな方法を用いて、自信をもっ て創造的に自分自身を表現します。他の人々や他の集団のもの の見方に注意深く耳を傾け、効果的に協力し合います。

信念をもつ人

私たちは、誠実かつ正直に、公正な考えと強い正義感をもって 行動します。そして、あらゆる人々がもつ尊厳と権利を尊重し て行動します。私たちは、自分自身の行動とそれに伴う結果に 責任をもちます。

心を開く人

私たちは、自己の文化と個人的な経験の真価を正しく受け止め ると同時に、他の人々の価値観や伝統の真価もまた正しく受け 止めます。多様な視点を求め、価値を見いだし、その経験を糧 に成長しようと努めます。

思いやりのある人

私たちは、思いやりと共感、そして尊重の精神を示します。人 の役に立ち、他の人々の生活や私たちを取り巻く世界を良くす るために行動します。

挑戦する人

私たちは、不確実な事態に対し、熟慮と決断力をもって向き合 います。ひとりで、または協力して新しい考えや方法を探究し ます。挑戦と変化に機知に富んだ方法で快活に取り組みます。

バランスのとれた人

私たちは、自分自身や他の人々の幸福にとって、私たちの生を 構成する知性、身体、心のバランスをとることが大切だと理解 しています。また、私たちが他の人々や、私たちが住むこの世 界と相互に依存していることを認識しています。

振り返りができる人

私たちは、世界について、そして自分の考えや経験について、

深く考察します。自分自身の学びと成長を促すため、自分の長 所と短所を理解するよう努めます。

IB 学習 者 像

IB 学習者像

すべてのIBプログラムは、国際的な視野をもつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと 地球を共に守る責任を認識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てます。

IBの学習者として、私たちは次の目標に向かって努力します。

(6)

目次

はじめに 1

本資料の目的 1

ディプロマプログラムとは 2

科学の本質(NOS) 7

「化学」の学習 17

ねらい 23

評価目標 24

シラバス 25

シラバスの概要 25

「化学」の指導の方法 27

シラバスの内容 32

評価 180

ディプロマプログラムにおける評価 180

評価の概要 ――標準レベル(SL) 183

評価の概要 ――上級レベル(HL) 184

外部評価 185

内部評価 187

グループ4プロジェクト 202

付録 208

指示用語の解説 208

参考文献 212

(7)

本資料の目的

はじめに

本資料は、「化学」を学校で計画、指導、評価するための手引きです。「化学」の担当教 師を対象としていますが、生徒や保護者に「化学」について説明する際にも、ご活用くだ さい。

本資料は、オンラインカリキュラムセンター(OCC)の教科のページで入手できま す。OCC(http://occ.ibo.org)は、パスワードで保護されたIBのウェブサイトで、IB の教師をサポートする情報源です。また、本資料はIBストア(http://store.ibo.org)で購 入することもできます。

その他のリソース

教師用参考資料や科目レポート、内部評価のガイダンス、評価規準の説明といったその 他のリソースも、OCCで取り扱っています。過去の試験問題とマークスキームはIBス トアで取り扱っています。

OCCでは、他の教師が作成したり、活用している教育リソースについて情報を得るこ とができますので、ご活用ください。教師たちによりウェブサイトや本、ビデオ、定期刊 行物、指導案などの役立つリソースも提供されています。

謝辞

IBは、本資料を作成するにあたり、時間やリソースを惜しみなく提供してくださった 教育関係者や提携校の皆様に感謝の意を表します。

2016 年 第1回評価

(8)

ディプロマプログラムとは

はじめに

ディプロマプログラム(DP)は 16歳から19歳までの大学入学前の生徒を対象とし た、綿密に組まれた教育プログラムです。幅広い分野を学習する2年間のプログラムで、

知識豊かで探究心に富み、思いやりと共感する力のある人間を育成することを目的として います。また、多様な文化の理解と開かれた心の育成に力を入れており、さまざまな視点 を尊重し、評価するために必要な態度を育むことを目指しています。

DPのプログラムモデル

DPは、6つの教グループ科が中心となる核(「コア」)を取り囲んだ形のモデル図で示すことが できます(図1参照)。DPでは、幅広い学習分野を同時並行して学ぶのが特徴で、生徒 は「言語と文学」(グループ1)と「言語の習得」(グループ2)で現代言語を計2言語

(または現代言語と古典言語を1言語ずつ)、「個人と社会」(グループ3)から人文または 社会科学を1科目、「理科」(グループ4)から1科目、「数学」(グループ5)から1科 目、そして「芸術」(グループ6)から1科目を履修します。 多岐にわたる分野を学習す るため、学習量が多く、大学入学に向けて効果的に準備できるようになっています。生徒 は各教科から柔軟に科目を選択できるため、特に興味のある科目や、大学で専攻したいと 考えている分野の科目を選ぶことができます。

図1

DPのプログラムモデル

(9)

ディプロマプログラムとは

科目の選択

生徒は、6つの教科からそれぞれ1科目を選択します。ただし、「芸術」から1科目選 ぶ代わりに、他の教科で2科目選択することもできます。通常3科目(最大4科目)を上 級レベル(HL)、その他を標準レベル(SL)で履修します。IBでは、HL科目の学 習に240時間、SL科目の学習に150時間を割りあてることを推奨しています。HL科目は SL科目よりも幅広い内容を深く学習します。

いずれのレベルにおいても、さまざまなスキルを身につけますが、特に批

クリティカル

判的な思考と 分析に重点を置いています。各科目の修了時に、学校外で実施されるIBによる外部評価 で生徒の学力を評価します。また、多くの科目で、科目を担当する教師が評価する課題

(コースワーク)を課しています。

プログラムモデルの「コア」

DPで学ぶすべての生徒は、プログラムモデルの「コア」を形づくる次の3つの必修 要件を履修します。「知の理論」(TOK:theory of knowledge)では、批

