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チーム医療と倫理:思いを言葉に! Ethics in multidisciplinary health-care: urging nurses to verbalize their thoughts

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98 日本看護倫理学会誌 VOL.6 NO.1 2014

■ 日本看護倫理学会第6回次大会  シンポジウム

チーム医療と倫理:思いを言葉に!

Ethics in multidisciplinary health-care: urging nurses to verbalize their thoughts

前田 樹海

◉東京有明医療大学看護学部

白状すると、筆者は、近年の急上昇キーワードと言っ てもよい「チーム医療」が取り上げられるとき、なぜ

「倫理」と結びつけて語られるのかピンと来ないでいた。

そのため、このシンポジウムの座長の依頼が舞い込ん だ際には一瞬逡巡したが、好奇心に駆られて引き受け ることにした。そういうわけで、おそらく拙い進行で はあったと思うが、自分の疑問を整理する上ではまた とない機会となった。以下、そのことについて記す。

保健師助産師看護師法第5条において、看護師は「傷 病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療 の補助を行うことを業とする者」と規定されている。「診 療の補助」の内容については同法第37条で「主治の医師 又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機 械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示を しその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上 危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない」と記 載されているが、きわめてあいまいな表現であるがゆ えに、看護師の業務範囲について疑義のある個別の事 案については行政解釈による収束が図られてきた。

一例を挙げると、静脈注射は「医師又は歯科医師が 自ら行うべきもので法第5条に規定する看護婦の業務 の範囲を超えるものである」との通知(厚生省医務局 長,1951)がなされて以降、長らく「診療の補助」行 為とは見なされてこなかった。しかしながら2002年、

厚生労働省医政局局長通知により「保健師、助産師、

看護師及び准看護師が行う静脈注射は、保健師助産師 看護師法第五条に規定する診療の補助行為の範疇とし て取り扱う」との法解釈が示され、突然適法行為に なったことは記憶に新しい。

この事例が示す通り、「診療の補助」という枠組み はたしかに法律によって定められているのだが、それ を構成する具体的な看護行為はむしろ解釈によって運

用されているのである。かかる保健師助産師看護師法 の「法の精神」に則るならば、診療の補助にかかわる 具体的内容も、コンセンサスを得た上で柔軟に運用す ればよいし、その「あいまい性」をもつ医療職が存在 することで医療現場が円滑に機能してきたという側面 は評価されるべきであろう。

しかし、患者中心の医療の流れの中で多職種間の協 働や連携を推進する場合、あいまい性はマイナス方向 にも作用する可能性が高い。たとえば、看護師‒医師 関係、看護師と医師との間では暗黙の了解事項だった ことが他の医療職には共有されていないケース、看護 師が埋めている穴が実は他職種が担うべき事項だった など、同じ職種の間でも起こり得る食い違いが、職種 をまたぐことで起こる可能性が高くなるからだ。職種 間の考えや認識の食い違いによって引き起こされるこ との多くは利用者が割を食うことになる。この辺が、

各医療職の協働、連携による「チーム医療」を議論す る際のキーワードとして「倫理」が取りざたされる所 以とやっと理解したのであった。

さて、2009年に8月に、日本の実情に即した医師と 看護師等との協働・連携のあり方等について検討を行 うことを目的として発足した「チーム医療の推進に関 する検討会」は、翌2010年3月19日に報告書をとりま とめ、医師の包括的指示のもとに特定の医行為を行う ことのできる特定看護師(仮称)という枠組の構築と、

専門的、実証的な調査、検討が必要であると提言した1。 これを受けて、看護師特定行為・業務試行事業が開 始された。2013年3月現在、当該試行事業の実施施 設は全国で60施設、事業対象看護師数は71名にのぼ ると報告されている2。専門看護師制度発足初期の養 成数と比較すると意外と多い印象であるが、それでも 全体から見れば希少であることには違いない。

1  厚生労働省.チーム医療の推進について(チーム医療の推進に関する検討会報告書)[インターネット].[検索日2014131日].

