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(1)

Autumn

2011

World’s Agriculture, Forestry And Fisheries No.824

開発に向けた

ジェンダーギャップの解消

――

FAO

世界食料農業白書(

SOFA

2010

­

11

年報告」

R e p o r t 2

Save and Grow

――小規模農家のための持続可能な農作物生産の強化

R e p o r t 1

(2)

02 A UTUMN 2011 03 特 集

開発に向けた

ジェンダーギャップの解消

――FAO「世界食料農業白書(

SOFA

2010

­

11

年報告」 09 R e p o r t 1

世界の食料ロスと食料廃棄

15 R e p o r t 2

Save and Grow

――小規模農家のための持続可能な農作物生産の強化 19 「世界食料デー」月間2011

みんなで食べる幸せを

20

Food Outlook

世界の食料需給見通し 2011.6 焦点/市場の概況 26

FAO

水産養殖局とは

?

第6回 「漁業・養殖業と環境」問題とFAOの役割 FAO水産養殖局上席水産専門官 渡辺浩幹

30

Zero Hunger Network Japan

ゼロ・ハンガー・ネットワーク・ジャパン ネットワーク設立の背景と世界のアライアンス FAO日本事務所企画官 大軒恵美子 32 FAO寄託図書館のご案内 33 PHOTO JOURNAL

世界に広がるテレフード・プロジェクト

――アジアの事例を中心に FAO日本事務所副代表 松田祐吾 36 FAOで活躍する日本人 No.25

コミュニケーションの力を生かして

FAO広報渉外局コミュニケーションデザイン部広報担当官 ヴォーン・山下亜仁香 38 FAO MAP

農業労働人口に占める女性の割合

2010 世界の農林水産 Autumn 2011 通巻824号 平成23年9月1日発行 (年4回発行) 発行 (社)国際農林業協働協会(JAICAF) 〒107-0052 東京都港区赤坂8-10-39 赤坂KSAビル3F Tel:03-5772-7880 Fax:03-5772-7680 E-mail:fao@jaicaf.or.jp www.jaicaf.or.jp 共同編集 国際連合食糧農業機関(FAO) 日本事務所 www.fao.or.jp 編集:宮道りか、リンダ・ヤオ (社)国際農林業協働協会 編集:森麻衣子 今井ちづる デザイン:岩本美奈子 本誌はJAICAFの会員に お届けしています。 詳しくはJAICAFウェブサイトを ご覧ください。

C o n t e n t s

古紙パルプ配合率100% 再生紙を使用

World’s Agriculture, Forestry And Fisheries No.824 Autumn 2011 2011年11月24日(木)、横浜みなとみらい大ホー ルにて「テレフードチャリティーコンサート2011『大 地の詩』」が開催されます。ピアニストの西本梨江 さん、尺八奏者の藤原道山さん、マリンバ奏者の SINSKEさんらを迎え、「シルクロードの風」をテー マにさまざまな曲が演奏されます。コンサートの収 益金は、FAOが途上国で行うテレフード・プロジェ クトに寄付されます。 お問い合わせ・チケットのお申し込みは、FAOチャ リティーコンサート実行委員会事務局(045­853 ­1512)まで。詳細は下記のFAO日本事務所ウェ ブサイトをご覧ください。 www.fao.or.jp/detail/article/359.html テレフードコンサートのお知らせ

(3)

開発に向けた

ジェンダーギャップの解消

――

FAO

「世界食料農業白書(

SOFA

2010

­

11

年報告」

開発途上国では、女性は農村経済に大きく貢献しているにもかかわらず、 男性に比べてさまざまな制約に直面している。

FAO

の「世界食料農業白書(

SOFA

)」最新版は、農業発展の 妨げともなっているジェンダーギャップの問題に焦点を当てる。

The State of

Food and Agriculture

2010

­

11

ブドウを栽培するタジキスタンの女性。果樹の苗木を増 やすことで、最も脆弱な立場にある女性農業者の収入と 食料安全保障の向上を目指したFAOのプロジェクトにて。

©FAO / Nasily Maximov

03

A

(4)

農業セクターは多くの開発途上国で伸び悩 んでいるが、その理由のひとつとして、生産 性向上に必要な資源や機会への対等なアク セスが女性に与えられていないこと(ジェンダー ギャップ)が挙げられる。ジェンダーギャップは、 農業生産、食料安全保障、経済成長の低 迷など、社会に実質的な損失を与える。 ■ 同業の男性と比べて、女性は次のような問 題を抱えている。 ■女性の経営する農場は男性に比べて小規  模で、農場の平均面積は半分か

3

分の

2

 にすぎない。 ■所有する家畜数が男性より少なく、より小  型の品種を飼育している場合が多いため、  家畜収入も少ない(図1)。 ■水汲みや薪拾いなど、生産性が低く負担  の大きな作業量がきわめて多い。 ■教育水準が低く、農業に関する情報や普  及サービスへのアクセスが少ない(図2)。 ■融資など、金融サービスの利用が少ない  (図3)。 ■肥料や改良種子、機械設備といった投入  財の購入が大幅に少ない(図4)。 ■雇用形態はパートタイム雇用や季節雇用  がほとんどで、低賃金労働が多い。 ■同等の経験や能力がある場合でも、同じ  仕事に対する賃金が男性よりも低い。 ■ こうした現状に対し、「

SOFA 2010

­

11

」は、 農業や農村雇用におけるジェンダーギャップ を解消することによって得られる潜在的利益 を、実証的に評価している。開発途上国では、 農業労働力に占める女性の割合が平均

43

%

を占めるが、前述のように農業に従事す る女性や農村地域の女性は、男性ほど生産 資源や生産機会へのアクセスに恵まれておら ず、資産や投入財、サービスの大部分にお いてジェンダーギャップが見受けられる。女 性農業者は男性農業者よりも生産量が少な いが、これは女性の作業効率が悪いためで はない。詳細な調査の結果、男女間の生産 性の格差は投入財利用の差によることが明 らかになった。 ■ こうしたことから、農業におけるジェンダー ギャップ解消は、農業セクターのみならず社 会に大きな利益をもたらすと考えられる。女 サイロの中でトウモロコシを仕 分けする若い女性農業者(モザ ンビーク)。

©FAO / Giuseppe Bizzarri

女性の収入増加を目指したテレフード・プロジェクト(FAOの小規模プロジェクト)で、料理用のソースを作る女性たち(ドミニカ共和国)。

©FAO / Giuseppe Bizzarri

FAO本部で行われた「SOFA 2010­11」の発表記者会見。

©FAO / Alessia Pierdomenico

(5)

FAOのプロジェクトで導入され た牛乳の分離器を利用する女 性農業者。生クリームやバター を作って販売することができる (タジキスタン)。

©FAO / Vasily Maximov

搾ったミルクをひょうたんに入 れて家に向かうマサイ族の女性 (タンザニア)。

©FAO / Giuseppe Bizzarri

The State of Food and Agriculture 2010­11

開発に向けた

ジェンダーギャップの解消

特集

1―世帯別の家畜頭数

出典:FAO、RIGAチーム、Anriquez, 2010

注各国政府による世帯調査から算出している  家畜頭数は熱帯家畜単位(TLU=250kgの家畜)から算出しているが、尺度は地域によって異なる  例えば南アメリカの場合、牛1頭=0.7TLU、豚1頭=0.2、羊1頭=0.1、鶏1羽=0.01  グアテマラを除き、男女の家長世帯の差異は統計学的に95%の信頼度を持つ 女性家長世帯 男性家長世帯 平均熱帯家畜頭数(TLU) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 ニカラグア マラウイ マダガスカル ガーナ ネパール バングラデシュ パナマ ニカラグア グアテマラ エクアドル ボリビア 2―農村世帯の家長の教育水準