クリティカルシンキング

判的思考に取り 組みます。具体的な知識について学習するのではなく、知るプロセスを探究するコースで す。「知識の本質」について考え、私たちが「知っている」と主張することを、いったい どのようにして知るのかを考察します。具体的には、「知識に関する主張」を分析し、知 識の構築に関する問いを探究するよう生徒に働きかけていきます。TOKの目的は、共有 された「知識の領域」の間のつながりを重視し、それを「個人的な知識」に結びつけるこ とで、生徒が自分なりのものの見方や、他人との違いを自覚できるよう促していくことに あります。

「創造性・活動・奉仕」(CAS:creativity, action, service)は、DPの中核です。「IB の使命」や「IBの学習者像」の倫理原則に沿って、生徒が自分自身のアイデンティ ティーを構築するのを後押しします。CASでは、DPの期間を通じて、アカデミックな 学習と同時並行して多岐にわたる活動を行います。CASは、創造的思考を伴う芸術など の活動に取り組む「創造性」(creativity)、健康的なライフスタイルの実践を促す身体的活 動としての「活動」(action)、学習に有益であり、かつ無報酬で自発的な交流活動を行う

「奉仕」(service)の3つの要素で構成されています。CASは、DPを構成する他のどの

要素よりも、「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築 く」という「IBの使命」に貢献しているといえるかもしれません。

「課題論文」(EE:extended essay)では、生徒は、関心のあるトピックの個人研究に 取り組み、研究成果を 4000 語(日本語の場合は 8000 字)の論文にまとめます。EEに は、世界を対象に学際的な研究を行う「ワールドスタディーズ」として執筆されるものも 含まれます。生徒は、履修しているDP科目から1科目(「ワールドスタディーズ」の場 合は2科目)を選び、対象とする研究分野を定めます。また、EEを通じて大学で必要と されるリサーチスキルや記述力を身につけます。研究は、正式な書式で構成された論文に

(10)

ディプロマプログラムとは

まとめ、選択した科目にふさわしい論理的で一貫した形式で、アイデアや研究結果を伝え ます。高いレベルのリサーチスキル、記述力、創造性を育成し、知的発見を促すことを目 的としており、担当教員の指導のもと、生徒が、自分自身で選択したトピックに関する研 究に自立的に取り組む機会となっています。

「指導の方法」と「学習の方法」

D P で の「 指 導 の 方

アプローチ

法 」(approaches to teaching) と「 学 習 の 方

アプローチ

法 」(approaches to

learning)は、熟慮されたストラテジーやスキル、態度として、指導や学習の場に浸透し

ています。「指導の方

アプローチ

法」も「学習の方

アプローチ

法」も、「IBの学習者像」に示されている人物像 と本質的に関連しています。そして、生徒の学習の質を高めると同時に、DPの最終評価 やその先の学びのための礎をつくります。DPでの「指導の方

アプローチ

法」と「学習の方

アプローチ

法」に は、次のようなねらいがあります。

• 学習内容を教えるだけでなく、学習者を導く存在としての教師のあり方を支援す る。

• 生徒の有意義で体系的な探究と、批

クリティカルシンキング

判的思考や創造的思考を促すため、教師が ファシリテーターとしてより効果的なストラテジーを立てられるよう支援する。

• 各教科のねらい(科目別に掲げる目標以上のもの)と、それぞれの知識の関連づ け(同時並行的な学習)の両方を推進する。

• 生徒が卒業後も積極的に学び続けるために、さまざまなスキルを系統的に身につ けるよう奨励する。また生徒が良い成績を得て大学に進学できるよう支援すると 同時に、大学在学中の学業の成就や卒業後の成功に向けて準備する。

• DPでの生徒の体験の一貫性と関連性をよりいっそう高める。

• 理想主義と実用主義が融合したDPの教育ならではの本質に対して、学校の理解 を促進する。

5つの「学習の方

アプローチ

法」(思考スキル、社会性スキル、コミュニケーションスキル、自己 管理スキル、リサーチスキルの各スキルを高める)と、6つの「指導の方

アプローチ

法」(探究を基 盤とした指導、概念に重点を置く指導、文脈化された指導、協

コラボレーション

働に基づく指導、生徒の多 様性に応じて差

ディファレンシエーション

別化した指導、評価を取り入れた指導)には、IBの教育を支える重要な 価値観と原則が含まれています。

「IBの使命」と「IBの学習者像」

DPでは、「IBの使命」と「IBの学習者像」に示された目的の達成に向かって、生 徒たちが必要な知識やスキル、態度を身につけられるよう働きかけます。DPにおける

「指導」と「学習」は、IBの教育理念を日々の実践において具現化したものです。

(11)

ディプロマプログラムとは

学問的誠実性

DPにおける「学問的誠実性」(academic honesty)は、「IBの学習者像」の人物像を 通じて示されている価値観と振る舞いに則しています。学問的誠実性は、指導、学習、そ して評価において、各自が誠実で公正であることを促し、他人とその成果物の権利を尊重 することを奨励します。また、すべての生徒は学習を通じて身につけた知識や能力を示す 機会を等しく得ることが保証されています。

評価のための課題(コースワーク)を含むすべての学習成果物は生徒本人が取り組んだ ものでなければなりません。学習成果物は生徒自身の独自のアイデアに基づくものであ り、他人のアイデアや成果物を用いる場合は出典を明示しなければなりません。教師が課 題について生徒に指導する場合や、生徒同士の協働作業を要する評価課題に取り組む際に は、必ず、IBが定めるその教科のためのガイドラインを順守しなければなりません。

IBおよびDPにおける学問的誠実性について、より詳しくはIB資料『学問的 誠 実 性 』、『 D P: 原 則 か ら 実 践 へ 』、 お よ び 同( 英 語 版 )General regulations:Diploma

Programme(総則:DP編)』を参照してください。DP科目の学校外で実施されるIBに

よる外部評価(external assessment)と学校内の教師が評価を手がける内部評価(internal

assessment)に関連する学問的誠実性の情報は、本資料の中にも記載されています。

出典を明らかにする

国際バカロレア資

ディプロマ

格(IB資格)取得志願者は、IBに提出する評価課題で引用した情 報の出典をすべて明らかにしなければなりません。コーディネーターと教師は、このこと に留意する必要があります。以下にこの要件について説明します。