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319‒9a.pdf

2  厚生労働省.平成24年度看護師特定行為・業務試行事業状況報告(3月)[インターネット].[検索日2014131日].http://

www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000362eg-att/2r985200000362 mw_1.pdf

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日本看護倫理学会誌 VOL.6 NO.1 2014 99 今回のシンポジウムは、その希少な人材である特定看

護師、特定看護師の指導に携わった医師、特定看護師を 受け入れた病院の副看護部長をシンポジストとしてお 招きし、それぞれの立場からご発表をいただいた。

チーム医療、ならびに特定看護師という新たな枠組み

をもつ医療職種が従来の医療現場に参入した際に起こ りうる倫理問題とその調整・解決に向けたアプローチ に関しては各演者の記事をご覧いただくとして、今後 のチーム医療のありかたについて考える際の一助とし ていただければ幸いである。

患者中心のチーム医療実現のために:特定看護師の立場から

吉田 弘毅(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 診療看護師)

平成24年5月より看護師特定行為業務・試行事業

対象看護師として研修を開始し約1年が経ちました。

所属する災害医療センターでは平成24年度、循環器 科・救命救急科・外科系(消化器乳腺外科・脳神経外 科・麻酔科)をローテーションし研修。平成25年度 からは周術期に身を置き活動を行っています。術前 は、術前評価、外科カンファレンスへの参加。術中は 術中管理観察、手術の状況に応じて麻酔介助、手術助 手、器械出し看護、リスクマネージメントを実施。術 直後は、麻酔覚醒直後の合併症の早期発見、疼痛・嘔 気・嘔吐への対応。術後は、経時的な評価による異常 の早期発見に務めています。術中の活動を中心に入院 から退院まで周術期患者に対する病棟へのラウンドも 実施し、観察や処置から得られた情報の患者への フィードバックや状況説明を通し、患者の病状の理解 を促進するように関わるのと同時に、外科系医師、病 棟看護師、麻酔科医師、手術看護師と連携し相互の情 報を共有し、患者の安全確保(身体的・精神的)を 行っています。

実際に活動する中で特定看護師とは、看護哲学・看 護観を基盤として、医師の包括的な指示の下、外来受 診・入院から退院まで検査から治療まで連続的に関わ り医療そのものも提供していく看護師であることを実 感しました。医学の知識と看護の心を融合させ患者を 捉え、患者の病気体験を看護の視点だけでなく医学の

立場からも把握し患者と共有しながら診療に加わるこ とで、患者の状況を全人的に捉え、患者さんの思いに 少しでも早く応えながら身体的にも精神的にも待ち時 間を与えない適切なタイミングでの医療の提供につな がるのではないかと思います。また、患者さんに対し て日々の状況や治療の説明をわかりやすく詳しく行う ことで、不安の軽減、患者自らの状況把握や理解を深 めることになり、診療に対する患者の満足度につなげ られているのではないかと感じています。さらに、看 護師・医師の動きや役割を把握しながら連携し、医療 現場に不足しがちな部分を予測し把握しながら情報共 有を行うことでチームが円滑に動くように働きかける ことや、職種の垣根を超えて自ら実施することでより 円滑に進むようにできる存在ではないかと感じていま す。それは、患者中心のチームの中で職種の差によっ てどうしても抜けがちであった部分を補えることにな り、医療倫理の大命題である患者への良質な医療への 提供につながるのではないかと考えます。

最後に、患者中心のチーム医療実現には、患者のも とに足繁く通い、話を傾聴し患者の病気体験を看護・

診療の両面から共有しつつ、患者の思いも含め全人的 に捉え、患者に最大のメリットがあるように関わり医 療を提供していくことがっていくことが求められてい るのではないかと思います。

いま求められるチーム医療とはなにか? 特定看護師導入から見えてきた課題

財前 博文(大分県厚生連鶴見病院 循環器内科部長)

昨今の医療現場では、チーム医療の概念が唱えら れ、広く浸透してきた感がある。一人の患者の治療を 行うにあたり、一人の主治医の独断的判断のもと、他 職種に指示を与えながら業務を遂行してきた従来型の 医療に対して、患者を中心として、多くの医療専門職 種がチームとなり、それぞれの専門性を活かしながら 協力して治療を進めるとの考え方である。

当院は、2011年4月に看護師特定行為・業務試行

事業対象看護師(以下、特定看護師とする)を採用し、

循環器、消化器、泌尿器科の臨床研修を行った後、9 月から老健施設に、12月から総合内科外来に勤務し、

2012年9月から訪問看護ステーションで勤務してい

る。特定看護師が臨床研修を行う上で、最も考慮した のは、その立ち位置である。研修期間中は研修医と同 じ目線で教育し、本人にもその覚悟で勉強するように 指導した。

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100 日本看護倫理学会誌 VOL.6 NO.1 2014

患者の診断と治療は医師にとって当たり前であり、

最優先事項であるが、特定看護師にとってこのプロセ スが新鮮に映ったらしく、そのことは指導する医師に とっても驚きであった。長年、医師の傍らにいて、治 療に参画してくれていると考えていた看護師が実は、