出典:FAO、RIGAチーム、Anriquez, 2010

女性家長世帯 男性家長世帯 教育を受けた平均年数 ニカラグア マラウイ マダガスカル ガーナ ベトナム タジキスタン パキスタン ネパール インドネシア バングラデシュ パナマ ニカラグア グアテマラ エクアドル ボリビア 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 05 A UTUMN 2011

(6)

フィリピンのミンダナオ島で行 われたファーマー・フィールド・ スクール。 ©FAO / Bahag タンザニアのSekoine農業大 学で研究する女性。この大学は、 FAOのLinKSプロジェクト(食 料安全保障の達成に向けてジェンダー、 生物多様性、地域の知識体系の結び つきを強めることを目指すプロジェクト) と提携している。

©FAO / Giuseppe Bizzarri

3―農村地域における融資の利用

出典:FAO、RIGAチーム、Anriquez, 2010

注各国政府による世帯調査から算出している  ジェンダーギャップは、男性、女性家長世帯それぞれが融資利用に占める割合から算出している 女性家長世帯 男性家長世帯 融資を利用する世帯の割合(%) マラウイ マダガスカル ガーナ ベトナム ネパール インドネシア パナマ グアテマラ エクアドル 0 10 20 30 40 50 60 70 80 4―世帯別に見た機械設備の利用

出典:FAO、RIGAチーム、Anriquez, 2010

注各国政府による世帯調査から算出している  男女の家長世帯の差異は統計学的に95%の信頼度を持つ 女性家長世帯 男性家長世帯 機械設備を利用する世帯の割合(%) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 ニカラグア マラウイ マダガスカル ガーナ ベトナム タジキスタン ネパール インドネシア バングラデシュ パナマ ニカラグア グアテマラ エクアドル 06 A UTUMN 2011

(7)

性が男性と同等に生産資源にアクセスできれ ば、農場の生産量を

20

­

30%

引き上げる ことができるとみられている。これにより、開 発途上諸国の農業総生産は

2.5

­

4%

増加 する可能性がある。このように生産量が大幅 に増加すると、世界中で飢餓に苦しむ人々 の数を

12

­

17%

減らすことができる。 ■ こうした潜在的な生産利益は、現在農業に 従事している女性の数や生産量、農場の面 積、ジェンダーギャップの大きさによって地域 で異なるが、ジェンダーギャップ解消によって もたらされるこうした利益は、社会的利益の 第一段階にすぎない。女性が副収入を管理 するようになれば、女性は男性以上に食料 や健康管理、衣服、子どもの教育などにお 金を費やす。これは、福利に即時の恩恵を もたらすだけではなく、長期的にも人的資本 の形成や経済成長によい影響を与える。  政策介入は、農業や農村部の労働市場 におけるジェンダーギャップ解消に役立つ。 改革の優先分野は次の通りである。 ■農業資源、教育、農業普及サービスや金  融サービス、労働市場へのアクセスにおけ  る女性差別を撤廃する。 ■女性が生産的な活動に時間を有効利用で  きるよう、労力節約および生産性向上に  関わる技術やインフラへ投資する。 ■柔軟で効率的かつ公正な農村労働市場  への女性参加を促進する。 ■ ジェンダーギャップ解消の青写真はないが、 共通した基本原則はいくつかある。政府、 国際社会、市民社会が互いに協力し合い、 法律によって差別を撤廃し、資源や機会へ の平等なアクセスを促進し、ジェンダー平等 を考慮した農業政策や農業プログラムを策 定し、持続可能な発展に向けた対等なパー トナーとして女性の声を反映すべきである。 農業におけるジェンダー平等と女性の地位 向上を達成することは、正しい行動であるだ けでなく、農業の発展や食料安全保障にとっ てもきわめて重要である。

出典:「The State of Food and Agriculture 2010­11」

(パンフレットおよび本文より)FAO, 2011

The State of Food and Agriculture 2010­11 世界食料農業白書(SOFA) 2010­11年報告 FAOが毎年発表する世界の食 料・農業に関する報告書。地 域別の概観を報告するほか、 本年版は、特に開発途上国に 根強くみられる農業におけるジ ェンダーギャップに焦点を当て、 その実態と、格差解消の重要性、 解決への道筋を論じています。 www.fao.org/docrep/013/ i2050e/i2050e00.htm FAO 2011年3月発行 147ページ A4判 英語ほか ISBN:978-92-5-106768-0 自分たちで作った冷凍食品を見せる女性組合の人々(ガザ地区)。

©FAO / Marco Longari

The State of Food and Agriculture 2010­11 開発に向けた ジェンダーギャップの解消 特集 07 A UTUMN 2011

(8)

よくある質問――農業における女性 Q1:開発途上国の農業労働力に占める 女性の割合は? A:開発途上諸国の農業人口における女 性の割合は、平均43%である。ラテンア メリカでは約20%、アフリカやアジアの 一部では50%と差はあるが、60%を越 えるのは数ヵ国に限られる。女性は農業 に従事していることを申告する可能性が低 いうえ、男性より長時間働いているといっ た理由から、労働力に関する統計は農業 への女性の貢献を過小評価しているとの 批判もある。しかし、生活時間調査からは、 開発途上諸国において女性が農業労働 力の大半を占めているとは言えない。 Q2:世界の食料のうち、女性が生産し ている割合は? A:この質問については、概念が曖昧で データが不十分なため、厳密な答えは出 せない。「食料」や「生産」をどう定義す るかにより、回答も異なる。そして何より 重要なのは、食料生産には土地や労働力、 資本など多くの資源が必要であるが、多 くの開発途上国では男女が協力してこれ らの資源を管理しているということである。 したがって、食料生産をジェンダー別に考 えることはあまり重要ではない。 Q3:女性は男性よりも農業資源や資金 へのアクセスが限られているか。 A:はい。これは国や状況にかかわらず、 農業に従事する女性に広く見受けられる 特徴のひとつである。どの地域においても、 女性の農業者が管理する土地や家畜は 男性のそれに比べて少なく、改良種子や 肥料などの使用、融資や保険の利用もは るかに少ない。また、教育水準も低く、 農業普及サービスの利用も少ない。 Q4:女性・女児は世界の貧困層の大半 を占めるのか? A:貧困は通常、個人単位ではなく世帯 ごとの収入もしくは消費に基づいて評価さ れるため、男女別の貧困率は算出するこ とができない。男性家長世帯よりも女性 家長世帯の方が貧しい(Q6を参照)、ある いは家庭内で女性に対する著しい不公平 が存在するのであれば(Q7を参照)、女性 が貧困層の多くを占めると言えるだろう。 生産資源へのアクセスなど、貧困をより 大きく捉えれば、女性は男性よりも貧しい と言えるかもしれない(Q3を参照)。 Q5:農村の労働市場で、女性への差別 はあるか。 A:世界的な統計を見ると、ほとんどの 国において、農村で働く女性は男性より も季節労働やパートタイム、低賃金の仕 事に従事していることが多く、(教育、年齢、 業種を考慮すると)女性は同じ仕事でも賃金 が低い。 Q6:女性家長世帯は最貧困層に属する か。 A20ヵ国において行われた35の政府 調査をFAOが分析したところ、女性家長 世帯が男性家長世帯よりも貧しい場合も あれば、反対の場合もあった。したがって、 一概に判断することはできない。また、 十分なデータがないために、独身や、夫 と死別または離婚した女性家長(法律上の 女性家長)世帯と、送金や社会的ネットワ ークを通して成人男性に家計を支えてもら う女性家長(事実上の女性家長)世帯とを体 系的に識別することが不可能となっている。 ただし、前者は後者より貧しいことが多い。 また、2008年の食料価格危機の際、農 村部の女性家長世帯は男性家長世帯より も経済的に不安定であったことを示すデ ータもある。これは、女性家長世帯は男 性家長世帯よりも、収入に対する食費の 割合が多く、食料増産による対処ができ なかったためである。これについても、調 査結果は国によって異なる。 Q7:女性・女児は男性・男児よりも栄 養不良か。 A:明白な裏付けはなく、一般論として 述べることは難しい。アジアではその可能 性があるが、アフリカではそういった傾向 はない、という一部報告はある。明確な 結論を導き出すには、身体計測や栄養不 良に関する指標に関して、より綿密な男 女別データが必要である。ただし、一時 的な収入減少に対しては、女児は男児よ りもかなり影響を受けやすいという調査結 果もある。 Q8:女性は男性よりも、子どものために 副収入を使うか。 A:多くの国にわたって行われた大規模 調査を通して、女性の収入が増えると子 どもの栄養状態や健康、教育水準が改善 されることが確認されている。また、例え ば女性の教育水準を改善するなど、家庭 内での女性の影響力を高める他の指標も、 子どもにもよい影響を与える。もちろん例 外はあるが、女性の地位向上は子どもの 福利を改善する確実な戦略である。 The State of Food and Agriculture 2010­11 開発に向けた ジェンダーギャップの解消 特集 08 A UTUMN 2011