IB資格取得志願者は、さまざまな媒体を用いた評価課題をIBに提出します。その中 には、出版物または電子情報として公表された視聴覚資料、文章、図表、画像、データな どの引用が含まれている場合があります。志願者は、他人の成果物やアイデアを用いる場 合、参考文献目録の書式として標準的とされる一定の書式に従い、出典を明示しなければ なりません。志願者が出典の明示を怠った場合、IBは規則違反の可能性があるとして調 査を行います。場合によっては、IB最終資格授与委員会(IB final award committee)に よる処分の対象となります。

IBは志願者が用いる参考文献目録や本文中の引用の書式については指定せず、志願者 の学校の担当者または教師に判断を委ねています。幅広い科目を提供していることや、英 語、フランス語、スペイン語の3言語に対応していること、そして多様な参考文献目録の 書式があることから、特定の書式を要求することは非合理的かつ制限的です。実際には、

ある特定の書式が最も頻繁に使われるかもしれませんが、学校はその科目と使用言語に適 した書式を自由に選ぶことができます。その科目のために学校が選ぶ参考文献目録の書式 にかかわらず、著者名、発行日、書名、ページ番号などの最低限の情報は明記する必要が あります。

(12)

ディプロマプログラムとは

志願者は標準的とされる書式を用い、言い換えや要約を含むすべての参考資料の出典を 一貫した書式で明示することが求められます。文章執筆の際、生徒は引用符(または、字 下げなどのその他の方法)を用いて自分自身の言葉と他人の言葉を明確に区別し、適切な 形で引用を示して参考文献目録に明記してください。電子情報を引用した場合、参考文献 目録にアクセス日を明記してください。志願者に期待されているのは、参考文献目録の作 成の完璧さではありません。すべての出典を明らかに示すことが求められているのです。

志願者は、自分自身のものではない出版物や電子情報として公表された視聴覚資料、文 章、図表、画像、データなどもすべて出典を明らかにするように必ず指導を受けなければ なりません。この場合も参照・引用の適切な書式を用いてください。

学習の多様性と学習支援の必要な生徒への取り組み

IB資格取得志願者で学習支援を必要とする生徒に対して、学校は平等に評価を受ける ための配慮と妥当な調整を行わなければなりません。配慮や調整は、IB資料『受験上 の配慮の必要な志願者について』および同(英語版)Learning diversity in the International Baccalaureate programmes: Special educational needs within the IB programmes(IB教育と学習 の多様性:IBプログラムにおける特別な教育的ニーズ)』に沿って行わなければなりません。

(13)

科学の本質(NOS)

はじめに

「科学の本質」(NOS:nature of science)とは、「生物」「化学」「物理」の各科目に共 通するテーマです。そのため「生物」「化学」「物理」のいずれの「指導の手引き」にも

「科学の本質(NOS)」と題したセクションが設けられています。「科学の本質とは何 か」を教師が理解するための参考としてください。本セクションでは、21世紀における

「科学の本質」とは何かを包括的に説明します。ただし、指導または評価に関して、上記 3科目のテーマすべてを詳細に取り上げることはしていません。

「科学の本質」の各段落には、1.1、1.2 などの番号がつけられています。シラバス(横 長のページ)には、サブトピックごとに「『科学の本質』(NOS)との関わり」の欄があ り、関連する段落の番号と要点が明記されています。また、どのように「科学の本質」を 捉え、学習内容と結びつけるかの例も示されています。具体的には、各サブトピックで取 り組む「理解」「知識・スキルの活用」と、1つあるいは複数の「科学の本質」のテーマ を関連づける方法を説明しています。本セクションに挙げる「科学の本質」の記述を単に 繰り返したものではありません。あくまでも具体的な文脈に「科学の本質」を位置づけて います。詳細は、「シラバスのフォーマット」の項を参照してください。

技術について

「科学の本質」を取り上げるにあたって、「技テクノロジー術」という用語をどのように解釈するか は重要です。また、科学から派生し、科学に貢献する技術というものの役割も明確にしな ければなりません。今日の世界では、「科学」と「技術」という用語は、あたかも同義語 のように用いられていますが、歴史的には「科学」と「技術」は必ずしも同じではありま せんでした。技術が生まれたのは、科学よりも前のことです。「なぜ物質には、多様な目 的に利用できる、さまざまな性質があるのか」ということが理解されるずっと以前から、

人々は物質を用いて、役に立つ、装飾的な人工物をつくり出してきました。一方、現代社 会では、その関係は逆転し、根本的な科学の理解が、技術的な発展の基礎になっていま す。そして、生み出された新しい技術が、今度は科学の発展の推進力となるのです。

科学と技術は、相互に依存し合いながらも、それぞれ異なる価値観に基づいています。

科学が、証エビデンス拠と合理性、より深い理解の追求を重視する一方で、技術は、実用性と妥当 性、役立つものかどうかに価値を置いています。また、技術では、持続可能性に力点を置 くことが、ますます重要になってきています。

(14)

科学の本質(NOS)

1.科学とは何か・科学的試みとは何か

1.1. 科学は、「万物には、人間の感覚で認識でき、人間の理性で理解できる、自律的  な外的現実性がある」ということを基本的な前提としています。

1.2. 純粋科学は、この万物について共通の理解に至ることを目的としています。応用 科学や工学は、新しい方法や製品につながる技術を開発します。ただし、これら の領域間の境界は曖昧です。

1.3. 科学者は、幅広いさまざまな方法を組み合わせて、科学のプロセスをつくり上げ ています。「科学的方法」は1つではありません。科学者は、その知見や考えを構 築するために、その時々に応じてさまざまな方法を用いてきました。また、それ は今日も同様です。科学者は、そうしたさまざまな方法について、どのようなこ とが科学的に妥当であるかについての共通理解をもっています。