看護診断という医師とは違う基準で患者をみていたこ とに改めて気づかされた瞬間であった。

看護師の業務は、大きく「療養上の世話」と「診療 の補助」の二つに分けられる。医師では気がつきにく い細やかな観察や、患者に対する心遣いは、看護師な らではの目線である。この「療養上の世話」は、チー ム医療を行う上で欠かせない要素であり、患者の高齢 化等により、ますますその重要性は高まっている。一 方で、「診療の補助」を行う上では、看護師にも高度 な医療知識が求められる。医師不在時の患者の訴えや 理学所見、検査所見を理解して、適切に対処し報告で きる能力、あるいは医師が見落とした重要な臨床サイ ンに気がついて指摘できる能力は、チーム医療を行う ためには必須の能力と言える。

現在の看護教育は、独自の看護学を構築することに

邁進し、その専門性を高めようとするあまり、「診療 の補助」としての行為が軽視されているようにも思わ れる。そのような中、特定看護師は、看護師目線を保 ちながら、医師の診断と治療のプロセスを学び、医師 の信頼を得ることで、積極的に「診療の補助」として の業務を遂行しようとしている。看護師は「療養上の 世話」に専念すべきとの意見もあるが、真の「療養上 の世話」は、高度の医療知識があって初めて成し得る 行為であり、そこには「診療の補助」を行う能力は必 須であろう。さらに付け加えるならば、看護師が収集 した情報は、共通言語によって他職種と共有できるも のでなければならない。診療を行う医師、その診療の 補助を行う看護師がより良いチーム医療を形成するた めには、看護業務に対する医師の理解はもちろんのこ と、医師の業務に対する看護師の理解といった相互の 信頼と理解が必要である。チーム医療を行う上での看 護師の役割は「療養上の世話」か「診療の補助」かとの 論争の中にあって、特定看護師の存在は、一つの方向 性を示しているものと考える。

チームの倫理的意志決定に参加する看護管理者:患者の「思い」を語り合い、

分かち合えるチームへ

田畑千穂子(鹿児島大学病院医学部・歯学部附属病院 看護部)

私は、管理者になった年、春の二科展で元恩師に偶 然再会しました。恩師は赤の桜島を画風とした画家 で、絵を描いて頂き私の長年の夢が叶いました。「赤 の桜島」の噴煙は様々な人の感情の表れのようで、青 空はそれらの感情を吸い込み、溶け合っているようで もあります。私たち看護師は感情を整えるのが仕事で す。噴煙のように、ぶつかり合ったり、溶け込みあっ たりする人の感情を青空に昇華していけるような、そ んな看護を目指しておりました。

今回のシンポジウムでは、チームの倫理的意志決定 に管理者として参加した2事例を紹介しました。一例 目は、進行がんの男性が医学生へのチーム医療の講師 として、全身全霊でがんと闘った5年間を振り返り、

切々と語ったことでした。患者が手術時のインフォー ムドコンセントの時に考えていたことは、「顔面神経 麻痺は醜いのか」「子供は自分の顔のことでいじめに あわないか」「命はあとどれぐらいか」等で、最後に

「皆さんがいい医師になって僕を助けてください」と 結びました。医療者はどんなに想像力を働かせても患 者の「思い」に及ばないこと、医療者が想像するより 遥かに現実的に受けとめ意思決定していたと知った事 例でもありました。二例目は、ターミナル期に突然下 半身麻痺が出現した患者をチームで支えたプロセスで

す。チームの目標は緩和ケアにつなぐこと、重要他者 は患者の代弁者ではあるが患者の思いも確認していく ことでした。重要他者は突然の下半身麻痺に「診断の 遅れではないか」と不信を抱き、患者は化学療法へ希 望をつないでいました。主治医は化学療法のエビデン スはないと判断されており、チームは膠着した状況と なっていました。家族は治療の可能性を求めて更なる セカンドオピニンや飛行機で移送の希望を申し出られ ました。一般には「無謀」と思える言動ではありまし たが、家族にとっては「愛情」や「善の行動」であると も考えられチームで最善を尽くしました。最終的に決 断したのは患者自身で「難しいですね。治療できない のですね」と、「最期は自宅に帰りたい」と語り、緩和 医療を選ばれました。

今、チーム医療が推進される中、他職種によるチー ムカンファレンスが様々な場面で開催され、臨床倫理 問題も部署単位では解決が困難な事例もあります。看 護管理者には、倫理問題で、誰も孤独せず、悪者にも せず、システムのせいにもせず、患者の意志を尊重す る組織づくりが求められています。それには、患者の

「思い」を語り合い、分かち合える職場風土の醸成と 最終的な問題解決に向け「相談の場」として臨床倫理 委員会を運用していく組織づくりが大切と考えます。

参照

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