(9)

パキスタンの首都イスラマバードの市場。©FAO / Farooq Naeem

世界の食料ロスと食料廃棄

R e p o r t 1 世界では約

10

億の人々が栄養不足に直面し、 今後ますます増加する人口を養うために更なる食料増産が求められている。 一方で、現在生産されている食料の

3

分の

1

が、 廃棄や損失(ロス)によって失われていることが、

FAO

の調査で明らかになった。

(10)

この調査研究は、

2011

5

月にドイツ・デ ュッセルドルフで行われた、国際包装業界見 本市「

Interpack 2011

」における国際会議 「

Save Food !

」に合わせ、

FAO

がスウェー デン食料バイオテクノロジー研究所(SIK)に 委託して行ったものである。「

Save Food !

」 は、世界全体で失われたり廃棄されている 食料に対する懸念の高まりと、これらが世界 の貧困や飢餓に与える影響、さらには気候 変動や自然資源の利用に関する懸念に応え るために開催された。  調査報告書は、フードチェーン全体を通し て発生する食料の損失(ロス)に焦点を当て、 その規模の大きさを評価している。さらに、 ロスの原因を特定し、それを防ぐために採り うる方策を明らかにしている。 食料のロス・廃棄の定義 食料のロスとは、人が消費する可食食料を 特定的に扱う供給チェーンの各段階におけ る食料の量的減少を意味する。これは、食 料供給チェーンの生産、収穫後および加工 の段階で発生する。フードチェーンの最終段 階(小売および最終的な消費)で発生する食料 のロスは、食料の「廃棄」と呼ぶ方がふさわ しい。これは小売業者と消費者の習慣に起 因するものである。 ■ 食料のロス・廃棄は、人の消費に向けられ る生産物についてのみ計測されている(家畜 飼料や食べることのできない一部の生産物は対象と ならない)。したがって、本来は人の消費用で ありながら、たまたま人のフードチェーンから 外れた食料は、たとえそれがその後で非食 料(家畜飼料、バイオエネルギー、その他)として 利用されたとしても、食料のロスあるいは廃 棄とみなされる。つまり、「意図された」非食 料利用と「意図されなかった」非食料利用を 区別するもので、後者は食料のロスとしてカ ウントされる。 食料のロスと廃棄のタイプ 植物性および動物性食料品の供給チェーン を以下の

5

つの領域に区分し、それぞれに ついて食料のロス・廃棄を推定した。 ■ 植物性の商品・生産物 農業生産:機械的な損傷および/または収 穫作業(例えば、脱穀あるいは果実収穫)中の 損耗、収穫後の収穫物の選別除外、その 他によるロス。 収穫後の取扱と貯蔵:取扱、貯蔵および農 場と流通拠点間の輸送中に生じる損耗や品 質劣化によるロスが含まれる。 加工:例えば、ジュース製造、缶詰め作業 およびパン焼きなど、加工工場あるいは地場 での加工工程中に発生する損耗や品質劣化 によるロスが含まれる。ロスは、収穫物が加 工に適さないとして選別除外された場合や、 洗浄、皮むき、薄切りおよび煮沸工程中に、 または加工の中断や事故による損耗によって 発生し得る。 流通:例えば卸売市場、スーパーマーケット、 小売店およびオープンマーケットなどにおけ る販売システム中のロス・廃棄を含む。 消費:世帯段階で消費される間のロス・廃 棄を含む。 ■ 動物性の商品・生産物 農業生産:牛肉、豚肉および鶏肉の場合、 ロスは動物の飼育中の死亡を指す。魚介類 については、漁獲作業中の廃棄を指す。牛 乳については、搾乳牛の病気(乳房炎)によ る乳生産量の減少を指す。 生産後の取扱と貯蔵:牛肉、豚肉および鶏 肉の場合、屠殺のための輸送途中の死亡お よび屠殺場における選別廃棄を指す。魚介 類については、水揚げ後の氷詰め、荷造り、 貯蔵および輸送中の損耗および品質劣化を 指す。牛乳については、農場と流通拠点間 の輸送中の損耗および品質劣化を指す。 果物市場に並ぶリンゴ(フランス)。

©FAO / Olivier Thuillier

コンベヤーを流れるジャガイモ を選別する女性(フランス)。

©FAO / Olivier Thuillie

10

A

(11)

加工:牛肉、豚肉および鶏肉については、 ロスは屠殺時の切除処分による損耗、および、 例えばソーセージ製造などの工場での付加 的加工における損耗を指す。魚介類につい ては、缶詰やくん製といった工場での加工時 におけるロスを指す。牛乳については、工場 での牛乳の処理(例えば、殺菌)および、例え ばチーズやヨーグルトへの牛乳の加工中の 損耗を指す。 流通:例えば卸売市場、スーパーマーケット、 小売店およびオープンマーケットなど、流通 システムにおけるロス・廃棄を含む。 消費:世帯段階でのロス・廃棄を含む。 食料ロスの量 研究の結果は、世界全体で人が消費するた めに生産された食料のおおよそ

3

分の

1

、量 にして年約

13

億トンが失われ、あるいは捨 てられていることを示唆している。このうち先 進国が

6

7,000

万トン、開発途上国が

6

3,000

万トンである。  食料のロス・廃棄は、農業生産段階から 家族世帯での消費段階に至る供給チェーン を通して発生する。中・高所得国では、ま だ人の消費に適している多くの食料が、消費 の段階で廃棄されている。さらには、食料 供給チェーンの早い段階においても、かなり のロスが発生している。低所得国では、食 料は食料供給チェーンの早い段階あるいは 途中の段階で失われることが多く、消費者 段階で捨てられる量はごく少ない。  

1

人当たりでは、開発途上国よりも先進工 業国の方が、無駄にされている食料が多い。 消費者

1

人当たりの食料廃棄量は、ヨーロ 1―品目別の生産量(地域別) 出典:FAO 100万トン 南・南西アジア ラテンアメリカ 北アフリカ、西・中央アジア アジアの先進工業国 サハラ以南アフリカ ヨーロッパ 北アメリカ、オセアニア 0 100 200 300 400 500 600 700 穀物 根茎類 油料作物・豆類 果物・野菜 肉 魚 乳製品 2―消費および消費の前段階における1人当たり食料ロス・廃棄量(地域別) 出典:FAO 100万トン 消費者 生産から小売り段階まで 0 50 100 150 200 250 300 350 北アメリカ オセアニア 先進工業国アジアの サハラ以南アフリカ 西・中央アジア北アフリカ 南・南西アジア ラテンアメリカ ヨーロッパ 缶詰工場で荷下ろしされるグレ ープフルーツ(スワジランド)。