1.4. 科学は、刺激的かつチャレンジに満ちた冒険です。多大な創造性と想像力、そし て厳格で、きめ細かな思考と知識の活用を必要とします。科学者は、予期せぬ、

驚くべき、偶発的な発見にも備えなければなりません。科学の歴史は 、 そのよう なことが非常によく起こるということを示しています。

1.5. 多くの科学的発見は、直観のひらめきを伴います。また発見の多くは、特定の現 象に関する推測、または単純な好奇心に端を発しています。

1.6. 科学者は、共通の専門用語と共通の推論のプロセスを用います。そのプロセスと は、類推と一般化を用いた演繹的推論と帰納的推論を指します。また、科学者は、

科学における言語として「数学」という強力な道具を共有しています。実際に、

いくつかの科学的な説明は、数学的な形式でのみ存在しています。

1.7. 科学者は、主張に対して懐疑的な態度をとらなければなりません。科学者がすべ てを信じないということではありません。主張の真偽を信じるに足る根拠を得る までは、判断を保留するということです。こうした根拠は、証

エビデンス

拠と議論に基づき ます。

1.8. 証

エビデンス

拠が重要であるということは、根本的な共通理解です。証

エビデンス

拠は、観察または実 験によって得ることができます。証

エビデンス

拠は、人間の感覚(主として視覚)を通じて 収集しますが、非常に小さいものや非常に遠い場所、あるいは人間の感覚では知 覚できない現代科学の領域では 、 遠隔操作および自動で情報を収集できる設備や センサーを用いています。改良された設備や新技術が、しばしば新しい発見への 推進力になってきました。また、観察とそれに続く分析および推論が、宇宙の起 源に関するビッグバン理論や、自然選択による進化の理論につながりました。こ れらの理論の場合には、コントロールされた実験を行うことは不可能です。地質 学や天文学などの領域は、フィールドでのデータ収集に強く依存していますが、

一方で、どの領域でも、証

エビデンス

拠を収集するために、ある程度の観察を行うといえま す。証

エビデンス

拠を得る別の方法としては、コントロールされた環境での実験(一般的に は実験室での実験)が挙げられます。データの形で証

エビデンス

拠を得るのです。どのよう

(15)

科学の本質(NOS)

に実験を遂行するべきかについては、さまざまな約束事や踏まえなければならな い了解事項があります。

1.9. このようにして得た証

エビデンス

拠は、理論を展開したり、データから一般化して法則をつ くったり、仮説を提案したりするために用いられます。そして、これらの理論と 仮説は、検証可能な予測を立てるために用いられます。こうして理論は支持され たり、反対されたりするほか、修正されたり、新しい理論に置き換えられたりし ます。

1.10. モデルには、単純なものもあれば、非常に複雑なものもあります。モデルは、理 論的な理解に基づいており、観察できないようなプロセスの説明のために開発さ れるものです。コンピューターによる数理モデルは、検証可能な予測を立てるた めに用いられ、実験できない場合に特に役立ちます。実験または観察データに よって検証された結果、モデルが不適当であると証明されるかもしれません。そ の場合、そのモデルは、修正されたり、新しいモデルに置き換えられたりします。

1.11. 実験結果、モデルの構築によって得られた洞察、および自然界の観察結果は、主 張のためのさらなる証

エビデンス

拠として用いることができます。

1.12. コンピューターの情報処理能力の向上は、モデルの構築力を高めました。現在、

モデル(通常は数理モデル)は、実験が不可能である場合に(時には可能であ る場合にも)新しい理解を引き出すために用いられています。大量のデータ、大 量の変数と複雑で長い計算を伴う複雑な状況に関する動的モデルの構築は、コン ピューターの情報処理能力が向上した結果、可能になりました。例えば、地球の 気候に関するモデルの構築は、将来の気候条件の幅広い予測を行うために用いら れます。さまざまな異なるモデルが開発され、どのモデルが最も正確であるかを 調べるために、各種モデルによる結果が比較されてきました。時には、過去の データを用いてモデルを検証し、現在の状況を予測することができるかどうかを 調べることもできます。こうした検証で通用したモデルは、正確さにおいて信頼 を得るのです。

1.13. 科学の考え方とプロセスはいずれも、人的な背景があってはじめて生じ得るもの です。科学には、多様な背景や伝統をもった人々が関わってきました。その多様 性は、各時代における科学の進歩に明らかに影響をもたらしました。一方で、科 学に従事するということは、ある共通した原理、方法論、理解およびプロセスを もった探究のコミュニティーに関わることであると理解するのが重要です。

2.科学の理解

2.1 科学者は、「理論」「法則」「仮説」という概念を用います。これらの概念は関連し ていますが、いずれか1つの概念から別の概念へと発展するというものではあり ません。これらの用語は、科学において特別な意味をもっており、日常的に使う 用語とは区別することが重要です。

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科学の本質(NOS)

2.2. 「理論」は、万物、または万物の一部がどのように機能しているかを示す統合的か つ包括的なモデルです。理論は、事実、法則、および検証された仮説を組み込む ことができます。理論から予測を立て、それを実験、または注意深い観察によっ て検証することができます。病原体の細菌理論や原子理論がその例です。

2.3. 理論は、一般に、他の理論の仮定および前提と矛盾することなく、幅広い現象や 学問領域にあてはまる一貫した理解を打ち立てます。一方で、新しい理論が基本 概念の理解や枠組みを根本的に変化させ、他の理論に影響を与え、時として科学 における「パラダイムシフト」と呼ばれるものを引き起こす場合もあります。科 学において最も有名なパラダイムシフトの1つは、アインシュタインの相対性理 論です。相対性理論によって、私たちの時間の概念は、絶対座標系から観測者に 依存した座標系へと変化しました。ダーウィンの自然選択による進化論も、地球 上の生物に関する私たちの理解を変化させました。

2.4. 「法則」は、挙動の規則的なパターンの観察から導き出された詳述的、規範的な記 述です。一般的には、数学的な形式をとり、結果を計算し、予測を行うために用 いることができます。理論や仮説とは異なり、法則は証明することができません。