©FAO / Florita Botts Global Food Losses and Food Waste

世界の食料ロスと食料廃棄

(12)

エジプトの首都カイロ郊外の屋台で食事する人々。©FAO / Alessandra Benedetti

ラディッシュの出荷作業(イタリア)。©FAO / Giulio Napolitano

12

A

(13)

ッパと北アメリカでは

95

­

115kg /

年である のに対して、サハラ以南アフリカや南・東南 アジアでは

6

­

11kg /

年であると推定されて いる。 食料ロスの原因と提言 低所得国における食料のロス・廃棄は、そ の

40%

が収穫後および加工の段階で発生 している。これは主として、収穫技術、厳し い気候条件での貯蔵と冷却施設、インフラ、 包装およびマーケティング・システムにおけ る財政的、経営的および技術的制約に起因 している。開発途上国では多くの小規模農 家が食料不安にさらされており、食料のロス を削減することは、彼らの暮らし向きに直接 大きな影響を与えるはずである。  開発途上国における食料供給チェーンは、 とりわけ、小規模農家の組織化と、彼らの 生産と販売の多様化および規模の拡大を督 励することによって強化される必要がある。 基盤施設、輸送、食品産業および包装産 業への投資もまた必要である。公共および 民間両部門はともにこれを達成する役割を 担っている。  中・高所得国における食料のロス・廃棄は、

40%

が小売・消費段階で発生している。こ れは主として、供給チェーンにおけるそれぞ れの担当者間の協調の欠如や、消費者の習 慣に起因する。農家と仲買人との間の売買 契約が、廃棄される農作物の量に影響を及 ぼすことがある。食料は、形や外見が完全 でない食料品を拒むような品質基準によって、 廃棄されることがあるからである。しかし調査 によれば、消費者は外見基準を満たさない 商品でも、安全でおいしければ購買する意 思があることが分かっている。農産物を、ス ーパーマーケットの品質基準に適合する必 要のない、消費者の近いところで販売するの もひとつの提案である。これはファーマーズ・ マーケットや農場販売店などを通じて実現で きる。  用途がなく廃棄されてしまう食料の使い道 も模索されるべきである。廃棄されたとして も安全性・味・栄養価の点でまだ満足のい く商品であれば、商業・慈善団体が、小売 業者と共同で収集・販売することも検討でき るだろう。 今後に向けて この研究によってまず明らかになったことは、 世界的な食料の廃棄に関する入手可能な知 見において、大きなデータの不足――特に、 個々の原因によって発生する食料ロスの定 量化、および食料のロスを防止するためのコ ストに関するデータ不足――が存在すること である。データが入手できる場合でも、それ 漁業における投棄――総漁獲量のうち海へ戻さ れる部分(多くの場合、死んだ、死にかけている、ある いはひどく痛んだもの)――は、世界の海面漁獲量 の大きな部分を占め、一般に、海洋資源を浪 費する不適切な利用と考えられている。最初の 世界全体の検証は1994年に公刊され、全体 で2,700万トンが捨てられていることを明らかに した。2005年にFAOが行った最新の世界調査 は、廃棄量は730万トンに下がったことを示した。 この2つの数字はそのまま比較できるものではな いが、たとえ前者が過大評価で後者が過小評 価であったとしても、減少程度は著しいと考えら れる。この最新評価数字は、加重調整された 世界全体の廃棄率の8%に相当する。とはいえ、 漁労技術や地域によって大きな開きが存在する。 魚介類の廃棄量

Global Food Losses and Food Waste

世界の食料ロスと食料廃棄

R e p o r t 1

自家用の穀物を保存するため の改良された倉庫。高床式で 鼠害を防ぐ装置がある(ウガンダ)。

©FAO / Roberto Faidutti

13

A

(14)

らはしばしば不確実性を伴っている。  特に、多くの開発途上国における食料安 全保障の重要性を考えれば、この分野にお ける更なる調査研究が緊急に必要である。 さらに、食料のロス・廃棄は、水、土地、 燃料、労働力、資本を含む資源の浪費を意 味し、不要な温室効果ガスの排出につながり、 ひいては地球温暖化と気候変動の一因とな る。  将来の最終的な需要増に応えるためには、 主要食料の生産を増加することが至上課題 であるが、一方で、食料のロスを削減する 潜在力を引き出すことで、食料の生産と入手 可能性の間の切迫状態を緩和することがで きる。食料ロス・廃棄の量を減らすための効 率的な解決策は、フードチェーン全体にわた って存在する。ただし、チェーンの一部分で 実施される(あるいは実施されない)行動は、他 の部分にも影響するため、行動はチェーンの 個別の部分にのみ向けられるべきではない。 低所得国では、諸対策はまず、例えば、収 穫技術、農業者教育、貯蔵施設や冷蔵チ ェーンを改善することによって生産者に展望 を与えなければならない。他方、先進工業 国では、もし消費者が現在のレベルで食料 を捨て続ければ、生産者と産業段階での解 決策は限定的な効果しか生まないであろう。 消費者世帯は、現在の高レベルの食料廃棄 の原因になっている消費行動について、知ら され、変えていく必要がある。 ■ 今日の食料供給チェーンはますますグローバ ル化している。ある種の食料品目は、世界の まったく別の場所で生産され、形が変えられ、 消費される。拡大しつつある国際貿易が食 料ロスに与えるインパクトは、なお、より詳 細に分析されるべきである。

Global Food Losses and Food Waste

世界の食料ロスと食料廃棄

R e p o r t 1

関連ウェブサイト

FAO Rural Infrastructure and Agro-Industries Division:www.fao.org/ag/ags/ags-division

出典:「Global food losses and food waste」

FAO, 2011

Global Food Losses and Food Waste

世界の食料ロスと食料廃棄 FAOがスウェーデン食料バイオ テクノロジー研究所(SIK)に 委託して行った、世界の食料 ロス・廃棄量に関する調査報 告書。その量と原因を地域別 に分析し、具体的な対応策を 提言しています。追って日本語 版も刊行される予定です。 www.fao.org/fileadmin/us er_upload/ags/publications/ GFL_web.pdf FAO 2011年5月発行 29ページ A4判 英語

デンマークの「Stop Wasting Food(食料を捨て

るのを止めよう)」運動は、食料の購入・消費パタ ーンを衝動的なものから合理的なものへと方向 転換するように奨励するため、各家庭がその日 に必要とする量に合わせて買い物をすることで 食料の廃棄を回避する方法を消費者に指導し、 より良い家庭計画とショッピングパターンを促し ている。 ■ イギリスでは、廃棄物・資源アクションプログ ラム(Waste Reduction Action Plan,WRAP)が、

先進的な小売業者、銘柄所有者および彼らの 供給チェーンに、いずれは家庭のゴミ箱に捨て られ、最終的には埋め立てにされてしまう廃棄 食料や包装の量の削減に向けた協働アプローチ に同調するよう奨励している。また、包装の無 駄と消費者の食料廃棄を減らすことを目指して、 研究開発(R&D)、優良事例の指導、および促 進活動を実施している。WRAPは、包装資材 製造業者、小売業者、銘柄所有者、供給業者、 研究所、大学、デザイン業者、環境およびデ ザインコンサルタントなどと連携している。 公共の関心を高めるために 14 A UTUMN 2011