科学的な法則は、例外がある可能性もあり、また、新しい証

エビデンス

拠に基づいて修正さ れたり、却下されたりすることもあります。法則は、必ずしも現象を説明する必 要はありません。例えば、ニュートンの万有引力の法則によると、2つの物体の 間の力は、それらの間の距離の2乗に反比例するため、それに基づいて任意の距 離だけ離れた物体間の力を計算することができますが、「物体がなぜ互いに引きつ け合うのか」については説明されていません。なお、「法則」という用語は、科学 においてはさまざまな使われ方をしてきたので、特定の概念を「法則」と呼ぶか 否かは、法則が発見された学問領域および時代によって決まる場合があることに 注意してください。

2.5. 科学者は、時として「仮説」を立てます。仮説とは、世界に関する説明で、真ま たは偽であり得るものです。また、多くの場合、仮説は要素間の因果関係または 相関関係を説明します。仮説は、実験または自然界の観察によって検証され、支 持される場合もあれば、反対される場合もあります。

2.6. ある考え(例えば、理論または仮説)が「科学的」であるためには、その考えは、

自然界および自然についての説明に焦点をあてたものでなければなりません。ま た、検証可能であることも条件となります。科学者は、一般に認められている原 理と矛盾せず、既存の考え方を単純化して統一する仮説や理論を構築することに 努めています。

2.7. 「オッカムの剃刀」の原理は、理論を構築する際の指針とされています。理論は、

説明能力を最大化しつつ、できる限り単純であるべきです。

2.8. 「相関関係」と「因果関係」という考え方は、科学において非常に重要です。相関 関係は、ある変数と別の変数の間の統計的な関連性のことです。正の相関または 負の相関があり、+1、0、-1の間の値をもつ相関係数を計算することができ

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科学の本質(NOS)

ます。ある要素と別の要素の間の(正または負の)強い相関関係は、2つの要素 の間のある種の因果関係を示唆しますが、科学者が「因果関係がある」と認める までには、たいていの場合、多くの証

エビデンス

拠を必要とします。因果関係(ある要素が 別の要素の原因となっていること)を確立するには、科学者は、それらの要素を 結びつける妥当な科学的体系を必要とします。科学的体系は、喫煙と肺がんの関 係の例のように、一方が他方の原因となるという事例を裏づけます。科学的体系 は、実験によって検証可能です。

2.9. ある要素と別の要素との間の関係性を調べるには、それ以外のすべての要素の設 定をコントロールした状態で実験することが理想的です。ただし、いつもそのよ うな実験ができるわけではありません。科学者(特に生物学者や医学者)は、実 験(二重盲検法や治験など)が不可能な場合に、サンプリング、疫学のコホート 研究、および症例対照研究によって、因果関係への裏づけを強化します。医学分 野の疫学では、確立された科学的知識がほとんどない場合や、状況を完全にコン トロールするのが困難な場合に、データの統計分析を用いて相関関係の有無の可 能性を検討します。このような場合には、他の分野と同様に、確率論による数学 的分析が役立ちます。

3.科学の客観性

3.1. データは、科学者に不可欠なものです。データには、定性的データと定量的デー タがあります。データは、純粋な観察から得る場合もあれば、電子センサーを 使った遠隔実験や直接的な測定による特定の実験から得る場合もあります。正確 かつ的確な記述や予測を行うには、通常、定量的で数理解析が可能なデータが最 も適しています。科学者は、データを解析し、パターン、傾向、矛盾を探し出し て、関係性を発見し、因果関係を確立することを試みます。ただし、これは必ず しも可能とは限りません。したがって、観察結果や、銀河系や化石など対象物の タイプを同定して分類することは、今も科学研究の1つの重要な側面です。

3.2. 反復測定を行い、大量の測定値を集めることは、収集データの信頼性を向上させ ます。データは、例えば、線形グラフや対数グラフなどのさまざまな形式で提示 することができます。こうしたグラフを用いて、正比例または反比例、あるいは 指数関係の解析をすることも可能です。

3.3 科学者は、確率的誤差および系統誤差に注意し、グラフ上のエラーバーおよび回 帰線などの手法を用いて、データをできる限り現実的かつ誠実に表現しなければ なりません。データの外れ値を却下すべきか否かを検討する必要があります。

3.4. 科学者は、誤差と不確かさ、正確度と精度の間の違いを理解する必要があります。

また、平均、平均値、最頻値、中央値などの数学的概念を理解して活用すること も必要です。標準偏差、およびカイ二乗検定などの統計的手法は、よく用いられ ます。また、結果がどの程度、正確であるかを評価できることは重要です。さま

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科学の本質(NOS)

ざまな状況下でどの手法が適切であるかを決定できるようになることは、科学者 としての訓練および身につけるべきスキルの重要な部分です。

3.5. 実験計画と解釈に影響を与え得る「認知バイアス」に注意することも、科学者と してきわめて重要です。例えば、「確証バイアス」は、予期していないデータや、

期待や要求に従わないデータを却下し、期待や要求と一致するデータを受け入れ る理由を探すよう駆り立てる認知バイアスで、よく知られています。科学のプロ セスおよび方法論は、概して、先入観によるこれらのバイアスを考慮するように 設計されています。しかし、こうしたバイアスの影響を受けることのないよう常 に注意をしなければなりません。

3.6. 科学者は、結果または発見を確実に「正しい」とすることはできません。一方で、

私たちは、一部の科学的成果が「確実」に非常に近いものであることを知ってい ます。科学者は、結果について議論する時に「信頼度」について話すことが少な くありません。ヒッグス粒子の存在の発見は、このような「信頼度」に関連する 一例です。この粒子は、決して直接的に観察できません。したがって、その粒子 の「存在」を確定するにあたって、素粒子物理学者は「発見」と見なすための自 主的な定義である「5シグマの確かさ」――ヒッグス粒子が存在しないにもかか わらず、偶然、そのように示す実験結果を得る確率が 0.00003%であるという基準