(15)

Save and Grow

R e p o r t 2 増え続ける世界人口を養うためには、農作物生産を強化せざるを得ない。 しかし農民は、今までに例のない制約に直面している。

FAO

が提唱する、農業における新しいパラダイムとは。

――小規模農家のための持続可能な農作物生産の強化

15 A UTUMN 2011

(16)

1940

­

1960

年代の「緑の革命」は、 食料生産の飛躍的な増産を可能にし、 世界の食料安全保障を支えてきた。し かしながら、多くの国々では、農作物 生産の強化は農業の天然資源基盤を 消耗させ、将来の生産性を脅かしている。 今後

40

年間に見込まれている需要を 満たすために、開発途上国の農民は食 料生産を倍増させなければならないが、 気候変動と、土地、水、エネルギーを めぐる競争激化の複合効果により、こ の挑戦は一層困難なものとなっている。 こうしたなか、

FAO

は、持続可能な農 作物生産の強化――資源を守り、環境 への負荷を減らし、天然資本と生態系 便益を高めつつ、同じ土地面積からよ り多くを生産する――という新しい発想 を提唱している。ここでは、そのさまざ まなアプローチを紹介する。 農作物と品種 過去数十年に達成された増産の約

50

%

は、遺伝的に改良された穀物品種 の貢献によるものである。植物の育種 家は、今後、これと同様の成果を達成 しなければならない。しかし、高収量 品種の種子を農民に適時に配布するに は、植物遺伝資源の収集、植物育種家、 種子の供給とを連携させるシステムの 大幅な改善が必要となる。過去

1

世紀 の間に、植物遺伝資源の約

75%

が失 われ、現存している多様性の

3

分の

1

が、

2050

年までに消え去る恐れがある。  遺伝資源の収集、保護、利用への 支援の拡大が不可欠である。公的な 植物育種プログラムを活性化させる資 金も必要である。公的な種子システムと、 農民が守ってきた種子システムとの結び 付きを支援し、また地域の種子企業の 出現を育むような政策が求められている。 農業システム 農民は、保全農業を行うことで、より多 く育てると同時に、天然資源や時間、 金銭を節約することができる。保全農 業は、耕起を最小限に抑え、土壌表 層を保護し、農作物を交互に植えるこ とで土壌を肥沃にする農法である。こ の農法では、水の必要量を

30%

、エ ネルギーコストを最大

60%

まで削減す ることが可能である。南部アフリカにお ける試験栽培では、トウモロコシの単 インド・ハリヤナ州における、通常の耕起 栽培に対する不耕起栽培の財政的利点 出典:FAO USドル/ ha 単収 費用節約 純益 0 40 30 20 10 50 60 70 小麦生産における水の生産性 出典:FAO kg / m³(小麦) 降雨依存型 生産 かんがいすべて 降雨依存型生産をかんがいで補助 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 Save and Grow

節約して栽培する 人口増加や気候変動といった 地球規模の課題に農業が直面 するなか、持続可能な食料の 増産を達成するためにFAOが 提唱する新しいアプローチ。全 文版はオンラインで購入できる ほか、下記ウェブサイトでも公 開されています。FAO寄託図 書館(p.32)でも閲覧が可能です。 www.fao.org/ag/save-and-grow FAO 2011年5月発行 112ページ B5判 英語ほか ISBN:978-92-5-106871-7 The Sustainable Intensification of Smallholder Crop Production

Save and Grow R e p o r t 2

16

A

(17)

収が

6

倍も増加した。保全農業の農法 は持続可能な強化のカギとなるものだ が、さらに、高収量適用品種という良 質の種子の利用や、総合的病害虫管理、 健全な土壌をベースとした植物栄養、 効率的な水管理、そして農作物と牧草、 森林、家畜の統合も必要である。これ らは知識集約型のシステムといえる。フ ァーマー・フィールド・スクールといった 普及型アプローチを通じて能力を育成 し、特定の農具の現地生産を可能にす る、持続可能な農作物生産の強化に 向けた政策が必要となる。 水管理 自治体や産業界は、水の利用をめぐり 農業と厳しい競合関係にある。かんが いに対しては、その高い生産性にもか かわらず、土壌の塩化や帯水層の硝酸 塩汚染を含む環境への負荷を減らすよ う圧力が強まっている。信頼性と柔軟 性の高い水の供給を行う、知識に基づ いた精密なかんがいは、制限かんがい や廃水の再利用とともに、持続可能な 強化の重要な基盤となるだろう。その ためには、農民に水の浪費を促すよう な悪しき補助金を排除する政策が必要 となる。降雨依存型の地域では、気候 変動が何百万という小規模農家を脅か している。降雨依存型地域の生産性を 向上させるためには、干ばつに強い改 良品種の利用や、水を節約する管理方 法が頼りとなるだろう。 土壌の健全性 生物相と有機物に富んだ土壌は、農作 物の生産性向上の基盤となる。肥料と 窒素固定力のある農作物や木々の関係 のように、無機質肥料と天然源が組み 合わさった状態から栄養分が得られる とき、単収は最も高くなる。無機質肥 料を賢明に利用すれば、コストを削減 できるだけではなく、栄養分が植物に 行き届き、大気や土壌、水路を汚染す ることもない。  土壌の健全性を向上させるための政 策としては、土壌肥沃度を高めるような 保全農業や耕畜連携、アグロフォレスト リーのシステムを奨励すべきである。機 械的な耕起や肥料の浪費を促すような インセンティブは排除し、農民を尿素の 深層施肥やその土地特有の栄養管理 ファイドヘルビア・アルビダ※ の木陰と木陰外における作物の単収 出典:FAO ※学名faidherbia albida。マメ科の植物。作物の作付期に当たる雨季に、  窒素分を多く含む葉を落とし、乾季に葉を伸ばす。 トン/ ha 木陰外 木陰 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 ミレット ソルガム トウモロコシ 落花生

(18)

といった精度の高いアプローチに移行 させていくべきであろう。 植物防疫 よく管理された農業システムのもとでは、 抵抗性品種を活用したり、天敵を守っ たり、害虫の繁殖を抑えるよう作物の 栄養分レベルを管理するなどの方法に より、害虫による作物の損失を最小限 のレベルに抑えることができる。疾病対 策として推奨されるものとして、無菌の 植付資材の利用や、病原体を抑えるた めの輪作、感染源となっている植物の 排除などが挙げられる。効果的な雑草 管理には、時宜に適った手作業による 除草、最小限の耕起、土壌表面の残 存物の活用が必要となる。照準を定め た防除のためには、必要に応じて、リス クの低い合成農薬を、適量かつ適時に 使用すべきである。総合的病害虫管理 は、ファーマー・フィールド・スクール や生物防除剤の現地生産、厳しい農 薬規制、農薬補助金の排除を通じて 促進することができる。 政策と制度 まず第一に、農業は採算の取れるもの でなければならない。農民は投入材を 購入することができ、農産物を適正な 価格で売ることが保障されていなけれ ばならない。一部の国では、生産物に 対して最低価格を固定することで彼ら の収入を保護している。低所得生産者 を対象に、投入材に対して「スマート補 助金(smart subsidy)」を開発している 国もある。政策立案者はまた、小規模 農家が天然資源を賢く利用するように、 インセンティブ――例えば環境便益に 対する支払いなど――を考案し、投資 に際して緊急に必要となる、クレジット にアクセスする際の取引き費用を削減す る必要がある。多くの国では、非正規 の種子や投入材を売る悪質な取引業 者から農民を保護するための規制が必 要である。開発途上国では、農民に適 正な技術を提供し、ファーマー・フィー ルド・スクールを通じて彼らの技術を高 めるために、研究・技術移転能力の再 建のための大幅な投資が求められてい る。 以上に見てきたような持続可能な農作 物生産の強化は、「

Save and Grow

―節約して栽培する―」という言葉に要 約される。「持続可能な強化」とは、天 然資源を節約して使うと同時に増大さ せる、生産的な農業を意味する。これ には、作物の成長に対して自然の力を 引き出し、適切かつ適量の外部投入材 を適時に与える生態系アプローチが利 用される。  今後

15

年先を見据えた

FAO

の目標 は、開発途上国がこうした「

Save and

Grow

―持続可能な農作物生産の強 化―」の政策とアプローチを適用する 支援をすることである。

出典:パンフレット「Save and grow:A policy-maker s guide to the sustainable intensification of smallholder crop production」FAO, 2011

The Sustainable Intensification of Smallholder Crop Production

Save and Grow R e p o r t 2

(19)

あなたも参加しませんか

?