――をクリアしなければなりませんでした。

3.7. 近年、コンピューターの情報処理能力、センサー技術、およびネットワークの発 達により、科学者は大量のデータを収集することができるようになりました。地 球観測衛星や宇宙探査機など多くのデータ源からは、絶えず大量のデータがダウ ンロードされています。また、遺伝子シーケンサーでは、大量のデータが生成さ れています。欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器によ る実験では、1秒間に23ペタバイトのデータが定期的に生成されています。これ は、1秒間に、高解像度のテレビ番組の13.3 年分に匹敵する量のデータが生成さ れている計算になります。

3.8. 研究では、データベースに収録されたこの大量のデータを解析して、パターンと 固有の事象を探し出します。解析には一般的に、研究に参加している科学者が作 成したソフトウェアが用いられます。データとソフトウェアは、科学的成果とと もに公表されない場合もありますが、通常は他の研究者が利用できるようになっ ています。

4.科学の人間的な側面

4.1. 科学は、協

コラボレーション

働の要素の多い営みです。科学のコミュニティーは、科学 、 工学、技術 に従事する人々で構成されています。研究は、共通のゴールに向けて、さまざまな 専門分野や専門性による貢献が得られるように、1つの科学分野にとどまらず、多 くの学問領域の研究者から成るチームで行うのが一般的です。問題を1つの学問領

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科学の本質(NOS)

域のパラダイムの枠組みにのみあてはめた場合、得られる解決策の可能性は限定さ れます。さまざまな観点を用いて問題の枠組みをつくり、新たな解決策の可能性を 見いだすことが、きわめて有効な場合があるのです。

4.2. こうしたチームワークは、「科学とは、心を開いて物事を受け入れる精神に富み、

地域や文化、政治、国籍、年齢や性別から独立した存在である」という共通理解 のもとに形成されます。科学の世界では、情報や考え方が世界規模で自由に交換 されます。もちろん、個々の科学者は人間であり、偏見や先入観をもっているこ ともありますが、科学の制度、実践、方法論が、科学的な試みを全体として偏見 のないものに保つことに役立っています。

4.3. 科学者は、成果を交換することで協力し合うと同時に、学問領域、研究室、組織、

国の中や、それらをつなぐ形で形成される大小の規模の研究グループで日々、協 働しています。また、そうした協働は、インターネット上のコミュニケーション によってますます促進されています。以下は、大規模な協働の例です。

- マンハッタン計画。原子爆弾の製造とテストを目的とし、最終的には 13万 人以上を雇用。複数の製造研究拠点を設置し、秘密裏に運営しました。広 島と長崎に2つの原子爆弾を投下するに至りました。

- ヒトゲノム計画(HGP)。ヒトゲノムのマッピングのために立ち上げられ た国際的な科学研究プロジェクト。1990年に30億ドルのプロジェクトが始 まり、2000年にはゲノムの概要配列がつくられました。DNAの配列は、

インターネット上の誰でも利用できるデータベースに収録されています。

- 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)。国連によって組織され、公式 にはおよそ2500人の科学者で構成されています。世界中のさらに多くの科 学者の研究をまとめた報告書を作成しています。

- 欧州原子核研究機構(CERN)は、1954年に設立された国際機関で世界 最大の素粒子物理学研究所。研究所はジュネーブにあります。およそ2400 人を雇用し、100カ国以上、600以上の大学や研究機関に在籍する1万人の 科学者や技術者と成果を共有しています。

上記の例は、いずれも賛否両論があり、科学者や一般の人々のさまざまな感情を 喚起してきました。

4.4. 科学者は、他の科学者の発表した成果を読むのに、かなりの時間を費やしていま す。科学者は、査読と呼ばれるプロセスを経て、科学雑誌に自らの成果を発表し ます。査読では、同じ分野で研究している何人かの科学者が匿名かつ別々に、そ の科学者(より一般的には複数の科学者から成るチーム)の研究を審査します。

研究方法が妥当であるか否か、およびその研究がその分野の知識に新たな貢献 をもたらすか否かの判定するのです。また、科学者は学会に参加して、研究の口 頭発表やポスター発表を行います。査読制度のある学術誌の掲載論文がインター ネット上で公開されるようになったことで、科学文献を効率よく検索して見つけ

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科学の本質(NOS)

ることができるようになりました。専門領域の研究に従事する科学者のための組 織は、国内組織、国際組織ともに数多くあります。

4.5. 科学者は、倫理的、政治的に重要な意味をもつ領域で研究を行ったり、知見を生 み出したりすることが少なくありません。たとえば、クローニング、食品や生物 の遺伝子組み換え技術、幹細胞および生殖技術、原子力、兵器開発(核、化学、

生物兵器)、組織および器官の移植、動物実験を含む領域などが例として挙げられ ます(IB資料『IB animal experimentation policy(IBの動物実験に関する方針)』を 参照)。知的財産権と社会に重大な影響を与え得る情報を自由に交換することに関 する問題もあります。科学には、大学や企業のほか、政府機関、防衛省庁、国際 機関も取り組んでいます。特許や知的財産権の問題は、保護された環境で研究が 行われる際に生じます。

4.6. データの不正のない誠実な提示が、科学においては最も重要です。結果を修正、

操作、改ざんしてはなりません。学問的誠実性(academic honesty)を順守し、剽 窃をしないためにも、すべての出典を明記し、援助や支援には適切な謝辞を記し ます。同僚による査読や科学コミュニティーによる精査と懐疑的な姿勢も、誠実 さを守るのに役立ちます。

4.7. あらゆる科学には、資金が必要です。資金源は、どのような種類の研究を行うか を方向づけます。政府や慈善団体からの資金提供が、直接的な受益者が明らかで はない基礎研究に対して行われることがあるのに対して、企業からの資金提供は、

多くの場合、特定の製品や技術を生み出すための応用研究に対して行われます。

政治的、経済的要素が、しばしば資金提供の性質と程度を決定します。科学者は、

研究助成金の申請に時間を費やし、研究の必要性を主張しなければならないこと が少なくありません。

4.8. 科学は、多くの問題を解決し、人類の暮らしを向上させるために用いられてきま した。一方で、倫理的に疑問のある科学利用や不本意な問題も招いています。公 衆衛生の向上や安全な水の供給率の改善、病気予防や健康維持の促進により、死 亡率は著しく低下しましたが、出生率は低下していないため、莫大な人口増加と ともに、資源、エネルギー、食糧供給などの問題を引き起こしています。倫理的 議論、リスク便益分析、リスク評価、予防原則はいずれも、科学が公共の利益に 取り組む際の手法の一部です。