団体で 「世界食料デー」月間は、国内外の食料問題 に取り組む団体が連携して実施しています。イベントでチ ラシを配布する、ホームページで食料問題について紹介 するなどの関わり方があります。 個人で イベントに参加する、自分のブログで食料問題 についての情報を発信する、近所の飲食店にチラシを置 いてもらうなど、まずは飢餓や食料問題を知り、できるこ とから始めてみませんか。 学校で 世界とつながっている「食」の問題を、総合学 習や社会科など、学校の授業で子どもたちと一緒に考え てみませんか。 企業・飲食店で チャリティーメニューを提供する、イ ベントを開催するなど、みなさんのアイデアで、新たな試 みを始めてみませんか。

みんなが食べられる世界を目指します。

安全で「おいしい」ものを食べること。食料をいつでも安 心して手に入れられること。それは、誰でも、どこに住ん でいても、生まれながらに持っているはずの権利です。  ところが、今、世界に住む

69

億人のうち

9

2,500

万人もの人が十分に食べられていません。世界各地で 干ばつや洪水を引き起こしている気候変動、再び高騰し ている食料価格……。日本国内でも東日本大震災によ って、たくさんの人が食生活に不安を感じています。  今、世界や日本で何が起きているのか。「世界食料 デー」月間をきっかけに一緒に考え、解決に向けてでき ることから始めてみませんか。

10

16

日は世界食料デー。国連が制定した世界の食料問題を考える日です。 日本では、世界食料デーと前後する

10

1

日 ­

10

31

日を「世界食料デー」月間とし、 国際機関や

NGO

が協力してさまざまなイベントを行っています。

世 界 食 料 デ ー 」月 間

2 0 1 1

呼びかけ団体 (特活)アフリカ日本協議会・(特活)WE21ジャパン・ (社)国際農林業協働協会(JAICAF)・セカンドハーベスト・ジャパン・ 日本国際飢餓対策機構・(特活)ハンガー・フリー・ワールド・ 緑のサヘル・国連食糧農業機関(FAO)日本事務所 お問い合わせ (特活)ハンガー・フリー・ワールド 担当:儘ま ま だ田 Tel:03­3261­4700 Fax:03­3261­4701 E-mail:hfwoffice@hungerfree.net

今年もさまざまなイベントが始まっています。

セミナー

7

30

日 世界と地球の困った現実 ――買っているのに捨てる私たち――

8

6

日 これからの農業と食生活を考えるヒント ――バングラデシュと日本のマーケットから――

8

25

日 ゼロ・ハンガー・ネットワーク・ジャパン によるブルキナファソでの取り組み

9

16

日 「貧困国」の「食の安全」に私たちの責任

?

9

28

日 食料価格:危機から安定へ

10

1

­

2

日 グローバルフェスタ

JAPAN 2011

(予定) ボランティア体験

9

1

日 東北へ食品パッケージを届けよう! プロジェクト ※すでに終了したものもあります。ご了承ください。

詳しくは特設ホームページへ。

www.worldfoodday-japan.net/

19 A UTUMN 2011

(20)

激動の

2011

年も半ばに入り、主要な 食料作物の市場年度が始まろうとして いるなか、国際食料市場の最近の進展 を評価し

2011 / 12

年度の早期予想を 導き出す重要な時期を迎えた。いくつも の注目すべき展開の中で、より良好な 供給状況と安定した価格を予想した以 前の予想は、やっかいな要因を増やし つづける予想にとってかわられ、国際価 格の上昇は、この数十年みられなかっ た水準に達している。実際、

5

月の

FA

O

食料価格指数は

232

ポイントで史上 最高に近く、

2

月の最高値より

6

ポイン ト低いだけである。天候不順が主要な 原因ではあるが、日本の大震災や、北 アフリカ・中東諸国を覆う政治的混乱、 石油価格の再上昇、長引く金融市場お よび世界経済の不安定を含む、他の多 くの予期せぬ要因も食料市場の安定を 脅かした。  穀物市場においては、その多くを占 める大麦、トウモロコシおよび小麦が、 生産に関わる問題と在庫減少の影響を 受けている。世界最大のトウモロコシ 生産国であり輸出国である米国では、 トウモロコシ在庫が危機的な水準まで 低下した。コメは、記録的な世界生産 と大きな期首在庫のおかげで例外とな っている。加えて、穀物生産が輸出国 では不作であるのに対し輸入国では概 ね順調であることが、

2007 / 08

年度 に並ぶ国際価格高騰のインパクトをや わらげた。油料種子セクターでも、需 給バランス緊迫に支えられて価格が急 騰した。乳製品および食肉の価格決定 も例外ではなく、生産コスト上昇や家 畜数の減少、在庫の大幅な枯渇により 価格は急騰した(食肉の場合、史上最高 水準となっている)。輸出余力縮小の背後 で、砂糖市場も価格高騰を経験し、こ の数ヵ月はいくらか落ち着いた。この状 況を背景に、食料輸入勘定は

1

3,0

00

US

ドルと史上最高値に跳ね上が ると予想される。  高価格予想は一般的に作付け拡大 を促すが、今年も例外ではない。高収 益予想は、好天とも相まって、すでに 南半球で穀物と大豆の収穫増をもたら している。北半球の国々での冬作作付 けもかなり拡大している。しかし、多く の場合、今年の穀物生産の増加予想は、 作付け拡大だけによるものではなく通 常の天候条件回復予想にも依拠してい る。ロシアでは、昨年の壊滅的な乾燥 気候から、より通常の天候に回復して いるため、供給改善が予想される。同 国が

2011

7

月から輸出禁止措置を 撤廃すると発表したことも好材料となっ ている。好天により、ウクライナでも豊 作が予想される。しかし、多くの重要 な輸出地域では春の天候が不順となっ ており、収量にも影響を及ぼすとみられ る。ヨーロッパと北アメリカでは、一部 地域(米国ではトウモロコシ産地)で大雨 が降り、他の地域(米国・ヨーロッパの小 麦産地)では乾燥が長引いたことに、懸 念が集まっている。多くの国がすでに食 料価格高騰に取り組んでいるなか、今 年の収穫の結果は、特に現在緊迫度 の高いトウモロコシのような作物に関し て、この先の価格決定を左右する重要 な要因となるだろう。在庫の急減と、き わめて限定的な主要作物の生産増にか んがみると、国際価格は高止まりし、 不安定と予想される。最終的な作柄予 想を立てるために最も重要な時期はこ れからである。

FAO

は、これまでと同様 に、状況を詳しくモニターし、国際社 会に情報を伝えていく。 穀物

2011

年の世界の生産増により、供給 不足気味であった市場は緩和されると 予想されるが、在庫を十分に回復する には至らないとみられる。

2011

年の世 界の穀物生産に関する最初の予想は、 www.fao.org/giews/english/fo

FAO「Food Outlook」は、穀物やその他の基礎的な食料の生産、在庫、貿易の国際的な見通しを、 最近のトレンド分析や予測を盛り込んで解説したものです。 品目別の詳しい解説や、生産や輸出入に関する統計など、全文(英語)は ウェブサイトにてご覧ください(年2回発行)。

Food Outlook

世界の食料需給見通し

2011.6

Focus

焦点

Market Summaries

市場の概況

20 A UTUMN 2011

(21)

2010

年の前年比

1%

減に対し、

3.5

%

増と回復し記録的なものになることを 示している。単収の回復と作付け拡大 の予想がこの生産増の主な理由である。 世界の小麦生産は、主としてロシアに おける生産予想改善を反映し、生産減 であった昨年より

3.2%

増加すると見込 まれる。世界の粗粒穀物生産は

3.9%

増加し、

2008

年の記録を超えると予 想される。この生産増の多くは、米国 と独立国家共同体(CIS)で予想されて いる。予備的な予想ではあるが、世界 のコメ生産も、天候条件の改善が予想 されることから

1.8%

増加し、史上最 高値に達すると予想される。  

2011 / 12

年度の全穀物利用の最初 の予想は、バイオ燃料生産向け穀物の 工業利用増加率が減速した結果、

20

10 / 11

年度の前年比

2%

増に対し、

1.4%

増となることを示している。

2012

年、穀物年度終了時の全穀物の期末 在庫は

4

9,400

万トンとなり、大きく 減少した期首在庫からわずか

1%

しか 増加しないと予想される。コメ在庫が 最も増加する一方で、粗粒穀物在庫は 微増、小麦在庫はさらに減少すると見 られる。予想される世界在庫のわずか な増加は、

21%

前後の低水準にとどま っている利用に対する在庫率を引き上 げるには不十分である。

2011 / 12

年 度の世界の穀物貿易に関する

FAO

の 最初の予想は、

2010 / 11

年度より微 増することを示しており、小麦は輸入が 増加、粗粒穀物は減少、コメは堅調と みられる。全穀物生産が消費をかろう じて満たす状態であることから、国際価 格は高止まりするとみられ、特に小麦と 粗粒穀物市場では可能性が高い。ロシ アの輸出禁止措置解除は価格低下圧 力の材料となるが、米国と

EU

の主要 生産国での不確実な収穫予想により、 国際穀物価格は変動しやすいと予想さ れる。 小麦

2010

年に急落した世界の小麦生産は、

2011

年に

3.2%

増加し、

6

7,400

万トン近くに達すると予想される。生産 回復は、北アメリカとヨーロッパの一部 で春の天候が異常であったため、

3

月 に発表された

FAO

の最初の生産予想 を若干下回る。需要は前年ほど急速に 上昇していないものの、世界生産は予 想される需要を満たすには不十分とみ られる。

2011 / 12

年度の世界の小麦 利用はわずか

1%

増の、

6

7,700

万 トンと予想される。新年度における飼料 利用は、

CIS

での粗粒穀物供給回復予 想により、減速するとみられる。世界の 小麦在庫は、

2011

年末には

2010

年 の水準を大きく下回ると予想されている が、

2012

年の期末にはさらに減少し、

1

8,300

万トンになると予想される。 この水準では、新年度(2011 / 12年度) の世界の利用に対する在庫率は若干 下落し、

27%

前後となるとみられるが、 それでも

2007/ 08

年度の低水準

22.6

%

を上回ることになる。当初の指標に よると、

2010 / 11

年度に落ち込んだ世 界の小麦貿易は、若干回復するとみら れる。

2011 / 12

年度の世界貿易は、

2010 / 11

年度を

200

万トン上回る

1

200 400 600 800 300 500 700 穀物の生産、利用、在庫 出典:FAO 在庫(右軸) 利用(左軸) 生産(左軸) 1800 2000 1900 2200 2100 2400 2300 11 / 12年 予測 09 / 10 07 / 08 05 / 06 03 / 04 01 / 02 100万トン 100万トン 出典:FAO 小麦の生産、利用、在庫 在庫(右軸) 利用(左軸) 生産(左軸) 100万トン 100万トン 100 150 200 250 300 500 550 600 650 700 11 / 12年 予測 09 / 10 07 / 08 05 / 06 03 / 04 01 / 02 21 A UTUMN 2011

(22)

Food Outlook

世界の食料需給見通し 億

2,500

万トンと見積もられる。多くは アジアと

EU

の一部の国々の輸入拡大に よるものである。米国の小麦輸出の急 減は、

CIS

諸国の輸出増によって相殺 されると予想される。

5

月、国際小麦 価格は天候懸念と不確実な生産予想 に反応した。価格は

2

月の高値を下回 っているものの、米国の小麦先物価格 は昨年同期を約

75%

上回っており、 通常の価格水準への復帰の見通しは、 少なくとも新年度の前半(7月­12月)に は立っていない。 粗粒穀物 年度初期の現時点では、

2011 / 12

年 度の粗粒穀物需給見通しは暫定的な ものである。今年の作付けが完了して いない北半球での耕作に不適な天候 条件が、今年の収穫量の予想を、こと に複雑なものにしている。しかし、見通 しはほぼすべての主要生産国において 良好で、世界生産は

2010

年から

3.9

%

増の

11

6,500

万トンと、史上最 高値に達すると予想される。それでも、 この予想生産量は、

2011 / 12

年度に 予想される利用をかろうじて満たすだけ とみられる。

2011 / 12

年度の粗粒穀 物の飼料および工業向けの利用は、

2010 / 11

年度ほど急速ではないもの の増加し、全利用量を約

1.4%

増加さ せるとみられる。こうした生産と利用に 関する予想に対し、世界在庫は

2011

年に予想された大幅な減少から若干回 復するとみられるが、積み増しは

1.3%

にとどまり、

1

6,770

万トンになると 予想される。結果として、利用に対する 在庫率は歴史的な低水準にとどまり、 国際価格は何ヵ月も続く粗粒穀物市場 のひっ迫を反映して、

2010

年同期の 水準を

50%

から

100%

上回っている。

2011 / 12

年度、トウモロコシは

2008

年の高値を上回る価格で取引きされて おり、トウモロコシ古物(2010年産)は

12

月収穫の新物に対し相当のプレミア ムが付加された相場となっている。

20

10 / 11

年度に急増した世界貿易は、 若干減少して

1

1,900

万トンになると 予想される。高価格は確かにこの貿易 縮小の主要因だが、一部の輸入国で の豊作予想も、輸入を抑制すると予想 される。価格上昇の可能性は需要の一 部分散につながることから、多くは最終 的な収穫によって決まるものの、

2011

/ 12

年度の市場価格は低めに流れると 予想される。 コメ

2010

年の第二期に国際コメ市場を特 徴づけた価格上昇は

12

月に収束し始 め、

2011

5

月までにコメ価格は

1

月 の価格を

3%

下回った。それでも

20

10

5

月の価格を

22%

上回っている。 さまざまな問題を伴った結果、先の

11

月の予想より生産減となった耕作年度 であったが、

2010

年の世界のコメ生 産は

1.8%

増加して史上最高となった。

2011

年の早期予想も良好で、通常の 天候条件と政府による着実な支援があ れば

2.6%

の生産増が予想される。  コメ貿易は、アフリカ、北アメリカお よびヨーロッパでの取引量の増加に支 えられて、

2011

年に

1.4%

増加し、

20

出典:FAO コメの生産、利用、期末在庫 100万トン(精米換算) 100万トン(精米換算) 在庫(右軸) 利用(左軸) 生産(左軸) 10 / 11年 予測 08 / 09 06 / 07 04 / 05 02 / 03 00 / 01 60 90 120 150 180 350 380 410 440 470 出典:FAO 100万トン 100万トン 粗粒穀物の生産、利用、在庫 在庫(右軸) 利用(左軸) 生産(左軸) 100 150 200 250 300 800 900 1000 1100 1200 11 / 12年 予測 09 / 10 07 / 08 05 / 06 03 / 04 01 / 02 22 A UTUMN 2011