5.科学的リテラシーと科学に対する一般の人々の理解

5.1. 科学的知見や課題について社会的な判断をする際には、科学の本質に対する理解 が欠かせません。一般の人々は 、 どのように判断を下すのでしょうか。一般の 人々がその科学について直接理解して判断することは可能でない場合もあるかも しれません。一方で、一般の人々が科学的プロセスに従っているかどうかに関し

(21)

科学の本質(NOS)

て重要な問いを投げかけることは可能です。科学者には、その問いに答える役目 があります。

5.2. 科学者は、特定の分野の専門家として、彼らが取り組む課題と知見を一般の人々 に説明する立場にあります。自分の専門外では、科学的課題について他の人に助 言する能力は一般の人々と大差ないかもしれません。ただし、科学のプロセスに ついての理解があることは、その科学者自身が個人的な決定したり、ある主張が 科学的に信頼できるか否かについて一般の人々を教育する際に役立てることがで きます。

5.3. 科学的リテラシーには、科学者がどのように研究して考えるかを知ることだけで なく、誤った推論に気づく能力も含まれます。人々(科学者を含む)が影響を受 けやすい推論の認知バイアスあるいは誤謬はたくさんあり、可能な限り正す必要 があります。これらの例としては、「確証バイアス」のほか、少ない例から一般的 な結論を導こうとする「早まった一般化」、前後関係と因果関係を混同する「前 後即因果の誤謬」(虚偽の原因の誤謬)、相手の主張を歪め、論点をすり替えて反 論する「わ

ストローマン

ら人形の虚偽」、途中で当初の目的を変えてしまう「ゴールポストの移 動」(再定義)、「伝統に訴える論証」、「誤った権威」、および「根拠と見なされて いる逸話の集積」が挙げられます。

5.4. こうしたバイアスや誤謬が適切に取り扱われたり、訂正されたりしない場合、ま たは、科学のプロセス、チェックおよびバランスが無視または誤用された場合、

結果は「疑似科学」になります。疑似科学は、科学的であると主張しますが、適 切な科学的方法論の基準を満たしておらず、その基準に準じてもいません。疑似 科学とは、裏づけとなる根拠、あるいは理論的枠組みがなく、必ずしも検証可能 ではないため反証可能であり、厳密ではない方法または不明瞭な方法で表現され、

しばしば科学的検証によって支持できない信念や実践に対して用いられる用語で す。

5.5. もう1つの重要な課題は、適切な用語の使用です。科学者が科学用語として合意 している単語は、しばしば日常生活で別の意味をもつことがあるため、一般の 人々も読む科学論文は、これを考慮する必要があります。例えば、「理論」は、慣 用的には直観または憶測を意味しますが、科学において、受け入れられた「理論」

とは、多くの異なる方法で十分に検証された予測を伴う科学的概念です。「エアロ ゾル」は、一般の人々にとってはただのスプレー缶を示す言葉ですが、科学にお いては、気体中に固体または液体粒子が浮かんだものを指しています。

5.6. いかなる科学の分野 ――基礎研究、応用研究、または新しい技術の工学分野――

であっても、創造性と想像力に富んだ思考には限界がありません。科学は、これ までに多くを達成してきましたが、未来の科学者が取り組むべき、まだ答えの出 ていない問題もたくさんあります。

以下のフローチャートは、「科学的な探究プロセス」の実践を示すインタラクティブな フローチャートの一部です。インタラクティブバージョンは、カリフォルニア大学古生物

(22)

科学の本質(NOS)

学博物館(University of California Museum of Paleontology)のサイト(英語)「How science

works: The flowchart(科学の仕組み:フローチャート)」で見ることができます。アクセ

ス日:2013年2月1日 <http://undsci.berkeley.edu/article/scienceflowchart>

[訳]上記サイトから日本語版のフローチャートをダウンロードできます。

図2

科学的発見への道筋

(23)

「化学」の学習

はじめに

「化学」は、実験・研究スキルの習得とアカデミックな学習が一体となった実験科学の 科目です。化学の原理は、私たちが生活する物理的環境やすべての生物システムの理解を 支える土台となっているため、「化学は、科学の中核的分野である」といわれることが少 なくありません。化学それ自体が学習に値する科目であるのはもとより、化学は医学、生 物科学、環境科学など高等教育の多くの課程の必修科目となっています。また、就職の準 備としても役立ちます。

土、水、空気、火は、しばしば「四大元素」と呼ばれることがあります。ヒンドゥー教 や仏教にもこうした考え方が見られますが、最初に土、水、空気、火を「元素」と呼んだ のは、ギリシャの哲学者であるプラトンでした。化学の研究は、ありふれた金属を金に変 える方法を求めた錬金術師の初期の仕事を発端としながら、劇的に変化してきました。今 日では錬金術師は真の科学者であるとは見なされていませんが、近代化学のルーツは錬金 術にあるといっても過言ではありません。厳密な実験プロセスや実験技法を最初に発展さ せたのは錬金術師たちでした。しばしば「近代化学の祖」とされるロバート・ボイルは、

錬金術師として実験を始めました。

化学の歴史は、さまざまな考えの劇的で飛躍的な発展に彩られていますが、依然として 変わらないものもあります。「観察」は、今も変わらず化学の営みに欠かせないものとし てその中核を担っています。観察では、時として何を見いだそうとしているかについて判 断しなければならない場合もあります。過去の卓越した科学者が実践した科学的プロセス は、今日の現役の化学者に受け継がれています。それだけでなく、そのプロセスは現在、

学校で学ぶ生徒が取り組むこともできるようになっています。科学的知識は拡大して複雑 化し、理論化学と実験化学のツールやスキルは、両分野に熟達することが(不可能ではな いにしても)困難なほど専門化しています。生徒はそのことを認識する一方で、両分野 が、公表された科学文献を通じて理論的概念と実験結果を自由かつ素早く結びつけている ことで連携を維持していることも理解しなければなりません。