(23)

07

年の記録的水準に近づくと予想され る。輸出国では、タイとベトナムが貿易 量の増加分の多くをカバーする一方、 エジプト、パキスタンおよび米国の積み 出し量は昨年を下回ると予想される。  世界のコメ利用は

2011

年に

2%

増 加すると予想される。

1

人当たりで見ると、 高価格が制約となって、コメの食用利 用量に変化はなく、年間約

56kg

となる と予想される。コメの高価格は、各国 政府の食料価格高騰を抑制する対策 も呼び起こした。  世界生産が消費を上回っていること から、

2011

年の世界のコメ在庫は

20

02

年以降最高水準に達すると予想さ れる。世界生産は今後も拡大していくこ とが予想されており、コメ在庫は

2012

年にはさらに積み増されるとみられる。 油料作物

2009

年に始まった油料作物および派 生製品の国際価格の上昇傾向は

2011

/ 12

市場年度も続き、

2011

2

月に は

2008

年の史上最高値に近づいた。 この継続する価格上昇は、主として着 実な需要拡大と主要輸入国の購買意 欲と結びついた国際的な需給バランス 緊迫度の高まりを反映している。穀物 市場の緊迫度の高まりの影響も、この 傾向を後押しした。この数ヵ月、大豆 およびパーム油の生産予想の改善によ って価格はいくらか軟化したものの、こ の傾向が続くとはみられていない。実際、

2011 / 12

年度の当初予想は、国際油 脂

/

油かす市場の現在の緊迫が、次年 度も継続し、さらに強まるとしている。 現時点で、

2011 / 12

年度は低水準の 繰り越し在庫で始まり、特に油料作物 と穀物との間で農地をめぐる競合が高ま ることから、全油料作物生産はごくわず かしか増加しないと予想されている。し たがって、次年度の供給が、着実に拡 大する油脂/油かすの需要を満たすに は不十分で、世界在庫および利用に対 する在庫率はさらに減少し、その結果、 将来、油料作物および派生製品の価 格上昇が続くことが見込まれる。 砂糖

FAO

の最新の推定によれば、世界の 砂 糖生産は

2010 / 11

年度に

1

6,

570

万トンに達し、

2009 / 10

年度を

5.8%

上回る。

2007 / 08

年度以降で は初めて、世界生産が消費を上回った が、余剰は世界の砂糖在庫を通常の 水準に回復させるには不十分と予想さ れる。生産増加分の多くは、ブラジル とタイでの豊作およびインドでの生産回 復による。この生産増は、過去

2

年間 大勢を占めた国際砂糖価格の高価格 に促されたものである。  世界の砂糖消費は

2009 / 10

年度 の減速から回復し始めているが、

2010

/11

年度の上昇傾向の経済成長の中で、 比較的高い国内砂糖価格が消費拡大 を制約するとみられる。その結果、現 時点では、

1

人当たり平均の砂糖消費 はほとんど増加しないと予想される。世 界貿易は、主要な輸出国の輸出余力 低下の結果として、

3.6%

縮小すると 予想される。通常の天候条件回復を条 件とした、

2011 / 12

年度の早期予想は、 出典:FAO 油料種子、油脂、油かすのFAO月別国際価格指数 2002­2004年=100 油かす 油料種子 油脂 50 100 150 200 250 300 2011年 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 出典:FAO 国際砂糖協定(ISA) USセント/ポンド 10 15 20 25 30 2009 2010 2008 2011 12月 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 23 A UTUMN 2011

(24)

作付け拡大を反映して生産量拡大の 可能性を示している。実際にそうなった とすれば、国際砂糖価格は

2011

年初 めの高値から下落するとみられる。しか し、在庫水準が比較的低いことから、 主要生産地域で予期せぬ天候不順が 発生すると、国際砂糖価格が再び、急 激に高騰することもありうる。 食肉・食肉製品 飼料価格高騰、疾病の発生および家 畜数の減少により、世界の食肉生産は

2011

年に

1%

しか拡大せず、

2

9,4

00

万トンになると予想される。増加分 は家きん類と豚肉セクターからもたらさ れる一方、家畜を保持して群れを増や すために世界の牛肉および羊肉生産は 制約されると予想される。  強い輸入需要、特に、多くの国々で 供給が不足し国内価格が高騰している アジアの需要により、世界の食肉貿易 は

2.4%

増加し、

2,680

万トンになると 予想される。増加の多くは豚肉流通の 拡大によるもので、一部は家きん類と 牛肉である。一方、羊肉の貿易は伝統 的輸出国の供給余力不足により低迷す るとみられる。小売価格が比較的高い ことから

2011

年の

1

人当たり食肉消費 量は

41.9kg

前後にとどまるとみられる。 途上国では、着実な経済成長によりわ ずかに増加して

32.0kg

となり、他方、 先進国の

1

人当たり消費量は

78.4kg

にとどまると予想される。  国際食肉価格は、

2011

1

月から 着実に上昇しており、豚肉価格が

10%

上昇したことが大きな要因となって、第 一四半期に

5%

上昇した。これから数 ヵ月は、世界の輸入需要の強さと限ら れた輸出余力が組み合わさって、国際 食肉価格はさらに上昇するとみられる。 乳製品 アジアでの強い輸入需要と伝統的輸出 国の供給余力不足により、乳製品価格 は

2011

年第一四半期に急騰した。

4

月に価格が下落したものの、

5

月には北 ヨーロッパの多くの国で平均雨量が平 年を下回ったため価格が再上昇した。 この地域の出荷ピーク時期がやがて終 わるため、今年の残る期間の国際乳製 品価格は、南半球における天候条件に 大きく左右されることになるだろう。  

FAO

は、現在、

2011

年の世界の 乳製品生産は

1,400

万トン(2%)増加 して

7

2,400

万トンになると予想して いる。増加の多くは、途上国(特にアル ゼンチン、ブラジル、中国、インド)で見込ま れるが、先進国(特にEU、ニュージーラン ドおよび米国)でも増加が予想される。  上昇基調にある世界の輸入需要によ って乳製品貿易は

5%

増加し、生乳換 算で

4,830

万トンとなると予想される。 良好な条件に恵まれて、国際的に取引 されているすべての主要な乳製品、特 に脱脂粉乳(MSP)、全脂粉乳(WMP) およびチーズで増加が見込まれる。貿 易拡大は、主としてアルゼンチン、ベラ ルーシ、

EU

、ニュージーランドおよび 米国からの輸出拡大によるものと予想 される。  多くの輸出国で生産拡大が遅れてい ることから、増加する輸入需要に応じる 出典:FAO FAO食肉価格指数 2002­2004年=100 70 100 130 160 190 220 2011年 2010 2009 2008 2007 羊肉 家きん肉 牛肉 豚肉 食肉合計 ※指数は、国際的に取り引きされる代表的な乳製品の貿易加重平均値から求めたもの  出典:FAO FAO国際乳製品価格指数※ 2002­2004年=100 50 150 250 350 11年 09 07 05 03 01 99 97 95

Food Outlook

世界の食料需給見通し 24 A UTUMN 2011

図 1 ―世帯別の家畜頭数
図 3 ―農村地域における融資の利用

参照

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