DPの「化学」では、化学の基本原理を学びます。一方、生徒のニーズにあった授業 とするために、教師が選択項目を選ぶことで授業内容を一部調整することもできるように なっています。「化学」は標準レベル(SL)または上級レベル(HL)で履修できるた め、高等教育で化学を専攻したいと考えている生徒にも、そうでない生徒にも対応してい ます。

学校では、全生徒が理論と実験の両方に取り組む必要があります。化学に従事する研究 者たちの世界と同様、理論と実験は自然に互いを補い合うものです。DPの「化学」で は、生徒が従来型の実験スキルや手法を身につけ、科学の「言語」である数学の運用能力

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「化学」の学習

を高めていきます。また、生徒の対人能力を育てるほか、21世紀の科学的試みに欠かせ ないデジタル技術のスキルを伸ばします。デジタル技術のスキルは、人生を豊かにし、汎 用性のあるものです。

指導の方法

化学にはさまざまな指導の方法があります。化学という科目の性質上、実験を取り入れ た指導のアプローチが適していますが、DPの「化学」では、科目全体を通じて実験を重 視することが期待されます。

シラバスの編成順は、教えるべき順序ではありません。どのような順番で教えるかを決 めるのは、教師に委ねられています。教師は、それぞれの状況に応じて、順序を決定しま す。選択項目は、必要に応じて、「SL・HL共通項目」(core)または「HL発展学習」

(AHL:additional higher level)の項目の中で教えることもできます。また、独立した単 元として教えることもできます。

科学とその国際的側面

科学は、国際的な取り組みです。国境をこえた情報やアイデアの交換が、科学の進歩を 後押ししてきました。こうした情報やアイデアの交換は、とりわけ新しいことではありま せんが、近年では、情報コミュニケーション技術(ICT)の発展とともにその速度は加 速しています。実際のところ、科学が「西洋の発明である」という考え方は「神話」にす ぎません。現代科学の基礎の多くは、何世紀も前に、特にアラビアやインド、中国の文明 などによって築かれました。教師は、さまざまなトピックを教えるにあたり、この貢献を ウェブサイトの年表などを利用して強調することが推奨されています。最も広い意味での

「科学的方法」とは、査読などの相互評価、開かれた心と自由な思考に重点を置き、政治 的、宗教的な境界や、国境を超えるものです。「理科」(グループ4)の各科目の「指導の 手引き」にある「シラバスの詳細」のセクションでは、特定のトピックの中で必要に応じ て、科学の国際的側面との結びつきを説明しています。

現在、科学を推進するために多くの国際的な機関が存在しています。科学が重要な位置 を占める国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連環境計画(UNEP)、世界気象機関

(WMO)などの国連機関が、よく知られていますが、さらに、分野別に何百もの国際的 な機関があります。例えば、素粒子物理学やヒトゲノム計画など、大規模研究のための機 関は費用がかかるため、共同事業として多くの国からの資金提供がなければ実現できませ ん。そのような研究から得られたデータは、全世界の科学者の間で共有されます。教師と 生徒は理科の指導および学習を通じて、こうした国際的な科学機関の充実したウェブサイ トやデータベースにアクセスし、科学の国際的側面についての認識を高めることが奨励さ れています。

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「化学」の学習

「科学的な問題の多くは、国際的なものである」という認識はますます高まっていま す。そうした認識が、多くの領域でのグローバルな研究アプローチにつながってきまし た。「気候変動に関する政府間パネル」の報告書が、その典型例です。教育実践のレベル では、「グループ4プロジェクト」〔DPの「理科」(グループ4)科目を履修する生徒は 全員取り組まなければならない〕で、地域をまたいだ学校間の協働を促進することで、本 物の科学者の研究の営みを反映した取り組みを実現することができます。

科学的知識には、社会を変革する大きな力があります。科学的知識には、多大な普遍的 利益を生み出す可能性もあれば、不平等を拡大し、人々と環境に害を引き起こす可能性も あります。「IBの使命」を踏まえ、生徒は理科の学習を通じて「科学者には、科学の知 識やデータをすべての国々で公平に利用できるようにする道徳的責任と、持続可能な社会 を発展させるよう知識やデータを用いることのできる科学的能力をもつ道徳的責任がある こと」を認識する必要があります。

教師は、生徒が「国際的な視野」との結びつきに関心をもつよう働きかけてください。

「国際的な視野」に関連した事例が、シラバスのサブトピックの欄内に挙げられていま す。IBウェブサイト「Global engage(IB認定校でのグローバルな諸課題への取り組 み)」(http://globalengage.ibo.org)にあるリソースを使うこともできます。

「標準レベル」と「上級レベル」の違い

「理科」(グループ4)では、標準レベル(SL)と上級レベル(HL)のいずれの生徒 もシラバスの「SL・HL共通項目」と「内部評価課題」(IA:internal assessment)に 取り組みます。また、選択項目によっては、両レベルに共通する要素があります。生徒は シラバスを通じて、本資料の「評価目標」のセクションで示されている特定のスキル、性 質、態度を身につけます。

また、「理科」(グループ4)では、SLとHLのいずれも同じスキルと学習活動に取り 組みます。ただし、HLでは「HL発展学習」の項目や共通の選択項目でいくつかのト ピックをより深く学ぶことが求められます。SLとHLでは、学習の幅と深さが異なりま す。

事前の学習経験

これまでの経験から、生徒は、理科についての背景や事前の知識がなくても「理科」

(グループ4)の各SL科目で実りある学習ができることがわかっています。「IBの学習 者像」の人物像に特徴づけられた「学習の方

アプローチ

法」は、「理科」(グループ4)の学習では重 要です。

一方、HLで「理科」(グループ4)の科目を履修することを考えている場合は、何ら かの正規の理科教育を受けていることが必要です。ただし、これは「理科」(グループ 4)の科目の履修を制限するものではありません。事前の学習が必要な具体的なトピック

参照

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